説明

光起電モジュールおよびその製造方法

【課題】銀の反射層に高い反射率を達成する付着向上層を設けた光起電力モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】光起電モジュールが、透明な基板上に、透明な前側電極層、半導体層3、および後ろ側電極層4を有している。後ろ側電極層4が、銀の層7と、ドープされた半導体で構成されて銀の層7と半導体層3との間に位置する中間層5とを有している。銅の層6が、銀の層7と中間層5との間に設けられている。好ましくは、前記銀の層7の層の厚さが、50〜500nm、前記銅の層6の層の厚さが、1〜50nm、前記中間層5の層の厚さが、10〜300nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の冒頭部分に記載の光起電モジュールに関する。さらに、本発明は、そのようなモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体層を有する光起電モジュールにおいては、例えばガラスなどの透明基板を出発材料として使用することが一般的であり、この透明基板が、例えば透明な導電性金属酸化物で構成される透明な前側電極層で塗布される。次いで、シリコン半導体層および後ろ側電極層が成膜される。その間に、例えばレーザによって各層に分割線が生成されることで、モジュールの個々の太陽電池素子の一体の直列接続が形成される。最後に、この原料モジュールが、背面保護物と積層され、最終的なモジュールが形成される。
【0003】
使用される後ろ側電極層は、通常は、中間層および実際の金属反射層を備える二重層である。
【0004】
中間層は、第1には、金属反射層のための拡散バリアを構成し、金属原子が後ろ側電極層からシリコン層へと拡散することを防止する。屈折率nおよび複素屈折率kがシリコンおよび後ろ側電極層の金属と比べて異なっているため、中間層は、第2には、シリコン−金属の境界層での反射率を向上させることに成功している。中間層としては、酸化インジウム(例えば、すずをドープした酸化インジウム、ITO)またはアルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZAO)など、強くドープされた半導体が使用される。
【0005】
金属反射層としては、可視および近赤外(NIR)の光のスペクトルにおいて高反射性である金属膜が使用され、アルミニウムが好適であるが、近赤外範囲におけるより高い反射率ゆえ、銀あるいは金がさらによく適している。金属反射層の厚さは、通常は100〜500nmの間である。したがって、金は、通常は、コストの理由で反射層としては除外される。アルミニウム層は、コストがより低いが、近赤外範囲における反射率が中程度でしかない。
【0006】
銀は、妥当なコストで高い反射率を有しているが、アルミニウムと異なり、銀の反射層は、中間層への付着に乏しい。銀の反射層の乏しい付着は、光起電モジュールの長期信頼性に関して危険を構成する。とくには、水分の進入後に反射層が中間層から剥離し、光起電モジュールの動作不良につながる可能性がある。
【0007】
銀の反射層の付着を改善するために、従来技術においては、チタニウム、クロム、ニッケル、モリブデン、高級鋼、またはタングステンの薄い層が、銀の層と中間層との間に追加して使用される。
【0008】
しかしながら、これらの付着向上層は、シリコン/中間層/付着向上層/反射層の界面を有する層系列の反射率を大きく悪化させることにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、銀の反射層に高い反射率を達成する付着向上層を設けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、本発明によれば、銀の層とドープされた半導体からなる中間層との間に付着向上層として設けられる銅の層によって達成される。
【0011】
本発明の反射層が、94%以上という高い反射率、すなわち中間層に銀の層を直接設けた場合の反射率にきわめて近い反射率を有するだけでなく、半導体層への優れた付着も有することが、明らかになっている。
【0012】
銀の層を、純銀または銀合金で構成することができ、これは、純銅または銅合金で構成できる銅の層にも当てはまる。
【0013】
透明な基板は、ガラスまたは他の透明な材料であってよい。前側電極層は、好ましくは、例えばドープされた酸化すず(例えば、フッ素をドープした酸化すず)など、透明な導電性金属酸化物で構成される。半導体層を、例えば非晶質、ナノ結晶、マイクロ結晶、または多結晶シリコンで構成することができる。シリコンの他に、例えばカドミウム/テルルなどといった他の半導体で構成することも可能である。
【0014】
銅の層とシリコン層との間に位置し、ドープされた半導体で構成されている中間層は、好ましくは、金属でドープされた金属酸化物で構成される。金属酸化物は、酸化インジウムまたは酸化アルミニウムであってよい。金属酸化物をドープするための金属は、例えば、酸化インジウムまたは酸化アルミニウムであってよい。したがって、例えば、すずをドープした酸化インジウムまたはアルミニウムをドープした酸化亜鉛を、中間層として使用することが可能である。
【0015】
銀の層の層の厚さは、好ましくは50〜500nm、とくには100〜300nmである。
【0016】
銅の層の層の厚さは、例えば1〜50nmであってよく、好ましくは2〜20nmへと調節される。ドープされた半導体の中間層の層の厚さは、例えば10〜300nmであってよく、好ましくは50〜200nmであってよい。
【0017】
銀の層の背面、すなわち銅の側から離れる方を向いている面に、金属からなる保護層を設けることができ、例えばニッケルまたはニッケル合金の層を設けることができる。この保護層の層の厚さは、10〜400nm、とくには50〜200nmであってよい。
【0018】
さらに、背面保護物、例えばプラスチックまたはガラスの層を、モジュールの背中に設けることが可能である。
【0019】
本発明の光起電モジュールの製造は、例えば化学蒸着(CVD)によって前側電極層で塗布された例えばガラス板などの基板から出発することができる。その後に、前側電極層へと、例えばシリコン半導体層が例えば化学蒸着(CVD)によって成膜され、シリコン半導体層へと、中間層、銅の層、および銀の層を含む後ろ側電極層が成膜される。後ろ側電極層、すなわち中間層、銅の層、および銀の層を、例えばスパッタ法によって適用することができ、銀の層の背面の保護のための金属層も、同様に適用することができる。
【0020】
光起電モジュールは、好ましくは、複数の単独セルを互いに直列接続して備える。直列接続のために、前側電極層、シリコン半導体層、および後ろ側電極層に、分割線が例えばレーザによって設けられる。
【0021】
以下で、本発明の光起電モジュールの実施の形態を、図面を参照しつつ例としてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】光起電モジュールの一部分を断面図にて概略的に示している。
【図2】後ろ側電極層を拡大の断面図にて概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1によれば、例えばガラス板である大面積の基板1上に、例えばドープされた酸化亜鉛で構成される前側電極層2が設けられ、前側電極層2へと、例えば非晶質シリコンで構成される半導体層3が適用される。半導体層3へと、後ろ側コンタクト層4が適用される。
【0024】
モジュールは、個々のセルC1〜C5を直列接続して備えている。この目的のために、前側電極層2が分割線9によって、シリコン半導体層3が分割線10によって、後ろ側電極層4が分割線11によって、パターン加工されている。帯状である個々のセルC1〜C5が、電流の流れの方向Fに対して垂直に延びている。
【0025】
図2によれば、後ろ側電極層4が、例えばアルミニウムでドープされた酸化亜鉛など、ドープされた半導体で構成される中間層5と、付着向上層としての銅の層6と、反射層としての銀の層7と、例えばニッケル層など、保護層としての金属層8とを備えている。
【0026】
以下の実施例が、本発明をさらに説明するための役に立つ。
【実施例1】
【0027】
透明な金属酸化物で構成された前側電極層とシリコン半導体層とを有するガラス板に、厚さ100nmのすずをドープしたインジウム層(ITO)と、厚さ2nmの銅(Cu)の層と、厚さ200nmの銀の層と、厚さ100nmのニッケル(Ni)の層とを含む層系列を設けた。次いで、EVA/Tedlar(登録商標)で構成される保護層を、試料の背面に適用した。
【0028】
650nmにおける試料の反射率を、ガラス側からの反射率測定によって明らかにし、さらに銀の層の付着を、高温多湿での保管(85℃および85%の相対空気湿度で500時間)の後で、引き剥がしテストによって明らかにした。
[実施例2〜4]
【0029】
4、8、および12nmの厚さの銅の層を使用したことを除き、実施例1を繰り返した。
[比較例1]
【0030】
銅の層が省略されている点を除き、実施例1を繰り返した。
[比較例2および3]
【0031】
銅の層の代わりに、厚さ2nmの高級鋼の層(SS)および厚さ200nmのアルミニウム層(Al)を使用したことを除き、実施例1を繰り返した。
【0032】
得られた結果を、以下の表に示す。
【表1】

【0033】
ここから見て取ることができるとおり、実施例1〜4による本発明の後ろ側電極層によれば、銀の層の付着が良好であるだけでなく、反射率が94.8%〜95.5%と高いことも明らかになった。先行の銅の層を持たずに銀の層を備える比較例1によれば、反射率がおよそ1〜2%ほど大きくなるが、銀の層の付着が不足する。対照的に、比較例2および3によれば、良好またはきわめて良好な銀の層の付着が得られるが、87〜88%という低い反射率しか達成できない。
【符号の説明】
【0034】
1 基板
2 前側電極層
3 シリコン半導体層
4 後側電極層
5 中間層
6 銅の層
7 銀の層
8 金属層
9 分割線
10 分割線
11 分割線
C1-C5 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板(1)上に透明な前側電極層(2)と、半導体層(3)と、後ろ側電極層(4)とを有しており、
該後ろ側電極層(4)が、反射層としての銀の層(7)と、ドープされた半導体で構成された、銀の層(7)と半導体層(3)との間に位置する中間層(5)とを有している光起電モジュールであって、
銅の層(6)が、前記銀の層(7)とドープされた半導体で構成された前記中間層(5)との間に設けられていることを特徴とする光起電モジュール。
【請求項2】
前記銀の層(7)の層の厚さが、50〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項3】
前記銅の層(6)の層の厚さが、1〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項4】
前記ドープされた半導体で構成された中間層(5)の層の厚さが、10〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項5】
前記中間層(5)を構成するドープされた半導体が、ドープされた金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項6】
前記金属酸化物が、金属でドープされていることを特徴とする請求項5に記載の光起電モジュール。
【請求項7】
前記金属酸化物が、酸化インジウムまたは酸化亜鉛であることを特徴とする請求項5に記載の光起電モジュール。
【請求項8】
前記金属が、すず、ガリウム、ホウ素、またはアルミニウムであることを特徴とする請求項6に記載の光起電モジュール。
【請求項9】
前記銀の層(7)の背面に、保護層としての金属層(8)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項10】
前記金属層(8)が、ニッケル層であることを特徴とする請求項9に記載の光起電モジュール。
【請求項11】
前記半導体層(3)が、シリコンからなることを特徴とする請求項1に記載の光起電モジュール。
【請求項12】
請求項1に記載の光起電モジュールを製造するための方法であって、
前記ドープされた半導体で構成された中間層(5)、前記銅の層(6)、および/または前記銀の層(7)が、スパッタ法によって適用されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−194386(P2009−194386A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26831(P2009−26831)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(507399667)ショット・ゾーラー・ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Solar GmbH
【Fターム(参考)】