説明

光路切替素子、及び画像形成装置

【課題】加温性と保温性に優れ、低温環境下における反応時間が短縮され、薄型の液晶素子を保護可能な構造の光路切替素子、及び該光路切替素子を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】透明電極がそれぞれの一面に設けられ該透明電極の一部が対向するように重複配置された一対の透明基板と、前記対向する透明電極に挟持される液晶層と、からなり、前記透明電極の一部が対向面側に露出している液晶素子10と、一端が前記対向面側に露出している透明電極と当接する一対の電極部材40と、液晶素子10を加熱するヒータ部材20と、液晶素子10、電極部材40、ヒータ部材20を内包するホルダ部材50A,50Bと、を備える光路切替素子、及び該光路切替素子を備える画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路切替素子及び画像形成装置に関し、特にデジタルカラー複写機、カラーレーザプリンタ、レーザファクシミリ等に適用することが好適な光路切替素子及び、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザから出射したレーザビームを用いて被走査面上を走査する光走査装置や、該光走査装置を用いた画像形成装置が知られている。
書込系に用いられる光走査装置において、記録速度を向上させる手段として、偏向手段であるポリゴンミラーの回転速度を上げる方法があるが、この方法ではモータの耐久性や騒音、振動、及びレーザの変調スピード等が問題となり限界がある。そこで一度に複数の光ビームを走査して複数ラインを同時に記録する方法が提案されている。
【0003】
また、レーザプリンタ、デジタル複写機等で用いられる電子写真画像形成装置において、カラー化、高速化が進み、感光体を複数(通常は4つ)有するタンデム対応の画像形成装置が普及してきている。カラーの電子写真画像形成装置としては、感光体を1つのみ有し、色の数だけ感光体を回転するという方式もあるが(4色、1ドラムだと4回転する必要有り)、高速性に劣る。
【0004】
タンデム方式の場合は高速化が可能であるが光源数が増えてしまい、それに伴い、部品点数の増加、複数光源間の波長差に起因する色ずれ、コストアップ等が生じてしまう。また、書き込みユニットの故障の原因として半導体レーザの劣化が挙げられている。光源数が多くなると、故障の確率が増えてしまう。特に、光源として面発光レーザやLD(レーザダイオード)アレイを用いる場合、上記の不具合は顕著である。
【0005】
そこで、光源数を減らしながらも、高速な画像出力を可能にする光走査装置として、例えば、共通の光源からのビームを分割し、異なる段の反射鏡にビームを入射させ、異なる被走査面を走査するという方式(特許文献1参照)が提案されている。しかし、この方式においては、共通の光源からのビームパワーが約半分となるように分割して使用するため、光源パワーの実質効率はロスし、複数の光源を用いる方式に比べて、倍以上のパワーが必要となる。パワーの増大はレーザ光源の劣化に繋がり、高速での画像記録が困難であり、また書き込みユニットの故障の原因となる。
【0006】
一方、上記光走査装置の偏向手段であるポリゴンミラーの回転速度を上げる方法に対し、光路の切り替えは数十μ秒以下であることが要求される。電気信号にて駆動される公知の「液晶素子」を用いて光路を切り替える場合、液晶は低温条件下で粘度が高くなるため、反応時間が遅くなり、要求される速度を満足することができないという問題がある。
【0007】
このような液晶の低温条件下における応答時間の遅延を解消する技術として、光学ピックアップ装置や光記録再生装置などに用いられる液晶装置において、基板の間に液晶が挟まれ、内側に電極が設けられた液晶装置において、少なくとも一方の電極を電圧の印加によりヒータとして機能させる技術(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
また、カメラ等の電子機器の液晶レンズにおいて、液晶層の位相を変調させる電極と、液晶層を加熱するヒータ電極とを設ける技術(例えば、特許文献3〜5参照)が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−92129号公報
【特許文献2】特開2006−350227号公報
【特許文献3】特開2006−201243号公報
【特許文献4】特開2007−86163号公報
【特許文献5】特開2007−248985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献4に提案されているような、ITO膜を有するガラスで液晶層が挟持された液晶レンズが知られているが、この構成は、画像形成装置の光走査装置における光路切替手段として、液晶を駆動するITO膜の周辺に加熱用のITO膜を設けた液晶素子として適用可能である。
【0010】
しかしながら、低温条件下において、液晶駆動エリア周辺部、すなわちヒータ電極近傍は加熱されて高温になるが、中央部の温度は低いままであり、温度ムラを生じることがある。この温度ムラは液晶駆動時の動きのムラになり、さらにレンズの作用を持たせる場合には波面収差の劣化の要因となる。
【0011】
また、このような液晶素子を備える装置においては、電源投入後の操作動作開始までの時間を短縮することが求められており、低温条件下において、要求される反応時間を達成する駆動温度まで可能な限り迅速に立ち上げ、保持する必要がある。
さらに、透過波面精度の劣化を少なくするためには、素子の厚さはより薄い方が好ましいが、薄くすることにより破損が生じやすくなるため、これを防ぐ必要がある。
【0012】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、加温性と保温性に優れ、低温環境下における反応時間が短縮され、薄型の液晶素子を保護可能な構造の光路切替素子、及び該光路切替素子を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕感光体を露光走査するためのレーザ光の光路を切り替える光路切替素子であって、
透明電極がそれぞれの一面に設けられ該透明電極の一部が対向するように重複配置された一対の透明基板と、前記対向する透明電極に挟持される液晶層と、からなり、前記透明電極の一部が対向面側に露出している液晶素子と、
一端が前記対向面側に露出している透明電極と当接する一対の電極部材と、
前記液晶素子を加熱するヒータ部材と、
前記液晶素子、電極部材、ヒータ部材を内包するホルダ部材と、
を備えることを特徴とする光路切替素子。
〔2〕前記電極部材の一端が、組み立てた際に前記透明電極に圧接されるように屈曲した形状であり、かつ可撓性を有することを特徴とする前記〔1〕に記載の光路切替素子。
〔3〕前記ヒータ部材と前記ホルダ部材との間に、断熱緩衝部材を設けたことを特徴とする前記〔1〕から〔2〕のいずれかに光路切替素子。
〔4〕一対の前記ホルダ部材のうち、一方のホルダ部材が可撓性を有する爪部を有し、他方のホルダ部材が前記爪部の嵌合部を有することを特徴とする前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の光路切替素子。
〔5〕前記ホルダ部材が、モールド材からなる成形体であり、該成形体内部に発熱体を備えることを特徴とする前記〔1〕に記載の光路切替素子。
〔6〕感光体に対して光走査手段による光走査を行って潜像を形成し、この潜像を現像手段で可視化して画像を得る画像形成部を有する画像形成装置において、
感光体を露光走査するレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の光路を切り替える光路切替手段と、共通の回転軸を有し複数の段からなる多面反射鏡と、結像レンズとからなる光走査手段を備え、前記光路切替手段として、前記〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の光路切替素子を用いたことを特徴とする画像形成装置 。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加温性と保温性に優れ、低温環境下における反応時間が短縮され、薄型の液晶素子を保護可能な構造の光路切替素子、及び該光路切替素子を備えた画像形成装置を提供することができる。
【0015】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、透明電極がそれぞれの一面に設けられ該透明電極の一部が対向するように重複配置された一対の透明基板と、前記対向する透明電極に挟持される液晶層と、からなり、前記透明電極の一部が対向面側に露出している液晶素子と、一端が前記対向面側に露出している透明電極と当接する一対の電極部材と、前記液晶素子を加熱するヒータ部材と、前記液晶素子、電極部材、ヒータ部材を内包するホルダ部材と、を備えることを特徴とする光路切替素子という構成としたので、液晶素子の加温性と保温性が向上し、またホルダに内包することにより衝撃や破損等から保護することができ、さらにホルダにより装置への取付の位置決めが容易となり、工数の低減と精度の向上をはかることができる。
請求項2の発明によれば、前記電極部材の一端が、組み立てた際に前記透明電極に圧接されるように屈曲した形状であり、かつ可撓性を有するという構成としたので、電極同士の接点での導通が容易かつ確実となる。
請求項3の発明によれば、前記ヒータ部材と前記ホルダ部材との間に、断熱緩衝部材を設けた構成としたため、保温性が向上し、加熱時間を短縮でき、低温環境下における液晶の駆動温度に達するまでの時間が短縮される。また、組付時の操作、並びに組付後の落下や衝撃に対する耐性を向上させることができ、工数低減、歩留まり向上に寄与し、コスト削減が可能となり、さらに装置の信頼性を向上させることができる。
請求項4の発明によれば、一対の前記ホルダ部材のうち、一方のホルダ部材が可撓性を有する爪部を有し、他方のホルダ部材が前記爪部の嵌合部を有するという構成としたため、簡単に組み付けることができ、ネジ材などの固定用の部品数を削減することができ、工数も低減することができる。
請求項5の発明によれば、前記ホルダ部材が、モールド材からなる成形体であり、該成形体内部に発熱体を備える構造としたので、部品点数が削減でき、組み付け性が向上し、管理費、工数低減によりコストダウンが可能となる。
請求項6の発明によれば、感光体に対して光走査手段による光走査を行って潜像を形成し、この潜像を現像手段で可視化して画像を得る画像形成部を有する画像形成装置において、感光体を露光走査するレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の光路を切り替える光路切替手段と、共通の回転軸を有し複数の段からなる多面反射鏡と、結像レンズとからなる光走査手段を備え、前記光路切替手段として、本発明の光路切替素子を用いる構成としたので、光路切替素子の保温加熱時間が短縮され、装置の低温環境下における動作開始までの時間を短くでき、ユーザの待ち時間を少なくできる。また薄型の液晶素子を破損から保護できるため、装置の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
なお、本発明の光路切替素子が適用される光走査装置としては、特に限定されないが、例えば、レーザ光源から光路切換素子、シリンドリカルレンズまでの光学系、及びfθレンズを含む結像光学系を備える光走査装置などが挙げられる。光学系としては、レーザ光源、光路切換素子、共通の回転軸を有し複数の段からなる回転多面鏡ユニットを有する。回転多面鏡ユニットは、共通の回転軸を有するポリゴンミラーが多段状に重なる構成である。ポリゴンミラーは複数であってもよい。また、回転多面鏡ユニットは、光路切換素子が切換える各光路のレーザ光を、ポリゴンミラーにより回転しながら反射して走査光とする。光走査装置の動作としては、例えば、レーザ光源から出射したビームは、本発明の光路切替素子における電気信号印加により、副走査方向にビーム光路が平行シフトされ、時間分割で上下段のポリゴンミラーにそれぞれ入射される。
【0017】
図1は本発明の光路切替素子の一実施態様の概略構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す本発明の光路切替素子の一実施態様の外観斜視図であり、図3は、図1及び図2に示す本発明の光路切替素子の一実施態様の分解斜視図である。
光路偏向素子としての液晶素子10は、その両面それぞれに断熱緩衝部材30、ヒータ部材20が積層して設けられ、さらにこれらが一対のホルダ部材50A,50B内に収納されるようになっている。また、液晶素子10はヒータ部材20に挟まれた状態となっており、該ヒータ部材20により加熱される。
【0018】
また、液晶素子10の両面には、それぞれ透明電極であるITO膜電極部11が露出している部分があり、該それぞれのITO膜電極部11に一端が当接し、他端が各ホルダ部材50A,50Bの外側に突出する一対の電極部材40が設けられている。該一対の電極部材40は、一対のITO膜電極部11と外部の液晶素子の駆動電極端子とを導通させるものである。
【0019】
ヒータ部材20は、ヒータベースフィルム21上に、ヒータ電極22を一体に設けた構成である(図3)。該ヒータベースフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ニッケル合金(発熱抵抗体)をポリイミドシート(絶縁材)で挟み込んだ薄膜面状ヒータや、PET/PEN基材にITO膜を蒸着した10〜100Ω/cmの低抵抗フィルム等が挙げられる。また、ヒータ部材としてはセラミックヒータ等であってもよい。さらに、図13に示すように液晶過熱用ITO膜を設けても良い。
【0020】
これらの部材は、一対のホルダ部材50A及び50Bに内包される。内包されることにより保温性に優れるとともに、フィルム状などの薄い部材の平面性を維持することができる。液晶素子は、厚さが例えば0.5mm以下程度の薄さであると、透過波面制度劣化がすくないため好ましい。
また、一対のホルダ部材により挟むことにより容易に組込作業が完了するため、工数や部品数を低減することができる。さらに、ホルダ部材と一体の部材として扱うことにより、装置における位置決めが容易となる。
【0021】
液晶素子10は、図11に示すように、2枚の透明基板である透明なガラス基板12それぞれの上にITO膜電極部11が形成され、該ITO膜電極部11の一部が対向して重なるように対向配置された2枚の透明なガラス基板12の間に、液晶が充填された液晶充填部13及び該液晶充填部13を封止する接着剤14が設けられた構成となっている。これにより、ITO膜電極部11は対向面側に露出した状態となる。
このような構成の液晶素子10は、取り扱いの際に汚損や破損の危険性があるが、ホルダ部材に内包して扱うことにより低減させることができる。
【0022】
電極部材40は、液晶素子上のITO膜電極部11と接する一端が、組み立てた際にITO膜電極部11に圧接されるように屈曲した形状であり、かつ可撓性を有することが好ましい(以下、可撓性を有する屈曲形状部分を指してスプリング電極ということがある。)。
他の端部はホルダ部材50A,50Bの外側に露出するように配置されるため、外部の駆動電極端子とはハンダ等の一般的な方法により接続することができる。
従来の光路偏向素子の電極部は、基板上に給電用のワイヤー等をハンダ付けすることにより接続していたが、ガラスのITO膜上のハンダは剥がれやすく、ワイヤーにストレスや曲がりがあると、ハンダ付された部分が剥がれ、断線して機能しなくなると言う重大な問題があり、装置の信頼性を確保できない要因となっていた。
【0023】
なお、電極部材40は、図3に示すようにホルダ部材と一体に形成されていてもよく、図6、7、10、12にそれぞれ示すように、板状部材の一部にスプリング電極部分が設けられた構造でもよい。後者の場合、液晶素子の電極部との接触を確保するために、電極部材との間に設けられるヒータ部材20及び断熱緩衝部材30は、スプリング電極の位置がくり抜かれた開口部を有する形状であることが好ましい。このような構造にすることで、液晶素子の電極部とスプリング電極との接点をハンダ付けすることができる。
【0024】
図9及び図10は、光路切替素子の他の実施形態であり、一個のホルダ部材に電極部材40、ヒータ部材20、光路偏向素子10を重ねて収め、カバー61でふたをする構造である。スプリング電極がカバー61で押されることにより、光路偏向素子10の電極とスプリング電極の屈曲部の可撓性で圧接されて導通を取ることができる。
【0025】
本発明の光路切替素子は、図1、3、10に示すように、ヒータ部材20とホルダ部材50との間に、断熱緩衝部材30を備えることが好ましい。断熱緩衝部材は、断熱性及びクッション性を備える材質からなるものであれば特に限定はなく、例えば、樹脂製発泡体、多孔性スポンジ等が挙げられる。
【0026】
ポリゴンミラーの回転数は高速であり、光路切替に要する時間は十数μ秒以下であることが要求されるが、この切替時間は40℃では達成できるが0℃では達成できない。断熱緩衝部材を設けることにより、保温性が向上し、加熱による温度上昇効果を大きくすることができ、液晶が約40℃に達するまでの時間が短縮される。
また、断熱緩衝部材は、緩衝材としても機能するため、装置への組付作業中及び作業後の衝撃や落下に対す保護が可能となる。
【0027】
前記ホルダ部材は、図2〜6に示されるように、一対のホルダ部材50A及び50Bの組み合わせからなる場合、図4に詳しく示すように一方のホルダ部材が可撓性を有する爪部52を有し、他方のホルダ部材が前記爪部の嵌合部51を有する構造であることが好ましい。このような構造とすることで、図7や図10に示される固定ネジが不要になる。
例えば、図6(B)に示すように、一方のホルダ部材50Aに内包される部材を重ね、最後に他方のホルダ部材50Bを重ね、爪部を爪部嵌合部に押し込みように組み合わせることにより、容易に組立が完了する。また、このときホルダ部材を水平に設置することにより、上から下へ部材を下ろす作業のみとなるため、作業ミスによる破損のリスクも減少し、歩留り向上によるコスト低減も期待できる。
【0028】
また、他の態様として。図12(A)に示すように、一方のホルダ部材50Aに対し、板金カバー62を組み合わせる態様が挙げられる。このとき、ホルダ部材50Aには取付凸部55を設け、板金カバー62には取付窓部63を設け、図12(B)に示すようにそれぞれ嵌合するように組み付けることもできる。
【0029】
さらに他の態様として、図7(A)及び(B)に示すように、ホルダ部材に内包される部材を事前に重ねあわせ、ホルダ部材50Aに挿入するようにしてもよい。挿入後、ホルダ部材50Aに設けられた基準ピンと、突出した電極部材が嵌合するような空洞部を備えたカバー60を被せることにより固定してもよい。
なお、図7(A)及び(B)に示すように、基準ピン54、及び取付穴53を設けることにより、光路切替素子を、光走査装置の所定の位置に設置する際、位置決めが容易となる。
【0030】
本発明の光路切替素子の態様として、ホルダ部材が、モールド材からなる成形体であり、該成形体内部に発熱体を備える構成としたものであってもよい。たとえば、耐熱モールド材により形成されたホルダ部材の内部に、液晶を加熱可能な発熱体を一体に成形することにより、部品数及び組み立ての工程数を低減させることができ、コスト低減が可能になる。
【0031】
本発明の画像形成装置は、本発明の光路切替装置を備える。具体的には、感光体に対して光走査手段による光走査を行って潜像を形成し、この潜像を現像手段で可視化して画像を得る画像形成部を有する画像形成装置であって、感光体を露光走査するレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の光路を切り替える光路切替手段と、共通の回転軸を有し複数の段からなる多面反射鏡と、結像レンズとからなる光走査手段を備え、前記光路切替手段として、本発明の光路切替素子が用いられる。
本発明の光路切替素子を用いることにより、低温環境下における電源を入れてから装置が動作するまでの時間を短縮することができる。また、画像形成装置において重要な部品である液晶素子を含む光路切替素子の破損を防ぐことができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0032】
本発明に係る画像形成装置の一実施の形態について図面を参照して以下に説明する。
図14は、本発明に係る光路切替素子を備える画像形成装置の一実施の形態におけるタンデム型のカラー複写機を示す断面図である。
カラー複写機200は、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、該画像形成部の下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有する高速機であり、画像形成部1Aに本発明の光路切替素子を含む光走査装置を組み込んでいる。
【0033】
画像形成部1Aには、水平方向に延びる転写面を有する転写定着手段としての定着ベルト202が配置されており、該定着ベルト202の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)による像を担持可能な像担持体としての感光体203Y、203M、203C、203Kが定着ベルト202の転写面に沿って並置されている。なお、本実施形態においては、転写定着手段として定着ベルトの例を示しているが、転写定着手段は回転体(定着ローラ)であってもよい。
【0034】
各感光体203Y、203M、203C、203Kはそれぞれ同じ方向(反時計回り方向)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置、光書き込み装置、1次転写装置、現像装置及びクリーニング装置が配置されている。また、各現像装置には、それぞれのカラートナーが収容されている。
【0035】
転写ベルト202は、駆動ローラと従動ローラに掛け回されて感光体203Y、203M、203C、203Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。また、従動ローラの1つであるローラ210に対向する位置に転写ローラ211が設けられている。また、転写ローラ211から転写装置100までのシートPの搬送経路は横パスとなっている。
【0036】
給紙部1Bは、記録媒体としてのシートPを積載収容する給紙トレイ215と、該給紙トレイ215内のシートP(図示しない)を最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ211の位置まで搬送する搬送機構を有している。
【0037】
本発明の画像形成装置200における画像形成に当たっては、感光体203Yの表面が帯電装置により一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体203Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置によりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置により転写ベルト202上に1次転写される。他の感光体203M、203C、203Bでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が定着ベルト202上に静電気力で順に転写されて重ね合わせられる。
【0038】
つぎに、感光体203Y、203M、203C、203Kから定着ベルト202上に1次転写されたトナー像Tは、ローラ210、転写ローラ211により搬送されてきたシートPに転写される。トナー像Tが転写されたシートPは、さらに定着装置100まで搬送され、定着ベルトと加圧ローラとのニップ部にて定着が行なわれる。
ついで、ニップ部から排出されたシートPは排出経路に沿って送り出される。このとき、定着ベルト202に巻き付いたままでてきたシートPは定着分離爪(図示せず)により定着ベルト202から分離されて排出経路に戻される。
【0039】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における外観を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における構成を示す分解図である。
【図4】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における構成を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における構成を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における組立完了前(A)及び組立完了後(B)の外観を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における組立完了前(A)及び組立完了後(B)の外観を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る光路切替素子の一実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る光路切替素子の一実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る光路切替素子の一実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る光路切替素子の液晶素子の一例を示す概略図である。
【図12】本発明に係る光路切替素子の一実施形態における組立完了前(A)及び組立完了後(B)の外観を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る光路切替素子の液晶素子の一例を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る画像形成装置の一実施形態における概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1A 画像形成部
1B 給紙部
10 液晶素子(光路偏向素子)
11 ITO膜電極部
12 透明基板(ガラス基板)
13 液晶充填部
14 接着剤
15 駆動用ITO膜
16 加熱用ITO膜
20 ヒータ
21 ヒータベースフィルム
22 ヒータ電極
30 断熱緩衝部材
40 電極部材(スプリング電極)
50A、50B ホルダ部材
51 爪部の嵌合部
52 爪部
53 取付穴
54 基準ピン
55 取付凸部
60、61 カバー部材
62 板金カバー
63 取付窓部
64 固定ネジ
100 転写装置
200 カラー複写機
202 転写ベルト
203 感光体
211 転写ローラ
215 給紙トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を露光走査するためのレーザ光の光路を切り替える光路切替素子であって、
透明電極がそれぞれの一面に設けられ該透明電極の一部が対向するように重複配置された一対の透明基板と、前記対向する透明電極に挟持される液晶層と、からなり、前記透明電極の一部が対向面側に露出している液晶素子と、
一端が前記対向面側に露出している透明電極と当接する一対の電極部材と、
前記液晶素子を加熱するヒータ部材と、
前記液晶素子、電極部材、ヒータ部材を内包するホルダ部材と、
を備えることを特徴とする光路切替素子。
【請求項2】
前記電極部材の一端が、組み立てた際に前記透明電極に圧接されるように屈曲した形状であり、かつ可撓性を有することを特徴とする請求項1に記載の光路切替素子。
【請求項3】
前記ヒータ部材と前記ホルダ部材との間に、断熱緩衝部材を設けたことを特徴とする請求項1から2のいずれかに光路切替素子。
【請求項4】
一対の前記ホルダ部材のうち、一方のホルダ部材が可撓性を有する爪部を有し、他方のホルダ部材が前記爪部の嵌合部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光路切替素子。
【請求項5】
前記ホルダ部材が、モールド材からなる成形体であり、該成形体内部に発熱体を備えることを特徴とする請求項1に記載の光路切替素子。
【請求項6】
感光体に対して光走査手段による光走査を行って潜像を形成し、この潜像を現像手段で可視化して画像を得る画像形成部を有する画像形成装置において、
感光体を露光走査するレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光の光路を切り替える光路切替手段と、共通の回転軸を有し複数の段からなる多面反射鏡と、結像レンズとからなる光走査手段を備え、前記光路切替手段として、請求項1から5のいずれかに記載の光路切替素子を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−32588(P2010−32588A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191810(P2008−191810)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】