説明

光送信機

【課題】 回路規模の大型化を抑制しつつ変調器ドライバの振幅を制御することができる光送信機を提供する。
【解決手段】 光送信機は、位相変調器(20)と位相変調器の出力光の一部を遅延干渉させる遅延干渉計(30)とを内蔵する光変調器と、遅延干渉計の出力レベルをモニタし該モニタ結果に基づいて変調器ドライバの振幅を制御する制御部(60)と、を備える。遅延干渉計の正相信号光強度と逆相信号光強度との和が最大になるように、位相変調器に供給される駆動信号の振幅を制御してもよい。また、遅延干渉計の正相信号光強度と逆相信号光強度との差が最大になるように、遅延干渉計に供給される電圧を制御してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送の高速化に伴い、光変調方式としてDPSK等の位相変調方式が採用されている。例えば、低周波の正弦波信号を用いて、変調器ドライバの振幅を2Vπに制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、変調器ドライバの振幅を制御するに際して、変調信号光のパイロット信号を重畳し、重畳されたパイロット信号に対して同期検波する必要があった。このような構成では、回路規模が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、回路規模の大型化を抑制しつつ変調器ドライバの振幅を適切に制御することができる光送信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、明細書開示の光送信機は、位相変調器と位相変調器の出力光の一部を遅延干渉させる遅延干渉計とを内蔵するDPSK光変調器と、遅延干渉計の出力レベルをモニタし該モニタ結果に基づいて変調器ドライバの振幅を制御する制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
明細書開示の光送信機によれば、回路規模の大型化を抑制しつつ変調器ドライバの振幅を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係る光送信機の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】理想的な駆動信号波形および実際の駆動信号波形を説明するための図である。
【図3】駆動信号の振幅とOSNR耐力との関係を説明するための図である。
【図4】実施例2に係る光送信機の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】実施例3に係る光送信機の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1に係る光送信機110の構成を説明するためのブロック図である。図1を参照して、光送信機110は、光源10、導波路型の位相変調器20、遅延干渉計30、受光部41〜43、第1制御部50、第2制御部60、バイアス供給部70、遅延干渉計電圧供給部80、および、駆動部90を備える。
【0011】
光源10は、キャリア光として連続光を生成し、位相変調器20へ出力する。位相変調器20は、駆動部90から出力された駆動信号Vdrvに基づいて、光源10から出力された連続光を変調する。具体的には、位相変調器20は、LiNbO3などの電気光学効果を有する基材によって構成されている。また、位相変調器20の一方の分岐光路には、位相変調部21および位相変調部22が設けられている。位相変調部21は、駆動部90から出力される駆動信号Vdrvに応じて、位相変調部21に入力される光に対して位相変調を行う。さらに、位相変調部22は、バイアス供給部70から供給されるバイアス電圧に応じて、位相変調部22に入力される光に対して位相変調を行う。位相変調器20は、2つの分岐光路を通過した光を干渉させて出力する。
【0012】
駆動部90は、データ信号を入力し(DATA)、入力したデータ信号を駆動信号Vdrvとして位相変調器20の位相変調部21へ出力する。また、駆動部90は、第2制御部60の指示に従って、位相変調器20へ出力する駆動信号Vdrvの電圧振幅を変化させる。
【0013】
位相変調器20から出力された信号光は、スプリッタ等によって分岐する。一方の分岐光は、受光部41によって受光される。受光部41は、受光した信号光を電気信号に変換する。受光部41は、例えば、PD(Photo Diode)を含む。受光部41は、変換された電気信号を増幅して第1制御部50に出力する。第1制御部50は、受光部41から受け取った電気信号に基づいて、バイアス電圧が位相変調部22に供給されるように、バイアス供給部70を制御する。
【0014】
上記のスプリッタによって分岐された他方の分岐光は、遅延干渉計30に入力される。遅延干渉計30は、2つの分岐光路を備え、一方の分岐光路に遅延量制御部31を備える。遅延量制御部31は、遅延干渉計電圧供給部80から供給される電圧に応じて、遅延量制御部31を通過する光信号の遅延量を制御する。例えば、遅延干渉計電圧供給部80は、第2制御部60の指示に従って、2つの分岐光路の光信号に1ビットの遅延量が生じるように、遅延量制御部31を制御する。その後、遅延干渉計30は、2つの分岐光路を通過した光を干渉させて出力する。
【0015】
遅延干渉計30の正相信号は、受光部42によって受光される。遅延干渉計30の逆相信号は、受光部43によって受光される。受光部42,43は、受光した光を電気信号に変換する。受光部42,43は、例えば、PD(Photo Diode)を含む。受光部42,43によって変換される電気信号の電流は、受光部42,43が受光した光の強度が大きいほど多くなる。受光部42,43は、変換された電気信号を増幅して第2制御部60に出力する。第2制御部60は、受光部42,43から入力された電気信号に応じて、駆動信号Vdrvの振幅を制御する。
【0016】
ところで、光伝送の高速化に伴い、駆動信号Vdrvの振幅が実際には2Vπよりも小さくなってしまうことがある。図2(a)および図2(b)は、理想的な駆動信号Vdrv波形および実際の駆動信号Vdrv波形を説明するための図である。図2(a)を参照して、比較的低速な光伝送の場合には、駆動信号Vdrvの振幅は2Vπを維持する。
【0017】
しかしながら、図2(b)を参照して、高速な光伝送の場合には、駆動信号Vdrv波形のTr(立ち上がり時間)およびTf(立ち下り時間)の劣化、LN帯域劣化等の影響に起因して、駆動信号Vdrvの振幅が2Vπよりも小さくなってしまう。それにより、BER(ビットエラーレート)が劣化し、OSNR(Optical Signal to Noise Ratio)耐力が低下する。
【0018】
そこで、駆動信号Vdrvの振幅とOSNR耐力との関係を調べた。図3(a)は、駆動信号Vdrvの振幅とOSNR耐力との関係を説明するための図である。なお、図3(a)において、横軸は2Vπに対する比率を示し、縦軸はOSNR耐力を示す。また、図3(a)においては、TrTf(20%−80%)が5ps、10ps、15psの場合が表されている。また、駆動信号Vdrvの振幅が2Vπを比較例とした。
【0019】
図3(a)を参照して、OSNR耐力はTrTfが大きくなるにつれて、顕著に変化するようになった。この結果によれば、駆動信号Vdrv=2Vπの場合よりも、駆動信号Vdrv>2Vπの場合にOSNR耐力が向上している。例えば、TrTfが15psである場合を例にすると、駆動信号Vdrvが2Vπの1.3倍程度になった場合に、OSNR耐力が最も向上している。このように、駆動信号Vdrvを2Vπよりも大きく制御することによって、OSNR耐力が向上する。
【0020】
図3(b)は、駆動信号Vdrvの振幅と受光部42,43の出力の和との関係を説明するための図である。図3(b)において、横軸は2Vπに対する比率を示し、縦軸は受光部42,43の出力の和を示す。図3(b)を参照して、受光部42,43の出力の和のピークと図3(a)におけるOSNR耐力が最も向上する点とが一致する。したがって、受光部42,43の出力の和を検出することによって、OSNR耐力を向上させることができる。例えば、受光部42,43の出力の和が最大になるように駆動信号Vdrvの振幅を制御することによって、OSNR耐力を最も向上させることができる。
【0021】
さらに、第2制御部60は、受光部42,43の出力差が最大になるように、遅延量制御部31への供給電圧を制御してもよい。この場合、より正確に受光部42,43の出力和のピークを検出することができるからである。
【0022】
図3(c)は、駆動信号Vdrvの振幅とレシーバ出力の振幅との関係を説明するための図である。図3(c)において、横軸は2Vπに対する比率を示し、縦軸はレシーバ出力の振幅を示す。図3(c)を参照して、レシーバ出力の振幅と図3(a)におけるOSNR耐力が最も向上する点とも一致する。
【0023】
図3(d)は、TrTfと駆動信号Vdrvの振幅との関係を説明するための図である、図3(d)において、横軸はTrTf(20%−80%)を示し、縦軸は駆動信号Vdrvの振幅を示す。図3(d)を参照して、どのTrTfにおいても、OSNR耐力と受光部42,43の出力和のピークとが一致していることが確認される。
【0024】
本実施例によれば、送信機内に設けた遅延干渉計の出力に応じてOSNR耐力を向上させることができる。したがって、変調器ドライバの振幅を適切に制御することができる。実施例1に係る光送信機110は、簡易な構成で実現できるため、回路規模の大型化を抑制することができる。
【実施例2】
【0025】
図4は、実施例2に係る光送信機110aの構成を説明するためのブロック図である。光送信機110aが図1の光送信機と異なる点は、受光部43を備えていない点である。この場合、実施例1のような受光部42,43の出力和のピークを求めることはできないが、受光部42の出力のピーク(正相信号の光強度ピーク)を求めることができる。受光部42,43の出力和のピークと受光部42の出力のピークとはほぼ一致するため、受光部42の出力が最大となるように駆動信号Vdrvの振幅を制御してもよい。この場合、OSNR耐力を向上させることができる。
【実施例3】
【0026】
図5は、実施例3に係る光送信機110bの構成を説明するためのブロック図である。光送信機110bが図1の光送信機と異なる点は、折り返し型の曲がり導波路33をさらに備える点である。位相変調器20と遅延干渉計30とを曲がり導波路33によって接続することによって、送信機の長大化を抑制することができる。また、曲がり導波路33を用いることによって光損失を低減させることができる。
【0027】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 光源
20 変調部
21,22 位相変調部
30 遅延干渉部
31 遅延量制御部
41,42,43 受光部
50 第1制御部
60 第2制御部
70 バイアス供給部
80 遅延干渉計電圧供給部
90 駆動部
100 DPSK変調器
110 光送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調器と、前記位相変調器の出力光の一部を遅延干渉させる遅延干渉計と、を内蔵する光変調器と、
前記遅延干渉計の出力レベルをモニタし、該モニタ結果に基づいて前記位相変調器に供給される駆動信号の振幅を制御する制御部と、を備えることを特徴とする光送信機。
【請求項2】
前記制御部は、前記遅延干渉計の正相信号光強度と逆相信号光強度との和に基づいて、前記位相変調器に供給される駆動信号の振幅を制御することを特徴とする請求項1記載の光送信機。
【請求項3】
前記制御部は、前記遅延干渉計の正相信号光強度と逆相信号光強度との和が最大になるように、前記位相変調器に供給される駆動信号の振幅を制御することを特徴とする請求項1記載の光送信機。
【請求項4】
前記制御部は、前記遅延干渉計の正相信号光強度が最大になるように前記位相変調器に供給される駆動信号の振幅を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光送信機。
【請求項5】
前記制御部は、前記遅延干渉計の正相信号光強度と逆相信号光強度との差が最大になるように、前記遅延干渉計に供給される電圧を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光送信機。
【請求項6】
前記制御部は、前記遅延干渉計の正相信号強度が最大になるように、前記遅延干渉計に供給される電圧を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光送信機。
【請求項7】
前記位相変調器は、導波路型変調器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光送信機。
【請求項8】
前記位相変調器と前記遅延干渉計とが曲がり導波路によって接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−278908(P2010−278908A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131229(P2009−131229)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】