説明

光電変換素子

【課題】優れた光電変換効率を有する光電変換素子を提供する。
【解決手段】基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子と電子受容体を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子であって、該電子受容体が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示されるフラーロピロリジン誘導体を含有する。なお、フラーレン部位はC60、C70、C76およびC84からなる群より選ばれるフラーレン類である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に関する。詳しくは、例えば、太陽電池素子や光センサー素子に使用される光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子を利用したデバイスの代表例として太陽電池素子が挙げられる。光電変換素子は、太陽電池素子において光電変換層と呼ばれ、光電変換層を根拠として大別すると、Si、GaAs 等の無機物を用いた無機太陽電池と、導電性高分子等の有機物を用いた有機太陽電池に分類される。
【0003】
無機太陽電池素子としては、シリコン太陽電池素子等が挙げられるが、その製造過程における環境負荷が大きく、無機であるが為に、多様性に欠ける事、高コスト等、多数の問題点を抱えている。それと比較し、有機太陽電池素子は低環境負荷、多様性、低コスト等、無機太陽電池素子の問題点を解決出来得る事から、注目を浴びている。
【0004】
有機太陽電池素子としては、有機半導体と金属薄膜間で生じるショットキー障壁を利用したショットキー障壁型太陽電池素子や、TiO上にRu等の色素を担持させ、これに電解質を満たした色素増感太陽電池素子、光電変換層として電子受容体(以降、電子輸送層と呼ぶ)と正孔受容体(以降、正孔輸送層と呼ぶ)を使用した有機薄膜太陽電池素子等が挙げられる。
【0005】
ショットキー障壁型太陽電池素子とは、有機半導体と金属薄膜を接合させる事で、半導体部分に、金属の仕事関数と半導体の持つ電子親和力の差が、障壁(ショットキー障壁)として現れ、これに光照射する事で、電化分離が発生する素子の事である。しかし、ショットキー障壁型太陽電池素子は光電変換効率が0.1%以下と非常に低く、実用的ではない。
【0006】
また、色素増感太陽電池素子とは、光照射により色素が励起状態となり、電子を放出する事で電化分離が発生する素子の事である。色素増感太陽電池素子は10%という高い光電変換効率を達成しているが、高効率を得る為にはRu色素やPt電極等の高価な材料が必要であり、また、液体電解質を用いている為にその長期安定性も優れているとは言えない。
【0007】
一方、有機薄膜太陽電池素子は、他の太陽電池素子に比べて、特に製造工程が容易、かつ低コストである事から注目されている。例えば、電子輸送層と正孔輸送層を兼ねた導電性高分子を積層したバイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子、電子輸送層と正孔輸送層を兼ねた導電性高分子の配合液を塗布したバルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子等が挙げられる。
【0008】
バイレイヤー型有機薄膜太陽電池素子は、電子輸送層と正孔輸送層を兼ねた導電性高分子とを接合させる事により、2層の界面でpn接合を形成させ、光電変換を起こすものである。例えば、電子輸送層としてペリレン誘導体を用い、正孔輸送層として銅フタロシアニンを用いたもの等が挙げられる(特許文献1)。しかし、キャリアの再結合を防ぎ、電流を観測する為には膜厚を約20nm 程度とする必要があり、この膜厚では光吸収が不充分で、光電変換効率は1%以下となる。
【0009】
一方、バルクへテロ接合型有機薄膜太陽電池素子では、電子輸送層と正孔輸送層を兼ねた導電性高分子が混在した電子正孔輸送層という単一層構造となっており、光電変換層中に於いて、分子レベルでのpn接合となる事で、光電変換に関与する体積の増加が可能である。例えば、ポリチオフェン系の共役高分子を用い、電子輸送層としてフラーレン誘導体[6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル(PCBM)を用いたもの等が挙げられる(特許文献2)。これにより光電変換効率は大幅に改善されたが、より光吸収量を高めるために更に膜厚を厚くすると、キャリアの再結合等により消滅する確率が高くなり未だその変換効率は不充分であった。
【0010】
また、光電変換素子の電子輸送層として、フラーロピロリジン誘導体が用いられているものとしては、例えば、N−アルキル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(特許文献3、4、5)、N−フェニル−2−アルキル[60]フラーロピロリジン(特許文献6、7)、N−アルキル−2−(チオフェニル、ピローリニル、フラニル等電解重合可能な置換基)[60]フラーロピロリジン(特許文献8、9)、N-ポリエチレンオキサイド−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(特許文献10)等が挙げられるが、いずれも十分な光電変換効率は有していない。
【0011】
上記の様に、有機薄膜太陽電池素子として、様々な検討が行われているが、PCBM以降、良好な特性を持つ電子輸送層が見受けられず、電子輸送能が不足な太陽電池では、高い光電変換効率を得る事が期待出来ない。つまり、高い電子輸送能を有する電子受容体を開発する事が、有機薄膜太陽電池素子の光電変換効率を向上させる為には不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−302925号公報
【特許文献2】特開2006−245073号公報
【特許文献3】特開2008−135479号公報
【特許文献4】特開2007−251086号公報
【特許文献5】特開2009−067708号公報
【特許文献6】特開2008−247943号公報
【特許文献7】特開2007−202029号公報
【特許文献8】特開2007−258079号公報
【特許文献9】特開2007−067115号公報
【特許文献10】特開2009−084264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は高い電子輸送能を有する電子受容体を有することにより光電変換効率が向上した光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該電子受容体(a)が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示されるフラーロピロリジン誘導体(F1)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)である。
【化1】

[Rは下記一般式(7)〜(14)に示される基からなる群より選ばれる基であって、Rは芳香環を1つ含んでなる炭素数6〜16の有機基である。また、フラーレン部位はC60、C70、C76およびC84からなる群より選ばれるフラーレン類である。]
【化2】

[式中、Rは炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R10は炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、Rは水素原子、及び炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R11及びR12は炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R13は水素原子、及び炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。mおよびaは1〜3の整数を示し、nおよびbは0〜3の整数を示す。]
また、本発明は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該電子受容体(a)が、下記一般式(3)または下記一般式(4)で示されるフラーロピロリジン誘導体(F2)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)である。
【化3】

[式中、Rは一般式(25)で示される基であって、R〜Rはそれらのうち少なくとも一つが一般式(15)〜(26)で示される基からなる群より選ばれる基であり、それ以外は水素原子である。また、フラーレン部位はC60、C70、C76及びC84からなる群より選ばれるフラーレン類である。]
【化4】

[式中、R14〜R18は炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R19〜R22は炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R23〜R36は水素原子、または炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び1価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。m’およびa’は1〜3の整数を示し、n’およびb’は0〜3の整数を示す。]
また、本発明は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該電子受容体(a)が、下記一般式(5)または下記一般式(6)で示されるフラーロピロリジン誘導体(F3)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)である。
【化5】

[Rは下記一般式(27)に示される基からなる群より選ばれる基であって、Rは芳香環を1つ含んでなる炭素数6〜16の有機基である。また、フラーレン部位はC60である。]
【化6】

[R37は炭素数2〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基、及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。]
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、電子受容体(電子輸送層)として、フラーロピロリジン誘導体を用いる事で、電子輸送性が向上し、高い光電変換効率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光電変換素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0017】
(T) 基板
(Y) 電極
(i−1) 正孔取出し層
(E) 光電変換層
(i−2) 電子取出し層
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光電変換素子は、基板上に形成された二つの電極の間に導電性高分子とフラーロピロリジン誘導体(F)を含有する電子受容体とを含有する光電変換層を設けた光電変換素子である。フラーロピロリジン誘導体(F)としては以下に説明する(F1)、(F2)及び(F3)である。
【0019】
フラーロピロリジン誘導体(F1)は上記一般式(1)または一般式(2)で示される。
【0020】
(F1)において、Rは上記の一般式(7)〜(14)で示される基であり、これらの中で一般式(7)〜(9)が好ましく、なかでも一般式(7)が特に好ましい。一般式(7)において、Rは炭素数1〜8の脂肪族基が好ましく、Rは炭素数1〜8の脂肪族基が好ましい。
【0021】
は芳香環を1つ含んでなる炭素数6〜16の有機基である。炭素数が17以上ではフラーレン誘導体の電子輸送能が低下するため、好ましくない。
【0022】
フェニルフラーロピロリジン誘導体(F1)中のフラーレン部位は、C60、C70、C76およびC84からなる群より選ばれるフラーレン類であるが、フロンティア軌道の観点から及び電子輸送能の観点からC60がより好ましい。
【0023】
フラーロピロリジン誘導体(F2)は上記一般式(3)および一般式(4)で示される。
【0024】
(F2)において、Rは上記の一般式(25)で示される基である。m’は1〜3の整数を示し、好ましくは1であり、n’は0〜3の整数を示し、好ましくは1である。m’が4以上であると電子輸送能が低下するため好ましくなく、またn’が4以上であっても電子輸送能が低下するため好ましくない。
〜Rはそれらのうち少なくとも一つが上記一般式(15)〜(26)で示される基からなる群より選ばれる基であり、このうち電子輸送能の観点から(24)が好ましい。それ以外は水素原子である。
フェニルフラーロピロリジン誘導体(F2)中のフラーレン部位は、C60、C70、C76およびC84からなる群より選ばれるフラーレン類であるが、フロンティア軌道の観点から及び電子輸送能の観点からC60がより好ましい。
【0025】
フラーロピロリジン誘導体(F3)は上記一般式(5)及び一般式(6)で示される。
【0026】
(F3)において、Rは上記一般式(27)で示される基である。一般式(27)において、R37は炭素数2〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基、及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であるが、このうち溶媒への溶解性の観点から炭素数4〜8の脂肪族炭化水素基が好ましい。
は芳香環を1つ含んでなる炭素数6〜16の有機基であるが、下記一般式(28)に示される基であることが好ましい。一般式(28)において、R〜Rは水素原子、上記一般式(15)〜(26)、一般式(27)または下記一般式(29)で示される基からなる群より選ばれる基が好ましい。
また、(F3)のフラーレン部位はC60である。
【0027】
【化7】

[式中、R〜Rは水素原子、上記一般式(15)〜(26)、一般式(27)または下記一般式(29)で示される基からなる群より選ばれる基である。]
【0028】
【化8】

[式中、R38は水素原子、または炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び1価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。]
【0029】
上記フラーロピロリジン誘導体(F)のうち、好ましく用いられるものは(F1)であり、そのうちRが一般式(28)で表されるフラーロピロリジン誘導体(F11)がより好ましい。
【0030】
フラーロピロリジン誘導体(F11)の置換基のうち、R1として好ましく用いられるものは、一般式(7)〜(9)で示される基からなる群から選ばれる基であり、R〜Rとして好ましくは水素原子、一般式(25)〜(26)、および一般式(29)より選ばれる基であり、R〜Rのうち少なくとも2つが水素原子であることが好ましい。
【0031】
フラーロピロリジン誘導体(F11)のフラーレン部位はフロンティア軌道の観点からC60がより好ましい。
【0032】
フラーロピロリジン誘導体(F)の製造方法
N−置換グリシン1等量に対して、置換ベンズアルデヒドを例えば2〜3等量、及びフラーレンを例えば1〜2等量を加えた溶液(たとえばトルエン溶液)を、例えば16〜35時間、還流することで、フェニルフラーロピロリジン誘導体(F)を得ることができる。
具体的な製造方法は、Journal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁等に記載の方法で行なうことができる。
【0033】
本発明の光電変換素子は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)である。1例として図1にその代表的な構造の概略断面図を示す。以下に各構成部位についてその詳細を説明する。
【0034】
(1)基板(T)
本発明における基板について説明する。基板は透明、不透明いずれでも良いが、基板面が受光体となる場合には透明基板が望ましい。この透明基板としては、光電変換素子外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性等に優れているものが望ましく、例えば、石英ガラスなどの剛直板、透明樹脂フィルム等のフレキシブル基板が挙げられる。更に、優れた加工性、低コスト、軽量化といった観点から、本発明においては、フレキシブル基板である事が望ましい。透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0035】
(2)電極(Y)
続いて、本発明における電極について説明する。
電極は基板(T)上に層状をなしていても、層状をなしていなくてもよいが、層状であることが好ましい。電極は必ずしも透光性を有する必要はないが、基板(T)上に層状をなしている場合は、少なくとも一方が透光性を有することが好ましい。電極は二つからなり、二つの層状を成していることが好ましい。電極は導電性を有するものであればいずれでも良く、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成される。光透過性電極としては、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープSnO(FTO)、SnO等の導電性透明材料からなる金属薄膜が好ましく、光遮光性電極としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属薄膜が好ましい。この電極の厚さは、特に限定されないが、例えば80〜100nm程度である。
【0036】
(3)光電変換層(E)
続いて、本発明に用いられる光電変換層について説明する。本発明における光電変換層は、導電性高分子(d)及び電子輸送層(電子受容体)(a)を含有しており、好ましくは正孔輸送層(正孔受容体)(s)を兼ねた導電性高分子(d)、及び電子輸送層(電子受容体)(a)を含有している。
上記、含有される導電性高分子と電子輸送層(電子受容体)の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは両者が混在した電子正孔輸送層という単一層構造、つまり、バルクヘテロ接合である。この構造をとることにより分子レベルでのpn接合が可能となり、このため光電変換に関与する体積の増加が可能となるという効果が得られる。
上述のような光電変換層(E)は、導電性高分子(d)と電子受容体(a)の混合溶液から溶媒を除去することで得ることができる。
【0037】
本発明においては、電子輸送層(電子受容体)として少なくともフラーロピロリジン誘導体(F)を含むものである。これを用いる事で、電子輸送性が向上し、高い光電変換効率が得られる。
この理由として、以下のことが推定される。
(i)本発明の電子受容体(電子輸送層)は、フロンティア軌道の観点から、導電性高分子とのLUMOギャップが小さく、電子の移動速度が十分大きい。
(ii)本発明の電子受容体(電子輸送層)は、導電性高分子との相溶性が良く、バルクへテロ接合の緻密さが十分である。
【0038】
上記で説明したように、導電性高分子(d)としては、正孔輸送層(正孔受容体)(s)として機能するものが好ましく、例えば、ポリチオフェン、ポリフルオレン等が挙げられる。一方、電子輸送層(電子受容体)に関してはフラーロピロリジン誘導体、もしくはフラーロピロリジン誘導体と任意の電子輸送層(電子受容体)との2種類以上の混合物等が好ましく、混合可能な電子輸送層として、フラーレン誘導体等が挙げられる。
【0039】
本発明において、上述した光電変換層に用いる導電性高分子(d)と電子輸送層(電子受容体)(a)の重量比率としては、良好な電子輸送能を有する電子正孔輸送層を形成すれば特に限定されるものでは無いが、例えば(d)/(a)=1/10〜1/0.4が好ましく、他の各構成材料種の組み合わせによって、最適な混合比に適宜変更する事が好ましい。
【0040】
電子受容体(a)が、さらにフラーロピロリジン誘導体(F)以外のフラーレン誘導体(G)を含有してもよい。フラーレン誘導体(G)としては、フラーレン、PCBM等が挙げられ、フラーロピロリジン誘導体(F)とフラーレン誘導体(G)の重量比率としては、良好な電子輸送能を有する電子正孔輸送層を形成すれば特に限定されるものでは無いが、例えば(F)/(G)=5/0〜4/1が好ましく、他の各構成材料種の組み合わせによって、最適な混合比に適宜変更する事が好ましい。
【0041】
本発明において、上述した光電変換層の膜厚は特に限定されるものでは無く、いずれでも良い。ただし、膜厚が薄過ぎると短絡し、厚過ぎると、膜抵抗が高くなる為、一般的な光電変換素子に用いられている膜厚が好ましく、例えば、20〜800nmである。
【0042】
本発明において、上述した光電変換層の形成法は、所定の膜厚に均一に形成する事が出来る方法であれば特に限定されるものでは無く、いずれでも良い。例えば、スピンコート法またはダイコート法等が挙げられる。
【0043】
本発明において、上述した光電変換層の数は、一層でも複数層でも良く、特に限定されるものでは無いが、例えば1〜5層が好ましい。
【0044】
(5)その他の構成
本発明に用いられるその他の構成について説明する。本発明の光電変換素子内部に、電荷の移動を促進する目的で、電荷取出し層(i)を形成しても良い。
構成する化合物、層数は特に限定されるものでは無いが、例えば、正孔取り出し層(i−1)としては、ポリ(スチレンスルホン酸塩)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン)(以下「PEDOT/PSS」と呼ぶ)、電子取り出し層(i−2)としては二酸化チタン(以下TiOと呼ぶ)等が挙げられる。
【0045】
本発明の光電変換素子(P)を太陽電池素子(S)として使用する場合は、基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する太陽電池素子(S)であり、それらの構成等は、上記光電変換素子(P)で説明したものが好ましい。
【0046】
本発明の太陽電池素子(S)をタンデム型太陽電池素子(S1)として使用する場合は、それらの構成等は、上記太陽電池素子(S)で説明したものが好ましい。また、その積層数は特に限定されるものではなく、例えば、1〜5層程度であり、各々の太陽電池素子(S)の接続様態は並列、直列いずれでも良いが、取り出す電流を大きくしたい場合には並列が好ましく、取り出す電圧を大きくしたい場合には直列が好ましい。
【0047】
本発明の光電変換素子(P)を光センサー素子(U)として使用する場合は基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光センサー素子(U)であり、それらの構成等は、上記光電変換素子(P)で説明したものが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、特に記載のないかぎり、「部」「wt」は「重量部」、%は重量%を意味する。
【0049】
(製造例1)
フラーロピロリジン誘導体として、N−(ヘキシル)−2−(パラ(ジメチルアミノ))フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、HPmaPFPと呼ぶ。一般式(30)で示される化合物)(F3−1)を合成した。
【0050】
【化9】

【0051】
HPmaPFP(一般式(30))の合成
グリシン1.50g(和光純薬(株)製)と水酸化ナトリウム1.21g、二炭酸ジ−t−ブチル(以降、BocOと呼ぶ)6.55g(和光純薬(株)製)をジオキサン/水=1/1(容積比)溶液60mlに溶解させた後、この溶液を25℃で24時間攪拌し、ジオキサンを減圧留去した。残渣に濃度1Mの硫酸水素カリウム水溶液を加え、pH=3とし、水層を酢酸エチルで抽出し、Boc化グリシン(以降、Boc−Glyと呼ぶ)3.32gを得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2006年,71号,2014−2020頁記載の方法に準拠した。
Boc−Gly 3.32gとBocO 8.53g、4−ジメチルアミノピリジン(以降、DMAPと呼ぶ)0.695g(和光純薬(株)製)をt−ブチルアルコール70mlに溶解させた後、この溶液を25℃で5時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、Boc化グリシンのt−ブチルエステル(以降、Boc−Gly−OBuと呼ぶ)4.21gを得た。この合成法はSynthesis,1994年,1063−1066頁記載の方法に準拠した。
【0052】
Boc−Gly−OBu 2.50gと、水素化ナトリウム0.389g(和光純薬(株)製)、1−ブロモヘキサン2.68g(和光純薬(株)製)をジメチルホルムアミド27mlに加えた後、この溶液を55℃で1時間半攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを加えた後に、水層を酢酸エチルで抽出し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、N−(ヘキシル)Boc化グリシン−t−ブチルエステル(以降、H−Boc−Gly−OBuと呼ぶ)2.22gを得た。この合成法はBioorganic & medicinal chemistry,2007年,15号,2092−2105頁記載の方法に準拠した。
【0053】
H−Boc−Gly−OBu 2.22gをトリフルオロ酢酸/クロロホルム=1/1(容積比)100mlに溶解させた後、この溶液を25℃で20時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、N−(ヘキシル)グリシン−トリフルオロ酢酸塩(以降、H−Gly・TFAと呼ぶ)1.90gを得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,1990年,55号,5017−5025頁記載の方法に準拠した。
H−Gly・TFA 153mgとトリエチルアミン64mg(和光純薬(株)製)、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド209mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]500mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに溶解させた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体HPmaPFPを102mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0054】
(製造例2)
フラーロピロリジン誘導体として、N−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)−2−(パラN−アセトアミド)フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、MeeAaPFPと呼ぶ。一般式(31)で示される化合物)(F2−1)を合成した。
【0055】
【化10】

【0056】
MeeAaPFP(一般式(31))の合成
製造例1における、Boc−Gly−OBuの合成までは同様である。
Boc−Gly−OBu 2.50gと、水素化ナトリウム0.389g(和光純薬(株)製)、1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン2.97g(シグマアルドリッチジャパン(株)製)をジメチルホルムアミド27mlに溶解させた後、この溶液を55℃で1時間半攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを加えた後に、水層を酢酸エチルで抽出し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、N−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)Boc化グリシン−t−ブチルエステル(以降、Mee−Boc−Gly−OBuと呼ぶ)2.81gを得た。この合成法はBioorganic & medicinal chemistry,2007年,15号,2092−2105頁記載の方法に準拠した。
【0057】
Mee−Boc−Gly−OBu 2.81gをトリフルオロ酢酸/クロロホルム=1/1(容積比)100mlに溶解させた後、この溶液を25℃で20時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、N−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)グリシン−トリフルオロ酢酸塩(以降、Mee−Gly・TFAと呼ぶ)2.02gを得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,1990年,55号,5017−5025頁記載の方法に準拠した。
Mee−Gly・TFA 163mgとトリエチルアミン64mg(和光純薬(株)製)、4−(アセトアミド)ベンズアルデヒド229mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]500mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに溶解させた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体MeeAaPFPを130mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0058】
(製造例3)
フラーロピロリジン誘導体として、N−ベンジル−2−(パラメトキシカルボニル)フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、BPmcPFPと呼ぶ。一般式(32)で示される化合物)(F3−2)を合成した。
【0059】
【化11】

【0060】
BPmcPFP(一般式(32))の合成
製造例1における、Boc−Gly−OBuの合成までは同様である。
Boc−Gly−OBu 2.50gと、水素化ナトリウム0.389g(和光純薬(株)製)、ベンジルブロミド2.78g(和光純薬(株)製)をジメチルホルムアミド27mlに溶解させた後、この溶液を55℃で1時間半攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを加えた後に、水層を酢酸エチルで抽出し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル)で精製し、N−ベンジルBoc化グリシン−t−ブチルエステル(以降、B−Boc−Gly−OBuと呼ぶ)2.26gを得た。この合成法はBioorganic & medicinal chemistry,2007年,15号,2092−2105頁記載の方法に準拠した。
【0061】
B−Boc−Gly−OBu 2.26gをトリフルオロ酢酸/クロロホルム=1/1(容積比)100mlに溶解させた後、この溶液を25℃で20時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、N−ベンジルグリシン−トリフルオロ酢酸塩(以降、B−Gly・TFAと呼ぶ)1.94gを得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,1990年,55号,5017−5025頁記載の方法に準拠した。
B−Gly・TFA 156mgとトリエチルアミン64mg(和光純薬(株)製)、4−ホルミル安息香酸メチル230mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]500mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに溶解させた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体BPmcPFPを101mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0062】
(比較製造例4)
フラーロピロリジン誘導体として、N−メチル−2−(パラメチル)フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、MPmPFPと呼ぶ。一般式(33)で示される化合物)を合成した。
【0063】
【化12】

【0064】
MPmPFP(一般式(33))の合成
N−メチル−Gly 185mg(和光純薬(株)製)と4−メチルベンズアルデヒド169mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]500mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに加えた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体MPmPFPを95mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0065】
(製造例5)
フラーロピロリジン誘導体として、N−(n−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニロキシカルボニル)メチル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、FnNcmPFPと呼ぶ。一般式(34)で示される化合物)(F1−1)を合成した。
【0066】
【化13】

【0067】
FnNcmPFP(一般式(34))の合成
グリシン2.50g(和光純薬(株)製)とp−トルエンスルホン酸・1水和物7.60g(和光純薬(株)製)を2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロ−1−ノニノール14.99g(和光純薬(株)製)とトルエン80mlの混合溶液に溶解させた後、この溶液を130℃に加熱しつつ、Dean−Stark装置を用いる共沸法により、生成水を除去しながら14時間攪拌した後、トルエンを減圧留去し、グリシン−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロ−1−ノニルエステル p−トルエンスルホン酸塩(以降、Gly−OFNonyl・TSAと呼ぶ)23.70gを得た。この合成法はTetrahedron,1926年,71号,79−80頁記載の方法に準拠した。
Gly−OFNonyl・TSA 16.03gとN−エチルジイソプロピルアミン7.67g(和光純薬(株)製)、ブロモ酢酸ベンジル4.35g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン28mlに溶解させた後、この溶液を70℃で18時間攪拌した。酢酸エチル71mlを加え、有機層を1M硫酸水素カリウム水溶液24mlで3回、飽和食塩水で2回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムを加え、25℃で3時間放置した。無水硫酸マグネシウムを濾去し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、N−アスパラギン酸 α2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロ−1−ノニルエステル βベンジルエステル(以降、Nasp(αOFNonyl)−βOBzlと呼ぶ)6.22gを得た。この合成法はJournal of peptide science,2004年,10号,578−587頁記載の方法に準拠した。
【0068】
Nasp(αOFNonyl)−βOBzl 3.00gとパラジウム−活性炭素(Pd10%)(以降、Pd/Cと呼ぶ)2.29g(和光純薬(株)製)をメタノール33mlに加えた後、この溶液を水素雰囲気下、25℃で3時間半攪拌した。溶媒を減圧留去し、N−アスパラギン酸 α2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロ−1−ノニルエステル(以降、Nasp(αOFNonyl)−OHと呼ぶ)とPd/Cの混合物4.88gを得た。この合成法はJournal of peptide science,2004年,10号,578−587頁記載の方法に準拠した。
【0069】
Nasp(αOFNonyl)−OHと呼ぶ)とPd/Cの混合物620mgとベンズアルデヒド92mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]501mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに溶解させた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:ヘキサン=1:7)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体FnNcmPFPを180mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0070】
(製造例6)
フラーロピロリジン誘導体として、N−(n−ブチロキシカルボニル)メチル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、nBcmPFPと呼ぶ。一般式(35)で示される化合物)(F1−2)、及びその二付加体(以降、Bis−nBcmPFPと呼ぶ。一般式(36)で示される化合物)(F1−3)を合成した。
【0071】
【化14】

【0072】
【化15】

【0073】
nBcmPFP(一般式(35))及びBis−nBcmPFP(一般式(36))の合成
グリシン2.50g(和光純薬(株)製)とp−トルエンスルホン酸・1水和物7.60g(和光純薬(株)製)をn−ブチルアルコール(和光純薬(株)製)46mlとトルエン80mlの混合溶液に溶解させた後、この溶液を130℃に加熱しつつ、Dean−Stark装置を用いる共沸法により、生成水を除去しながら14時間攪拌した後、トルエン、n−ブチルアルコールを減圧留去した。残渣にヘキサンを加え、濾取する事で、グリシン−n−ブチルエステル p−トルエンスルホン酸塩(以降、Gly−OBu・TSAと呼ぶ)7.16gを得た。この合成法はTetrahedron,1926年,71号,79−80頁記載の方法に準拠した。
Gly−OBu・TSA 7.16gとN−エチルジイソプロピルアミン7.67g(和光純薬(株)製)、ブロモ酢酸ベンジル4.35g(和光純薬(株)製)をテトラヒドロフラン28mlに溶解させた後、この溶液を70℃で18時間攪拌した。酢酸エチル71mlを加え、有機層を1M硫酸水素カリウム水溶液24mlで3回、飽和食塩水で2回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムを加え、25℃で3時間放置した。無水硫酸マグネシウムを濾去し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、N−アスパラギン酸 αn−ブチルエステル βベンジルエステル(以降、Nasp(αBu)−βOBzlと呼ぶ)4.20gを得た。この合成法はJournal of peptide science,2004年,10号,578−587頁記載の方法に準拠した。
【0074】
Nasp(αBu)−βOBzl 3.00gとパラジウム−活性炭素(Pd10%)(以降、Pd/Cと呼ぶ)2.29g(和光純薬(株)製)をメタノール33mlに加えた後、この溶液を水素雰囲気下、25℃で3時間半攪拌した。セライト(No.545)(和光純薬(株)製)を用いてPd/Cを濾去した後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄し、N−アスパラギン酸 αn−ブチルエステル(以降、Nasp(αBu)−OHと呼ぶ)2.03gを得た。この合成法はJournal of peptide science,2004年,10号,578−587頁記載の方法に準拠した。
【0075】
Nasp(αBu)−OH 110mgとベンズアルデヒド92mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]501mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに溶解させた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:ヘキサン=1:7)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体nBcmPFPを120mg、及びその二付加体Bis−nBcmPFPを10mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0076】
(製造例7)
McmPFP(一般式(37))の合成
フラーロピロリジン誘導体として、N−(n−ブチロキシカルボニル)メチル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、McmPFPと呼ぶ。一般式(37)で示される化合物)(F1−4)を合成した。
【0077】
【化16】

【0078】
グリシン2.5gをメタノール中50mlに分散させ、5℃に冷却した。そこへチオニルクロライド10gを20分かけて滴下し、滴下終了後5hr、還流条件下加熱した。減圧条件下、未反応物などを留去し、白色固体4.5gを得た。この白色固体を全量、反応容器にしこみ、THF30ml、DMF30ml、ジイソプロピルメチルアミン7.7gおよびブロモ酢酸ベンジル4.5gを加え、還流条件下、72hr反応を行った。酢酸エチル71mlを加え、有機層を1M硫酸水素カリウム水溶液24mlで3回、飽和食塩水で2回洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムを加え、25℃で3時間放置した。無水硫酸マグネシウムを濾去し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、N−アスパラギン酸 αn−メチルエステル βベンジルエステル(以降、Nasp(αMe)−βOBzlと呼ぶ)4.20gを得た。この合成法はJournal of peptide science,2004年,10号,578−587頁記載の方法に準拠した。
【0079】
Nasp(αBu)−βOBzl 2.68gとパラジウム−活性炭素(Pd10%)(以降、Pd/Cと呼ぶ)2.29g(和光純薬(株)製)をメタノール33mlに加えた後、この溶液を水素雰囲気下、25℃で3時間半攪拌した。セライト(No.545)(和光純薬(株)製)を用いてPd/Cを濾去した後、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄し、N−アスパラギン酸 αn−メチルエステル(以降、Nasp(αMe)−OHと呼ぶ)2.03gを得た。この合成法はJournal of peptide science,2004年,10号,578−587頁記載の方法に準拠した。
【0080】
Nasp(αMe)−OH 98mgとベンズアルデヒド92mg(和光純薬(株)製)、フラーレン[C60]501mg(和光純薬(株)製)をトルエン200mlに溶解させた後、この溶液を120℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:ヘキサン=1:7)で精製し、フェニルフラーロピロリジン誘導体McmPFPを105mg得た。この合成法はJournal of Organic Chemistry,2001年,66号,5033−5041頁、または、Journal of the American Chemical Society,2003年,125号,15093−15100頁記載の方法に準拠した。
【0081】
(製造例8)
EcmPFP(一般式(38))の合成
製造例7において、メタノール50mlのかわりにエタノール50mlを用いた以外は製造例8と同様に行い、フェニルフラーロピロリジン誘導体N−(n−エチロキシカルボニル)メチル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、EcmPFPと呼ぶ。一般式(38)で示される化合物)(F1−5)を97mg得た。
【0082】
【化17】

【0083】
(製造例9)
nPcmPFP(一般式(39))の合成
製造例6において、n−ブチルアルコール46mlのかわりにn−プロピルアルコール46mlを用いた以外は製造例7と同様に行い、フェニルフラーロピロリジン誘導体N−(n−プロピロキシカルボニル)メチル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、nPcmPFPと呼ぶ。一般式(39)で示される化合物)(F1−6)を101mg得た。
【0084】
【化18】

【0085】
(製造例10)
nOcmPFP(一般式(40))の合成
製造例6において、n−ブチルアルコール46mlのかわりにn−オクチルアルコール46mlを用いた以外は製造例7と同様に行い、フェニルフラーロピロリジン誘導体N−(n−オクチロキシカルボニル)メチル−2−フェニル[60]フラーロピロリジン(以降、nOcmPFPと呼ぶ。一般式(40)で示される化合物)(F1−7)を95mg得た。
【0086】
【化19】

【0087】
(実施例1)
(透明電極(Y)の作成)
透明基板及び透明導電膜として、大きさが25mm角でシート抵抗が10Ω/cm−2のITO膜付きポリエチレンテレフタレート(以降、PETと呼ぶ)フィルムを用いた。そして、そのITO膜上に所定形状のマスクを形成した後、これを1N塩酸に1時間浸漬する事でITO膜のパターニングを行い、透明電極を形成した。
【0088】
[正孔取出し層(i−1)の作成]
上記の様にしてITO膜からなる透明電極が形成されたPETフィルム上に1.3重量%のポリ(スチレンスルホン酸塩)/ポリ(2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]−1,4−ダイオキシン)(以降、「PEDOT/PSS」と呼ぶ)(バイエル社製、品名BaytronP)をスピンコートし、120℃で30分間乾燥する事で厚さが約100nmのPEDOT/PSS膜を形成し、これを正孔取出し層(i−1)とした。
【0089】
(光電変換層(E)の作成)
更に、PEDOT/PSS膜よりも少し大きい範囲にポリ−3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル(以降、P3HTと呼ぶ)(和光純薬株式会社製、品名044746)/HPmaPFP[製造例1で合成したフラーロピロリジン誘導体(F3−1)](重量比は1/4)の混合溶液(5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:HPmaPFP=15mg:60mgを溶解させたもの。)を前記正孔取出し層(i−1)上にスピンコートした後、窒素気流下で1時間25℃で乾燥し、さらに25℃で3時間減圧乾燥を行い、光電変換層(E)を形成した。
【0090】
(対抗電極の作成)
最後に、対抗電極として、厚さ125nmのAl膜を前記光電変換層上に真空蒸着により形成した。以上の様にして光電変換素子(P−1)を製造した。
【0091】
(実施例2)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/MeeAaPFP[製造例2で合成したフラーロピロリジン誘導体(F2−1)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−2)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:MeeAaPFP=15mg:60mgを含むものを用いた。
【0092】
(実施例3)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/BPmcPFP[製造例3で合成したフラーロピロリジン誘導体(F3−2)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−3)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:BPmcPFP=15mg:60mgを含むものを用いた。
【0093】
(実施例4)
複数のフラーレン誘導体を電子受容体として含有する、光電変換素子(P−4)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/HPmaPFP[製造例1で合成したフラーロピロリジン誘導体(F3−1)]/PCBM(フロンティアカーボン(株)製)混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−4)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:HPmaPFP:PCBM=15mg:48mg:12mgを含むものを用いた。
【0094】
(実施例5)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/FnNcmPFP[製造例5で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−1)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−5)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:FnNcmPFP=15mg:60mgを含むものを用いた。
【0095】
(実施例6)
複数のフラーレン誘導体を電子受容体として含有する、光電変換素子(P−6)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/FnNcmPFP[製造例5で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−1)]/nBcmPFP[製造例6で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−2)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−6)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:FnNcmPFP:nBcmPFP=15mg:48mg:12mgを含むものを用いた。
【0096】
(実施例7)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/Bis−nBcmPFP[製造例6で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−3)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P−7)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:FnNcmPFP=15mg:60mgを含むものを用いた。
【0097】
(実施例8)
(正孔取出し層(i−1)の作成)
実施例1において、乾燥条件「120℃、30分」を「200℃、10分」に変更した以外は、実施例1と同様にして正孔取り出し層(i−1)を形成した。
【0098】
(光電変換層(E)の作成)
実施例1において、P3HT/HPmaPFP(重量比1/4)の混合溶液を、P3HT/nBcmPFP[製造例6で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−2)](重量比1/0.475)の混合溶液(5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:nBcmPFP=75mg:35.625mgを溶解させたもの)に置き換え、乾燥条件「窒素気流下で1時間25℃で乾燥し、さらに25℃で3時間減圧」を、「窒素気流下で9分140℃で乾燥」に変更した以外は、実施例1と同様にして光電変換層(E)を形成した。
【0099】
(電子取出し層(i−2)の作成)
更に光電変換層(E)の上に、電子取り出し層(i−2)としてチタンテトライソプロポキシド(和光純薬(株)製)10μLをエタノール3mLに溶解させたものをスピンコートした後、室内に30分放置する事で加水分解を起こさせ、二酸化チタン(TiO)層を形成した。
【0100】
(対抗電極の作成)
電子取出し層(i−2)の上に、実施例1と同様にして対抗電極を作製し、光電変換素子(P−8)を形成した。
【0101】
(実施例9)
実施例8における、P3HT/nBcmPFP混合溶液を、P3HT/McmPFP[製造例7で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−4)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例8と同様にして光電変換素子(P−9)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:McmPFP=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0102】
(実施例10)
実施例8における、P3HT/nBcmPFP混合溶液を、P3HT/EcmPFP[製造例8で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−5)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例8と同様にして光電変換素子(P−10)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:EcmPFP=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0103】
(実施例11)
実施例8における、P3HT/nBcmPFP混合溶液を、P3HT/nPcmPFP[製造例9で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−6)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例8と同様にして光電変換素子(P−11)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:EcmPFP=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0104】
(実施例12)
実施例8における、P3HT/nBcmPFP混合溶液を、P3HT/nOcmPFP[製造例10で合成したフラーロピロリジン誘導体(F1−7)]混合溶液に置き換えた以外は、実施例8と同様にして光電変換素子(P−12)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:nOcmPFP=75mg:37.5mgを含むものを用いた。
【0105】
(比較例1)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/PCBM混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P’−1)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:PCBM=15mg:60mgを含むものを用いた。
【0106】
(比較例2)
実施例1における、P3HT/HPmaPFP混合溶液を、P3HT/MPmPFP(製造例4で合成したフラーロピロリジン誘導体)混合溶液に置き換えた以外は、実施例1と同様にして光電変換素子(P’−2)を形成した。具体的な混合溶液としては、5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:MPmPFP=15mg:60mgを含むものを用いた。
【0107】
(比較例3)
実施例8における、P3HT/nBcmPFP混合溶液を、P3HT/PCBM(重量比1/0.5)の混合溶液(5.0mLのクロロベンゼン中にP3HT:PCBM=75mg:37.5mgを溶解させたもの)に置き換え、乾燥条件「窒素気流下で9分140℃で乾燥」を、「窒素気流下で6分150℃で乾燥」に変更した以外は、実施例9と同様にして光電変換素子(P’−3)を形成した。
【0108】
実施例1〜7、比較例1〜2の光電変換素子について、以下の方法で評価し、測定結果を表1に示した。
(光電変換素子の評価方法)
ソーラーシュミレーター(関西科学機械(株)製:XES−502S)の擬似光(空気通過量AM1.5G、入射エネルギー100mW/cm)を光電変換素子に照射し、光電変換素子特性を測定した。照射条件:温度25℃
【0109】
KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用して、I(電流)−V(電圧)曲線を測定し、Isc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、IMAX(最大出力点における電流)、VMAX(最大出力点における電圧)を得た。
一般に光電変換素子の光電変換効率は次式で示される。
光電変換効率η=Jsc(短絡電流密度)×Voc(開放電圧)×ff(形状因子)/入射エネルギー
ここで、Jsc(短絡電流密度)、およびff(形状因子)は次式で求めた。
形状因子ff=(IMAX×VMAX)/(Isc×Voc
短絡電流密度Jsc=Isc/S(有効受光面積)
ただし、S=2.5cm×2.5cm=6.25cm
【0110】
<トルエンへの溶解度>
トルエン100gにフラーロピロリジン誘導体(F)を25℃で加えて飽和させ、飽和溶液の質量x(単位:g)を測定した。トルエンへの溶解度S(単位:wt%)は次式で示される。
トルエンへの溶解度S=100 × (x−100)/x (%)
【0111】
【表1】

【0112】
実施例8〜12、比較例3は、実施例1〜7、比較例1〜2に対して、電子取出し層(i−2)が追加された、異なる形式の光電変換素子を作成して評価を行った。このタイプの光電変換素子の評価結果を表2に示した。
【0113】
【表2】

【0114】
前記評価結果より、本発明における、電子受容体としてのフラーロピロリジン誘導体は、従来の電子受容体と比較し、優れた光電変換効率を示すことが立証された。さらに、本発明のフラーロピロリジン誘導体は、有機溶媒溶解性に優れており、素子製造工程において、操作の簡便さ、かつ低コストも実現される。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、太陽電池やカラーセンサー等としての利用に限らず、光電変換素子を備える電子機器、電子部品に広く適用する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該電子受容体(a)が、下記一般式(1)または下記一般式(2)で示されるフラーロピロリジン誘導体(F1)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)。
【化1】

[Rは下記一般式(7)〜(14)に示される基からなる群より選ばれる基であって、Rは芳香環を1つ含んでなる炭素数6〜16の有機基である。また、フラーレン部位はC60、C70、C76およびC84からなる群より選ばれるフラーレン類である。]
【化2】

[式中、Rは炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R10は炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、Rは水素原子、及び炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R11及びR12は炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R13は水素原子、及び炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。mおよびaは1〜3の整数を示し、nおよびbは0〜3の整数を示す。]
【請求項2】
基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該電子受容体(a)が、下記一般式(3)または下記一般式(4)で示されるフラーロピロリジン誘導体(F2)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)。
【化3】

[式中、Rは一般式(25)で示される基であって、R〜Rはそれらのうち少なくとも一つが一般式(15)〜(26)で示される基からなる群より選ばれる基であり、それ以外は水素原子である。また、フラーレン部位はC60、C70、C76及びC84からなる群より選ばれるフラーレン類である。]
【化4】

[式中、R14〜R18は炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の2価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R19〜R22は炭素数2〜4の直鎖もしくは分枝鎖の2価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基であり、R23〜R36は水素原子、または炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び1価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。m’およびa’は1〜3の整数を示し、n’およびb’は0〜3の整数を示す。]
【請求項3】
基板(T)上に形成された2つの電極(Y)間に、導電性高分子(d)と電子受容体(a)を含有する光電変換層(E)を有する光電変換素子(P)であって、該電子受容体(a)が、下記一般式(5)または下記一般式(6)で示されるフラーロピロリジン誘導体(F3)を含有することを特徴とする、光電変換素子(P)。
【化5】

[Rは下記一般式(27)に示される基からなる群より選ばれる基であって、Rは芳香環を1つ含んでなる炭素数6〜16の有機基である。また、フラーレン部位はC60である。]
【化6】

[R37は炭素数2〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基、及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び炭素数6〜16の1価の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。]
【請求項4】
基板上に形成された少なくとも一方が透明である2つの電極層間に光電変換層(E)を有する請求項1〜3に記載の光電変換素子(P)。
【請求項5】
光電変換層(E)が、導電性高分子(d)と電子受容体(a)の混合溶液から溶媒を除去することでバルクへテロ接合を形成してなる請求項1〜4に記載の光電変換素子(P)。
【請求項6】
さらに導電性高分子(d)が正孔受容体(s)として機能する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。
【請求項7】
一般式(1)または一般式(2)においてRが一般式(28)で表される請求項1又は4〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。
【化7】

[式中、R〜Rは水素原子、上記一般式(15)〜(26)、一般式(27)または下記一般式(29)で示される基からなる群より選ばれる基である。]
【化8】

[式中、R38は水素原子、または炭素数1〜16の直鎖もしくは分枝鎖の1価の脂肪族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された脂肪族(セミ)パーフルオロ炭化水素基、及び1価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基及びその一部または全部の水素原子がフッ素原子で置換された芳香族(セミ)パーフルオロ炭化水素基からなる群より選ばれる基である。]
【請求項8】
一般式(1)または一般式(2)において、Rは一般式(7)〜(9)で示される基からなる群より選ばれる基であり、また、Rは一般式(28)で表される基であり、そのうちR〜Rは水素原子、一般式(25)〜(26)、および一般式(29)で示される基からなる群より選ばれる基であって、R〜Rのうち少なくとも2つは水素原子であり、さらに、フラーレン部位はC60である、請求項7に記載の光電変換素子(P)。
【請求項9】
一般式(1)または一般式(2)において、Rは一般式(7)であり、一般式(28)のR〜Rは水素原子であり、フラーレン部位はC60である、請求項7又は8に記載の光電変換素子(P)。
【請求項10】
一般式(1)または一般式(2)において、Rは一般式(7)中、Rがメチレン基、Rがn−ブチル基、つまり酢酸ブチルエステル基であり、一般式(28)のR〜Rは水素原子であり、フラーレン部位はC60である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。
【請求項11】
電子受容体(A)が、さらにフラーロピロリジン誘導体(F)以外のフラーレン誘導体を含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。
【請求項12】
太陽電池素子(S)である請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。
【請求項13】
太陽電池素子(S)がタンデム型太陽電池素子(S1)である請求項12に記載の光電変換素子(P)。
【請求項14】
光電変換素子(P)が、光センサー素子(U)である請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子(P)。


【図1】
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【公開番号】特開2010−239104(P2010−239104A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178521(P2009−178521)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】