説明

光電変換素子およびその使用方法、撮像素子、光センサ

【課題】加熱処理を行った場合にも優れた高光電変換効率および低暗電流性を示し、高い生産性で製造することができる光電変換素子を提供する。
【解決手段】透明導電性膜15と、導電性膜11と、透明導電性膜15と導電性膜11との間に配置された光電変換層12および電子ブロッキング層16Aとを有する光電変換素子10aであって、光電変換層12が、ベンゼン環を少なくとも5個以上含み、総環数が7個以上であり、カルボニル基を含まない縮合多環炭化水素を含有し、電子ブロッキング層が、化合物からRa1〜Ra9の少なくとも1つの基を取り除いた残基を有し、ガラス転移点(Tg)が200℃以上である化合物Aを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子およびその使用方法、撮像素子、並びに、光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光センサは、シリコン(Si)などの半導体基板中にフォトダイオード(PD)を形成した素子であり、固体撮像素子としては、PDを2次元的に配列し、各PDで発生した信号電荷を回路で読み出す平面型固体撮像素子が広く用いられている。
【0003】
カラー固体撮像素子を実現するには、平面型固体撮像素子の光入射面側に、特定の波長の光を透過するカラーフィルタを配した構造が一般的である。現在、デジタルカメラなどに広く用いられている2次元的に配列した各PD上に、青色(B)光、緑色(G)光、赤色(R)光を透過するカラーフィルタを規則的に配した単板式固体撮像素子がよく知られている。
この単板式固体撮像素子においては、カラーフィルタを透過しなかった光が利用されず光利用効率が悪い。近年、多画素化が進む中、画素サイズが小さくなっており、開口率の低下、集光効率の低下が問題になっている。
【0004】
これらの欠点を解決するため、アモルファスシリコンによる光電変換層や有機光電変換層を信号読出し用基板上に形成する構造が知られている。
有機光電変換層を用いた光電変換素子、撮像素子、光センサについては幾つかの公知例がある。有機光電変換層を用いた光電変換素子では、特に光電変換効率の向上や暗電流の低減が課題とされている。その改善方法として、前者については、pn接合導入やバルクへテロ構造の導入、後者については、ブロッキング層の導入などが開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、アセン系化合物を含む光電変換層が開示されており、高光電変換効率である旨が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−335760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、光電変換素子を撮像素子や光電池など種々の用途に応用する場合、プロセス適性の点から、光電変換素子が高い耐熱性を示すことが求められる。例えば、撮像素子を形成する場合のプロセスとしては、カラーフィルタ設置、保護膜設置、素子のハンダ付け等、加熱処理を施す工程が数多くあり、光電変換素子はこれらの工程を経ても優れた特性(高光電変換効率、低暗電流特性)を示すことが求められる。
【0008】
また、光電変換素子の生産性の向上の観点からも、光電変換素子に使用される材料の耐熱性が要求される。
例えば、光電変換素子の生産効率を高める上では、光電変換層作製時の蒸着速度の向上が求められる。一方、蒸着速度を高めるためには、使用する材料自体の加熱温度を高くする必要があり、使用材料がその温度に耐えうる必要がある。
また、材料の入れ替え時間を省略するための蒸着時間の長時間化が求められるが、この場合も使用材料が高熱下で分解することなく、長時間耐え得ることが必要とされる。
【0009】
本発明者らが、特許文献1に記載の光電変換素子の耐熱性について検討を行ったところ、加熱処理前後において光電変換効率が大きく悪化すると共に、暗電流の発生が増加し、更なる改善が必要であることが見出された。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、加熱処理を行った場合にも優れた高光電変換効率および低暗電流性を示し、高い生産性で製造することができる光電変換素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、該光電変換素子の使用方法、並びに、該光電変換素子を含む撮像素子および光センサを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の数のベンゼン環を有する縮合多環炭化水素を含む光電変換層と、所定の構造を有する化合物を含む電子ブロッキング層とを使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、以下に示す手段により上記課題を解決し得る。
【0012】
(1) 透明導電性膜と、導電性膜と、前記透明導電性膜と前記導電性膜との間に配置された光電変換層および電子ブロッキング層とを有する光電変換素子であって、
前記光電変換層が、ベンゼン環を少なくとも5個以上含み、総環数が6個以上であり、カルボニル基を含まない縮合多環炭化水素を含有し、
前記電子ブロッキング層が、後述する一般式(A)で表される化合物からRa1〜Ra9の少なくとも1つの基を取り除いた残基を有し、ガラス転移点(Tg)が200℃以上である化合物Aを含有する、光電変換素子。
【0013】
(2) 前記縮合多環炭化水素が、後述する一般式(1)〜一般式(17)のいずれかで表される縮合多環炭化水素である、(1)に記載の光電変換素子。
(3) 前記光電変換層が、さらにフラーレンまたはフラーレン誘導体を含む、(1)または(2)に記載の光電変換素子。
(4) 前記光電変換層が、真空蒸着法により成膜されたものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の光電変換素子。
【0014】
(5) 前記縮合多環炭化水素の蒸着速度が1.0Å/s以上である、(4)に記載の光電変換素子。
(6) 前記透明導電性膜が、透明導電性金属酸化物からなる、(1)〜(5)のいずれかに記載の光電変換素子。
(7) 光が前記透明導電性膜を介して前記光電変換層に入射される、(1)〜(6)のいずれかに記載の光電変換素子。
【0015】
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の光電変換素子を含む撮像素子。
(9) (1)〜(7)のいずれかに記載の光電変換素子を含む光センサ。
(10)(1)〜(7)のいずれかに記載の光電変換素子の使用方法であって、
前記導電性膜と前記透明導電性膜とが一対の電極であり、前記一対の電極間に1×10-4〜1×107V/cmの電場を印加させる、光電変換素子の使用方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加熱処理を行った場合にも優れた高光電変換効率および低暗電流性を示し、高い生産性で製造することができる光電変換素子を提供することができる。
また、本発明によれば、該光電変換素子の使用方法、並びに、該光電変換素子を含む撮像素子および光センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)および図1(b)は、それぞれ光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
【図2】撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の光電変換素子について説明する。まず、従来技術と比較した本発明の特徴点について詳述する。
従来の光電変換素子用材料(光電変換色素、電子ブロッキング材料)は高い電荷捕集効率、低暗電流特性を有していたが、耐熱性は十分ではなかった。耐熱性を向上させるためには、使用する化合物の分子量を大きくして化合物間の相互作用(分子間力)を大きくする、環構造を多く導入し、分子の自由度を低下させる等の手段が考えられる。
しかし、相互作用の大きい化合物や環構造を有する化合物は、通常、パイ共役系が大きく広がっている。そのため、これらの材料を光電変換色素や電子ブロッキング層材料として使用すると、光電変換色素と電子ブロッキング層材料とが相互作用して、沸き出し電荷や電荷トラップが界面で形成され、暗電流が増大し、光電変換効率は低下しやすい。
【0019】
また、電子ブロッキング層−光電変換層界面では、環構造を有する化合物が双極子モーメント、表面エネルギーなどの性質が異なる電子ブロッキング層上に蒸着される場合、環構造を有する化合物が凝集し、性能低下の要因となる会合体を形成しやすい。特に、光電変換素子を加熱すると、電子ブロッキング層および光電変換層中の分子運動が促進されるため、更なる会合体形成、性能低下が起こる。
【0020】
さらに、一般的に、耐熱性の高い材料としては、van der Waals力が大きい高分子量の材料が選択される。一方、分子量が大きい材料は蒸着可能温度が高く、蒸着時に材料の熱分解が生じやすい。材料が分解すると、光電変換層中に分解物が蒸着され、励起クエンチャーやキャリアトラップサイトとして働き、素子性能を低下させる原因となる。
【0021】
しかし、上記従来技術とは異なり、本発明においては、所定の光電変換色素と所定の電子ブロッキング層材料とを組み合わせて使用することにより、高い電荷捕集効率、低暗電流特性を損なうことなく、耐熱性を向上させることが可能となった。特に、電子ブロッキング層の材料として使用する一般式(A)で表される化合物(縮合ジアリールアミン)からRa1〜Ra9の少なくとも1つの基を取り除いた残基を有する化合物A(以後、単に化合物Aとも称する。)は分子構造が平面をとりやすく、本発明で使用される縮合多環炭化水素と性質が近い(低双極子モーメント)。そのため、化合物Aを電子ブロッキング層の材料として使用すると、電子ブロッキング層−光電変換層界面での縮合多環炭化水素の凝集、会合体を形成が抑制されるため、性能低下が起こらないと推定される。また、縮合多環炭化水素は縮合構造を有し、分子運動が抑制されているため、光電変換素子加熱時に会合体の形成が起こりにくく、光電変換素子の耐熱性も向上していると考えられる。特に、縮合多環炭化水素の蒸着レートを高くして製膜を行うと、膜上での分子の再配置が起こりにくいため、会合体形成がさらに抑制される。
【0022】
以下に、本発明の光電変換素子について図面を参照して説明する。図1に、本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図を示す。
図1(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とも記す)11と、下部電極11上に形成された電子ブロッキング層16Aと、電子ブロッキング層16A上に形成された光電変換層12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とも記す)15とがこの順に積層された構成を有する。
図1(b)に別の光電変換素子の構成例を示す。図1(b)に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング層16Aと、光電変換層12と、正孔ブロッキング層16Bと、上部電極15とがこの順に積層された構成を有する。なお、図1(a)、図1(b)中の電子ブロッキング層16A、光電変換層12、正孔ブロッキング層16Bの積層順は、用途、特性に応じて逆にしても構わない。例えば、電子ブロッキング層16Aと光電変換層12との位置を逆にしてもよい。
【0023】
光電変換素子10a(10b)の構成では、透明導電性膜15を介して光電変換層12に光が入射されることが好ましい。
また、光電変換素子10a(10b)を使用する場合には、電場を印加することができる。この場合、導電性膜11と透明導電性膜15とが一対の電極をなし、この一対の電極間に、1×10-5〜1×107V/cmの電場を印加することが好ましい。性能および消費電力の観点から、1×10-4〜1×106V/cmの電場が好ましく、1×10-3〜5×105V/cmの電場が特に好ましい。
なお、電圧印加方法については、図1(a)および(b)において、電子ブロッキング層16A側が陰極であり、光電変換層12側が陽極となるように印加することが好ましい。光電変換素子10a(10b)を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、同様の方法により電圧の印加を行うことができる。
【0024】
以下に、光電変換素子10a(10b)を構成する各層(光電変換層12、電子ブロッキング層16A、下部電極11、上部電極15、正孔ブロッキング層16Bなど)の態様について詳述する。
まず、光電変換層12について詳述する。
【0025】
[光電変換層]
光電変換層12は、光電変換材料としてベンゼン環を少なくとも5個以上含み、総環数が6個以上であり、カルボニル基を含まない縮合多環炭化水素を含む層である。該化合物を使用することにより、高光電変換効率、低暗電流性を示すと共に、加熱処理後においてもこれらの性能の劣化が抑制された光電変換素子を得ることができる。
なお、通常、光電変換層12は固体からなる膜である。光電変換層12、導電性膜11および透明導電性膜15を含めた光電変換素子10a(10b)の全ての構成部分に流動する部分をなくすことで、得られる光電変換素子が熱による変形耐性に優れると共に、200℃前後の高い耐熱性を有することになり、結果として素子自体の高い信頼性が得られる。
まず、光電変換層12で使用される縮合多環炭化水素について詳述する。
【0026】
(縮合多環炭化水素(縮合多環炭化水素化合物))
縮合多環炭化水素は、ベンゼン環を少なくとも5個以上含む。なかでも、7〜15個が好ましく、7〜12個がより好ましく、7〜10個がさらに好ましく、8〜10個が特に好ましい。上記範囲内であれば、光電変換層12の光吸収性に優れると共に、光電変換素子の耐熱性にも優れる。
ベンゼン環の数が5個未満の場合、光電変換素子の耐熱性に劣り、加熱後の光電変換効率および暗電流特性が劣る。
【0027】
縮合多環炭化水素は、総環数が6個以上である。言い換えると、6個以上の環構造を有する。なかでも、光電変換素子の耐熱性がより優れ、加熱後の光電変換効率および暗電流特性の劣化がより抑制される点で、7〜15個が好ましく、7〜12個がより好ましく、7〜10個がさらに好ましく、8〜10個が特に好ましい。上記範囲内であれば、光電変換層12の光吸収性に優れると共に、光電変換素子の耐熱性にも優れる。
総環数が6個未満の場合、光電変換素子の耐熱性に劣り、加熱後の光電変換効率および暗電流特性が劣る。
【0028】
縮合多環炭化水素は、カルボニル基を含まない。縮合多環炭化水素がカルボニル基を含む場合、光電変換素子の暗電流特性および光電変換特性に劣ると共に、光電変換素子の耐熱性も劣る。
【0029】
縮合多環炭化水素は、ベンゼン環以外の他の環構造を有していてもよい。例えば、環状脂肪族炭化水素基(例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環)や、ベンゼン環以外の芳香族環(例えば、芳香族複素環)が挙げられる。
【0030】
縮合多環炭化水素の分子量は特に制限されないが、真空蒸着による生産性により優れると共に、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、300〜1500が好ましく、500〜1000がより好ましく、500〜900が特に好ましい。分子量が大きすぎると、蒸着温度が高くなり分子が分解しやすくなる。分子量が小さすぎると、蒸着膜のガラス転移点が低くなり、光電変換素子の耐熱性が悪化する場合がある。
【0031】
縮合多環炭化水素は紫外可視吸収スペクトルにおいて、400nm以上720nm未満に吸収極大を有することが好ましい。吸収スペクトルのピーク波長(吸収極大波長)は、可視領域の光を幅広く吸収するという観点から、450nm以上700nm以下であることが好ましく、480nm以上700nm以下がより好ましく、510nm以上680nm以下であることが更に好ましい。
縮合多環炭化水素の吸収極大波長は、縮合多環炭化水素のクロロホルム溶液を、島津製作所社製UV−2550を用いて測定することができる。クロロホルム溶液の濃度は5×10-5〜1×10-7mol/lが好ましく、3×10-5〜2×10-6mol/lがより好ましく、2×10-5〜5×10-6mol/lが特に好ましい。
【0032】
縮合多環炭化水素のガラス転移点(Tg)は、95℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、135℃以上がさらに好ましく、150℃以上が特に好ましく、160℃以上が最も好ましい。ガラス転移点が高くなると、光電変換素子の耐熱性がより向上するため好ましい。
【0033】
縮合多環炭化水素のイオン化ポテンシャル(Ip)は、光電変換層12中のホール輸送を担う材料から障壁なくホールを受け取るため、光電変換層12中のホール輸送を担う材料のIpより小さいことが好ましい。
縮合多環炭化水素のIpは、5.8eV以下が好ましい。Ipが5.8eV以下であることにより、電荷輸送に対し障壁を発生させず、高い電荷捕集効率、高速応答性を発現させる効果が得られる。
また、Ipは、4.9eV以上が好ましく、5.0eV以上がより好ましい。Ipが4.9eV以上であることにより、より高い暗電流抑制効果が得られる。
なお、縮合多環炭化水素のIpは、紫外光電子分光法(UPS)や、大気中光電子分光装置(例えば、理研計器製AC−2など)によって測定できる。
縮合多環炭化水素のIpは、骨格に結合する置換基を変えること等により上記範囲とすることができる。
【0034】
縮合多環炭化水素は、紫外可視吸収スペクトルにおいて400nm以上720nm未満に吸収極大を有し、その吸収極大波長のモル吸光係数が10000mol-1・l・cm-1以上で、融点と蒸着温度の差(融点−蒸着温度)の差が31℃以上である化合物であることが好ましい。
【0035】
縮合多環炭化水素は、撮像素子、光センサ、または光電池に用いる光電変換層の材料として特に有用である。なお、通常、縮合多環炭化水素は、光電変換層内で有機p型化合物として機能する。
【0036】
縮合多環炭化水素の具体例としては、例えば、ルビセン、トリナフチレン、ピラントレン、オクタフェン、オクタセン、ノナフェン、ノナセン、オバレン、デカフェン、デカセン、ビオラントレン、イソビオラントレン、デカシクレン、クアテリレン、コランヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、ペロピレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ヘプタゼスレン、イソビオランテン、サーコビフェニル、オバレン、ジベンゾコロネン、テトラベンゾコロネン、ヘキサベンゾコロネン、ベンゾジコロネン、ジコロニレンなどが挙げられる。
【0037】
(好適態様)
縮合多環炭化水素の好適態様の一つとしては、縮合多環芳香族炭化水素(縮合多環芳香族炭化水素化合物)であることが好ましい。該態様であれば、光電変換素子の耐熱性がより優れ、加熱後の光電変換効率および暗電流特性の劣化がより抑制される。
なお、縮合多環芳香族炭化水素とは、芳香族性である化合物を意味する。言い換えると、該化合物は、芳香族環(例えば、ベンゼン環)が縮合して形成される化合物である。
【0038】
縮合多環炭化水素の他の好適態様としては、以下の一般式(X)で表される部分構造を有することが好ましい。該態様であれば、光電変換素子の耐熱性がより優れ、加熱後の光電変換効率および暗電流特性の劣化がより抑制される。
【0039】
【化1】

【0040】
一般式(X)中、R31〜R39は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
31〜R39で表される置換基としては、例えば、後述する置換基Wとして挙げたものを適用できる。R31〜R39で表される置換基としては、化合物の化学的安定性、電荷移動度、および耐熱性がより優れ、光電変換素子の耐熱性もより優れる点から、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリイソプロピルシリル基など)またはメルカプト基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、またはシリル基がより好ましく、フッ素原子、アルキル基、アリール基、またはシリル基がより好ましく、アルキル基またはアリール基が特に好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0041】
これらの基は、更に置換基を有していてもよい。更なる置換基の具体例としては、後述の置換基Wが挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基がより好ましく、フッ素原子、アルキル基、またはアリール基が更に好ましく、アルキル基またはアリール基が特に好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0042】
また、R31〜R39の少なくとも二つは互いに結合して環を形成してもよい。
31〜R39の少なくとも二つによって形成される環としては、例えば、炭素数5〜18のシクロアルキル環、炭素数5〜20の芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環、インダン環、アントラセン環、ピレン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、テトラフェン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、ビフェニレン環、アセナフチレン環、インダセン環、トリンデン環、フルオレン環、ペンタセン環、ぺリレン環、テリレン環、コロネン環、ビオラントレン環、ピセン環、ペンタフェン環、テトラフェニレン環、ヘキサフェン環、ヘキサセン環、ルビセン環、トリナフチレン環、ペンタフェン環、ピラントレン環、オクタフェン環、オクタセン環、ノナフェン環、ノナセン環、オバレン環、デカフェン環、デカセン環、ビオラントレン環、デカシクレン環、クアテリレン環、コランヌレン環、フルミネン環、アンタントレン環、ゼトレン環、ペロピレン環、クオテリレン環、サーカムアントラセン環、ビスアンテン環、ゼスレン環、ヘプタゼスレン環、ピランスレン環、ビオランテン環、イソビオランテン環、サーコビフェニル環、アンタンスレン環、クオテリレン環、オバレン環、ジベンゾコロネン環、テトラベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、ベンゾジコロネン環、イソビオラントレン環,アンタンスレン環,ジコロニレン環)、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、フェナントリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、シンノリン環、アクリジン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、プテリジン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾピリジン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、ホスホール環、ホスフィニン環、シロール環などが挙げられる。
なかでも、化合物の化学的安定性、電荷移動度、および耐熱性がより優れ、光電変換素子の耐熱性も優れる点から、炭素数5〜18のシクロアルキル環、または、炭素数5〜20の芳香族炭化水素環が好ましく、炭素数6〜15の芳香族炭化水素環がより好ましく、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環がさらに好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、インダン環、またはアントラセン環が最も好ましい。これらの環は、更に後述する置換基Wを有していてもよい。
【0043】
aおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基Wとして挙げたものを適用できる。RaおよびRbはさらに置換基を有してもよい。置換基の具体例としては、後述する置換基Wが挙げられ、アルキル基、アリール基、またはアルコキシ基が好ましい。
aおよびRbとして、化合物の化学的安定性、電荷移動度、および耐熱性がより優れ、光電変換素子の耐熱性も優れるから、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基がさらに好ましく、水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基が特に好ましく、炭素数1〜18のアルキル基が最も好ましい。
【0044】
縮合多環炭化水素の他の好適態様としては、以下の一般式(1)〜一般式(19)のいずれかで表される縮合多環炭化水素が挙げられる。該化合物であれば、光電変換素子の耐熱性がより優れ、加熱後の光電変換効率および暗電流特性の劣化がより抑制される。
【0045】
【化2】

【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
一般式(1)、一般式(8)、一般式(10)、一般式(12)、一般式(13)、一般式(16)および一般式(17)中、R1〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(2)および一般式(3)中、R1〜R15およびRa〜Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(4)および一般式(6)中、R1〜R16およびRa〜Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(5)および一般式(7)中、R1〜R14およびRa〜Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(9)および一般式(14)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(11)、一般式(15)および一般式(19)中、R1〜R14は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(18)中、R1〜R14およびRa〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
【0049】
一般式(1)、一般式(4)、一般式(6)一般式(8)、一般式(10)、一般式(12)、一般式(13)、一般式(16)および一般式(17)中のR1〜R16、一般式(2)および一般式(3)中のR1〜R15、一般式(5)、一般式(7)、一般式(11)、一般式(15)および一般式(19)中のR1〜R14、並びに、一般式(9)および一般式(14)中のR1〜R18、一般式(18)中のR1〜R14は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。該置換基としては、例えば、後述する置換基Wとして挙げたものが適用できる。また、R1〜R18で表される置換基の好適態様は、上述したR31〜R39で表される置換基の好適態様と同じである。
これらの基は、更に置換基を有していてもよい。更なる置換基の具体例としては、後述の置換基Wが挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基がより好ましく、フッ素原子、アルキル基、またはアリール基が更に好ましく、アルキル基またはアリール基が特に好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0050】
また、R1〜R18の少なくとも二つは互いに結合して環を形成してもよい。
1〜R18の少なくとも二つによって形成される環の種類としては、上述したR31〜R39の少なくとも二つによって形成される環で例示された環が挙げられる。
【0051】
一般式(2)〜(7)中のRa〜Rdおよび一般式(18)中のRa〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子または置換基(例えば、後述する置換基Wを適用できる)を表す。該Ra〜Rはさらに置換基を有してもよく、そのさらなる置換基の具体例としては置換基Wが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、またはアルコキシ基である。
a〜Rとしては、化合物の化学的安定性、電荷移動度、および耐熱性がより優れ、光電変換素子の耐熱性もより優れる点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基がさらに好ましく、水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基が特に好ましく、炭素数1〜18のアルキル基が最も好ましい。
【0052】
上記一般式(1)〜(19)のいずれかで表される縮合多環炭化水素のなかで、吸収波長がより好適で、より高い蒸着温度にも耐え、光電変換素子の耐熱性がより優れる点から、一般式(1)〜(17)のいずれかで表される縮合多環炭化水素が好ましく、一般式(2)〜(8)、一般式(10)〜(14)、一般式(15)、または一般式(17)で表される縮合多環炭化水素がより好ましく、一般式(2)〜(8)、一般式(10)、一般式(11)、一般式(13)、一般式(14)、一般式(15)または一般式(17)で表される縮合多環炭化水素がさらに好ましく、一般式(2)〜(8)、一般式(10)、一般式(11)、一般式(13)、一般式(15)または一般式(17)で表される縮合多環炭化水素が特に好ましく、一般式(2)〜(7)のいずれかで表される縮合多環炭化水素がより特に好ましく、一般式(3)〜(7)のいずれかで表される縮合多環炭化水素が最も好ましい。
【0053】
縮合多環炭化水素は、公知の方法に従い、該方法を一部改変して実施することで製造することができる。
以下に、縮合多環炭化水素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、後述する表中で使用される記号の意味は、以下の通りである。
iPr:iso-プロピル基、tBu:tert-ブチル基、iBu:iso-ブチル基、sBu:sec-ブチル基、neoP:ネオペンチル基、CyPen:シクロペンチル基、CyHeX:シクロヘキシル基、1-Ad:1-アダマンチル基、2-Ad:2-アダマンチル基、p-tol:p-トルイル基、m-tol:m-トルイル基、o-tol:o-トルイル基、1-Np:1-ナフチル基、2-Np:2-ナフチル基、Mes:メシチル基
【0054】
【化5】


【0055】
【化6】


【0056】
【化7】


【0057】
【化8】


【0058】
【化9】


【0059】
【化10】



【0060】
【化11】



【0061】
【化12】



【0062】
【化13】



【0063】
【化14】



【0064】
【化15】



【0065】
【化16】



【0066】
【化17】



【0067】
【化18】



【0068】
【化19】



【0069】
【化20】



【0070】
【化21】



【0071】
【化22】



【0072】
【化23】



【0073】
【化24】

【0074】
【化25】

【0075】
【化26】

【0076】
[置換基W]
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wとしては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
なお、置換基Wの詳細については、特開2007- 234651号公報の段落[0023]に記載される。
【0077】
また、2つの置換基Wが共同して環を形成してもよい。このような環としては、芳香族もしくは非芳香族の炭化水素環、または、芳香族もしくは非芳香族の複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。具体的な環の種類としては、後述する環Rで記載した具体例が挙げられる。
【0078】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0079】
[環R]
本明細書における環Rとしては、芳香族、または非芳香族の炭化水素環、または複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環が挙げられる。
【0080】
(その他材料)
光電変換層12は、さらに有機p型化合物または有機n型化合物の光電変換材料を含有してもよい。
有機p型半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物等を用いることができる。
【0081】
有機n型半導体(化合物)とは、アクセプター性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。半導体であるからナノチューブ、グラファイト、導電性高分子などの導電体は含まれない。更に詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機半導体は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。好ましくは、フラーレンまたはフラーレン誘導体、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。
【0082】
上記有機n型半導体としては、フラーレンまたはフラーレン誘導体が好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレンを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、または複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007−123707号公報に記載の化合物が好ましい。
【0083】
光電変換層12は、上記縮合多環炭化水素と、フラーレンまたはフラーレン誘導体とが混合された状態で形成されるバルクヘテロ構造をなしていることが好ましい。バルクヘテロ構造は光電変換層12内で、p型有機半導体(縮合多環炭化水素)とn型有機半導体が混合、分散している膜であり、湿式法、乾式法のいずれでも形成できるが、共蒸着法で形成するものが好ましい。へテロ接合構造を含有させることにより、光電変換層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換層の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報の[0013]〜[0014]等において詳細に説明されている。
【0084】
光電変換層12における上記縮合多環炭化水素に対する有機n型化合物のモル比率(有機n型化合物/上記縮合多環炭化水素)は、本発明の効果がより優れる点で、0.5以上であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、2以上5以下であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の縮合多環炭化水素が含まれる光電変換層12(なお、有機n型化合物が混合されていてもよい)は非発光性層であり、有機電界発光素子(OLED)とは異なる特徴を有する。非発光性層とは発光量子効率が1%以下の層の場合であり、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
【0086】
(製膜方法)
光電変換層12は、乾式成膜法または湿式成膜法により成膜することができる。乾式成膜法の具体例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法,MBE法等の物理気相成長法、または、プラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等が用いられる。好ましくは乾式成膜法であり、真空蒸着法がより好ましい。真空蒸着法により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
【0087】
光電変換層12中における縮合多環炭化水素の使用量としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、単層換算で10〜300nmが好ましく、30〜150nmがより好ましく、50〜120nmが特に好ましい。
【0088】
光電変換層12の厚みは、10〜1000nmが好ましく、50〜800nmがより好ましく、100〜500nmが特に好ましい。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、1000nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0089】
光電変換層12の膜厚を薄くし、高い電荷捕集効率、高速応答性の素子とするには、縮合多環炭化水素の薄膜吸収極大波長は、400nm以上720nm未満に吸収極大を有することが好ましい。薄膜吸収極大波長は、可視領域の光を幅広く吸収するという観点から、450nm以上700nm以下であることが好ましく、480nm以上700nm以下がより好ましく、素子の光電変換効率がより優れる点からは、500nm以上であることがさらに好ましく、500nm以上680nm以下であることが特に好ましく、550nm以上680nm以下であることが最も好ましい。
縮合多環炭化水素の薄膜吸収極大波長は、ガラス基板に真空加熱蒸着により約100nmの縮合多環炭化水素の薄膜を形成し、その透過スペクトルから、その最も長波である吸収極大波長を求める。
【0090】
光電変換層12を真空蒸着法により作製する場合、上記縮合多環炭化水素の蒸着速度は、光電変換素子の光電変換効率、暗電流特性がより優れる点で、1.0Å/s(オングストローム/秒)以上が好ましく、2.0Å/s以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されないが、通常5.0Å/s以下の場合が多い。
また、光電変換層12が上記有機n型半導体(特に、フラーレンまたはフラーレン誘導体)を含む場合は、該有機n型半導体の蒸着速度も上記範囲内であることが好ましい。
【0091】
[電子ブロッキング層]
本発明の光電変換素子は、後述する一般式(A)で表される化合物からRa1〜Ra9の少なくとも1つの基を取り除いた残基を有し、ガラス転移点(Tg)が200℃以上である化合物Aを含有する電子ブロッキング層16Aを備える。該化合物を使用することにより、高光電変換効率、低暗電流性を示すと共に、加熱処理後においてもこれらの性能の劣化が抑制された光電変換素子を得ることができる。
【0092】
通常、電子ブロッキングを構成する材料は、以下の理由より、Ip(イオン化ポテンシャル)を比較的小さく設計せざるを得ない場合が多い。
(1)電子ブロッキング層において電極と接する部分では、電極からの電子注入を抑制するため十分小さなEaを有することが好ましく、それに伴い該部分のIpは結果として比較的小さくなる傾向がある
(2)電子ブロッキング層の光電変換層に接する部分においては、光電変換層から電子ブロッキング層にホールをエネルギー障壁なく受け取るために、光電変換層中のホール輸送部分のIpより小さいIpに設計しなければならない
一方、上記化合物A(好ましくは、一般式(F−1)で表される化合物)を用いると、光電変換層中のEaが大きい材料と接触した場合に、同じIpでも、沸き出し電荷をより抑制した形で用いることができる。
以下では、まず、一般式(A)で表される化合物について詳述する。
【0093】
【化27】

【0094】
一般式(A)におけるRa1〜Ra8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。
これらの基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0095】
Ra1〜Ra8としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数6〜14の複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数6〜12の複素環基が更に好ましい。アルキル基は分岐を有するものであってもよい。
【0096】
一般式(A)におけるRa9は、アルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0097】
Ra9としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数6〜14のアリール基、または炭素数6〜14の複素環基がより好ましく、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜12の複素環基が更に好ましい。
【0098】
Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基(例えば、置換基W)を有していてもよい。
Xaは、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基またはアルキル基)を有するイミノ基(例えば、フェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)、またはジアルキルシリレン基が好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば、−CH2=CH2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)、またはジアルキルシリレン基がより好ましく、単結合、酸素原子、または炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)が更に好ましく、単結合、酸素原子、またはメチレン基が最も好ましい。
【0099】
化合物Aは、上記一般式(A)で表される化合物からRa1〜Ra9の少なくとも1つの基を取り除いた残基(以後、単に残基Aとも称する)を有する。つまり、Ra1〜Ra9のうちのいずれか1つが取り除かれ、取り除かれた部分を介して化合物に結合する。
取り除かれる基の数は特に制限されないが、通常、1〜4個であり、好ましくは1個である。
また、特に少なくともRa9が取り除かれ、該部分を介して化合物に結合することが好ましい。具体的には、化合物Aが以下の一般式(A−2)で表される基を有することが好ましい。一般式(A−2)中、*は結合位置を表す。該態様であれば、光電変換素子の耐熱性がより優れる。
【0100】
【化28】

【0101】
化合物Aのガラス転移点(Tg)は、200℃以上であり、230℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、光電変換素子の耐熱性が優れる。なお、上限は特に制限されないが、通常、300℃以下の場合が多い。
なお、化合物Aのガラス転移点が200℃未満の場合、光電変換素子の耐熱性が劣る。
化合物Aのガラス転移点は、公知の装置(例えば、エスアイアイナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定することができる。
【0102】
(化合物Aの好適態様)
化合物Aの好ましい形態のひとつとして、以下の一般式(F−1)で表される化合物が挙げられる。該化合物を使用すると、加熱処理後における光電変換効率および暗電流の性能の劣化をより抑制することができる。
【0103】
【化29】

【0104】
(一般式(F−1)中、R”11〜R”18、R’11〜R’18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R”15〜R”18中のいずれか一つは、R’15〜R’18中のいずれか一つと連結し、単結合を形成する。A11およびA12はそれぞれ独立に下記一般式(A−1)で表される基を表し、R”11〜R”14、およびR’11〜R’14中のいずれか一つとして置換する。Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)
【0105】
【化30】

【0106】
(一般式(A−1)中、Ra1〜Ra8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。S11はそれぞれ独立に下記置換基(S11)を示し、Ra1〜Ra8中のいずれかひとつとして置換する。n’は0〜4の整数を表す。)
【0107】
【化31】

【0108】
(R’1〜R’3はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。)
【0109】
一般式(F−1)中、R”11〜R”18、R’11〜R’18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。
更なる置換基の具体例は上述した置換基Wが挙げられ、本発明の効果がより優れる点で、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基がより好ましく、フッ素原子、アルキル基、またはアリール基がさらに好ましく、アルキル基またはアリール基が特に好ましく、アルキル基が最も好ましい。
R”11〜R”18、R’11〜R’18としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基がより好ましい。なかでも、一般式(A−1)で表される置換基がR”12およびR’12にそれぞれ独立に置換することが好ましく、一般式(A−1)で表される置換基がR”12およびR’12にそれぞれ独立に置換し、R”11、R”13〜R”18、R’11、R’13〜R’18が水素原子、炭素数1〜18のアルキル基であることがより好ましく、一般式(A−1)で表される置換基がR”12およびR’12にそれぞれ独立に置換し、R”11、R”13〜R”18、R’11、R’13〜R’18が水素原子であることが特に好ましい。
【0110】
Yは、それぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。すなわち、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子からなる二価の連結基を表す。このうち−C(R’21)(R’22)−、−Si(R’23)(R’24)−、−N(R’20)−が好ましく、−C(R’21)(R’22)−、−N(R’20)−がより好ましく、−C(R’21)(R’22)−が特に好ましい。
【0111】
R’21〜R’24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。これらの基は置換基を有していてもよく、その更なる置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。
R’21〜R’24としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、水素原子、アルキル基、アリール基、または複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基がより好ましく、水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜18のアルキル基が特に好ましい。
【0112】
R’20は、アルキル基、アリール基、複素環基を表す。これらの基は置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。
R’20としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜18のアルキル基が特に好ましい。
【0113】
一般式(A−1)におけるRa1〜Ra8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。これらの基は置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0114】
Ra1〜Ra8としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。アルキル基は分岐を有するものであってもよい。
好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、またはナフチル基が挙げられる。
また、Ra3およびRa6が水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、かつRa1、Ra2、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8は、水素原子である場合が特に好ましい。
【0115】
Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。
Xaは、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基またはアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)、またはジアルキルシリレン基が好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば、−CH2=CH2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)、またはジアルキルシリレン基がより好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)が更に好ましい。これらの置換基は、更に置換基Wを有していてもよい。
一般式(A−1)で表される基の具体例としては、下記N1〜N11で例示される基が挙げられる。但し、これらに限定されない。一般式(A−1)で表される基として好ましくはN−1〜N−7であり、N−1〜N−6がより好ましく、N−1〜N−3がより好ましく、N−1〜N−2が特に好ましく、N−1が最も好ましい。
【0116】
【化32】

【0117】
置換基(S11)において、R’1は水素原子またはアルキル基を表す。R’1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、またはtert−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、またはtert−ブチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、またはtert−ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、またはtert−ブチル基が特に好ましい。
【0118】
R’2は、水素原子またはアルキル基を表す。R’2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、またはtert−ブチル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、またはプロピル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0119】
R’3は、水素原子またはアルキル基を表す。R’3としては、水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0120】
また、R’1〜R’3は、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。環を形成する場合、環員数は特に限定されないが、好ましくは5または6員環であり、更に好ましくは6員環である。
【0121】
11は上記置換基(S11)を示し、Ra1〜Ra8中のいずれかひとつとして置換する。一般式(A−1)におけるRa3およびRa6のいずれか少なくとも1つがそれぞれ独立に、上記置換基(S11)を表すことが好ましい。
置換基(S11)として好ましくは下記(a)〜(x)を挙げることができ、(a)〜(j)がより好ましく、(a)〜(h)がより好ましく、(a)〜(f)が特に好ましく、更に(a)〜(c)が好ましく、(a)が最も好ましい。
【0122】
【化33】

【0123】
n’はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、1〜2が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0124】
上記一般式(A−1)で表される基としては、下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、または下記一般式(A−5)で表される基でもよい。
【0125】
【化34】

【0126】
(一般式(A−3)〜(A−5)中、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、およびRa55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xc1、Xc2、およびXc3は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Z31、Z41、およびZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【0127】
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、またはアルキル基を表す。極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、水素原子、またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58がアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、またはシクロヘキシル基が好ましい。
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58のうち、隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。環としては前述の環Rが挙げられる。該環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環が好ましい。
【0128】
Xc1、Xc2、およびXc3は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表す。Xc1、Xc2、およびXc3がアルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、置換基Wが挙げられる。
【0129】
Xc1、Xc2、およびXc3は、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基またはアルキル基)を有するイミノ基(例えば、フェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば、−CH2=CH2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)がさらに好ましい。
【0130】
31、Z41、およびZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環を表す。一般式(A−3)〜(A−5)において、Z31、Z41、およびZ51はベンゼン環と縮合している。光電変換素子の高い耐熱性と高い正孔輸送能が期待できるという理由から、Z31、Z41、およびZ51は芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0131】
化合物Aの好ましい他の形態としては、下記一般式(F−2)で表される化合物が挙げられる。該化合物を使用すると、加熱処理後における光電変換効率および暗電流の性能の劣化をより抑制することができる。
【0132】
【化35】

【0133】
式中、R11は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。R12、R17、R19およびR’19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。但し、R12およびR17の少なくとも1つが上記残基Aを表す。m1は、0〜3の整数を表す。R11が複数ある場合、複数のR11は互いに異なっていてもよい。
nは括弧内の繰り返し単位数を表す。nは1〜4の整数を表す。
なお、R11、R12、R17、R19またはR’19で表される基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。
【0134】
一般式(F−2)において、nは1〜4の整数を表し、1〜3が好ましく、1または2が特に好ましい。
【0135】
化合物Aの好ましい他の形態としては、下記一般式(F−3)で表される化合物が挙げられる。該化合物を使用すると、加熱処理後における光電変換効率および暗電流の性能の劣化をより抑制することができる。
【0136】
【化36】

【0137】
式中、R21は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。R22、R’22、R’’22、R29およびR’29は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。但し、R22、R’22およびR’’22の少なくとも1つは、残基Aを表す。m2は、0〜3のいずれかの整数を表す。R21が複数ある場合、複数のR21は互いに異なっていてもよい。R29およびR’29が複数ある場合は、それらは同一でも異なってもよい。
なお、R21、R22、R’22、R’’22、R29、またはR’29で表される基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。
【0138】
化合物Aの好ましい他の形態としては、下記一般式(F−4)で表される化合物が挙げられる。該化合物を使用すると、加熱処理後における光電変換効率および暗電流の性能の劣化をより抑制することができる。
【0139】
【化37】

【0140】
式中、R31は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。R32、R37、R’32、およびR’37は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。但し、R32,R’32,R37,およびR’37のうち少なくとも一つは、残基Aを表す。m3は、0〜3のいずれかの整数を表す。R31が複数ある場合、複数のR31は互いに異なっていてもよい。
なお、R31、R32、R37、R’32、およびR’37で表される基はさらに置換基を有していてもよく、その置換基の具体例としては置換基Wが挙げられる。
【0141】
一般式(F−2)〜(F−4)におけるR11、R21およびR31は、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基が特に好ましい。アルキル基の場合、分岐があってもよい。また、これらは置換基を有していてもよい。
好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、またはナフチル基が挙げられる。
また、m1、m2、またはm3は、0の場合が好ましい。
【0142】
また、R12、R17、R22、R’22、R’’22、R32、R37、R’32、およびR’37は、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜100のアリール基、炭素数4〜16の複素環基、炭素数2〜80の置換アミノ基(例えば、2級アミノ基、または3級アミノ基。具体的には、ジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基など)、または炭素数1〜18の置換メルカプト基(例えば、−SCH3、−SC25,−SPhなど)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜80のアリール基、または炭素数6〜60の置換アミノ基がさらに好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜60のアリール基、または炭素数10から50の置換アミノ基が特に好ましい。
12、R17、R22、R’22、R’’22、R32、R37、R’32、およびR’37の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、および残基Aの説明で挙げた基が挙げられる。
12およびR17、R22、R’22およびR’’22、並びに、R32、R37、R’32およびR’37は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であるものは合成が容易であり好ましい。
【0143】
19、R’19、R29、およびR’29は、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアリール基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜10のアリール基が特に好ましい。好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、またはナフチル基が挙げられる。また、これらは置換基を有していてもよい。
【0144】
化合物Aの好ましい他の形態としては、下記一般式(F−5)で表される化合物が挙げられる。該化合物を使用すると、加熱処理後における光電変換効率および暗電流の性能の劣化をより抑制することができる。
【0145】
【化38】

【0146】
一般式(F−5)中、R51〜R58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。その更なる置換基の具体例としては、置換基Wが挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。R59は、アルキル基、アリール基、複素環基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。その更なる置換基の具体例としては、置換基Wが挙げられる。また、R51〜R59で表される基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。A51およびA52は残基Aを表し、R51〜R54、およびR55〜R58中のいずれか一つとして置換する。
【0147】
51〜R58、R59およびXaの好ましい範囲は、一般式(A)におけるRa1〜Ra8、Ra9およびXaとそれぞれ同様である。
【0148】
51は、R52またはR53のいずれか一つとして置換することが好ましく、R52として置換することがより好ましい。A52は、R56またはR57のいずれか一つとして置換することが好ましく、R57として置換することがより好ましい。
【0149】
化合物Aの分子量は、500〜2000が好ましく、500〜1500がより好ましく、500〜1000が特に好ましい。分子量が上記範囲内であれば、高い蒸着温度の場合も化合物の分解が抑制されると共に、光電変換素子の耐熱性にも優れる。
【0150】
化合物Aのイオン化ポテンシャル(Ip)は、光電変換層中のホール輸送を担う材料から障壁なくホールを受け取るため、光電変換層中のホール輸送を担う材料のIpより小さいことが好ましい。特に、可視域に感度を有するような吸収の材料を選択した場合、より多くの材料に適合するためには、化合物AのIpは5.8eV以下であることが好ましい。Ipが5.8eV以下であることにより、電荷輸送に対し障壁を発生させず、高い電荷捕集効率、高速応答性を発現させる効果が得られる。
また、Ipは、4.9eV以上が好ましく、5.0eV以上がより好ましい。Ipが4.9eV以上であることにより、より高い暗電流抑制効果が得られる。
なお、化合物AのIpは、紫外光電子分光法(UPS)や、大気中光電子分光装置(例えば、理研計器製AC−2など)によって測定できる。
化合物AのIpは骨格に結合する置換基を変えること等により、上記範囲とすることができる。
【0151】
(製造方法)
電子ブロッキング層16Aの製造方法は特に制限されず、乾式製膜法または湿式製膜法により製膜できる。乾式製膜法としては、蒸着法、スパッタ法等が使用できる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。湿式製膜法としては、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等が使用可能であるが、高精度パターニングの観点からはインクジェット法が好ましい。
【0152】
電子ブロッキング層16A中の化合物Aの含有量は、耐熱性、応答速度、光電変換効率がより優れる点で、電子ブロッキング層16Aを形成する全化合物質量に対して、10質量%以上100質量%以下が好ましく、20質量%以上100質量%以下がより好ましく、30質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
【0153】
化合物Aの使用量としては、光電変換素子の耐熱性がより優れる点で、単層換算で10〜300nmが好ましく、30〜150nmがより好ましく、50〜120nmが特に好ましい。
【0154】
電子ブロッキング層16Aは、単層換算で10〜300nmが好ましく、30〜150nmがより好ましく、50〜100nmが特に好ましい。
光電変換層と正孔ブロッキング層の間に挿入する層として用いる場合は、単層換算で好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下である。
【0155】
なお、電子ブロッキング層16Aは、複数層で構成してもよい。
電子ブロッキング層16Aとして、無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電子ブロッキング層16Aに用いた場合に、光電変換層に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電子ブロッキング層16Aとなりうる材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等がある。
【0156】
[電極]
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し十分透明であることが必要である。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属薄膜、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、高導電性、透明性等の点から、透明導電性金属酸化物である。
【0157】
TCOなどの透明導電膜を上部電極15とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層12に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の下部電極11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。上部電極15の膜厚を、光電変換層12の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御することにより、リーク電流の増大を大きく抑制できる。上部電極15の厚みは、光電変換層12厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにすることが望ましい。
【0158】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態に係る光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換層12での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは5〜20nmであることが望ましい。
【0159】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明を持たせず光を反射させるような材料を用いる場合等がある。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属およびこれらの金属の酸化物や窒化物などの導電性化合物(一例として窒化チタン(TiN)を挙げる)、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOまたは窒化チタンとの積層物などが挙げられる。
【0160】
電極を形成する方法は特に限定されず、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル−ゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。電極の材料がTiNの場合、反応性スパッタリング法をはじめとする各種の方法が用いられ、更にUV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0161】
[正孔ブロッキング層]
正孔ブロッキング層には、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。具体的には特開2008−72090号公報の[0073]〜[0078]に記載の化合物が好ましい。
【0162】
正孔ブロッキング層の製造方法は特に制限されず、乾式製膜法または湿式製膜法により製膜できる。乾式製膜法としては、蒸着法、スパッタ法等が使用できる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。湿式製膜法としては、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等が使用可能であるが、高精度パターニングの観点からはインクジェット法が好ましい。
【0163】
正孔ブロッキング層の厚みは、それぞれ、10〜200nmが好ましく、更に好ましくは30〜150nm、特に好ましくは50〜100nmである。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0164】
[基板]
本発明の光電変換素子は、さらに基板を含んでいてもよい。使用される基板の種類は特に制限されず、半導体基板、ガラス基板、またはプラスチック基板を用いることができる。
なお、基板の位置は特に制限されないが、通常、基板上に導電性膜11、光電変換層12と電子ブロッキング層16Aとを含む光電変換膜、および透明導電性膜15をこの順で積層する。
【0165】
[封止層]
本発明の光電変換素子は、さらに封止層を含んでいてもよい。光電変換材料は水分子などの劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまうことがあり、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物・金属窒化物・金属窒化酸化物などセラミクスやダイヤモンド状炭素(DLC)などの封止層で光電変換層12全体を被覆して封止することが上記劣化を防止することができる。
なお、封止層としては、特開2011−082508号公報の段落[0210]〜[0215]に記載に従って、材料の選択および製造を行ってもよい。
【0166】
[光センサ]
光電変換素子の用途として、例えば、光センサや光電池が挙げられるが、本発明の光電変換素子は光センサとして用いることが好ましい。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いたものでもよいし、上記光電変換素子を直線状に配したラインセンサや、平面上に配した2次元センサの形態とするものが好ましい。本発明の光電変換素子は、ラインセンサでは、スキャナー等の様に光学系および駆動部を用いて光画像情報を電気信号に変換し、2次元センサでは、撮像モジュールのように光画像情報を光学系でセンサ上に結像させ電気信号に変換することで撮像素子として機能する。
光電池は発電装置であるため、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率が重要な性能となるが、暗所での電流である暗電流は機能上問題にならない。更にカラーフィルタ設置等の後段の加熱工程が必要ない。光センサは明暗信号を高い精度で電気信号に変換することが重要な性能となるため、光量を電流に変換する効率も重要な性能であるが、暗所で信号を出力するとノイズとなるため、低い暗電流が要求される。更に後段の工程に対する耐性も重要である。
【0167】
[撮像素子]
次に、光電変換素子10aを備えた撮像素子の構成例を説明する。
なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号または相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
撮像素子とは画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、複数の光電変換素子が同一平面状でマトリクス上に配置されており、各々の光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、一つの光電変換素子、一つ以上のトランジスタから構成される。
【0168】
図2は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この撮像素子は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置、電子内視鏡、携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載して用いられる。
この撮像素子は、図1に示したような構成の複数の光電変換素子と、各光電変換素子の光電変換層で発生した電荷に応じた信号を読み出す読み出し回路が形成された回路基板とを有し、該回路基板上方の同一面上に、複数の光電変換素子が1次元状または二次元状に配列された構成となっている。
【0169】
図2に示す撮像素子100は、基板101と、絶縁層102と、接続電極103と、画素電極(下部電極)104と、接続部105と、接続部106と、光電変換膜107と、対向電極(上部電極)108と、緩衝層109と、封止層110と、カラーフィルタ(CF)111と、隔壁112と、遮光層113と、保護層114と、対向電極電圧供給部115と、読出し回路116とを備える。
なお、光電変換膜107は、上述した光電変換層と電子ブロッキング層とを含む膜である。
【0170】
画素電極104は、図1に示した光電変換素子10aの電極11と同じ機能を有する。対向電極108は、図1に示した光電変換素子10aの電極15と同じ機能を有する。光電変換膜107は、図1に示した光電変換素子10aの電極11および電極15間に設けられる層と同じ構成である。
【0171】
基板101は、ガラス基板またはSi等の半導体基板である。基板101上には絶縁層102が形成されている。絶縁層102の表面には複数の画素電極104と複数の接続電極103が形成されている。
【0172】
光電変換膜107は、複数の画素電極104の上にこれらを覆って設けられた全ての光電変換素子で共通の層である。
【0173】
対向電極108は、光電変換膜107上に設けられた、全ての光電変換素子で共通の1つの電極である。対向電極108は、光電変換膜107よりも外側に配置された接続電極103の上にまで形成されており、接続電極103と電気的に接続されている。
【0174】
接続部106は、絶縁層102に埋設されており、接続電極103と対向電極電圧供給部115とを電気的に接続するためのプラグ等である。対向電極電圧供給部115は、基板101に形成され、接続部106および接続電極103を介して対向電極108に所定の電圧を印加する。対向電極108に印加すべき電圧が撮像素子の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上記所定の電圧を供給する。
【0175】
読出し回路116は、複数の画素電極104の各々に対応して基板101に設けられており、対応する画素電極104で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。読出し回路116は、例えばCCD、CMOS回路、またはTFT回路等で構成されており、絶縁層102内に配置された図示しない遮光層によって遮光されている。読み出し回路116は、それに対応する画素電極104と接続部105を介して電気的に接続されている。
【0176】
緩衝層109は、対向電極108上に、対向電極108を覆って形成されている。封止層110は、緩衝層109上に、緩衝層109を覆って形成されている。カラーフィルタ111は、封止層110上の各画素電極104と対向する位置に形成されている。隔壁112は、カラーフィルタ111同士の間に設けられており、カラーフィルタ111の光透過効率を向上させるためのものである。
【0177】
遮光層113は、封止層110上のカラーフィルタ111及び隔壁112を設けた領域以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された光電変換膜107に光が入射する事を防止する。保護層114は、カラーフィルタ111、隔壁112、及び遮光層113上に形成されており、撮像素子100全体を保護する。
【0178】
このように構成された撮像素子100では、光が入射すると、この光が光電変換膜107に入射し、ここで電荷が発生する。発生した電荷のうちの正孔は、画素電極104で捕集され、その量に応じた電圧信号が読み出し回路116によって撮像素子100外部に出力される。
【0179】
撮像素子100の製造方法は、次の通りである。
対向電極電圧供給部115と読み出し回路116が形成された回路基板上に、接続部105,106、複数の接続電極103、複数の画素電極104、および絶縁層102を形成する。複数の画素電極104は、絶縁層102の表面に例えば正方格子状に配置する。
【0180】
次に、複数の画素電極104上に、光電変換膜107を例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、光電変換膜107上に例えばスパッタ法により対向電極108を真空下で形成する。次に、対向電極108上に緩衝層109、封止層110を順次、例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、カラーフィルタ111、隔壁112、遮光層113を形成後、保護層114を形成して、撮像素子100を完成する。
【0181】
撮像素子100の製造方法においても、光電変換膜107の形成工程と封止層110の形成工程との間に、作製途中の撮像素子100を非真空下に置く工程を追加しても、複数の光電変換素子の性能劣化を防ぐことができる。この工程を追加することで、撮像素子100の性能劣化を防ぎながら、製造コストを抑えることができる。
【実施例】
【0182】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0183】
(例示化合物A−1〜A−3、A−5の合成)
例示化合物A−1〜A−3およびA−5は.Mater.Chem.,2006,16,1053、Angew.Chem.,Int.Ed.Angl.,1990,29,525、Chem.Ber.,1991,124,2091、Chem.Eur.J.,2010,16,9736、J.Mater.Chem.,2002,12,1307などを参考に公知の方法に従い、合成した。
【0184】
(例示化合物A−4の合成)
3−ブロモ−7H−ベンゾ[A]フェナレン(20.0g,67.8mol)をTHF1Lに溶解させ、0℃に冷却し、水素化ナトリウム(4.07g,0.170mol)を加えた。次に、反応溶液を0℃に調整し、そこにヨウ化メチル(106ml,0.170mol)を滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、3−ブロモ−7,7―ジメチルベンゾ[A]フェナレンを収率80%で得た。
窒素雰囲気下、THF200mL中に、マグネシウム粉末(659mg,27.1mmol)を加え、沸点還流し、その後3−ブロモ−7,7―ジメチルベンゾ[a]フェナレン(17.5g,54.2mmol)のTHF800mL溶液を滴下して、1時間攪拌した。次に、反応溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(624mg,0.542mmol)を加え、2時間沸点還流し、収率56%で3−(7,7―ジメチルベンゾ[A]フェナレン−3−イル)7,7−ジメチルベンゾ[a]フェナレンを得た。3−(7,7―ジメチルベンゾ[a]フェナレン−3−イル)7,7−ジメチルベンゾ[a]フェナレン(3.00g,6.16mmol)、無水塩化アルミニウム(4.11g,30.8mmol)をクロロベンゼン400mlに分散させ、80℃に加熱、5時間攪拌して収率33%で例示化合物A−4を合成した。
【0185】
(例示化合物A−6の合成)
アントラセン−9,10−ジボロン酸(15.0g,56.4mmol)と酢酸パラジウム(633mg,2.82mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(1.71g,8.46mmol)、メチル−1−ブロモナフタレン−2−カルボキシレート(31.4g,118mmol)、炭酸セシウム(73.5g,226mmol)をキシレン200mLに溶解させ、窒素雰囲気下で5時間沸点還流にて反応させ、収率78%でジメチル−1,1’−(アントラセン−9,10−ジイル)ビス(2−ナフトエート)を得た。ジメチル−1,1’−(アントラセン−9,10−ジイル)ビス(2−ナフトエート)(24.0g,44.0mmol)に濃硫酸400mlを加え、180℃で4時間反応させた。その後、反応混合物にクロロホルムと水とを加えて有機相を分離し、有機相を水および飽和食塩水で洗浄した後、減圧下に濃縮し、得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製して、ジナフト[1,2−a:1’,2’−j]ぺリレン−10,20−ジオン(収率28%)とジベンゾ[a,o]ナフト[1,2,3,4−rst]ペンタフェン−7,10−ジオン(22%)を得た。
ジエチルエーテル700mLに水素化アルムニウムリチウム(2.62g,69.1mmol)を加え、0℃に冷却して、窒素雰囲気下で無水塩化アルミニウム(32.4g,243mmol)を少量ずつ加えた後、ジナフト[1,2−a:1’,2’−j]ぺリレン−10,20−ジオン(5.94g,12.3mmol)を少量ずつ加え、室温にて20時間反応させて、10,20−ジヒドロジナフト[1,2−a:1’,2’−j]ぺリレンを収率37%で合成した。10,20−ジヒドロジナフト[1,2−a:1’,2’−j]ぺリレン(2.07g,4.55mmol)をTHF100mLに加えて0℃に冷却し、カリウム−tert−ブトキシド(2.56g,22.8mmol)を加えた。0℃にてヨウ化メチル(1.42ml,22.8mmol)を滴下し、室温で5時間反応させた後、40℃にて5時間反応させ、収率49%にて例示化合物A−6を合成した。
【0186】
(例示化合物A−7の合成)
ジエチルエーテル550mLに水素化アルムニウムリチウム(2.06g,54.4mmol)を加え、0℃に冷却して、窒素雰囲気下で無水塩化アルミニウム(25.5g,191mmol)を少量ずつ加えた後、さらにジベンゾ[a,o]ナフト[1,2,3,4−rst]ペンタフェン−7,10−ジオン(4.67g,9.68mmol)を少量ずつ加え、室温にて20時間反応させて、7,10−ジヒドロジベンゾ[a,o]ナフト[1,2,3,4−rst]ペンタフェンを収率33%で合成した。7,10−ジヒドロジベンゾ[a,o]ナフト[1,2,3,4−rst]ペンタフェン(1.45g,3.19mmol)をTHF70mLに加え、0℃に冷却し、カリウム−tert−ブトキシド(1.80g,16.0mmol)を加えた。反応溶液を0℃に調整し、そこへヨウ化メチル(1.00ml,16.0mmol)を滴下し、室温で5時間反応させた後、40℃にて5時間反応させ、収率52%にて例示化合物A−7を合成した。
【0187】
(例示化合物A−8の合成)
5−ブロモテトラセン(3.0g,9.77mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(448mg,0.489mmol)、(ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(1.05g,1.95mmol)、(2−(メトキシカルボニル)フェニル)ボロン酸(3.52g,19.5mmol)、および炭酸カリウム(5.40g,39.1mmol)をトルエン200mL/エタノール12mL/水24mL混合溶媒に加え、窒素雰囲気下で24時間沸点還流にて反応させ、収率73%でメチル−2−(テトラセン−5−イル)ベンゾエートを得た。
メチル−2−(テトラセン−5−イル)ベンゾエート(2.58g,7.13mmol)をTHF200mLに溶かし、窒素雰囲気下にて沸点還流中、3Mメチルマグネシウムブロミドジエチルエーテル溶液(7.84ml,23.5mmol)を滴下し、2時間反応させ、2−(2−(テトラセン−5−イル)フェニル)プロパン−2−オールを収率81%で得た。2−(2−(テトラセン−5−イル)フェニル)プロパン−2−オール(2.09g,5.78mmol)を酢酸100mlと37%塩酸20ml混合溶媒に加え、沸点還流下5時間反応させ、例示化合物A−8を収率36%で合成した。
【0188】
例示化合物A−9は、Acros Organicsより購入した。
【0189】
(例示化合物A−10の合成)
例示化合物A−10は、Chemische Berichte, 1937, 70, 1603−1610に記載の方法を参考に合成した。
【0190】
(例示化合物A−11の合成)
例示化合物A−11は、Chemische Berichte, 1971, 104, 1436-1454に記載の方法を参考に合成した。
【0191】
(例示化合物B−1の合成)
2−ブロモフルオレン(89.0g,0.363mol)をTHF1.3lに溶解し、5℃に冷却して、カリウム−tert−ブトキシド(102g,0.908mol)を加えた。その後、ヨウ化メチル(565ml,0.908mol)を5℃において滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌し、2−ブロモ−9,9−ジメチル‐フルオレンを収率87%で得た。
窒素雰囲気下、THF50ml中に、マグネシウム粉末(3.51g,0.144mol)を加え、沸点還流し、2−ブロモ−9,9−ジメチル−フルオレン(75.0g,0.275mol)のTHF250ml溶液を滴下して、1時間攪拌した。その後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.59g,1.38mmol)を加え、2時間沸点還流し、収率82%で化合物1を得た。
化合物1(43.8g,0.113mol)のクロロホルム500ml溶液に臭素(39.8g,0.249mol)を滴下して、その後3時間攪拌して、収率78%で化合物2を合成した。化合物2(1.10g,2.02mmol)、酢酸パラジウム(22.7mg,0.101mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(61.3mg,0.303mmol)、炭酸セシウム(2.63g,8.08mmol)、および化合物3(991mg,4.44mmol)をキシレン11mlに溶解させ、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させた。反応混合物に酢酸エチルと水を加えて有機相を分離し、有機相を、水および飽和食塩水で洗浄した後、減圧下に濃縮した。その後、得られた反応混合物を再結晶、昇華精製により精製して、例示化合物B−1を収率66%で得た。
【0192】
【化39】

【0193】
(例示化合物(B−3)の合成)
化合物2(1.10g,2.02mmol)、酢酸パラジウム(22.7mg,0.101mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(61.3mg,0.303mmol)、炭酸セシウム(2.63g,8.08mmol)、および化合物6(1.13g,4.24mmol)をキシレン10mlに溶解させ、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させた。反応混合物に酢酸エチルと水を加えて有機相を分離し、有機相を水および飽和食塩水で洗浄した後、減圧下に濃縮した。その後、得られた反応混合物を再結晶、昇華精製により精製して、例示化合物B−3を収率44%で得た。
【0194】
【化40】

【0195】
(例示化合物(B−6)の合成)
化合物2(1.10g,2.02mmol)、酢酸パラジウム(22.7mg,0.101mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(61.3mg,0.303mmol)、炭酸セシウム(2.63g,8.08mmol)、および化合物5(1.03g,4.24mmol)をキシレン10mlに溶解させ、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させた。反応混合物に酢酸エチルと水を加えて有機相を分離し、有機相を水および飽和食塩水で洗浄した後、減圧下に濃縮した。その後、得られた反応混合物を再結晶、昇華精製により精製して、例示化合物B−6を収率48%で得た。
【0196】
【化41】

【0197】
(例示化合物(B−12)の合成)
化合物2(1.10g,2.02mmol)、酢酸パラジウム(22.7mg,0.101mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(61.3mg,0.303mmol)、炭酸セシウム(2.63g,8.08mmol)、および化合物4(1.34g,4.24mmol)をキシレン10mlに溶解させ、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させた。反応混合物に酢酸エチルと水を加えて有機相を分離し、有機相を水および飽和食塩水で洗浄した後、減圧下に濃縮した。その後、得られた反応混合物を再結晶、昇華精製により精製、例示化合物B−12を収率41%で得た。
【0198】
【化42】

【0199】
(例示化合物(B−2)の合成)
Journal of Organic Chemistry,2005年, 70巻, 5014〜5019項に従い、2,7−ジブロモカルバゾールを合成した。2,7−ジブロモカルバゾール(3.5g,10.7mmol)、酢酸パラジウム(120mg,0.535mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(325mg,1.61mmol)、炭酸セシウム(6.97g,21.4mmol)、および3,6−ジ−t−ブチルカルバゾール(12.0g,42.8mmol)をキシレン50mlに溶解させ、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させ、3,6−ジ−tert−ブチル−9−[7−(3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール−9−イル)−9H−カルバゾール−2−イル]カルバゾールを収率60%で得た。
3,6−ジ−tert−ブチル−9−[7−(3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール−9−イル)−9H−カルバゾール−2−イル]カルバゾール(4.64g,6.42mmol)、酢酸パラジウム(72.1mg,0.321mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(194mg,963mmol)、炭酸セシウム(4.17g,12.8mmol)、および2−ブロモナフタレン(12.0g,42.8mmol)をキシレン35mlに溶解させ、窒素雰囲気下で6時間沸点還流にて反応させ、例示化合物B−2を収率73%で得た。
【0200】
(例示化合物(B−7)の合成)
t−ブトキシナトリウム(0.47g)、キシレン(20ml)、酢酸パラジウム(57mg)、トリ(t−ブチル)ホスホニウムヘキサフルオロボレート(0.18g)を窒素下65℃で20分加熱攪拌し、2,7−ジブロモ−9,9’−スピロビ[9H−フルオレン](0.6g)、例示化合物(B−3)の合成で使用した化合物6(0.83g)を加え、窒素下105℃で2時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、メタノール40mlを加え、得られた固体を濾過し、アセトニトリル、水、アセトン、イソプロパノールで洗浄し、例示化合物(B−7)0.6gを得た。
【0201】
(例示化合物(B−8)の合成)
3,6−ジ−t−ブチルカルバゾール(3.3g)、酢酸パラジウム(0.2g)、炭酸セシウム(9g)、トリ−t−ブチルホスフィン(1g)、キシレン(50ml)、9−(2−アントリル)−3,6−ジブロモカルバゾール(6.3g)を、窒素下で5時間還流した。その後、室温まで冷却して、反応溶液に水100mlを加え、トルエン100mlで抽出した。濃縮残渣を、トルエン−ヘキサン混合溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、溶液を濃縮した。残渣にメタノール50mlを加えて得られた結晶を濾過し、アセトニトリルで洗浄し、例示化合物(B−8)(6g)を得た。
【0202】
(例示化合物(B−9)の合成)
2,7,12−トリブロモ−5,5,10,10,15,15−ヘキサメチルトルクセン(1.0g)、カルバゾール(0.87g)、t−ブトキシナトリウム(0.54g)、キシレン(20ml)、Pd[P(t−Bu)32(0.12g)を窒素下95℃で3時間加熱した。反応溶液を室温まで冷却した後、水を加え、クロロホルムで抽出した。クロロホルムの一部を減圧蒸留すると固体が析出したため、メタノール100mlを加えて得られた固体を濾過し、アセトニトリル、水、イソプロパノールで洗浄し、例示化合物(B−9)(0.5g)を得た。
【0203】
(例示化合物(B−10)の合成)
2,7−ジブロモカルバゾール(3.5g,10.7mmol)、酢酸パラジウム(120mg,0.535mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(325mg,1.61mmol)、炭酸セシウム(6.97g,21.4mmol)、および例示化合物(B−3)の合成で使用した化合物6(11.3g,42.8mmol)をキシレン50mlに溶解させ、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させ、2−tert−ブチル−10−[7−(2−tert−ブチル−9,9−ジメチル−アクリジン−10−イル)−9H−カルバゾール−2−イル]−9,9−ジメチルアクリジンを収率55%で得た。
2−tert−ブチル−10−[7−(2−tert−ブチル−9,9−ジメチル−アクリジン−10−イル)−9H−カルバゾール−2−イル]−9,9−ジメチルアクリジン(4.08g,5.89mmol)、酢酸パラジウム(66.1mg,0.295mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(178mg,0.883mmol)、炭酸セシウム(3.82g,11.7mmol)、および1−ブロモ−3,5−ジ−tert−ブチルベンゼン(10.6g,39.2mmol)をキシレン35mlに溶解させ、窒素雰囲気下で6時間沸点還流にて反応させ、例示化合物B−10を収率66%で得た。
【0204】
なお、例示化合物B−4、B−5、B−11、B−13は上記の方法および公知の方法を組み合わせて、適宜原料、試薬を変更して合成した。
【0205】
(例示化合物C−1〜C−6)
化合物C−1〜C−6は特許4699561号、特許5142611号、Journal of Organic Chemistry, 2001, 66, 94-98、Chemistry--A European Journal, 2005, 11, 3959-3967、Journal of Materials Chemistry, 2007, 17, 2088-2094に記載の方法および公知の方法を参考に合成した。
【0206】
化合物C−7、C−8は東京化成工業より購入した。
【0207】
(例示化合物(D−1)の合成)
例示化合物B−1の合成で使用された化合物2(1.10g,2.02mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(117mg,0.101mmol)、炭酸カリウム(1.12g,8.08mmol)、および9−アントラセンボロン酸(941mg,4.24mmol)をトルエン10mlに溶解させ、さらにエタノール5ml、水5mlを加え、窒素雰囲気下で4時間沸点還流にて反応させ、例示化合物(D−1)を収率85%で得た。
【0208】
(例示化合物(D−2)の合成)
例示化合物(D−2)は、Journal of the American Chemical Society, 2002, 124, 11576− 11577を参考に合成した。
【0209】
(例示化合物(E−1)の合成)
例示化合物(E−1)は、Chemistry Letters, 2008, 37, 622−623、および、Organic Letters, 2010, 12, 3438-3441に記載の方法および公知の方法を参考に合成した。
【0210】
(例示化合物(E−2)の合成)
9,10−ジブロモアントラセン(3.60g,10.7mmol)、酢酸パラジウム(120mg,0.535mmol)、トリ(t−ブチル)ホスフィン(325mg,1.61mmol)、炭酸セシウム(6.97g,21.4mmol)、および2,7−ジ−tert−ブチル−9,9−ジメチル−10H−アクリジン(7.22g,22.5mmol)をキシレン50mlに溶解させ、窒素雰囲気下4時間沸点還流にて反応させ、例示化合物(E−2)を収率63%で得た。
【0211】
<光電変換素子の作製>
[実施例1−1]
図1(a)の形態の、光電変換素子を作製した。ここで、光電変換素子は、下部電極11、電子ブロッキング層16A、光電変換膜12、および上部電極15からなる。すなわち、ガラス基板上に、アモルファス性ITO 30nmをスパッタ法により成膜後、下部電極とし、化合物(B−1)100nmを真空加熱蒸着法により成膜し、電子ブロッキング層を形成した。更にその上に、化合物(A−1)(光電変換色素)(蒸着速度は0.4オングストローム/s(0.4×10-10m/s))とフラーレン(C60)をそれぞれ単層換算で100nm、300nmとなるように真空加熱蒸着により、25℃に基板の温度を制御した状態で共蒸着して成膜し、光電変換層を形成した。更に、上部電極としてスパッタ法によりアモルファス性ITOを10nm成膜して透明電極(上部電極)とすることにより、固体撮像素子を作製した。上部電極上には、封止層として加熱蒸着によるSiO膜形成後、その上にALD法により酸化アルミニウム層を形成した。電子ブロッキング層および光電変換層の真空蒸着は全て4×10-4Pa以下の真空度で行った。
【0212】
[実施例1−2〜1−143、比較例1−1〜1−80]
実施例1−1で使用した電子ブロッキング層に用いた化合物(B−1)、および、光電変換層に用いた化合物(A−1)を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1−1と同様の手順に従い、光電変換素子を作製した。
【0213】
[実施例1−144〜1−234、比較例1−81〜1−95]
光電変換色素の蒸着速度を2.0オングストローム/s(2.0×10-10m/s)とし、実施例1−1で使用した電子ブロッキング層に用いた化合物(B−1)、および、光電変換層に用いた化合物(A−1)を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1−1と同様の手順に従い、光電変換素子を作製した。
【0214】
以下に、本実施例で使用した例示化合物(電子ブロッキング層形成用材料、光電変換層形成用材料)の構造式を示す。
【0215】
【化43】

【0216】
【化44】

【0217】
【化45】



【0218】
【化46】

【0219】
【化47】

【0220】
【化48】

【0221】
[評価:電圧印加評価]
得られた各素子の下部電極および上部電極に、2.5×105V/cmの電界強度となるように電圧を印加すると、いずれの素子も暗所では100nA/cm2以下の暗電流を示すが、明所では10μA/cm2以上の電流を示し、光電変換素子が機能することを確認した。
【0222】
[評価:耐熱性評価]
各実施例1−1〜1−234、および比較例1−1〜1−95で得られた光電変換素子に、2.5×105V/cmの電場を印加したときの波長520nmでの光電変換効率(実施例1−1の素子の値を「100」とする相対値)を示す。なお、各素子の光電変換性能の測定の際には、上部電極(透明導電性膜)側から光を入射した。
(光電変換効率)
光電変換効率は、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置(ソースメーターはケースレー6430を使用)を用いて、2.5×105V/cmの電場を印加しながら光照射時における光電流を測定し、外部量子効率を求めた。なお、素子表面の反射光の影響を除くため、520nmでの外部量子効率を520nmの光吸収率で除算することで量子効率とした。照射した光量は50uW/cm2であった。
(暗電流値)
暗電流は、各素子の下部電極及び上部電極に、2.5×10V/cmの電界強度となるように電圧を印加し、暗所でケースレー6430により電流を測定し、電極面積で割ることで電流密度とした。
【0223】
表1に、実施例1−1で得られた素子の光電変換効率を「100」として、各実施例および比較例で得られた素子の光電変換効率、および、各素子を210℃の環境下で60分間保持し、室温に戻した後に測定した光電変換効率を、それぞれ実施例1−1の素子の光電変換効率に対する相対値として記載した。
また、実施例1−1で得られた素子の暗電流値を「1.0」として、各実施例および比較例で得られた素子の暗電流値、および、各素子を210℃の環境下で60分間保持し、室温に戻した後に測定した暗電流値を、それぞれ実施例1−1の素子の暗電流値に対する相対値として記載した。
【0224】
[評価:薄膜吸収極大波長評価]
薄膜吸収極大波長は、別途ガラス基板に各実施例および比較例の光電変換層の作製操作と同様に化合物A−1〜A−11またはC−1〜C−6を用いて真空加熱蒸着により約100nmの薄膜を形成し、その透過スペクトルからその最も長波長である吸収極大波長(λmax)を求めた。なお、以下の基準に従って、評価した。結果を表1にまとめて示す。
「○」:λmax≧500nm
「△」:500nm>λmax≧450nm
「×」:450nm>λmax
【0225】
[評価:ガラス転移点評価]
電子ブロッキング層で使用される化合物のガラス転移点(Tg)の測定は、エスアイアイナノテクノロジー社製DSC6220を用いて行った。試料5mgをパンに乗せ、30℃〜400℃の範囲で昇降温させ(昇温:20℃/min、降温:50℃/min、2サイクル)、熱容量変化を測定した。ガラス転移に相当する熱量変化曲線に2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線と熱量曲線の交点からガラス転移点(Tg)を求めた。なお、以下の基準に従って、評価した。結果を表1にまとめて示す。
「○」:Tg≧200℃
「△」:200℃>Tg≧180℃
「×」:180℃>Tg
【0226】
なお、表1中において、「電子ブロッキング層材料」欄は、電子ブロッキング層作製の際に使用した化合物を記載し、「光電変換層材料」欄は、光電変換層作製の際に使用した化合物を記載する。
また、「光電変換色素蒸着レート(Å/s)」は、光電変換層作製の際に使用した多環縮合炭化水素の蒸着レートを意味する。
【0227】
【表1】

【0228】
【表2】

【0229】
【表3】

【0230】
【表4】

【0231】
【表5】

【0232】
【表6】

【0233】
【表7】

【0234】
【表8】

【0235】
【表9】

【0236】
表1から明らかなように、実施例1−1〜1−143は、光電変換色素として縮合多環炭化水素以外の色素(例えば、アリールアミン色素)を使用した比較例1−1〜1−58と比較して、光電変換素子自体の光電変換効率、暗電流特性が優れており、素子加熱後の暗電流の増大、光電変換効率の低下が少なく、光電変換素子の耐熱性が高いことが確認された。
また、比較例1−59〜1−80に示すように、所定の化合物Aを使用していない電子ブロッキング層を含む光電変換素子においては、光電変換素子自体の光電変換効率または暗電流特性に劣っているか、耐熱性に劣っていた。
【0237】
光電変換層の蒸着速度を早くした実施例1−144〜1−234においては、実施例1−1〜1−143と比較して、暗電流が低減し、光電変換効率が上昇しており、素子自体の性能が向上していることが確認された。
一方、実施例1−144〜1−234と同じ蒸着速度で光電変換層の成膜を行った比較例1−81〜1−95においては、蒸着速度が高い場合のほうが光電変換素子の特性(光電変換効率、暗電流特性)に劣っていた。
【0238】
縮合多環炭化水素の総環数が6個である実施例1−92〜1−104と、縮合多環炭化水素の総環数が7個である他の実施例を比較すると、他の実施例のほうが加熱前後における暗電流特性および光電変換特性の劣化が小さかった。この点より、縮合多環炭化水素の総環数が7個以上である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
【0239】
実施例1−1〜1−143を比較すると、B−1〜B−6、B−8、B−10〜B−13を使用した態様において、光電変換素子の特性(光電変換効率、暗電流特性)がより優れていた。この点より、化合物Aとして、一般式(F−1)、一般式(F−2)または一般式(F−5)で表される化合物を使用すると、より光電変換素子の特性が優れることが確認された。
【0240】
実施例1−1〜1−143を比較すると、薄膜吸収極大波長が所定値以上の場合、光電変換素子の光電変換効率がより優れることが確認された。
【0241】
更に、図2に示す形態と同様の撮像素子を作製した。すなわち、CMOS基板上に、アモルファス性TiN 30nmをスパッタ法により成膜後、フォトリソグラフィーによりCMOS基板上のフォトダイオード(PD)の上にそれぞれ1つずつ画素が存在するようにパターニングして下部電極とし、電子ブロッキング層の製膜以降は実施例1−1〜1−234と同様に作製した。その評価も同様に行い、表1と同様な結果が得られ、撮像素子においても製造に適している点と優れた性能の阻止であることが分かった。
【符号の説明】
【0242】
10a、10b 光電変換素子
11 下部電極(導電性膜)
12 光電変換層
15 上部電極(透明導電性膜)
16A 電子ブロッキング層
16B 正孔ブロッキング層
100 撮像素子
101 基板
102 絶縁層
103 接続電極
104 画素電極(下部電極)
105 接続部
106 接続部
107 光電変換膜
108 対向電極(上部電極)
109 緩衝層
110 封止層
111 カラーフィルタ(CF)
112 隔壁
113 遮光層
114 保護層
115 対向電極電圧供給部
116 読出し回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性膜と、導電性膜と、前記透明導電性膜と前記導電性膜との間に配置された光電変換層および電子ブロッキング層とを有する光電変換素子であって、
前記光電変換層が、ベンゼン環を少なくとも5個以上含み、総環数が6個以上であり、カルボニル基を含まない縮合多環炭化水素を含有し、
前記電子ブロッキング層が、一般式(A)で表される化合物からRa1〜Ra9の少なくとも1つの基を取り除いた残基を有し、ガラス転移点(Tg)が200℃以上である化合物Aを含有する、光電変換素子。
【化1】


(一般式(A)中、Ra1〜Ra8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Ra9は、アルキル基、アリール基、または複素環基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、ジアルキルシリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
前記縮合多環炭化水素が、一般式(1)〜一般式(17)のいずれかで表される縮合多環炭化水素である、請求項1に記載の光電変換素子。
【化2】


【化3】


【化4】


(一般式(1)、一般式(8)、一般式(10)、一般式(12)、一般式(13)、一般式(16)および一般式(17)中、R1〜R16は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(2)および一般式(3)中、R1〜R15およびRa〜Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(4)および一般式(6)中、R1〜R16およびRa〜Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(5)および一般式(7)中、R1〜R14およびRa〜Rdは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(9)および一般式(14)中、R1〜R18は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
一般式(11)および一般式(15)中、R1〜R14は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。)
【請求項3】
前記光電変換層が、さらにフラーレンまたはフラーレン誘導体を含む、請求項1または2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記光電変換層が、真空蒸着法により成膜されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記縮合多環炭化水素の蒸着速度が1.0Å/s以上である、請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記透明導電性膜が、透明導電性金属酸化物からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】
光が前記透明導電性膜を介して前記光電変換層に入射される、請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子を含む撮像素子。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子を含む光センサ。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子の使用方法であって、
前記導電性膜と前記透明導電性膜とが一対の電極であり、前記一対の電極間に1×10-4〜1×107V/cmの電場を印加させる、光電変換素子の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−41995(P2013−41995A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178047(P2011−178047)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】