説明

光走査モジュール

【課題】走査ミラーを傾けて光学レイアウトの自由度を増すことができるが、走査ミラーの傾きで突出した角部が回転時に多くのスペースが必要となり、動部の慣性主軸が回転中心軸に対して傾いてしまい、回転動作が不安定となっている。
【解決手段】光走査モジュールは、走査ミラー21の形状が回転中心軸から最遠の下端両隅が斜めに切除され、高さ方向で凹面の焦点から遠ざかるに従い外形が狭くなる絞り形状を成し、その下端角の円軌道軌跡と下端中央の円軌道軌跡との差が従来の矩形状の走査ミラーに比べて小さくする。この形状により可動部品の総体の慣性主軸の傾きが改善されて、揺動する走査ミラー21は上下端で略同等な慣性モーメントとなり、安定的に動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を読み取るために走査されるレーザー光を照射する走査ミラーを搭載する光走査モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品やタグに印刷されたバーコード等のキャラクタ記号にレーザー光を走査するように照射させて、その反射光(戻り光)から記載される情報を読み取る情報読み取り装置が知られている。この情報読み取り装置には、レーザー光を発生する光源部と、レーザー光を反射しつつ所定範囲で反復動作(振れ動作)して前記レーザー光をバーコード上で走査させるミラー駆動装置と、フォトダイオード(PD)等からなりバーコードからの戻り光から情報を読み取る情報読み取り部とがベース部材上に実装されて構成されている。
【0003】
光源部は、戻り光の幅領域外のミラー駆動装装置の斜め前方に配置され、また情報読み取り部は、ミラー駆動装置3の正面で射出されるレーザー光の光軸より下方で戻り光の集光した位置に配置される。
【0004】
このような配置により、光源部から出射したレーザー光は、ミラー駆動装置の揺動する走査ミラーの平面ミラー部(射出部)で反射されて、所定角度幅で走査されて、読み取り対象となるバーコードに照射される。そのバーコード上で反射した戻り光(反射光)は、走査ミラーの球面ミラー部(集光部)で集光されて、情報読み取り部に入射される。
【0005】
この走査ミラーは、入射した戻り光を1点の焦点位置に集光するための凹面ミラー部の中央に平面ミラー部が配置された一体的な構成となっている。走査ミラーの高さ方向について、凹面ミラーの焦点位置がミラー外形中央からオフセットしており、且つ走査ミラーの外形が矩形を成している。
【特許文献1】特開平8−16705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した集光ミラー部において、走査ミラーを傾けて、焦点位置をオフセットさせることは、光学レイアウトの自由度を増すのに有効である。
【0007】
その反面、以下のような問題点も発生する。第1に、焦点位置が上方になるように矩形の走査ミラーを傾けた場合、走査ミラーの高さ方向において凹面の焦点から遠い方の2つのミラー外形隅角が回転軸に対する最遠端として突出し、回転時により多くのスペースを要している。これは、読み取り装置のモジュール化に当たって、集光ミラー大型化による読み取り性能の向上と装置の小型化との両立を目指した際には大きな問題となっている。第2に、走査ミラーが回転軸方向について非対称な形状となるため、可動部の慣性主軸が回転中心軸に対して傾いてしまい、回転動作が不安定となっている。
【0008】
そこで本発明は、上記問題を解決し、小型化を図りつつ、読み取り性能を向上させて、回転動作安定性を向上させた光走査モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の従う実施形態は、レーザー光を出射するレーザー光源部と、前記レーザー光を反射して読み取り対象物に照射するための走査ミラーと、前記走査ミラーを一方向に揺動するミラー駆動部と、前記読み取り対象物で反射した戻り光を光電変換する受光部と、を備えた光走査モジュールであって、前記走査ミラーには、出射用の平面ミラー部と、受光部位置に焦点を持つ凹面形状を成した読み取り用の集光ミラー部とが一体的に形成されており、さらに、走査ミラーの回転軸方向から見たときに、走査ミラーの焦点から遠い側の端部を形成する各辺の回転動作時軌跡が互いに略一致するように、走査ミラーの外形が窄まる形状に調整されている光走査モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型化を図り、且つ読み取り性能及び回転動作安定性を向上させた光走査モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る光走査モジュールについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの外観構成を示す斜視図である。図2は、上蓋を取り外した状態の光走査モジュールの構成を示す図である。
【0012】
まず、光走査モジュールの概要及び外観について説明する。
光走査モジュール1において実現された外形寸法は、例えば、略幅21mm、奥行き14mm、高さ11mm程度の直方体形状である。勿論、これらの外形寸法の数値は、一例であり、これら以下の数値で実現することも可能である。また、ある程度の範囲であれば、電子機器の搭載スペースに応じて外形寸法を変更することもできる。尚、以下の実施形態の説明において、光走査モジュールが走査光(レーザ光)の照射方向(走査角)の中心軸と直交する面を走査開口面(正面)とし、反射光(戻り光)を受光する走査ミラーの面(出射面・反射面)が向く方向を照射・受光方向として説明する。つまり、図1において、走査開口面から走査ミラーの面を見ると、斜め方向を向くこととなる。
【0013】
この光走査モジュール1は、落下等の衝撃に耐え得る強度を有する外装となるハウジング2を有する。ハウジング2は、各構成部位を実装するためのベース部材2aと、上蓋となる基板ユニット2bとで構成される。基板ユニット2bは、ベース部材2aに植立された複数の支持部材2cにビス2dにより固定されている。他にも固定方法としては、フックとストッパをそれぞれに形成して嵌め合わせによる固定や接着剤のよる固定等を用いてもよい。
【0014】
光走査モジュール1は、光学読み取り機能の1ユニットとして、種々の電子機器に搭載できるように、例えば、ベース部材2a下面に固定用ねじ穴等が形成されている。
基板ユニット2b上には、コネクタ11及び制御部12が設けられている。制御部12は、後述する各ユニット及び構成部位の駆動及び信号処理を行うための制御回路や信号処理回路等が形成された回路基板からなる。コネクタ11は、ケーブル等を通じて外部の機器例えば、コンピュータ(図示せず)に接続する。このコンピュータは、例えば、光走査モジュールに電源電圧を供給し、光走査モジュール1を駆動制御する。例えば、搭載された電子機器のコンピュータの指示(コマンド)に従って、バーコードの読み取りを開始して、走査ミラーを揺動させて、走査されたレーザー光(走査光)を照射する。その走査光にバーコードを翳すと、そのバーコードを読み取る。
【0015】
図2を参照して、光走査モジュール1の構成について説明する。
ベース部材2a上には、主たる構成部位として、光源ユニット3と、折り返しミラー5と、光学走査装置4と、光検出ユニット6とが実装される。
【0016】
光源ユニット3は、図示していないが、レーザー光を出射するレーザーダイオード(LD)と、コリメータレンズと、出射アパーチャとで構成される。この構成において、コリメータレンズは、レーザーダイオードから照射されたレーザー光を平行光化する。出射アパーチャは平行光化されたレーザー光の光束断面を絞り、所望の形状及びスポットサイズに生成する。これらのLDとコリメータレンズと出射アパーチャは、読み取りの仕様(設計)に応じて、適宜、配置やその距離が調整され、収容部(図示せず)に1ユニットとして収容される。
光源ユニット3から出射されたレーザー光は、折り返しミラー5で反射により偏向されて光学走査装置4に向かう。
【0017】
光学走査装置4は、走査ミラー21と、軸受部23と、駆動部22とが樹脂成型により一体的に接合される。軸受部23は、ベース部材2aに植立された回転軸24に回転可能に挿嵌され、回動自在となっている。駆動部22は、駆動コイル25と、板ばね28と、支持ばね保持部材27、ベース部材2a上に配置されたマグネット29と、により構成される。
【0018】
走査ミラー21の前面は、後述するように非球面で且つ凹面状に湾曲した面の集光ミラー21aが形成され、その略中央に平面で矩形形状の面の出射ミラー21bが設けられている。出射ミラー21bと集光ミラー21aは、樹脂成型により一体的に形成されており、走査の角度(走査角)が変動しても、取り込まれた光が光検出器に向かうよう、予め形状や向きが適正に設計されている。樹脂成型された走査ミラー21の出射ミラー21bと集光ミラー21aは、表面が真空蒸着により金の薄膜が蒸着された鏡面に形成される。この鏡面は、レーザー光の波長についての垂直反射率が90%程度となるように製作されている。
【0019】
走査ミラー21は、軸受部23における回動により、後述する走査方向に揺動される。また、駆動部22は、駆動コイル25と、板ばね26と、支持ばね保持部材27、ヨーク上に配置されたマグネット29とにより構成される。
【0020】
本実施形態では、走査ミラー21側に駆動コイル25を、ベース部材2a側にマグネット29をそれぞれ固定し、駆動コイル25に制御部12より所定の駆動パルスを印加することで電磁力を発生させて走査ミラー21を揺動させる、いわゆるムービングコイル方式の駆動モータである。一方、マグネット29と駆動コイル25とが反対に配置された、いわゆるムービングマグネット方式であってもよい。尚、走査ミラー21を往復回動させる駆動部は、他のいかなる駆動部と組み合わせても、以下に説明する本実施形態の効果を期待することができる。
【0021】
光検出ユニット6は、ベース部材2a上に実装されており、バンドパスフィルタ15と受光開口部16と、光検出器17により構成される。これらのうち、バンドパスフィルタ15は、取り込まれた反射散乱光に対して、光源の波長近傍の光は通過させるが、他の光は遮断する。光検出器17に入射した反射散乱光の強弱は、走査における対象物の反射率の変化に対応しており、走査面領域における外部の情報に対応している。
【0022】
図3(a),(b)は、本実施形態の光走査モジュール1に用いられる走査ミラー21の外観構成を示す。図3(a)は、走査ミラーを正面側斜め上より見た外観構成を示す図、図3(b)は、走査ミラーを背面側斜め上より見た外観構成を示す図である。図4は、走査ミラーは、側方から見た外観構成を示す図である。
【0023】
走査ミラー21は、光検出器17の受光面に焦点を持つ凹面形状の読み取りのための集光ミラー21aと、集光ミラー21aの略中央に配置された走査光出射用の平面鏡の出射ミラー21bと、が一体的に形成されている。この走査ミラー21は、元が矩形のミラー面の回転中心軸から最も遠い下端両隅が斜めになるように、切欠部分30を切除した形状である。
【0024】
本実施形態の走査ミラー21は、図3(a)に示すように、従来の大きさの走査ミラー21の点線で示す下端両隅部分30を切り欠いた形状である。つまり、集光ミラー21aの下端両隅が斜めに切除された形状である。
以下に、本実施形態の集光ミラー21の形状について説明する。図4は、走査ミラーを側方から見た外観構成を示す図である。
【0025】
本実施形態における光走査モジュール1は、小型化を実現するために、図2に示したように、光源ユニット3と折り返しミラー5からなる出射光学系と、バンドパスフィルタ15と受光開口部16と光検出器17からなる光検出ユニット6を装置側部分に積み重ねるように配置している。そのため、走査ミラー21の高さ方向において、回転軸方向の中央に対して、光源であるレーザーダイオードが下方向にオフセットして配置される。これを解消するため、光源前方に位置する折り返しミラー5にあおり角度を持たせることで、走査ミラーの略中央に位冒する平面ミラー部に向けて出射光を打ち上げている。
【0026】
加えて、出射ミラー21bは、折り返しミラー5に平行となる角度を持たせているため、折り返しミラー5による打ち上げ角度をキャンセルして、走査ミラー21の中央から水平な出射光(走査光)を出射することが可能となっている。
【0027】
本実施形態では、図4に示すように、走査ミラー21の集光ミラー21aの凹面形状は放物面を用いているが、他にも球面・非球面を問わず、少なくともひとつの焦点を有する様々な凹曲面と組み合わせることが可能である。前述した理由により、走査ミラーの高さ方向の中央に対して、受光部であるフォトダイオードは、光源部とは逆の上方向にオフセットしている。
【0028】
そのため、放物面を成した集光ミラー21aの焦点位置Pも走査ミラーの高さ方向の中央に対して上方向にオフセットしており、故に走査ミラー21は高さ方向の中央面に対して非対称な形状を成している。
【0029】
このように走査ミラー21がその高さ方向Zの中央に対して非対称な形状を成し、しかも仮に集光ミラー面が矩形であった場合、凹面の焦点から遠い方に位置する下端両隅が回転軸に対する最遠端として突出するため、走査ミラー21の回動動作を考慮した際には、より多くのスペースが必要となる。これは、モジュール化等の小型化を図る際に問題となる。即ち、前述した従来の光走査モジュールにおける課題を有することとなる。
【0030】
加えて、走査ミラー21が高さ方向Zについて非対称な形状となるため、走査ミラー21及び駆動部22の可動部材からなる可動部品の総体の慣性主軸が、走査ミラー21の最遠端部のマスに引っ張られて、図5(a)に示すように、走査ミラー21の上下で異なる慣性モーメントを有することとなり、回転中心軸に対して傾きを持つ力が作用することとなる。これにより揺動動作の安定性(リニアリティ:回転軸回りに往路と復路がまっすぐな同一の軌跡を通る直進性能)が阻害される。
【0031】
そこで本実施形態では、回転中心軸から最も遠い走査ミラー21の下端両隅が斜めになるように切除した形状に形成する。その結果として、共に図3(a)及び図4に示すように、走査ミラー21の高さ方向Zにおいて、凹面の焦点Pから遠ざかるPB方向(Bは焦点PからXY平面=走査ミラー外形のZ方向中央面に垂線を垂らした際の交点)に従って外形が徐々に狭くなるような絞り形状を成している。
【0032】
この形状により、図5(b)に示すように、走査ミラー21における下端側角部(回転軸から最も遠い点)a,b,c,dの円軌道軌跡と下端中央の円軌道軌跡との差が、前述した従来の矩形状の走査ミラーに比べて小さくなる。その結果、トータルでは前述した可動部品の総体の慣性主軸の傾きが効果的に改善され、走査ミラー21が揺動された場合に走査ミラー21の上下で略同等な慣性モーメントとなり、安定した揺動動作が実現される。また、走査ミラーの一部を切除して重量が軽量化されるため、駆動部への負荷が軽減されて揺動が軽快となり、揺動時に必要とされるスペースを小さくすることができるため、装置の小型化に寄与することができる。
【0033】
さらに、切除された下端側角部は、集光ミラー21aの焦点から最も遠い箇所であるため、凹曲面の収差が大きく、フォトダイオードヘの入射角度を大きくするため、受光感度も低くなり、面積あたりの信号取得性能が悪い箇所であり、集光ミラー21aの集光面積減少による読み取り性能の低下は最小限に抑えられる。
【0034】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
図6(a)は、変形例における走査ミラーを正面から見た概念的な構成図であり、図6(b)は、変形例における走査ミラーの下端部が揺動の際に描く円軌道の軌跡を示した図である。
【0035】
前述した第1の実施形態では、従来の大きさの集光ミラー21aの下端両隅を斜めに切除した例であったが、切除した部分による反射面積が減少した。本変形例では、図6(a)に示すように、点線で示す従来の大きさの走査ミラー21に対して、下端両隅を斜めに通過する斜辺を持つように、両方の側面及び下側のそれぞれに側面拡張部41a及び下側拡張部41bを付け足した形状の走査ミラー41である。
【0036】
この走査ミラー41では、図6(b)に示すように、走査ミラー41の下端側を形成する3辺が、それぞれに回転動作時に描く円弧状の軌跡が略一致するように形成されている。即ち、走査ミラー41の下端を形成する3辺によって形成される4点の隅角が略同一の円軌道を描くように調整されている。ここでいう「略同一」とは、走査ミラーにおける下端側角部(回転軸から最も遠い点)の円軌道軌跡と下端中央の円軌道軌跡との差が、従来技術で述べたような単純な矩形状のものに比べて小さくなっていることを示唆する。
【0037】
従って、本変形例の走査ミラー41は、走査ミラーの揺動時に必要とされるスペースが従来の矩形の走査ミラー21と同じスペースでありながら、集光ミラー面をさらに拡大することが可能となる。この集光ミラー面の面積を増加させることにより、ベース部2a上に確保しなければならない占有スペースに対して集光能力を向上させることができ、結果として読み取り性能の向上を図ることができる。
【0038】
加えて、このような走査ミラー41の外形によって、回転中心軸に近い走査ミラー上辺周辺のマスを増やし且つ、回転中心軸から最も遠い下端隅角周辺部のマスは増えていないため、トータルでは前述した可動部品の総体の慣性主軸の傾きが効果的に改善され、より安定した揺動動作を得ることができる。
【0039】
次に、第2の実施形態について説明する。
図7(a),(b)は、第2の実施形態の光走査モジュール1に用いられる走査ミラー21の外観構成を示す。図7(a)は、走査ミラーを正面側斜め上より見た外観構成を示す図、図7(b)は、走査ミラーを背面側斜め上より見た外観構成を示す図である。
本実施形態の走査ミラー51は、ミラー下端が略楕円の一部である曲線に切除される。走査ミラーが揺動する際に、下端隅が円弧状の軌跡を描くと考えた場合、走査ミラー下端を曲線に形成することで、理論上は必要スペースと集光面積が最も効率よく両立することが可能となる。
【0040】
また、第1の実施形態と同様に、切除された下端側曲部は、集光ミラー21aの焦点から最も遠い箇所であるため、凹曲面の収差が大きく、フォトダイオードヘの入射角度を大きくするため、受光感度も低く面積あたりの信号取得性能が悪い箇所であるため、集光ミラー21aの集光面積減少による読み取り性能の低下は最小限に抑えられている。
【0041】
従って、本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。即ち、安定した揺動動作が実現され、走査ミラーの一部を切除して重量が軽量化されるため駆動部への負荷が軽減されて揺動が軽快となり、揺動時に必要とされるスペースを小さくすることで装置の小型化が実現することができる。
【0042】
次に、第3の実施形態について説明する。
図8(a),(b)は、第3の実施形態に係る走査ミラーを側面より見た外観構成を示す図である。
【0043】
本実施形態は、走査ミラーの厚さを変えて、揺動時に発生する走査ミラーの上端と下端に発生する慣性モーメントの差を小さくするものである。前述した第1,2の実施形態においては、走査ミラーの両下端を斜めに切除した例であった。
【0044】
本実施形態は、図8(a)に示すように、走査ミラー52を側面から見た場合に、回転軸24から離れた遠い箇所、ここでは、ミラー下端52aの板厚を薄くする形状である。通常のモールドミラーでは、走査ミラーの板厚は均一であることが推奨されるが、光学面の面精度や波面収差に悪影響を与えない範囲で板厚を薄くしている。
【0045】
また、走査ミラーの軽量化を図る目的で、図8(b)に示すように、走査ミラー52のミラー下端52aに加えて、ミラー上端52bも板厚を若干薄くしてもよい。この場合には、勿論、光学面の面精度や波面収差に悪影響を与えない範囲であり、且つ、揺動時に発生する走査ミラーの上端と下端に発生する慣性モーメントの差を小さくする必要がある。
【0046】
従って、本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。即ち、安定した揺動動作が実現され、走査ミラーの重量が軽量化されるため駆動部への負荷が軽減されて揺動が軽快となり、揺動時に必要とされるスペースを小さくすることで装置の小型化が実現することができる。さらに、本実施形態によれば、集光ミラーの集光面積を減少させていないため、読み取り性能は低下しない。
【0047】
以上説明した第1、第2及び第3の実施形態及び変形例による走査ミラーは、複雑な曲面やカーブを有したミラー部品となるため、その製造方法としては、射出成形による樹脂部品として形成し、その樹脂部品表面にAuコート又はAiコートといった反射膜形成処理を施したモールドミラーが好適する。
【0048】
以上説明した各実施形態及び変形例によれば、本発明の光走査モジュールは、以下の作用効果を得ることができる。
1.走査ミラー回転動作時を考慮した際に必要なスペースを削減できる。
2.可動部全体の慣性主軸の傾きが改善され、回転動作がより安定化する。
3.同じ専有スペースを前提に比較した場合、単純な矩形形状よりも大きな面覆の集光ミラー部を搭載することが可能となるため、読み取り性能の向上が可能となる。
4.ミラー下端に絞りを持たない大なる矩形と比較した場合でも、除去された下端隅角周辺部は集光ミラー部の焦点から巌も遠い箇所であるために、凹曲面の収差が大きく、PDへの入射角度が大きいため受光感度も低いため、面積あたりの信号取得性能が悪い箇所であるといえ、故に集光ミラー部の集光面積減少による読み取り性能の低下を最小限に抑えることができる。
5.走査ミラーの駆動方式としては、軸摺動方式によって支持された駆動部可動部材をムービングコイルタイプの電磁駆動装置によって揺動(往復回動)させる駆動部を用いることができる。また、公知な弾性板ばね支持方式によって仮想回転軸まわりに往復回動するムービングマグネットタイプの駆動部を用いることもできる。即ち、走査ミラーを往復回動する他のいかなる駆動手段と組み合わせても、同様の効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの外観構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る光走査モジュールの上蓋を取り外した状態の光走査モジュールの構成を示す図である。
【図3】図3(a)は、走査ミラーを正面側斜め上より見た外観構成を示す図である。図3(b)は、走査ミラーを背面側斜め上より見た外観構成を示す図である。
【図4】図4は、走査ミラーは、側方から見た外観構成を示す図である。
【図5】図5(a)は、従来の矩形の走査ミラーにおける揺動範囲となる軌跡を示す図である。図5(b)に実施形態の走査ミラーにおける揺動範囲となる軌跡を示す図である。
【図6】図6(a)は、第1の実施形態の変形例における走査ミラーを正面から見た概念的な構成を示す図である。図6(b)は、変形例における走査ミラーの下端部が揺動の際に描く円軌道の軌跡を示した図である。
【図7】図7(a)は、第2の実施形態の光走査モジュールに用いられる走査ミラーを正面側斜め上より見た外観構成を示す図である。図7(b)は、走査ミラーを背面側斜め上より見た外観構成を示す図である。
【図8】図8(a),(b)は、第3の実施形態に係る走査ミラーを側面より見た外観構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1…光走査モジュール、2…ハウジング、2a…ベース部材、2b…基板ユニット、2c…支持部材、2d…ビス、3…光源ユニット、4…光学走査装置、5…折り返しミラー、6…光検出ユニット、11…コネクタ、12…制御部、15…バンドパスフィルタ、16…受光開口部、17…光検出器、21…走査ミラー、21a…集光ミラー、21b…出射ミラー、22…駆動部、23…軸受部、24…回転軸、25…駆動コイル、26…板ばね、27…支持ばね保持部材、28…板ばね、29…マグネット、30…切欠部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射するレーザー光源部と、前記レーザー光を反射して読み取り対象物に照射するための走査ミラーと、前記走査ミラーを一方向に揺動するミラー駆動部と、前記読み取り対象物で反射した戻り光を光電変換する受光部と、を備えた光走査モジュールであって、
前記走査ミラーには、出射用の平面ミラー部と、受光部位置に焦点を持つ凹面形状を成した読み取り用の集光ミラー部とが一体的に形成されており、
さらに、走査ミラーの回転軸方向から見たときに、走査ミラーの焦点から遠い側の端部を形成する各辺の回転動作時軌跡が互いに略一致するように、走査ミラーの外形が窄まる形状に調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項2】
レーザー光を出射するレーザー光源部と、前記レーザー光を反射して読み取り対象物に照射するための走査ミラーと、前記走査ミラーを一方向に揺動するミラー駆動部と、前記読み取り対象物で反射した戻り光を光電変換する受光部と、を備えた光走査モジュールであって、
前記走査ミラーには、出射用の平面ミラー部と、受光部位置に焦点を持つ凹面形状を成した読み取り用の集光ミラー部とが一体的に形成されており、さらに、走査ミラーの外形形状をなす頂点をA1、A2、…、Anとし、頂点Ai(i:整数)から回転軸におろした垂線を線分AiOiとしたとき、少なくとも3以上の線分AiOiが互いに略一致するように、走査ミラーの外形形状が調整されていることを特徴とする光走査モジュール。
【請求項3】
集光ミラー部の焦点Pから、走査ミラー外形の回転軸方向中央を通りかつ回転軸に対して垂直な平面に対して垂線PBを引いたとき、走査ミラーの外形がPB方向に向けて狭くなる部分を有するように、走査ミラーの外形形状が調整されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光走査モジュール。
【請求項4】
走査ミラーと駆動部可動部材とを含む可動部全体の慣性主軸が、回転中心軸と略平行となるように、走査ミラーの外形形状が調整されていることを特徴とする請求項3の光走査モジュール。
【請求項5】
走査ミラーは、樹脂製の射出成形部品であり、走査ミラーの板厚がPB方向に向けて薄くなる部分を有するように、走査ミラーの外形形状が調整されていることを特徴とする請求項4の光走査モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−156721(P2010−156721A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333266(P2008−333266)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】