説明

光電変換装置及び撮像システム

【課題】光電変換部から電荷電圧変換部への電荷の転送効率を向上するとともに、転送電極の下における素子分離部の界面準位に起因した暗電流によるノイズを低減する。
【解決手段】アクティブ領域を規定する素子分離部EIと、第1導電型の電荷蓄積領域14を含む光電変換部51と、電荷電圧変換部53と、光電変換部51で発生した電荷を電荷電圧変換部53へ転送するための転送電極2と、光電変換部51と電荷電圧変換部53との間の第1導電型の第1の半導体領域12と、第1の半導体領域12と素子分離部EIとの間の第1導電型と反対導電型である第2導電型の第2の半導体領域11とを備え、第2の半導体領域11は、転送電極2の下におけるチャネル幅方向に沿って延びた第4の部分11cと、転送電極2の下におけるチャネル長方向に沿って延びた第3の部分11dとを含み、第4の部分11cの幅は、第3の部分11dの幅より広い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MOS型の光電変換装置は、低消費電力、高速出力の利点を持つため急速にその需要が高まっている。光電変換装置では、フォトダイオード(PD)に蓄積された電荷(信号)をフローティングディフュージョン(FD)へ転送する際における転送効率を向上したいという要求がある。それに対して、特許文献1には、固体撮像素子の撮像画素において、PD110からFD120へ電荷を転送するための転送ゲート130の下にPD110の電荷蓄積層112と同層の転送容易化領域140を設けることが記載されている(特許文献1の図1参照)。転送容易化領域140を形成する方法は、特許文献1の図4(A)〜(C)に示されている。特許文献1の図4(A)に示す工程では、LOCOS層210をマスクとして画素領域全体にn型のイオン及びp型のイオンを順次に注入する。これにより、画素領域全体に、転送容易化領域140とその上の暗電流抑制層170とを順次に形成する。特許文献1の図4(B)に示す工程では、ゲート電極膜131を形成した後、ゲート電極膜131とレジスト膜230とをマスクとしてn型のイオン及びp型のイオンを順次に注入する。これにより、PD110の電荷蓄積領域112及び光電変換領域111を順次に形成するとともに、暗電流抑制層170及び転送容易化領域140のそれぞれのPD110側の境界が自己整合的に形成される。特許文献1の図4(C)に示す工程では、ゲート電極膜131とレジスト膜240とをマスクとしてn型のイオンを注入する。これにより、FD120を形成するとともに、暗電流抑制層170及び転送容易化領域140のそれぞれのFD120側の境界が自己整合的に形成される。すなわち、転送ゲートの下層領域に信号電荷の転送容易化領域が自己整合的に形成されている。これにより、特許文献1によれば、転送容易化領域と転送ゲートとのオーバーラップを十分にとることができるので、転送ゲート部における転送特性を有効に向上できるとされている。一方、光電変換装置では、暗電流によるノイズを低減したいという要求がある。それに対して、特許文献2には、P型の不純物を含む暗電流低減領域701,702を素子分離絶縁膜104とフォトダイオード201(n型半導体領域103、p+層801)との間に設けることが記載されている(特許文献2の図7及び図8参照)。これにより、特許文献2によれば、配線層105の直下に発生した少数キャリア(電子)がフォトダイオード201へ拡散してくる量を減らすことができるので、フォトダイオード201の暗電流を低減できるとされている。また、特許文献3には、固体撮像素子において、転送スイッチM1のゲート電極層8aの下の半導体基板2にてp+不純物領域1aが素子分離絶縁層3の端部Eから転送スイッチM1の形成領域側へ延びた構造が記載されている(特許文献3の図1参照)。p+不純物領域1aを形成する方法は、特許文献3の図7〜図9に示されている。特許文献3の図7に示す工程では、レジストパターン13をマスクとしてシリコン窒化膜12をパターニングする。特許文献3の図8に示す工程では、レジストパターン13を残した状態で、ボロン(B)が斜めイオン注入される。これにより、パターニングされたシリコン窒化膜12の下側領域までボロンが注入される。特許文献3の図9に示す工程では、レジストパターン13が除去されて、熱酸化処理が施される。これにより、素子分離絶縁層3とp+不純物領域1aとが形成される。これにより、特許文献3によれば、pn接合部から延びる空乏層50がp+不純物領域1aにより素子分離絶縁層3の端部Eに達することが抑制される(特許文献3の図10参照)ので、転送トランジスタ部における暗電流の発生を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−115580号公報
【特許文献2】特開2003−258229号公報
【特許文献3】特開2000−353801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、転送容易化領域140がLOCOS層210をマスクとして形成されているので、転送ゲート130のチャネル幅方向において転送容易化領域140がLOCOS層210に接していると考えられる。転送容易化領域140がLOCOS層210に接していると、PD110の電荷蓄積層112からFD120へ電荷を転送する際に、空乏層端が転送容易化領域140とLOCOS層210との界面に達する。空乏層端がLOCOS層210の界面に達すると、この界面における界面準位に起因した大きな暗電流が発生する。これにより、PD(光電変換部)110からFD部(電荷電圧変換部)120へ転送される電荷に応じた信号には、LOCOS層(素子分離部)210の界面における界面準位に起因した暗電流によるノイズが混入する。一方、特許文献2には、転送MOSトランジスタのゲートの下にどのような半導体領域を設けるのかについて記載がない。特許文献3には、PD領域からFD領域への電荷の転送効率をどのように向上するのかに関して記載がない。本発明の目的は、光電変換装置において、光電変換部から電荷電圧変換部への電荷の転送効率を向上するとともに、転送電極の下における素子分離部の界面における界面準位に起因した暗電流によるノイズを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの側面に係る光電変換装置は、半導体基板におけるアクティブ領域を規定する素子分離部と、前記アクティブ領域に配され、第1導電型の不純物を含む電荷蓄積領域を有した光電変換部と、前記アクティブ領域に配された電荷電圧変換部と、前記アクティブ領域の上に配され、前記光電変換部で発生した電荷を前記電荷電圧変換部へ転送するためのチャネルを形成する転送電極と、前記アクティブ領域における前記光電変換部と前記電荷電圧変換部との間に配され、前記第1導電型の不純物を前記電荷蓄積領域より低い濃度で含む、前記転送電極に覆われた第1の半導体領域と、前記アクティブ領域内を前記素子分離部の少なくとも前記第1の半導体領域に対向する界面に沿って延びた、前記第1導電型と反対導電型である第2導電型の第2の半導体領域とを備え、前記第1の半導体領域は、第1の部分と、前記第1の部分に対して前記光電変換部の側に隣接し、前記転送電極のチャネル幅方向における幅が前記第1の部分より広い第2の部分とを含み、前記第2の半導体領域は、前記第1の部分と前記素子分離部との間を前記転送電極のチャネル長方向に延びた第3の部分と、前記第2の部分と前記素子分離部との間を前記転送電極のチャネル幅方向に延びた第4の部分とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光電変換装置において、光電変換部から電荷電圧変換部への電荷の転送効率を向上できるとともに、転送電極の下における素子分離部の界面における界面準位に起因した暗電流によるノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る光電変換装置の構成を示す図。
【図2】実施形態における画素の回路構成を示す図。
【図3】実施形態における画素のレイアウト構成を示す図。
【図4】実施形態における画素のレイアウト構成を示す図。
【図5】実施形態における画素の断面構成と不純物プロファイルとを示す図。
【図6】実施形態に係る光電変換装置の製造方法を示す図。
【図7】全領域注入パターンを示す図。
【図8】実施形態の変形例における画素のレイアウト構成を示す図。
【図9】比較例における画素のレイアウト構成を示す図。
【図10】比較例における画素の不純物プロファイルを示す図。
【図11】実施形態に係る光電変換装置を適用した撮像システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、第1の領域の「上に」第2の領域を配するとは、第1の領域のすぐ上に第2の領域が配される場合のほか、第1の領域の上に他の領域を介して第2の領域が配される場合も含むものとする。同様に、第1の領域の「下に」第2の領域を配するとは、第1の領域のすぐ下に第2の領域が配される場合のほか、第1の領域の下に他の領域を介して第2の領域が配される場合も含むものとする。
【0009】
本発明の実施形態に係る光電変換装置100の概略構成を、図1を用いて説明する。光電変換装置100は、画素配列PA、垂直走査回路10、保持回路20、水平走査回路30、及び出力アンプ40を備える。画素配列PAでは、複数の画素P(図2参照)が1次元状又は2次元状に配列されている。各画素Pは、図2に示すように、光電変換部51、転送部52、電荷電圧変換部53、リセット部54、及び出力部55を含む。光電変換部51は、光に応じた電荷を発生させる。光電変換部51は、例えば、フォトダイオードである。転送部52は、光電変換部51で発生した電荷を電荷電圧変換部53へ転送する。転送部52は、例えば、転送トランジスタであり、垂直走査回路10からアクティブレベルの転送制御信号がゲート(後述の転送電極2)に供給された際にオンすることにより、光電変換部51で発生した電荷を電荷電圧変換部53へ転送する。電荷電圧変換部53は、転送された電荷を電圧に変換する。電荷電圧変換部53は、例えば、N型のフローティングディフュージョンである。リセット部54は、電荷電圧変換部53をリセットするとともに、供給されたリセット電位に応じて画素Pを選択状態/非選択状態にする。リセット部54は、例えば、リセットトランジスタであり、垂直走査回路10からアクティブレベルのリセット制御信号がゲートに供給された際にオンすることにより、電荷電圧変換部53をリセットする。リセット部54は、供給された第1のリセット電位(例えば、Hレベル)に応じて電荷電圧変換部53の電位を第1の電位にリセットすることにより、画素を選択状態にする。リセット部54は、供給された第2のリセット電位(例えば、Hレベル)に応じて電荷電圧変換部53の電位を第2のリセット電位にリセットすることにより、画素を非選択状態にする。出力部55は、電荷電圧変換部53の電圧に応じた信号を信号線SLへ出力する。出力部55は、例えば、増幅トランジスタであり、信号線SLに接続された定電流源CSとともにソースフォロワ動作を行うことにより、電荷電圧変換部53の電圧に応じた信号を信号線SLへ出力する。すなわち、出力部55は、リセット部54により電荷電圧変換部53がリセットされた状態で電荷電圧変換部53の電圧に応じたノイズ信号を信号線SLへ出力する。出力部55は、転送部52により光電変換部51の電荷が電荷電圧変換部53へ転送された状態で電荷電圧変換部53の電圧に応じた光信号を信号線SLへ出力する。なお、各画素Pは、選択部(図示せず)を含む構成でもよい。この場合、選択部は、画素Pを選択状態/非選択状態にする。選択部は、例えば、NMOS型の選択トランジスタであり、垂直走査回路10からアクティブレベルの選択制御信号がゲートに供給された際にオンすることにより、画素Pを選択状態にする。選択部は、垂直走査回路10からノンアクティブレベルの選択制御信号がゲートに供給された際にオフすることにより、画素Pを非選択状態にする。垂直走査回路10は、画素配列PAを垂直方向に走査することにより、画素配列PAにおける信号を読み出すべき読み出し行を選択し、読み出し行から複数の信号線SLへ信号が出力されるようにする。保持回路20は、複数の信号線SLを介して読み出し行から出力された複数列の信号(ノイズ信号、光信号)を一時的に保持する。水平走査回路30は、保持回路20を水平方向に走査することにより、保持回路20に保持された複数列の信号(ノイズ信号、光信号)が順次に出力アンプ40へ転送されるようにする。出力アンプ40は、転送された信号(ノイズ信号、光信号)に応じて画像信号を生成する。例えば、出力アンプは、ノイズ信号と光信号との差分をとることにより画像信号を生成する。出力アンプ40は、生成した画像信号を後段(後述の撮像信号処理回路95)へ出力する。ここで、画素配列PAにおける各画素の間で暗電流によるノイズのレベルを均一に抑えることができれば、ノイズ信号のレベルも各画素の間で均一に抑えることができる。この場合、出力アンプ40により生成された画像信号におけるS/N比を各画素の間で均一に揃えることが容易になるので、画像信号により得られる画像の画質を向上することができる。
【0010】
次に、本発明の実施形態に係る光電変換装置100のレイアウト構成を、図3及び図4を用いて説明する。素子分離部EIは、半導体基板SB内に配され、半導体基板SBにおけるアクティブ領域ARを規定する。半導体基板SBは、第1導電型(例えば、n型)の不純物を低濃度で含む半導体領域1を含む(図5(a)及び図5(b)参照)。この半導体領域としては基板そのものやウエル領域、エピ成長させた領域を用いることができる。以下ウエルとして説明を行なう。素子分離部EIで囲まれたウエル領域1内のアクティブ領域ARは、受光領域3、転送領域5、及び読み出し領域4を含む。受光領域3は、入射した光を受ける領域であり、例えば略四角形の形状をしている。光電変換部51(図2参照)は、受光領域3に配され、受けた光に応じた電荷を発生させる。光電変換部51は、信号電荷を蓄積可能な領域(電荷蓄積領域)14及び表面領域13を含む(図5(a)参照)。電荷蓄積領域14は、光電変換部51で発生した電荷を蓄積するための領域であり、第1導電型の不純物をウエル領域1より高い濃度で含む。表面領域13は、電荷蓄積領域14の上に配されており、電荷蓄積領域14の暗電流を抑制するための領域である。表面領域13は、第1導電型と反対導電型である第2導電型(例えば、p型)の不純物をウエル領域1における第1導電型の不純物の濃度より高い濃度で含む。転送領域5は、受光領域3と読み出し領域4とを繋ぐ領域であって、光電変換部51で発生した電荷を電荷電圧変換部53へ転送するための領域である。第1の半導体領域12は、少なくとも、受光領域3の一部と転送領域5とに配されている。第1の半導体領域12は、転送電極2に覆われた光電変換部51と電荷電圧変換部53との間のアクティブ領域ARに配されており、第1導電型(例えば、n型)の不純物をウエル領域1より高くかつ電荷蓄積領域14より低い濃度で含む。すなわち、第1の半導体領域12における第1導電型の不純物濃度は、電荷蓄積領域14における第1導電型の不純物濃度より低い。これにより、光電変換部51で発生した電荷のうち第1の半導体領域12へ漏れ出した電荷を電荷蓄積領域14へ導くことができる。これにより、転送電極2に電圧が供給されていない(転送トランジスタがオフしている)状態で第1の半導体領域12から電荷電圧変換部15へ電荷が漏れ出すことを低減できる。また、第1の半導体領域12は、アクティブレベルの転送制御信号が転送電極2に供給された際における光電変換部51で発生した電荷を電荷電圧変換部53へ転送するためのチャネル(転送路)が形成されるべき領域である。ここで、第1の半導体領域12は、第1の部分12bと第2の部分12aとを含む。第1の部分12bは、転送電極2のチャネル幅方向における幅W12bを有する。第2の部分12aは、第1の部分12bに対して光電変換部51(13,14)の側に隣接している。第2の部分12aは、転送電極のチャネル幅方向における幅W12aが第1の部分12bより広い(W12a>W12b)。すなわち、第1の半導体領域12は、半導体基板SBの表面SBaに垂直な方向から透視した場合、例えば、略横T字型の形状をしている。これにより、第1の半導体領域12は、第2の部分12aがない場合に比べて、電荷蓄積領域14との接触面積が大きくなっている。この結果、アクティブレベルの転送制御信号が転送電極2に供給された際に、電荷蓄積領域のより多くの領域を空乏化することができる。光電変換部における電荷蓄積領域を完全に空乏化することが容易になり、電荷蓄積領域からの電荷の引き抜きを助ける効果が得られ、良好な信号電荷の読出しが可能になる。すなわち、第1の部分12bだけでなく第2の部分12aが転送電極下に存在するため、転送電極にオン電圧が印加されることにより、転送電極下のポテンシャルだけではなく、第2の部分12aの電荷に対するポテンシャル障壁も低くすることができる。これらにより、光電変換部から電荷電圧変換部への電荷の転送特性を向上できる。一方、転送電極2は、受光領域3の一部と転送領域5とを覆うように半導体基板SBの上に配されている。転送電極2は、転送部(転送トランジスタ)52のゲートとして機能する。すなわち、転送電極2は、アクティブレベルの転送制御信号が供給された際にその下(すなわち第1の半導体領域12)にチャネルを形成する。第2の半導体領域11は、アクティブ領域AR内(アクティブ領域内)を素子分離部EIの少なくとも第1の半導体領域に対向する界面(転送領域面EI2及び受光領域面EI1)に沿って延びた部分である。さらに、第2の半導体領域11は、アクティブ領域AR内を素子分離部EIの光電変換部51(13,14)に対向する界面(第2の受光領域面EI3)に沿って延びている。第2の半導体領域11は、第2導電型(例えば、p型)の不純物をウエル領域1における第1導電型の不純物の濃度より高い濃度で含む。第2の半導体領域11は、第3の部分11d、第4の部分11c、及び第5の部分11eを含む。第3の部分11dは、転送電極2の下における第1の部分12bと素子分離部EIとの間を転送電極2のチャネル長方向に延びた部分であり、転送電極2のチャネル幅方向における幅DWを有する。第4の部分11cは、転送電極2の下における第2の部分12aと素子分離部EIとの間を転送電極2のチャネル幅方向に延びた部分であり、チャネル長方向における幅DL1を有する。第5の部分11eは、アクティブ領域AR内を素子分離部EIの光電変換部51に対向する界面(第2の受光領域面EI3)に沿って延びている部分であり、光電変換部51の中心CPから遠ざかる方向の幅DL2を有する。読み出し領域4は、アクティブ領域ARにおける受光領域3と転送領域5とを除く領域に配された、光電変換部51から電荷電圧変換部53へ転送された電荷に応じた信号を出力部55(図2参照)が読み出すための領域である。電荷電圧変換部53は、読み出し領域4に配され、転送された電荷に応じた電圧を発生させる。電荷電圧変換部53は、半導体領域15を含む。半導体領域15は、第1導電型の不純物をウエル領域1より高い濃度で含む。第3の半導体領域16は、転送領域5と読み出し領域4との境界近傍に配されている。第3の半導体領域16は、第1の半導体領域12から半導体領域15への電荷のパンチスルーを防止するパンチスルーストップ領域であり、第2導電型の不純物をウエル領域1における第1導電型の不純物の濃度より高い濃度で含む。第3の半導体領域16は、後述のように、転送電極2をマスクとして第2導電型の不純物が半導体基板SBに注入されることにより形成された半導体領域である。
【0011】
次に、本発明の実施形態に係る光電変換装置100の断面構成を、図5を用いて説明する。図5(a)は、図4のA’−A線に沿った断面の構成を示し、図5(b)は、図4のB’−B線に沿った断面の構成を示す。また、図5(c)は、図5(a)のxA線に沿った不純物プロファイルを示し、図5(d)は、図5(b)のxB線に沿った不純物プロファイルを示す。素子分離部EIは、図4及び図5(a)に示すように、転送電極2の下における第4の部分11cに対向するようにチャネル幅方向に沿って延びた受光領域面EI1を有する。第4の部分11cは、図4及び図5(a)に示すように、転送電極2の下における第1の半導体領域12と対向するようにチャネル幅方向に沿って延びた第2の側面11aを有している。この第2の側面11aは、後述のように、レジストパターンをマスクとして第2導電型の不純物が半導体基板SBに注入されることにより規定された面である。受光領域面EI1と第2の側面11aとの距離は、第4の部分11c(図4参照)の幅DL1と略等しい。また、素子分離部EIは、図4及び図5(b)に示すように、転送電極2の下における第3の部分11dに対向するようにチャネル長方向に沿って延びた転送領域面EI2を有する。第3の部分11dは、図4及び図5(b)に示すように、転送電極2の下における第1の部分12bと対向するようにチャネル長方向に沿って延びた第1の側面11bを有している。この第1の側面11bは、後述のように、素子分離部EIをマスクとして第2導電型の不純物が半導体基板SBに注入されることにより自己整合的に規定された面である。転送領域面EI2と第1の側面11bとの距離は、第3の部分11d(図4参照)の幅DWと略等しい。
【0012】
ここで、仮に、図9に示すように、第4の部分111cにおけるチャネル長方向の幅と第5の部分111eにおける光電変換部151の中心CP100から遠ざかる方向の幅とが、いずれも第3の部分111dの幅DWに略等しい場合を考える。このように、受光領域3及び転送領域5の全領域に渡って均一な幅DWで第2の半導体領域111を形成した場合、転送電極2に電界を印加した際における空乏層の状態が、E’−E断面とF’−F断面とで異なる。ここで、転送電極2に印加されるべき電界は、上記のアクティブレベルの転送制御信号に対応している。具体的には、主として転送領域に配された第1の半導体領域における第1導電型(例えば、N型)の不純物のピーク濃度は、受光領域に配された電荷蓄積領域における第1導電型の不純物のピーク濃度より高くなっている。これにより、転送電極5に電界が印加された際における第1の半導体領域112と第2の半導体領域111との界面(PN接合界面)から広がった空乏層の端部が素子分離部の界面に達しやすい。空乏層の端部(空乏層端)が素子分離部の界面に達すると、その界面における界面準位により大きな暗電流が発生する。すなわち、暗電流発生の主要因である素子分離部の界面近傍における空乏化は、転送領域よりも受光領域の方で起こり易い。この様子を図10を用いて説明する。図10(a)は、受光領域面EI11に対して垂直に切断したE’−E断面での濃度分布図である。図10(a)には、第2の半導体領域111における第2導電型(例えば、p型)の不純物プロファイルPF111aと、第1の半導体領域112における第1導電型(例えば、n型)の不純物プロファイルPF112aとが示されている。図10(b)は、転送電極面EI2に対して垂直に切断したF’−F断面での濃度分布図である。図10(b)には、第2の半導体領域111における第2導電型(例えば、p型)の不純物プロファイルPF111bと、第1の半導体領域112における第1導電型(例えば、n型)の不純物プロファイルPF112bとが示されている。図10(a)及び図10(b)には、転送電極5に電界が印加されることによりPN接合に逆バイアスが印加された際における第1の半導体領域112と第2の半導体領域111との界面(PN接合界面)から広がった空乏層領域DR1も示されている。空乏層領域DR1の端部(空乏層端)の位置は、図10(a)においてGで示され、図10(b)においてG’で示されている。図10(a)における第1導電型の不純物プロファイルPF112aにおけるピーク濃度は、破線で示すように、図10(b)における第1導電型の不純物プロファイルPF112bにおけるピーク濃度に比べて大きい。これにより、図10(a)及び図10(b)に一点鎖線で示すように、空乏層端は図10(b)よりも図10(a)の方が素子分離部の界面(EI11、EI2)にまで達しやすい。つまりG<G’の関係が成り立っている。さらに、第1導電型の第1の半導体領域112と第2導電型の第2の半導体領域111との接合位置は、図10(a)においてHで示され、図10(b)においてH’で示されている。H≒H’の関係がなりたっている。このとき、第2の半導体領域111における第4の部分111cの幅と第5の部分111eの幅とが、いずれも第3の部分111dの幅DWに略等しい。これにより、光電変換部51から電荷電圧変換部53への転送電極2による電荷の転送効率を向上するように第2の半導体領域111の幅DWを決めると、受光領域面EI11では、空乏層端が達して暗電流が発生する可能性がある。またその逆に、受光領域面EI11における暗電流を十分抑制できるように第2の半導体領域111の幅DWを決めると、転送領域における電荷のチャネル(転送路)の幅が狭められて転送電極2による電荷の転送効率が悪化する。転送領域において完全転送可能な最適濃度分布条件でチャネル(転送路)を形成した上で、受光領域及び転送領域で発生する暗電流を均一に抑えるには、受光領域面と転送領域面との空乏化状態(空乏層端の位置)を均等にする必要がある。例えば、シリコン/シリコン酸化膜界面での電子の捕獲再結合中心を介して発生する暗電流量は、界面近傍に伸びる空乏層端の位置に依存する。界面が空乏化していると大きな暗電流を発生する。界面が空乏化していなくとも、空乏層端が界面近傍すなわち界面から閾値距離TH未満離れて位置していると、電子の捕獲再結合中心から放出された電子が空乏層に達し、暗電流となる。従って、光電変換装置の暗電流量を抑制するために、PN接合間に形成される空乏層端の位置を制御することが必要となる。このように、光電変換部から電荷電圧変換部への電荷の転送効率を向上することと、転送電極の下における素子分離部の界面における界面準位に起因した暗電流によるノイズを低減することとは、両立が困難な課題である。
【0013】
それに対して、本実施形態では、第4の部分11cにおけるチャネル長方向の幅DL1と第5の部分11eにおける光電変換部51の中心CPから遠ざかる方向の幅DL2とが、いずれも第3の部分11dの幅DWより広い。あるいは、本実施形態では、第4の部分11cにおけるチャネル長方向の幅DL1と第5の部分11eにおける光電変換部51の中心CPから遠ざかる方向の幅DL2とが、いずれも第3の部分11dの幅DWよりC/C倍以上広い。Cは、電荷蓄積領域14における第1導電型(例えば、n型)の不純物のピーク濃度である。Cは、第1の半導体領域11における第1導電型の不純物のピーク濃度である。これにより、転送電極2に電界を印加した際における空乏層の状態が、A’−A断面とB’−B断面とで均等になる。具体的には、転送領域と受光領域との両方において、転送電極5に電界が印加された際における第1の半導体領域12と第2の半導体領域11との界面から広がった空乏層端が素子分離部の界面から閾値距離TH以上離れて位置している。空乏層端が素子分離部の界面から閾値距離TH以上離れていると、その界面における界面準位による暗電流を抑制できる。すなわち、暗電流発生の主要因である素子分離界面の空乏化は、転送領域と受光領域との両方で起こりにくい。この様子を図5(c)及び図5(d)を用いて説明する。図5(c)は、受光領域面EI1に対して垂直に切断したA’−A断面での濃度分布図である。図5(c)には、第2の半導体領域11における第2導電型(例えば、p型)の不純物プロファイルPF11aと、第1の半導体領域12における第1導電型(例えば、n型)の不純物プロファイルPF12aとが示されている。図5(d)は、転送電極面EI2に対して垂直に切断したB’−B断面での濃度分布図である。図5(d)には、第2の半導体領域11における第2導電型(例えば、p型)の不純物プロファイルPF11bと、第1の半導体領域12における第1導電型(例えば、n型)の不純物プロファイルPF12bとが示されている。図5(c)及び図5(d)には、転送電極5に電界が印加され第1の半導体領域12と第2の半導体領域11との接合界面に逆バイアスが印加された際にその接合N界面から広がった空乏層領域DRも示されている。空乏層領域DRの端部(空乏層端)の位置は、図5(c)においてCで示され、図5(d)においてC’で示されている。図5(c)における第1導電型の不純物プロファイルPF12aにおけるピーク濃度Cは、破線で示すように、図5(d)における第1導電型の不純物プロファイルPF12bにおけるピーク濃度Cに比べて大きい。この場合でも、
DL1=C/C×DW・・・数式3
DL2=C/C×DW・・・数式4
の関係が成り立っている。これに応じて、第1導電型の第1の半導体領域112と第2導電型の第2の半導体領域111との接合位置は、図5(c)においてDで示され、図5(d)においてD’で示されたとき、
D≒C/C×D’・・・数式6
の関係がなりたっている。これにより、図5(c)及び図5(d)に一点鎖線で示すように、空乏層端は図5(d)と図5(c)との方が素子分離界面(EI1、EI2)から閾値距離TH以上離れている。つまり
C=C’>TH・・・数式7
の関係が成り立っている。これにより、光電変換部51から電荷電圧変換部53への転送電極2による電荷の転送効率を向上するように幅DWを決めることができるとともに、受光領域面EI11における暗電流を十分抑制できるように幅DL1、DL2を決めることができる。このように、本実施形態によれば、光電変換部から電荷電圧変換部への電荷の転送効率を向上できるとともに、転送電極の下における素子分離部の界面における界面準位に起因した暗電流によるノイズを低減できる。これにより、電子の捕獲再結合中心から放出された電子が空乏層に達し、暗電流となる。あるいは、幅DL1と幅DL2とがいずれも幅DWに比べてC/C倍未満になると、転送電極2に電界を印加した際における空乏層端が素子分離部の界面から閾値距離TH未満離れて位置することになる。これにより、電子の捕獲再結合中心から放出された電子が空乏層に達し、暗電流となる。
【0014】
次に、本発明の実施形態に係る光電変換装置100の製造方法を、図6を用いて説明する。図6は、光電変換装置100の製造方法を示す、図4のI−I’断面に対応した工程断面図である。図6(a)に示す工程では、レジストパターンRP1をマスクとして、半導体基板SB中にアクティブ領域AR(図3参照)を規定する素子分離部9を形成する(第1の工程)。アクティブ領域ARは、第1の領域AR1と第2の領域AR2とを含む。第2の領域AR2は、第1の領域AR1に第1の方向(転送電極2のチャネル長方向となるべき方向)で隣接し第1の領域AR2より第2の方向(転送電極2のチャネル幅方向となるべき方向)の幅が広い(W3>W5,W3>W4)。第1の領域AR1は、転送領域5及び読み出し領域4を含む。第2の領域AR2は、受光領域3を含む。その後、アクティブ領域ARを覆い素子分離部EIを露出する第1のレジストパターンRP1をマスクとして、第2導電型(例えば、p型)の不純物を半導体基板SBに高濃度で注入する(第2の工程)。このときの注入角度θは、半導体基板SBの表面SBaに垂直な方向から傾斜したものとする。第2導電型(例えば、p型)の不純物濃度は、例えば、1×1015〜1×1018[/cm]である。これにより、素子分離部9の付近に配されるべき暗電流抑制のための第2の半導体領域11を形成する。次に、図6(b)に示す工程では、全領域注入パターン10(図7参照)を有するレチクルを用いて、開口RP2aを有した第2のレジストパターンRP2が形成される(第3の工程)。第2のレジストパターンRP2は、第1の領域AR1の全面を露出するとともに、第2の領域AR2における第1の領域AR1より第2の方向の幅が広い内側の部分AR21を露出し第2の領域AR2における外側の部分AR22を覆っている(図7参照)。そして、その第2のレジストパターンRP2をマスクとして第1導電型(例えば、n型)の不純物を半導体基板SBに低濃度で注入する。第1導電型(例えば、n型)の不純物濃度は、図6(a)に示す工程における第2導電型の不純物濃度より低い濃度である。第1導電型の不純物濃度は、例えば、1×1015〜1×1017[/cm]である。これにより、第1の半導体領域12となるべき半導体層12pが形成される。半導体層12pは、第1の領域AR1内(第1の領域内)に配された第3の領域12p3と第2の領域AR2内(第2の領域内)に配された第4の領域12p4とを含む(図7参照)。第4の領域12p4は、第3の領域12p3より第2の方向(転送電極2のチャネル幅方向となるべき方向)の幅が広い。その後、第3の領域12p3と第4の領域12p4との境界12p34を覆うように半導体層12pの上に転送電極2を形成する(第4の工程)。図7には、第1導電型(例えば、n型)の不純物の注入範囲を決定するレチクル上の全領域注入パターン10を、第1の領域AR1及び第2の領域AR2に対応させて示している。実際には、レチクル上における全領域注入パターン10の寸法が縮小投影露光の倍率に応じて大きくなっている。全領域と表現しているのは、第1の領域AR1の全面に注入していることを意味している。転送領域5には、素子分離部EIの転送領域面EI2に対して自己整合的に第1導電型(例えば、n型)の不純物が注入されるが、受光領域3には、レジストパターンRP2によるマスクで規定された領域に第1導電型の不純物が注入されることとなる。そのため、転送電極2下ではマスク規定で決定される領域と、素子分離部EIの転送領域面EI2の形状で決定される領域とが存在する。レジストパターンRP2の端部位置は読み出領域4を完全に覆っているが、これに限るものではない。主な目的が転送領域5に均一に第1導電型の不純物をイオン注入することにあるので、転送電極2に覆われる領域以外の領域への適用範囲は適宜決定される。次に、図6(c)に示す工程では、第1の領域AR1を覆い第2の領域AR2を露出するレジストパターンRP3と転送電極2とをマスクとして、第2導電型(例えば、p型)の不純物を半導体基板SBに高濃度で注入する。レジストパターンRP3は、受光領域3に開口RP3aを有する。第2導電型(例えば、p型)の不純物濃度は、例えば、1×1015〜1×1018[/cm]である。これにより、半導体基板の表面のダングリングボンドに起因した暗電流を抑制するための表面領域13が形成される。次に、図6(d)に示す工程では、第1の領域AR1を覆い第2の領域AR2を露出する第3のレジストパターンRP4と転送電極2とをマスクとして、第1導電型(例えば、n型)の不純物を半導体基板SBに高濃度で注入する(第5の工程)。第3のレジストパターンRP4は、受光領域3に開口RP4aを有する。第1導電型(例えば、n型)の不純物濃度は、図6(b)に示す工程における第1導電型の不純物濃度より高い濃度である。第1導電型(例えば、n型)の不純物濃度は、例えば、1×1015〜1×1018[/cm]である。これにより、信号電荷を蓄積するための電荷蓄積領域14が形成される。次に、図6(e)に示す工程では、第1の領域AR1を露出し第2の領域Ar2を覆う第4のレジストパターンRP5と転送電極2とをマスクとして、第1導電型(例えば、n型)の不純物を半導体基板SBに高濃度で注入する(第6の工程)。第4のレジストパターンRP5は、読み出し領域4に開口RP5aを有する。第1導電型(例えば、n型)の不純物濃度は、図6(b)に示す工程における第1導電型の不純物濃度より高い濃度である。第1導電型(例えば、n型)の不純物濃度は、例えば、1×1015〜1×1018[/cm]である。これにより、電荷電圧変換部15が形成される。次に、図6(f)に示す工程では、読み出し領域4に開口RP6aを有するレジストパターンRP6と転送電極2とをマスクとして、第2導電型(例えば、p型)の不純物を半導体基板SBに高濃度で注入する。第2導電型(例えば、p型)の不純物濃度は、図6(b)に示す工程における第1導電型の不純物濃度より高い濃度である。第2導電型(例えば、p型)の不純物濃度は、例えば、1×1015〜1×1018[/cm]である。これにより、受光領域3から読み出し領域4への電荷のパンチスルーを防止するための第3の半導体領域16が転送電極2に対して自己整合的で形成される。また、半導体層12pにおける図6(c)〜(f)の工程で不純物が注入されなかった領域は、第1の半導体領域12になる。なお、図6に示す製造方法は、一例であり、これに限るものではなく、画素分離ポテンシャル障壁を作るための不純物等、要求される構造に対して適宜工程が追加されるものとする。
【0015】
なお、図5(c)において、理想的な第2導電型(例えば、p型)の不純物は1×1015〜1×1018[/cm]程度のピーク値になる。理想的な第1導電型(例えば、n型)の不純物は1×1015〜1×1017[/cm]程度のピーク値になる。しかし、全領域注入パターン10により形成される第2のレジストパターンRP2の開口RP2aの端部は、素子分離部EIの受光領域面EI1からオフセットをもっている(図5〜図7参照)。これにより、PN接合の位置が図5(c)で位置D、図5(d)で位置D’としたとき、上記の数式5又は数式6の関係が成り立っている。PN接合の位置は、図5(d)より図5(c)の方において素子分離部の界面から遠い位置に存在する。またこのとき、第1導電型(例えばn型)の第1の半導体領域12の全体に空乏層が広がるような逆バイアスがPN接合に印加されており、矢印で示される範囲がそれぞれ空乏層領域DRを示している。図中には第2導電型(例えばp型)の第2の半導体領域11側に伸びた空乏層端の位置を図5(c)でC、図5(d)でC’としている。このように、受光領域面EI1で形成される空乏層端部の位置と転送領域面EI2で形成される空乏層端部の位置とを均等にさせている。つまりC=C’が成り立っている。これにより、転送効率の向上と暗電流及び白キズの抑制とが同時に可能となる。
【0016】
以上のように、本実施形態によれば、受光領域と転送領域との両方において、素子分離部(シリコン酸化膜)の界面が空乏化を生じにくい構造を得ることができる。従って、特に微細な画素寸法の光電変換装置において、電荷転送効率の向上と暗電流及び白キズの抑制とが同時に可能となる。
【0017】
なお、受光領域と転送領域とのそれぞれにおける不純物濃度や全領域注入パターン10に応じたレジストパターンの開口端部の位置は、光電変換装置の受光領域形状や要求される飽和電荷量に応じて適宜決定される。例えば、全領域注入パターン10に応じた第2のレジストパターンは転送領域の別の形態に応じて例えば図8(a)のように形成される。図8(a)には、転送領域が台形形状を成している場合が示されている。全領域注入パターンに応じたレジストパターンRP2iの開口PR2aiの形状は、これに合わせ、図8(a)に示されるように形成する。このとき、転送電極2の下における第1の半導体領域12iと第2の半導体領域11iとの接合位置から素子分離部の界面までの距離が、電荷転送方向に対して水平方向の断面と垂直方向の断面とで異なるように形成されている。すなわち、第2の半導体領域11における第4の部分11ciの幅DL1iと第5の部分11eiの幅DL2iとが、いずれも第3の部分11diの幅DWiより広い。ここで、第4の部分11ciは、第2の部分12aiと素子分離部EIとの間を転送電極2のチャネル幅方向に沿って延びた部分である。幅DL1iは、第4の部分11ciにおけるチャネル長方向の幅である。第3の部分11diは、第1の部分12biと素子分離部EIとの間を転送電極2のチャネル長方向に沿って延びた部分である。幅DWiは、第3の部分11diにおけるチャネル幅方向の幅である。幅DL2iは、第5の部分11eiにおける光電変換部51iの中心CPiから遠ざかる方向の幅である。このように、素子分離部EIiにおける受光領域面EI1iと転送領域面EI2iとで、転送電極2に電界が印加された際における空乏層端の位置を均等にさせることができる。あるいは、例えば、全領域注入パターン10に応じた第2のレジストパターンは転送領域の別の形態に応じて例えば図8(b)のように形成される。図8(b)には、転送領域が受光領域の角近傍に位置している場合が示されている。全領域注入パターン10に応じた第2のレジストパターンRP2jの開口PR2ajの形状は、これに合わせ、図8(b)に示されるように形成する。このとき、転送電極2の下における第1の半導体領域12jと第2の半導体領域11jとの接合位置から素子分離部の界面までの距離が、電荷転送方向に対して水平方向の断面と垂直方向の断面とで異なるように形成されている。すなわち、第2の半導体領域11jにおける第4の部分11cjの幅DL1jと第5の部分11ejの幅DL2jとが、いずれも第3の部分11djの幅DWjより広い。ここで、第4の部分11cjは、第2の部分12ajと素子分離部EIとの間を転送電極2のチャネル幅方向に沿って延びた部分である。幅DL1jは、第4の部分11cjにおけるチャネル長方向の幅である。第3の部分11diは、第1の部分12bjと素子分離部EIとの間を転送電極2のチャネル長方向に沿って延びた部分である。幅DWjは、第3の部分11djにおけるチャネル幅方向の幅である。幅DL2jは、第5の部分11ejにおける光電変換部51jの中心CPjから遠ざかる方向の幅である。このように、素子分離部EIjにおける受光領域面EI1jと転送領域面EI2jとで、転送電極2に電界が印加された際における空乏層端の位置を均等にさせることができる。これらの変形例では、例えば、PN接合(第1の半導体領域12iと第2の半導体領域11iとの接合)界面に3.3Vの逆バイアスを印加している。受光領域3が完全に空乏化される電圧は2.6V程度である。これらの変形例により、空乏層端は素子分離部におけるいずれの方向の素子分離部の界面近傍においても均等な位置にすることが容易である。これにより、受光領域3に流入する電子数を抑制するように制御できる。空乏層端が界面に近づくにつれ、暗電流は増大する。暗電流の抑制すべき閾値に応じて、空乏層端の位置を設計することができる。
【0018】
次に、本発明の光電変換装置を適用した撮像システムの一例を図11に示す。撮像システム90は、図11に示すように、主として、光学系、撮像装置86及び信号処理部を備える。光学系は、主として、シャッター91、レンズ92及び絞り93を備える。撮像装置86は、光電変換装置100を含む。信号処理部は、主として、撮像信号処理回路95、A/D変換器96、画像信号処理部97、メモリ部87、外部I/F部89、タイミング発生部98、全体制御・演算部99、記録媒体88及び記録媒体制御I/F部94を備える。なお、信号処理部は、記録媒体88を備えなくても良い。シャッター91は、光路上においてレンズ92の手前に設けられ、露出を制御する。レンズ92は、入射した光を屈折させて、撮像装置86の光電変換装置100の撮像面に被写体の像を形成する。絞り93は、光路上においてレンズ92と光電変換装置100との間に設けられ、レンズ92を通過後に光電変換装置100へ導かれる光の量を調節する。撮像装置86の光電変換装置100は、光電変換装置100の撮像面に形成された被写体の像を画像信号に変換する。撮像装置86は、その画像信号を光電変換装置100から読み出して出力する。撮像信号処理回路95は、撮像装置86に接続されており、撮像装置86から出力された画像信号を処理する。A/D変換器96は、撮像信号処理回路95に接続されており、撮像信号処理回路95から出力された処理後の画像信号(アナログ信号)を画像信号(デジタル信号)へ変換する。画像信号処理部97は、A/D変換器96に接続されており、A/D変換器96から出力された画像信号(デジタル信号)に各種の補正等の演算処理を行い、画像データを生成する。この画像データは、メモリ部87、外部I/F部89、全体制御・演算部99及び記録媒体制御I/F部94などへ供給される。メモリ部87は、画像信号処理部97に接続されており、画像信号処理部97から出力された画像データを記憶する。外部I/F部89は、画像信号処理部97に接続されている。これにより、画像信号処理部97から出力された画像データを、外部I/F部89を介して外部の機器(パソコン等)へ転送する。タイミング発生部98は、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97に接続されている。これにより、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97へタイミング信号を供給する。そして、撮像装置86、撮像信号処理回路95、A/D変換器96及び画像信号処理部97がタイミング信号に同期して動作する。全体制御・演算部99は、タイミング発生部98、画像信号処理部97及び記録媒体制御I/F部94に接続されており、タイミング発生部98、画像信号処理部97及び記録媒体制御I/F部94を全体的に制御する。記録媒体88は、記録媒体制御I/F部94に取り外し可能に接続されている。これにより、画像信号処理部97から出力された画像データを、記録媒体制御I/F部94を介して記録媒体88へ記録する。以上の構成により、光電変換装置100において良好な画像信号が得られれば、良好な画像(画像データ)を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板におけるアクティブ領域を規定する素子分離部と、
前記アクティブ領域に配され、第1導電型の不純物を含む信号電荷を蓄積可能な電荷蓄積領域を有した光電変換部と、
前記アクティブ領域に配された電荷電圧変換部と、
前記アクティブ領域の上に配され、前記光電変換部で発生した電荷を前記電荷電圧変換部へ転送するためのチャネルを形成する転送電極と、
前記アクティブ領域における前記光電変換部と前記電荷電圧変換部との間に配され、前記第1導電型の不純物を前記電荷蓄積領域より低い濃度で含む、前記転送電極に覆われた第1の半導体領域と、
前記アクティブ領域内を前記素子分離部の少なくとも前記第1の半導体領域に対向する界面に沿って延びた、前記第1導電型と反対導電型である第2導電型の第2の半導体領域と、
を備え、
前記第1の半導体領域は、
第1の部分と、
前記第1の部分に対して前記光電変換部の側に隣接し、前記転送電極のチャネル幅方向における幅が前記第1の部分より広い第2の部分と、
を含み、
前記第2の半導体領域は、
前記第1の部分と前記素子分離部との間を前記転送電極のチャネル長方向に延びた第3の部分と、
前記第2の部分と前記素子分離部との間を前記転送電極のチャネル幅方向に延びた第4の部分と、
を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第3の部分は、前記素子分離部をマスクとして前記第2導電型の不純物が注入されることにより規定された、前記第1の部分と対向するようにチャネル長方向に延びた第1の側面を有し、
前記第4の部分は、レジストパターンをマスクとして前記第2導電型の不純物が注入されることにより規定された、前記第2の部分と対向するようにチャネル幅方向に延びた第2の側面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記アクティブ領域における前記第1の半導体領域と前記電荷電圧変換部との間に配され、前記第1の半導体領域から前記電荷電圧変換部への電荷のパンチスルーを防止する前記第2導電型の第3の半導体領域をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第3の半導体領域は、前記転送電極をマスクとして前記第2導電型の不純物が注入されることにより形成された
ことを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第2の半導体領域は、
前記アクティブ領域内を前記素子分離部の前記光電変換部に対向する界面に沿って延びた第5の部分をさらに含み、
前記第5の部分における前記光電変換部の中心から遠ざかる方向の幅は、前記第3の部分におけるチャネル幅方向の幅より広い
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置の撮像面へ像を形成する光学系と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理して画像データを生成する信号処理部と、
を備えたことを特徴とする撮像システム。
【請求項7】
半導体基板を有する光電変換装置の製造方法であって、
第1の領域と、前記第1の領域に第1の方向で隣接し前記第1の領域より第2の方向の幅が広い第2の領域とを含むアクティブ領域を規定する素子分離部を前記半導体基板に形成する第1の工程と、
前記アクティブ領域を覆い前記素子分離部を露出する第1のレジストパターンをマスクとして第2導電型の不純物を前記半導体基板に注入することにより、第2の半導体領域を形成する第2の工程と、
前記第1の領域の全面を露出するとともに前記第2の領域における前記第1の領域より前記第2の方向の幅が広い内側の部分を露出し前記第2の領域における外側の部分を覆う第2のレジストパターンをマスクとして前記第2導電型と反対導電型である第1導電型の不純物を注入することにより、前記第1の領域内に配された第3の領域と前記第2の領域内に配された前記第3の領域より前記第2の方向の幅が広い第4の領域とを含む半導体層を形成する第3の工程と、
前記第3の領域と前記第4の領域との境界を覆うように前記半導体層の上に転送電極を形成する第4の工程と、
前記第1の領域を覆い前記第2の領域を露出する第3のレジストパターンと前記転送電極とをマスクとして前記第1導電型の不純物を前記半導体基板へ注入することにより、前記第2の領域に光電変換部における電荷蓄積領域を形成する第5の工程と、
前記第1の領域を露出し前記第2の領域を覆う第4のレジストパターンと前記転送電極とをマスクとして前記第1導電型の不純物を前記半導体基板へ注入することにより、前記第1の領域に電荷電圧変換部を形成する第6の工程と、
を備え、
前記半導体層における前記第5の工程及び前記第6の工程で不純物が注入されなかった領域は、第1の半導体領域になり、
前記第1の半導体領域は、
第1の部分と、
前記第1の部分に対して前記光電変換部の側に隣接し、前記転送電極のチャネル幅方向における幅が前記第1の部分より広い第2の部分と、
を含み、
前記第2の半導体領域は、
前記第1の部分と前記素子分離部との間を前記転送電極のチャネル長方向に延びた第3の部分と、
前記第2の部分と前記素子分離部との間を前記転送電極のチャネル幅方向に延びた第4の部分と、
を含む
ことを特徴とする光電変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−29461(P2011−29461A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174729(P2009−174729)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】