説明

光素子

【課題】小型化と偏波無依存性とを同時に達成しつつ、幅誤差による偏波無依存性の悪化に対する耐性を高める。
【解決手段】基板8の主面8a側に延在するクラッド12と、光導波路型要素13とで構成される光導波路7を有し、光導波路は、2個の偏波無依存な方向性結合器16及び18と、2個の方向性結合器間を接続するとともに、光路長が異なっていて、互いに並列された第1湾曲光導波路20a及び第2湾曲光導波路20bと、第1及び第2湾曲光導波路のそれぞれに少なくとも1個以上設けられ、厚みよりも幅が大きな、合計2個以上の光路長調整領域22及び22とを備え、光導波路材料は、クラッドの屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有しており、それぞれの光路長調整領域の偏波間における光路長差を、全ての光路長調整領域について総和した値が0となるように、それぞれの光路長調整領域の幾何学的長さを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1本の光ファイバを伝搬する波長の異なる2種の光により双方向通信を行うに当たり、発光素子から出力される光と、受光素子へと入力される光との合分波を行う光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
加入者側から局側への光伝送(上り通信)と、局側から加入者側への光伝送(下り通信)を1本の光ファイバで行う光加入者系の通信システムにおいては、上り通信及び下り通信を異なる波長の光で行うことがある。この場合、局側及び加入者側の双方で、異なる波長の光を合分波する光素子(以下、光合分波素子とも称する。)が必要となる。
【0003】
光加入者系の通信システムで用いられる加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)は、空間光学的に光軸合わせされた光合分波素子、発光素子及び受光素子を備えている。
【0004】
しかし、近年、光軸合わせの手間を軽減するために、光導波路により光合分波素子を構成した光素子が開発されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この光導波路を用いた光素子(以下、導波路型光素子と称する。)では、光の伝搬経路を、予め作りこまれた光導波路内に限定するので、従来の光合分波素子におけるレンズやミラー等の光軸合わせが不要となる。さらに、導波路型光素子では、発光素子及び受光素子を、予め光合分波素子に作成されたマークを基準にして、光導波路の入出射端に位置合わせすればよい。そのため、発光素子及び受光素子に入出射される光ビームの厳密な光軸合わせの手間が大幅に省かれ、量産性に優れている。
【0005】
近年、SiOを材料とするクラッドと、SiOとの屈折率差が大きなSiを材料とするコアとで光導波路(以下、Si光導波路とも称する。)を構成した導波路型光素子が報告されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Photonics Technology Letters vol.18,No.22,p.2392,2006年11月
【非特許文献2】Photonics Technology Letters vol.20,No.23,p.1968,2008年12月
【非特許文献3】Optics Express vol.18,No.23,p.23891,2010年11月
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許4860294号明細書
【特許文献2】米国特許5764826号明細書
【特許文献3】米国特許5960135号明細書
【特許文献4】米国特許7072541号明細書
【特許文献5】特開平8−163028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
Si光導波路は、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも非常に大きいために、光を光導波路に強く閉じ込めることができる。また、この大きな屈折率差を利用して、光を1μm程度の小さい曲率半径で曲げる曲線状光導波路を実現することができる。さらに、製造時に、Si電子デバイスでの加工技術が利用できるために、きわめて微細なサブミクロンの断面構造を実現できる。これらのことから、Si光導波路を用いることで、導波路型光素子を小型化することができる。
【0009】
しかし、Si光導波路は偏波依存性が大きい欠点があった。つまり、TE偏波とTM偏波とで、導波路特性に大きな差が生じていた。この欠点を解消する第1の方法として、Si光導波路の厚みを1μm以上とする方法がある。しかし、この方法では、Si光導波路の断面寸法が大きくなってしまい、導波路型光素子を小型化することが難しくなる。
【0010】
また、この欠点を解消する第2の方法として、Si光導波路の横断面形状を正方形状にする方法がある。確かに、この方法では、導波路型光素子の小型化と、偏波無依存性とを同時に達成することができる。しかし、横断面形状を正方形状としたSi光導波路は、幅方向の寸法誤差によりSi光導波路に大きな等価屈折率変化が引き起こされ、これにより偏波無依存性が悪化してしまう。
【0011】
この発明は、このような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、小型化と偏波無依存性とを同時に達成しつつ、幅誤差による偏波無依存性の悪化に対する耐性が従来よりも高い光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は鋭意検討の結果、厚みよりも幅が大きな2個以上の光導波路領域としての光路長調整領域を、第1及び第2湾曲光導波路のそれぞれに、少なくとも1個以上設けた光素子により、上述の目的を達成できることに想到した。
【0013】
従って、この発明の光素子は、基板の主面側に延在するクラッドと、クラッド中に設けられた光導波路型要素とで構成される光導波路を有している。光導波路は、2個の方向性結合器と、第1湾曲光導波路及び第2湾曲光導波路と、光路長調整領域とを備えている。
【0014】
方向性結合器は偏波無依存である。第1及び第2湾曲光導波路は、互いに並列されており2個の方向性結合器間を接続するとともに、互いに光路長が異なっている。
【0015】
光路長調整領域は、第1及び第2湾曲光導波路のそれぞれに少なくとも1個以上設けられ、主面に垂直な方向に測った長さである厚みよりも、主面に平行かつ光伝搬方向に垂直に測った長さである幅が大きい。
【0016】
そして、光導波路型要素を構成する材料は、クラッドの屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有している。さらに、それぞれの光路長調整領域の偏波間における光路長差を、全ての光路長調整領域について総和した値が0(ゼロ)となるように、それぞれの光路長調整領域の光路長が設定されている。
【発明の効果】
【0017】
この発明の光素子は、光導波路型要素を構成する材料を、クラッドの屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有する材料から形成しているので、方向性結合器、第1及び第2湾曲光導波路及び光路長調整領域への光の閉じ込めが強く、素子サイズの小型化を達成できる。
【0018】
また、それぞれの光路長調整領域の偏波間における光路長差を、全ての光路長調整領域について総和した値が0(ゼロ)となるように、それぞれの光路長調整領域の光路長を設定しているので、偏波無依存な方向性結合器を用いていることと相俟って、光素子を偏波無依存とすることができる。
【0019】
さらに、光路長調整領域は、主面に垂直な方向に測った長さである厚みよりも、主面に平行かつ光伝搬方向に垂直に測った長さである幅が大きい。その結果、正方形の横断面形状を有する光導波路に比較して、光路長調整領域では幅方向における光の閉じ込めが強くなる。よって、光路長調整領域は幅方向の寸法誤差に対する耐性が大きくなる。つまり、厚みよりも幅の大きな光路長調整領域を設けた分だけ、光素子において、幅方向の寸法誤差による偏波無依存性の悪化を従来に比べて抑えることができる。
【0020】
すなわち、この発明の光素子によれば、小型化を達成しつつ、幅方向の寸法誤差による偏波無依存性の悪化を従来に比べて抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は、実施形態1の光素子の構造を模式的に示す平面図であり、(B)は、(A)のA−A線に沿って取った端面図であり、(C)は、(A)のB−B線に沿って取った端面図であり、(D)は、(A)のC−C線に沿って取った端面図である。
【図2】実施形態2の光素子の概略的な構造を示す平面図である。
【図3】実施形態2の光素子の動作特性を示す特性図である。
【図4】実施形態2の光素子の動作特性を示す特性図である。
【図5】(A)は、実施形態3の光素子の構造を模式的に示す平面図であり、(B)は、(A)のA−A線に沿って取った端面図である。
【図6】実施形態3の光素子の動作特性を示す特性図である。
【図7】実施形態3の光素子の効果の説明に供する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。なお、各図において各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0023】
(実施形態1)
図1(A)は、実施形態1の光素子の構造を模式的に示す平面図である。図1(B)は、図1(A)のA−A線に沿って取った端面図である。図1(C)は、図1(A)のB−B線に沿って取った端面図である。図1(D)は、図1(A)のC−C線に沿って取った端面図である。
【0024】
なお、図1(A)において、光導波路型要素13はクラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調するために実線で描いてある。
【0025】
(構造)
光素子10は、クラッド12と、光導波路型要素13とで構成された光導波路7を有している。光導波路7は、マッハツェンダ干渉計14を備えている。マッハツェンダ干渉計14は、偏波無依存な、第1方向性結合器16及び第2方向性結合器18と、第1湾曲光導波路20a及び第2湾曲光導波路20bと、光路長調整領域22とを備えている。また、光導波路7は、任意的な要素として、入力部24と、出力部26とを備えている。以降、第1湾曲光導波路20a及び第2湾曲光導波路20bからなる構造体を、アーム部20と称する。
【0026】
クラッド12は、基板8の主面8a側に一様な厚みで延在する膜体である。より詳細には、クラッド12は、主面8a上に設けられており、光導波路型要素13を内部に包含している。クラッド12を構成する材料は、例えば、屈折率が約1.44のSiOとする。基板8の主面8aから測ったクラッド12の厚みは、例えば、約3μmとする。そして、主面8aから測った厚みが約1.5μmの深さに光導波路型要素13が配置されている。光導波路7を伝搬する光の不所望な基板8への結合を防ぐためには、光導波路型要素13と基板8との間に1μm以上の厚みのクラッド12を介在させることが好ましい。基板8は、例えば、Siを材料とする。
【0027】
光導波路7を構成する入力部24、第1方向性結合器16、アーム部20、第2方向性結合器18、及び出力部26は、この順番で直列に接続されている。より詳細には、入力部24の第1及び第2入力用光導波路24a及び24bの一端側は、クラッド12の側面から露出している。入力部24の第1及び第2入力用光導波路24a及び24bの他端側は、第1方向性結合器16の第1及び第2光導波路16a及び16bの一端側にそれぞれ接続されている。第1方向性結合器16の第1及び第2光導波路16a及び16bの他端側は、アーム部20の第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの一端側にそれぞれ接続されている。アーム部20の第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの他端側は、第2方向性結合器18の第3及び第4光導波路18a及び18bの一端側にそれぞれ接続されている。第2方向性結合器18の第3及び第4光導波路18a及び18bの他端側は、出力部26の第1及び第2出力用光導波路26a及び26bの一端側に接続されている。出力部26の第1及び第2出力用光導波路26a及び26bの他端側は、クラッド12の側面から露出している。
【0028】
光導波路型要素13の構成要素は、断面矩形状のチャネル型光導波路で構成されている。また、光導波路型要素13が備えるマッハツェンダ干渉計14の構成要素は、クラッド12の屈折率(約1.44)よりも40%以上大きな屈折率を有する材料で形成されている。これらの光導波路型要素13は、例えば、屈折率が約3.48のSiを材料として形成する。
【0029】
クラッド12の屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有する材料で光導波路型要素13を形成することにより、光導波路7内に光を強く閉じ込めることができる。その結果、例えば、曲率半径が1μm程度の湾曲光導波路を形成できる等、光素子10を小型化することができる。
【0030】
また、光路長調整領域22を除いて、光導波路型要素13は、光伝搬方向に垂直な横断面形状が互いに等しい矩形状とする。より詳細には、光路長調整領域22を除いた光導波路型要素13の基板8の主面8aに垂直に測った長さである厚みをDとし、基板8の主面8aに平行かつ光伝搬方向に垂直な方向に測った長さである幅をWとする。この実施形態に示す例では、Dは、好ましくは例えば約300nmとする。また、Dを300nmとした場合に、Wは約285nmとする。D及びWをこれらの値に設定することで、第1及び第2方向性結合器16及び18を偏波無依存で動作させることができる。
【0031】
以下、光導波路7の構成要件について順に説明する。
【0032】
入力部24は、第1入力用光導波路24aと第2入力用光導波路24bとを備えている。第1入力用光導波路24aのクラッド12の側面から露出した一端は、入力端として機能する。この入力端から波長の異なる第1光Lt1及び第2光Lt2の混合光が入力される。ここで、第1光Lt1の波長λ1を1.31μmとし、第2光Lt2の波長λ2を1.49μmとする。第2入力用光導波路24bは、ダミーの光導波路であり、実質的に光素子10の動作には関係しない。
【0033】
第1方向性結合器16は、第1光導波路16aと第2光導波路16bとを備えている。第1及び第2光導波路16a及び16bは、立体形状が等しい直線状に形成されている。第1及び第2光導波路16a及び16bは、光結合可能な距離を隔てて互いに平行に配置されている。
【0034】
第1方向性結合器16の光伝搬方向に沿って測った幾何学的長さは、第2光Lt2に関する結合長の1/2とする。第1方向性結合器16をこの長さとすることにより、第1光導波路16aの伝搬終了時に、第2光Lt2の半分のパワーが第2光導波路16bへと移行する。一方、第1光Lt1は、パワー移行を生じることなく、第1光導波路16aを伝搬する。
【0035】
ここで、「結合長」とは、互いに平行な2本の直線状光導波路からなる方向性結合器において、一方の光導波路から入力された光が、他方の光導波路に完全にパワー移行するために要する、方向性結合器の光伝播方向に沿った幾何学的長さである。
【0036】
なお、この実施形態では、第1方向性結合器16の幾何学的長さを第2光Lt2の結合長を基にして設計している。これは、波長の長い第2光Lt2(λ2=1.49μm)の方が、波長の短い第1光Lt1(λ1=1.31μm)よりも第1方向性結合器16における結合が強いため、第1方向性結合器16の全長を短くできるからである。なお、後述する第2方向性結合器18も、第1方向性結合器16と同様に、第2光Lt2の結合長を基にして設計されている。
【0037】
アーム部20は、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bを備えている。第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bは、互いに光路長が異なるとともに、所定の曲率で湾曲している。第1湾曲光導波路20aは、第2湾曲光導波路20bよりも光路長が長い。なお、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの光路長の決定法については後述する。
【0038】
ここで、「光路長」とは、一般に、光導波路の幾何学的な長さPを、ある波長の光が感じる光導波路の等価屈折率qで補正した光学的な長さである。光路長をSとすると、SはP×qで与えられる。なお、以降、特に断らない限り、幾何学的な長さのことを単に「長さ」と称する。
【0039】
第1湾曲光導波路20aは、4個の湾曲領域20aC1〜20aC4と、2個の直線領域20aS1及び20aS2とを備えている。4個の湾曲領域20aC1〜20aC4は、一定の曲率で湾曲するともに、長さが互いに等しく形成された光導波路である。同様に、2個の直線領域20aS1及び20aS2は、長さが互いに等しく、直線状に形成された光導波路である。直線領域20aS1及び20aS2には、後述する第1光路長調整領域22に含まれるサブ領域22a及び22bがそれぞれ設けられている。
【0040】
湾曲領域及び直線領域は、第1方向性結合器16側から第2方向性結合器18にかけて、湾曲領域20aC1、直線領域20aS1、湾曲領域20aC2、湾曲領域20aC3、直線領域20aS2及び湾曲領域20aC4の順で互いに接続されている。より詳細には、湾曲領域20aC1から湾曲領域20aC2にかけて、第2湾曲光導波路20bから離間する方向に、光導波路が配置されている。また、湾曲領域20aC3から湾曲領域20aC4にかけて、第2湾曲光導波路20bに接近する方向に、光導波路が配置されている。
【0041】
第2湾曲光導波路20bは、2個の湾曲領域20bC1及び20bC2と、1個の直線領域20bS1とを備えている。2個の湾曲領域20bC1及び20bC2は、上述した第1湾曲光導波路20aの湾曲領域20aC1〜20aC4と、曲率及び長さが等しく形成された光導波路である。直線領域20bS1は、直線状に形成された光導波路である。直線領域20bS1には、後述する第2光路長調整領域22が設けられている。
【0042】
湾曲領域及び直線領域は、第1方向性結合器16側から第2方向性結合器18にかけて、湾曲領域20bC1、直線領域20bS1及び湾曲領域20bC2の順で互いに接続されている。より詳細には、湾曲領域20bC1では、第1湾曲光導波路20aから離間する方向に光導波路が配置されている。また、湾曲領域20bC2では、第1湾曲光導波路20aに接近する方向に、光導波路が配置されている。
【0043】
ここで、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの光路長の決定法を簡単に説明する。第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの光路長は、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの光路長差ΔS20が以下の2条件を満たすように決定する。その条件とは、正の整数kに対して、(条件1)第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bを伝播した後の第1光Lt1の位相差が(2k+1)πとなること、及び、(条件2)第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bを伝播した後の第2光Lt2の位相差が2kπとなること、である。
【0044】
第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの光路長を上述のように設定すれば、アーム部20を伝搬後の第2光Lt2は位相が一致し、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bから等しい強度で出力される。一方、アーム部20を伝搬後の第1光Lt1は位相が反転し、第1湾曲光導波路20aから主に出力される。
【0045】
なお、第1湾曲光導波路20aの光路長を求めるに当たっては、第1光路長調整領域22の光路長を考慮する必要がある。すなわち、第1湾曲光導波路20aの光路長は、(第1光路長調整領域22の光路長)+(第1光路長調整領域22以外の第1湾曲光導波路20aの光路長)で与えられる。
【0046】
同様に、第2湾曲光導波路20bの光路長を求めるに当たっては、第2光路長調整領域22の光路長を考慮する必要がある。すなわち、第2湾曲光導波路20bの光路長は、(第2光路長調整領域22の光路長)+(第2光路長調整領域22以外の第2湾曲光導波路20bの光路長)で与えられる。
【0047】
再び、光素子10の構成要素の説明に戻ると、第2方向性結合器18は、第3光導波路18aと第4光導波路18bとを備えている。第3及び第4光導波路18a及び18bは、第1及び第2光導波路16a及び16bとそれぞれ立体形状が等しい直線状に形成されている。第3及び第4光導波路18a及び18bは、第1及び第2光導波路16a及び16b間の距離と等しい距離を隔てて互いに平行に配置されている。
【0048】
第2方向性結合器18の光伝搬方向に沿って測った長さは、第1方向性結合器16と同様に、第2光Lt2に関する結合長の1/2とする。第2方向性結合器18をこの長さとすることにより、第2方向性結合器18の伝搬終了後、第2光Lt2のパワーは第3光導波路18aから完全に第4光導波路18bへと移行する。一方、第1光Lt1は、パワー移行をあまり生じることなく、第3光導波路18aを伝搬する。
【0049】
出力部26は、第1出力用光導波路26aと第2出力用光導波路26bとを備えている。第1出力用光導波路26aから第1光Lt1が出力され、第2出力用光導波路26bから第2光Lt2が出力される。
【0050】
光路長調整領域22は、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bのそれぞれに少なくとも1個以上設けられる。この実施形態に示す例では、第1湾曲光導波路20aに2個のサブ領域22a及び22bに分割された第1光路長調整領域22を備え、第2湾曲光導波路20bに第2光路長調整領域22を備えている。つまり、この光素子10には合計2個の光路長調整領域が設けられている。光路長調整領域22は、厚みよりも幅が大きな矩形状の横断面形状を有している。なお、光路長調整領域22の個数や長さの決定法は(光路長調整領域の設計条件)の項で詳述する。
【0051】
第1光路長調整領域22は、第1湾曲光導波路20aに、互いに離間した2個のサブ領域22a及び22bを備える。より詳細には、第1湾曲光導波路20aの直線領域20aS1にサブ領域22aを備え、直線領域20aS2にサブ領域22bをそれぞれ備える。つまり、両サブ領域22a及び22bは不連続であり、両者の間には、湾曲領域20aC2及び20aC3が介在している。これらのサブ領域22a及び22bは、幅と厚みとが一致している。
【0052】
図1(A)及び(C)を参照すると、サブ領域22a及び22bの長さは、それぞれL/2である。よって、第1光路長調整領域22の全長は、サブ領域22a及び22bの長さの和であるLとなる。この実施形態に示す例では、Lは、好ましくは例えば、約4.8μmとする。
【0053】
また、サブ領域22a及び22bにおける光導波路型要素13の厚みは、他の部分における光導波路型要素13と等しく、それぞれD(300nm)とする。さらに、サブ領域22a及び22bにおける光導波路型要素の幅を、それぞれWとする。ここで、Wは、W>Dを満たすような大きさとする。この実施形態に示す例では、Wは、好ましくは例えば、約400nmとする。WをDよりも大きくすることにより、第1光路長調整領域22の幅方向における光の閉じ込め能力を向上することができる。その結果、第1光路長調整領域22における幅方向の寸法誤差に対する耐性を高めることができる。これにより、第1光路長調整領域22の幅方向の寸法誤差に起因する偏波無依存性の悪化を従来に比べて抑えることができる。
【0054】
第2光路長調整領域22は、第2湾曲光導波路20bの直線領域20bS1に設けられている。
【0055】
図1(A)及び(D)を参照すると、第2光路長調整領域22の長さはLである。この実施の形態に示す例では、Lは、好ましくは例えば、約3.4μmとする。
【0056】
また、第2光路長調整領域22における光導波路型要素13の厚みは、他の部分における光導波路型要素13と等しくD(300nm)とする。さらに、第2光路長調整領域22における光導波路型要素の幅は、Wとする。ここで、Wは、W>Dを満たすような大きさとする。この実施の形態に示す例では、Wは、好ましくは例えば、約500nmとする。WをDよりも大きくすることにより、第1光路長調整領域22と同様の理由により、第2光路長調整領域22における幅方向の寸法誤差に対する耐性を高めることができる。これにより、第2光路長調整領域22の幅方向の寸法誤差に起因する偏波無依存性の悪化を従来に比べて抑えることができる。
【0057】
詳しくは(光路長調整領域の設計条件)の項で詳述するが、それぞれの光路長調整領域22の長さL及びLは、光路長調整領域22の偏波間における光路長差を、全ての光路長調整領域22及び22について総和した値が0(ゼロ)となるよう設定されている。長さL及びLをこのように設定することにより、第1光Lt1と第2光Lt2のそれぞれについて、アーム部20において、後述する干渉条件をTE偏波とTM偏波とで等しくすることができる。つまり、アーム部20を偏波無依存とすることができる。上述のように第1及び第2方向性結合器16及び18は偏波無依存であるので、アーム部20を偏波無依存とすることにより、光素子10全体が偏波無依存となる。
【0058】
なお、この実施形態に示す例では、光素子10は、Si基板上にSiO層とSi層とがこの順序で積層されたSOI基板を利用して作成される。すなわち、最上層のSi層を従来公知のドライエッチング法等でパターニングして、光導波路型要素13を作成する。その後に、光導波路型要素13を埋め込むように、従来公知のCVD(Chemical Vapor Deposition)法等で、SOI基板の全面にSiO層を堆積することで光導波路7を形成し、光素子10を完成する。
【0059】
(動作)
図1を参照して、光素子10の動作について簡単に説明する。入力部24に入力された第1及び第2光Lt1及びLt2の混合光は、第1入力用光導波路24aを伝搬して第1方向性結合器16に至る。
【0060】
第1方向性結合器16は、上述のように、第2光Lt2の結合長の1/2の長さに設定されている。その結果、第2光Lt2(λ2=1.49μm)は、第1及び第2光導波路16a及び16b間の相互作用により、第1方向性結合器16の伝搬後、第2光導波路16bに半分のパワーが移行する。一方、第1光Lt1(λ1=1.31μm)は、パワー移行をあまり生じることなく第1光導波路16aを伝搬する。
【0061】
また、第1方向性結合器16を構成する第1及び第2光導波路16a及び16bの幅Wは約285nmであり、厚さDは約300nmである。その結果、第1及び第2光Lt1及びLt2に関して、第1方向性結合器16は偏波無依存で動作する。つまり、第1光Lt1のTM偏波及びTE偏波は、第1方向性結合器16において等しい挙動を示す。同様に、第2光Lt2のTM偏波及びTE偏波も、第1方向性結合器16において等しい挙動を示す。
【0062】
続いて、第1及び第2光Lt1及びLt2はアーム部20を伝搬する。アーム部20を構成する第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの光路長差ΔS20は、上述したように設定されている。その結果、アーム部20を伝搬して位相が一致した第2光Lt2は、第2方向性結合器18の第3及び第4光導波路18a及び18bに等分配される。一方、アーム部20を伝搬して位相が反転した第1光Lt1は、第2方向性結合器18の第3光導波路18aに主に入力される。
【0063】
上述のように、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bには、第1及び第2光路長調整領域20及び20がそれぞれ設けられている。その結果、アーム部20は、偏波無依存で動作する。
【0064】
続いて、第1及び第2光Lt1及びLt2は、第2方向性結合器18に入力される。第2方向性結合器18は、上述のように、第2光Lt2の結合長の1/2の長さに設定されている。その結果、第2光Lt2は、第2方向性結合器18の伝搬後、第4光導波路18bに全てのパワーが移行して、第2出力用光導波路26bからクロス状態で出力される。一方、第1光Lt1は、わずかなパワー移行を生じ第3光導波路18aを経て、第1出力用光導波路26aからバー状態で出力される。
【0065】
また、第2方向性結合器18は、第1方向性結合器16と同様に構成されている。よって、第1及び第2光Lt1及びLt2に関して、第2方向性結合器18は偏波無依存で動作する。
【0066】
ここで、「クロス状態で出力」とは、第1入力用光導波路24aから入力された光が、第1及び第2方向性結合器16及び18の作用により、第2及び第4光導波路16b及び18bにパワーが移行し、第2出力用光導波路26bから出力されることを意味する。また、「バー状態で出力」とは、第1入力用光導波路24aから入力された光が、第2及び第4光導波路16b及び18bへのパワー移行が発生せず、第1出力用光導波路26aから出力されることを意味する。
【0067】
このように、光素子10は、第1入力用光導波路24aから入力された第1及び第2光Lt1及びLt2の混合光を、偏波無依存で波長分離して、第1光Lt1を第1出力用光導波路26aから出力し、及び第2光Lt2を第2出力用光導波路26bから出力する。
【0068】
なお、光の伝搬に関しては逆過程が成り立つことから、波長λ1(1.31μm)の第1光Lt1が、上述とは反対の経路で伝搬する場合も成り立つ。つまり、第1光Lt1が第1出力用光導波路26aから光素子10に入力され、第1入力用光導波路24aから出力される場合も同様に成り立つ。この場合、第1入力用光導波路24aに光ファイバを接続し、第1出力用光導波路26aに発光素子を接続し、及び第2出力用光導波路26bに受光素子を接続すれば、光素子10、受光素子及び発光素子で、上り通信に第1光Lt1を用い、下り通信に第2光Lt2を用いるONUが構成される。
【0069】
(光路長調整領域の設計条件)
以下、光路長調整領域の設計条件について説明する。
【0070】
光素子10を伝搬する第1及び第2光Lt1及びLt2を波長分離して、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力させるためには、第1及び第2光Lt1及びLt2の両者について、下記の式(1)及び式(2)で表される干渉条件が成り立つ必要がある。
【0071】
Σ[λ1]×L=m1×λ1/2・・・(1)
Σ[λ2]×L=m2×λ2/2・・・(2)
ここで、uは、光路長調整領域を区別する指標であり、2以上の整数である。Σは、全てのuについての総和を意味する。n[λ1]は、第1光Lt1に関する第u光路長調整領域の等価屈折率である。n[λ2]は、第2光Lt2に関する第u光路長調整領域の等価屈折率である。Lは、第u光路長調整領域の長さである。m1及びm2は干渉次数であり、正の整数である。
【0072】
式(1)及び式(2)において、m1とm2との差が0を含む偶数の場合、第1及び第2光Lt1及びLt2は、波長分離されずに混合光のまま、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bのどちらかから出力される。一方、m1とm2との差が奇数の場合、第1及び第2光Lt1及びLt2は、波長分離されて、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bの両者から出力される。
【0073】
第1及び第2光Lt1及びLt2の両者についてアーム部20を偏波無依存で動作させるためには、式(1)がTE偏波とTM偏波とで等しくなり、かつ、式(2)がTE偏波とTM偏波とで等しくなる必要がある。つまり、下記の式(3)及び式(4)が成り立つ必要がある。
【0074】
ΣΔn[λ1]×L=0・・・(3)
ΣΔn[λ2]×L=0・・・(4)
ここで、Δn[λ1]は、波長λ1の光(第1光Lt1)に関する第u光路長調整領域の偏波間の等価屈折率差であり、下記式(5)で与えられる。
【0075】
Δn[λ1]=(n[TEλ1]−n[TMλ1])・・・(5)
ここで、n[TEλ1]は、波長λ1の光(第1光Lt1)のTE偏波に関する第u光路長調整領域の等価屈折率である。また、n[TMλ1]は、波長λ1の光(第1光Lt1)のTM偏波に関する第u光路長調整領域の等価屈折率である。
【0076】
同様に、式(4)のΔn[λ2]は、波長λ2の光(第2光Lt2)に関する第u光路長調整領域の偏波間の等価屈折率差であり、下記式(6)で与えられる。
【0077】
Δn[λ2]=(n[TEλ2]−n[TMλ2])・・・(6)
ここで、n[TEλ2]は、波長λ2の光(第2光Lt2)のTE偏波に関する第u光路長調整領域の等価屈折率である。また、n[TMλ2]は、波長λ2の光(第2光Lt2)のTM偏波に関する第u光路長調整領域の等価屈折率である。
【0078】
式(3)及び式(4)は、それぞれの光路長調整領域の長さLが、光路長調整領域の偏波間における光路長差Δn[λ1]及びΔn[λ2]を、全ての光路長調整領域について総和した値が0(ゼロ)となるように設定されていることを表している。
【0079】
よって、式(3)及び式(4)の両者を成り立たせるようにL、つまり第u光路長調整領域の長さを決定すれば、アーム部20を偏波無依存とすることができる。これが、uが任意の場合に成り立つ、最も一般的な場合である。
【0080】
(u=2の場合)
ところで、全ての光路長調整領域について、波長λ1及びλ2によらず偏波間の等価屈折率差が等しい場合、つまり、Δn[λ1]=Δn[λ2]の条件が全てのuについて成り立つ場合(以下、簡単化条件と称する。)には、式(3)及び式(4)は等しくなる。この場合、式(3)及び式(4)のどちらか一方を解けばよい。なお、簡単化条件は、光路長調整領域の等価屈折率nに関する波長分散が小さい場合に成り立つ。
【0081】
簡単化条件が成立すれば、式(3)又は式(4)は、u=2の場合、つまり、光路長調整領域が2個の場合に、特に簡単にLを求めることができる。以下に、式(3)を用いた場合を例示する。式(3)を、u=2の場合について展開すると、下記式(7)が得られる。
【0082】
Δn[λ1]×L+Δn[λ1]×L=0・・・(7)
式(7)から下記式(8)が得られる。
【0083】
=−(Δn[λ1]/Δn[λ1])×L・・・(8)
ここで、Δn[λ1]及びΔn[λ1]は、光路長調整領域の横断面寸法及び屈折率等から解析的に求まるので、式(8)により、2個の光路長調整領域の長さL及びLの比率が求まる。長さL及びLの比率が求まれば、式(1)に適当なm1を代入することにより、長さL及びLを決定することができる。
【0084】
u=2の場合とは、例えば、この実施形態で説明した光素子10に対応する。光路長調整領域の個数を2個とするための簡単化条件の成否は、主に、光導波路型要素13の断面構造により決まる。この実施形態で説明したように、光導波路型要素13を横断面形状が矩形状のチャネル型光導波路とする場合には、簡単化条件が成り立ち、光路長調整領域の個数を2個とすることができる。
【0085】
(u=3以上の場合)
一方、波長λ1とλ2とで、偏波間の等価屈折率差が異なる光路長調整領域が存在する場合、つまり、簡単化条件が不成立の場合には、式(3)及び式(4)を連立して解く必要がある。
【0086】
簡単化条件が不成立のとき、式(3)及び式(4)は、u=3の場合、つまり、光路長調整領域が3個の場合に、特に簡単にLを求めることができる。すなわち、Δn[λ1]≠Δn[λ2]が成り立つuが存在する場合に、アーム部20を偏波無依存で動作させるためには、3個以上の光路長調整領域が必要となる。
【0087】
u=3の場合、式(3)及び式(4)は、それぞれ下記式(9)及び(10)のように展開できる。
【0088】
Δn[λ1]×L+Δn[λ1]×L+Δn[λ1]×L=0・・・(9)
Δn[λ2]×L+Δn[λ2]×L+Δn[λ2]×L=0・・・(10)
ここで、Δn[λ1]、Δn[λ1]及びΔn[λ1]と、Δn[λ2]、Δn[λ2]及びΔn[λ2]とは、光路長調整領域の横断面寸法及び屈折率等から解析的に求まるので、式(9)及び式(10)により、3個の光路長調整領域の長さL、L及びLの比率を求めることができる。長さL、L及びLの比率が求まれば、式(1)又は式(2)に適当なm1及びm2を入力することにより、長さL、L及びLを決定することができる。
【0089】
u=3の場合とは、例えば、後述する実施形態3で説明する光素子40に対応する。簡単化条件が成り立たない場合に、光路長調整領域の個数を3個とする必要がある。簡単化条件が成り立たない場合とは、例えば、実施形態3で後述するように光導波路型要素13が、基板8の主面8aに平行に延在する平面型光導波路42(図5参照)の上面側から突出する断面凸状のリッジ型導波路として構成されている場合が挙げられる。
【0090】
(変形例)
続いて、光素子10の種々の変形例について説明する。
【0091】
(変形例1)
この実施形態においては、マッハツェンダ干渉計14の構成要素の厚みDを300nmとした場合について説明した。しかし、これらの構成要素の厚みDは、200〜500nmの範囲から、設計に応じた好適な値を選択することができる。これらの構成要素の厚みが200nm以上であれば、厚み方向の光の閉じ込め能力を実用上許容できる程度に保つことができる。また、これらの構成要素の厚みが500nm以下であれば、これらの構成要素の断面寸法を実用上許容できる程度に小型に保つことができ、小型な光素子10を得ることができる。
【0092】
(変形例2)
この実施形態においては、光素子10に2個又は3個の光路長調整領域を設ける場合について説明した。しかし、光路長調整領域の個数は、上述の式(3)及び式(4)を満たすことを条件として、4個以上であってもよい。この場合であっても、アーム部20を、偏波無依存で動作させることができる。
【0093】
(変形例3)
この実施形態においては、第1及び第2光路長調整領域22及び22をアーム部20の直線領域20aS1、20aS2及び20bS1に設ける場合について説明した。しかし、光路長調整領域は、湾曲領域20aC1〜20aC4及び20bC1〜20bC2に設けてもよい。ただし、この場合、直線領域と湾曲領域とでは等価屈折率が異なっている可能性があるので、上述の式(3)及び式(4)の再計算が必要となる場合もある。
【0094】
(変形例4)
この実施形態においては、第1光路長調整領域22を、2個のサブ領域22a及び22bに分割した場合について説明した。しかし、光路長調整領域を複数のサブ領域に分割する場合、その分割数に制限はない。光路長調整領域は、設計に応じて任意の個数のサブ領域に分割できる。
【0095】
(変形例5)
この実施形態においては、第1光路長調整領域22を構成する2個のサブ領域22a及び22bの長さを等しくした場合について説明した。しかし、1個の光路長調整領域に含まれる複数のサブ領域の長さを互いに等しくする必要は無い。サブ領域の長さがそれぞれ異なっていたとしても、サブ領域の長さの総和、すなわち光路長調整領域の全長が、上述の式(3)及び式(4)を満たせばよい。
【0096】
(変形例6)
この実施形態においては、第1光路長調整領域22の幅Wを400nmとし、第2光路長調整領域22の幅Wを500nmとした場合について説明した。しかし、第1及び第2光路長調整領域22及び22の幅はこれらの値に限定されず、上述の式(3)及び式(4)を満たす範囲で任意の値を選択できる。
【0097】
(変形例7)
この実施形態においては、光素子10を伝搬させる第1及び第2光Lt1及びLt2の波長がそれぞれ1.31μm及び1.49μmの場合について説明した。しかし、光素子10を伝搬させる第1及び第2光Lt1及びLt2の波長は、これらの値に限定されない。式(1)〜式(4)を満足する範囲で任意の波長を組み合わせて用いることができる。
【0098】
(変形例8)
この実施形態においては、第1及び第2方向性結合器16及び18を偏波無依存とするために、第1〜第4光導波路16a,16b,18a及び18bの断面寸法を、厚みD(約300nm)及び幅W(約285nm)とした。しかし、第1及び第2方向性結合器16及び18は、偏波無依存で動作するものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、特開2011−43567号公報に記載されたような、光導波路間の距離と光導波路の寸法をクラッドの屈折率に対して最適化することにより偏波無依存で動作する方向性結合器を用いてもよい。
【0099】
(変形例9)
この実施形態では、光素子10を容易に製造するために、光路長調整領域22を除く光導波路型要素13の横断面寸法を、第1及び第2方向性結合器16及び18と等しくした。しかし、製造時の困難さを許容できれば、光路長調整領域22と第1及び第2方向性結合器16及び18とを除く光導波路型要素13の横断面寸法は、設計に応じて適当な値を選択できる。
【0100】
特に、光路長調整領域22と第1及び第2方向性結合器16及び18とを除く光導波路型要素13の幅と厚みとを「幅W>厚みD」なる関係が成り立つように設定すれば、幅方向における光の閉じ込め能力が高まり、幅方向の寸法誤差に対する耐性が高まる。
【0101】
(実施形態2)
次に、図2〜図4を参照して、実施形態2の光素子について説明する。図2は、光素子の概略的な構造を示す平面図である。図3及び図4は、光素子の動作特性を示す特性図である。
【0102】
なお、図2において、第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2と、入力部24と、出力部26とは、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調するために実線で描いてある。
【0103】
(構造)
図2を参照すると、光素子30は、いわば、実施形態1の光素子10を直列に2個接続したものに相当する。よって、図2において図1と同様の構成要素には同符号を付して、重複する説明を省略する。
【0104】
より詳細には、光素子30は、第1光素子としての第1マッハツェンダ干渉計14−1、及び第2光素子としての第2マッハツェンダ干渉計14−2を備えている。また、光素子30は、任意的な構成要素として、入力部24及び出力部26を備えている。
【0105】
なお、第1マッハツェンダ干渉計14−1は、実施形態1のマッハツェンダ干渉計14と同様に構成されている。また、第2マッハツェンダ干渉計14−2も、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの長短関係が逆転している点を除いて、実施形態1のマッハツェンダ干渉計14と同様に構成されている。そこで、マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2の構成要素には、マッハツェンダ干渉計14と同じ符号を付与し、符号の後に「−1」又は「−2」を付与することにより、第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2を区別する。
【0106】
入力部24の第1入力用光導波路24aが、第1マッハツェンダ干渉計14−1の第1光導波路16a−1に接続されている。同様に、入力部24の第2入力用光導波路24bが、第1マッハツェンダ干渉計14−1の第2光導波路16b−1に接続されている。
【0107】
また、第1マッハツェンダ干渉計14−1の第3光導波路18a−1が、第2マッハツェンダ干渉計14−2の第1光導波路16a−2に接続されている。同様に、第1マッハツェンダ干渉計14−1の第4光導波路18b−1が、第2マッハツェンダ干渉計14−2の第2光導波路16b−2に接続されている。
【0108】
さらに、第2マッハツェンダ干渉計14−2の第3光導波路18a−2が、出力部26の第1出力用光導波路26aに接続されている。同様に、第2マッハツェンダ干渉計14−2の第4光導波路18b−2が、出力部26の第2出力用光導波路26bに接続されている。
【0109】
ここで、第1マッハツェンダ干渉計14−1のアーム部20−1において、第1及び第2湾曲光導波路20a−1及び20b−1の光路長をそれぞれS(20a−1)及びS(20b−1)とする。さらに、第1及び第2湾曲光導波路20a−1及び20b−1間の光路長差をΔS[1]とし、ΔS[1]を、S(20a−1)−S(20b−1)とする。
【0110】
同様に、第2マッハツェンダ干渉計14−2のアーム部20−2において、第1及び第2湾曲光導波路20a−2及び20b−2の光路長をそれぞれS(20a−2)及びS(20b−2)とする。さらに、第1及び第2湾曲光導波路20a−2及び20b−2間の光路長差をΔS[2]とし、ΔS[2]を、S(20a−2)−S(20b−2)とする。
【0111】
この時、ΔS[1]とΔS[2]とは、絶対値が等しく符号が逆転している。つまり、第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2は、アーム部20−1及び20−2における光路長差であるΔS[1]とΔS[2]とが、絶対値が等しく、符号が逆転するように直列に配置されている。
【0112】
発明者らの検討の結果、第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2をこのような関係で配置することにより、光素子30の第2出力用光導波路26bからクロス状態で出力される第2光Lt2の波長ズレに対する安定度が高まる。つまり、図3において、クロス出力を表す曲線II及びIVの波長1.47〜1.55μmに存在するピークの平坦領域を光素子10に比べて幅広くすることができる。
【0113】
(シミュレーション)
続いて、図3及び図4を参照して、光素子30のシミュレーションについて説明する。
【0114】
図3は、光素子30の第1入力用光導波路24aから、波長を1.2〜1.6μmの範囲で変化させたTE偏波光及びTM偏波光を入力したときに、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の強度を、有限要素法により求めた特性図である。図3の縦軸は、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の強度(任意単位)である。横軸は、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の波長(μm)である。
【0115】
図3には、4本の曲線が描かれており、曲線Iは、第1出力用光導波路26aから出力されるTE偏波の強度、つまりバー状態で出力されるTE偏波の強度を示している。曲線IIは、第2出力用光導波路26bから出力されるTE偏波の強度、つまりクロス状態で出力されるTE偏波の強度を示している。曲線IIIは、第1出力用光導波路26aから出力されるTM偏波の強度、つまりバー状態で出力されるTM偏波の強度を示している。曲線IVは、第2出力用光導波路26bから出力されるTM偏波の強度、つまりクロス状態で出力されるTM偏波の強度を示している。
【0116】
図3を参照すると、バー状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線Iと、バー状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IIIとは、よく一致している。また、クロス状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線IIと、クロス状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IVとは、よく一致している。このことから、光素子30は、偏波無依存で動作していることが判る。
【0117】
なお、このシミュレーションでは、光素子30を構成する第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2は、実施形態1のマッハツェンダ干渉計14と同様の寸法を有していると仮定した。
【0118】
図4は、図3に比べてより現実に近い計算方法で行われたシミュレーション結果を示している。すなわち、図4のシミュレーションでは、図3の有限要素法に代えて、3次元FDTD(Finite Difference Time Domain)法により計算を行っている。
【0119】
図4の縦軸は、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の強度(dB)である。横軸は、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の波長(μm)である。図4に描かれた曲線I〜曲線IVの4本の曲線は、図3の曲線I〜曲線IVと同様の意味を表す。
【0120】
図4を参照すると、バー状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線Iと、バー状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IIIとは、よく一致している。また、クロス状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線IIと、クロス状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IVとは、よく一致している。このことから、光素子30は、偏波無依存で動作していることが判る。
【0121】
なお、このシミュレーションでは、光素子30を構成する第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2は、光路長調整領域22−1及び22−2の長さを除いて、実施形態1のマッハツェンダ干渉計14と同様の寸法を有していると仮定した。より詳細には、このシミュレーションでは、光路長調整領域22−1及び22−2の第1光路長調整領域22−1及び22−2の長さを4.4μmと仮定し、及び第2光路長調整領域22−1及び22−2の長さを3.1μmと仮定した。光路長調整領域22−1及び22−2の長さをこのように設定することにより、曲線II及びIVで表されるクロス出力のピーク波長を1.49μmとすることが可能となる。
【0122】
また、図3においては、それぞれの偏波に対しての光路長調整領域の等価屈折率を有限要素法により計算したが、図4では、Siの屈折率を3.48と仮定し及びSiOの屈折率を1.44と仮定した。
【0123】
(変形例)
続いて、光素子30の種々の変形例について説明する。
【0124】
(変形例1)
この実施形態においては、光素子30を、2段に渡り直列に接続された実施形態1の光素子10で構成した場合について説明した。しかし、光素子10の接続段数は3段以上でもよい。
【0125】
(変形例2)
この実施形態においては、ΔS[1]及びΔS[2]の符号が逆転するように、第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2を配置した場合について説明した。しかし、クロス状態で出力される第2光Lt2の波長ズレに対する安定度が若干低下することを許容できれば、ΔS[1]及びΔS[2]の符号が同符号となるように、第1及び第2マッハツェンダ干渉計14−1及び14−2を配置してもよい。
【0126】
(実施形態3)
次に、図5〜図7を参照して、実施形態3の光素子について説明する。図5(A)は、実施形態3の光素子の構造を模式的に示す平面図である。図5(B)は、図5(A)のA−A線に沿って取った端面図である。図6は、光素子の動作特性を示す特性図である。図7は、光素子の効果の説明に供する特性図である。
【0127】
なお、図5(A)において、第1及び第2方向性結合器16及び18と、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bと、光路長調整領域44とは、クラッド12に覆われているために、直接目視することはできないが、強調するために実線で描いてある。
【0128】
(構造)
この実施形態の光素子40は、(1)3個の光路長調整領域を備えている点、及び、(2)光導波路型要素がリッジ型光導波路として構成されている点を除き、実施形態1の光素子10と同様に構成されている。従って、図5において、図1と同様の構成要素には同符号を付し、また、符号を省略してその説明を省略することもある。
【0129】
この実施形態の光素子40では、上述したように簡単化条件が成り立たない。つまり、光素子40では、波長λ1とλ2とで、偏波間の等価屈折率差が大きく異なる光路長調整領域が存在する。その結果、光素子40を偏波無依存で動作させるためには少なくとも3個の光路長調整領域が必要となる。
【0130】
以下、特に光素子10との相違点を中心にして光素子40の構造について説明する。光素子40は、クラッド12中に設けられ、基板8の主面8aに平行に延在する平面型光導波路42を備えている。平面型光導波路42は、厚みが一定であり、光導波路型要素13と同じ材料により、光導波路型要素13と一体に形成された平面型光導波路である。ここで、平面型光導波路42の厚みは、好ましくは例えば、約150nmとする。また、平面型光導波路42を構成する材料は、Siとする。
【0131】
このような構造の平面型光導波路42を備えている結果、光素子40において、光導波路型要素13は、平面型光導波路42の上面42a側から突出する断面凸状のリッジ型光導波路として構成されている。ここで、光導波路型要素13の平面型光導波路42の上面42aから測った厚みDは、好ましくは約300nmとする。また、光導波路型要素13の幅Wは、実施形態1の光素子と同様に、好ましくは約285nmとする。
【0132】
光素子40は、3個の光路長調整領域として、第1〜第3光路長調整領域44〜44を備えている。
【0133】
第1光路長調整領域44は、光素子10の場合と同様に、第1湾曲光導波路20aに、2個に分割され、互いに離間したサブ領域44a及び44bを備える。より詳細には、サブ領域44a及び44bは、それぞれ、第1湾曲光導波路20aの直線領域20aS1及び20aS2に設けられている。
【0134】
第2光路長調整領域44は、光素子10の場合と同様に、第2湾曲光導波路20bの直線領域20bS1に連続した1個の領域として設けられている。
【0135】
第3光路長調整領域44は、第2湾曲光導波路20bに、2個に分割され、互いに離間したサブ領域44a及び44bを備える。そして、これらの2個のサブ領域44a及び44bは、第2光路長調整領域44の一端及び他端に接続されている。つまり、第3光路長調整領域44と第2光路長調整領域44とは、第2湾曲光導波路20bにおいて、連続して設けられている。
【0136】
ここで、第1〜第3光路長調整領域44〜44の具体的な寸法について触れておく。第1光路長調整領域44の幅Wは、厚みDよりも大きく、好ましくは例えば、約500nmとする。また、第1光路長調整領域44の長さL、つまり、サブ領域44a及び44bの長さの合計は、好ましくは例えば、約19.6μmとする。第2光路長調整領域44の幅Wは、厚みDよりも大きく、好ましくは例えば、約400nmとする。また、第2光路長調整領域44の長さLは、好ましくは例えば、約14.4μmとする。第3光路長調整領域44の幅Wは、厚みDよりも大きく、好ましくは例えば、約300nmとする。また、第3光路長調整領域44の長さL、つまり、サブ領域44a及び44bの長さの合計は、好ましくは例えば、約3.78μmとする。
【0137】
詳しくは後述するが、第1〜第3光路長調整領域44〜44の寸法をこのように設定することにより、アーム部20を偏波無依存で動作させることができ、方向性結合器16及び18が偏波無依存であることと相俟って、光素子40を偏波無依存とすることができる。
【0138】
(シミュレーション)
続いて、図6及び図7を参照して、光素子40のシミュレーションについて説明する。
【0139】
図6は、3個の光路長調整領域44〜44を備えた光素子40を、いわば図2と同様に配置して行ったシミュレーションである。すなわち、このシミュレーションでは、光素子40を構成するマッハツェンダ干渉計14を、第1及び第2湾曲光導波路20a及び20bの長短関係を逆転させて直列に2段に渡り接続した光素子(以下、「実施例光素子」とも称する。)を用いている。
【0140】
すなわち、図6は、実施例光素子の第1入力用光導波路24aから、波長を1.2〜1.6μmの範囲で変化させたTE偏波光及びTM偏波光を入力し、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の強度を、有限要素法により求めた特性図である。図6の縦軸は、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の強度(任意単位)である。横軸は、第1及び第2出力用光導波路26a及び26bから出力される光の波長(μm)である。
【0141】
図6には、4本の曲線が描かれており、曲線Iは、第1出力用光導波路26aから出力されるTE偏波の強度、つまりバー状態で出力されるTE偏波の強度を示している。曲線IIは、第2出力用光導波路26bから出力されるTE偏波の強度、つまりクロス状態で出力されるTE偏波の強度を示している。曲線IIIは、第1出力用光導波路26aから出力されるTM偏波の強度、つまりバー状態で出力されるTM偏波の強度を示している。曲線IVは、第2出力用光導波路26bから出力されるTM偏波の強度、つまりクロス状態で出力されるTM偏波の強度を示している。
【0142】
図6を参照すると、バー状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線Iと、バー状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IIIとは、実用上許容できる範囲で一致している。また、クロス状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線IIと、クロス状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IVとは、実用上許容できる範囲で一致している。このことから、光素子40は、偏波無依存で動作していることが判る。
【0143】
なお、このシミュレーションでは、実施例光素子を構成するマッハツェンダ干渉計14は、この実施形態で説明したと同じ寸法を有するものと仮定している。
【0144】
図7は、リッジ型光導波路で構成される実施例光素子を偏波無依存で動作させるためには、少なくとも3個の光路長調整領域44〜44が必要であることを説明するための特性図である。
【0145】
図7のシミュレーションに用いた光素子(以下、「比較用光素子」とも称する。)は、比較用光素子を構成する2個のマッハツェンダ干渉計が2個の光路長調整領域を備えている点を除いては、図6の実施例光素子と同様に構成されている。
【0146】
すなわち、図6の算出に用いた実施例光素子と、図7の算出に用いる比較用光素子とは、リッジ型光導波路で構成されている点は共通している。しかし、図6の算出に用いた実施例光素子は、1個のマッハツェンダ干渉計が3個の光路長調整領域を備えるのに対し、図7の算出に用いる比較用光素子は、1個のマッハツェンダ干渉計が2個の光路長調整領域を備えている点が異なっている。
【0147】
図7の縦軸及び横軸は、図6の縦軸及び横軸と同様の意味を表す。また、図7に描かれた曲線I〜曲線IVの4本の曲線は、図6の曲線I〜曲線IVと同様の意味を表す。
【0148】
図7を参照すると、バー状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線Iと、バー状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IIIとは、第1光Lt1の波長である1.31μm付近を始めとして、ほぼ全ての波長範囲で、挙動が異なっている。また、クロス状態で出力されるTE偏波光の強度を示す曲線IIと、クロス状態で出力されるTM偏波光の強度を示す曲線IVとは、第2光Lt2の波長である1.49μm付近では、一致しているものの、それ以外の波長では挙動が異なっている。
【0149】
これらより、図7に示した比較用光素子の偏波無依存性は、図6に示した実施例光素子よりも劣ることが判る。つまり、この実施形態で説明した、リッジ型光導波路で構成される光素子40を偏波無依存で動作させるためには、少なくとも3個の光路長調整領域44〜44が必要であることが判る。
【符号の説明】
【0150】
7 光導波路
8 基板
8a 主面
10,30,40 光素子
12 クラッド
13 光導波路型要素
14 マッハツェンダ干渉計
14−1 第1マッハツェンダ干渉計
14−2 第2マッハツェンダ干渉計
16 第1方向性結合器
16a 第1光導波路
16b 第2光導波路
18 第2方向性結合器
18a 第3光導波路
18b 第4光導波路
20 アーム部
20a 第1湾曲光導波路
20b 第2湾曲光導波路
20aC1〜20aC4,20bC1,20bC2 湾曲領域
20aS1,20aS2,20bS1 直線領域
22,44 光路長調整領域
22,44 第1光路長調整領域
22a,22b,44a,44b,44a,44bサブ領域
22,44 第2光路長調整領域
22,44 第3光路長調整領域
24 入力部
24a 第1入力用光導波路
24b 第2入力用光導波路
26 出力部
26a 第1出力用光導波路
26b 第2出力用光導波路
42 平面型光導波路
42a 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面側に延在するクラッドと、前記クラッド中に設けられた光導波路型要素とで構成される光導波路を有し、
該光導波路は、
2個の偏波無依存な方向性結合器と、
前記2個の方向性結合器間を接続するとともに、光路長が異なっていて、互いに並列された第1湾曲光導波路及び第2湾曲光導波路と、
前記第1及び第2湾曲光導波路のそれぞれに少なくとも1個以上設けられ、前記主面に垂直な方向に測った長さである厚みよりも、前記主面に平行かつ光伝搬方向に垂直に測った長さである幅が大きな光路長調整領域とを備え、
前記光導波路型要素を構成する材料は、前記クラッドの屈折率よりも40%以上大きな屈折率を有しており、
それぞれの前記光路長調整領域の偏波間における光路長差を、全ての光路長調整領域について総和した値が0(ゼロ)となるように、それぞれの前記光路長調整領域の幾何学的長さが設定されていることを特徴とする光素子。
【請求項2】
前記光路長調整領域の幾何学的長さをLとし、前記光路長調整領域のTE偏波に対する等価屈折率をn[TE]とし、前記光路長調整領域のTM偏波に対する等価屈折率をn[TM]とし、(n[TE]−n[TM])をΔnとし、前記光路長調整領域の偏波間における光路長差をΔSとするとき、ΔSは、LΔnで与えられることを特徴とする請求項1に記載の光素子。
【請求項3】
波長が異なる第1光及び第2光が前記光素子を伝搬するとき、
第1光に関する前記ΔnをΔn[λ1]とし、第2光に関する前記ΔnをΔn[λ2]としたときに、
Δn[λ1]=Δn[λ2]が、全ての前記光路長調整領域において成り立つ場合に、前記光路長調整領域の個数を2個とし、
成り立たない光路長調整領域が存在する場合に、前記光路長調整領域の個数を3個とすることを特徴とする請求項2に記載の光素子。
【請求項4】
前記光路長調整領域の個数を2個とする場合に、指標i(i=1,2)を、それぞれの光路長調整領域を区別する指標とし、
それぞれの前記光路長調整領域の前記LをLと区別し、
それぞれの前記光路長調整領域の前記第1光に関する前記Δn[λ1]をΔn[λ1]と区別するとき、
Δn[λ1]×L+Δn[λ1]×L=0が成り立つように、LとLの比率を定めることを特徴とする請求項3に記載の光素子。
【請求項5】
前記2個の方向性結合器と前記第1及び第2湾曲光導波路と前記2個の光路長調整領域が、光伝搬方向に直交する横断面形状が矩形状のチャネル型光導波路として構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の光素子。
【請求項6】
前記光路長調整領域の個数を3個とする場合に、指標j(j=1,2,3)を、それぞれの光路長調整領域を区別する指標とし、
それぞれの前記光路長調整領域の前記LをLと区別し、
それぞれの前記光路長調整領域の前記第1光に関する前記Δn[λ1]をΔn[λ1]と区別し、
それぞれの前記光路長調整領域の前記第2光に関する前記Δn[λ2]をΔn[λ2]と区別するとき、
Δn[λ1]×L+Δn[λ1]×L+Δn[λ1]×L=0、及びΔn[λ2]×L+Δn[λ2]×L+Δn[λ2]×L=0の両式が成り立つように、L、L及びLの比率を定めることを特徴とする請求項3に記載の光素子。
【請求項7】
前記2個の方向性結合器と前記第1及び第2湾曲光導波路と前記3個の光路長調整領域が、前記クラッド中に設けられ、前記主面に平行に延在する平面型光導波路の上面側から突出する断面凸状のリッジ型光導波路として構成されていることを特徴とする請求項3又は6に記載の光素子。
【請求項8】
前記2個の方向性結合器、前記第1及び第2湾曲光導波路及び前記光路長調整領域の前記主面に垂直な方向に測った長さである厚みが200〜500nmの範囲の値であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の光素子。
【請求項9】
1個の前記光路長調整領域が、互いに離間した複数のサブ領域を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の光素子。
【請求項10】
2個の前記光路長調整領域が、前記第1及び第2湾曲光導波路のどちらかに連続して設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の光素子。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載された光素子を直列に複数個接続したことを特徴とする光素子。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか一項に記載された光素子としての第1及び第2光素子が、前記第1光素子における前記第1湾曲光導波路の長さから前記第2湾曲光導波路の長さを引いた値と、前記第2光素子における前記第1湾曲光導波路の長さから前記第2湾曲光導波路の長さを引いた値とが、絶対値が等しく、かつ符号が異なるように、2段に渡って直列に接続されていることを特徴とする光素子。
【請求項13】
前記2個の方向性結合器と前記第1及び第2湾曲光導波路と前記光路長調整領域を構成する材料がSiであり、
前記クラッドを構成する材料がSiOであることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−57847(P2013−57847A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196866(P2011−196866)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】