説明

光路長調整方法及び装置

【課題】本発明の課題は、連続的な光路長調整を行うことができ、かつ小型な装置であっても大きな光路長調整幅を実現することができる光路長調整方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、光サーキュレータ23の入力ポート231に入射した光を入出力ポート233を経由して中空構造の光導波路24に入射させ、光導波路24に入射した光を光導波路24に挿入された反射材251の端面で反射させ、反射した光を光サーキュレータ23の入出力ポート233を経由して出力ポート232から出射させる際、反射材挿入手段25で、反射材251の端面を光導波路24の長手方向に移動させることにより、光サーキュレータ23の入力ポート231から反射材251の端面を経由して出力ポート232までの光路長を所定の値に設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信機構において、連続的な光路長調整が可能であり、かつ小型な装置で光路長の調整幅を十分に長く確保することを可能とする中空構造の光導波路を用いた光路長調整方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の光路長調整装置を示す構成説明図である。
すなわち、一般的な光路長調整方法としては、図3に示すように、光源11および受光部12および2つの反射材(ミラーなど)を90度の角度をつけて設定した反射部13および反射部13が取り付けられ光軸方向に移動可能なステージ14で構成され、光源11および受光部12と反射部13の凹面とは対向するよう設定され、ステージ14を光軸方向に移動させることで光路長調整を実施する方法が存在する。
【0003】
また特許文献1で記載されるように、2つの反射材を並行に配列し、反射材全体を回転させることにより反射回数を調整し、光路長を調整する方法が提案されている。
【0004】
いずれの方法においても、連続的な光路長調整は実現可能であるものの、光路長調整幅を大きくしようとすると、光路長調整系自体を大きくしなければならず、現実的な調整幅としてはあまり大きく設定できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−193415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、反射材を挿入する中空構造の光導波路を用いることにより、連続的な光路長調整を行うことができ、かつ小型な装置であっても大きな光路長調整幅を実現することができる光路長調整方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の光路長調整方法は、中空構造の光導波路の一方の端部を光サーキュレータの入出力ポートに接続し、前記光導波路の他方の端部を該光導波路の中空部分に反射材を挿入する反射材挿入手段に接続し、前記光サーキュレータの入力ポートに入射した光を入出力ポートを経由して前記光導波路に入射させ、前記光導波路に入射した光を該光導波路に挿入された反射材の端面で反射させ、反射した光を前記光サーキュレータの入出力ポートを経由して出力ポートから出射させる際、前記反射材挿入手段で、前記反射材の端面を前記光導波路の長手方向に移動させることにより、前記光サーキュレータの入力ポートから反射材の端面を経由して出力ポートまでの光路長を所定の値に設定することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記光路長調整方法において、反射材は反射材挿入手段によって、光導波路内の所定の位置に反射材端面を設定可能であることを特徴とする。
【0009】
また本発明の光路長調整装置は、入力ポートから入力された光が入出力ポートから出力され、前記入出力ポートから入力された光が出力ポートから出力され光サーキュレータと、前記光サーキュレータの入出力ポートに一方の端部が接続される中空構造の光導波路と、前記光導波路の他方の端部に接続され、該光導波路の中空部分に反射材を挿入する反射材挿入手段とを具備し、前記反射材挿入手段が、前記反射材の端面を前記光導波路の長手方向に移動させることにより、前記光サーキュレータの入力ポートから反射材の端面を経由して出力ポートまでの光路長を所定の値に設定することを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、前記光路長調整装置において、光導波路として、中空コア構造の光ファイバを使用することを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記光路長調整装置において、反射材挿入手段として、指定された光路長に合わせて反射材の設定位置を調整する反射材挿入手段を用いることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明は、前記光路長調整装置において、反射材として、液体金属、または光導波路の中空部分の断面積にほぼ等価でかつ端面を鏡面加工された固体を用いることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明は、前記光路長調整装置において、反射材挿入手段として、反射材を光導波路に必要長挿入し、または反射材を光導波路から必要長引抜する反射材挿入・引抜機構部を有する反射材挿入手段を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光路長調整方法及び装置は、中空構造の光導波路の一方の端部から反射材を挿入することで他方の端部から入射した光を前記光導波路内の任意の位置で反射させることにより、連続的な光路長調整を可能とする。さらに、前記光導波路として、中空コア構造の光ファイバを用いることが可能であることから、従来方法と比べて十分に大きな光路長調整幅を確保可能であるとともに、調整幅に対する調整系の大きさを従来と比べて小さくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る光路長調整装置を示す構成説明図である。図1において、21は光源、22は受光部、23は光サーキュレータ、231は入力ポート、232は出力ポート、233は入出力ポート、24は光導波路、25は反射材挿入手段、251は反射材、252は制御端末である。
【0016】
図1に示すように、光サーキュレータ23は入力ポート231、出力ポート232、及び入出力ポート233よりなる3ポートを有し、入力ポート231から入力された光が入出力ポート233から出力され、前記入出力ポート233から入力された光が出力ポート232から出力される。
【0017】
前記光サーキュレータ23は入力ポート231に光源21が接続されると共に出力ポート232に受光部22が接続される。前記光サーキュレータ23の入出力ポート233には中空構造の光導波路24の一方の端部が接続され、前記光導波路24の他方の端部には反射材挿入手段25が接続される。前記反射材挿入手段25は前記光導波路24の中空部分に反射材251を挿入するように構成される。前記反射材挿入手段25にはパソコン等の制御端末252が通信ケーブルで接続される。
【0018】
すなわち、光源21から射出された光は、光サーキュレータ23の入力ポート231に入射する。光サーキュレータ23の入力ポート231に入射した光は入出力ポート233を経由して光導波路24の中空部分に入射し、光導波路24に入射した光は光導波路24の中空部分に挿入された反射材251の端面で反射される。反射材251の端面で反射された光は光サーキュレータ23の入出力ポート233を経由して出力ポート232から受光部22に出射される。
【0019】
この場合、前記反射材挿入手段25は、前記反射材251の端面を前記光導波路24の長手方向に移動させることにより、前記光サーキュレータ23の入力ポート231から反射材251の端面を経由して出力ポート232までの光路長を所定の値に設定することができる。また、反射材251は反射材挿入手段25によって、光導波路24内の所定の位置に反射材251の端面を設定可能である。さらに、反射材挿入手段25として、指定された光路長に合わせて反射材251の設定位置を調整する反射材挿入手段を用いることができる。
【0020】
尚、光導波路24としては例えば、中空コア構造を有する光ファイバ(例えばフォトニックバンドギャップファイバ)がある。また、反射材251としては例えば、液体金属(例えば水銀)、または光導波路24の中空部分の断面積にほぼ等価でかつ端面を鏡面加工された固体(例えばフォトニックバンドギャップファイバのコア系とほぼ等価な系を有するファイバ)がある。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係る反射材挿入手段を示す構成説明図である。図2中、図1と同一部分は同一符号を付して説明する。図2において、253は通信ポート、254は制御部、255は反射材挿入・引抜機構部、256は反射材格納部、257は通信ケーブルである。
【0022】
図2に示すように、反射材251は反射材格納部256に格納されている。制御端末252より通信ケーブル257および通信ポート253を介して、設定すべき光路長が制御部254に伝えられると、制御部254は、反射材挿入・引抜機構部255を制御する。
【0023】
光路長を短縮する場合は、反射材挿入・引抜機構部255は、反射材251を反射材格納部256から引き出し、光導波路24に必要長を挿入する。逆に、光路長を伸長する場合は、反射材挿入・引抜機構部255は、反射材251を光導波路24から必要長引抜、反射材格納部256に格納する。
【0024】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る光路長調整装置を示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る反射材挿入手段を示す構成説明図である。
【図3】従来の光路長調整装置を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0026】
21…光源、22…受光部、23…光サーキュレータ、231…入力ポート、232…出力ポート、233…入出力ポート、24…光導波路、25…反射材挿入手段、251…反射材、252…制御端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造の光導波路の一方の端部を光サーキュレータの入出力ポートに接続し、前記光導波路の他方の端部を該光導波路の中空部分に反射材を挿入する反射材挿入手段に接続し、前記光サーキュレータの入力ポートに入射した光を入出力ポートを経由して前記光導波路に入射させ、前記光導波路に入射した光を該光導波路に挿入された反射材の端面で反射させ、反射した光を前記光サーキュレータの入出力ポートを経由して出力ポートから出射させる際、前記反射材挿入手段で、前記反射材の端面を前記光導波路の長手方向に移動させることにより、前記光サーキュレータの入力ポートから反射材の端面を経由して出力ポートまでの光路長を所定の値に設定することを特徴とする光路長調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光路長調整方法において、反射材は反射材挿入手段によって、光導波路内の所定の位置に反射材端面を設定可能であることを特徴とする光路長調整方法。
【請求項3】
入力ポートから入力された光が入出力ポートから出力され、前記入出力ポートから入力された光が出力ポートから出力される光サーキュレータと、
前記光サーキュレータの入出力ポートに一方の端部が接続される中空構造の光導波路と、
前記光導波路の他方の端部に接続され、該光導波路の中空部分に反射材を挿入する反射材挿入手段とを具備し、
前記反射材挿入手段が、前記反射材の端面を前記光導波路の長手方向に移動させることにより、前記光サーキュレータの入力ポートから反射材の端面を経由して出力ポートまでの光路長を所定の値に設定することを特徴とする光路長調整装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光路長調整装置において、光導波路として、中空コア構造の光ファイバを使用することを特徴とする光路長調整装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の光路長調整装置において、反射材挿入手段として、指定された光路長に合わせて反射材の設定位置を調整する反射材挿入手段を用いることを特徴とする光路長調整装置。
【請求項6】
請求項3、4又は5に記載の光路長調整装置において、反射材として、液体金属、または光導波路の中空部分の断面積にほぼ等価でかつ端面を鏡面加工された固体を用いることを特徴とする光路長調整装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかに記載の光路長調整装置において、反射材挿入手段として、反射材を光導波路に必要長挿入し、または反射材を光導波路から必要長引抜する反射材挿入・引抜機構部を有する反射材挿入手段を用いることを特徴とする光路長調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−133825(P2010−133825A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309985(P2008−309985)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】