説明

光電変換素子モジュール

【課題】設置場所に広い面積の平面がない場合であっても、設置場所に応じた専用の設置用器具等を用いず、容易に設置可能な光電変換素子モジュールを提供する。
【解決手段】光電変換素子モジュール100は、複数の基板1と、前記複数の基板1のそれぞれに設けられた光電変換素子100a、100bとを備え、前記光電変換素子100a、100b同士は、可とう性を有する平坦状のケーブル9で電気的に接続されていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光電変換素子が電気的に接続されている光電変換素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー資源の有効活用の観点から、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池が注目されている。太陽電池として、シリコン結晶型の太陽電池や色素増感型の太陽電池が知られている。中でも、色素増感型の太陽電池は、シリコン結晶系の太陽電池よりも安価に製造可能であることから注目されており、さらなる光電変換効率の向上を目指して種々の開発が行われている。
【0003】
色素増感型の太陽電池に用いられる光電変換素子は、一般に、透明基板上に設けられており、透明電極である透明導電層と、透明導電層に対向して配置される対向電極と、透明導電層と対向電極の間に設けられる光電変換部とを主要な構成要素としている。この光電変換部は、透明導電層の対向電極側に設けられた半導体電極層と、半導体電極層に担持される光増感色素と、半導体電極層の周囲に充填される電解質部とを主要な構成要素としている。電解質部は、例えばI/Iなどの酸化還元系(レドックス対)を含む電解液などで構成されている。
【0004】
このような色素増感型の光電変換素子では、入射された可視光によって光増感色素中の電子が励起され、励起された光増感色素から半導体電極の伝導帯に電子が注入され、外部回路へと流れ出る。外部回路から戻ってきた電子は対向電極にてトリヨウ化物イオン(I)を還元し、電子を失い酸化された光増感色素がヨウ化物イオン(I)により再還元され、こうして発電が行われる。
【0005】
下記特許文献1には、このような色素増感型の光電変換素子が、1枚の透明基板上に複数設けられ、各素子同士が電気的に接続された色素増感型の太陽電池モジュールが開示されている。
【特許文献1】特開2007−220606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、太陽電池モジュールは、使用用途の広がりと共にさまざまな場所への容易な設置が求められている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールを構成している複数の色素増感型の太陽電池素子が、1枚の基板に設けられている。このため、太陽電池モジュールから大電流を取り出そうとすると、太陽電池素子の数が多くなり、基板の面積が大きくなってしまう。このような基板面積の大きな太陽電池モジュールを設置する場合には、設置場所に太陽電池モジュールの基板面積よりも広い面積の平面が必要であった。しかし、住宅の屋根や建築物の外壁等には、必ずしも広い面積の平面があるとは限らない。例えば、設置場所として、小さな面積の複数の平面が、互いに段差を介して並んでいるような階段状の場所がある。このような場所に太陽電池モジュールを設置する場合、太陽電池モジュールを配置することができる広い平面を有する部材と、設置場所の段差に合わせて高さが調整され、太陽電池モジュールが配置される部材を支える台座とを有する、設置場所に応じた専用の設置用器具が用いられていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、設置場所に広い面積の平面がない場合であっても、設置場所に応じた専用の設置用器具等を用いず、容易に設置可能な光電変換素子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光電変換素子モジュールは、複数の基板と、前記複数の基板のそれぞれに設けられた光電変換素子とを備え、前記光電変換素子同士は、可とう性を有する平坦状のケーブルで電気的に接続されることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成の光電変換素子モジュールは、複数の基板のそれぞれに光電変換素子が設けられており、各光電変換素子同士が、可とう性を有する平坦状のケーブルで接続されている。このため、例えば、複数の平面が互いに段差を介して並んでいる設置場所に光電変換素子モジュールを設置する際、可とう性を有する平坦状のケーブルの撓みが、各平面の間の段差の高さを吸収し、各平面に光電変換素子が設けられた基板を配置できる。従って、設置場所に応じた専用の設置用器具等を用いず、容易に光電変換素子モジュールを設置することができる。
【0011】
また、本発明において、前記光電変換素子は、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられ各電極と接触する光電変換部と、前記一対の電極と接触し前記光電変換部を包囲する封止材とを有し、前記光電変換素子の少なくとも一つは、前記一対の電極の少なくとも一方における前記光電変換部側の面が、前記封止材と接触する領域の外側に非接触領域を有し、前記ケーブルの一端は、前記光電変換素子の前記非接触領域と電気的に接続されれば好適である。
【0012】
このような構成の光電変換素子モジュールは、光電変換素子の少なくとも一つが、一対の電極の少なくとも一方における光電変換部側の面において、封止材と接触する領域の外側に非接触領域を有し、ケーブルの一端が、光電変換素子の非接触領域と電気的に接続される。このため、非接触領域にケーブルと電極との十分な接続面積を確保できる。従って、光電変換素子とケーブルとの接続による電気的な抵抗が小さく、光電変換素子モジュールの内部抵抗を軽減でき、光電変換素子モジュールの光電変換効率を向上できる。
【0013】
或いは、本発明において、前記光電変換素子は、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられ、各電極と接触する光電変換部と、前記一対の電極と接触し前記光電変換部を包囲する封止材とを有し、前記ケーブルの一端は、少なくとも前記光電変換素子の1つにおいて、前記一対の電極の一方における前記光電変換部と反対側の面で前記光電変換素子と電気的に接続されていれば好適である。
【0014】
このような構成の光電変換素子モジュールは、ケーブルの一端が、一対の電極の一方における光電変換部と反対側の面で接続されるため、封止材が一対の電極と接触し光電変換部を包囲する限りにおいて、電極の大きさを自由に構成できる。例えば、ケーブルが接続されている電極は、封止材の外縁で囲まれた領域の直上の領域のみに設けることもできる。この場合、ケーブルと接続されている電極の小型化が可能となり、従って、光電変換素子モジュールの小型化ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる光電変換素子モジュールによれば、設置場所に広い面積の平面がない場合であっても、設置場所に応じた専用の設置用器具等を用いず、容易に光電変換素子モジュールを設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を色素増感型の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールを例に図面を用いて説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールを示す断面図である。
【0019】
図1において、光電変換素子モジュール100は、2つの基板1上にそれぞれ設けられた光電変換素子100a、100bと、可とう性を有する平坦状のケーブル9とを備えており、光電変換素子100aと光電変換素子100bとは、ケーブル9によって電気的に接続されている。
【0020】
まず、基板1及び光電変換素子100a、100bについて説明するが、光電変換素子100aと光電変換素子100bは、同じ構成であるため、光電変換素子100aについてのみ説明する。
【0021】
本実施形態において、基板1は、透明な材料から構成されている。また、基板1を構成する材料は、電解液に対する耐性、及び、水蒸気、酸素等に対するガスバリア性に優れていることが好ましい。このような透明な材料は、可塑性のない材料として、ガラスを挙げることができ、可塑性のある材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などの樹脂を挙げることができる。また、基板1は、ガラスと上記樹脂の積層体を用いて構成することもできる。
【0022】
光電変換素子100aは、基板1上に設けられた透明電極となる透明導電層2と、透明導電層2と対向している対向電極5と、透明導電層2と対向電極5との間に設けられ、透明導電層2と対向基板5とに接触する光電変換部3と、透明電極層2と対向基板5とに接触し、光電変換部3を包囲するように設けられた封止材6とを主な構成要素として備えている。
【0023】
透明導電層2は、基板1における光電変換部3が設けられる側の面の全面を覆うように設けられている。また、透明導電層2の光電変換部3側の面は、光電変換部3及び封止材6と接触する領域と、この領域の外側で光電変換部3及び封止材6と接触しない非接触領域25とを有している。
【0024】
透明導電層2は、光電変換部3で生じる電荷を集電し電送する機能を有し、また、光電変換部3に入射する光を透過する機能を有するため、導電性、光透過性の高い材料で形成されている。このような透明導電層2を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−Tin−Oxide:FTO)、アンチモン添加酸化スズ(Antimony−Tin−Oxide:ATO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層2は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよく、複数の層で構成される積層体を用いると、各層の特性を反映させることが可能となることから好ましい。中でも、ITOで構成される層と、FTOで構成される層との積層体を用いることが好ましい。この場合、高い導電性、耐熱性及び耐薬品性を持つ透明導電層2が実現できる。
【0025】
透明導電層2を形成する方法としては、例えばスパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD:Spray Pyrolysis Deposition)及びCVD法などが挙げられる。中でも、スプレー熱分解法が短時間で容易に透明導電層2を形成できることから好ましい。透明導電層2の厚さは、例えば0.001μm〜10μmの範囲にすればよい。
【0026】
対向電極5は、対向電極層52と、対向電極層52の光電変換部3とは反対側に設けられた対向電極基板51とを備える。また、対向電極5の光電変換部3側の面は、光電変換部3及び封止材6と接触する領域と、この領域の外側で光電変換部3及び封止材6と接触しない非接触領域55とを有する。具体的には、対向電極層52が、封止材6の外縁で囲まれる領域の直上の領域から、封止材6の外縁で囲まれる領域の直上の領域の外側まで延在している。
【0027】
対向電極層52は、白金、チタン、炭素系材料、導電性高分子や、ITO、FTO、ATO等の導電性酸化物等の材料で構成することができる。
【0028】
また、対向電極基板51は、対向電極基板51に導電性を持たせる場合には、チタン、ニッケル、金等の金属材料、ITO、FTO等の導電性酸化物、あるいは導電性高分子等で構成することができ、対向電極基板51に導電性を持たせる必要がない場合には、ガラス、PC、PET等で構成することができる。
【0029】
さらに、対向電極層52及び対向電極基板51の双方に透明な材料を用いれば、対向電極5を透明とすることができる。この場合には、対向電極5側からも光を取り込むことができる。
【0030】
なお、対向電極層52が十分な強度を保つことができれば、対向電極板51を省略することもでき、この場合、対向電極5が、対向電極層52のみから構成される。この場合、対向電極層52の材料としては、チタンや白金が用いられる。
【0031】
光電変換部3は、半導体層31と、半導体層31に担持される図示しない光増感色素と、半導体層31の周囲に設けられる電解質部32とを有している。
【0032】
半導体層31は、透明導電層2上に設けられ、例えば酸化物半導体の粒子で構成される酸化物半導体多孔膜から成る。酸化物半導体の材料としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホスホニウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、アルミナ(Al)が挙げられ、これらの材料を1種用いたものでも良く、あるいは2種以上用いたものでも良い。2種類以上用いた場合には、粒子をコアシェル構造としても良い。
【0033】
粒子の平均粒径としては、特に限定されるわけではないが、例えば1〜1000nmであることが必要な比表面積を確保するという理由から好ましい。また、半導体層31の厚さは、例えば0.5〜50μmであればよい。
【0034】
酸化物半導体多孔膜を形成するためには、例えば上記酸化物半導体粒子を塗布し、焼結させることにより得ることができる。
【0035】
光増感色素は、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
【0036】
光増感色素を半導体層31に担持させるためには、例えば、光増感色素を含有する溶液を半導体層31に浸漬させることによって、光増感色素を酸化物半導体多孔膜に吸着させればよい。
【0037】
電解質部32は、例えば電解液となっており、電解液は、例えばI/Iなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/Iのほか、臭素/臭化物イオンなどの対であってもよい。
【0038】
電解質部32としては、イオン液体電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル状となった擬固体電解質であるナノコンポジットイオンゲル電解質を用いてもよい。イオン液体電解質としては、例えば1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、LiI、I、4−t−ブチルピリジンを所定量溶解したものなどが挙げられる。
【0039】
電解質部32を半導体層31の周囲に設ける方法としては、電解質部32が電解液である場合には、半導体層31に対向するように対向電極5を配置し、対向電極5の周囲を封止材6で封止した後、封止材6に形成した電解液を注入するための注入口を通して電解液を注入する方法が挙げられる。また、電解質部13が上記ナノコンポジットイオンゲル電解質である場合には、上記ナノコンポジットイオンゲル電解質を含むペーストを用意し、これを例えばスクリーン印刷法等によって塗布する方法が挙げられる。
【0040】
上記電解質層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、50μm以下であれば、電解液の電気抵抗が抑えられるという理由から好ましい。
【0041】
封止材6は、電解質部32に対する耐性が必要であるため耐薬品性に優れ、また、水蒸気、酸素等に対するガスバリア性に優れた材料が好ましい。このような、封止材6の材料としては、例えば、アクリル系樹脂封止材、フッ素系樹脂封止材、シリコーン系樹脂封止材、エポキシ系樹脂封止材、オレフィン系樹脂封止材、シラン変性樹脂含有封止材、ホットメルト系封止材等を用いることができる。
【0042】
透明導電層2の光電変換部3側の面における非接触領域25には、端子7が設けられている。端子7は、導電層71とはんだ層72から構成されている。導電層71は、金、銀、銅、白金、アルミニウム等の金属を用いて構成することができる。導電層71は、例えば、銀ペーストを印刷により塗布し、加熱・反応させて形成すればよい。また、はんだ層72は、例えば、Sn−Pb等の共晶タイプや、Sn−Ag、Sn−Cu、An−Ag−Cu、An−Zn、Sn−Zn−B等の非鉛タイプの低融点はんだを用いて構成することができる。
【0043】
対向電極層52の光電変換部3側の面における非接触領域55には、端子8が設けられている。端子8は、導電層81とはんだ層82とから構成され、導電層81が対向電極層52上に設けられており、導電層81上に、はんだ層82が形成されている。導電層81の材料は、対向電極層52の材料により異なるが、対向電極層52が、白金、チタンの場合には、高融点はんだが用いられる。対向電極層52が、ITO、FTO、ATO等の導電性酸化物の場合には、導電層71と同様の材料が用いられる。はんだ層82は、低融点はんだで形成されている。
【0044】
次に、光電変換素子モジュール100について説明する。
【0045】
光電変換素子モジュール100は、光電変換素子100bから光電変換素子100aに電流が流れるように、光電変換素子100aと光電変換素子100bとが、ケーブル9により電気的に直列に接続されている。具体的には、ケーブル9の一端が光電変換素子100aの端子7に接続され、ケーブル9の他端が光電変換素子100bの端子8に接続されている。
【0046】
ケーブル9には、銅等の導体箔をラミネート材で挟んでいるFPC(Flexible Printed Circuit)や、極細のケーブルを複数平面状に束ねたフラットケーブルアセンブリ等を用いることができる。
【0047】
なお、光電変換素子100aの端子8及び光電変換素子100bの端子7は、図示しない負荷と接続される。
【0048】
本実施形態の光電変換素子モジュール100によれば、光電変換素子モジュール100の2つの光電変換素子100a、100bが、2つの基板1上にそれぞれ設けられて、可とう性を有する平坦状のケーブル9により電気的に接続されている。このため、例えば、複数の平面が互いに段差を介して並んでいる階段状の設置場所に光電変換素子モジュール100を配置する際、設置場所の段差に応じてケーブル9が撓み、設置場所の各平面に光電変換素子100a、100bが設けられた各基板1が配置できる。従って、設置場所に応じた専用の設置用器具等を用いず、容易に光電変換素子モジュール100を設置場所に設置することができる。
【0049】
この効果について、図2を用いて具体的に説明する。図2は、光電変換素子モジュール100を部材S上に設置する状態を示す斜視図である。部材Sは、例えば屋根の一部等であり、階段状の形状をしている。部材Sは、段差Stを介して並んでいる2つの平面S1とS2とを有している。そして、光電変換素子100aが平面S1上に配置され、光電変換素子100bが平面S2上に配置される。
【0050】
この際、各光電変換素子100a、100bは、基板1側から光を取りこんで、光電変換部3で光電変換を行うため、基板1が平面S1、S2とは反対側を向いて設置される。
【0051】
光電変換素子100a、100bは、可とう性を有する平坦状のケーブル9により接続されているため、ケーブル9が、段差Stの高さに合わせて撓んだ状態で、光電変換素子100a、100bが、それぞれ平面S1、S2に配置される。このようにケーブル9の撓みが、段差Stによる平面S1と平面S2の高さの差を吸収する。このため、段差Stの高さに応じた専用の設置用器具等を用いず、光電変換素子モジュール100を部材S上に設置することができる。
【0052】
また、各光電変換素子100a、100bは、平坦状のケーブル9で接続されているので、通常のケーブルを用いて接続した場合に比べて、ケーブル9と光電変換素子100a、100bに設けられた端子7、8との接続幅が大きい。さらに、光電変換素子100a、100bは、非接触領域25、55を有し、ケーブル9が、非接触領域25、55で電気的に接続されているため、非接触領域25、55にケーブル9との十分な接続面積を確保できる。このため、光電変換素子100a、100bとケーブル9との接続による電気的な抵抗が小さく、光電変換素子モジュール100の内部抵抗を軽減でき、光電変換素子モジュール100の光電変換効率を向上できる。また、ケーブル9と各光電変換素子100a、100bとの電気的な接続作業が容易である。
【0053】
また、光電変換素子100aは、透明電極層2の光電変換部3側の非接触領域25に設けられた端子7とケーブル9とが電気的に接続され、光電変換素子100bは、対向電極5の光電変換部3側の非接触領域55に設けられた端子8とケーブル9とが電気的に接続されている。このため、部材Sに光電変換素子モジュール100を設置する際、ケーブル9は、光電変換素子モジュール100と部材Sとの間に入り込み邪魔になることがない。
従って、容易に光電変換素子モジュール100を部材Sに設置することができる。
【0054】
また、各光電変換素子100a、100bを平坦状のケーブル9で接続しているので、ケーブル9上に、光電変換素子モジュールを制御する電子部品等を配置することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
【0056】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールを示す断面図である。なお、本実施形態の説明に当たり、第1の実施形態と同一または同等の構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0057】
図3に示すように、本実施形態の光電変換素子モジュール101は、2つの基板1上に設けられた光電変換素子100c、100dとケーブル9とを備えている。なお、光電変換素子100cと光電変換素子100dは、同じ構成であるため、光電変換素子100cについてのみ説明を行う。
【0058】
光電変換素子100cの対向電極58は、対向電極層54と、対向電極層54の光電変換部3とは反対側に設けられた対向電極基板53とを備える。対向電極58の光電変換部3側の面は、光電変換部3及び封止材6と接触する領域の外側の領域を有しておらず、対向電極58は、封止材6の外周で囲まれる領域の直上の領域のみに設けられている。また、端子8が対向電極58の光電変換部3とは反対側、すなわち光電変換素子100cの上側に設けられている。このため、対向電極58の対向電極基板53は、導電性の材料を用いて構成されている。導電性の材料としては、チタン、ニッケル、金等の金属材料やITO、FTO等の導電性酸化物等が挙げられる。
【0059】
本実施形態の光電変換素子モジュール101によれば、ケーブル9が、対向電極58の光電変換部の反対側の面で光電変換素子100dと電気的に接続されているため、封止材6が透明導電層2及び対向電極58と接触し光電変換部3を包囲する限りにおいては、対向電極58の大きさを自由に構成することができる。このため、対向電極58は、封止材6で包囲された領域の直上の領域のみに設けられる構成とすることができる。このため対向電極58の小型化ができ、従って光電変換素子モジュール101の小型化ができる。
【0060】
(第3の実施形態)
【0061】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る光電変換素子モジュールを示す斜視図である。なお、本実施形態の説明に当たり、第1の実施形態と同一または同等の構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0062】
図4において、光電変換素子モジュール102は、光電変換素子100bから光電変換素子100aに電流が流れるように、光電変換素子100a、100bが、可とう性を有する平坦状のケーブル94で電気的に接続されている。ケーブル94としては、例えばFPCが用いられる。
【0063】
本実施形態では、ケーブル94上の略中心に電子部品としてダイオード95が配置されている。図3において、ケーブル94の導体9a、9bは、波線で示されており、導体9aが、光電変換素子100aと接続され、導体9bが光電変換素子100bと接続されている。また、ダイオード95の幅は、ケーブル94の幅に比べ小さいため、導体9a、9bの幅は、ダイオード95側が狭く、光電変換素子100a、100b側が広くなっている。また、光電変換素子100bから光電変換素子100aに電流が流れるため、ダイオード95は、アノードが導体9bに接続され、カソードが導体9aに接続されている。
【0064】
ダイオード95を設けることにより、光電変換素子100aの電位が、光電変換素子100bの電位よりも高くなったとしても、電流が光電変換素子100aから光電変換素子100bに逆流することが防止できる。
【0065】
本実施形態の光電変換素子モジュール102によれば、電流等を制御する電子部品がケーブル上に配置されているため、電子部品を配置するために光電変換素子モジュール102の他にプリント配線板等を設ける必要がない。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態を第1、第2、第3の実施形態を用いて説明したが、本発明は、これに限らず種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、第1、第2の実施形態では、各光電変換素子を電気的に直列に接続した例について説明をしたが、第1、第2の実施形態について、光電変換素子を電気的に並列に接続した構成としても良い。
【0068】
図5は、光電変換素子同士が電気的に並列に接続された光電変換素子モジュールを示す断面図である。図5においては、本発明の第2の実施形態で説明した光電変換素子100c、100dが電気的に並列に接続されている。
【0069】
図5に示すように、本実施形態の光電変換素子モジュール103は、光電変換素子100cの端子8と光電変換素子100dの端子8とが、可とう性を有する平坦状のケーブル91で接続され、光電変換素子100cの端子7と光電変換素子100dの端子7とが、可とう性を有する平坦状のケーブル92で接続されている。
【0070】
光電変換素子モジュール103と負荷とを接続する場合は、例えば、光電変換素子100cの端子8と光電変換素子100dの端子7とを負荷に接続すればよい。
【0071】
また、各実施形態において、光電変換素子が、2つ接続された例を示したが、本発明は、これに限らず3つ以上の光電変換素子を接続しても良い。
【0072】
また、各実施形態において、光電変換素子モジュールが、色素増感型の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールを例として説明をしたが、本発明はこれに限らず、例えば、シリコン系の光電変換素子や、薄膜系の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールであっても良い。
【0073】
その他、基板1、透明導電層2、光電変換部3、対向電極5、ケーブル9等の各材料、構成等は、本発明の課題を解決する範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光電変換素子モジュールを示す断面図である。
【図2】図1の光電変換素子モジュールを部材上に設置する状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る光電変換素子モジュールを示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る光電変換素子モジュールを示す斜視図である。
【図5】光電変換素子同士が電気的に並列に接続された光電変換素子モジュールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
100,101,102,103・・・光電変換素子モジュール、100a,100b,100c,100d・・・光電変換素子、1・・・基板、2・・・透明導電層、3・・・光電変換部、31・・・半導体層、32・・・電解質部、5,58・・・対向電極、51,53・・・対向電極基板、52,54・・・対向電極層、6・・・封止材、7,8・・・端子、9,91,92,94・・・ケーブル、95・・・ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板と、
前記複数の基板のそれぞれに設けられた光電変換素子とを備え、
前記光電変換素子同士は、可とう性を有する平坦状のケーブルで電気的に接続されること
を特徴とする光電変換素子モジュール。
【請求項2】
前記光電変換素子は、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられ各電極と接触する光電変換部と、前記一対の電極と接触し前記光電変換部を包囲する封止材とを有し、
前記光電変換素子の少なくとも一つは、前記一対の電極の少なくとも一方における前記光電変換部側の面が、前記封止材と接触する領域の外側に非接触領域を有し、
前記ケーブルの一端は、前記光電変換素子の前記非接触領域と電気的に接続されること
を特徴とする請求項1に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項3】
前記光電変換素子は、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられ各電極と接触する光電変換部と、前記一対の電極と接触し前記光電変換部を包囲する封止材とを有し、
前記ケーブルの一端は、少なくとも前記光電変換素子の1つにおいて、前記一対の電極の一方における前記光電変換部と反対側の面で前記光電変換素子と電気的に接続されること
を特徴とする請求項1に記載の光電変換素子モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−21013(P2010−21013A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180366(P2008−180366)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギー技術開発 太陽光発電システム未来技術研究開発 高耐久性色素増感太陽電池モジュールの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】