説明

光電変換装置

【課題】 十分な光電変換効率を達成した、電解質含有型の光電変換装置を提供する。
【解決手段】 第1の導電体3と、第1の導電体3と間隔をあけて対向するように設けられた第2の導電体9と、第2の導電体9と対向する側の第1の導電体3の主面上に設けられた非単結晶半導体4と、第2の導電体9と非単結晶半導体4との間に設けられた電解質7と、第1の導電体3と第2の導電体9との間に設けられ、非単結晶半導体4の外周側面と接触し、電解質を封止する封止部材6と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換効率に優れた光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池などの光電変換装置は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や有害な排気ガスを出さず、光のある限り発電をし続けるクリーンな発電技術であり、近年、活発に開発が進められている。
【0003】
なかでも、厚みを薄くすることができ、低温プロセス(約300℃)により作製され、かつ、低いコストであってもサイズの大きいモジュールを作製することができるため、アモルファスシリコンなどの非晶質薄膜を有する光電変換装置が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−140648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、非晶質薄膜を有する光電変換装置に対して、液体などの流動体から構成される電解質をさらに設けて、十分に電荷輸送をおこなうことで、光電変換効率を向上させることが検討されているが、所望とする光電変換効率としては不十分であった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、十分な光電変換効率を達成した電解質含有型の光電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、透光性を有する第1の導電体と、前記第1の導電体と間隔をあけて対向するように設けられた第2の導電体と、前記第2の導電体と対向する側の前記第1の導電体の主面上に設けられた非単結晶半導体と、前記第2の導電体と前記非単結晶半導体との間に設けられた電解質と、前記第1の導電体と前記第2の導電体との間に設けられ、前記非単結晶半導体の外周側面と接触し、前記電解質を封止する封止部材と、を具備する光電変換装置に関する。
【0007】
前記封止部材が、前記外周側面から、前記第2の導電体と対向する側の前記非単結晶半導体の主面の一部まで連続して、前記非単結晶半導体と接触することが好ましい。
【0008】
前記封止部材が、前記外周側面から、前記第1の導電体の主面の前記主面まで連続して、前記非単結晶半導体と接触することが好ましい。
【0009】
前記電解質は、液状またはゲル状の電解質であることが好ましい。
【0010】
前記非単結晶半導体は、i型の非単結晶半導体を含むpin構造を有することが好ましい。
【0011】
前記電解質と対向する側の前記非単結晶半導体上に設けられ、電荷移動を促進させる第1の触媒層をさらに具備することが好ましい。
【0012】
前記電解質と対向する側の前記第2の導電体上に設けられ、電荷移動を促進させる第2の触媒層をさらに具備することが好ましい。
【0013】
前記電解質と対向する側の前記第2の導電体上に設けられた酸化物半導体と、前記酸化物半導体の表面に付着した光励起体と、をさらに具備することが好ましい。
【0014】
前記封止部材は、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エポキシ樹脂,フッ素樹脂およびシリコーン樹脂から成る群から選ばれる1種であることが好ましい。
【0015】
前記封止部材は、ガラスまたはセラミックスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光電変換装置によれば、前記非単結晶半導体の外周側面と接触する封止部材を具備することにより、前記第1の導電体と前記電解質との接触が抑制されて前記電解質中の電子による逆電子移動の発生が低減されるため、高い光電変換効率を実現することができる。
【0017】
前記封止部材は、前記外周側面から、前記第2の導電体と対向する側の前記非単結晶半導体の主面の一部まで連続して、前記非単結晶半導体と接触することが好ましい。この構成により、前記非単結晶半導体の側面部が封止部材側に埋め込まれているため、光電変換装置に対する温度条件変化によって封止部材などの体積が変化しても、前記第1の導電体と前記電解質との接触が十分に抑制されて前記電解質の電子による逆電子移動の発生が低減されるため、より高い光電変換効率を実現することができる。
【0018】
前記封止部材は、前記外周側面から、前記第1の導電体の前記主面まで連続して接触することが好ましい。この構成により、封止部材により前記第1の導電体は接触して覆われているため、前記電解質と前記封止部材との接触が十分に抑制されて前記電解質の電子による逆電子移動の発生が低減されるため、より高い光電変換効率を実現することができる。
【0019】
前記電解質は、液状またはゲル状の電解質であることが好ましい。この構成により、前記電解質は電荷の輸送特性に優れるため、十分な光電変換効率を実現することができる。
【0020】
前記半導体層は、i型の非単結晶半導体を含むpin構造を有することが好ましい。この構成により、前記非単結晶半導体から発生した電子を十分に前記電解質に送ることで、十分な光電変換効率を実現することができる。
【0021】
本発明の光電変換装置は、前記電解質と対向する側の前記非単結晶半導体上に前記第1の触媒層をさらに具備することが好ましい。前記第1の触媒層は、過電圧を下げ、前記電解質と前記非単結晶半導体とのオーミック接合を十分に確保させるため、十分な光電変換効率を実現することができる。
【0022】
本発明の光電変換装置は、前記電解質と対向する側の前記第2の導電体上に前記第2の触媒層をさらに具備することが好ましい。前記第2の触媒層は、前記電解質と前記第2の導電体との間の抵抗を低下させるため、前記電解質と前記第2の導電体との間の十分なキャリアの授受が可能となる。
【0023】
本発明の光電変換装置は、前記電解質と対向する側の前記第2の導電体上に設けられた酸化物半導体と、前記酸化物半導体の表面に付着した光励起体と、をさらに具備することが好ましい。この構成により、光電変換装置は長波長感度が向上して、広い波長領域を吸収することができるため、広い波長領域にて光電変換が可能となり、十分な光電変換効率を実現することができる。
【0024】
前記封止部材は、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エポキシ樹脂,フッ素樹脂およびシリコーン樹脂から成る群から選ばれる1種であることが好ましい。また、封止部材は、ガラスまたはセラミックスであることが好ましい。これらは前記電解質に対して耐性があり、さらに電気的絶縁性が高いため、封止部材として前記第1の導電体と前記電解質との接触を十分に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態について図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの図面に記載の光電変換装置に限定されるものではない。また、実際の光電変換装置は、図面における光電変換装置の縦および横の縮尺に従うものではない。
【0026】
本発明の光電変換装置の一態様を図1に示す。
【0027】
図1における本発明の光電変換装置は、第1の導電体3と、第2の導電体9と、非単結晶半導体4と、電解質7と、封止部材6と、を具備するものである。以下にそれぞれの構成ごとに説明する。
【0028】
<図1の光電変換装置>
(第1の導電体)
第1の導電体3は、透光性を有する導電体をいう。
【0029】
第1の導電体3としては、非単結晶半導体4が吸収する波長成分(約300〜700nm)を透過させるものが好ましく、例えば、スズドープ酸化インジウム層(ITO層)、不純物ドープの酸化インジウム層(In層)、フッ素ドープの二酸化スズ層(SnO:F層)、不純物ドープの酸化亜鉛層(ZnO層)などが挙げられる。これらは、例えば、低温成長のスパッタリング法、低温スプレー熱分解法、熱CVD法、真空蒸着法,イオンプレーティング法,ディップコート法,ゾル・ゲル法などにより形成される。
【0030】
(第2の導電体)
第2の導電体9は、第1の導電体3と間隔をあけて対向するように設けられた導電体をいう。第2の導電体9と第1の導電体3との間隔は、それらの間に、後述する非単結晶半導体4と電解質7と封止部材6とが介在するように設計される。
【0031】
第2の導電体9としては、チタン,ステンレス,アルミニウム,銀,銅,ニッケルなどの金属シート、カーボン,金属微粒子,金属などから成る微細線を含浸させた樹脂シート、導電性樹脂、ITO,SnO:F(フッ素ドープSnO),ZnO:Al(AlドープZnO)等からなる酸化物導電膜などが挙げられる。とくに抵抗が低いため、優れていることから第2の導電体9としては金属シートが好ましい。
【0032】
銀やアルミニウム等の光反射性を有する金属から第2の導電体9が構成される場合、第2の導電体9は、優れた光反射性を付与されるため、透過光を反射させて光を再利用させることができる。
【0033】
また、第2の導電体9が、透光性導電体(SnO:F(FドープSnO)膜付き青板ガラス等)の場合であっても、第2の導電体9の裏面に光反射性のアルミニウムや銀等から成るシートや膜等を形成して、光反射性を付与しても構わない。
【0034】
第2の導電体9としては、例えば、チタン層/ITO層/チタン層等の積層構造、密着層付きのTi層/Ag層/Ti層等の積層構造、銀膜等が挙げられ、これらは、真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法,電解析出法等で形成される。
【0035】
第2の導電体9の厚みは0.001〜10μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
【0036】
(非単結晶半導体)
非単結晶半導体4は、第2の導電体9と対向する側の第1の導電体3の主面上に設けられたものである。ここで、非単結晶とは、非晶質または多結晶を含む。
【0037】
非晶質半導体4としては、アモルファスシリコンカーバイト,アモルファスシリコンナイトライドなどが挙げられる。
【0038】
非晶質半導体4としては、シリコンが主として挙げられ、シリコンの他には、窒化ガリウム、ガリウム砒素などのIII−V属半導体や、Cu(Ga,In)Se,CuO,Cu(Ga,In)Se,CuAlSe等の半導体材料などが挙げられる。
【0039】
非単結晶半導体4としては、とくに、第一導電型半導体層4a(p型半導体層)、真性半導体層4b(i型半導体層)および第二導電型半導体層4c(n型半導体層)が積層したpin構造であることが好ましい。i型半導体層を有しないpn構造の場合、電子および正孔の大部分が半導体層に分散しているのに対して、pin構造では、光で発生する電子および正孔の大部分がi型半導体層で発生するので、直ちに光発生電流として取り出すことができる。
【0040】
非単結晶半導体4としては、プラズマCVD法、触媒CVD法、化学気相成長法等を用いた連続堆積により作製される。とくにプラズマCVD法と触媒CVD法を組み合わせると、水素含有量を増加させることができ、非単結晶半導体4の光劣化を抑制できて信頼性を高めることができる。
【0041】
非晶質半導体4の作製法としては、それぞれの製膜条件により連続して堆積させることができるため、化学気相成長法が好適である。
【0042】
例えば、第一導電型半導体層4aとしてp型a−Si:H層を成膜する場合、p型a−Si:H層の厚みは5〜30nmが好ましい。5nmより薄いと、開放電圧が低下する傾向がある。また、30nmより厚いと、短絡電球が低下する傾向がある。
【0043】
また、真性半導体層4bとしてi型a−Si:H層を成膜する場合、i型a−Si:H層の厚みは50〜800nmが好ましい。50nmより薄いと、光をもとにして変換される電気量が少なく、短絡電流が小さくなる傾向がある。また、800nmより厚いと、形成される内部電場が小さくなるので発生キャリアの収集効率が低下する傾向がある。
【0044】
さらに、第二導電型半導体層4cとしてn型a−Si:H層を成膜する場合、n型a−Si:H層の厚みは5〜50nmが好ましい。5nmより薄いと、開放電圧が低下する傾向がある。また、50nmより厚いと、光電変換装置のシリーズ抵抗が増大する傾向がある。
【0045】
(電解質)
電解質7は、第2の導電体9と非単結晶半導体4との間に設けられ、電荷を輸送するはたらきを有するものである。
【0046】
電解質7は、例えば、液状の電解質、ゲル状の電解質、固体状の電解質等が挙げられる。なかでも、電荷輸送特性に優れることから、液状またはゲル状の電解質であることが好ましい。
【0047】
液状の電解質は、酸化還元系として、ヨウ素(I)イオン/三ヨウ素イオン(I)、臭素イオン、鉄(II)/鉄(III)イオンなどの可逆的に酸化型および還元型の状態で存在する1対の物質を含む。
【0048】
液状の電解質は、さらに前記物質を、例えば、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,ジメチルスルホキシド,アセトニトリル,イオン性液体,γ−ブチロラクトン,メトキシプロピオニトリル等の有機溶媒に混合することで作製される。例えば、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム,ヨウ化リチウム,ヨウ素、第4級アンモニウム塩やLi塩等を混合し調製したものを用いることができる。
【0049】
ゲル状の電解質は、大別して化学ゲルと物理ゲルに分けられる。化学ゲルは、架橋反応等により化学結合でゲルを形成しているものであり、物理ゲルは、物理的な相互作用により室温付近にてゲル化しているものである。具体的なゲル状の電解質としては、アセトニトリル,エチレンカーボネート,プロピレンカーボネートまたはそれらの混合物に対し、ポリエチレンオキサイド,ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド等のホストポリマーを混入して重合させたゲル状の電解質が好ましい。
【0050】
なお、ゲル状の電解質は、低粘度の前駆体を用いて形成した後、加熱、紫外線照射、電子線照射等の手段で、二次元、三次元の架橋反応をおこさせることによって、ゲル化させることができる。
【0051】
電解質7の厚みは0.01〜500μm程度がよい。0.1μm未満では、正極側と対極側が接してショートする傾向がある。500μmを超えると、抵抗成分である電解質7の増加による光電変換効率の低下を招き易く、また、電解質7が液状である場合、液体部分の増量による封止の不具合が生じ易い。
【0052】
(封止部材)
封止部材6は、第1の導電体3と第2の導電体9との間に設けられ、電解質7を封止するものである。
【0053】
封止部材6は、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エポキシ樹脂,フッ素樹脂またはシリコーン樹脂からなる群から選ばれる1種の有機系材料であることが好ましい。また、封止部材6は、ガラスまたはセラミックスの無機系材料であることが好ましい。これらの材料は、液体に対して耐性があり、さらに電気的絶縁性が高いため、それらの材料から構成された封止部材6は、例えば電解質7が液体であったとしても、第1の導電体3と電解質7との接触を十分に抑制することができる。
【0054】
封止部材6は、有機系材料の場合、原料がフィルム状または液体状である。
【0055】
封止部材6の原料がフィルム状の場合、封止部材6は、フィルム状の原料に対して窓枠状に開口部を切り開けた後に、フィルム状の原料を100〜300℃で電極間に熱圧着させることにより、第1の導電体3と第2の導電体9との間に接着されるように作製される。このとき封止部材6は、電解質7と第1の導電体3との接触を抑止するように接着される。
【0056】
また、封止部材6の原料が液状の場合、封止部材6は、液状の原料をスクリーン印刷もしくはディスペンサーにより第1の導電体3と第2の導電体9との間に塗布し、それらにより貼り合わされた後に熱重合接着または光重合接着することにより、第1の導電体3と第2の導電体9との間に接着されるように作製される。このとき封止部材6は、電解質7と第1の導電体3との接触を抑止するように接着される。
【0057】
ここで、本発明の光電変換装置と比較するために、図4として本発明と関連する光電変換装置を示す。図1では、封止部材6が、非単結晶半導体4の外側側面4dと接触しているのに対して、図4では封止部材26が非単結晶半導体24の外側側面24dと接触せず離間している点が相違する。
【0058】
図4の場合、封止部材26は窓枠状に開口部を切り開けられた後に、100〜300℃で電極間に熱圧着される。そして、封止部材26は、第1の導電体23と第2の導電体29との間に接着させられるときに、非単結晶半導体24よりも大きく切り開けられたために、非単結晶半導体24の外側側面24dと封止部材26との間に隙間が存在し、その隙間に電解質27が浸入するため、第1の導電体23と電解質27とが接触し、逆電子移動が生じ、光電変換効率が低下する。
【0059】
それに対して、図1の場合、封止部材6が非単結晶半導体4の外側側面4dと接触しているため、第1の導電体3と電解質7との接触を抑制して逆電子移動の発生を低下させ、光電変換効率を向上させることができる。
【0060】
封止部材6は、非単結晶半導体4の外周側面4dと接触するとともに、さらに、外周側面4dから、非単結晶半導体4の主面の一部まで連続して、非単結晶半導体4と接触することが好ましい。ここで、図1中のA部の拡大図である図2をもとにして以下に説明する。
【0061】
図2において、非単結晶半導体4の主面の一部4eは封止部材6と接触している。外周側面4dから主面の一部4eまで封止部材6が連続して接触することにより、第1の導電体3と電解質7との接触を十分に抑制して逆電子移動の発生を低下させ、光電変換効率を向上させることができる。ここで、非単結晶半導体4の主面の一部4eの「一部」とは、非単結晶半導体4の主面のうち外周部を示す。また、非単結晶半導体4の主面の一部4eの「主面」とは、第2の導電体9と対向する側の主面をいう。
【0062】
また、封止部材6は、非単結晶半導体4の外周側面4dと接触するとともに、外周側面4dから、第1の導電体3の主面まで連続して接触することが好ましい。図2において、第1の導電体3の主面は封止部材6と接触している。外周側面4dから主面3まで封止部材6が連続して接触することにより、第1の導電体3と電解質7との接触を十分に抑制して逆電子移動の発生を低下させ、光電変換効率を向上させることができる。
【0063】
封止部材6の厚みは0.06〜1000μmが好ましい。0.06μm未満では、非単結晶半導体4よりも薄くなるため、電解質7の封止が困難となる傾向がある。また、1000μmを超えると、封止部材6に覆われる電解質7も厚くなるため、内部抵抗が増加して装置の光電変換効率が低下する傾向がある。なお、封止部材6の厚みとは、第1の導電体3から第2の導電体9までの封止部材6の長さをいう。
【0064】
封止部材6は、100℃から300℃の条件で、接着材料に熱をかけて圧着して作製されることにより、非単結晶半導体4の外側側面4dと広い面積で接触することができる。
【0065】
また、封止部材6は、接着材料に熱をかけて圧着して作製されることにより、非単結晶半導体4の外側側面4dと接触するだけでなく、外周側面4dから第2の導電体9と対向する側の非単結晶半導体4の主面の一部(図2における4e)まで連続して接触させることができる。
【0066】
(第1の触媒層および第2の触媒層)
本発明の光電変換装置は、上述の構成のほかに、第1の触媒層5および第2の触媒層8を具備することが好ましい。ここで、第1の触媒層5は、電解質7と対向する側の非単結晶半導体4上に設けられ、過電圧を下げ、電解質7と非単結晶半導体4とのオーミック接合を確保して電荷移動を促進させるはたらきを有するものである。また、第2の触媒層8は、第2の導電体9上に設けられ、過電圧を下げ、電解質7と第2の導電体9との電荷移動を促進させるはたらきを有するものである。
【0067】
なお、過電圧とは、光電変換装置1を動作させるために最初に印加する大きな電圧のことをいう。
【0068】
第1の触媒層5および第2の触媒層8としては、具体的にPt(白金)、Pd(パラジウム)などの金属が挙げられる。第1の触媒層5および第2の触媒層8の厚みは、0.5〜20nmが好ましい。0.5nm未満では、触媒層の島同士の間隔が離れすぎて、触媒効果が得られにくくなる。また、20nmを超えると、透過光量が低下する。第1の触媒層5および第2の触媒層8は、スパッタリング法等によって形成されるが、複数の島状に形成するには、上記のように、極めて薄い厚みの形成にとどめておくことで実現することができる。
【0069】
第1の触媒層5および第2の触媒層8は、電解質であるヨウ素との過電圧を減少させるという効果が得られるため、それらはともに設けられることが好ましい。もし、触媒層を第1の触媒層5のみ、または、第2の触媒層8のみとすると、触媒層が無い層において界面での電子授受における過電圧が高くなるため、抵抗が大きくなる傾向がある。
【0070】
(透光性基板)
透光性基板2は、その表面上に第1の導電体3を形成することができ、さらに、非単結晶半導体4まで光を入射させることが可能な基板をいう。ここで、「透光性」とは、非単結晶半導体4が吸収する波長成分(約300〜700nm)を透過することをいう。
【0071】
透光性基板2は、防眩性,遮熱性,耐熱性,低汚染性,抗菌性,防かび性,意匠性,高加工性,耐疵付き・耐摩耗性,滑雪性,帯電防止性,遠赤外線放射性,耐酸性,耐食性,環境対応性等を付与されることにより、光電変換装置の信頼性や商品性をより高めることができる。
【0072】
透光性基板2の材料としては、フッ素樹脂,シリコーンポリエステル樹脂,高耐候性ポリエステル樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート),ポリイミド,ポリカーボネート等の樹脂シート、あるいは白板ガラス,ソーダガラス,硼珪酸ガラス,セラミックス等の無機質シート等が挙げられる。
【0073】
透光性基板2の厚みは0.1μm〜6mmが好ましく、1μm〜4mmがより好ましい。
【0074】
(対極側基板)
対極側基板10は、その表面上に第2の導電体9を形成することができる基板をいう。
【0075】
対極側基板10としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート),PEN(ポリエチレンナフタレート),ポリイミド,ポリカーボネート等の樹脂材料、青板ガラス,ソーダガラス,硼珪酸ガラス,セラミックス等の無機材料、または導電性樹脂材料,有機無機ハイブリッド材料等が挙げられる。
【0076】
対極側基板10の厚みは0.01mm〜5mmが好ましい。
【0077】
<図3の光電変換装置>
次に図3に示す光電変換装置について説明する。図3の光電変換装置は、第1の導電体3と第2の導電体9と非単結晶半導体4と電解質7と封止部材6とを具備するとともに、酸化物半導体11と光励起体12をも具備するものである。以下に、酸化物半導体11および光励起体12について説明する。
【0078】
(酸化物半導体)
酸化物半導体11は、電解質7と対向する側の第2の導電体9上に設けられたものをいう。
【0079】
酸化物半導体11としては、二酸化チタン等からなる多孔質のn型酸化物半導体等が好適に使用される。
【0080】
酸化物半導体11は、通常、二酸化チタン等(n型金属酸化物半導体)から成るものが用いられ、好適には粒状体または線状体(針状体,チューブ状体,柱状体等)の複数が集合して成るものがよい。このとき、平均粒径または平均線径は5〜500nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。平均粒径または平均線径が5nm未満とするだけの材料の微細化は困難な傾向があり、また、500nmをこえると、接合面積が小さくなり光電流が著しく小さくなる傾向がある。
【0081】
酸化物半導体11としては、酸化チタン(TiO)が最適であり、他の材料としては、チタン(Ti),亜鉛(Zn),スズ(Sn),ニオブ(Nb),インジウム(In),イットリウム(Y),ランタン(La),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta),ハフニウム(Hf),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba),カルシウム(Ca),バナジウム(V),タングステン(W)等の金属元素の少なくとも1種以上の金属酸化物半導体がよく、また窒素(N),炭素(C),弗素(F),硫黄(S),塩素(Cl),リン(P)等の非金属元素の1種以上を含有してもよい。酸化チタン等はいずれも電子エネルギーバンドギャップが可視光のエネルギーより大きい2〜5eVの範囲にあり、好ましい。また、酸化物半導体11は、電子エネルギー準位においてその伝導帯が色素の伝導帯よりも低いn型半導体がよい。
【0082】
酸化物半導体11の空孔率は、20〜80%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましい。酸化物半導体11がこのような空孔率を有することにより、光作用極の表面積を1000倍以上に高めることができ、光吸収と発電と電子伝導を効率よく行なうことができる。
【0083】
酸化物半導体11の厚みは0.1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。厚みが0.1μm未満では、光電変換作用が著しく小さくなって実用に適さず、また、厚みが50μmをこえると、光の透過が困難となる。
【0084】
酸化物半導体11が二酸化チタンから成る場合、その製造方法は以下のようになる。
【0085】
まず、TiOのアナターゼ粉末にアセチルアセトンを添加した後、脱イオン水とともに混練し、界面活性剤で安定化させた二酸化チタンのペーストを作製する。次に、作製したペーストをドクターブレード法で第2の導電体9上に一定の速度で塗布し、大気中において300℃〜600℃、好適には400℃〜500℃で、10分〜60分、好適には20分〜40分処理することにより、多孔質の酸化物半導体11を形成する。
【0086】
(光励起体)
本発明において光励起体12は、酸化物半導体11の表面に付着されたものである。
【0087】
光励起体12としては、入射光に対する光電流効率(Incident Photon to Current Efficiency;IPCE)、いわゆる感度が、電解質7の吸収波長や、非晶質半導体4の吸収波長よりも長波長側へ伸びている特性を有しているものが好ましい。とくに、電解質7などにより吸収されることが少ないため、吸収ピークが約700nmより長波長側にピーク感度を有するものがとくに有効である。
【0088】
そのような光励起体12として、ビス型スクアリリウムシアニン色素がIPCEのピーク波長が800nm近くにあり有効である。他に、波長700nm以上に高い感度(IPCE)をもつアズレニウム塩化合物,スクワリン酸誘導体,トリアリルピラゾリン,ヒドラゾン誘導体,ビフェニルジアミン誘導体,トリ−p−トリルアミン(TPTA),トリスアゾ顔料,τ型無金属フタロシアニン,チタニルフタロシアニン,スクアリリウムシアニン,ブラックダイ,クマリン,βジケトナート,Re錯体,Os錯体,Ni錯体,Pd錯体,Pt錯体,フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の光励起体12が好ましい。
【0089】
多孔質の酸化物半導体11に光励起体12を吸着させる方法としては、酸化物半導体11を形成した第2の導電層体9を、光励起体12を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。この場合、溶液及び雰囲気の温度は特に限定されるものではなく、例えば、大気圧下、室温であってもよい。また、浸漬時間は光励起体12、溶媒の種類、溶液の濃度等により適宜調整することができる。これにより、光励起体12を多孔質の酸化物半導体11に吸着させることができる。
【0090】
光励起体12を溶解させるために用いる溶媒は、エタノール等のアルコール類,アセトン等のケトン類,ジエチルエーテル等のエーテル類,アセトニトリル等の窒素化合物等を1種または2種以上混合したものが挙げられる。この場合、溶液中の光励起体12の濃度は5×10−5〜2×10−3mol/l(l:リットル(1000cm))程度が好ましい。
【0091】
また、光励起体12は、単分子,超薄膜(厚みがバンドギャップに影響を与えるナノメートルオーダーの薄い膜厚をいう),微粒子,超微粒子(粒径がバンドギャップに影響を与えるナノメートルオーダーの小さい微粒子をいう),量子ドットのうち、少なくとも一種からなるものが好ましい。特に、光励起体12が超微粒子の半導体から成る場合、もはやバンドギャップは材料固有の値でなくなり、サイズに依存するようになる。その結果、バンドギャップがかなり小さい材料(1eV以下)であっても、ナノサイズ化によってバンドギャップを大きくすることができるので、吸収波長を選択でき、また感度の長波長化も容易である。超微粒子の半導体としては、CdS,CdSe,PbS,PbSe,CdTe,Bi,InP,Si,Ge,CIGS(CuInGaSe),CIS(CuInS),FeS,AgS,Sb,ZnS,Fe等がある。
【0092】
<光発電装置>
本発明の光電変換装置は、それを発電手段として用いることができる。そして、前記光電変換装置は、インバータ装置、電気モーターや照明装置等のように、前記光電変換装置にて発電された電力が供給される負荷とともに用いられることにより、建築物の屋根や壁面に設置される太陽電池等として使用されることが可能となる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
<実施例>
図1の光電変換装置を以下のようにして作製した。
【0095】
第1の導電体3であるSnO2:F層(フッ素ドープSnO2層、シート抵抗:10Ω/□(スクエア)、厚みが1μm)が一方の主面上に形成されたガラス基板(サイズ2cm×2cm、厚み2mm)を、透光性基板2として用いた。
【0096】
真空中にてプラズマCVD装置を用いることにより、それぞれ水素がドープされたp型a−Si層(以下、p型a−Si:H層)とi型a−Si層(以下、i型a−Si:H層)とn型a−Si層(以下、n型a−Si:H層)とを順次連続して第1の導電体3上に非単結晶半導体4を形成した。なお、図1において、第一導電型半導体層4aはp型a−Si:H層に、真性半導体層4bはi型a−Si:H層に、第二導電型半導体層4cはn型a−Si:H層にそれぞれ該当する。
【0097】
具体的にp型a−Si:H層は、原料ガスとしてSiHガスとHガスとBガス(Hで500ppmに希釈したもの)とを用い、プラズマCVD装置のガス流量をそれぞれ3sccm、10sccm、2sccmに設定することで、第1の導電体3上に堆積された(p型a−Si:H層の厚み 90Å(9nm))。
【0098】
また、i型a−Si:H層は具体的に、原料ガスとして、SiHガスとHガスとを用い、プラズマCVD装置のガス流量をそれぞれ30sccm、80sccmに設定することで、p型a−Si:H層上に堆積された(i型a−Si:H層の厚み 1700Å(170nm))。
【0099】
さらに、n型a−Si:H層は具体的に、原料ガスとして、SiHガスとHガスとPHガス(Hで1000ppmに希釈したもの)とを用い、プラズマCVD装置のガス流量をそれぞれ3sccm、30sccm、6sccmに設定することで、i型a−Si:H層上に堆積された(n型a−Si:H層の厚み 100Å(10nm))。
【0100】
なお、p型a−Si:H層、i型a−Si:H層およびn型a−Si:H層の形成時の温度は220℃とした。
【0101】
触媒層5としてのPt(白金)層を、厚み5nmとなるように、スパッタリング法によって、n型a−Si:H層上に形成した。このとき、Pt層は、厚みが非常に薄いために島状に成膜された。
【0102】
フィルム状の封止部材6である熱可塑性接着剤(デュポン社製:商品名「Bynel4164」)を用いて、250℃の条件で、接着材料に熱をかけて圧着して作製することにより、第1の導電体3の主面のうち第2の導電体9と対向する側の主面の外周部4eとを貼り合わせて気密に封止した。このとき、前記した第1の導電体3の主面および第2の導電体9の主面のみならず、非単結晶半導体4の外側側面(図2における4d)および第2の導電体9と対向する側の非単結晶半導体4の主面の外周部(図2における4e)も気密に封止するように、熱可塑性接着剤を設けた。なお、透光性基板2と対極側基板10の間の間隔(電解質7の厚みに相当する)は30μmであった。
【0103】
その後、透光性基板12に予め形成しておいた貫通孔から、電解質7として、沃素(I2),沃化リチウム(LiI),テトラブチルピリジンを含む液状電解質を注入して、光電変換装置(図1)を作製した。
【0104】
<比較例>
図4の光電変換装置を作製したが、これらの光電変換装置は、非単結晶半導体24の外側側面(図4における24d)のと接触しないように、封止部材26を前記も外側側面と離間させた以外は、実施例と同様の方法により作製した。なお封止部材26は、フィルム状の封止部材26を窓枠状に開口部を切り開けた後に、100〜300℃で第1の電極23および第2の電極29の間での熱圧着時に、封止部材26を非単結晶半導体24よりも大きく切り開けることにより設けられたものである。
【0105】
実施例及び比較例の面積1cmの光電変換装置について、AM1.5のソーラーシミュレータの光を照射、光電特性の測定を行った。
【0106】
実施例の光電変換装置は、短絡光電流密度は10.14mA cm−2、開放起電力は895mV、局率因子は0.581、変換効率は5.28%であった。
【0107】
それに対して比較例の光電変換装置は、短絡光電流密度は10.12mA cm−2、開放起電力は678mV、局率因子は0.467、変換効率3.20%であった。
【0108】
実施例と比較例との測定値を比較すると、比較例に対して実施例ではとくに開放起電力および局率因子がそれぞれ32%および24%向上したため、結果として変換効率が割合として65%向上した。光電変換効率が割合で65%も向上したのは、封止部材6が非単結晶半導体4の外周側面の全面と接触することで、電解質7から第1の導電体3への電子移動を防ぐことによって、比較例に対して光電変換効率が向上したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の光電変換装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1におけるAの部分の拡大図である。
【図3】本発明の光電変換装置の一例を示す断面図である。
【図4】電解質含有型の光電変換装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1:入射光
2:透光性基板
3:第1の導電体
4:非単結晶半導体
4a:第一導電型半導体層
4b:真性半導体層
4c:第二導電型半導体層
4d:非単結晶半導体4の外側側面
4e:第2の導電体9と対向する側の非単結晶半導体4の主面の外周部
5:第1の触媒層
6:封止部材
7:電解質
8:第2の触媒層
9:第2の導電体
10:対極側基板
11:酸化物半導体
12:光励起体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1の導電体と、
前記第1の導電体と間隔をあけて対向するように設けられた第2の導電体と、
前記第2の導電体と対向する側の前記第1の導電体の主面上に設けられた非単結晶半導体と、
前記第2の導電体と前記非単結晶半導体との間に設けられた電解質と、
前記第1の導電体と前記第2の導電体との間に設けられ、前記非単結晶半導体の外周側面と接触し、前記電解質を封止する封止部材と、
を具備する光電変換装置。
【請求項2】
前記封止部材が、前記外周側面から、前記第2の導電体と対向する側の前記非単結晶半導体の主面の一部まで連続して、前記非単結晶半導体と接触する請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記封止部材が、前記外周側面から、前記第1の導電体の主面の前記主面まで連続して、前記非単結晶半導体と接触する請求項1または2記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記電解質が、液状またはゲル状の電解質である請求項1乃至3のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記非単結晶半導体が、i型の非単結晶半導体を含むpin構造を有する請求項1乃至4のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記電解質と対向する側の前記非単結晶半導体上に設けられ、電荷移動を促進させる第1の触媒層をさらに具備する請求項1乃至5のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記電解質と対向する側の前記第2の導電体上に設けられ、電荷移動を促進させる第2の触媒層をさらに具備する請求項1乃至6のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記電解質と対向する側の前記第2の導電体上に設けられた酸化物半導体と、
前記酸化物半導体の表面に付着した光励起体と、
をさらに具備する請求項1乃至6のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記封止部材が、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エポキシ樹脂,フッ素樹脂およびシリコーン樹脂から成る群から選ばれる1種である請求項1乃至8のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記封止部材が、ガラスまたはセラミックスである請求項1乃至8のいずれか記載の光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−59782(P2009−59782A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224055(P2007−224055)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム未来技術研究開発委託事業」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】