説明

光路切替型光信号送受信装置および光信号送受信方法

【課題】待機電力を実質的にゼロにする。
【解決手段】光路切替型光信号送受信装置は、上位光信号送受信装置1と光ファイバー介して接続された1対7対応光制御式光路切替装置100と、光ファイバーを介して接続された7台の下位光通信アダプター110と、電気回路により下位光通信アダプターの各々に接続されたユーザー側装置160と、7台の下位ユーザー側光通信アダプター110の各々に設けられ上り光信号送信機構と下り光信号受信機構と前記光路切替装置100を駆動するための信号光とは異なる波長を有する制御光を発生させる制御光光源と前記制御光光源の波長を用いた光通信の送受信機構とを有する光送受信制御回路と、光路切替装置100と7台のユーザー側光通信アダプター110とを繋ぐ制御光の光路1211〜1216と、反射型スターカップラーと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信や光情報処理等の光エレクトロニクスやフォトニクスの各分野において活用され、熱レンズ方式光制御式光路切替スイッチを利用して光路の切替を行う光路切替型光信号送受信装置および光信号送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、先に、新しい原理に基づく光路切替の装置および方法を発明した(特許文献1参照)。この光路切替装置等では、熱レンズ形成素子内の制御光吸収領域に対して、制御光吸収領域が吸収する波長帯域の制御光と、制御光吸収領域が吸収しない波長帯域の信号光とを、各光軸が一致するように収束させて照射し得る構成を有している。この構成によれば、熱レンズ形成素子内の制御光吸収領域への信号光の照射に対して、制御光の照射は選択的に行われる。制御光の照射が信号光の照射と同時に行われないときには信号光が穴付きミラーの穴を通して直進し、他方、制御光の照射が信号光の照射と同時に行われるときには信号光の進行方向に対して傾けて設けた穴付きミラーで反射して光路を変更させる。特許文献1には、1種類の波長の制御光によって制御光の進行方向を2方向に切り替えることができる光制御式光路切替装置が開示されている。
【0003】
さらに、本発明者等は、熱レンズ形成素子および穴付きミラーを複数組み合わせて用いて構成した光制御式の光路切替型光信号伝送装置および光信号光路切替方法を発明した(特許文献2参照)。この光路切替型光信号伝送装置等では、制御光吸収領域が吸収する波長帯域と制御光の波長とを1対1に対応させており、さらに、例えば吸収波長帯域の異なる色素を用いた3種類の制御光吸収領域の熱レンズ形成素子を合計7個組み合わせて使用し、併せて、3種類の波長の制御光の各々の明滅を制御することにより、例えばサーバーのデータを8箇所に光制御方式で切り替えて配信するシステムが開示されている。
【0004】
さらに本発明者等は、その後、特許文献3〜6に開示される通り、光路変更方法および光路切替装置を提案した。これらの光路変更方法および光路切替装置によれば、熱レンズ形成光素子中の制御光吸収領域に、制御光吸収領域が吸収する波長帯域の制御光、および制御光吸収領域が吸収しない波長帯域の信号光を入射させ、制御光および信号光は、制御光収領域にて収束するように照射されかつ各々の光の収束点の位置が異なるように照射される。このため、制御光および信号光は、光の進行方向で制御光吸収領域の入射面またはその近辺で収束し、その後、拡散する。これにより、制御光吸収領域内で制御光を吸収した領域およびその周辺領域に温度上昇が起き、当該温度上昇に起因して可逆的に熱レンズの構造が変化し、屈折率が変化し、信号光の進行方向を変化させることができる。
【0005】
特許文献4,5には、1種類の波長の制御光によって制御光の進行方向を2方向に切り替える1対2対応光制御式光路切替装置が開示されている。また特許文献6には、例えば、端面近接7芯光ファイバーの中心ファイバーから出射する信号光の光路を、中心ファイバーの周辺に設けられた6本の光ファイバーから出射する制御光によって7方向に切り替える光制御式光路切替装置が開示されている。この光制御式光路切替装置を以下では「1対7対応光制御式光路切替装置」と記す。また特許文献7には、1対7対応光制御式光路切替装置に用いられる端面近接多芯光ファイバーおよびその製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献8の図5には、複数の光ファイバーあるいは光導波路を光ファイバーあるいは光導波路からなる1本の光路に束ね、前記の束ねられた1本の光路の端面に全反射ミラーを設けてなる構成の「反射型スターカップラー」が記載されている。この、反射型スターカップラーを用いることで、複数の光ファイバーあるいは光導波路の各々に接続された光送受信装置から送信された光信号を、複数の光送受信装置へ均等に分配して受信することを可能とする「反射型スターカップラー方式光LAN」を構築することができる。ただし、この方式の光LANにおいては、複数の光送受信装置が送出する光信号の衝突を避けるために、時間分割多重ないし波長分割多重制御技術を併用する必要がある。
【0007】
通信規格「TCP/IPプロトコル」に準拠したインターネットの普及と通信データの大容量化への対応、および、老朽化していく既設電話回線網の代替などを目的に、個々の一般住宅まで、波長多重光通信仕様に適合した光ファイバーを敷設・運用する動き、いわゆる「ファイバー・トゥ・ザ・ホーム(FTTH)」の普及が進められている。FTTHのシステムを活用し、「インターネット通信」、「IPパケット電話」、および「オーディオ・ビジュアル(以下、AVと略記する)配信」の3種類のサービスを提供する、いわゆる「トリプルプレイ」の普及も進められており、ここでは、1本の光ファイバーで3種類の光通信信号を送る波長分割多重光通信技術が実用化されている。すなわち、図8に示すように、「インターネット通信」と「IPパケット電話」のユーザー側装置から局舎装置への「上り光信号」には波長1260〜1360nm(中心波長1310nm)、同じく局舎装置からユーザー側装置への「下り光信号」には波長1480〜1500nm(中心波長1490nm)、および、局舎装置からユーザー側装置へのAV配信には波長1550nmの信号光が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3809908号公報
【特許文献2】特許第3972066号公報
【特許文献3】特開2007−225825号公報
【特許文献4】特開2007−225826号公報
【特許文献5】特開2007−225827号公報
【特許文献6】特開2008−083095号公報
【特許文献7】特開2008−076685号公報
【特許文献8】特開2000−121865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光ファイバーによってインターネット網に接続されたユーザー宅内において、光信号と電気信号の変換を行うための宅内光信号送受信装置などが、通信の有無にかかわらず消費している電力の内、通信が行われていない時間に消費されている電力、いわゆる「待機電力」を事実上ゼロとすることによって省エネルギーを達成することを目的とする。宅内光信号送受信装置、ハブ、ルーター、および無線LAN装置などが消費する電力の合計は、1戸当たり7ないし40W程度であるが、FTTHの普及戸数が2千万世帯に達した場合、14万kWないし80万kWであり、1日24時間中の実使用時間4時間に対し、待機時間20時間とした場合の待機電力は280万kWh/日ないし1600万kWh/日にも達する。すなわち、本発明の目的は、光技術を駆使することで、このような膨大な無駄な待機電力を実質的にゼロにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光路切替型光信号送受信装置および光信号の光路切替方法は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0011】
(1)本発明の光路切替型光信号送受信装置は、
上位光信号送受信装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第1の光路を介して前記上位光信号送受信装置へ接続された1対N対応光制御式光路切替装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第2の光路を介して1対N対応光制御式光路切替装置へ接続され、かつ前記第2の光路を介して信号光が1対N対応光制御式光路切替装置に対して送受信されるN台の下位光通信アダプターと、
電気回路により前記N台の下位光通信アダプターの各々に接続されたユーザー側装置と、
N台の下位光通信アダプターの各々に設けられ、少なくとも上り光信号送信機構と、下り光信号受信機構と、前記1対N対応光制御式光路切替装置を駆動するための、前記信号光の波長とは異なる波長を有する制御光を発生させる制御光光源とを備えた光送受信制御回路と、
前記1対N対応光制御式光路切替装置と前記N台の下位光通信アダプターとを繋ぐ制御光の、光ファイバーまたは光導波路からなる第3の光路と、
1つの下位光通信アダプターと前記上位光信号送受信装置との第2の光路を開設するための制御光が1つの下位光通信アダプターの光送受信制御回路から送信されている状態を他の下位光通信アダプターへ伝達し、かつ、制御光が輻輳しないよう制御するための下位データ送受信装置間相方向通信手段と、
を備え、前記Nは2以上の整数である。
【0012】
(2)上記(1)に記載の光路切替型光信号送受信装置において、光路切替型光信号送受信装置は、
下位データ送受信装置間相方向通信手段が、
N台の下位光通信アダプターの各々に設けられ、前記制御光光源からの前記制御光の波長を用いた光通信の送受信機構と、
前記1対N対応光制御式光路切替装置と前記N台の下位光通信アダプターとを繋ぐ制御光を送信する光ファイバーまたは光導波路からなる各々の光路上に設けられた複数の分配器と、
前記分配器の各々からの、光ファイバーまたは光導波路からなるN本の第4の光路を束ねる合波器と、
前記合波器の束ねられた出力端に設けられたミラーと、
から構成される、反射型スターカップラー方式光LANからなる。
【0013】
(3)上記(1)に記載の光路切替型光信号送受信装置において、光路切替型光信号送受信装置は、
前記Nが7の場合、端面近接7芯光ファイバーの中心ファイバーから出射する信号光の光路を、中心ファイバーの周辺に設けられた6本の光ファイバーから出射する制御光によって7方向に切り替える、1対7対応の熱レンズ方式光制御式光路切替装置が用いられる。
【0014】
(4)上記(2)に記載の光路切替型光信号送受信装置において、光路切替型光信号送受信装置は、
Nが7の場合、端面近接7芯光ファイバーの中心ファイバーから出射する信号光の光路を、中心ファイバーの周辺に設けられた6本の光ファイバーから出射する制御光によって7方向に切り替える、1対7対応の熱レンズ方式光制御式光路切替装置が用いられる。
【0015】
(5)上記(3)または(4)に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
1対7対応の光制御式光路切替装置は、信号光透過・制御光吸収層を有する熱レンズ形成素子を含み、制御光出射側および信号光受光側の光路は7芯光ファイバーである。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の光路切替型光信号送受信装置において、光路切替型光信号送受信装置は、
1対N対応光制御式光路切替装置から上位光信号送受信装置への上り信号光が、波長1260〜1360nmの範囲に含まれる波長の光であり、
上位光信号送受信装置から1対N対応光制御式光路切替装置への下り信号光が、波長1480〜1500nmの範囲に含まれる波長の光であり、
制御光が、980〜1250nmの範囲に含まれる波長の光である。
【0017】
(7)本発明の他の形態の光路切替型光信号送受信装置は、光制御式光路切替型光信号送受信装置と、光制御式光路切替装置を駆動するための制御光の一部を用いた反射型スターカップラー方式相方向光通信装置とを組み合わせた装置であって、
上位光信号送受信装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第1の光路を介して前記上位光信号送受信装置へ接続された1対7対応光制御式光路切替装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第2の光路を介して前記1対7対応光制御式光路切替装置へ接続され、かつ前記第2の光路を介して信号光を1対7対応光制御式光路切替装置に対して送受信する7台の下位光通信アダプターと、
電気回路により前記7台の下位光通信アダプターの各々に接続されたユーザー側装置と、
7台の下位のユーザー側光通信アダプターの各々に設けられ、少なくとも上り光信号送信機構と、下り光信号受信機構と、前記1対7対応光制御式光路切替装置を駆動するための、前記信号光とは異なる波長を有する制御光を発生させる制御光光源と、前記制御光光源の波長を用いた光通信の送受信機構とを備えたに光送受信制御回路と、
前記1対7対応光制御式光路切替装置と前記7台のユーザー側光通信アダプターとを繋ぐ制御光の、光ファイバーまたは光導波路からなる第3の光路と、
前記制御光の第3の光路の各々の途中に設けられた複数の分配器と、
前記分配器からの光ファイバーまたは光導波路からなる第4の光路を束ねる合波器および前記合波器の束ねられた出射端に設けられたミラーとからなる反射型スターカップラーと、を備える。
【0018】
(8)上記(2)から(7)のいずれか1つに記載の光路切替型光信号送受信装置において、光路切替型光信号送受信装置は、
前記1対N対応光制御式光路切替装置又は前記1対7対応光制御式光路切替装置に制御光が全く照射されない場合に信号光が出射する第2の光路に接続された下位光通信アダプターからの制御光の第3の光路上には分配器を設けず、
前記下位光通信アダプターからの制御光は前記反射型スターカップラーに直結する。
【0019】
(9)本発明の光信号送受信方法は、
信号光とは波長の異なる制御光を用いて、光制御方式により、制御光とは波長の異なる1種類以上の波長の信号光の光路をN個の異なる方向へ切り替える方法、および、前記制御光に光通信の信号を重畳し、前記信号光の一部を分配した後、合波し、合波した後、ミラーで反射して戻すことで制御光の波長の光相方向通信を行う方法を組み合わせた光信号送受信方法であり、前記Nを2以上の整数とするとき、
上位光信号送受信装置を経由した光通信を希望するユーザー側装置に接続した下位光通信アダプターは、
まず反射型スターカップラー方式光LANで他のユーザーの通信状況をモニターし、
時間分割多重送受信のための同期を行い、
また、上位光信号送受信装置への上り信号を送出するための時間分割多重のタイムスロットを把握し、
前記下位光通信アダプターに搭載された制御光光源を、自分に与えられた時間分割多重のタイムスロットに応じて駆動し、
制御光とは波長の異なる1種類以上の波長の信号光の光路をN個の異なる方向へ切り替える光制御式光路切替装置からの光路を自分に接続するよう切り替え、
他の下位光通信アダプターへの同期信号を送出し、
上位光信号送受信装置への上り信号を送出し、前記上り信号には、対応する戻り・下り信号のための識別コードを賦与し、
同時に、上位光信号送受信装置からの下り信号を受信し、下り信号の暗号を解読し、ユーザー宅宛信号かつ宅内ユーザー側装置の識別コードを判断して、自分宛信号を自分の接続しているユーザー側装置へ送り、宅内の他のユーザー側装置宛の信号は、制御光光源を経由させ、反射型スターカップラー方式光LANで繋がれた当該ユーザー側装置へ配信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る光路切替型光信号送受信装置および光信号送受信方法は、次の効果を奏する。
【0021】
第1に、ユーザー側装置のいずれか1台が光通信を行おうとした場合のみ、当該下位光通信アダプター装置のE/O変換装置・O/E変換装置・レーザー光源などに通電され、光通信の行われない時間帯には光通信のための電力を一切、消費しない、すなわち、待機電力ゼロの宅内光通信システムを構築することができる。
【0022】
第2に、ユーザー側装置のいずれか1台が上り光通信を送出するために上位への光路を切替・占有していても、下り光信号を常時受信して、他のユーザー宛下り信号を、制御光波長の光LANを通じて再配信することで、特定のユーザーが下り光通信を占有することを回避することができる。
【0023】
第3に、他のユーザー側装置の制御信号送出状況をモニターし、他者と同期させた時間分割多重の自分のタイムスロットにおいて制御光および上位装置への上り信号を送出することで、制御光および上位装置への上り信号の衝突を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光路切替型光信号送受信装置を示すブロック構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光路切替型光信号送受信装置において光制御光路切替装置と選択的に接続されて複数台数が用いられる内の1つの、ユーザー側装置に接続される下位光通信アダプターを示すブロック構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光路切替型光信号送受信装置において光制御光路切替装置と選択的に接続されて複数台数が用いられる内の1つの、ユーザー側装置に接続される光通信アダプター内部のO/EならびにE/O変換器および光信号送受信制御回路を示すブロック構成図である。
【図4】第1の実施形態において使用される丸ビーム方式1対7対応光路切替装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】図4におけるA−A’線断面図であり、7芯光ファイバーの光出射側端面を模式的に示す図である。
【図6】図4におけるB−B’線断面図であり、7芯光ファイバーの受光側端面を模式的に示す図である。
【図7】波長1310nm上り信号のタイムスロットと光LAN制御光が割り振るタイムスロットの関係を示す概念図である。
【図8】光制御式光路切替装置の制御光の波長帯域および光ブロードバンド通信の波長帯域と用途区分を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る光路切替型光信号送受信装置を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1〜図8を参照して本発明の第1の実施形態に係る光路切替型光信号送受信装置を説明し、併せて光信号送受信方法を説明する。なお、以下の説明において、「光ファイバーまたは光導波路からなる光路」を単に「光路」と略記することとする。伝搬する「光」そのものを図示することはできないので「光ファイバーのコアを伝搬する光路」を図示することで、その光路を伝搬する「光」を表現するものとし、「光およびその光路」という表現をする。また、上位光信号送受信装置を「局舎側光信号送受信装置」と呼ぶこととする。
【0027】
以下の実施形態は「N=7」を例にとって説明する。「N=7」の場合、光制御式光路切替装置100は特許文献6に記載した1対7対応の光制御式光路切替装置である。ここで、特許文献6に記載のように、図4に示す7芯光ファイバーの中心光ファイバー・コア400に信号光を、6本の周辺光ファイバー・コア401〜406に制御光を各々伝搬させるが、6本すべての周辺光ファイバー・コアのいずれかに制御光を伝搬させるのではなく、周辺光ファイバー・コアのいずれか特定の1,2,3,4,5本のみ、のいずれかに制御光を伝搬させることで、各々、1対2、1対3、1対4、1対5、および、1対6対応光制御式光路切替装置として作動させることができる。
【0028】
図1において、ユーザー側光路切替型光信号送受信装置11はユーザー側宅内装置に相当し、分配器5で分岐された下り信号ならびに上り信号光の内、ユーザー側光路切替型光信号送受信装置11に接続する1001以外の1002,1003,1004などは他のユーザー宅へ接続される。分配器5は局舎側光信号送受信装置1へ光路1001で接続されており、局舎側光信号送受信装置1の1台に接続しているユーザー宅内のユーザー側光路切替型光信号送受信装置11は通常32台ないし64台である。分配器5は、通常、多段接続で用いられ、例えば、1段目4分配1基と2段目8分配を4基組み合わせることで、合計32分配となる。
【0029】
局舎側光信号送受信装置1はインターネット網2およびAVサーバー3に送受信可能に接続している。
【0030】
分配器5で分岐された下り信号ならびに上り信号光1001の内、下り信号は分波器10により、波長帯域1550nmの分波されたデジタル映像・音響データ信号光1031と中心波長1490nmの下り信号に分波される。なお、中心波長1310nmの上り光信号は分波器10を透過して局舎側光信号送受信装置1へ向けて光路1001を進み、分配器5を通過して他のユーザーからの上り信号と合波されて光路1000を進んでいく。デジタル映像・音響データ信号光1031はAV受信装置によってO/E変換および暗号解読され、デジタル映像・音響データの電気信号1032,1033としてユーザー側装置160の中の地上波デジタルTVやAVレコーダーへ伝送される。
【0031】
一方、デジタル映像・音響データ信号光1031と分波された上りおよび下り信号光1011は、光信号のまま、光制御式光路切替装置100にて、制御光1211〜1216のいずれもが照射されない場合はユーザー側装置160の例えばIP電話送受信装置へ、制御光1211〜1216のいずれかが照射された場合、光路1111〜1116に切り換えるために、図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台のいずれかに、光路が切り替えられて接続される。光路が切替接続されると、図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台のいずれかから局舎側光信号送受信装置1への「上り」と、局舎側光信号送受信装置1から下位光通信アダプター110の7台への「下り」の光通信が同時に可能となる。
【0032】
図2は、図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の内、制御光1211が照射された場合に、光制御式光路切替装置100にて、局舎側光信号送受信装置1への光路が接続される下位光通信アダプター111を代表例として詳細を示したブロック図である。
【0033】
図3は、下位光通信アダプター111内部のレーザーダイオード(以下、LDと略記する)電源および光送受信制御回路301の詳細を示したブロック図である。
【0034】
図4は、第1の実施形態において使用される丸ビーム方式1対7対応の光制御式光路切替装置100を示す概略構成図である。
【0035】
図5は、図4におけるA−A’線断面図であり、制御光出射側7芯光ファイバー440の光出射側端面を模式的に示す図である。
【0036】
図6は、図4におけるB−B’線断面図であり、信号光受光側7芯光ファイバー450の受光側端面を模式的に示す図である。
【0037】
図7は、局舎側光信号送受信装置1が割り振る、波長1310nm上り信号のタイムスロットとユーザー側宅内光LAN制御システムがユーザー側装置160〜166へ割り振るタイムスロットの関係を示す概念図である。
【0038】
図8は、光制御式光路切替装置100の制御光の波長帯域(980〜1250nm)および光ブロードバンド通信の波長帯域と用途区分を示す図である。すなわち、局舎側光信号送受信装置1への「上り」光信号として波長1260〜1360nm、中心波長1310nmの光が、同「下り」光信号として波長1480〜1500nm、中心波長1490nmの光が、また、AVデータの配信には中心波長1550nmの光が用いられている。
【0039】
以下、ユーザー側光路切替型光信号送受信装置11を構成する部品に関して、順を追って詳細を説明する。
【0040】
図1に示す分波器10は、中心波長1310nmの上り光信号を効率良く光路1001へ透過し、中心波長1490nmおよび1550nmの下り光信号を各々効率良く波長選択して各々、光路1031および1011へ透過するものであれば、任意の公知の方式のものを使用することができる。具体的には、例えば、中心波長1490nmおよび1550nmの光信号を各々選択的に反射し、中心波長1310nmの光信号を選択的に透過するダイクロマティックミラー2枚の組み合わせ、あるいは、光サーキュレーターとファイバーブラッググレーディング(以下、FBGと略記する)の組み合わせなどを好適に使用することができる。
【0041】
図1および図4〜6に示すように、第1の実施形態に用いられる光制御式光路切替装置100において、信号光1011(中心波長1310nmの上り光信号および中心波長1490nmの下り光信号)は、制御光1211〜1216の照射がない場合、制御光出射側の7芯光ファイバー440の中心コア400(図5)から出射し、図4に示す直進信号光4200として信号光受光側7芯光ファイバー450の中心コア420(図6)へ入射し、光路1110を通じて下位光通信アダプター110へ光路切替接続される。
【0042】
図1および図4〜6に示すように、第1の実施形態に用いられる光制御式光路切替装置100において、信号光1011(中心波長1310nmの上り光信号および中心波長1490nmの下り光信号)は、制御光1211〜1216のいずれかが照射された場合、制御光出射側の7芯光ファイバー440の中心コア400(図5)から出射し、図4に示す光路変更された信号光4201,4202、などとして信号光受光側7芯光ファイバー450の周辺コア421〜426(図6)のいずれかへ入射し、光路1111〜1116のいずれかを通じて、図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台の内のいずれか1台へ光路切替接続される。本実施の形態では、例えば、図1の最上段の下位光通信アダプター110は、図4の信号光受光側7芯光ファイバー450の中心コア420に接続され、一方、図2の上から2段目以降の下位光通信アダプター110の6台は、図4の信号光受光側7芯光ファイバー450の周辺コア421〜426に接続される。
【0043】
図2に示すように、図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の代表例としての下位光通信アダプター111において、信号光1111(中心波長1310nmの上り光信号および中心波長1490nmの下り光信号)は光コネクター21を経由し、光路2001を透過して合波器23へ接続される。
【0044】
図2に示すように、合波器23は、「波長1310nm上り光信号E/O変換器202」(以下「E/O変換器202」ともいう)に内蔵されたLDから発振される中心波長1310nmの上り光信号2003と、局舎側光信号送受信装置1から送出された中心波長1490nmの下り信号2002を合波するものであり、具体的には例えば、2本のシングルモード光ファイバーのコア部分を融着させた構造のファイバーカップラー、あるいは、中心波長1310nmの光を選択的に反射し、中心波長1490nmの光を選択的に透過するダイクロマティックミラーを用いた公知の光学装置を好適に使用することができる。合波器23を出射した中心波長1490nmの下り信号2002は「中心波長1490n下り光信号O/E変換器201」(以下「O/E変換器201」という)によって電気信号2011に変換され、LD電源および光送受信制御回路301へ接続される。また、中心波長1310nmの上り光信号E/O変換器202に内蔵されたLD(図示せず)への駆動電力および上り信号は、LD電源および光送受信制御回路301から電気信号2012として送出され、対応した中心波長1310nmの上り光信号2003として上位の局舎側光信号送受信装置1へ向けて送出される。
【0045】
図2に示すように、下位光通信アダプターの代表例111において、制御光1201(例えば波長980nmの制御光兼下位光通信アダプター間相方向接続光LANの信号光)は光コネクター22を経由し、光路2201を透過して光信号分離分配器24へ接続される。
【0046】
図2に示すように、光信号分離分配器24は、波長980nmの制御光兼内部上り光信号E/O変換器204に内蔵されたLDから発振される中心波長980nmの内部上り光信号2202と、自分自身を含む下位光通信アダプターから送出された、反射型スターカップラー方式光LANの中心波長980nmの内部下り信号2203とを分離するものである。
【0047】
光信号分離分配器24として具体的には、以下の手段のいずれか1つを好適に用いることができる。
【0048】
(1)光サーキュレーター:
一般的には、光を一方向のみ通すデバイス「光アイソレーター」として、偏光を利用したものが使われている。ここで、光アイソレーターを3個以上リング状に接続すると、一方の回転方向には透過するが逆方向には透過しないようにすることができ、このような光機能素子を「光サーキュレーター」と呼ぶ。光サーキュレーターを用いることで、同じ波長の信号を正方向と逆方向で完全に分離することが可能となる。ただし、光アイソレーターを3個用いるため、コスト高となる。
【0049】
(2)光アイソレーター2個と1対2ファイバーカップラーの併用:
1対2ファイバーカップラーの結合側を光路2201に直接接続し、同分離側2本を光アイソレーター「正方向」および「逆方向」として、図2に示す光の進行方向に合致するよう、各々光路2202または2203と接続する。
【0050】
(3)1対2ファイバーカップラーと電気的処理の併用:
1対2ファイバーカップラーの結合側を光路2201に直接接続し、同分離側2本を各々、「内部上り光信号E/O変換器204」(以下「E/O変換器204」ともいう)および「内部下り光信号O/E変換器203」に接続し、「内部下り光信号O/E変換器203」(以下「O/E変換器203」ともいう)が受信した電気信号から、「内部上り光信号E/O変換器204」が送出したシグナルを電子処理で打ち消し、消去する。電子処理が問題無く実施できる場合、この手段が最もローコストである。
【0051】
図2において、光信号分離分配器24を出射した中心波長980nmの内部下り信号2203はO/E変換器203によって電気信号2211に変換され、LD電源および光送受信制御回路301へ接続される。また、「中心波長980nmの内部上り光信号E/O変換器204」に内蔵されたLD(図示せず)への制御光駆動電力および内部上り信号は、LD電源および光送受信制御回路301から電気信号2212として送出され、中心波長980nmの制御光兼内部上り光信号2202として送出される。なお、LD電源および光送受信制御回路301におけるレーザーダイオード(LD)電源は、信号光と波長の異なる波長を有する制御光を発生させる制御光光源である。
【0052】
図2および図3に示すように、下位光通信アダプターの代表例111内部のLD電源および光送受信制御回路301は、図3に示すTCP/IP、USB、PCI、PCカードバスなどのインターフェイス341〜344のいずれか1つを経由し、電気信号コネクターへの電気配線2111〜2114、および、図2に示すTCP/IP、USB、PCI、PCカードバスなどのコネクター211〜214のいずれかを通じ、電気信号コネクターからユーザー側装置への電気ケーブルまたは電気回路2221〜2224を伝導し、ユーザー側装置221(パソコン、地デジTV、AVレコーダー、ゲーム機、など;図1のユーザー側装置160の各機に相当)へ接続される。
【0053】
種々のインターフェイスの内、PCI接続はデスクトップ型パソコン向け、一方、PCカードバス接続はノート型パソコン向けに特化したものであり、お互いに排他的である。これら2つの内のいずれか1つと、TCP/IPおよびUSB接続は混在可能である。
【0054】
図2に示す電源アダプター220、電源ケーブル2220、電源コネクター210、および、電源配線2110は、下位光通信アダプターがPCI接続またはPCカードバス接続の場合、不要である。一方、USB接続での電源供給能力が不足する場合、および、TCP/IP接続の場合は必ず、電源アダプター220、電源ケーブル2220、電源コネクター210、および、電源配線2110を通じての、LD電源および光送受信制御回路301への電力供給が必須である。いうまでもなく、これらの電力は、当該ユーザー側装置160〜166が光通信を希望する場合のみ消費され、光通信が行われない場合、「待機電力」は一切発生しないようにすることができる。
【0055】
なお、図1に示す下位光通信アダプター110の大きさは、試作段階では「弁当箱」と同等以上であるが、光部品のファイバー素子化とモジュール化、および、電子回路のLSI化によって、PCIカードのサイズから、最終的には、ノートパソコン用PCカードのサイズまで小型化されると期待される。
【0056】
図3に示すように、LD電源および光送受信制御回路301の内部においては、以下に示すように、通信制御ソフトウエアが諸機能を制御する。
【0057】
LD電源および光送受信制御回路301とのI/O回路を整理すると以下の通りである。なお、LD電源および光送受信制御回路301の電源回路302は必要に応じて、電源配線2110および電源コネクター210を経由して、外部から電力の供給を受けることが可能である。
【0058】
LD電源および光送受信制御回路301の外部、内部光LAN、および、ユーザー側装置との接続I/O回路は以下の通りである。
【0059】
図2の一番下に図示されたユーザー側装置221(パソコン、地デジTV、DVD録画機、ゲーム機、など)のユーザーが上位の局舎側光信号送受信装置1を経由してインターネットへの接続を希望すると、「リクエスト信号」は電気回路2221〜2224のいずれかを通り、TCP/IP、USB、PCI、PCカードバスなどのコネクター211〜214のいずれか、および、電気配線2111〜2114のいずれか、次いで図3に示すインターフェイス341〜344のいずれか1つを経由し、図3に示すように、「宅内ユーザー側装置からの上り電気信号インターフェイス332」に到達すると、[1]局舎側光信号送受信装置1への上り信号3324と、[2]宅内・ユーザー側装置160から外部への上り信号送出のための「光制御光スイッチ制御光照射の要求信号3325」が送出される。[1]局舎側光信号送受信装置1への上り信号3324と、[2]宅内・ユーザー側装置160から外部への上り信号送出のための光制御光スイッチ制御光照射の要求信号3325は、各々、中心波長1310nm上り光信号送出バッファ322、および、「中心波長980nm制御光兼内部上り光信号送出バッファ323」に一時記憶される。
【0060】
図7には、1310nm上り信号のタイムスロットと光LAN制御光が割り振るタイムスロットの関係が示されている。図7に示すように、中心波長1310nm上り光信号送出バッファ322、および、中心波長980nm制御光兼内部上り光信号送出バッファ323からの光信号送出のタイミングは、以下に示すような制御手順に従い、内部上り光信号の衝突を避けるための内部時間分割多重通信のタイムスロット(図7のch.0〜ch.6)および複数ユーザーから局舎側光信号送受信装置1への上り信号の衝突を避けるための外部時間分割多重通信のタイムスロット(図7のNo.01、No.02)を同期させて制御される。
【0061】
まず、内部時間分割多重通信のタイムスロットch.0〜6を図7の外部時間分割多重通信のタイムスロットの1つのNo.01に重ねて示すように「等時間長」とする場合、外部タイムスロットNo.01の開始時刻をTs、終了時刻をTeとし、内部時間分割多重通信の7つのタイムスロット(図7のch.0〜ch.6)の開始時刻を各々t0,t2,t4,t6,t8,t10,t12、終了時刻を各々t1,t3,t5,t7,t9,t11,t13とすると、これらタイムスロットの開始時刻と終了時刻は、以下の不等式[1]に示すような大小関係にある。
【0062】
[数1]
Ts<t0<t1<t2<t3<t4<t5<t6<t7<t8<t9<t10<t11<t12<t13<Te …[1]
【0063】
また、前記複数タイムスロットの開始時刻と終了時刻が前記不等式[1]を満足するために設ける「ガードバンドTg」を下記の式[2]の様に定義し、また、内部時間分割多重通信の7つのタイムスロットの「時間幅tw」を下記の式[3]の様に定義する。
【0064】
[数2]
Tg=t0−Ts=t2−t1=t4−t3=t6−t5=t8−t7=t10−t9=t12−t11=Te−t13…[2]
【0065】
[数3]
tw=t1−t0=t3−t2=t5−t4=t7−t6=t9−t8=t11−t10=t13−t12 …[3]
【0066】
ここで、外部時間分割多重通信のタイムスロットの1つ(例、図7のNo.01)の時間幅(Te−Ts)は、局舎側光信号送受信装置1に接続しているユーザー数が32の場合、31.25ミリ秒である。ガードバンドTgは外部時間分割多重通信のタイムスロットの1つにつき8つ設ける必要があり、1つのガードバンドTgを1.5ミリ秒とすると、内部時間分割多重通信の7つのタイムスロットに割り当て可能な時間は合計19.5ミリ秒(31.25−1.5×8)であり、内部時間分割多重通信タイムスロット1つの時間幅twは2785.7マイクロ秒となる。中心波長1310nm上り光信号および中心波長1490nmの下り光信号の通信速度が1Gbit毎秒の場合、内部時間分割多重通信タイムスロット1つで2.79Mbitの情報を、宅内・ユーザー側装置1台と局舎側光信号送受信装置1との間で送受信することが可能である。
【0067】
なお、光制御式光路切替装置100における光路切替は上記のガードバンドTg(1.5ミリ秒)の時間内に実施される。
【0068】
ついで、内部時間分割多重通信のタイムスロットch.A,B,C、およびD〜Gのいずれかを図7の外部時間分割多重通信のタイムスロットの1つNo.02に重ねて示すように「不等時間長」とする場合、外部タイムスロットNo.02の開始時刻をTs’、終了時刻をTe’とし、不等時間長・内部時間分割多重通信の4つのタイムスロット(図7のch.A,B,C、およびD〜Gのいずれか)の開始時刻を各々t14,t16,t18,t20、終了時刻を各々t15,t17,t19,t21とすると、これらタイムスロットの開始時刻と終了時刻は、以下の不等式[4]に示すような大小関係にある。
【0069】
[数4]
Ts’<t14<t15<t16<t17<t18<t19<t20<t21 <Te’ …[4]
【0070】
また、前記複数タイムスロットの開始時刻と終了時刻が前記不等式[4]を満足するために設ける「ガードバンドTg’」を下記の式[5]の様に定義し、また、不等時間長・内部時間分割多重通信の4つのタイムスロットの「時間幅twA,twB,twC,twD〜twG」を下記の式[6〜9]の様に定義する。
【0071】
[数5]
Tg’=t14−Ts’=t16−t15=t18−t17=t20−t19=Te’−t21 …[5]
【0072】
[数6]
twA=t15−t14 …[6]
【0073】
[数7]
twB=t17−t16 …[7]
【0074】
[数8]
twC=t19−t18 …[8]
【0075】
[数9]
twD=twE=twF=twG= t21−t20 …[9]
【0076】
ここで、外部時間分割多重通信のタイムスロットの1つ(例、図7のNo.02)の時間幅(Te’−Ts’)は、局舎側光信号送受信装置1に接続しているユーザー数が32の場合、31.25ミリ秒である。図7のNo.02に重ねて図示された不等時間長・内部時間分割多重通信の4つのタイムスロットについてはガードバンドTg’は外部時間分割多重通信のタイムスロットの1つにつき5つ設ける必要があり、1つのガードバンドTg’を1.5ミリ秒とすると、不等時間長・内部時間分割多重通信の前記4つのタイムスロットに割り当て可能な時間は合計23.75ミリ秒(31.25−1.5×5)であり、不等時間長・内部時間分割多重通信タイムスロットの時間幅twA,teB,twC,twD〜twGは各々10.18、6.79、3.39、3.39ミリ秒となる。中心波長1310nm上り光信号および中心波長1490nmの下り光信号の通信速度が1Gbit毎秒の場合、不等時間長・内部時間分割多重通信タイムスロットで各々10.2、6.8、3.4、3.4Mbitの情報を、宅内・ユーザー側装置1台と局舎側光信号送受信装置1との間で送受信することが可能である。
【0077】
ここで、不等時間長・内部時間分割多重通信の4つのタイムスロットのユーザー側装置160への割り当ては、例えば、1番長いch.Aを「IP電話送受信装置」に、次に長いch.Bを使用頻度の高い「コンピュータ(1)」へ、次のch.Cを使用頻度の低い「「コンピュータ(2)」へ、割り当てるものとし、使用頻度の特に低い「コンピュータ(3)」、「地上波デジタルTV(番組表を1日数回受信)」、「AVレコーダー((番組表を1日数回受信)」の4台のユーザー側装置については、不等時間長・内部時間分割多重通信の1つch.D〜Gのいずれかを、外部タイムスロットNo.02,03,04,05のいずれか1つに順次、割り当てて使用するものとする。すなわち、タイムスロットch.A,B,Cは1秒間に1回の割合で光通信が行われるが、タイムスロットch.D,E,F,Gについては、4秒間に1回の割合で光通信が行われる。
【0078】
以上説明してきた「不等時間長・内部時間分割多重通信のタイムスロットの数」は4の場合であるが、これを3または2とし、優先されるタイムスロットの割り当て時間を長くし、一方、使用頻度の低いユーザー側装置が光通信を行う頻度を低くすることで、光回線の有効利用が可能となる。このようなタイムスロットの割り当て時間の調整は、LD電源および光送受信制御回路301に組み込まれた「タイムスロット設定ユーティリティソフト」を用いて行うものとする。
【0079】
図3に示すように、まず、上位・局舎側光信号送受信装置1からの中心波長1490nmの下り光信号は、O/E変換器201において変換し、この中心波長1490nmの下り光信号を変換した電気信号2011を「下り信号暗号解読装置、兼、上り回線タイムスロット同期信号分離器」311を通して、「自分宛の暗号解読された電気信号3111」と、「中心波長1310nm上り光信号送出タイミングを表す『外部同期信号』3112」とに分離する。
【0080】
さらに「中心波長1490nmの下り光信号変換電気信号は自分宛か?」の条件判断回路3030によって、「自分宛の暗号解読された電気信号3031」と「宅内他者宛の電気信号3032」とを分離する。自分宛下り光信号3031は「宅内ユーザー側装置への下り電気信号インターフェイス」331、「TCP/IPインターフェイス」341、「USBインターフェイス」342、「PCIインターフェイス」343、または、「PCカードバスインターフェイス」344および各種コネクター211〜214を経て、図2に示すユーザー側装置221(パソコン、地デジTV、DVD録画機、ゲーム機、など)に導かれる。
【0081】
「宅内他者宛の電気信号3032」は廃棄されることなく、中心波長980mの制御光兼内部上り光信号送出バッファ323へ送られ、送出のタイムスロットにおいて、宅内他者へ転送される。
【0082】
「下り信号暗号解読装置、兼、上り回線タイムスロット同期信号分離器311」で分離された中心波長1310nm上り光信号送出タイミングを表す『外部同期信号』3112は、「タイムスロット同期信号送受信器321」へ送られる。「タイムスロット同期信号送受信器321」は「中心波長1310nm上り光信号送出バッファ322」および「中心波長980nm制御光兼内部上り光信号送出バッファ323」へ、内部時間分割多重通信のタイムスロット(ch.0〜ch.6またはch.A〜ch.G)および外部時間分割多重通信のタイムスロット(図7のNo.01、No.02など)を同期させた送出命令3211および3210を送出する。送出命令3211を受けた中心波長1310nmの上り光信号送出バッファ322は「波長1310nmの上り光信号光路が開く時間帯(タイムスロット)を通知する外部同期信号」3110に基づく「波長1310nmの上り光信号光路は開いているか?」の条件判断回路3010の最終判断を経て、光路が開いている場合、波長1310nmの上り光信号E/O変換器(レーザーダイオード)202へ電気信号2012が送られる。光路が閉じている場合、待機命令3012が波長1310nmの上り光信号送出バッファ322へ送られる。
【0083】
一方、中心波長980nmの内部下り信号O/E変換器203からの電気信号2211は「波長980nmの他者の光信号はあるか?」の条件判断回路3020によって、他者の光信号がある場合、送出信号3021は内部タイムスロット同期信号分離器312に送られ、分離された内部タイムスロット同期信号3120(図7のch.0〜ch.6またはch.A〜ch.G)はタイムスロット同期信号送受信器321へ送られる。条件判断回路3020によって、他者の光信号がないと判断された場合、送出許可命令3022が波長980nmの制御光、兼、内部上り光信号送出バッファ323へ送られる(ただし、送出のタイミングはタイムスロット同期信号送受信器321からの送出命令3210に準拠する)。送出命令3210および3022を受けた中心波長980nmの制御光、兼、内部上り光信号送出バッファ323から中心波長980nmの制御光兼内部上り光信号E/O変換器(レーザーダイオード)204へ電気信号である「制御光制御電流 兼 内部上り信号2212」が送られる。
【0084】
内部タイムスロット同期信号分離器312を通過した中心波長980nmの下り光信号変換電気信号3121は「波長980nmの下り光信号変換電気信号は自分宛か?」の条件判断回路3040で自分宛と判断された場合、自分宛下り信号3041は宅内ユーザー側装置への下り電気信号インターフェイス331へ送られ、自分宛でない信号3042は廃棄される。
【0085】
上記のような高度な光通信機能(外部との中心波長1310nm上り光信号、同中心波長1490nmの下り光信号、および、中心波長980nmの内部相方向光通信)を有する下位光通信アダプター110の7台は、図1に示すように、光制御式光路切替装置100への中心波長980nmの制御光を、下位光通信アダプター相互間の光LANにおける内部通信光として兼用している。このようなシステムを実現するため、制御光1200〜1206の一部を分配器120〜126にて1/10ないし1/100(光パワーとして0.1mWないし数mW)の強度で分離し、合波器130にて合波した後、束ねた光路の出射端に設けた鏡140にて反射させる。分配器120〜126としては、2本のシングルモード光ファイバーのコアを融着させて構成した1対2型ファイバーカップラー方式の分配器を、また、合波器130としては、7本のシングルモード光ファイバーのコアを融着させて構成した1対7対応のファイバーカップラーを用いることができる。分配器120を通過した強い方の光はビーム止135に導かれる。一方、分配器121〜126を通過した強い方の光は制御光1211〜1216として光制御光路切替装置100の制御光出射側7芯光ファイバー440の周辺コア401〜406(図4)に接続される。鏡140としては、1対7対応のファイバーカップラー型合波器130の束ねられた光路の出射端面に設けられた、誘電体多層膜からなる全反射膜を好適に用いることができる。誘電体多層膜としては酸化チタンと酸化ケイ素の相互多層積層膜を好適に用いることができる。
【0086】
特許文献8(特開2000−121865号公報)の図5に記載の通り、図1に示すファイバーカップラー型合波器130の束ねられた光路の出射端面に設けられたミラーによって、合波器130に接続された光送受信装置(図1の分配器120〜126に相当)のいずれかから送信された信号は、自分自身を含めたすべての光送受信装置図1の分配器120〜126に相当)へ配信される。すなわち、以上のような構成によって、反射型スターカップラー方式光LANを構築することができる。
【0087】
本発明のユニークな点は、図1に示す光制御光路切替装置100の制御光を単にON−OFFさせるだけでなく、中心波長980nmの制御光兼内部上り光信号E/O変換器204などによって強度変調することによって、反射型スターカップラー方式光LANにおける相互情報伝送に兼用する点である。中心波長980nmの制御光の衝突を避けるため、自分が制御光を送出する前にまず、他者が中心波長980nmの制御光を照射しているか否かを受信して確認し、他者が中心波長980nmの制御光を照射していない場合は、自分に割り当てられたタイムスロットにおいて、光制御光路切替装置100を自分の光路へ切り替えるための制御光、兼、他者への通信光(同期信号および中心波長1490nmの下り光信号を中心波長980nmの信号光に変換した信号)として送出する。一方、他者が中心波長980nmの制御光を照射している場合、同期信号を受信して自分の出射タイミングまで待機すると同時に、中心波長980nmの信号光に変換された信号から、自分宛の外部からの下り信号を選択して受信する。このようにすることによって、待機電力を実質的にゼロとしたまま、中心波長1310nmの上り信号および波長980nmの制御光の衝突を避け、かつ、中心波長1490nmの下り信号が特定のユーザーに占有されることを避けることが可能となる。
【0088】
本発明では、上記のように図1に示す光制御光路切替装置100の制御光を単にON−OFFさせるだけでなく、中心波長980nmの制御光兼内部上り光信号E/O変換器204などによって強度変調することによって、反射型スターカップラー方式光LANにおける相互情報伝送に兼用するため、中心波長980nmの制御光兼内部上り光信号の光源の出力を、制御光を単にON−OFFさせる場合よりも大きくする必要がある。すなわち、本発明における制御光1201〜1206および1211〜1216には、光信号を送るためのON−OFF変調がなされるため、熱レンズ方式光制御光スイッチを駆動するための「制御光パワー」は、「ON−OFF変調なし」の場合に比べ、概ね半減する。従って、中心波長980nmの制御光兼内部上り光信号E/O変換器204などに搭載されるレーザーダイオードの実効出力を、光信号を送るためのON−OFF変調を行わない場合の2倍程度とすることが好ましい。
【0089】
図4において、矢印4001は光制御式光路切替装置100での制御光の進行方向を示す。制御光4010または4020等、および信号光4100が、熱レンズ形成素子47の信号光透過・制御光吸収層40またはその近辺にて収束し、かつ制御光4010または4020等、および信号光4200の各々の収束点の位置が光軸に対し垂直方向で相異なるように照射される。制御光4010または制御光4020等の波長は、信号光透過・制御光吸収層40が吸収する波長帯域から選ばれる。信号光4200の波長は、信号光透過・制御光吸収層40が吸収しない波長帯域から選ばれる。制御光4010または制御光4020等と信号光4200は、信号光透過・制御光吸収層40またはその近辺に各々収束して入射され、1つ以上の制御光4010または制御光4020等の各々の照射の有無および各々の照射強度に応じ、信号光透過・制御光吸収層40内にて制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因する屈折率変化により、信号光の進行方向を変える。進行方向が変えられた信号光4201または信号光4202等は、光路切替要求に応じ、受光側の光ファイバー・コア420〜426に選択的に入射される。
【0090】
図4において、熱レンズ形成素子47の信号光透過・制御光吸収層40は、分光透過特性として、中心波長1310nmの上り光信号、および、中心波長1490nmの下り光信号をロス少なく透過し、中心波長980nmの制御光を無駄なく吸収することが好ましい。すなわち、波長980nm近辺に吸収極大を有し、波長1300〜1600nmの領域においては光吸収を示さない有機色素を高沸点かつ低粘度の有機溶剤に溶解した溶液(色素溶液)を熱レンズ形成素子47の信号光透過・制御光吸収層40として好適に使用することができる。熱レンズ形成素子47の信号光透過・制御光吸収層40以外の部分は、例えば厚さ0.5mmの石英ガラスで構成される。熱レンズ形成素子47の信号光透過・制御光吸収層40の形状は、例えば、厚さ0.2ないし0.5mm、直径3ないし8mmの薄い円柱状で、円柱の底面に垂直方向に信号光1011が入射するよう配置される。
【0091】
波長980nm近辺に吸収極大を有し、波長1300〜1600nmの領域においては光吸収を示さず、芳香族系有機溶剤に容易に溶解する色素としては、例えば、山本化成株式会社のYKR−3081を用いることができる。この色素を溶解する有機溶剤としては、次に示す構造異性体4成分(分子量は同一)の混合溶剤が推奨される。各成分の混合比率は各々5ないし50%の範囲で任意である。
・第1成分:1−フェニル−1−(2,5−キシリル)エタン
・第2成分:1−フェニル−1−(2,4−キシリル)エタン
・第3成分:1−フェニル−1−(3,4−キシリル)エタン
・第4成分:1−フェニル−1−(4−エチルフェニル)エタン
【0092】
本発明で用いられる光ファイバーまたは光導波路の必要特性として、中心波長980nm〜1600nmの光をできるだけ少ない伝送ロスで、シングルモードで伝送できることが要求される。下位光通信アダプター110の7台には、各々、信号光の光路1110〜1116と制御光の光路1200〜1206が、光コネクター21および22をなどを介して接続されるが、前記伝送特性を考慮し、信号光の光路と制御光の光路とを、別の規格の光ファイバーで構成しても良い。また、接続ミスを無くすため、信号光用の光コネクター21と制御光用の光コネクター22を別の形状の規格品とすることが推奨される。また、シングルモード光ファイバーのコネクターの加工を一般家庭で行うことは容易でないため、予め、長さを揃えて、信号光用ファイバーと制御光用ファイバーを束ねて一体化した「光りLANケーブル(光コネクター付)」を、例えば1,2,3,4,5,7,10,15,20,25,30,40,50mの定尺規格品として提供することが好ましい。
【0093】
図1および図6において、下位光通信アダプターからの制御光がすべて照射されず、信号光が直進して入射する「中心コア420」に接続される信号光の光路1110が接続する図1の最上段の下位光通信アダプター110は、機能面および仕様面いずれも特殊である。すなわち、機能面において、図1の最上段の下位光通信アダプター110には、「待機電力ゼロでIP電話の着信に対応すること」が要求される。換言すると、ユーザー側装置としてIP電話送受信装置を接続する下位光通信アダプターは、制御光がすべて照射されず、信号光が直進する光路に接続されていることが必須である。IP電話送受信装置で待機電力をゼロとするには、着信・光信号によって、図1の最上段の下位光通信アダプター110上のO/E変換器において、フォトダイオードで発生した電気信号をトリガーとして始動する電気回路を設ければ良い。最初の着信・光信号は電気回路を起動するために使用し、最初の着信信号の内容については、送り出し側における「着信失敗→再送信」の手順で再送信される光信号を解読するものとする。このような「光ウエイクアップ光LAN機能」は、図1の最上段の下位光通信アダプター110以外の図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台が備えていても良く、そうすることで、下位光通信アダプターの仕様を統一することができる。
【0094】
一方、仕様面において、制御光がすべて照射されない場合に直進する信号光が接続される図1の最上段の下位光通信アダプター110は、他の図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台とは以下の点が異なる。
[1]図1の最上段の下位光通信アダプター110からの制御光1200が分配器120で分配されたビーム1210は光制御式光路切替装置100に繋ぐ必要がなく、反射型スターカップラー方式光LANへ繋がる制御光1220のみが必要である。
[2]図9に示すように、第2の実施形態では、図9の最上段の下位光通信アダプター110からの制御光1200の途上に分配器120を設けない構成を取っている。この場合、図9の最上段の下位光通信アダプター110からの制御光1200の送出パワーを他の図9の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台の場合の1/10ないし1/100として、分配器121などで分岐された場合と同等の強度に揃える必要があり、1セットで最大7台使用する下位光通信アダプター中1台を特殊仕様とすることになる。特に、ユーザー側装置160の中でIP電話送受信装置を使用しない場合、下位光通信アダプター110の7台は同一仕様とし、互換性を高める方が得策である。
[3]図1に示すように第1の実施形態では分配器120で分配されたビーム1210をビーム止135に繋ぐという、構成を採用することで、図1の最上段の下位光通信アダプター110と図1の上から2番目以降の下位光通信アダプター110の6台との仕様を共通化している。こうすることで、ユーザー側装置160の中でIP電話送受信装置を使用しない場合、下位光通信アダプター110の7台の仕様を区別する必要がなく、任意の下位光通信アダプター110を光制御式光路切替装置100の任意のポートに接続して使用することが可能となる。
【0095】
第1の実施形態の反射型スターカップラー方式光LANへ繋がるユーザー側光路切替型光信号送受信装置11を最初に設置した場合および、下位光通信アダプター110が7台未満の構成で使用開始後、下位光通信アダプター110を最大7台まで増設した場合、個々の下位光通信アダプターの個体識別コードを相互に連絡し合い、LD電源および光送受信制御回路301などに搭載された不揮発メモリー(図示せず)に記憶させる「初期設定手順」を行うものとする。具体的には、例えば、図1の上から2番目の下位光通信アダプター110および図1の上から2番目のユーザー側装置160としてコンピューター(1)のみに通電し、前記「初期設定手順」のソフトウエアを起動し、ソフトウエアの指示に従い、図1の最上段の下位光通信アダプター110および図1の上から3番目以降の下位光通信アダプター110の5台ならびに図1の最上段のユーザー側装置160および図1の上から3番目以降のユーザー側装置160の5台の電源を投入し、個体識別コードを相互に連絡していく。
【0096】
[第2の実施形態]
図9を参照して本発明の第2の実施形態に係る光路切替型光信号送受信装置を説明する。
【0097】
第2の実施形態は、以下に説明する構成要素を除き、第1の実施形態と同一であるため、同一構成要素に同一符号を付しその説明を省略する。
【0098】
(a)制御光が照射されない場合の直進信号光が接続する図9の最上段の下位光通信アダプター110は、もっぱら、ユーザー側装置160の中のIP電話送受信装置に接続するための仕様とする。すなわち、IP電話の着信に備えるための、前記「光ウエイクアップ光LAN機能」を搭載し、制御光の光路上に分配器120を設けず、分配器によって1/10ないし1/100に弱められた光パワーに相当する制御光1240を送出する仕様とする。
【0099】
(b)図9の最上段の下位光通信アダプター110から制御光の光路1240上に、図1に示す第1の実施形態に用いた分配器120およびビーム止135を設けない。
【0100】
(c)図9の最上段の下位光通信アダプター110から制御光の光路1240は、直接、合波器130に接続される。
【0101】
上記(a)〜(b)の部分を除き、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る熱レンズ方式光制御式光路切替スイッチを利用した光路切替型光信号送受信装置および光信号送受信方法は、例えば、IP電話・インターネット通信・有線放送などの通信サービスを光ファイバーを通じて行うデータ送信局との光信号送受信システムにおいて、ユーザー側装置の待機電力を極小化し、個々のユーザーがデータ光送受信を行うときのみに、光路切替型光信号送受信装置に繋がる光路が稼働状態となり、かつ、複数ユーザーが事実上同時に利用が可能な省エネルギー型光情報伝送システム等に利用される。
【符号の説明】
【0103】
1 上位(局舎側)光信号送受信装置、2 インターネット網、3 デジタル映像・音響(AV)サーバー、5 分配器、10 分波器、11,12 ユーザー側光路切替型光信号送受信装置、100 光制御式光路切替装置、101 デジタル映像・音響(AV)受信装置、110 下位光通信アダプター、120〜126 分配器、130 合波器、135 ビーム止、140 鏡、150 反射型スターカップラー方式光LAN、160 ユーザー側装置、1000 上りおよび下り信号光およびその光路、1001〜1004 分配された内の1つの下り信号ならびに上り信号光およびその光路、1011 デジタル映像・音響データ信号光と分波された上りおよび下り信号光、1031 分波されたデジタル映像・音響データ光信号、1032,1033 デジタル映像・音響データの電気信号、1110 制御光が照射されない場合の直進信号光およびその光路、1111〜1116 個々のユーザー側装置へ光路切替された上りおよび下り信号光およびその光路、1200〜1206 下位光通信アダプターから光制御式光路切替装置への制御光ならびに内部信号光(上りおよび下り)およびその光路、1210〜1216 分配された下位光通信アダプターから光制御式光路切替装置への制御光およびその光路、1220〜1226 下り内部信号光ならびに分配された上り内部信号光およびその光路、1230 下り内部信号光ならびに合波された上り内部信号光およびその光路、1240 制御光が照射されない場合の直進信号光が接続する下位光通信アダプターからの内部信号光(上りおよび下り)およびその光路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位光信号送受信装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第1の光路を介して前記上位光信号送受信装置へ接続された1対N対応光制御式光路切替装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第2の光路を介して1対N対応光制御式光路切替装置へ接続され、かつ前記第2の光路を介して信号光が1対N対応光制御式光路切替装置に対して送受信されるN台の下位光通信アダプターと、
電気回路により前記N台の下位光通信アダプターの各々に接続されたユーザー側装置と、
N台の下位光通信アダプターの各々に設けられ、少なくとも上り光信号送信機構と、下り光信号受信機構と、前記1対N対応光制御式光路切替装置を駆動するための、前記信号光の波長とは異なる波長を有する制御光を発生させる制御光光源とを備えた光送受信制御回路と、
前記1対N対応光制御式光路切替装置と前記N台の下位光通信アダプターとを繋ぐ制御光の、光ファイバーまたは光導波路からなる第3の光路と、
1つの下位光通信アダプターと前記上位光信号送受信装置との第2の光路を開設するための制御光が1つの下位光通信アダプターの光送受信制御回路から送信されている状態を他の下位光通信アダプターへ伝達し、かつ、制御光が輻輳しないよう制御するための下位データ送受信装置間相方向通信手段と、
を備え、前記Nは2以上の整数であることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
下位データ送受信装置間相方向通信手段が、
N台の下位光通信アダプターの各々に設けられ、前記制御光光源からの前記制御光の波長を用いた光通信の送受信機構と、
前記1対N対応光制御式光路切替装置と前記N台の下位光通信アダプターとを繋ぐ制御光を送信する光ファイバーまたは光導波路からなる各々の光路上に設けられた複数の分配器と、
前記分配器の各々からの、光ファイバーまたは光導波路からなるN本の第4の光路を束ねる合波器と、
前記合波器の束ねられた出力端に設けられたミラーと、
から構成される、反射型スターカップラー方式光LANからなることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
前記Nが7の場合、端面近接7芯光ファイバーの中心ファイバーから出射する信号光の光路を、中心ファイバーの周辺に設けられた6本の光ファイバーから出射する制御光によって7方向に切り替える、1対7対応の熱レンズ方式光制御式光路切替装置が用いられることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
Nが7の場合、端面近接7芯光ファイバーの中心ファイバーから出射する信号光の光路を、中心ファイバーの周辺に設けられた6本の光ファイバーから出射する制御光によって7方向に切り替える、1対7対応の熱レンズ方式光制御式光路切替装置が用いられることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
1対7対応の光制御式光路切替装置は、信号光透過・制御光吸収層を有する熱レンズ形成素子を含み、制御光出射側および信号光受光側の光路は7芯光ファイバーであることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
1対N対応光制御式光路切替装置から上位光信号送受信装置への上り信号光は、波長1260〜1360nmの範囲に含まれる波長の光であり、
上位光信号送受信装置から1対N対応光制御式光路切替装置への下り信号光は、波長1480〜1500nmの範囲に含まれる波長の光であり、
制御光は、980〜1250nmの範囲に含まれる波長の光であることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項7】
光制御式光路切替型光信号送受信装置と、光制御式光路切替装置を駆動するための制御光の一部を用いた反射型スターカップラー方式相方向光通信装置とを組み合わせた装置であって、
上位光信号送受信装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第1の光路を介して前記上位光信号送受信装置へ接続された1対7対応光制御式光路切替装置と、
光ファイバーまたは光導波路からなる第2の光路を介して前記1対7対応光制御式光路切替装置へ接続され、かつ前記第2の光路を介して信号光を1対7対応光制御式光路切替装置に対して送受信する7台の下位光通信アダプターと、
電気回路により前記7台の下位光通信アダプターの各々に接続されたユーザー側装置と、
7台の下位のユーザー側光通信アダプターの各々に設けられ、少なくとも上り光信号送信機構と、下り光信号受信機構と、前記1対7対応光制御式光路切替装置を駆動するための、前記信号光とは異なる波長を有する制御光を発生させる制御光光源と、前記制御光光源の波長を用いた光通信の送受信機構とを備えたに光送受信制御回路と、
前記1対7対応光制御式光路切替装置と前記7台の下位のユーザー側光通信アダプターとを繋ぐ制御光の、光ファイバーまたは光導波路からなる第3の光路と、
前記制御光の第3の光路の各々の途中に設けられた複数の分配器と、
前記分配器からの光ファイバーまたは光導波路からなる第4の光路を束ねる合波器および前記合波器の束ねられた出射端に設けられたミラーとからなる反射型スターカップラーと、
を備えることを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の光路切替型光信号送受信装置において、
前記1対N対応光制御式光路切替装置又は前記1対7対応光制御式光路切替装置に制御光が全く照射されない場合に信号光が出射する第2の光路に接続された下位光通信アダプターからの制御光の第3の光路上には分配器を設けず、
前記下位光通信アダプターからの制御光は前記反射型スターカップラーに直結することを特徴とする光路切替型光信号送受信装置。
【請求項9】
信号光とは波長の異なる制御光を用いて、光制御方式により、制御光とは波長の異なる1種類以上の波長の信号光の光路をN個の異なる方向へ切り替える方法、および、前記制御光に光通信の信号を重畳し、前記信号光の一部を分配した後、合波し、合波した後、ミラーで反射して戻すことで制御光の波長の光相方向通信を行う方法を組み合わせた光信号送受信方法であり、前記Nを2以上の整数とするとき、
上位光信号送受信装置を経由した光通信を希望するユーザー側装置に接続した下位光通信アダプターは、
まず反射型スターカップラー方式光LANで他のユーザーの通信状況をモニターし、
時間分割多重送受信のための同期を行い、
また、上位光信号送受信装置への上り信号を送出するための時間分割多重のタイムスロットを把握し、
前記下位光通信アダプターに搭載された制御光光源を、自分に与えられた時間分割多重のタイムスロットに応じて駆動し、
制御光とは波長の異なる1種類以上の波長の信号光の光路をN個の異なる方向へ切り替える光制御式光路切替装置からの光路を自分に接続するよう切り替え、
他の下位光通信アダプターへの同期信号を送出し、
上位光信号送受信装置への上り信号を送出し、前記上り信号には、対応する戻り・下り信号のための識別コードを賦与し、
同時に、上位光信号送受信装置からの下り信号を受信し、下り信号の暗号を解読し、ユーザー宅宛信号かつ宅内ユーザー側装置の識別コードを判断して、自分宛信号を自分の接続しているユーザー側装置へ送り、宅内の他のユーザー側装置宛の信号は、制御光光源を経由させ、反射型スターカップラー方式光LANで繋がれた当該ユーザー側装置へ配信する、
ことを特徴とする光信号送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−250078(P2010−250078A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99526(P2009−99526)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(503184234)株式会社インターエナジー (20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】