説明

光起電アレイの熱性能を改良した光学シャッター

【課題】光起電アレイの熱性能を改良した光学シャッタを提供する。
【解決手段】熱性能を改良した光起電アレイは、光起電アレイ、光起電アレイ上に配設された電気光学シャッター、及び、少なくとも電気光学シャッターに接続された制御システムを含む。制御システムは、センサからの入力に基づいて、光起電アレイへの光線の照射を制御するように電気光学シャッターを透過状態と反射状態との間で切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電アレイを支持する飛行船あるいは他の表面に関する。より詳細には、本発明は、光起電アレイ及び支持構造体の温度を調節するために光起電アレイに組み合わされる電気光学シャッターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気より軽い乗り物、以下に飛行船は、電力を発生するための、太陽電池アレイとも称する光起電アレイを利用している。この電力は、飛行船に搭載される推進システム、通信装置及び監視装置の作動を制御するのに利用される。
【0003】
光起電アレイ又は太陽電池アレイは、太陽の可視赤外線及び近可視赤外線スペクトルにおいて高い吸収率をもつように基本的に設計された複数の電池を含む。この吸収されたスペクトルエネルギーの一部分は、電気エネルギーとも称する電動力に変換され、これは太陽電池又は光電池の固有の機能である。吸収された太陽スペクトルの残りの大部分は、熱に変換され、それにより、電池の温度、そして伝導により下側の構造体の温度を増加させる。この余分な熱は下側の構造体に悪影響を及ぼすことが、当業者には認識できるであろう。
【0004】
宇宙空間の再生電力システムにおけるような、あるいは建物の屋根やカーテンウォールの太陽電池アレイのような、光起電アレイの或る適用では、光起電での電力発生の利益よりも基礎構造体の加熱の悪影響が勝る場合が、日又年のうちで何回もあり得る。例えば、高高度飛行船では、太陽電池アレイが十分に電力供給し、すべてのエネルギー蓄積容量が利用される場合、飛行船での余分な熱の吸収は、支持構造体を過熱させ、飛行船の制御及び位置決めに悪影響を与えることとなる。また、余分に吸収された熱は、飛行船に搭載された通信装置や光学装置にも悪影響を与えることが考えられる。従って、太陽電池アレイの一部あるいは全部が電気エネルギーの生成に必要のない場合には、光起電アレイを通して照射される太陽放射線の量を制御することにより、過度の熱による影響を軽減させる方法を提供することが、当業分野において必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述に照らして、光起電アレイの熱性能を改良した光学シャッターを提供することが、本発明の第1の様相である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の他の様相は、光起電アレイ、光起電アレイ上に配設された電気光学シャッター、及び、電気光学シャッターに接続され、光起電アレイへの光線の照射を制御するように電気光学シャッターを透過状態と反射状態との間で切換える制御システムを包含する、改良した光起電アレイを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】光起電力の熱性能を改良した本発明による光学シャッターを使用する飛行船の正面斜視図である。
【図2A】電気光学シャッターが透過モードにある場合の、本発明による光起電アレイ及び電気光学シャッターを支持する支持構造体の概略断面図である。
【図2B】電気光学シャッターが反射モードにある場合の、本発明による光起電アレイ及び電気光学シャッターを支持する支持構造体の概略断面図である。
【図3】電気光学シャッター及び支持構造体に組み合わされた他の構成部品を作動するのに利用される制御システムの概略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の説明、付随する特許請求の範囲及び添付図面に関して一層よく理解されるであろう。
【0009】
図面及び特に図1を参照すると、本発明による飛行船は、符号10で示されていることがわかる。飛行船10は、監視装置、通信装置あるいは他のペイロードや貨物を載せるのに使用される。特定の実施例では、飛行船は、18,288メートル(60,000フィート)を越えた高度に到達するような高高度飛行形態で使用され得る。飛行船は艇体と複数の安定フィンを含んでおり、艇体は、所望の高度へ飛行船を移動させるために加圧空気及び空気より軽い加圧ガスを収容する気嚢12として一般に認識される。飛行船は、加圧されないもの、あるいは硬式のものとすることができる。
【0010】
気嚢12は、高高度飛行に理想的に適する特質をもつ積層材料14を含む。そのため、積層材料14は、丈夫で、軽量で、紫外線に強く、また厳しい拡張された展開に耐えることができる多層構造であってよい。典型的な積層材料は、米国特許第6,979,479号及び同7,354,636号;2006年5月30日出願の米国特許出願第11/443,327号;2008年3月4日出願の同11/991,499号;及び2008年1月28日出願の同12/011,509号に記載されており、これらのすべては、参考としてここに組み入れられる。
【0011】
飛行船の方位及び高度の制御は、飛行船の気嚢12に支持されるかこれに固定される複数の推進システム16によって行われる。また、必要に応じて飛行船の高度を調節するために飛行船内に収容されている空気の量を制御するように、ブロワのような他の装置が飛行船に組み込まれることが、当業者には認識できるであろう。
【0012】
符号20で総括的に示す太陽電池アレイとも称する光起電アレイは、積層材料14上に配設されている。光起電アレイ20は、周知の方法でプロペラ、ブロワ及び監視装置や電子通信装置で使用される電力を発生するのに利用される。太陽電池アレイはまた、飛行船に搭載されている場合には充電式バッテリーをも充電するのに使用される。アレイ20は、多数の別個の電池を含むように構成されており、すべての電池は、電力を発生するために同じ量の太陽放射線を吸収するように設計されている。また、電力の発生のために吸収されるのではない太陽放射線は、かなりの量の熱を発生し、この熱は、飛行船のまわりの大気に放散され、積層材料のような支持構造体で吸収されるとともに、飛行船に搭載された通信装置や他の貨物でも吸収され得る。必要ならば、積層材料14とアレイ20との間に追加の層があってもよい。これらの追加の層は、接着層及び絶縁層を含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。
【0013】
符号30で総括的に示す電気光学シャッターは、太陽電池アレイ20上に選択的に配置され、アレイ20を支持していない気嚢の部分上に延びていてもよい。電気光学シャッター30は、反射モードと透過モードとの間で切換え可能となるように構成されている。或る実施例では、幾つかのアレイ電池又はパネルが太陽放射線にさらされるが、他はさらされないように、電気光学シャッターが部分的に制御し得ることが、さらに認識されるであろう。
【0014】
図2A及び2Bを参照すると、電気光学シャッター30は、積層材料14に支持された光起電アレイ20上に配設されこれを覆っていることがわかる。前述したように、積層材料14は、当業分野において周知の方法で空気及び/又は揚力ガスを封入する。本実施例は飛行船に関連して説明しているが、本発明の概念は、光起電アレイを支持し且つアレイに照射される太陽放射線を制御することを必要とされるすべての支持構造体に同様に適用できることが、認識されるであろう。どの場合でも、電気光学シャッターは、互いに面する一対の対向する基層32A及び32Bを含む。ほとんどの実施例では、基層32は、飛行船の重量を最小限にするために、軽量である可撓性プラスチック材で作られる。しかしながら、幾つかの実施例では、基層32は、ガラスや、電気光学シャッターと一般に関連する他の材料とすることができる。基層の間には間隙が形成され、この間隙は、高分子材料、あるいはビードや円筒状ロッドのようなスペーサ、あるいは基層の間で所望の間隔を維持するポリマー壁の輪郭により提供され得る。基層の各々は、基層32A及び32Bのそれぞれの対向する面に電極34A及び34Bを含む。基層の間に電気光学材料38が配設される。電気光学材料は、電気的に制御可能であるように選択されるとともに、透過状態と反射状態との間で切換え可能となるように選択される。任意のタイプの電気光学材料あるいはエレクトロクロミック材料を使用できるが、ゲストホスト色素形態のような液晶材料、コレステリック液晶材料、あるいは、電極を横切って電圧を印加することにより透過モードと反射モードとの間で切換え可能となる任意の他の材料を利用できることが、認識されるであろう。従って、電極34を横切る電圧の印加は、透過状態と反射状態との間で電気光学材料を切換えることができる。基層は、アラインメント層を設けていて、液晶材料の配向を制御し、選択された放射線波長を反射するとともに所望の放射線波長を吸収する能力を最適化し、その結果、所望の放射線波長が光起電アレイで受け取られる。
【0015】
紫外線・赤外線フィルター40は、有害な放射線がシャッター30、アレイ20及び/又は積層材料14に悪影響を及ぼすのを防ぐために、電気光学シャッター上に配設されていてよい。
【0016】
図2Aに示されるように、太陽光線としても称される太陽からの放射線は、飛行船に投射され、電気光学シャッターは透過状態に切換えられているので、放射線は、電気エネルギーを生成する光起電アレイに到達する。図2Bにおいて、電気光学シャッターは、電気光学材料の配向が変化され放射線又は日光を反映するように、反射状態へ設定されていることがわかる。電気光学材料の説明は読者の理解のためであり、材料の任意の配向が所望の効果を達成するのに利用されることが、当業者には認識できるであろう。
【0017】
図3を参照すると、符号50で総括的に示す飛行船制御システムは、飛行船に組み込まれた構成部品の作動を制御するように利用される。制御システム50は、飛行船に搭載された多数の構成部品を調整するために必要なハードウェア、ソフトウェア及びメモリ部品を組み入れている任意のプロセッサベースの装置であるコントローラ52を含む。図示のコントローラは、ここで説明した構成部品を作動するために特有のものであるが、飛行船に保持された他の特徴のために使用することもできる。コントローラ52には充電式バッテリー54が接続されており、コントローラはバッテリーに保持された電力量を監視する。バッテリーは、閉ループ再生燃料電池、リチウムイオンバッテリー、あるいは、飛行船や他の構造体に組み込まれる他の電気蓄積装置の形状であってよい。制御システムは、光起電アレイ及び電気光学シャッターを支持するあらゆる支持構造体と共に使用されてよい。コントローラ52及び充電式バッテリー54の両方には、飛行船に搭載され利用される任意の構成部品である電気負荷56が接続される。前述したように、飛行船は、電気エネルギーを必要とするプロペラ、監視装置及び通信装置を利用しており、これらの構成部品はすべて電気負荷として認識される。
【0018】
太陽電池アレイ20は、エネルギーを蓄積するための充電式バッテリー54に伝えられる電気エネルギーを生成するのに利用され、そして、コントローラは、この蓄積されたエネルギーを利用し、必要に応じてバッテリーから電気負荷への電力の分配を制御する。電気光学シャッター30は、太陽電池アレイ上に配置されて、前述したように太陽電池アレイに照射される放射線の量を制御する。そのため、コントローラ52は、必要に応じて生成される電気エネルギーの量を制御するために、電気光学シャッターの選択された部分を制御することができる。太陽電池アレイを太陽放射線にさらすべきか否かを決定するのを支援するために、センサ58が太陽電池アレイ20と関連される。センサ58は、太陽電池アレイと積層材料との間に配置されてもよいし、太陽電池アレイに直接あるいは隣接して組み付けられてもよい。どの場合も、センサ58は、飛行船や関連する構造体の作動に重要な温度情報を提供する。こうして、飛行船及び/又は太陽電池アレイが過熱状態であることをセンサが検知すると、この情報はコントローラに転送され、コントローラは、十分な電力が蓄積されているかに関して決定を行い、そして、充電式バッテリー54で電気エネルギーが要求されていない場合には、電気光学シャッターを反射モードへ駆動できるようにする。このように、飛行船制御システムは、飛行船及び/又は所望の作動のための光起電アレイを組み込んだ他の支持構造体の作動を最適化することができる。そのため、充電式バッテリーが低下した状態にある場合には、電気光学シャッターは完全透過状態にあり、太陽電池アレイの最大限の利用を可能にすることができる。電気光学シャッターは、太陽電池アレイを覆っていない区域において、太陽放射線を反射し、熱の過度の発生を不可能にする状態に飛行船の他の部分を維持するように使用できることが、さらに認識できるであろう。充電式バッテリーが完全に充電された場合、この情報もコントローラに中継することができ、電力が必要でないか、蓄積する必要がない場合には、電気光学シャッターは、熱をより容易に放散させるように駆動できる。
【0019】
前記を考慮すると、飛行船制御システム50及び組み合わされた電気光学シャッターと光起電アレイには、幾つかの利点があることが認識できるであろう。このような構成は、バッテリーがもはや充電を必要としない場合に、充電式バッテリーの過充電を防ぎ、組立体全体の過熱を防ぐように、太陽電池アレイを選択的に使用できるという点で有益である。また、このような構成は、飛行船の構造全体に重量を過度に増加させることなしに、光起電アレイの最適な使用を可能にするという点で有益である。
【0020】
従って、上述した構造及び使用の方法により、本発明の目的が履行されていることが理解できる。特許法に従いつつ、最良の形態及び好適な実施例だけを示し詳細に説明したが、本発明はこれに制限されるものではないことが理解される。従って、本発明の真の範囲を認識するため、特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電アレイ、
前記光起電アレイ上に配設された電気光学シャッター、及び、
前記電気光学シャッターに接続され、前記光起電アレイへの光線の照射を制御するように前記電気光学シャッターを透過状態と反射状態との間で切換える制御システム
を包含する、改良した光起電アレイ。
【請求項2】
前記光起電アレイに接続され、この光起電アレイから電力を受け取る充電式バッテリーをさらに包含し、前記充電式バッテリーが前記制御システムに接続され、前記充電式バッテリーが所定の充電レベルに達したことを検知されると、前記制御システムが前記電気光学シャッターを反射状態へ切換える、請求項1記載のアレイ。
【請求項3】
前記光起電アレイに接続され、この光起電アレイから電力を受け取る充電式バッテリーをさらに包含し、前記充電式バッテリーが前記制御システムに接続され、前記充電式バッテリーが所定の充電レベルに達したことを検知されると、前記制御システムが前記電気光学シャッターを透過状態へ切換える、請求項1記載のアレイ。
【請求項4】
前記光起電アレイの少なくとも1つ及び前記電気光学シャッターに関連されたセンサをさらに包含し、前記センサが前記制御システムに接続され、前記制御システムが、前記センサから受け取った入力に基づいて、前記電気光学シャッターの部分を前記透過状態と前記反射状態との間で選択的に切換える、請求項1記載のアレイ。
【請求項5】
前記センサが温度センサである、請求項4記載のアレイ。
【請求項6】
前記光起電アレイを支持する支持構造体をさらに包含する、請求項1記載のアレイ。
【請求項7】
前記支持構造体が積層材料である、請求項6記載のアレイ。
【請求項8】
前記支持構造体が、揚力ガスを封入する積層材料である、請求項6記載のアレイ。
【請求項9】
前記電気光学シャッターが、間隙を間にもつ一対の対向する基層を含み、前記基層の各々が、この基層と組み合わされる電極を有する、請求項1記載のアレイ。
【請求項10】
前記一対の基層の間に配設される電気光学材料をさらに包含し、前記電気光学材料が、液晶材料及びエレクトロクロミック材料から成るグループから選択される、請求項9記載のアレイ。
【請求項11】
前記電気光学シャッター上に配設される紫外線・赤外線フィルターをさらに包含する、請求項1記載のアレイ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−2903(P2010−2903A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−136161(P2009−136161)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(596134851)ロッキード・マーチン・コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】