説明

光量調節装置および光学機器

【課題】 撮像素子の小型化および高画素化に伴い、照度むらや解像度の劣化が回避できなくなってきている。
【解決手段】 遮光羽根に遮光羽根の移動方向において光透過率が互いに異なる複数の濃度領域を有するNDフィルターが取り付けられており、光通過口の全部がNDフィルターにおける複数の濃度領域のうち最も光透過率が低い濃度領域により覆われる面積のうち光通過口の面積が最大となる状態と、光通過口の全部がNDフィルターにおける複数の濃度領域のうち最も光透過率が低い濃度領域により覆われる面積のうち光通過口の面積が零となる状態との間に設定したリミット開口径より開き側でのみ遮光羽根を駆動し、光通過口がリミット開口径の状態にて露出オーバーになると判断した場合のシャッター速度を、光通過口がリミット開口径より開き側のシャッター速度よりも速くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒等の光学機器やビデオカメラ等の撮像装置に用いられる光量調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ用のズームレンズとしては、例えば被写体側から順に固定の凸、可動の凹、固定の凸、可動の凸の4つのレンズ群から構成されるものがある。
図6(A),(B)には、一般的な4群レンズ構成のズームレンズの鏡筒構造を示している。なお、(B)は(A)におけるA−A線断面を示している。
【0003】
このズームレンズを構成する4つのレンズ群201a〜201dは、固定された前玉レンズ201a、光軸に沿って移動することで変倍動作を行うバリエーターレンズ群201b、固定されたアフォーカルレンズ201c、および光軸に沿って移動することで変倍時の焦点面維持と焦点合わせを行うフォーカシングレンズ群201dからなる。
ガイドバー203,204a,204bは光軸205と平行に配置され、移動するレンズ群の案内および回り止めを行う。DCモータ206はバリエーターレンズ群201bを移動させる駆動源となる。
【0004】
前玉レンズ201aは前玉鏡筒202に保持され、バリエーターレンズ群201bはV移動環211に保持されている。また、アフォーカルレンズ201cは中間枠215に、フォーカシングレンズ群201dはRR移動環214に保持されている。
【0005】
前玉鏡筒202は、後部鏡筒216に位置決め固定されており、両鏡筒202,216によってガイドバー203が位置決め支持されているとともに、ガイドスクリュウ軸208が回転可能に支持されている。このガイドスクリュウ軸208は、DCモータ206の出力軸206aの回転がギア列207を介して伝達されることにより回転駆動される。
【0006】
バリエーターレンズ群201bを保持するV移動環211は、押圧ばね209とこの押圧ばね209の力でガイドスクリュウ軸208に形成されたスクリュー溝208aに係合するボール210とを有しており、DCモータ206によってガイドスクリュー軸208が回転駆動されることにより、ガイドバー203にガイドおよび回転規制されながら光軸方向に進退移動する。
【0007】
後部鏡筒216とこの後部鏡筒216に位置決めされた中間枠215にはガイドバー204a,204bが嵌合支持されている。RR移動環214は、これらガイドバー204a,204bによってガイドおよび回転規制されながら光軸方向に進退可能である。
フォーカシングレンズ群201dを保持するRR移動環214には、ガイドバー204a,204bにスライド可能に嵌合するスリーブ部が形成されており、またラック213が光軸方向についてRR移動環214と一体的となるように組み付けられている。
【0008】
ステッピングモーター212は、その出力軸に一体形成されたリードスクリュー212aを回転駆動する。リードスクリュー212aにはRR移動環214に組み付けられたラック213が係合しており、リードスクリュー212aが回転することによって、RR移動環214がガイドバー204a,204bによりガイドされながら光軸方向に移動する。
なお、バリエーターレンズ群の駆動源としては、フォーカシングレンズ群の駆動源と同様にステッピングモータを用いてもよい。
【0009】
そして、前玉鏡筒202、中間枠215および後部鏡筒216により、レンズ等を略密閉収容するレンズ鏡筒本体が形成される。
また、このようなステッピングモータを用いてレンズ群保持枠を移動させる場合には、フォトインタラプタ等を用いて保持枠が光軸方向の1つの基準位置に位置することを検出した後に、ステッピングモータに与える駆動パルスの数を連続的にカウントすることにより、保持枠の絶対位置を検出する。
【0010】
図7には、従来の撮像装置におけるカメラ本体の電気的構成を示している。この図において、図6にて説明したレンズ鏡筒の構成要素については、図6と同符号を付す。
221はCCD等の固体撮像素子、222はバリエーターレンズ群201bの駆動機構であり、モータ206(又はステッピングモータ)、ギア列207およびガイドスクリュー軸208等を含む。
【0011】
223はフォーカシングレンズ群201dの駆動機構であり、ステッピングモータ212、リードスクリュー軸212aおよびラック213等を含む。
224はバリエーターレンズ群201bとアフォーカルレンズ201cとの間に配置された絞り装置235の駆動源である。
【0012】
225はズームエンコーダー、227はフォーカスエンコーダーである。これらのエンコーダーはそれぞれ、バリエーターレンズ群201bおよびフォーカシングレンズ群201dの光軸方向の絶対位置を検出する。なお、バリエーターレンズ群201bの駆動源としてDCモータを用いる場合には、ボリューム等の絶対位置エンコーダーを用いたり、磁気式のものを用いたりする。
【0013】
また、駆動源としてステッピングモーターを用いる場合には、前述したような基準位置に保持枠を配置してから、ステッピングモータに入力する動作パルス数を連続してカウントする方法を用いるのが一般的である。
【0014】
226は絞りエンコーダーであり、モータ等の絞り駆動源224の内部にホール素子を配置し、ローターとステーターの回転位置関係を検出する方式のものなどが用いられる。
232は本カメラの制御を司るCPUである。228はカメラ信号処理回路であり、固体撮像素子221の出力に対して所定の増幅やガンマ補正などを施す。これらの所定の処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート229およびAFゲート230を通過する。即ち、露出決定およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲が全画面内のうちこのゲートで設定される。このゲートの大きさは可変であったり、複数設けられたりする場合がある。
【0015】
231はAF(オートフォーカス)のためのAF信号を処理するAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分に関する1つもしくは複数の出力を生成する。233はズームスイッチ、234はズームトラッキングメモリである。ズームトラッキングメモリ234は、変倍に際して被写体距離とバリエーターレンズの位置に応じてセットすべきフォーカシングレンズの位置の情報を記憶する。なお、ズームトラッキングメモリとしてCPU232内のメモリを使用してもよい。
【0016】
例えば、撮影者によりズームスイッチ233が操作されると、CPU232は、ズームトラッキングメモリ234の情報をもとに算出したバリエーターレンズとフォーカシングレンズの所定の位置関係が保たれるように、ズームエンコーダー225の検出結果となる現在のバリエーターレンズの光軸方向の絶対位置と算出されたバリエーターレンズのセットすべき位置、およびフォーカスエンコーダー227の検出結果となる現在のフォーカスレンズの光軸方向の絶対位置と算出されたフォーカスレンズのセットすべき位置がそれぞれ一致するように、ズーム駆動機構222とフォーカシング駆動機構223を駆動制御する。
【0017】
また、オートフォーカス動作ではAF信号処理回路231の出力がピークを示すように、CPU232は、フォーカシング駆動機構223を駆動制御する。
【0018】
さらに、適正露出を得るために、CPU232は、AEゲート229を通過したY信号の出力の平均値を所定値として、絞りエンコーダー226の出力がこの所定値となるように絞り駆動源224を駆動制御して、絞り装置235の開口径をコントロールする。
【0019】
また、図8には従来の絞り装置(光量調節装置)の構成を示している。この絞り装置は、2枚の絞り羽根が互いに反対向きに直線駆動されることによって絞り開口径を変更可能とするものである。
【0020】
224は図7に示した絞り駆動源(メーター)である。不図示のコイルへの通電を行なうことにより駆動源224の出力軸401が回動する。この出力軸401には、連動レバー402が一体的に固定されている。レバー402は回転軸から同一距離Rの位置に、羽根連動ピン403,404を有している。
【0021】
405,406は絞り羽根であり、これら2枚の絞り羽根によって絞り開口413が形成される。このうち、絞り羽根406には一体的にNDフィルター414が接着固定されており、絞り開口413の一部がこのNDフィルター414により覆われている。
415は光軸である。絞り羽根405,406には、前述の羽根連動ピン403,404に嵌合する穴部407、408が形成されている。これにより、連動レバー402と絞り羽根405,406とが連結される。
【0022】
絞り羽根405,406は、不図示の絞りベースに設けられた案内ピンにより、長穴部409〜412が案内されることで、連動レバー402の回動に伴って案内方向に動き、絞り開口径を可変とするものである。
【0023】
例えば、連動レバー402が図中の矢印416の方向に回動すると、連動ピン404は下へ、連動ピン403は上へ移動する。これに伴って絞り羽根406は下に、絞り羽根405は上へ移動するので、絞り開口径(つまりは、絞り開口の面積)はより大きくなる方向へ変化する。連動レバー402の回動方向が矢印416とは逆の方向であれば、絞り開口径はより小さくなる方向に変化する。
【0024】
絞り装置としては、このような2枚の絞り羽根を略直線駆動する方式の他に、2枚の絞り羽根を旋回駆動する方式も知られている。さらに、駆動部の動きを、光軸中心に回動可能な風車と称する連動板に伝達し、この風車上に設けられたピンに絞り羽根を連動させることで、通常5〜6枚の絞り羽根を用いて絞り開口形状を五角形、六角形とする、いわゆる「虹彩絞り」も知られている。
【0025】
ところで、絞り開口径が小さくなると、光の回折現象が発生し易くなる。特に、撮像サイズが対角長さで4mm程度といった小型CCDを用いる最近のビデオカメラやデジタルスチルカメラでは、画素数を増すために画素と画素の距離(画素ピッチ)と画素そのものの大きさが縮小されており、画素ピッチとしては3.5μm程度まで小さくなっている。
このような状況だと、絞り値でF11やF8、場合によってF5.6といった通常頻繁に使用される絞り値では、光の回折により画像全体がフレアがかかった感じになり、解像度が劣化するような現象が発生する。
【0026】
そこで、このような小絞り側での回折による悪影響を除去するために、
(1)NDフィルターを絞り羽根に取り付け、絞り開口径の縮小と同時に光の透過率を落とすことで、上記の解像劣化を発生してしまう開口径に実用的にほとんどせずに、広い輝度範囲を得るようにする、
(2)上記(1)でも最適露出が得られない場合には、CCDの電荷蓄積時間(シャッタ速度)を変化させ、より短い時間で像を取り込むようにする、
ことが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、上記(1)では、画素が小さくなり小絞り回折の発生するF値が明るくなると、絞り羽根に取り付けるNDフィルターの透過率を低くする必要があるが、この場合、NDフィルターが絞り開口の半分程度を覆っている状態において画面内で照度むらが発生するなどの問題が発生する。
【0028】
また、上記(2)では、ビデオ画像として、被写体の動きがぎくしゃくしたものとなってしまうなどの問題が発生する。
【0029】
このように、従来は小絞り時に発生する光の回折に起因する像劣化を取り除くために絞り羽根にNDフィルターを設けたが、CCD等の撮像素子の小型化および高画素化に伴い、照度むらや解像度の劣化が回避できなくなってきている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記の課題を解決するために、本願第1の発明では、遮光羽根を駆動して光通過口の面積を変化させることにより光量を調節する光量調節装置において、遮光羽根に遮光羽根の移動方向において光透過率が互いに異なる複数の濃度領域を有するNDフィルターが取り付けられており、光通過口の全部がNDフィルターにおける複数の濃度領域のうち最も光透過率が低い濃度領域により覆われる面積のうち光通過口の面積が最大となる状態と、光通過口の全部がNDフィルターにおける複数の濃度領域のうち最も光透過率が低い濃度領域により覆われる面積のうち光通過口の面積が零となる状態との間に設定したリミット開口径より開き側でのみ遮光羽根を駆動し、光通過口がリミット開口径の状態にて露出オーバーになると判断した場合のシャッター速度を、光通過口がリミット開口径より開き側のシャッター速度よりも速くする。
【発明の効果】
【0031】
これにより、小絞り回折による画質の劣化や画面内での照度むらを防止しながら、特に明るい状況下でも最適な露出制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の基本概念の説明図。
【図2】本発明の第1実施形態である絞り装置の説明図。
【図3】本発明の第2実施形態である絞り装置の説明図。
【図4】上記第2実施形態の絞り装置におけるNDフィルターの2つの濃度領域の面積関係の説明図。
【図5】本発明の第3実施形態である撮像装置における被写体明るさと絞り開口径とシャッター速度との関係を示すグラフ。
【図6】従来のビデオカメラのレンズの構成図。
【図7】従来のビデオカメラの電気回路を示すブロック図。
【図8】従来の絞り装置の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(基本概念)
まず図1(A)〜(C)を用いて、本発明の実施形態に共通する基本的な考え方およびその効果について説明する。
図1(A)〜(C)には、菱形の絞り開口(光通過口)が、最大(開放)開口面積と全閉(開口面積は零)との間の中間開口面積となっている状態を示しており、いずれもこの中間開口内に、NDフィルターにより覆われておらず素通しになっている部分と、NDフィルターにより覆われた部分とがある状態を示している。
【0034】
図1(A)では、透過率10%のNDフィルターが絞り開口の半分以上を覆っており、このND部の上部にはNDフィルターがない素通しの部分が残っている。 ここで、この状態において上述した照度むらが発生せず、若しくは発生しても程度が軽微で問題にならないレベルであると仮定する。
【0035】
しかし、図1(A)に示したものの場合、光の回折による像劣化の発生する小絞り状態に、通常の撮影状況の範囲、例えば晴天の屋外撮影などで容易に達してしまう。
【0036】
そこで、この対策として図1(B)に示すように、NDフィルターの透過率を(A)の10%から3.2%と低く(濃く)する。この場合、図1(A)のものが有していた「すぐに小絞りになり像劣化が発生してしまう」という問題の出現頻度は軽減できるものの、その一方で、照度むらが発生してしまう。
【0037】
そこで、これらの対策として、図1(C)に示すように、NDフィルターを複数(この図では2つ)の濃度領域に分ける。このように、絞り開口内を、素通し部分、透過率10%のNDフィルターにより覆われた部分および透過率3.2%のNDフィルターにより覆われた部分と分けることにより、画面の照度むらを見えにくくでき、また小絞り時の回折による像劣化の発生も軽減できる。
【0038】
(第1実施形態)
以下の実施形態は、上述した本発明の基本概念に基づくものであり、さらに絞り開口内における素通し部分およびNDフィルターの各濃度領域の面積の大小関係を特定することにより、上記効果をより確実に得ることができるものである。
【0039】
図2(A),(B)には、本発明の第1実施形態である絞り装置(光量調節装置)の絞り開口周辺の様子を示している。これらの図は、絞り開口が最大(開放)の場合を示している。
【0040】
なお、絞り装置全体の構成は、先に図8を用いて説明したものと同様であり、2枚の絞り羽根(遮光羽根)のうち一方に接着などで取り付けられる(貼り付けられる)NDフィルターが、2つの濃度領域を有する点が異なる。
【0041】
また、この絞り装置は、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置のレンズ系に搭載されたり、レンズ鏡筒等の光学機器内に搭載されるものである。
【0042】
図2(A)において、1は絞り開口SのうちNDフィルターにより覆われず素通しとなっている部分であり、A1はこの素通し部分の面積である。
【0043】
また、2はNDフィルターのうち透過率の高い(例えば、10%の)低濃度領域であり、A2は絞り開口Sのうちこの低濃度領域2により覆われた部分の面積である。
【0044】
さらに、3はNDフィルターのうち透過率の低い(例えば、3.2%の)高濃度領域であり、A3は絞り開口Sのうちこの高濃度領域3により覆われた部分の面積である。なお、2a,3aはそれぞれ低濃度領域2および高濃度領域3のうち、絞り羽根に重なった部分であり、NDフィルターを絞り羽根に接着する際の接着代の部分である。
【0045】
図2(B)には、図2(A)から絞り開口Sの内側のみを取り出して示している。この図から分かるように、絞り開口Sが最大(開放)の場合には、絞り開口S内は、素通し部分1と、低濃度領域2により覆われた部分と、高濃度領域3により覆われた部分とに分けられており、素通し部分1の面積A1と、低濃度領域2により覆われた部分の面積A2と、高濃度領域3により覆われた部分の面積A3とは、
A3<A2<A1 …(1)
の関係にある。
【0046】
このように構成されることで、絞り開放時における全体の光透過率の低下を必要最低限に軽減することができ、図示しない撮像画面における配光むらの発生が防止できる。
【0047】
(第2実施形態)
図3には、本発明の第2実施形態である絞り装置の絞り開口周辺の様子を示している。これらの図は、絞り開口が最大(開放)から小さくなる方向(移動方向)に絞り羽根を駆動していったときに、最初にNDフィルターが絞り開口を覆いきった状態、言い換えれば、絞り開口がとり得る大きさのうち、絞り開口の全部がNDフィルターにより覆われる最大のものである状態を示している。
【0048】
図3(A)において、2はNDフィルターのうち透過率の高い(例えば、10%の)低濃度領域であり、A4は絞り開口Sのうちこの低濃度領域2により覆われた部分の面積である。
【0049】
さらに、3はNDフィルターのうち透過率の低い(例えば、3.2%の)高濃度領域であり、A5は絞り開口Sのうちこの高濃度領域3により覆われた部分の面積である。なお、2a,3aはそれぞれ低濃度領域2および高濃度領域3のうち、絞り羽根に重なった部分であり、NDフィルターを絞り羽根に接着する際の接着代の部分である。
【0050】
図3(B)には、図3(A)から絞り開口Sの内側のみを取り出して示している。この図から分かるように、絞り開口Sが上記状態の場合には、絞り開口S内は、低濃度領域2により覆われた部分と、高濃度領域3により覆われた部分とに分けられており、低濃度領域2により覆われた部分の面積A4と、高濃度領域3により覆われた部分の面積A5とは、
A5<A4 …(2)
の関係にある。
【0051】
これにより、絞り羽根の移動に対する透過光量の変化の数値がこの状況付近で急峻になることを防止できることも利点として上げられる。
【0052】
図4には、図3と同じ状態の絞り開口の周辺を示しているが、この図において、C1およびC2はそれぞれ、絞り開口Sに内接する円で低濃度領域2、高濃度領域3を含む。C2は、高濃度領域3によって覆われた部分に内接する円を示している。ここで、これら円C1,C2内の面積の比は、低濃度領域2によって覆われた部分の面積A4および高濃度領域3によって覆われた部分の面積A5の比と等しくなるため、この円の面積をF値に置き換えた場合、低濃度領域2によって覆われた部分の面積A4と高濃度領域3によって覆われた部分の面積A5とは、
4×A5<A4 …(3)
の関係にある。
【0053】
但し、実際には、4×A5<A4であって、かつ4×A5≒A4とすることが望ましい。
これは、図3および図4に相当するF値から、さらに絞り開口が縮小する方向に絞り、高濃度領域3により絞り開口の全てが覆われるまでの間に、F値として2段程度以上の差を有することを示している。
【0054】
仮にこの差を大きくする(つまり、A5に対するA4を大きくする)と、絞り開放時において低濃度領域2および高濃度領域3に覆われた部分の面積が大きくなり(素通し部分が小さくなり)、絞り開放時の光の透過率が低くなるという問題が生じるか、NDフィルターで覆いきった絞り開口でのF値が大きな値となり、目的とする小絞り時の回折防止がうまく行えないという問題が生じることが懸念される。
【0055】
また、上記差を小さくする(つまり、A4に対するA5を大きくする)と、図1(B)にて説明したように、絞り開口内のうちの高濃度領域3に覆われた部分の面積が大きくなり、照度むらの発生が懸念される。以上から、上記の程度の面積設定が、照度むらを発生させず、かつ小絞り時の回折による悪影響を防止するのに最適である。
【0056】
なお、上記各実施形態はそれぞれ別の絞り装置の実施形態として説明したが、上記(1)〜(3)式により表される関係のいずれをも満たすように1つの絞り装置を構成してもよい。
【0057】
(第3実施形態)
図5には、上記各実施形態にて説明した絞り装置を備えた、本発明の第3実施形態であるビデオカメラ又はデジタルスチルカメラ(撮像装置)における被写体の明るさ(横軸)と絞り開口径(左縦軸)とシャッター速度(右縦軸)との関係を示している。
【0058】
この図において、実線L3は明るさに応じた絞り開口径(開口面積)を、破線L5は明るさに応じたCCD等の撮像素子への電荷蓄積時間(シャッター速度)を示している。絞り装置は、被写体の明るさが暗い側から明るくなるにつれて、絞り開口径が小さくなるように制御される。この際、シャッター速度は長い側でほぼ一定である。
【0059】
しかし、絞り開口径が「リミット開口径」として設定された径に達すると、それ以上被写体が明るくなっても、小絞り回折による解像度の劣化が発生するおそれが出てくるため、それ以上絞り開口径を小さくせず、「リミット開口径」を維持する(L3′)。
【0060】
これに対し、「リミット開口径」に対応する明るさを超えて被写体が明るくなるにつれて、シャッター速度を高速にしていく(L5′)ことで、特に明るい被写体に対しても最適な露出を得るようにしている。
【0061】
ここで、「リミット開口径」は、絞り開口の全てをNDフィルターのうち高濃度領域3が覆っている状態で、小絞り回折の出現具合等から定められる絞り開口径である。
【0062】
また、CPUを用いて上記のような制御を行う実際の撮像装置では、この「リミット開口径」は、例えば、絞り開放状態を基準とした絞り羽根の駆動量に換算されてメモリに記憶される。そして、エンコーダーを通じて絞り羽根の開放状態からの駆動量が上記記憶駆動量に達したことを検出したCPUは、この検出情報と、AEゲート(図7参照)を通過して得られた映像信号の輝度信号とに応じて、この状況で露出がオーバーになるか否かを判断し、露出オーバーになると判断した場合にはシャッター速度を高速化するように制御する。
【0063】
なお、上記各実施形態では、NDフィルターが2つの濃度領域を有する場合について説明したが、本発明は、NDフィルターが3つ以上の濃度領域を有する場合にも適用することができる。この場合、隣り合った二つのND領域に関して本発明を適用できるもので、上述の各実施形態と同様に、高濃度領域の面積が低濃度領域の面積より小さくなる関係となる。
【符号の説明】
【0064】
S 絞り開口
1 素通し部分(NDフィルターによって覆われていない部分)
2 NDフィルターの低濃度領域
3 NDフィルターの高濃度領域
A1 素通し部分の面積
A2,A4 低濃度領域の面積
A3,A5 高濃度領域の面積
L3 絞り開口径
L5 シャッター速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光羽根を駆動して光通過口の面積を変化させることにより光量を調節する光量調節装置において、
前記遮光羽根に前記遮光羽根の移動方向において光透過率が互いに異なる複数の濃度領域を有するNDフィルターが取り付けられており、
前記光通過口の全部が前記NDフィルターにおける前記複数の濃度領域のうち最も光透過率が低い濃度領域により覆われる面積のうち前記光通過口の面積が最大となる状態と、前記光通過口の全部が前記NDフィルターにおける前記複数の濃度領域のうち最も光透過率が低い濃度領域により覆われる面積のうち前記光通過口の面積が零となる状態との間に設定したリミット開口径より開き側でのみ前記遮光羽根を駆動し、
前記光通過口が前記リミット開口径の状態にて露出オーバーになると判断した場合のシャッター速度を、前記光通過口が前記リミット開口径より開き側のシャッター速度よりも速くすることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光量調節装置を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−15172(P2010−15172A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230121(P2009−230121)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2000−152805(P2000−152805)の分割
【原出願日】平成12年5月24日(2000.5.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】