説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】コストダウンを容易に実現可能な光走査装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1シリンドリカルレンズ61及び第3シリンドリカルレンズ63は副走査方向のパワーが正であり、第2シリンドリカルレンズ62は副走査方向のパワーが負である。レーザー光源から出射した4本のレーザー光束のうち、外側2本が各々副走査方向に0.8°、内側2本が各々副走査方向に0.267°の角度を持って第1シリンドリカルレンズ61に入射する。4本のレーザー光束は、第2シリンドリカルレンズ62を通過後、副走査方向に交差し、第3シリンドリカルレンズ63を通過する。その後、回転多面鏡26の偏向反射面上に主走査方向に長い線状のレーザー光束となって入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び、この光走査装置を備えたプリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタや複写機等の画像形成装置では、まず有機感光体等からなる像担持体の表面に、公知の電子写真プロセスにより形成した静電潜像をトナー像担持体に現像する。次いでこのトナー像を転写装置により記録媒体(用紙など)に静電的に転写した後、トナー像の未定着トナーを定着装置により溶融固着させる。これにより、記録媒体にトナー像が定着されて、画像形成が行われる。
そして、フルカラー画像を形成するカラー画像形成装置として、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(黒)の各色に対応して4つの感光体ドラムを配列してなる、いわゆるタンデム型が知られている。このような画像形成装置は、光走査装置によって4本の光ビームを各々の感光体ドラム表面上に走査して各感光体ドラム上に各色に対応した静電潜像を形成し、各静電潜像を各4色のトナーで現像し、これを中間転写体を介して記録媒体上に順次転写する。
かかる画像形成装置に使用される光走査装置は、C、M、Y、Kの各色に対応した4つのレーザー光源と、回転多面鏡を有する光偏向器と、レンズやミラー等の光学素子からなる走査光学系と、により構成されている。レーザー光源の各々は、画像データにより変調駆動されたレーザー光束を出射する。このレーザー光束は、回転している回転多面鏡の反射面で反射して偏向された後、走査レンズにより感光体ドラムの表面を露光走査するように構成されている。
【0003】
ところで、このような光走査装置において、各レーザー光束に対して各々回転多面鏡、走査光学系及びそれらを収容した筐体を個別に設けた構成にすると、コストが上昇する。また、光走査装置の占める容積も各色分必要になり、画像形成装置自体の大型化を招いてしまう。そこで、回転多面鏡や走査レンズをできるだけ共用化し、1つの筐体内に収容した光走査装置が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に示された光走査装置は、C、M、Y、Kに対応した4つのレーザー光源と、コリメートレンズと、シリンドリカルレンズと、レーザー光束を偏向する回転多面鏡と、結像光学系とを、備えている。そして、各4つのレーザー光源から出射した光ビームは、コリメートレンズにより発散光束から平行光束に変換され、シリンドリカルレンズを通過後、回転多面鏡により偏向される。偏向された光ビームの各々は、結像光学系を透過することにより、主走査方向に沿って等速度に走査対象面上を走査するスポット光として形成される。
ここで、回転多面鏡の偏向反射面に入射する各レーザー光束は、主走査平面と直交する副走査平面内においてシリンドリカルレンズにより回転多面鏡の偏向反射面で一旦収束されると共に偏向反射面の1点にて交差するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−149573号公報(第4〜5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の場合には、4本のレーザー光束が回転多面鏡の偏向反射面で交差しているため、構成が限定される。具体的には、特許文献1の場合には、偏向反射面で反射されて走査レンズを通過したレーザー光束は、走査レンズ下流側に大きく距離を隔てる構成にする必要がある。もしくは、回転多面鏡の偏向反射面へ入射する4本のレーザー光束に副走査方向に互いに大きな角度差を設けることにより偏向後の各レーザー光束に相互いに大きな角度差をもって走査レンズを通過させる構成にする必要がある。このような構成にしなければ、相隣り合うレーザー光束が副走査方向に僅かな距離しか離間せず、4つの異なる感光体ドラムへ各レーザー光束を導くための分離が行い難くなる。
ところが、走査レンズ下流側に大きく距離を隔てる位置において折返しミラーを設けて、各レーザー光束を分離する場合には、光走査装置が大型化するとともに画像形成装置内でのレイアウトの自由度を減じ、結果としてかえって画像形成装置の大型化を招いてしまう。
また、回転多面鏡の偏向反射面へ入射する4本のレーザー光束に副走査方向に互いに大きな角度差を設けることにより、偏向走査される各レーザー光束には走査線曲がりが生じる。このため、特許文献1に開示されている特殊な形状のレンズで補正する必要が生じてしまう。したがって、レンズの製造の難易度も高く、コストの削減を実現することは困難である。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、装置の製造を容易にすることによりコストダウンの実現を容易にする光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
また、別の目的は、装置の小型化を容易に実現可能な光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、複数の独立した光源と、受けた光ビームを偏向する光偏向器と、前記光源の各々で発生した光ビームが共通に通過すると共に、通過する当該光ビームを主走査対応方向に長い線状の光ビームとして前記光偏向器に導く偏向前光学系と、前記光偏向器により偏向された光ビームの各々を、対応する被走査体に導く偏向後光学系と、を含み、前記複数の独立した光源の前記光偏向器により偏向される光ビームは、前記偏向前光学系において副走査対応方向に交差するとともに、当該交差する位置よりも光源側に設けられた当該偏向前光学系の副走査対応方向に正のパワーを有する正レンズから出射される位置における各光ビームの相対的な角度差である第一の角度は、当該光偏向器に入射するときの各光ビームの相対的な角度差である第二の角度よりも大きいことを特徴とする光走査装置である。
請求項2に記載の発明は、前記偏向前光学系は副走査対応方向にパワーを有する光学系で構成され、前記偏向前光学系の副走査対応方向にパワーを有する前記光学系は、前記正レンズである第1正レンズと、副走査対応方向のパワーが正である第2正レンズと、当該第1正レンズと当該第2正レンズとの間に位置し、副走査対応方向のパワーが負である負レンズと、を備え、前記第1正レンズを通過した前記複数の光源からの光ビームが前記負レンズと前記第2正レンズとの間で副走査対応方向に交差することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置である。
請求項3に記載の発明は、前記偏向前光学系の副走査対応方向にパワーを有する前記光学系は、副走査対応方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズ系であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置である。
請求項4に記載の発明は、前記偏向前光学系の副走査対応方向にパワーを有する前記光学系は、前記複数の光源から前記光偏向器に向けて順に、副走査対応方向に凸面−平面のレンズと、副走査対応方向に凹面−平面のレンズと、副走査対応方向に平面−凸面のレンズとなるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の光走査装置と、像担持体と、を備え、前記像担持体に形成した静電潜像を現像剤で現像して画像を形成する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストダウンの実現を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の全体構成を示した概略構成図である。
【図2】図1の光走査装置の概略構成図である。
【図3】光走査装置の構成を示す斜視図である。
【図4】(a)は、各色に対応したレーザー光源から光偏向器前光学系へ各レーザー光束が進む場合の副走査方向の配置を説明するための説明図であり、(b)は、レーザー光源の中心軸とコリメートレンズの光軸との関係を説明する説明図である。
【図5】第1の実施の形態に係る光偏向器前光学系の構成を説明するための説明図である。
【図6】第2の実施の形態に係る光偏向器前光学系の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る光走査装置が適用された画像形成装置の概略構成図である。図2は、図1の光走査装置の概略構成図である。
図1及び図2に示すように、画像形成装置は、タンデム型のフルカラープリンタとして構成されている。すなわち、フルカラープリンタの本体10の内部には、ROS(Raster Output Scanner)である光走査装置12と、フルカラーの画像形成を行う画像形成ユニットであるプリントヘッドデバイス(Print Head Device)14とが設置されている。
光走査装置12はハウジング24を備えている。このハウジング24の内部には、回転多面鏡(回転反射鏡、ポリゴンミラー)26、走査レンズ(fΘレンズ)28、分離多面鏡(分離ミラー、分離手段)30、反射鏡32及びシリンドリカルミラー(光学素子)34Y,34M,34C,34Kが配置されている。また、ハウジング24の内部に、図1及び図2には図示しないレーザー光源が配置されている。このレーザー光源は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色の画像情報をそれぞれ含む4本のレーザー光束を出射する。
ハウジング24には、防塵ウィンドウ24a(図2参照)が配設されている。光走査装置12のレーザー光束は、防塵ウィンドウ24a(図2参照)を通じて感光体ドラム16,18,20,22の各々に入射する。
このようにして、光走査装置12は、4個の感光体ドラム16〜22に対する画像の露光処理を行うように構成されている。
【0012】
プリントヘッドデバイス14は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各色に対応する像担持体としての感光体ドラム(被走査体)16〜22を備えている。これらの感光体ドラム16〜22の各々は、現像装置23(図1参照)を有する。
プリントヘッドデバイス14は、複数の中間転写体36,38,40を備えている。すなわち、プリントヘッドデバイス14は、感光体ドラム16,18の各々に形成されたトナー像を多重転写される中間転写体36と、感光体ドラム20,22の各々に形成されたトナー像を多重転写される中間転写体38と、中間転写体36,38の各々の多重のトナー像を更に多重転写される中間転写体40とを備えている。
【0013】
フルカラープリンタの本体10の内部下方には、記録用紙(シート)を収容する給紙カセット25が配設されている。この給紙カセット25から上方に向かって記録用紙を搬送する搬送経路が形成されている。その搬送経路の途中には、プリントヘッドデバイス14の中間転写体40及び定着装置27が配設されている。また、本体10の上面は、定着装置27によりトナー像が定着された記録用紙が排出される排出トレイとしての機能を有する。
【0014】
このように構成された画像形成装置において、光走査装置12からのレーザー光束が、対応する感光体ドラム16〜22に入射し、これにより、感光体ドラム16〜22の表面に静電潜像が形成される。その後、現像装置23により現像され、これにより、感光体ドラム16〜22に各色のトナー像が形成される。
そして、感光体ドラム16に形成されたイエローのトナー像及び感光体ドラム18に形成されたマゼンタのトナー像が、一定の速度で一方向に搬送される中間転写体36に順次転写される。また、感光体ドラム20に形成されたシアンのトナー像及び感光体ドラム22に形成された黒のトナー像が、一定の速度で一方向に搬送される中間転写体38に順次転写される。
その後、これら中間転写体36,38のトナー像は、最終的に中間転写体40に転写された後に、給紙カセット25から供給された記録用紙に一括して転写される。これによりカラー画像を得ることができる。記録用紙のカラー画像に対し、定着装置27にて定着処理が施された後に、記録用紙は、本体10の上面である排出トレイに排出される。
【0015】
〔第1の実施の形態〕
次に、第1の実施の形態に係る光走査装置12について図2〜図4を用いて更に詳しく説明する。
図3は、光走査装置12の構成を示す斜視図である。
図3に示すように、光走査装置12は、ハウジング24(図2参照)の内部に、図1及び図2を用いて既に説明した構成のほかに、レーザー光源51、第1の光学系としてのコリメートレンズ52、スリット(アパーチャ(aperture))53(図4の(a)参照)、折返しミラー54,55、及び、第2の光学系としての光偏向器前光学系(偏向前光学系、レンズ光学系)60が配置されている。
なお、ここにいう光偏向器は、図1及び図2に示す回転多面鏡26と図示しない回転駆動部とから構成されており、偏向手段とも言うことができる。
【0016】
ここで、上述した構成の場合に、図1及び図2に示す走査レンズ系28を第3の光学系とも言うことができる。
付言すると、第1の光学系は、複数の独立したレーザー光源51に各々対応した光学系である。この第1の光学系にはコリメートレンズ52が含まれる。
第2の光学系は、複数の光ビームを光偏向器の回転多面鏡26の同一の反射面(偏向面、反射偏向面)に各々主走査方向に長い線状の光ビームとして導く光学系である。第2の光学系は、複数の光ビームを共通に通過させるものである。
また、第3の光学系(偏向後光学系)は、光偏向器の回転多面鏡26からの複数の光ビームを各々異なる被走査体(図2に示す感光体ドラム16〜22)上に導く光学系である。この第3の光学系には、走査レンズ系28が含まれる。
【0017】
このように構成された光走査装置12において、各レーザー光源51は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)の各画像信号により駆動され、発散光束となるレーザー光束を出射する。出射されたレーザー光束の各々は、コリメートレンズ52によって変換され、平行なレーザー光束(レーザービーム)とされる。
平行光束とされた各レーザー光束の各々は、スリット53を通過して不要光が除去される。そして、レーザー光束は、各色に対応した折返しミラー54により反射され、各色に共通の折返しミラー55を経て、光偏向器前光学系60に入射する。
光偏向器前光学系60では、レーザー光束が、主走査方向に直交する副走査方向に対応した方向においてのみ収束される。そして、レーザー光束は、主走査方向に各々長い線状の光束となって回転多面鏡26の反射面に入射する。
【0018】
ここで、図4の(a)は、各色に対応したレーザー光源51から光偏向器前光学系60(図5参照)へ各レーザー光束が進む場合の副走査方向の配置を説明するための説明図であり、折返しミラー54,55の図示を省略している。図4の(b)は、レーザー光源51の中心軸とコリメートレンズ52の光軸との関係を説明する説明図である。
図4の(a)に示すように、各色に対応した半導体のレーザー光源51は、光偏向器前光学系の光軸(母線)を含み、主走査平面に平行な軸Oに跨って副走査方向に所定の間隔をおいて配置されている。
【0019】
また、図4の(b)に示すように、レーザー光源51の中心軸は、コリメートレンズ52の光軸と各々副走査方向に所定のずれ量となるように設定されている。すなわち、レーザー光源51のうち、軸O(図4の(a)参照)からの離間距離が大であるレーザー光源51aは、コリメートレンズ52の光軸に対して、軸O(図4の(a)参照)から離間する方向のずれ量はPAである。また、レーザー光源51のうち、軸O(図4の(a)参照)からの離間距離が小であるレーザー光源51bは、コリメートレンズ52の光軸に対して、軸O(図4の(a)参照)から離間する方向のずれ量はPBである。そして、ずれ量PAは、ずれ量PBよりも大きい(PA>PB)。このように構成することにより、各レーザー光束が副走査方向に各々所定の角度を持って光偏向器前光学系60に入射させることができる。
なお、図4の(b)では、軸O(図4の(a)参照)を挟んで片側2組のレーザー光源51a,51bとコリメートレンズ52との位置関係について図示しているが、残りの2組については、軸O(図4の(a)参照)を挟んで副走査方向に対称となるように配置されている。また、ここにいう軸O(図4の(a)参照)とは、光偏向器前光学系60の光軸を含み、主走査平面に平行な軸をいう。
【0020】
ここで、図2を用いて説明を続ける。図2に示すように、回転多面鏡26の反射面に入射された各レーザー光束は、反射偏向されて走査レンズ系28に入射する。走査レンズ系28を透過した各レーザー光束は、分離多面鏡30で反射された後に各々の光路に分離される。
この分離多面鏡30の反射面は、略正方形の隣接する2つの辺を含む面(直交する2つの平面)で形成されている。そして、この分離多面鏡30には、4本のレーザー光束が、ほぼ等間隔で2本ずつが対称の位置となる光路で入射するように、レーザー光源51の各位置が調整されている。
【0021】
また、分離多面鏡30の反射面によって反射される各方向には、4本のレーザー光束をそれぞれ反射する各反射鏡32が、分離多面鏡30に対してほぼ対称の位置で4本配置されている。このため、分離多面鏡30で分離されたレーザー光束の各々は、反射鏡32を経て、シリンドリカルミラー34Y,34M,34C,34Kに至る。すなわち、反射鏡32で反射されたそれぞれのレーザー光束は、分離多面鏡30に対して略対称の各位置に4本配置されているシリンドリカルミラー34Y,34M,34C,34Kに入射し反射される。
レーザー光束は、このようにしてシリンドリカルミラー34Y,34M,34C,34Kにより反射され、その後に防塵ウィンドウ24aを通過する。回転多面鏡26の回転に伴って、被走査体である感光体ドラム16〜22にスポット状に結像するように主走査方向に等速走査し、その表面に静電潜像が形成される。
【0022】
次に、光偏向器前光学系60について説明する。
図5は、第1の実施の形態に係る光偏向器前光学系60の構成を説明するための説明図であり、(a)は主走査方向における位置関係を示し、(b)は副走査方向における位置関係を示している。
図5に示すように、光偏向器前光学系60は、第1シリンドリカルレンズ61、第2シリンドリカルレンズ62及び第3シリンドリカルレンズ63の3枚からなる。第1シリンドリカルレンズ61、第2シリンドリカルレンズ62及び第3シリンドリカルレンズ63の順にレーザー光源51(図3又は図4参照)から遠ざかる位置に配置されている。
ここで、光偏向器前光学系60の諸元を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示すように、第1シリンドリカルレンズ61では、第1の面(入射側の面)は副走査方向に曲率半径rが70mmの曲面である。また、第1シリンドリカルレンズ61の第2の面(出射側の面)は、平面である。
第2シリンドリカルレンズ62では、第1の面は副走査方向に−33.5mmの曲率半径rを有する曲面である。また、第2シリンドリカルレンズ62の第2の面では、平面である。
第3シリンドリカルレンズ63の第1の面では、平面である。また、第3シリンドリカルレンズ63の第2の面では、副走査方向に−52.7mmの曲率半径rを有する曲面である。
すなわち、光偏向器前光学系60は、レーザー光源51(図3又は図4参照)から回転多面鏡26に向けて順に、副走査方向が第1シリンドリカルレンズ61での凸面−平面、第2シリンドリカルレンズ62での凹面−平面、第3シリンドリカルレンズ63での平面−凹面となるように構成配置されている。
なお、回転多面鏡26の偏向反射面は、平面である。また、使用波長は、786.5nmである。
【0025】
このように、第1シリンドリカルレンズ61は、副走査方向の屈折力が大きく、レーザー光束を集光させる作用をする。この意味において、第1シリンドリカルレンズ61は、副走査方向のパワーが正である。
また、第2シリンドリカルレンズ62は、副走査方向においてレーザー光束を発散させる作用をするものであり、副走査方向のパワーが負である。また、第3シリンドリカルレンズ63は、副走査方向においてレーザー光束を集光させる作用をするものであり、副走査方向のパワーが正である。
なお、第1シリンドリカルレンズ61、第2シリンドリカルレンズ62及び第3シリンドリカルレンズ63のいずれも副走査方向にのみパワーを有するものである。
【0026】
表1に示すように、第1シリンドリカルレンズ61の中心厚は5mmであり、屈折率は1.609061である。第2シリンドリカルレンズ62の中心厚は3mmであり、屈折率は1.511183である。第3シリンドリカルレンズ63の中心厚は3mmであり、屈折率は、1.609061である。
また、第1シリンドリカルレンズ61の第2の面と第2シリンドリカルレンズ62の第1の面との空気間隔は、64.616mmである。第2シリンドリカルレンズ62の第2の面と第3シリンドリカルレンズ63の第1の面との空気間隔は、81.805mmである。第3シリンドリカルレンズ63の第2の面と回転多面鏡26の偏向反射面との空気間隔は、42.5mmである。
【0027】
図5に示すように、このような光偏向器前光学系60において、各色に対応したレーザー光源51(図3参照)から出射した4本のレーザー光束のうち、外側2本が各々副走査方向に0.8°、内側2本が各々副走査方向に0.267°の角度を持って第1シリンドリカルレンズ61に入射する。なお、第1シリンドリカルレンズ61から出射する角度は、第一の角度の一例である。
4本のレーザー光束は、第2シリンドリカルレンズ62を通過後、軸O(図4の(a)参照)で副走査方向に交差し、第3シリンドリカルレンズ63を通過する。その後、回転多面鏡26の偏向反射面上に主走査方向に長い線状のレーザー光束となって入射する。回転多面鏡26の反射面に入射する際、外側2本が各々副走査方向に1.190°、内側2本が各々副走査方向に0.397°の角度を持っている。これらの角度は、第二の角度の一例である。
【0028】
図5に示すように、本実施の形態では、回転多面鏡26の手前の位置で各レーザー光束を交差させるので、従来例と比較して、各レーザー光束の副走査方向角度が同じ場合に、回転多面鏡26から分離多面鏡30までの距離を等しくとると、副走査方向の各レーザー光束間の離間距離を大きくとることができ、光束分離がしやすくなる。言い換えると、各レーザー光束間の離間距離が同じならば、分離多面鏡30(図1又は図2参照)を回転多面鏡26に近づけて配置できるため、光走査装置自体を小型化することができる。また、副走査方向のパワーが正、負、正の順になるようにレンズを配置しているため、交差角度を浅くすることができ、特殊な形状のレンズを使わなくともビームの結像特性をよくすることができる。
また、本実施の形態では、光偏向器前光学系60を複数のレンズからなるレンズ系で構成しているため、レンズの作用によりレーザー光束の位置が補正され、部品精度の影響を受け難くなる。したがって、製造ばらつきの感度を高めることもなく、光走査装置12のハウジング(光学箱、筐体)24の形状精度を緩和することができる。
【0029】
ここで、例えば、光偏向器前光学系60として複数の平面ミラーからなる平面ミラー系を採用する構成も考えられる。しかしながら、回転多面鏡26の手前の位置で各レーザー光束を交差させるためには、平面ミラーを各々異なる角度で倒していくことによりレーザー光束に角度を付けていく必要がある。このため、平面ミラーを高い精度で設置しなければならず、光走査装置の筐体の形状が複雑になる。また、高い形状精度の確保が必要になり、製造コストを低減することが難しいという問題がある。
また、平面ミラーの反射により各レーザー光束の近接、離間を行うため、その角度は平面ミラーから光線が交差する位置までの距離のみにより決定される。すなわち、平面ミラーの位置では互いの光線が干渉しないように一定の間隔が必要とされるため、角度を小さくしたい場合には必然的に平面ミラーから光線が交差する位置までの距離が長くなる。したがって、平面ミラー系を採用すると、光偏向器前光学系60の長さが長くなってしまい、コンパクト化の実現が困難であり、また、製造ばらつきの感度が高くなる。さらには、光走査装置の組立および光学調整の作業性の向上が難しい。
その一方で、本実施の形態のようにレンズ系を採用すると、上述したように、製造コストの低減を容易に行うことができ、また、コンパクト化を容易に実現することが可能になるという作用効果がある。
【0030】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態に係る光走査装置12について説明する。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態の場合と基本的な構成が共通するので、共通する個所については説明を省略し、相違する個所について以下説明することとする。
ここで、本実施の形態では、光偏向器の回転多面鏡26の反射面に入射するレーザー光束の主走査方向幅は反射面の主走査方向幅よりも広い光束である、いわゆるオーバーフィールド入射光学系を構成している(図6参照)。第1の実施の形態の場合は、アンダーフィールド入射光学系である(図3参照)。この点で、本実施の形態は、第1の実施の形態と相違するものである。
本実施の形態のようなオーバーフィールド入射光学系を採用すると、アンダーフィールド入射光学系よりも回転多面鏡26の径を小さくすることができる。このため、回転多面鏡26の面数を増やしても回転多面鏡26の大径化を避けることができる。そして、回転多面鏡26の軽量化及び慣性モーメントの低減化が可能になり、高速回転化対応が可能となる。すなわち、画像形成装置のプロセス速度が速い場合には、オーバーフィールド光学系の方が対応しやすく適している。
【0031】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態での光偏向器前光学系60とは異なる光偏向器前光学系70を採用している。このため、以下、光偏向器前光学系70について図6を用いて説明する。
図6は、第2の実施の形態に係る光偏向器前光学系の構成を説明するための説明図であり、(a)は主走査方向における位置関係を示し、(b)は副走査方向における位置関係を示している。
図6に示すように、光偏向器前光学系70は、第1シリンドリカルレンズ71、第2シリンドリカルレンズ72、第3シリンドリカルレンズ73及び球面レンズ74という4枚のレンズを有する。また、光偏向器前光学系70は、光量補正用のフィルタ75を有する。レーザー光源51に最も近い位置に第1シリンドリカルレンズ71が配置されていて、球面レンズ74、フィルタ75、第2シリンドリカルレンズ72及び第3シリンドリカルレンズ73の順に回転多面鏡26に近い位置になる。
ここで、光偏向器前光学系70の諸元を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示すように、第1シリンドリカルレンズ71の第1の面(入射側の面)は、副走査方向に曲率半径rが55.55mmの曲面である。第1シリンドリカルレンズ71の第2の面(出射側の面)は、平面である。
球面レンズ74の第1の面は、−39.22mmの曲率半径rを有する球面である。球面レンズ74の第2の面は、平面である。
第2シリンドリカルレンズ72の第1の面は、平面である。また、第2の面は、副走査方向には−45.29mmの曲率半径rを有する曲面である。
第3シリンドリカルレンズ73の第1の面は、平面である。また、第2の面では、主走査方向には−85.4mmの曲率半径rを有する曲面である。
【0034】
すなわち、光偏向器前光学系70は、レーザー光源51から回転多面鏡26に向けて順に、副走査方向において、凸面−平面(第1シリンドリカルレンズ71)、凹面−平面(球面レンズ74)、平面−凸面(第2シリンドリカルレンズ72)、平面−平面(第3シリンドリカルレンズ73)となるように構成されている。また、光偏向器前光学系70は、レーザー光源51から回転多面鏡26に向けて順に、主走査方向において、平面−平面(第1シリンドリカルレンズ71)、凹面−平面(球面レンズ74)、平面−平面(第2シリンドリカルレンズ72)、平面−凸面(第3シリンドリカルレンズ73)となるように構成されている。
ここで、第1シリンドリカルレンズ71では副走査方向のパワーが正であり、球面レンズ74では副走査方向のパワーが負であり、第2シリンドリカルレンズ72は副走査方向のパワーが正である。また、球面レンズ74では主走査方向のパワーが負であり、第3シリンドリカルレンズ73では主走査方向のパワーが正である。
なお、回転多面鏡26の偏向反射面は、平面である。また、使用波長は、786.5nmである。
【0035】
表2に示すように、第1シリンドリカルレンズ71の中心厚は3mmであり、屈折率は1.711847である。球面レンズ74の中心厚は3mmであり、屈折率は1.511183である。第2シリンドリカルレンズ72の中心厚は3mmであり、屈折率は1.711847である。第3シリンドリカルレンズ73の中心厚は5mmであり、屈折率は、1.511183である。
また、第1シリンドリカルレンズ71の第2の面と球面レンズ74の第1の面との空気距離は、40.244mmである。球面レンズ74の第2の面と第2シリンドリカルレンズ72の第1の面との空気間隔は、88.261mmである。第2シリンドリカルレンズ72の第2の面と第3シリンドリカルレンズ73の第1の面との空気間隔は、7.2mmである。第3シリンドリカルレンズ73の第2の面と回転多面鏡26の偏向反射面との空気間隔は、31.998mmである。
表2に示すように、レンズ入射角度(副走査方向)は、外側のレーザー光束が0.3°、内側のレーザー光束が0.101°である。なお、第1シリンドリカルレンズ71から出射する角度は、第一の角度の一例である。また、偏向反射面入射角度(副走査方向)は、外側のレーザー光束が1.187°、内側のレーザー光束が0.397°である。これらの角度は、第二の角度の一例である。
【0036】
図6に示すように、このような光偏向器前光学系70において、各色に対応したレーザー光源51(図3参照)から出射した4本のレーザー光束のうち、外側2本が各々副走査方向に0.3°、内側2本が各々副走査方向に0.101°の角度を持って第1シリンドリカルレンズ71に入射する。4本のレーザー光束は、球面レンズ74を通過後、軸O(図4の(a)参照)で交差し、フィルタ75、第2シリンドリカルレンズ72、第3シリンドリカルレンズ73を通過する。そして、4本のレーザー光束は、光偏向器の回転多面鏡26の偏向反射面上に集束するように入射する。
ここで、光偏向器前光学系70により形成されて回転多面鏡26の偏向反射面に導かれるレーザー光束の主走査方向幅は、副走査方向及び主走査方向のパワーが負である球面レンズ74に入射するレーザー光束の主走査方向幅より大きい。
【0037】
また、主走査方向においては、コリメートレンズ52(図4参照)を通過した後に発散光束とされた各レーザー光束は、第1シリンドリカルレンズ71を通過した後、負の球面レンズ74によりさらに発散させられ、第2シリンドリカルレンズ72を通過した後に、主走査方向に正の第3シリンドリカルレンズ73によって平行光束とされて偏向反射面上に偏向反射面の主走査方向幅より長い光束となって入射する。
このように、コリメートレンズ52(図4参照)及び球面レンズ74で光束の主走査方向幅を拡張し、フィルタ75により補正を加えることにより、被走査面上での光量分布均一性を確保している。
【0038】
以上、第2の実施の形態について説明したが、その一変形例を説明する。なお、この変形例は、第2の実施の形態の場合と同様のオーバーフィールド入射光学系を採用したものである。また、この変形例は、第2の実施の形態に係る光偏向器前光学系70と基本的な構成は共通するので、その説明を省略する。
この変形例では、以下に示すように光偏向器前光学系70の諸元が異なる。変形例における光偏向器前光学系70の諸元を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
この変形例における基本的な構成は上述した第2の実施の形態の場合と同じである。具体的には、光偏向器以降の構成は同一であり、その説明を省略する。
表3に示すように、この変形例が表2の場合と異なる点は、次のとおりである。すなわち、第1シリンドリカルレンズ71´の第1の面(入射側の面)は、副走査方向の曲率半径rが60.29mmの曲面である。球面レンズ74´の第1の面は、主走査方向の曲率半径rが−31.38mmの曲面である。第2シリンドリカルレンズ72´の第2の面(出射側の面)は、副走査方向の曲率半径rが−55mmの曲面である。第3シリンドリカルレンズ73´の第2の面は、主走査方向の曲率半径rが−84mmの曲面である。
第1シリンドリカルレンズ71´の中心厚は5mmであり、屈折率は1.609061である。第2シリンドリカルレンズ72´の屈折率は1.609061である。また、第1シリンドリカルレンズ71´の第2の面と球面レンズ74´の第1の面との空気間隔は、55.624mmである。球面レンズ74´の第2の面と第2シリンドリカルレンズ72´の第1の面との空気間隔は、90.872mmである点でも表2の場合と異なる。
また、レンズ入射角度(副走査方向)が外側で0.6°、内側で0.201°である。
【0041】
このように構成された変形例では、コリメートレンズ52(図4参照)を出射するレーザー光束の発散度を弱めている。このようにすることで、被走査面でのスポット径を同一にしようとした場合に、第2の実施の形態と比較して、多くの光量を取り込むことができるので、高速化による光量不足を解消できる。また、コリメートレンズ52(図4参照)からの発散度合が第2の実施の形態と比較して緩やかであるため、コリメートレンズ52(図4参照)から第1シリンドリカルレンズ71(図6参照)までの寸法や、コリメートレンズ52(図4参照)からスリットまでの寸法に比較的自由度ができ、レイアウト上有利である。
【符号の説明】
【0042】
12…光走査装置、16,18,20,22…感光体ドラム、26…回転多面鏡、28…走査レンズ系、51…レーザー光源、60,70…光偏向器前光学系、61,71…第1シリンドリカルレンズ、62,72…第2シリンドリカルレンズ、63,73…第3シリンドリカルレンズ、74…球面レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の独立した光源と、
受けた光ビームを偏向する光偏向器と、
前記光源の各々で発生した光ビームが共通に通過すると共に、通過する当該光ビームを主走査対応方向に長い線状の光ビームとして前記光偏向器に導く偏向前光学系と、
前記光偏向器により偏向された光ビームの各々を、対応する被走査体に導く偏向後光学系と、
を含み、
前記複数の独立した光源の前記光偏向器により偏向される光ビームは、前記偏向前光学系において副走査対応方向に交差するとともに、当該交差する位置よりも光源側に設けられた当該偏向前光学系の副走査対応方向に正のパワーを有する正レンズから出射される位置における各光ビームの相対的な角度差である第一の角度は、当該光偏向器に入射するときの各光ビームの相対的な角度差である第二の角度よりも大きいことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記偏向前光学系は副走査対応方向にパワーを有する光学系で構成され、
前記偏向前光学系の副走査対応方向にパワーを有する前記光学系は、前記正レンズである第1正レンズと、副走査対応方向のパワーが正である第2正レンズと、当該第1正レンズと当該第2正レンズとの間に位置し、副走査対応方向のパワーが負である負レンズと、を備え、
前記第1正レンズを通過した前記複数の光源からの光ビームが前記負レンズと前記第2正レンズとの間で副走査対応方向に交差することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記偏向前光学系の副走査対応方向にパワーを有する前記光学系は、副走査対応方向にのみパワーを有するシリンドリカルレンズ系であることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記偏向前光学系の副走査対応方向にパワーを有する前記光学系は、前記複数の光源から前記光偏向器に向けて順に、副走査対応方向に凸面−平面のレンズと、副走査対応方向に凹面−平面のレンズと、副走査対応方向に平面−凸面のレンズとなるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の光走査装置と、
像担持体と、
を備え、
前記像担持体に形成した静電潜像を現像剤で現像して画像を形成する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−107726(P2011−107726A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27529(P2011−27529)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2005−276290(P2005−276290)の分割
【原出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】