説明

光電センサ

【課題】 測定対象物の検出距離の変化に対して感度調整ボリュームの回転角を線形に変化させて感度調整を容易化した光電センサを提供する。
【解決手段】 感度調整ボリューム15が所定角度で回転されたときの可変抵抗器14の電圧を検出し、この検出電圧に基づき、測定対象物Mの検出距離の変化に対する感度調整ボリューム15の回転角度の変化が線形となるように、検出電圧の変化に対する増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算を行ない、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更する制御を行なうので、検出距離の変化に線形に変化できるボリューム調整が可能となり、感度調整を容易化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の有無を検出する光電センサに関し、特に感度調整の容易化に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光電センサは、投光素子からの投光ビームで照射された測定対象物の反射光を受光素子に受光させ、この受光した受光信号を感度調整回路を介して増幅回路で増幅して、比較回路(コンパレータ)によって所定のしきい値(基準値)と比較して、測定対象物の有無を検出する。感度調整回路は例えば増幅回路の増幅率(ゲイン)を変更できる感度調整ボリューム付き可変抵抗器からなり、測定対象物の検出距離に合わせて、ボリュームを回転させて増幅率(感度特性)が調整される。測定対象物の検出距離が短いと、ボリュームを回転角を小さく、検出距離が長いと回転角を大きく調整する。
【0003】
このような光電センサの一例として、ボリュームの微調整をしやすくするため、分圧抵抗に可変抵抗器を並列に接続し、ボリュームの回転角度の変化に対する可変抵抗器の電圧の変化の関係を非線形にしたものが知られている(例えば、特許文献1)。その一方、増幅器の増幅率(ゲイン)調整に対応してコンパレータの基準値およびヒステリシスを自動的に調整して高分解能を得る光電センサが知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−97996号公報
【特許文献2】特開2002−171162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、感度調整ボリュームの回転角度の変化に対して可変抵抗器の電圧の変化は線形になり、可変抵抗器の電圧の変化に対して増幅回路の増幅率(感度)の変化は線形になる。つまり、感度調整ボリュームの回転角の変化に対する増幅率(感度)の変化は線形になる。しかし、増幅率(感度)が検出距離の2乗に反比例する特性(2乗特性)を有するため、図4の破線に示すように、測定対象物の検出距離に合わせて感度調整を行なう際に、検出距離の変化に対する可変抵抗器の電圧レベル(感度調整ボリュームの回転角および増幅率)の関係は非線形になる。なお、図4で縦軸は可変抵抗器の電圧レベルの、横軸は測定対象物の検出距離の、それぞれ最大値に対する%表示したものである。このため、測定対象物の検出距離が短いと、増幅回路の増幅率が低くかつその変化は急激に大きくなり、検出距離が長いと増幅率が高くかつその変化は小さくなるので、特に増幅率が低くてその変化が急激に大きくなる近距離において、ボリューム調整がしにくいという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献1は、ボリュームの回転角度の変化に対する可変抵抗器の電圧の変化を非線形にして微調整するものの、増幅率(感度)が検出距離の2乗に反比例する特性に由来する検出距離の変化に対するボリュームの回転角の変化の非線形な関係に正確に対応していないため、依然として近距離においてボリューム調整がしにくいという問題が残る。特許文献2は増幅率を調整するものの、同様に増幅率(感度)が検出距離の2乗に反比例する特性に由来する上記非線形な関係に正確に対応するものではない。すなわち、従来では、測定対象物の検出距離の変化に対して感度調整ボリュームの回転角を線形に変化させて感度調整を容易化した光電センサを実現できなかった。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決して、測定対象物の検出距離の変化に対して感度調整ボリュームの回転角を線形に変化させて感度調整を容易化した光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明にかかる光電センサは、投光ビームで照射された測定対象物からの反射光を受光する受光素子と、受光素子で受光した受光信号を増幅する増幅回路と、感度調整ボリュームが操作されてその回転角度に対して線形に変化する可変抵抗器の電圧を変化させることにより、増幅回路の増幅率(感度)を調整する感度調整回路と、増幅回路により増幅された受光信号の電圧と所定のしきい値とを比較する比較回路と、を備えて測定対象物の有無を検出する光電センサであって、測定対象物の検出距離の変化に対して増幅回路の増幅率を変化させることによって、測定対象物の検出距離の変化に対する感度調整ボリュームの回転角度の変化を線形にする制御を行なうボリューム線形化制御手段を備え、前記ボリューム線形化制御手段は、感度調整ボリュームが所定角度で回転されたときの可変抵抗器の電圧を検出する電圧検出手段と、前記電圧検出手段による検出電圧に基づき、測定対象物の検出距離の変化に対する感度調整ボリュームの回転角度の変化が線形となるように、前記検出電圧の変化に対する前記増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算を行ない、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更する増幅率特性変更手段とを有する。
【0008】
この構成によれば、感度調整ボリュームが所定角度で回転されたときの可変抵抗器の電圧を検出し、この検出電圧に応じて、測定対象物の検出距離の変化に対する感度調整ボリュームの回転角度の変化が線形となるように、検出電圧の変化に対する増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算を行ない、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更する制御を行なうので、検出距離の変化に線形に変化できるボリューム調整が可能となり、感度調整を容易化できる。
【0009】
好ましくは、前記比較回路は、増幅された受光信号の電圧と測定対象物の検出ONのしきい値となるON点基準値とを比較する第1の比較部と、増幅された受光信号の電圧と測定対象物の検出OFFのしきい値となるOFF点基準値をと比較する第2の比較部とを有し、さらに、前記検出距離が近い場合に、前記OFF点基準値をON点基準値に近づくように変更する基準電圧可変手段を備えている。この場合、近距離時の比較回路におけるON点とOFF点の差(コンパレータヒステリシス)を小さくできるので、小さな測定対象物でも安定的に検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光電センサを示す構成図である。本センサは、駆動回路2により駆動される投光素子1と、投光素子1からの投光ビームで照射された測定対象物Mからの反射光を受光する受光素子3と、受光素子3で受光した受光信号を増幅する増幅回路5と、増幅回路5により増幅された受光信号の電圧と所定のしきい値とを比較する比較回路(コンパレータ)6と、比較の結果に基づき測定対象物Mの有無(ON、OFF)を出力する出力回路7と、検出結果を表示する表示回路8とを備えて、測定対象物Mの有無を検出するものである。増幅回路5、比較回路6、出力回路7および後述するボリューム線形化制御手段11はIC回路に搭載されている。投光素子1は例えば発光ダイオード(LED)、受光素子3は例えばフォトダイオード(PD)が用いられる。
【0011】
本センサは、感度調整ボリューム15が操作されてその回転角度の変化に対して線形な可変抵抗器14の電圧を変化させることにより、増幅回路5の増幅率(感度)を調整する感度調整回路10を備えている。この感度調整回路10は、図2に示すように、例えばVccとGND間に接続された可変抵抗14と、これに摺動可能に接続された感度調整ボリューム15とからなる。
【0012】
上述したとおり、元来、感度調整ボリューム15の回転角と測定対象物Mの検出距離との間には、増幅回路5の増幅率(感度)が測定対象物Mの検出距離の2乗に反比例する特性に由来して、検出距離の変化に対する増幅率の変化が非線形であることにより、検出距離の変化に対する感度調整ボリューム15の回転角度の変化も非線形となる関係を有する。本センサは、この非線形の関係を、検出距離の変化に対して増幅回路5の増幅率を変化させ、増幅率(感度)特性を変更させることによって、線形の関係にする制御を行なうボリューム線形化制御手段11を備えている。
【0013】
このボリューム線形化制御手段11は、感度調整ボリューム15が所定角度で回転されたときの可変抵抗器14の電圧(分圧)を検出する電圧検出手段12と、電圧検出手段12による検出電圧に基づき、測定対象物Mの検出距離の変化に対する感度調整ボリューム15の回転角度の変化が線形となるように、検出電圧の変化に対する増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算を行ない、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更する増幅率特性変更手段13とを有する。
【0014】
前記増幅率特性変更手段13は、第1に、電圧検出手段12で検出された電圧に基づいて、測定対象物Mの検出距離の変化に対して感度調整ボリューム15の回転角度の変化が線形の関係となるように、検出電圧の変化に対する増幅回路5の増幅率の変化の関係を検出距離に応じて非線形化する演算を行なう。この場合、受光素子3で受光されて増幅回路5に入力される受光量は、検出距離が短いと大きくなり、検出距離が長いと小さくなる。この増幅回路5に入力された受光量(検出距離)に応じて、検出電圧の変化に対する増幅回路5の増幅率の変化の関係を非線形化する演算が行なわれる。この非線形化する演算には、例えばLOGアンプによる非線形化演算が用いられ、線形に変化する各変化量をLOGアンプを介して非線形化する。このLOGアンプは例えばOPアンプとダイオードまたはトランジスタで構成される。
【0015】
増幅率特性変更手段13は、第2に、前記した検出電圧の変化に対する増幅率の変化の関係を検出距離に応じて非線形化する演算の結果に基づき、増幅回路5の増幅率の特性を変更する。
【0016】
以下、上記構成の光電センサにおける感度調整の動作について説明する。
まず、図1の測定対象物Mの検出距離に合わせて図2の感度調整ボリューム15を回転させて感度調整を行なう際、電圧検出手段12により、感度調整ボリューム15が所定角度で回転されたときの可変抵抗器14の電圧が検出される。なお、感度調整に際しては、測定対象物Mが検出されたときに点灯する、図示しない動作表示灯が用いられる。
【0017】
つぎに、増幅率特性変更手段13により、電圧検出手段12で検出した電圧に基づいて、測定対象物Mの検出距離の変化に対する感度調整ボリューム15の回転角度の変化が線形となるように、検出電圧の変化に対する増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算が行なわれ、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更される。増幅回路5の増幅率特性が変更されることにより、感度調整ボリューム15の回転角(可変抵抗器14の電圧レベル)と検出距離との関係は線形になる。
【0018】
可変抵抗器14の電圧レベルの変化に対する測定対象物Mの検出距離の変化の関係において、従来、図4の破線で示すように、検出距離の変化に対する可変抵抗器14の電圧レベル(感度調整ボリューム15の回転角)の変化の関係は非線形であった。これに対して、本発明では増幅回路5の増幅率特性を上記したように変更するので、図4の実線に示すように、検出距離の変化に対する可変抵抗器14の電圧レベル(感度調整ボリューム15の回転角)の変化の関係は線形となる。このため、従来では、特に増幅率が低くてその変化が急激に大きくなる近距離において、ボリューム調整がしにくかったが、本発明では、近距離であっても、増幅率の急激な変化が抑制され、測定対象物Mの検出距離の変化に対して感度調整ボリューム15の回転角の変化を1:1で対応させることができるので、ボリューム調整が容易になる。例えば、検出距離が20%の近距離の場合、従来ではこれに対応した電圧レベルが45%であったが(図示b)、本発明ではこれに対応した電圧レベルが20%となる(図示a)。
【0019】
このように、本発明は、感度調整ボリューム15が所定角度で回転されたときの可変抵抗器14の電圧を検出し、この検出電圧に基づき、測定対象物Mの検出距離の変化に対する感度調整ボリューム15の回転角度の変化が線形となるように、検出電圧の変化に対する増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算を行ない、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更する制御を行なうので、検出距離の変化に線形に変化できるボリューム調整が可能となり、感度調整を容易化できる。
【0020】
つぎに、第2実施形態について説明する。
この第2実施形態は、図3に示すように、図1の比較回路6が、増幅された受光信号の電圧と測定対象物の検出ONのしきい値となるON点基準値Ref1とを比較する第1の比較部16と、増幅された受光信号の電圧と測定対象物の検出OFFのしきい値となるOFF点基準値Ref2とを比較する第2の比較部17とを有している。さらに、測定対象物Mの検出距離が近い場合に、前記OFF点基準値Ref2をON点基準値Ref1に近づくように変更する基準電圧可変手段18を備えている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0021】
第2実施形態では、ON点基準値Ref1は固定であり、基準電圧可変手段18により、電圧検出手段12により可変抵抗器14の電圧レベルを読み取り、この検出電圧に応じて、測定対象物Mの検出距離が短い場合に、OFF点基準値Ref21をON点基準値Ref1に近づけるように変更される。
【0022】
第2実施形態は、従来では増幅率(感度)の高低にかかわらず、ON点基準値だけでなくOFF点基準値も固定していたため、検出距離が短く増幅率(感度)が低い時にON点とOFF点基準値の差(コンパレータヒステリシス)が大きくなったのと異なり、増幅率(感度)に応じたOFF点基準値Ref2の設定を行うことができるので、近距離時にコンパレータヒステリシスが小さくなり、分解能が向上する。検出距離が短いとき増幅率(感度)が低く、このときノイズレベルも下がるので、ヒステリシスを小さくしても安定した検出が可能となる。
【0023】
このように、本発明は、近距離時における感度調整の容易化とともに、近距離時の比較回路6におけるON点基準値Ref1とOFF点基準値Ref2の差(コンパレータヒステリシス)を小さくできるので、分解能が向上して、小さな測定対象物Mでも安定的に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る光電センサを示すブロック構成図である。
【図2】図1の光電センサの感度調整回路を示す図である。
【図3】第2実施形態に係る光電センサの比較回路を示す図である。
【図4】可変抵抗器の電圧レベルと測定対象物の検出距離の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1:投光素子(LED)
3:受光素子(PD)
5:増幅回路
6:比較回路
10:感度調整回路
11:ボリューム線形化制御手段
12:電圧検出手段
13:増幅率特性変更手段
14:可変抵抗
15:感度調整ボリューム
18:基準電圧可変回路
M:測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光ビームで照射された測定対象物からの反射光を受光する受光素子と、
受光素子で受光した受光信号を増幅する増幅回路と、
感度調整ボリュームが操作されてその回転角度に対して線形に変化する可変抵抗器の電圧を変化させることにより、増幅回路の増幅率(感度)を調整する感度調整回路と、
増幅回路により増幅された受光信号の電圧と所定のしきい値とを比較する比較回路と、
を備えて測定対象物の有無を検出する光電センサであって、
測定対象物の検出距離の変化に対して増幅回路の増幅率を変化させることによって、測定対象物の検出距離の変化に対する感度調整ボリュームの回転角度の変化を線形にする制御を行なうボリューム線形化制御手段を備え、
前記ボリューム線形化制御手段は、
感度調整ボリュームが所定角度で回転されたときの可変抵抗器の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段による検出電圧に基づき、測定対象物の検出距離の変化に対する感度調整ボリュームの回転角度の変化が線形となるように、前記検出電圧の変化に対する前記増幅率の変化を検出距離に応じて非線形化する演算を行ない、この演算結果に基づき増幅率の特性を変更する増幅率特性変更手段とを有する光電センサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記比較回路は、増幅された受光信号の電圧と測定対象物の検出ONのしきい値となるON点基準値とを比較する第1の比較部と、増幅された受光信号の電圧と測定対象物の検出OFFのしきい値となるOFF点基準値とを比較する第2の比較部とを有し、
さらに、前記検出距離が近い場合に、前記OFF点基準値をON点基準値に近づくように変更する基準電圧可変手段を備えた光電センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−180175(P2006−180175A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370844(P2004−370844)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(392023751)ジック オプテックス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】