説明

光重合性粘着剤組成物及びこれを使用した粘着シート

【課題】粘着剤層を厚くしても、被着体を破損、汚染することなく容易に再剥離でき、さらに高温高湿条件下においても白濁を生じない粘着剤組成物及び粘着シートを提供する。
【解決手段】成分(A')、(B)、(C)及び(D)。(A')成分(a1)、(a2')、(a3)より得られ、(メタ)アクリル系ポリマーとモノマーとを含有するアクリルシロップ:100重量部、(a1)エーテル結合含有アクリルモノマー:20〜97質量%、(a2')(メタ)アクリル酸ラウリル:0〜77質量%、(a3)カルボキシル基含有モノマー:3〜10質量%(但し、原料(a1)、(a2')、及び(a3)の合計がアクリルシロップの90質量%以上)、(B)重合性官能基を2つ以上有するモノマー:0.01〜1.0重量部、(C)架橋剤:0.01〜0.5重量部、(D)光重合開始剤:0.05〜0.5重量部、を含有することを特徴とする光重合性粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性粘着剤組成物に関し、より詳しくは、例えば、プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という)の前面側に貼り合わせる前面フィルター用の粘着剤組成物等として使用した場合にも容易に剥離することができ、高温高湿条件下でも白濁を起こしにくい光重合性粘着剤組成物及びこれを用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPなどのフラットディスプレイパネルが様々な分野で表示装置として使用されており、これらのディスプレイの前面には、反射防止フィルムやプロテクトフィルムなどが直接粘着剤によって貼り付けられている。
【0003】
このようなフィルムの粘着剤として、従来アクリル系粘着剤が用いられてきたが、高温高湿条件下においては、フィルム貼り付け面の側端部から水分が浸入して粘接着剤層が白濁する結果、透明性が低下してしまい、常温に戻しても透明性が回復しないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するものとして、特定の飽和吸湿率を有する粘着剤が報告されている(特許文献1参照)。また、本出願人は、既にアルコキシアルキル(メタ)アクリレート成分単位と特定量のエポキシ基に対する反応性を有するアクリル系モノマー成分単位を有するアクリル系共重合体から形成される粘着剤を用いた耐湿粘着シートを報告している(特許文献2参照)。さらに、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルにカルボキシル基含有モノマーを共重合させたポリマー、特定のモノマーとアミノ基含有モノマー又はアミド基含有モノマーとを共重合させて得られるポリマー、及び架橋剤とを含有する粘着剤組成物を報告している(特許文献3参照)。
【0005】
一方、ディスプレイの破損等を防止するため、上記フィルムの粘着剤には緩衝性も求められる。しかし、緩衝性を高めるため粘着剤層を厚くすると、粘着力が強くなりすぎてしまい、フィルターをプラズマディスプレイパネルに直接貼り合わせる際、異物の噛み込み等が原因で貼り合わせに失敗しても、ディスプレイパネルを破損、汚染させないようにこのフィルムを剥離するのが困難となるという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、一定のピール剥離力の透明粘着剤層、透明支持体等を積層させたフィルターが報告されている(特許文献4参照)。さらに、特定の可塑剤及び無機微粒子を含有する液体によって三次元架橋ポリマーが膨潤されている透明ゲル粘着剤層などを積層した光学フィルターが報告されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−263084号公報
【特許文献2】特開2001−123136号公報
【特許文献3】特開2002−327160号公報
【特許文献4】特開2004−311664号公報
【特許文献5】特開2005−22365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、被着体を破損、汚染することなく容易に再剥離することができ、さらに高温高湿条件下においても白濁を生じない粘着シートが求められており、このような粘着シート用の粘着剤組成物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造式で表されるモノマー、アクリル酸アルキル及びカルボキシル基含有モノマーを含有するアクリルシロップと、多官能モノマー、架橋剤及び光重合開始剤とを併用した光重合性粘着剤組成物を用いることによって、厚みのある粘着シートとしても、再剥離性が良好であり、かつ高温高湿条件下においても白濁が生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、次の成分(A)ないし(D)
(A)次の成分(a1)ないし(a3)より得られ、(メタ)アクリル系ポリマーと(
メタ)アクリル系モノマーとを含有するアクリルシロップ 100重量部
(a1)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは炭素数2又は3のアルキレン基を
、Rは炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数
を示す)
で表されるモノマー 60〜97質量%
(a2)アルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸アルキルエステル
0〜37質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 3〜10質量%
(但し、原料(a1)〜(a3)の合計がアクリルシロップの90質量%以上)
(B)重合性不飽和基を2つ以上有するモノマー 0.01〜1.0重量部
(C)架橋剤 0.01〜0.5重量部
(D)光重合開始剤 0.05〜0.5重量部
を含有することを特徴とする光重合性粘着剤組成物である。
【0011】
また本発明は、次の成分(A')、(B)、(C)及び(D)
(A')次の成分(a1)、(a2')、及び(a3)より得られ、(メタ)アクリル系
ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとを含有するアクリルシロップ
100重量部
(a1)下記一般式(1)
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは炭素数2又は3のアルキレン基を
、Rは炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数を
示す)
で表されるモノマー 20〜97質量%
(a2')(メタ)アクリル酸ラウリル 0〜77質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 3〜10質量%
(但し、原料(a1)、(a2')、及び(a3)の合計がアクリルシロップの
90質量%以上)
(B)重合性官能基を2つ以上有するモノマー 0.01〜1.0重量部
(C)架橋剤 0.01〜0.5重量部
(D)光重合開始剤 0.05〜0.5重量部
を含有することを特徴とする光重合性粘着剤組成物である。
【0012】
更に本発明は、上記の粘着剤組成物を光照射することによって得られる、厚さが0.1〜5mmの範囲の粘着シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着シートは、優れた緩衝性を有するとともに、粘着剤層を厚膜に成形しても被着体を破損、汚染等することなく容易に剥離することができるものである。さらに、高温高湿条件下においても白濁を起こさず高い透明性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様の粘着剤組成物(以下、「第一発明」という)は、構成成分として後記の成分(a1)ないし(a3)より得られるアクリルシロップ(成分(A))と、重合性不飽和基を2つ以上有するモノマー(成分(B))、架橋剤(成分(C))及び光重合開始剤(成分(D))を含有するものである。上記アクリルシロップを構成する成分は、前記一般式(1)で表されるモノマー(成分(a1))、アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル(成分(a2))及びカルボキシル基含有モノマー(成分(a3))などのモノマーである。
【0015】
成分(A)を構成する成分(a1)は、前記一般式(1)で表されるものであり、具体的には、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートを例示することができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
また、成分(A)を構成する成分(a2)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチルなどが例示され、このうち(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ブチルが好ましく用いられる。
【0017】
更に、成分(A)を構成する成分(a3)のカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸βカルボキシエチル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などを挙げることができ、このうち、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが好ましく、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0018】
第一発明において、成分(A)中の上記成分(a1)〜(a3)の配合量は、成分(a1)が60〜97質量%、成分(a2)が0〜37質量%であり、成分(a3)の配合量は3〜10質量%である。これらの配合は、成分(a1)、(a2)のモノマーの配合量を決めた後、成分(a2)のモノマー配合量を成分(a1)ないし(a3)の合計量がアクリルシロップの90質量%以上になるように調整する。これらの好ましい配合量は、成分(a1)が60〜85質量%、成分(a3)の配合量は4〜10質量%であり、成分(a2)は、5質量%以上、好ましくは10質量%以上であることが好ましい。また、成分(a1)〜(a3)の合計量は、アクリルシロップの95質量%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いられる成分(A)には、更に必要に応じ、上記成分(a1)ないし(a3)以外のモノマーを配合することができる。このようなモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのようなアルキル基の炭素数が8を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸又はメタクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸の塩並びにこれらの(部分)エステル化合物及び酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコン等)が例示できる。このモノマーの配合量は、成分(A)中、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。
【0020】
本発明に用いられる成分(A)のアクリルシロップは、上記成分(a1)ないし(a3)のモノマーを部分的に重合させることによって得られるものでも、これらのモノマーから得られたポリマーを該モノマー中に溶解させたものでもいずれでもよい。
【0021】
本発明に用いられる成分(A)のアクリルシロップの製造にあたっては、上記成分のほか、必要に応じ、重合開始剤、重合調整剤、連鎖移動剤を使用することができる。
【0022】
この重合開始剤は、上記成分(a1)〜(a3)等のモノマーを重合させるためのものであり、熱分解型の重合開始剤を使用することが好ましい。このような重合開始剤としては、有機パーオキサイド類、有機ハイドロパーオキサイド類、有機パーオキシケタール類及びアゾ化合物類等が挙げられる。
【0023】
上記重合開始剤のうち、有機パーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジアセチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジイソノナイルパーオキサイド、2−メチルペンタノイルパーオキサイド等が例示できる。また有機ハイドロパーオキサイド類としては、tert−ブチルハイドロパ−オキサイド、クミルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジハイドロパーオキシヘキサン、p−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパ−オキサイド等が例示できる。
【0024】
また、有機パ−オキシケタ−ル類としては、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが、アゾ化合物類としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル,2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル,2,2'−アゾビスシクロヘキシルニトリル,1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル),2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル,ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等がそれぞれ例示できる。
【0025】
これらの重合開始剤は、上記成分(a1)〜(a3)等のモノマーの混合物100重量部に対して、0.0001〜0.5重量部の範囲で用いることができる。
【0026】
第一発明の成分(A)は、アクリル系ポリマー及びアクリル系モノマーとを含有するものであり、前記成分(a1)〜(a3)を含有するモノマーに上記重合開始剤を添加し、該モノマーを部分的に重合させるか、又は(a1)〜(a3)を含有するモノマーの一部を重合して得られるポリマーを、当該モノマーのそれ以外の部分を含有するモノマー溶液に溶解させることによって得られる。第一発明の成分(A)アクリルシロップに含有される(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーにおいて、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーと前記(メタ)アクリル系モノマーとは同一のモノマーであっても、異なるモノマーであっても良いが、(メタ)アクリル系ポリマーの(メタ)アクリル系モノマーへの相溶性、粘着剤層を形成したときの透明性が良好である点から、1種以上の同一のモノマーを使用することが好ましい。第一発明の成分(A)アクリルシロップにおいて、アクリルシロップ中のポリマー濃度は30〜70質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が30質量%未満であるとシロップの粘度が低すぎるため厚膜シートの形成が困難であり、また、70質量%より高いとシロップの粘度が高くなりすぎて塗工が困難となり、どちらも塗工時のハンドリング性を著しく損なうおそれがある。また、アクリルシロップ中のポリマー分子量は10万〜100万であることが好ましい。分子量が10万に満たないと十分な粘着力やリワーク特性が得られないおそれがある。また、100万より大きいとアクリルシロップの粘度が高くなり過ぎ塗工が困難となったり、塗工性を向上させるためポリマー濃度を30質量%未満に設定すると厚膜シートの形成が困難となったりして塗工時のハンドリング性を著しく損なうおそれがある。
【0027】
また、第一発明の構成成分の成分(B)である、重合性不飽和基を2つ以上有するモノマーとは、エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する付加重合可能な化合物である。この成分(B)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ジクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能のエポキシ(メタ)アクリレート、多官能のウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート、N,N'−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として使用することができる。これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0028】
この成分(B)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、0.01〜1.0重量部の範囲である。
【0029】
さらに、第一発明の他の構成成分である成分(C)の架橋剤は、極性官能基と架橋し得る官能基を分子内に2個以上有するものであり、具体的にはイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられる。
【0030】
成分(C)のうち、イソシアネート系架橋剤は、その分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーや、それらをトリメチロールプロパンなどの2価以上のアルコール化合物等に付加反応させたイソシアネート化合物ないしイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物等が例示される。また、公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどにイソシアネート化合物を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等も挙げられる。
【0031】
また、成分(C)のうち、エポキシ系架橋剤は、その分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であり、具体的には、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0032】
このような成分(C)である架橋剤は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。上記成分(C)のうち、エポキシ化合物が(メタ)アクリル系ポリマー中のカルボキシル基との反応性の点で好ましく、特にN',N',N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンが好ましく用いられる。
【0033】
この成分(C)の配合量は、成分(A)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の範囲である。
【0034】
さらに、第一発明の他の別の構成成分である成分(D)の光重合開始剤としては、具体的に、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン,2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ジクロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン,N,N'-テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等を挙げることができ、このうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等を好ましく用いることができる。
【0035】
この成分(D)の配合量は、成分(A)100重量部に対し0.05〜0.5重量部の範囲である。
【0036】
一方、本発明の第2の態様の粘着剤組成物(以下、「第二発明」という)は、前記第一発明において、成分(A)のアクリルシロップの成分(a2)に代えて、(メタ)アクリル酸ラウリル(成分(a2'))を配合したものである。
【0037】
成分(A')を構成する成分(a1)は、前記一般式(1)で表されるものであり、具体的には、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートを例示することができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
また、成分(A’)を構成する成分(a2’)は(メタ)アクリル酸ラウリルである。このアクリル酸ラウリルを用いることにより、塗膜の柔軟性、緩衝性が向上するという利点を有し、(a1)が比較的少量であっても所望の粘着力、耐白化性、リワーク性を発現することができる。特にアクリル酸ラウリルを使用することが好ましい。
【0039】
更に、成分(A’)を構成する成分(a3)のカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸βカルボキシエチル、イタコンサン、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などを挙げることができ、このうち、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが好ましく、中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0040】
第二発明において、成分(A’)中の上記成分(a1)、(a2’)、及び(a3)の配合量は、成分(a1)が20〜97質量%、成分(a2’)が0〜77質量%であり、成分(a3)の配合量は3〜10質量%である。これらの配合は、成分(a1)、(a3)のモノマーの配合量を決めた後、成分(a2’)のモノマー配合量を成分(a1)ないし(a3)の合計量がアクリルシロップの90質量%以上になるように調整する。これらの好ましい配合量は、成分(a1)が20〜80質量%、成分(a3)の配合量は4〜10質量%であり、成分(a2’)は、10質量%以上であることが好ましい。また、成分(a1)、(a2’)、及び(a3)の合計量は、アクリルシロップの95質量%以上であることが好ましい。
【0041】
第一発明に用いられる成分(A’)には、更に必要に応じ、上記成分(a1)、(a2')、及び(a3)以外のモノマーを配合することができる。このようなモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸又はメタクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸の塩並びにこれらの(部分)エステル化合物及び酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコン等)が例示できる。このモノマーの配合量は、成分(A)中、0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。
【0042】
本発明に用いられる成分(A)のアクリルシロップは、上記成分(a1)ないし(a3)のモノマーを部分的に重合させることによって得られるものと、これらのモノマーから得られたポリマーを該モノマー中に溶解させたもののいずれであってもよい。
【0043】
本発明に用いられる成分(A’)のアクリルシロップの製造にあたっては、上記成分のほか、必要に応じ、重合開始剤、重合調整剤、連鎖移動剤を使用することができる。
【0044】
この重合開始剤は、上記成分(a1)、(a2')、及び(a3)等のモノマーを部分的に重合させるためのものであり、熱分解型の重合開始剤を使用することが好ましい。このような重合開始剤としては、有機パーオキサイド類、有機ハイドロパーオキサイド類、有機パーオキシケタール類及びアゾ化合物類等が挙げられる。
【0045】
上記重合開始剤のうち、有機パーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジアセチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジイソノナイルパーオキサイド、2−メチルペンタノイルパーオキサイド等が例示できる。また有機ハイドロパーオキサイド類としては、tert−ブチルハイドロパ−オキサイド、クミルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジハイドロパーオキシヘキサン、p−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパ−オキサイド等が例示できる。
【0046】
また、有機パ−オキシケタ−ル類としては、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが、アゾ化合物類としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル,2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル,2,2'−アゾビスシクロヘキシルニトリル,1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル),2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル,ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等がそれぞれ例示できる。
【0047】
これらの重合開始剤は、上記成分(a1)、(a2')、及び(a3)等のモノマーの混合物100重量部に対して、0.0001〜0.5重量部の範囲で用いることができる。
【0048】
第二発明の成分(A’)は、アクリル系ポリマーとアクリル系モノマーを含有するものであり、前記成分(a1)、(a2')、及び(a3)を含有するモノマーに上記重合開始剤を添加し、該モノマーを部分的に重合させるか、又は(a1)〜(a3)を含有するモノマーの一部を重合して得られるポリマーを、当該モノマーのそれ以外の部分を含有するモノマー溶液に溶解させることによって得られる。第二発明の成分(A’)アクリルシロップに含有される(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーにおいて、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーと前記(メタ)アクリル系モノマーとは同一のモノマーであっても、異なるモノマーであっても良いが、(メタ)アクリル系ポリマーの(メタ)アクリル系モノマーへの相溶性、粘着剤層を形成したときの透明性が良好である点から、1種以上の同一のモノマーを使用することが好ましい。第二発明の成分(A)アクリルシロップにおいて、アクリルシロップ中のポリマー濃度は30〜70質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が30質量%未満であるとシロップの粘度が低すぎるため厚膜シートの形成が困難であり、また、70質量%より高いとシロップの粘度が高くなりすぎて塗工が困難となり、どちらも塗工時のハンドリング性を著しく損なうおそれがある。また、アクリルシロップ中のポリマー分子量は10万〜100万であることが好ましい。分子量が10万に満たないと十分な粘着力やリワーク特性が得られず、また、100万より大きいとアクリルシロップの粘度が高くなり過ぎ塗工が困難となったり、塗工性を向上させるためポリマー濃度を30質量%未満に設定すると厚膜シートの形成が困難となったりして塗工時のハンドリング性を著しく損なうおそれがある。
【0049】
また、第二発明の構成成分の成分(B)である、重合性不飽和基を2つ以上有するモノマーとは、エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する付加重合可能な化合物である。この成分(B)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ジクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能のエポキシ(メタ)アクリレート、多官能のウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、トリアリルトリメリテート、ジアリルクロレンデート、N,N'−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として使用することができる。これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0050】
この成分(B)の配合量は、成分(A’)100重量部に対して、0.01〜1.0重量部の範囲である。
【0051】
さらに、第二発明の他の構成成分である成分(C)の架橋剤は、極性官能基と架橋し得る官能基を分子内に2個以上有するものであり、具体的にはイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが挙げられる。
【0052】
成分(C)のうち、イソシアネート系架橋剤は、その分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーや、それらをトリメチロールプロパンなどの2価以上のアルコール化合物等に付加反応させたイソシアネート化合物ないしイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物等が例示される。また、公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどにイソシアネート化合物を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネート等も挙げられる。
【0053】
また、成分(C)のうち、エポキシ系架橋剤は、その分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であり、具体的には、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0054】
このような成分(C)である架橋剤は、単独であるいは組み合わせて使用することができる。上記成分(C)のうち、エポキシ化合物が(メタ)アクリル系ポリマー中のカルボキシル基との反応性の点で好ましく、特にN',N',N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンが好ましく用いられる。
【0055】
この成分(C)の配合量は、成分(A’)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の範囲である。
【0056】
さらに、第二発明の他の別の構成成分である成分(D)の光重合開始剤としては、具体的に、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン,2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ジクロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン,N,N'-テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等を挙げることができ、このうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを好ましく用いることができる。
【0057】
この成分(D)の配合量は、成分(A’)100重量部に対し0.05〜0.5重量部の範囲である。
【0058】
本発明の粘着剤組成物は、上記第一発明又は第二発明の各成分に、必要に応じその他の添加剤を添加して、常法により、混合・脱泡処理することによって得られる。また、その際に、上記成分を溶解又は分散させるために有機溶媒等の溶剤を含有しても良いが、厚膜のシートを作成する作業性や環境への影響を考慮すると、溶剤を含有しない無溶剤型のものが好ましい。
【0059】
また、本発明の粘着剤組成物には、更に、可塑剤を用いることによって、粘着剤の緩衝作用を向上させることができるという利点を有する。この可塑剤として、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステルが挙げられ、中でもセバシン酸ジブチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシルが好ましい。
【0060】
本発明の粘着剤組成物には、前記各成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤等を配合することができる。
【0061】
以上のようにして得られた本発明の粘着剤組成物を、基材表面に塗布し、光、特に紫外線を照射して重合硬化させることによって、本発明の粘着シートを得ることができる。
【0062】
粘着剤シートを製造する際の粘着剤組成物の塗布厚さは、適宜設定できるが、0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mmとすることによって、十分な緩衝性を持たせることができる。
【0063】
また、光照射は常法により行うことができ、ブラックライト等の光源を用いて、粘着剤組成物の組成や塗布厚さに応じて照度や照射時間を適宜調整して行うことができる。
【0064】
上記のようにして得られた本発明の粘着シートは、剥離角度90度、剥離速度200mm/minにおける対ガラス粘着力が、10N/25mm以下であることが好ましく、5〜10N/25mmの範囲であることがさらに好ましい。この範囲であれば、一定の粘着力を有しながら、容易に剥離することができるので、例えば、プラズマディスプレイの前面フィルター用の粘着シートとして有利に使用できる。
【実施例】
【0065】
次に製造例及び実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0066】
製 造 例 1
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、アクリル酸2−エチルへキシル(以下、「2−EHA」と略記する)31g、アクリル酸2−メトキシエチル(以下、「2−MEA」と略記する)65g、アクリル酸(以下、「AA」と略記する)4g、及び連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(以下、「NDM」と略記する)0.1gを投入し、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら50℃まで加熱した。
【0067】
ついで、重合開始剤として、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70;和光純薬製、以下「V−70」という)0.0025gを攪拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が120℃に達し、その後徐々に下がり始めた。反応系の温度が115℃まで下がったところで、2−EHA7.75g、2−MEA16.25g、AA1g及びNDM0.08gを投入して強制冷却を行い50℃まで冷却した。
【0068】
更に、重合開始剤としてV−70 0.005gを攪拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が125℃に達し、その後徐々に下がり始めた。反応系の温度が120℃まで下がったところで、2−EHA6.2g、2−MEA13g、AA0.8g投入して強制冷却を行い、アクリルシロップA−1を得た。
【0069】
製 造 例 2
2−EHAをアクリル酸ラウリル(以下、「LA」と略記する)に代えた以外は製造例1と同様にしてアクリルシロップA−2を得た。
【0070】
製 造 例 3
2−EHAの合計の投入量を44.95gから39.15gに代え、さらに、2−MEAをエトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート(以下、「EEGA」と略記する)に代え、その合計の投入量も、94.25gから100.05gに代えた以外は製造例1と同様にして、アクリルシロップA−3を得た。
【0071】
製 造 例 4
2−EHAをLAに代え、その合計の投入量を44.95gから39.15gに代え、さらに、2−MEAをEEGAに代え、その合計の投入量も、94.25gから100.05gに代えた以外は製造例1と同様にして、アクリルシロップA−4を得た。
【0072】
製造比較例1
2−MEAの合計の投入量を94.25gから58gに代え、2−EHAの合計の投入量を44.95gから81.2gに代えた以外は製造例1と同様にして、アクリルシロップB−1を得た。
【0073】
製造比較例2
2−EHAの合計の投入量を44.95gから47.85gに代え、AAの合計の投入量を5.8gから2.9gに代えた以外は製造例1と同様にして、アクリルシロップB−2を得た。
【0074】
製造比較例3
2−MEAの合計の投入量を94.25gから21.75gに代え、2−EHAをLAに代え、その合計の投入量も44.95gから117.45gに代えた以外は製造例1と同様にして、アクリルシロップB−3を得た。
【0075】
製造比較例4
2−EHAをLAに代え、その合計の投入量も44.95gから47.85gに代え、AAの合計の投入量を5.8gから2.9gに代えた以外は製造例1と同様にして、アクリルシロップB−4を得た。
【0076】
製造例1〜4及び製造比較例1〜4で得られたアクリルシロップA1〜A4及びB1〜B4について、常法により、モノマー濃度、ポリマー濃度、及びポリマー分の重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0077】
実 施 例 1
製造例1〜4で得られたA1〜A4の各アクリルシロップ100gに対し、表2に示す配合量の、トリメチロールプロパントリアクリレート(成分(B)/ライトアクリレートTMP−A;共栄化学社製、以下「TMP−A」とする)、N',N',N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(成分(C)/TETRAD−X;三菱瓦斯化学社製、以下「TETRAD−X」という)、2−ヒドロキシ−2−メチル−I−フェニル−プロパン−1−オン(成分(D)/イルガキュア1173;チバカイギー社製、以下「I−1173」とする)及び可塑剤としてセバシン酸ジブチルを添加し、混合・脱泡処理して光重合性の粘着剤組成物を得た。
【0078】
この光重合性の粘着剤組成物を、両面剥離処理された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ上に0.8mmの塗布厚さになるように塗布し、この塗布表面上に剥離処理された厚さ100μmのPETセパレータを貼着することによって、塗布された粘着剤組成物の上下にPETセパレータを配置してサンドイッチ状に密閉した後、ブラックライトにより5.0mWの光を10分間照射して無色透明のアクリルシートを得た(本発明品1〜4)。
【0079】
このアクリルシートについて、下記評価方法及び基準によって、粘着力、耐湿熱白濁性、緩衝性について評価した。結果を表2に示す。
【0080】
(評価方法及び基準)
<粘着力>
得られた粘着シートの一方のPET製剥離フィルムを除去し、暑さ100μmのPETフィルムを貼り付けて片面粘着シートを作成した。次にこの片面粘着シートを幅25mm、長さ150mmに裁断し、もう一方のPET製剥離フィルムを除去して、厚さ2mmのガラス板に2kgの圧着ローラーで1往復して圧着させ、23℃/65%の雰囲気に24時間静置させた後、同一雰囲気にて剥離強度90℃、剥離速度200m/minで対ガラス粘着力を測定した。また、被着体汚染について、粘着シートの剥離した後のガラス面の汚れの有無を観察し、剥離した後のガラス面の汚染がないものを○、糊のこりなどで汚染したものを×とした。
【0081】
<耐湿熱白濁性>
粘着力測定と同様の方法で片面粘着シートを形成し、このシートを50mm×50mmに裁断した。この裁断された試料のPET製剥離フィルムを除去し、厚さ2mmのガラス板に貼り付けて、ガラス板/800μm粘着剤層/100μmPETフィルムで構成された積層体を作成した。この積層体を60℃/95%Rhの条件下に24時間静置させた後、室温に戻して10分後の外観を目視にて観察し、白濁が発生しているかどうか確認した。
【0082】
<緩衝性>
JIS K 5400 塗料一般試験方法に準拠し、落球式耐衝撃性試験を行った。上記耐湿熱白濁性試験と同一のものを使用し、積層体のガラス板が割れなかったものを○、割れが生じたものを×とした。
鋼球:サイズ1−5/8 質量290g SUS製
落下高さ:40cm
【0083】
【表2】

【0084】
この結果から明らかなように、本発明の粘着剤組成物を使用して製造した粘着テープは、適度な剥離力(5〜9N/25mm)を有し、被着体汚染や、湿熱白濁も生じず、緩衝性も優れたものであった。
【0085】
比 較 例 1
製造例1〜2及び製造比較例1〜4で得られたA−1〜A−2及びB−1〜B−4の各アクリルシロップ100g対し、表3に示す配合量のTMP−1(成分(B))、TETRAD−X(成分(C))、I−1173(成分(D))、及び可塑剤としてセバシン酸ジブチルを添加し、実施例1と同様にして、アクリルシートを得た(比較品1〜8)。このアクリルシートについて実施例1と同様の評価方法及び基準によって評価した。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
この結果から、成分(B)ないし(D)のうち1つが欠けた場合は、粘着力が高すぎたり、被着体汚染が生じ、PDPフィルム用の粘着剤として好ましくないことが明らかになった。また、アクリルシロップの構成が、本発明のものと相違した場合は、白濁が生じ、また、粘着性が高かったり、被着体汚染が生じ、やはりPDPフィルム用の粘着剤として好ましくないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の粘着シートは、0.1〜5mmと厚くしても容易に剥離することができ、かつ優れた緩衝性を有するものである。さらに、高温高湿条件下においても白濁を起こさず高い透明性を維持することができる。
【0089】
したがって、本発明の粘着シートは、プラズマディスプレイの前面フィルターに直接貼り付ける粘着シートとして、極めて有用なものである。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A')、(B)、(C)及び(D)
(A')次の成分(a1)、(a2')、及び(a3)より得られ、(メタ)アクリル系
ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとを含有するアクリルシロップ
100重量部
(a1)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは炭素数2又は3のアルキレン基を
、Rは炭素数1〜10のアルキル基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数を
示す)
で表されるモノマー 20〜97質量%
(a2')(メタ)アクリル酸ラウリル 0〜77質量%
(a3)カルボキシル基含有モノマー 3〜10質量%
(但し、原料(a1)、(a2')、及び(a3)の合計がアクリルシロップの
90質量%以上)
(B)重合性官能基を2つ以上有するモノマー 0.01〜1.0重量部
(C)架橋剤 0.01〜0.5重量部
(D)光重合開始剤 0.05〜0.5重量部
を含有することを特徴とする光重合性粘着剤組成物。
【請求項2】
請求項第1項記載の粘着剤組成物を光照射することによって得られる、厚さが0.1〜5mmの範囲の粘着シート。
【請求項3】
剥離角度90度及び剥離速度200mm/minにおける対ガラス粘着力が10N/25mm以下である請求項第2項記載の粘着シート。
【請求項4】
プラズマディスプレイの前面フィルター用のものである請求項第2項又は第3項記載の粘着シート。


【公開番号】特開2012−72406(P2012−72406A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223544(P2011−223544)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2005−361163(P2005−361163)の分割
【原出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】