説明

光量調整装置及びこれを備えた撮像装置

【課題】レーザ溶着された羽根部材の剥離を抑制し、正確な露光開口を形成可能な光量調整装置の提供。
【解決手段】光路開口を有する基板と、前記光路開口開閉する羽根部材と、羽根部材を駆動する駆動リングと、駆動リングを光路開口を中心に回動する駆動手段とを備え、羽根部材は、光路開口を開閉する絞り形成部と、その絞り形成部の基端に基板と駆動リングに嵌合する一対の支軸を配設する基端部とを形成しレーザ光を透過しない羽根基板と、基端部にレーザ溶着で張り合わされる支軸を備えレーザ光を透過する補助基板から成り、補助基板は、羽根基板と対峙する表面側で、レーザを照射する溶着領域に、そのレーザで溶解する羽根基板の溶材を流出する溝部を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビデオカメラ、スチールカメラなどの撮像装置、或いはプロジェクタその他の投影装置に内蔵され、撮影光量、投映光量などの光量を調整する光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光量調整装置は、撮影光路(或いは投影光路)に光軸開口を有する基板を配置し、この基板に複数枚の光量調節羽根を開閉自在に配置して光軸開口を大口径又は小口径に光量調整する装置として知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板に形成した光軸開口の周囲に複数枚の羽根を配置し、光路口径を小径から大径まで相似形で開閉する虹彩絞り装置が開示されている。このような絞り装置は、多数枚の羽根で円形状に近い口径で多段階に光量調整する特徴が知られている。
【0004】
同文献には、中央に光路開口を有する上下一対のリング状基板の間に、複数の絞り羽根を光路開口の周囲に鱗状に配置し、この複数の絞り羽根を基板の一方に設けた駆動ユニットで開閉する開閉機構が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、特許文献1で用いられも絞り羽根とは異なり、絞り羽根を構成する羽根部材と軸部材をレーザ溶着によって溶着した構造のもので、羽根部材の溶着部表面に凸部を形成し、軸部材の溶着部表面に羽根部材の凸部を収容する凹部を形成し、軸部材の凹部と羽根部材の凸部を圧接した状態でレーザ光を照射して溶着する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、絞り羽根をレーザ溶着するレーザ溶着装置が開示され、レーザ溶着装置そのものは広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−020438号公報
【特許文献2】特開2008−209495号公報
【特許文献3】特開2009−274217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように光路開口の周縁に複数の羽根を配置し、この各羽根を所定角度回動させて通過光量を大小調整する装置として特許文献1、2などで知られている。この場合その構造は、中央に光路開口を有する上下一対の基板間に、複数の羽根部材を軸支持し、この各羽根を基板間に内蔵した駆動リングで開閉する機構が採用されている。
【0009】
そしてその構造は、基板上に複数の羽根部材を互いに隣接する端部を鱗状に重ね合わせて円周方向に配列し、この各羽根部材を駆動リングで同一角度方向に回動させることによって開口径を大小調節するように構成されている。
【0010】
従って、複数の羽根部材は互いに隣接する端部同士が重ね合わされ、羽根のクローズ方向(全閉方向)では重ね合わせ面積が徐々に大きくなるように変化し、羽根のオープン方向(全開方向)では重ね合わせ面積が徐々に小さくなるように変化する。これと共に羽根の構成枚数によっては調整光量に応じて羽根の重ね合わせ枚数が変化する場合がある。
【0011】
図16及び図17には、7枚構成の羽根構造を示し、光路開口100を有する基板101と押さえ板104間に7枚の羽根部材103を円周方向に隣設端部を重ね合わせて配列する。図16(a)は小絞り状態の重ね合わせ平面形状を示し、同図(b)は断面構成((a)矢視方向)を示す。同図(b)に示すように羽根部材103は隣接する羽根の一部と重なり合う。
つまり7枚構成の羽根部材を鱗状に重ね合わせた場合、同図(a)に示すように例えば羽根部材103bは羽根部材103aの上重ねられ、羽根部材103cの下側に挿し入れられた状態になり、この関係は最後の重ねた7枚目の羽根部材103gにあっても、羽根部材103gは羽根部材103fの上重ねられ、最初の羽根部材103aの下側に挿し入れられた状態になる。この関係は、n枚構成の羽根部材を鱗状に重ね合わせることによって同様になる。
【0012】
そこで、駆動リングと基板(地板)との間に鱗状に重ね合わされ配置される羽根部材は、図16(a)で示す小絞り状態において同図(b)の断面構成で示す様に、光路開口100の周縁部分では羽根部材103a、羽根部材103b、羽根部材103cの3枚が重なった状態になる。従って駆動リング102と基板101との間隔(L)は、最大の重なり枚数(n)と羽根部材の厚さ(s)と各羽根部材の開閉動作に要するクリアランス(dc)によって設定される。例えばこの間隔はL≧n・s+n・dcとなるように設定される。
ところが図17(a)で示す絞り全開放状態において同図(b)の断面構成で示す様に、光路開口100の外周縁に羽根部材103a、羽根部材103bの2枚が重なった状態になる。このように基板101と駆動リング102との間に挟持される羽根部材は、光路開口の開口量に応じてその重なり面積と重なり枚数が変化する。このため羽根部材は駆動リングと基板(地板)との間で可也の空間を持って配設されることとなり次の問題が生ずる。
【0013】
駆動リング102と各羽根部材103とは、一方にピン状突起、他方に溝孔が互いに係合するように設けられ、駆動リングの回転で各羽根部材が開閉動する。これと同時に地板101と各羽根部材との間にも一方にピン状突起、他方に溝孔が互いに係合するように設けられている。この2つの溝孔は各羽根の開閉軌跡に沿ってこれをガイドするように形成されている。
【0014】
このような構成において基板(地板)と駆動リングとの間隔は、最大重なり枚数に応じて設定することとなり、各羽根部材は開口量に応じて重なり枚数が変化する。このため図16(b)のように光路開口中心側の羽根部材先端部側は3枚重なりとなり、図17(b)のように基端部側は2枚重なりの羽根部材構成となる。
【0015】
そこで図16(a)で示す小絞り状態になった場合、3枚重なりとなる羽根部材先端部側は図10で示す様に他の羽根部材の羽根部材先端部で押し上げられ、各羽根部材は基端部から羽根部材先端部に向かって反り上げられ、ちょうど図17(b)の羽根部材103aのように傾かされる。また図17(a)で示す絞り全開放状態になった場合、図17(a)で示す様に羽根部材は駆動リングと基板(地板)との間で図17(b)の羽根部材103aのように傾かされる。この羽根部材の傾きはピン状突起と溝孔との係合状態が変化することで、図17(c)で示すように羽根部材の開閉位置がずれ、結果絞り口径が変化し光量斑となる問題が有る。特に小絞り状態において光量斑への影響が大きい。
【0016】
また、特許文献2、3で知られるレーザ溶着による絞り羽根は、上述する各羽根部材の基端部から羽根部材先端部に向かって反り上げられることで、基端部が傾くと共に大きな負荷が軸部材の凹部と羽根部材の凸部との溶着面に加えられ、その負荷によりレーザ溶着した軸部材の凹部と羽根部材の凸部が剥がれ易いといった問題が有る。
【0017】
本発明は、この問題点に鑑みて羽根部材の傾きを抑制することで適正な露光制御が行い得る光量調整装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を達成するため請求項1に記載する本発明の光量調整装置は、複数の羽根部材によって光路開口の通過光量を調整する光量調整装置であって、中央部に光路開口を有するリング形状の基板と、前記光路開口の周囲に配置され円周方向に鱗状に重なり合う複数の羽根部材と、前記基板との間に前記複数の羽根部材を挟むように配置され各羽根部材を開閉動する駆動リングと、前記駆動リングを前記光路開口を中心に回動する駆動手段と、を備え、前記羽根部材は、前記光路開口を開閉する絞り形成部と、その絞り形成部の基端に前記基板と前記駆動リングに嵌合する一対の支軸を配設する基端部とを形成しレーザ光を透過しない羽根基板と、前記基端部にレーザ溶着で張り合わされる前記支軸を備えレーザ光を透過する補助基板から成り、前記補助基板は、前記羽根基板と対峙する表面側で、前記レーザを照射する溶着領域に、そのレーザで溶解(溶融)する前記羽根基板の溶材を流出する溝部を形成している。
【0019】
また、請求項2に記載する本発明の光量調整装置は、複数の羽根部材によって光路開口の通過光量を調整する光量調整装置であって、中央部に光路開口を有するリング形状の基板と、前記光路開口の周囲に配置され円周方向に鱗状に重なり合う複数の羽根部材と、前記基板との間に前記複数の羽根部材を挟むように配置され各羽根部材を開閉動する駆動リングと、前記基板と駆動リングとの間の前記複数の羽根部材と対峙する位置で、前記基板と各羽根部材との間に配置され、各羽根部材を駆動リング側に押圧するか、若しくは前記駆動リングと羽根部材との間に配置され、各羽根部材を基板側に押圧する弾性力を有する弾性部材と、前記駆動リングを前記光路開口を中心に回動する駆動手段と、を備え、前記羽根部材は、前記光路開口を開閉する絞り形成部と、その絞り形成部の基端に前記基板と前記駆動リングに嵌合する一対の支軸を配設する基端部とを形成しレーザ光を透過しない羽根基板と、前記基端部にレーザ溶着で張り合わされる前記支軸を備えレーザ光を透過する補助基板から成り、前記補助基板は、前記羽根基板と対峙する表面側で、前記レーザを照射する溶着領域に、そのレーザで溶解(溶融)する前記羽根基板の溶材を流出する溝部を形成している。
【0020】
また、請求項3に記載する本発明の光量調整装置は、請求項1及び2に記載する光量調整装置における前記羽根基板は、前記補助基板の一対の支軸の一つが貫通する位置決め用孔を形成し、前記溶着領域は前記一対の支軸の間に設定されている。
【0021】
また、請求項4に記載する本発明の光量調整装置は、請求項1乃至3に記載する光量調整装置における前記溶着領域が、前記一対の支軸の間に配設された略円形領域で、前記補助基板の溝部は、前記溶着領域内に形成された少なくとも一つ環状の溝で形成している。
【0022】
また、請求項5に記載する本発明の撮像装置は、被写体からの光を結像する結像レンズと、この結像レンズからの光を受光する撮像手段と、上記被写体から結像レンズに至る光路に配置された光量調整装置と、を備え、その光量調整装置は、前記請求項1及び4のいずれか1項に記載の構成を有している。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1及び2に記載の光量調整装置は共に、羽根部材が、前記光路開口を開閉する絞り形成部と、その絞り形成部の基端に前記基板と前記駆動リングに嵌合する一対の支軸を配設する基端部とを形成しレーザ光を透過しない羽根基板と、前記基端部にレーザ溶着で張り合わされる前記支軸を備えレーザ光を透過する補助基板から成り、前記補助基板は、前記羽根基板と対峙する表面側で、前記レーザを照射する溶着領域に、そのレーザで溶解(溶融)する前記羽根基板の溶材を流出する溝部を形成していることから、レーザ溶着する軸部材と羽根部材との溶着面において、羽根部材の溶着面に対峙する軸部材の溶着面に、レーザ溶着で溶解した溶材の一部が流出する溝部を形成したことによって、実質溶着面が拡大し、接着力が増大し、より一層軸部材の凹部と羽根部材の凸部との溶着面の剥がれを抑制することが出来る。
【0024】
また、本発明の請求項2に記載の光量調整装置にあっては、中央に光路開口を有する基板に複数の羽根部材を鱗状に重ね合わせて駆動リングで所定の開閉軌跡に沿って開閉動する際に、基板と駆動リングとの間に弾性部材と各羽根部材とを対峙させた状態で設け、弾性部材により各羽根部材を対向する反対側に位置する駆動リング又は基板に押圧するように構成したことによって、互いに重なり合う複数の羽根部材は、これを開閉可能に支持する基板と駆動リングとの間のギャップ間で、例えば、小絞り状態にあっては、各羽根部材が基端部から先端部に向かって反り上げられることで各羽根部材が傾こうとしても、また絞り全開放状態にあっては、撮像装置の姿勢が変わることによる各羽根部材が傾こうとしても、その各羽根部材の傾きを弾性部材が抑制され、開閉する各羽根部材が大きく傾くことが無く以下の効果を呈する。
【0025】
第1に、羽根部材と基板及び駆動リングに形成されたピン状突起と溝孔の係合位置が傾きによる位置ずれを起こすことがないので羽根部材による絞り口径を適正値に設定可能で適正な光量調整が出来る。
【0026】
第2に、各羽根部材が基端部から先端部に向かって反り上げられた状態でも、弾性部材による押圧力で、軸部材の凹部と羽根部材の凸部との溶着面の剥がれを抑えることが出来、作動不良の無い光量調整装置を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視構成の説明図。
【図2】図1の装置における第1基板(地板と弾性部材)と羽根組の拡大した構成説明図。
【図3】図1の装置における第2基板(押さえ板と駆動リング)の拡大した構成説明図。
【図4】(a)は図1の装置における第1基板(地板)の形状、(b)は弾性部材の状を示す説明図。
【図5】図1の装置における羽根部材形状の説明図であり、(a)は羽根部材の組み立て分解状態を、(b)は羽根部材の断面構成を、(c)は羽根部材の開閉軌跡の説明図である。
【図6】図5(b)の部分拡大図であり、(a)は羽根部材の断面構成を、(b)はその正面図である。
【図7】図6に相当する変形例の部分拡大図であり、(a)は羽根部材の断面構成を、(b)はその正面図である。
【図8】駆動リングと羽根部材との関係を示す説明図であり(a)は駆動リンクの全体形状を(b)は駆動リングの要部の拡大説明図。
【図9】図1の実施形態に於ける作用の説明図であり、(a)は羽根部材が絞り全開状態(全開放口径)の重なり状態の説明図、(b)は断面状態の説明図((a)図a−a線断面図)
【図10】図1の実施形態に於ける作用の説明図であり、(a)は羽根部材が小絞り状態(最小絞り口径)の重なり状態の説明図、(b)は断面状態の説明図((a)図a−a線断面図)
【図11】図1の装置の駆動ユニットの説明図(中央縦断面図)。
【図12】図1と異なる実施形態を示す斜視構成の説明図。
【図13】図12の実施形態の詳細説明図であり、(a)は駆動リンクの説明図、(b)は弾性部材の説明図、(c)は弾性部材の断面形状の説明図。
【図14】(a)は羽根部材を小絞り状態に絞ったときの重なり状態の説明図であり、(b)は羽根部材を絞り全開放状態にしたときの重なり状態の説明図である。
【図15】本発明に係わる撮像装置の構成を示す説明図。
【図16】従来技術の説明図であり、(a)は羽根部材を小絞り状態に絞ったときの平面構成の説明図であり、(b)はそのa−a線断面図。
【図17】従来技術の説明図であり、(a)は羽根部材を絞り全開放状態にしたときの平面構成の説明図であり、(b)はそのa−a線断面図で、(c)は羽根部材の傾きによる開閉状態を示す状態図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明に係わる光量調整装置Aの全体構成を示す組み立て分解図である。光量調整装置Aは図1に示すように、第1基板組(地板組)1と、羽根組2と、駆動リング31と、第2基板組4(押さえ板組)で構成されている。
そして第1基板組1に羽根組2が組み込まれ、この羽根組2の上に駆動リング31と第2基板組4が組み込まれている。そして第1基板11と第2基板41とは互いに組み合わされてビスなどの固定手段で一体化され、このとき羽根部材20と駆動リング31が両基板間にサンドイッチ状に支持される。
【0029】
このような構成によって光路開口12は第1基板11と第2基板41に形成され、この光路開口12を複数の羽根部材20а〜20iで大小口径に開口調整する。このため第1基板11又は第2基板41に駆動モータMがマウントされ、モータMの回転で駆動リング31が所定角度回転し、その回転で複数の羽根部材20が同一量ずつ移動して光路開口12の口径を大小に調節する。
【0030】
[第1基板組の構成]
図2は図1の組み立て分解図における第1基板組1及び羽根組2を拡大した分解説明図である。第1基板組1は、第1基板11と弾性部材15で構成されている。第1基板11(以下地板として説明する)と弾性部材15とは、中央に光路開口12を有するリング形状に形成され、地板11の上に弾性部材15が積層状に積み重ねられている。
図2に従って地板(第1基板)11、弾性部材15の順に説明する。
【0031】
地板11には中央部に光路開口12が形成され、その外形状は撮像装置(不図示)の鏡筒形状に応じた形状に構成される。この地板11は金属、合成樹脂などで光量調整装置A全体に強靭性を持たせる装置基盤に適した材質・寸法に形成されている。
【0032】
上記光路開口12の周縁には、後述する羽根部材20を支持する羽根支持面11x(平坦面若しくは突起ガイド面)が形成されている。この羽根支持面11xと後述する各羽根部材20の一方にピン状突起で第1の支軸となるガイドピン22が、他方にこれと係合する第1の溝孔13(以下ガイド溝として説明する)が設けられている。
このガイドピン22とガイド溝13とは互いに嵌合して羽根部材20を溝孔に沿って所定の軌跡で開閉動するようになっている。各羽根部材20には後述する駆動リング31との間に、その一方にピン状突起で第2の支軸となる作動ピン23が、他方に第2の溝孔33が形成されている。
【0033】
図2に示す装置(一実施形態)では、後述する羽根部材20の地板11と面す側にガイドピン22が駆動リング31と面する側に作動ピン23が一体形成されている。そして地板11に第1の溝孔(ガイド溝)13が、駆動リング31に第2の溝孔33が形成され、前者にガイドピン22が、後者に作動ピン23が嵌合されている。また第1の溝孔13は羽根部材20の開閉軌跡に沿ったスリット溝(以下「ガイド溝」という)で形成されている。
【0034】
「地板の構成」
図2に示す地板11は、合成樹脂のモールド成形で形成してある。この場合地板に強靭性を持たせる場合にはガラス繊維を混入し、帯電性を帯びさせる場合にはカーボン繊維などを混入する。このように合成樹脂で成形することによって複雑な形状であっても加工が容易であり、安価に製造することが出来る。
これと共に装置基板としての地板を軽量に構成することが可能である。合成樹脂としては耐熱性に富んだエポキシ樹脂、強靭性に富んだガラス繊維強化樹脂、導電性に富んだカーボン繊維混入樹脂などを用途に応じて使用する。
【0035】
このように地板11は合成樹脂のモールド成形によって製造することが薄型化、小型軽量化などから好ましい。また、耐久性、導電性などから樹脂に強化繊維、導電性繊維などを混入することによって所望の特性が得られる。
その反面、合成樹脂で基板(地板)を成形することによって加工精度が劣る問題、或いは混入繊維によって表面粗さが劣り摩擦抵抗が増大する問題がある。本発明はこれらの問題を下記のように「地板と羽根部材の間に弾性部材を介在させる」ことによって解決したことを特徴としている。
【0036】
「弾性部材の構成」
本発明に係わる一実施形態は、地板11に後述する羽根部材20を直接載置して支持することなく、この地板11と羽根部材20との間に弾性部材15を介在させることを特徴とし、以下その構成を説明する。
【0037】
弾性部材15は、図2にその斜視構造を、図4(b)に平面構造を示すように地板11と略々同一形状のリング形状に形成されている。このリング形状は各羽根部材20に対し均一に押圧可能な形状で、且つ加工し易いことから最良の形状であるが、このリング形状で無くとも各羽根部材20に対し均一に押圧可能な非リング形状であっても良い。
この弾性部材15は図9(b)に断面構造を示すように地板11の羽根支持面11xと羽根部材20との間に介在し、羽根部材20が直接地板11と接触するのを避ける。図示の弾性部材15は地板11と略々同一の平面形状に形成している。
【0038】
この弾性部材15は、後述する羽根部材20との摩擦係数が小さい樹脂フィルムで形成されている。図示の弾性部材15は後述する羽根部材20と同一素材で、例えばポリエチレン樹脂フィルム(PETシート)の型抜き成形で形成されている。
そして図4(b)にその形状を示すように地板11のガイド溝13と一致するガイド溝16が形成されている。このガイド溝16については後述する。
【0039】
従って、地板11を樹脂のモールド成形で、弾性部材15を樹脂フィルムの型抜き成形で形成する場合には、地板11の形状精度に比べ弾性部材15の形状精度を高精細に形成することが出来る。このことは成形型に溶かした樹脂を流し込むモールド成形に比べ、圧延ロールによってシート状に形成した素材を型抜き成形することによって寸法精度が得られる為である。
また弾性部材15の材質を羽根部材20と同一材質にすることによって熱変化などの温度特性は羽根部材と実質的に同一となり、羽根部材20と弾性部材15は同一素材で帯電列が同一であるから両者が摺動しても静電気を帯びることがない。
【0040】
図示の弾性部材15は地板11と略々同一形状に形成され、中央に位置する光路開口12の周縁に複数の羽根部材20の基端部21xを支持し、先端部21yは光路開口内部に臨ませるように支持する。
【0041】
[ガイド溝とカイドピンの関係]
上述の地板11に形成されたガイド溝13と弾性部材15に形成されたガイド溝16と各羽根部材20に形成されたガイドピン(第1の支軸)22の関係について説明する。
【0042】
地板11のガイド溝13は図9(b)に示すように凹陥溝で構成され地板外部の光が透過されない盲穴形状に形成されている。また地板11をモールド成形で形成する関係から抜きテーパθが形成され、その溝幅の平均寸法はdgに設定されている。
【0043】
また弾性部材15のガイド溝16は、地板11の溝幅dgより狭くガイドピン22が食付くこと無くスリット溝を移動自在の溝幅dbよりの貫通孔で形成されている。この貫通孔は樹脂フィルムの型抜き成形で均一径に形成されている。
【0044】
一方、各羽根部材20а〜20iにはガイドピン22が植設され、その外径はdaに設定されている。そこで、このガイドピン22のピン外径daと地板11のガイド溝13の溝幅dgと弾性部材15のガイド溝16の溝幅dbとの関係は、da≦db<dgの関係に設定されている。
つまり弾性部材15のガイド溝16は地板11のガイド溝13より狭小幅(db<dg)でガイドピン外径daと適合する寸法(da≦db)に設定されている。
【0045】
従って同図に示すように各羽根部材20а〜20iに植設されたガイドピン22(第1の突起)の基端部は弾性部材15のガイド溝16と係合して運動規制され、ガイドピン22(第1の突起)の先端部は地板11のガイド溝13とは接触しないように成っている。
このためガイドピン(第1の突起)22はテーパθを有する地板11のガイド溝13と不安定に係合することが無く、各羽根部材20а〜20iは円滑に作動する。
【0046】
そこで、地板11、弾性部材15から成る第1基板組1は駆動リング31との間に隙間ギャップL(図10(b)参照)を形成し、羽根部材20が移動自在に支持する。
【0047】
本発明は弾性部材15を、各羽根部材20を駆動リング31側に押圧するように弾性力を帯びさせたことを特徴としている。このため弾性部材15は弾性力を有するプラスチックフィルムで構成され、図示のものは前述したポリエチレン樹脂フィルムで形成してある。
そして図2及び図10(b)に示すように地板11に弾性部材15を湾曲させる段差部11zが形成してある。図示のものは地板11の羽根支持面11xに突起を形成し段差部11zを形成している。尚、この段差部11zは後述する羽根部材20の構成枚数に応じてこれと同数配置するか、図示のように羽根枚数(9枚構成)より少なく(3個所)配置するか、羽根の運動軌跡に従って配置する。また、段差部11zは図示形状に拘るものでは無く、山形形状でも良く、更に実施例の様に段差部11zを形成せずに予め弾性部材15を湾曲成形させておいても良く、結果的に弾性変形された弾性部材15に羽根部材20を押圧する弾性力を有するようにすれば良い。
【0048】
「羽根部材」
図5に羽根部材20の一例を示す。この羽根部材20は、羽根基板21に補助基板24をレーザを使って溶着した構造となっている。その羽根基板21の基端部21xは上述の弾性部材15を介して地板11に支持される。また羽根基板21の先端部21yは光路開口12を開閉する。このとき複数の羽根部材21の先端部21xは互いに鱗状に重なり合って先端部21yで円形状の光路口径12を形成する形状になっている。また、羽根基板21には補助基板24の作動ピン23が貫通する位置決め用孔21hが形成されている。
【0049】
なお、前述したように各羽根部材20は、地板11と駆動リング31との一方にピン状突起(ガイドピン22及び作動ピン23から成る各支軸)、他方に軸孔で係合され、駆動リング31の回転で各羽根部材20は溝孔(ガイド溝13,16)に沿って開閉動する。例えばポリエチレン樹脂フィルム(PETシート)の型抜き成形で形成されている。
【0050】
図示の各羽根部材20а〜20iには、図5(a)に示すように第1のピン状突起であるガイドピン22と第2のピン状突起である作動ピン23が補助基板24の表裏に植設されている。そして、図1で示す様にこのガイドピン22は各羽根部材に地板11側に面する位置に配置され、作動ピン23はその反対面(後述する第2基板側)に配置されている。そして、ガイドピン22は地板11のガイド溝13と、弾性部材15のガイド溝16に嵌合し、作動ピン23は後述する駆動リング31の第2の溝孔33に嵌合する。
【0051】
<レーザ溶着>
また、羽根基板21と補助基板24とを互いに接着するレーザ溶着について説明する。まず、羽根基板21は黒色の顔料を練り込んだ薄いシート材をプレス加工で羽根形状に打ち抜いたもので、レーザ光を吸収可能な黒色をしている。一方、補助基板24はレーザ光が透過する透明若しくは白色の材料で形成されている。実際に、羽根基板21は、レーザ光吸収性樹脂として、例えば、黒色塗料等を混ぜた融点が255℃前後のポリエチレンテレフタレートの厚み0.05mmのシート材をプレス加工で打ち抜いて作成され、補助基板24は、レーザ光透過性樹脂として、例えば、透明なポリカーボネートのナチュラルグレード或いはガラス入りグレード等で、その融点はそれぞれ225℃前後と240℃前後で、赤外線レーザ70の10%以上を透過できるような特性および溶着領域の厚み0.25mmを有する。
【0052】
そして、図5(a)に示すように図示24zは補助基板24に照射されたレーザ光が透過する透過領域であり、21zは補助基板24の透過領域24zを透過したレーザ光を吸収する羽根基板21の吸収領域を示し、羽根基板21の溶着領域21zと補助基板24の透過領域24zが重なった箇所21mが実際に溶着可能な溶着領域と成る。そして、レーザ光を吸収した羽根基板21の溶着領域21zに発生する溶解熱によって互いに対峙した羽根基板21の溶着領域21zと補助基板24の透過領域24zの双方が溶融し互いに接着される。尚、羽根基板21の位置決め用孔21hに補助基板24の作動ピン23が貫通した状態で位置決めされていることから、従来、例えば一対の支軸をそれぞれレーザ溶着する構造のものに比べ一箇所のみのレーザ溶着で済むことから作業工程が短縮することが出来ると共に、直接支軸をレーザ溶着することが無いので、支軸をレーザ溶着による溶解で羽根基板21の平面に対し傾くことが無く部品加工できる。
【0053】
この際、図6(a)で示す様に、羽根基板21のレーザ光Rが照射される溶着領域21zで溶融した溶材の一部が補助基板24の透過領域24zに形成した凹溝24c内に流出することで、羽根基板21と補助基板24との接着面積が増大し強く接着される。尚、この実施例では、羽根基板21と補助基板24との密着性の為に、補助基板24の外形部分で羽根基板21の平面を受ける様に一段低く窪んだ平面24aを形成している。そしてレーザ光を照射する透過領域24z内に凹溝24cが形成される。その凹溝24cは、その平面24aからレーザ光Rの中心部に突出する凸部24bと、この凸部24bの外周を囲む様に環状突起24dが形成され、この凸部24bと環状突起24dによって凹溝24cを形成している。
【0054】
また、図7は図6の変形例を示すもので、羽根基板21と補助基板24との密着性の為に、同様に補助基板24の外形部分で羽根基板21の平面を受ける様に一段低く窪んだ平面24aを形成している。そしてレーザ光を照射する透過領域24z内に凹溝24eと凹溝24gが形成される。その凹溝24eと凹溝24gは、その平面24aからレーザ光Rの中心部を中心に第1の環状突起24fと、この第1の環状突起24fの外周を囲む様に第2の環状突起24hが形成され、この第1の環状突起24fと第2の環状突起24hによって凹溝24eと凹溝24gを形成している。この様に、凹溝を増やすことで更に羽根基板21と補助基板24との接着面積が増大し強く接着させることが出来る。なお、図6の凹溝24c及び図7と凹溝24eと凹溝24gは凹形状をしているがV字形状の溝であっても良い。また、環状突起24dの様に環状形状で有る必要性は無いが、環状形状が最も小さな円形の溶着領域21m内に凹凸面積を形成することが可能で、しかもどの方向からの外力に対しても接着効果が高いことから環状形状としている。
【0055】
また、ここで使用するレーザ光は、赤外線レーザが用いられ、強度中心波長が930nm近辺である赤外の単波長の高出力レーザ光を照射可能であり、該レーザ光の集光作用によって樹脂を溶解して接着作用を得ることができるものを用いることが出来る。実際に、波長800nm〜1100nmの半導体レーザ、YAGレーザなどが用いられ、その照射径(スポット径)は、0.5mm〜1mm程度に設定されている。また、赤外線レーザ70の出力は、数ワット程度の出力に設定されており、この出力で赤外線レーザ70を照射すれば、所定の固着強度が得られる。また、本実施の形態においては、赤外線レーザ70の照射時間が2〜5秒程度である。
【0056】
そして、レーザ溶着装置は、羽根基板と補助基板を受け台(保持部材)と透明部材であるガラスとで隙間が出来ない程度に圧接した状態でレーザ溶着するもので、レーザ光照射部は、真鍮、ステンレス等、軸部材12に比べて比熱が低くレーザ光を透過しない材料からなり、軸部材12の直径とガタなく嵌合する円形の穴を有し、光源側にはレーザ光の進入を容易にする面取り形状部がある。また、透明部材であるガラス14は、レーザ光を損失なく透過させると共に、発生する熱に対し耐熱性を有し、ここでは熱伝導率 0.86kcal/mh℃ の材料を使用し、受け台(保持部材)である錘部材15は、真鍮やアルミニウム等の金属からなり、レーザヘッド16に対しての垂直度や、平面性等が要求され、ここでは熱伝導率85kcal/mh℃の真鍮材を用いた。錘部材15は、薄板部材11の溶着部分の裏面を支持する平坦面を有する。また、実際にレーザ溶着操作は、照射時間を固定し(例えば、1秒間)、レーザ光の出力を変化させて溶着するようにしている。
【0057】
[第2基板組の構成]
図3に従って第2基板組4について説明する。第2基板組4は押さえ板41と、補強板42と、駆動リング31及び押さえ板41に固定した駆動ユニットMで構成されている。以下各構成について説明する。
【0058】
「押さえ板」
押さえ板41は図3に示すように中央部に開口43を有するリング形状に形成され、前述の地板11と略々同一形状に形成されている。図示の押さえ板41は樹脂のモールド成形で、外周の一部に駆動ユニットMの取付座46が設けてある。この取付座46に後述する駆動ユニットMがビスなどで固定される。図示45は押さえ板41を地板11の連結突起14にビス止めする連結孔である。
【0059】
「補強板」
補強板42は、図3に示すように金属などの比較的強靭な板材で構成され、樹脂製の押さえ板41を補強する。従って押さえ板41に十分な強度が得られるときには補強板42を省くことが可能である。この補強板42は押さえ板41と略々同一形状に形成され、中央に開口44が形成してある。
【0060】
上記押さえ板41の開口43と補強板42の開口44は、いずれも光路開口12の開口径Dより大きく設定してあり、開口43の開口径D1と開口44の開口径D2と光路開口12の開口径Dとは、D2≧D1>Dに設定されている。
【0061】
「駆動リング」
駆動リング31は図3に示すように例えば樹脂のモールド成形で中央部に光路開口12を有するリング形状(以下「駆動リング」という)に形成されている。この駆動リング31は、補強板42を介して押さえ板41に回動自在に取り付けられている。
このため駆動リング31には光路開口12の周縁にフランジ32と係合突起34が形成してある。フランジ32は押さえ板41の開口43と補強板42の開口44に嵌合し、光路開口12の中心と一致する回転中心で回動する。また係合突起34は補強板42と摺接する面に形成され両者を円滑に摺動するのを補助している。
【0062】
駆動リング31は上述のように押さえ板41に回動自在に組み込まれ、その周縁の一部には受動歯35が形成してある。この受動歯35は押さえ板41の取付座46に取付けられた後述する駆動ユニットMの駆動歯車53と噛合する位置に設けられている。
【0063】
上記駆動リング31には、各羽根部材20а〜20iに植設された作動ピン23と嵌合する第2の溝孔33が光路開口12の周縁に設けられている。この第2の溝孔33は羽根部材20の枚数に応じて光路開口12の周縁に複数(図示のものは9個所)配置されている。
【0064】
このような構成において駆動リング31は、押さえ板41に回動自在に支持され、駆動ユニットMの駆動歯車53によって所定角度回転することとなる。そして駆動リング31の回転は各羽根部材20а〜20iに伝達されることとなる。
【0065】
[駆動ユニットの構成]
図13に駆動ユニットMの一実施形態を示す。同図の駆動ユニットMはマグネットロータ50と、ステータコイル51と駆動回転軸52と、駆動歯車53と、ヨーク54で構成される所謂パルスモータである。マグネットロータ50は駆動回転軸52と永久磁石56を一体化して構成され、駆動回転軸52を挟みマグネットロータ50の周囲に等間隔にコアー55にコイル58を巻回してなるステータコイル51が設けられている。永久磁石56は外周にNS極が他極着磁形成され、駆動回転軸52には駆動歯車53が取り付けられている。
【0066】
このように構成された駆動ユニットMは押さえ板41の取付座46にブラケット57をネジなどで固定する。そして駆動歯車53を駆動リング31の受動歯35に噛合する。これによって駆動リング31は、図3時計方向と反時計方向に所定角度往復動し、絞り羽根21を開閉動する。
【0067】
[組立て状態の説明]
図1の装置は、第1基板組1の上に羽根組2、駆動リング31、次いで第2基板組4の手順で組み立てる場合を示す。図1に示すように駆動ユニットMを押さえ板41にビスなどで固定する。そして地板11を作業台にセットし、地板上に弾性部材15を取り付ける。次いで第1基板組1の上に各羽根部材20а〜20iを重ね合わせる。
【0068】
このとき各羽根部材20のガイドピン22を地板11のガイド溝13内に収納する。このとき所定枚数の羽根部材20を光路開口12の外周に第1羽根21a、第2羽根21b、第3羽根21cの順に各羽根部材の隣接端を重ね合わせて鱗状に配列する。そして最後に重ね合わせる第n番目(第9羽根)の羽根部材20iを第n−1番目の羽根部材の上に重ねる際に羽根部材の先端部21yを第1羽根21aの基端部21xの下に差し込む。
このように羽根組2を組み立てることによって第1〜第nの羽根部材20а〜20iの何れの羽根部材20も円周方向の両端縁が一方は隣接する羽根部材の上側に重ねられ、他方は隣接する羽根部材の下側に重ねられ、所謂鱗状に積み重ねられることとなる。
【0069】
次に羽根組2の上に駆動リング31を取り付ける。このとき各羽根部材の作動ピン23を駆動リング31の溝孔33に勘合させる。次いで第2基板組4を光路開口12を中心に回動可能に取り付ける。このとき駆動ユニットMの駆動歯車53と駆動リング31の受動歯35が噛合するように駆動リング31の係合突起34を押さえ板41の開口43に差し込み、駆動リング31を押さえ板41に回動自在に取り付ける。
【0070】
そこで地板11と押さえ板41をビス等の固定手段で固定する。これによって第1基板(地板)11、羽根組2(羽根部材20)、駆動リング31、第2基板(押さえ板)41が一体化されたユニットとして光量調整装置Aが組上げられる。
【0071】
このような羽根部材の重ね合わせで、光路開口を最大口径とすると図9(a)に示すように地板の光路開口12の外側に各羽根部材が回動し、最小口径に絞り込むと図10(a)に示すように鱗状に積み重ねられた各羽根部材の先端部21yは互いに支え合うことで、地板に支えられなくとも光路開口12の平面に対しほぼ平行な姿勢を保つこととなる。このとき、各羽根部材20а〜20iの先端部21yは他の先端部により地板11側に反られ、通常なら各羽根部材20а〜20iは基端部21xから先端部21yに反り上がり、その基端部21xが地板11と駆動リング31との間隔(L)の間で傾くところ、弾性部材15の弾性力で基端部21xが駆動リング31側に押圧されることで、基端部21xは地板11と駆動リング31との間隔(L)の間でほぼ平行状態に保たれる。
【0072】
[組立て状態の他の説明]
以上説明した組立て方法の他の方法について説明する。上記の組立て方法では専用の作業台を使って組み立てるのに対し、この組立て方法では組み立てのために専用の作業台は必要とせず図1の装置を上下逆にした状態で組み立てる方法で、第2基板組4の上に駆動リング31、羽根組2、次いで第1基板組1の手順で組み立てる。図1を使って説明すると、まず駆動ユニットMを押さえ板41にビスなどで固定し、その上に駆動リング31の係合突起34を押さえ板41の開口43に嵌め込むとともに、駆動ユニットMの駆動歯車53と駆動リング31の受動歯35が噛合するように駆動リング31の係合突起34を押さえ板41の開口43に差し込み、駆動リング31を押さえ板41に回動自在に取り付ける。そして第2基板組4体を作業台にセットし、駆動リング31上に各羽根部材20а〜20iから成る羽根組2を重ね合わせる。
【0073】
このとき光路開口12の外周に各羽根部材の作動ピン23を駆動リング31の溝孔33に勘合させながら、羽根部材20aを置き、次に羽根部材20aが下になるよう羽根部材20bを上に、引き続き羽根部材20c〜21iを上に順次重ね、最後の羽根部材20iの羽根部材20aに隣接する箇所を羽根部材20a下に差し入れることで鱗状に配列することによって第1〜第nの羽根部材20а〜20iの何れの羽根部材20も円周方向の両端縁が一方は隣接する羽根部材の上側に重ねられ、他方は隣接する羽根部材の下側に重ねられ、所謂鱗状に積み重ねられることとなる。
【0074】
次に羽根組2の上から各羽根部材20のガイドピン22が地板11のガイド溝13内に収納するように弾性部材15を取り付け、その上から同様に地板11を被せ第1基板組1を組み立てる。
【0075】
そこで地板11と押さえ板41をビス等の固定手段で固定する。これによって第1基板(地板)11、羽根組2(羽根部材20)、駆動リング31、第2基板(押さえ板)41が一体化されたユニットとして光量調整装置Aを組上げることもできる。
【0076】
[羽根部材の開閉動作]
次に、図5及び図8に従って羽根部材の開閉動作について説明する。図8(a)は光路開口12の周囲に複数の羽根部材20を配置した絞り全開放状態を示し、図8(b)はこの複数の羽根部材20の1枚の開閉動作状態を示す。
図8(a)のように光路開口12の周囲には、光路中心Oを基準に所定角度隔てた位置(図示のものは9枚の羽根部材20を角度θ=40度ずつ隔てた位置)に複数の羽根部材20が鱗状に配置されている。
【0077】
各羽根部材20は地板11に形成したガイド溝13(第1の溝孔)にガイドピン22が嵌合してある。これと共に各羽根部材20に形成された作動ピン23は、駆動リング31の溝孔(嵌合孔)33に嵌合されている。
【0078】
図8(b)に示すように駆動リング31が光路中心Oを中心に前述の駆動ユニットMによって所定角度範囲で時計方向と反時計方向に回転する。このとき図5(c)に示すように作動ピン23は駆動リング31の回転で図示光路中心Oから半径Lの円弧軌跡x−xで図示c点からd点に同図時計方向に回転移動する。またガイドピン(第1の突起)22はガイド溝16に沿って図示y−y軌跡でa点からb点に移動する。
【0079】
この作動ピン(第2の突起)23とガイドピン(第1の突起)22の移動で羽根部材20は実線で示す絞り全開放状態から破線で示す小絞り状態に開閉動する。従って駆動ユニットMに供給する電流に応じて羽根部材20は、小絞り状態から絞り全開放状態の間で任意の開口径に開閉し、光路開口12を通過する光量を大小調整することとなる。
【0080】
[作用の説明]
次に図9及び図10に従って図1に示す装置の作用について説明する。
光量調整装置Aは、地板11、弾性部材15、羽根部材20、駆動リング31、押さえ板41の順に積層状に組み上げられ、地板(第1基板)11と押さえ板(第2基板)41がビスなどの固定手段で固定されている。
この状態で弾性部材15と駆動リング31の間のギャップGaは地板11に設けた連結突起14(第2基板に設けても良い)の高さで設定される(図9(b)参照)。この連結突起の高さ(H)は、弾性部材15の厚さをt1、駆動リング31の厚さをt2、羽根部材の厚さをt3、羽根部材の最大重なり枚数をm、羽根部材相互間の作動クリアランスをdcとすると、[H=t1+t2+t3・m+dc・m]となるように設定されている。
【0081】
このような条件のもとで、羽根部材20を図9(a)の絞り全開状態から図10(a)の小絞り状態へと開閉動すると、弾性部材15と駆動リング31との間で図9(a)で示すように絞り全開状態で各羽根部材20а〜20iはそれぞれ上に3枚が重ねられ、図10(a)で示すように小絞り状態で各羽根部材20а〜20iはそれぞれ下に3枚が差し込まれた状態となっている。
例えば図9(a)に示すように羽根が全開状態のときには、羽根部材20aの先端部21yの上には羽根部材20bの基端部が、その上に羽根部材20cの基端部の2枚が重なっている。また図10(a)に示すように羽根部材が小絞り状態のときには、羽根部材20aの基端部21xの下には羽根部材20bの1枚が介在するのに対し、羽根部材20aの先端部21yの下には羽根部材20bの先端部が、その下に羽根部材20cの先端部が、更にその下に羽根部材20dの先端部が差し込まれた状態となっている。従って、地板11の光路開口12の周縁近傍では羽根部材20が最低3枚程度重なった状態と成る。
【0082】
このことから、弾性部材15と駆動リング31との間のギャップGaは、羽根部材の厚さ(t3)と重なり枚数(n)の積と羽根部材相互間の作動クリアランス(dc)と重なり枚数(n)の積の総和[Ga=t3・n+dc・n]となる。
従って羽根部材の重なり枚数が少ないときにはギャップGaが小さくて良いのに、弾性部材15と駆動リング31とのギャップは最大重なり枚数で設定される。
【0083】
その結果、図17に示すように羽根部材の全開状態或いは全開状態に接近した開口状態では羽根部材の重なり枚数に比べ大きなギャップが形成されるため羽根部材103aが傾き易い。この状態を図17(b)に示す。これに対し、図9(b)に示すように羽根部材20と地板11との間に介在する弾性部材15が図示のように羽根部材を駆動リング31側に押圧するため羽根部材20aの傾きは抑制される。
【0084】
また図10(a)に示す羽根部材の小絞り状態或いは小絞り状態に接近した絞り開口状態では羽根部材20の先端部21yが他の羽根部材20の先端部21yとの重なりによって反らされ、この先端部21yの反りで基端部21xが傾こうとするのを弾性部材15が図示のように羽根部材を駆動リング31側に押圧するため羽根部材20の傾きは抑制され傾くことがない。
【0085】
なお、弾性部材15に弾性力を付与するため地板11の羽根支持面11xに段差部11zを形成する場合について説明したが、弾性部材15に切り起し弾性片を設けることによって支持面の段差を省くことが出来る。
【0086】
[弾性部材の異なる実施形態]
以上説明した弾性部材は重なり枚数が変化する羽根部材を駆動リング側に押圧するように地板と羽根部材の間に配置し、地板に設けた段差部11zで弾性力を付与する場合を示した。この形態に換えて次の実施形態を採用することも可能である。図2、図3に示す実施形態と同一の構成については同一の符合を付して説明を省略する。
【0087】
図12に示すように、地板11、羽根部材20、駆動リング31、押さえ板41の順に積層状に組み立てる。このとき羽根部材20と駆動リング31との間に弾性部材36を配置する。この弾性部材36は例えば次のように構成する。
【0088】
[弾性部材の構成]
弾性部材36は図13(b)に示すように中央に光路開口12を有する樹脂フィルム(例えばポリエチレンなどの樹脂フィルム)で形成され、駆動リング31と羽根部材20の間に介在される。
これは羽根部材20と駆動リング31が直接接触するのを避け、羽根部材の円滑な開閉運動を得るためであり、同時に弾性部材36には切り起し弾性片36xが設けられこの弾性片の作用で羽根部材20を対向する地板11側に押圧している。
また、図示の弾性部材36は、羽根部材20と同一素材で構成している。これは互いに摺動する羽根部材と摺動リングを同一材質にすることによって熱変化などの温度特性は羽根部材と実質的に同一となり、羽根部材と摺動リングは同一素材で帯電列が同一であるから両者が摺動しても静電気を帯びることが少ない。
【0089】
上記弾性部材36は駆動リング31と同様なリング形状に形成されている。この弾性部材36には駆動リング31の嵌合孔33と合致する位置に係合孔37が設けてある。
この駆動リング31の嵌合孔33と弾性部材36の係合孔37とは、各羽根部材に形成した第2の突起(作動ピン)23の外径de、駆動リング31の嵌合孔33の直径dd、弾性部材36の係合孔37の直径dfとの関係を次式のように設定している。
de≦dd<df(式1)
つまり、羽根部材の作動ピン(第2の突起)23の外径deと駆動リング31の嵌合孔33の直径ddが互いに適合するように嵌合し、弾性部材36の係合孔37の直径dfは、作動ピン(第2の突起)23の外径deより十分大きく設定している。
これによって羽根部材の作動ピン(第2の突起)23は実質的に駆動リング31の嵌合孔33と嵌合し、弾性部材36の係合孔37とは係合しないこととなる。
【0090】
このように駆動リング31の嵌合孔33(直径dd)を弾性部材36の係合孔37(直径df)より小径に設定したのは次の理由による。弾性部材36は駆動リング31と羽根部材20との間に介在する。このため羽根部材20の開閉運動、或いは駆動リング31の回動運動で弾性部材36も回転運動する。
【0091】
また弾性部材36には、適宜個所(例えば120度間隔で3個所)に切り起し弾性片36xが形成してある。この弾性片36xは弾性部材の羽根部材に接する面から反対側の駆動リングに接するように湾曲した折り曲げ片で構成されている。
従って弾性部材36は切り起し弾性片36xが駆動リング31に当接して羽根部材20を地板側に押圧することとなる。その作用は図9及び図10に従って説明したものと同様となる。
【0092】
[撮像装置]
次に上述の光量調整装置Aを用いた撮像装置について図15に基づいて説明する。
スチールカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に前述の光量調整装置を組込む。図示Bは撮影光路に配置した前レンズ、Cは後レンズであり、これ等のレンズで被写体像を結像しその結像面に撮像手段Sを配置する。撮像手段SとしてはCCDなどの固体撮像素子或いは感光フィルムなどを用いる。
そして制御はCPU制御回路、露出制御回路で実行するように構成する。図示のSW1はメイン電源スイッチであり、SW2はシャッタレリーズスイッチを示す。カメラ装置としての制御には、この他オートフォーカス回路などが用いられるが良く知られた構成であるので説明を省く。
【0093】
そこでレンズ鏡筒に組込まれた前レンズBと後レンズCとの間に絞り装置Eとシャッタ装置(不図示)を組込む。この絞り装置Eには前述の羽根部材20及び駆動ユニットMが組込まれている。
そこで制御CPUは露出量、シャッタスピードなどの撮影条件を設定し、露出制御回路に指示信号を発する。まず露光量は露出制御回路が制御CPUからの指示信号で駆動装置Mのコイルに所定方向の電流を供給する。すると羽根部材20は駆動装置Mの回転を駆動歯車53を介して作動ピン23から伝達され、最適露光量に光路開口12を絞る。
【0094】
次いで、レリーズ釦が操作されると、CCDなどの固体撮像素子の場合すでにチャージされている電荷を放出し、撮影を開始する。そこでシャッタ駆動回路は制御CPUから予め設定された露光時間の経過後、シャッタ動作開始の信号を受け駆動装置のコイルにシャッタ閉成方向の電流を供給する。このシャッタ動作の後、撮像手段SがCCD(固体撮像素子)の場合は画像処理回路に画像データが転送されメモリなどに蓄積される。
【符号の説明】
【0095】
A 光量調整装置
M 駆動モータ
L 羽根部材の支持間隙
R レーザ光
1 第1基板組(地板組)
2 羽根組
4 第2基板組(押さえ板組)
11 第1基板(地板)
11x 羽根支持面
11z 段差部
12 光路開口
13 第1の溝孔(ガイド溝)
15 弾性部材
16 ガイド溝
20 羽根部材(20a〜20i)
21 羽根基板
21m 溶着領域
21x 基端部
21y 先端部
22 ガイドピン(第1の支軸)
23 作動ピン(第2の支軸)
24 補助基板
31 駆動リング
32 フランジ
33 第2の溝孔
34 係合突起
35 受動歯
41 第2基板(押さえ板)
42 補強板
46 取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根部材によって光路開口の通過光量を調整する光量調整装置であって、
中央部に光路開口を有するリング形状の基板と、
前記光路開口の周囲に配置され円周方向に鱗状に重なり合う複数の羽根部材と、
前記基板との間に前記複数の羽根部材を挟むように配置され各羽根部材を開閉動する駆動リングと、
前記駆動リングを前記光路開口を中心に回動する駆動手段と、
を備え、
前記羽根部材は、
前記光路開口を開閉する絞り形成部と、その絞り形成部の基端に前記基板と前記駆動リングに嵌合する一対の支軸を配設する基端部とを形成しレーザ光を透過しない羽根基板と、
前記基端部にレーザ溶着で張り合わされる前記支軸を備えレーザ光を透過する補助基板から成り、
前記補助基板は、前記羽根基板と対峙する表面側で、前記レーザを照射する溶着領域に、そのレーザで溶解する前記羽根基板の溶材を流出する溝部を形成して成ることを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
複数の羽根部材によって光路開口の通過光量を調整する光量調整装置であって、
中央部に光路開口を有するリング形状の基板と、
前記光路開口の周囲に配置され円周方向に鱗状に重なり合う複数の羽根部材と、
前記基板との間に前記複数の羽根部材を挟むように配置され各羽根部材を開閉動する駆動リングと、
前記基板と駆動リングとの間の前記複数の羽根部材と対峙する位置で、
前記基板と各羽根部材との間に配置され、各羽根部材を駆動リング側に押圧するか、若しくは前記駆動リングと羽根部材との間に配置され、各羽根部材を基板側に押圧する弾性力を有する弾性部材と、
前記駆動リングを前記光路開口を中心に回動する駆動手段と、
を備え、
前記羽根部材は、
前記光路開口を開閉する絞り形成部と、その絞り形成部の基端に前記基板と前記駆動リングに嵌合する一対の支軸を配設する基端部とを形成しレーザ光を透過しない羽根基板と、
前記基端部にレーザ溶着で張り合わされる前記支軸を備えレーザ光を透過する補助基板から成り、
前記補助基板は、前記羽根基板と対峙する表面側で、前記レーザを照射する溶着領域に、そのレーザで溶解(溶融)する前記羽根基板の溶材を流出する溝部を形成して成ることを特徴とする光量調整装置。
【請求項3】
前記羽根基板は、前記補助基板の一対の支軸の一つが貫通する位置決め用孔を形成し、
前記溶着領域は前記一対の支軸の間に設定されて成る請求項1及び2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記溶着領域は、前記一対の支軸の間に配設された略円形領域で、
前記補助基板の溝部は、前記溶着領域内に形成された少なくとも一つ環状の溝で形成されて成る請求項1乃至3に記載の光量調整装置。
【請求項5】
被写体からの光を結像する結像レンズと、
この結像レンズからの光を受光する撮像手段と、
上記被写体から結像レンズに至る光路に配置された光量調整装置と、
を備え、
前記光量調整装置は、請求項1及び4のいずれか1項に記載の構成を有していることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−11713(P2013−11713A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143796(P2011−143796)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】