説明

光電子デバイス用の2,5−結合ポリフルオレン

フルオレンの2位及び5位で結合したフルオレンを実質的な量(10〜100%)で含むポリフルオレンポリマー及びコポリマーは、2.10eVを超える三重項エネルギーが要求されるOLEDデバイス中の活性層として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、2,5−二置換フルオレンモノマー、それから導かれるオリゴマー及びポリマー、並びにかかるオリゴマー及びポリマーを含む光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフルオレンホモポリマー及びコポリマーは、ポリマー型有機発光デバイスにおける活性層用の好ましい材料として出現した。「ポリフルオレン」という用語は、通常、分子の2位及び7位でフルオレンモノマー単位を結合することで生成されるポリマーをいう。この結合パターンはアリール基を通しての線状共役をもたらし、到達可能なバンドギャップ、良好な電荷輸送性及び優れた塗膜形成能を有するポリマーを生み出す。その上、2位及び7位におけるフルオレンの官能化は、これらの位置が求電子試薬に対して最も反応性が高いので容易に達成される。2,7−二官能性フルオレンと適当な二官能性アリーレンモノマーとの共重合は、使用するコモノマーの構造に応じて調整可能なバンドギャップを有するコポリマーを与える。
【0003】
アリールカップリング反応から導かれる2,7−結合セグメントを順次に蓄積すれば、フルオレン単位数約7まではオリゴマーの長さと共に変化する一重項(S1)及び三重項(T1)エネルギーを有する共役アリーレン鎖が得られる(表1)。2,5−及び2,7−フルオレニル材料の三重項エネルギーデータは、部分的にはChemical Physics Letters,vol.411,pg.273,July 1,2005に収載された“Comparison of the chain length dependence of the singlet− and triplet−excited states of oligofluorenes”に基づいている。フルオレン系材料に関しては、一重項及び三重項の相対エネルギーは相関している結果、高い一重項エネルギーを示す材料はまた高い三重項エネルギーも示すことがわかる。
【0004】
【表1】

【0005】
OLEDデバイスでは、それぞれ陰極及び陽極からの電子及び正孔が発光層中で結合して一重項及び三重項励起子を生成するが、これらは放射崩壊によって光を生じることもあれば、非放射崩壊によって熱を生じることもある。ポリフルオレン及び他の共役ポリマーに関しては、三重項状態からの発光は非放射崩壊モードにはとてもたち打ちできないスピン禁制過程であるので、三重項励起子は発光性が非常に高いと言えない。これらの材料に基づくデバイスでは、1つの一重項励起子に対して統計的に3つの三重項励起子が生成されるので、活性層中に生成された三重項励起子から光を引き出すことが極めて望ましい。遷移金属錯体は、スピン軌道結合により、非放射経路に匹敵する効率で放射崩壊することができる。これらの錯体をポリマー型OLEDデバイス中に組み込んだ場合、デバイス中で生成された一重項励起子及び三重項励起子の両方が光を放出し得るので、ほぼ100%の内部量子効率を達成することが可能である。
【0006】
2,7−結合ポリフルオレン材料の相対的に低い三重項エネルギー(表1)のため、これらのデバイス中に組み込むことができる遷移金属錯体は、三重項状態から赤色又はオレンジ色の光を放出するものに限定される。これらの材料と共に使用できるりん光発光体の色範囲を拡張しながら、OLEDデバイス中に層として使用されるポリフルオレンポリマー及びコポリマーの望ましい特徴を利用するためには、一層高い三重項エネルギーを有する2,7−結合ポリフルオレンの類似体が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は次の式Iの化合物に関する。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、R及びRは各々独立にH、C1−20ヒドロカルビル、1以上のS、N、O、P若しくはSi原子を含むC1−20ヒドロカルビル、C4−16ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はC4−16アリール(トリアルキルシロキシ)であるか、或いはR及びRは介在炭素原子と共にC5−20ヒドロカルビル環又は1以上のS、N若しくはOヘテロ原子を含むC4−20ヒドロカルビル環を形成し、
及びRは各々独立にC1−20ヒドロカルビル、C1−20ヒドロカルビルオキシ、C1−20チオエーテル、C1−20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
Xは各々独立にハロ、トリフレート、−B(OH)、−B(OR)、−BOR又はこれらの組合せであり、
Rはアルキル又はアルキレンであり、
a及びbは独立に0又は1である。
【0010】
別の態様では、本発明は、1種以上の式Iの化合物から導かれる1以上の構造単位を含むオリゴマー又はポリマーに関する。さらに別の態様では、本発明は、かかるオリゴマー及び/又はポリマーを含む発光層を有する光電子デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
式Iの化合物は、2位及び5位に重合性置換基を有している。これらはハロ、さらに詳しくはブロモであるか、或いは−B(OH)、−B(OR)又は−BOR(式中、Rは置換又は非置換のアルキレンである。)のようなボレート酸又はボレートエステルであるか、或いはハロとボレートとの組合せであり得る。かかるモノマーは、頭−尾型重合を容易にするため、2位及び5位で非対称的に置換することができる。本発明の文脈中では、「頭−尾」とは、重合に際して各モノマーが第1のモノマーの2位と第2のモノマーの5位との間で結合することを意味する。非対称的に置換されたモノマーは、次の式IIの化合物である。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、X及びYの一方はハロ又はトリフレートであり、X及びYの他方は−B(OH)、−B(OR)又は−BORである。幾つかの実施形態では、Xはハロであり、Yは−B(OH)、−B(OR)又は−BORである。別の実施形態では、Xは−B(OH)、−B(OR)又は−BORであり、Yはハロである。特に、X及びYの一方はブロモであり、X及びYの他方は−BORである。
【0014】
式I及び式IIの化合物はまた、9位/9,9位で一置換又は二置換基されている。これらの置換基(R及びR)は同一のもの又は相異なるものであって、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり得る。特に、R及びRはアルコキシフェニル又はアルキルであり得る。
【0015】
2,5,9,9−置換フルオレンモノマーは、さらに1位、3位、4位、6位、7位又は8位で置換されていてもよく、或いはこれらの位置で置換されていなくてもよい。後者の場合、R及びRはHである。
【0016】
特定の実施形態では、式Iの化合物は次式のものであり、
【0017】
【化3】

【0018】
式IIの化合物は次式のものである。
【0019】
【化4】

【0020】
式I及び式IIの化合物の例には、以下のものがある。
【0021】
【化5】

【0022】
式I及び式IIの化合物は、高温(40〜60℃)の酸性媒質中においてN−ブロモスクシンイミドを用いてフルオレン又はフルオレン誘導体を臭素化することで製造できる。直接臭素化は、実質的な量の2,5−ジブロモフルオレン(15〜25%)を生み出す。この異性体又はそれから導かれる生成物を2,7−異性体から分離し、重合のために適するモノマー(特に9−置換及び9,9−置換化合物)に転化することができる。別法として、2,5−及び2,7−二臭素化フルオレン誘導体を含む混合物をそのまま用いてコポリマーを製造することもできる。別法として、フルオレン誘導体の直接臭素化以外の合理的な合成経路によって2,5−ジブロモ置換誘導体を得ることもできる。
【0023】
本発明のポリマー及びオリゴマーは、適当な二ハロゲン化物とジボロン酸エステル/ジボロン酸とのスズキカップリング及びヤマモトカップリングを始めとする、当技術分野で知られているポリフルオレン製造方法によって製造できる。例えば、Dow Global Technologies社の米国特許第5708130号、同第5777070号、同第6169163号、同第6255449号、同第6512083号、同第6593450号及び同第6900285号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)には、フルオレンサブユニットを含むポリマーの合成法が記載されている。
【0024】
本発明に係るポリマー及びオリゴマーは、式I及び/又は式IIの化合物の1種以上から導かれる1以上の構造単位を含んでいる。本発明の文脈中では、オリゴマーは分子量が小さいことでポリマーから区別され、式I及び式IIの化合物並びに適当なコモノマー及び末端単位を含め、約20より少ないモノマー単位、詳しくは約7より少ないモノマー単位、さらに詳しくは約3より少ないモノマー単位から構成されている。一実施形態では、本発明のオリゴマーは三量体である。三量体は、3つの単位(即ち、2つの末端単位及び1つの中心単位)から構成されたオリゴマーである。幾つかの実施形態では、式I及び式IIの化合物を頭−尾配列をなすようにアセンブルすることで本発明のポリマー及びオリゴマーが生成される。
【0025】
本発明のポリマー及びオリゴマーはさらに、次の式IIIの化合物(即ち、任意の公知2,7−置換フルオレンモノマー)を含むことができる。
【0026】
【化6】

【0027】
式中、R、R、R、R及びXは式I及び式IIの化合物に関して定義した通りである。しかし、ポリフルオレン材料中に組み込まれた実質的な量(10〜100%)の2,5−モノマー単位は完全には共役していないポリマー及びオリゴマーを生成し得る結果、得られたオリゴマー及びポリマーの一重項及び三重項エネルギーは2,7−モノマー単位のみ又は主として2,7−モノマー単位から導かれる材料より顕著に高くなる。したがって、多くの実施形態では、本発明のポリマー及びオリゴマーは式I及び式IIの化合物から導かれる構造単位を約50重量%を超える量で含み、特に前記構造単位を約90重量%を超える量で含んでいる。
【0028】
式I及び式IIの化合物と式IIIの2,7−二置換フルオレン化合物及び/又はアリール−アリールカップリングに適した他のモノマーとの共重合は、同様に、2,7−二置換フルオレンモノマーから製造された対応ポリマーより高いS1及びT1エネルギーを有するコポリマーを生み出すことができる。したがって、本発明のポリマー及びオリゴマーはさらに、アリーレンモノマー(特にアリール化合物、ヘテロアリール化合物又はトリアリールアミン)を始めとする共役化合物から導かれる構造単位を含むことができる。好適なアリールアミンは、Dow Global Technologies社の米国特許第5728801号、同第5929194号、同第5948552号、同第6309763号、同第6605373号、同第6900285号、国際公開第2004/060970号、同第2005/049546号及び同第2005/052027号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。他の好適なアリーレンモノマーの例には、1,4−フェニレン又は置換フェニレン、1,3−フェニレン又は置換フェニレン、2,6−ナフチレン、9,10−アントリレン、及び次の式の化合物がある。
【0029】
【化7】

【0030】
本発明に係るオリゴマーはさらに、次の式を有する末端単位を含むことができる。
【0031】
【化8】

【0032】
式中、R、R、R、R及びXは式I及び式IIの化合物に関して定義した通りである。本発明のオリゴマーの例には次のものがある。
【0033】
【化9】

【0034】
光電子デバイス(例えば、OLED)は、通例、最も簡単な場合には陽極層、対応する陰極層、及び前記陽極と前記陰極との間に配設された有機エレクトロルミネセント層を含んでいる。電極間に電圧バイアスを印加した場合、陰極からエレクトロルミネセント層中に電子が注入される一方、エレクトロルミネセント層から陽極に電子が除去される(又は陽極からエレクトロルミネセント層中に「正孔」が「注入」される)。エレクトロルミネセント層中で正孔が電子と結合して一重項又は三重項励起子を形成する際に発光が起こると共に、一重項及び/又は三重項励起子が放射崩壊によって基底状態に戻る際にも発光が起こる。
【0035】
陽極、陰極及び発光材料に加えてOLED中に存在し得る他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層は陰極に直接接触している必要はなく、多くの場合に電子輸送層は正孔が陰極に向かって移動するのを防止するための正孔ブロック層としても役立つ。有機発光デバイス中に存在し得る追加の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送発光層及び電子輸送発光層がある。
【0036】
OLEDデバイスは、一重項発光体を含む蛍光性のものであるか、或いは1種以上の三重項発光体又は1種以上の一重項発光体と1種以上の三重項発光体との組合せを含むりん光性のものであり得る。かかるデバイスは、特に限定されないが、Ir、Os及びPtのような遷移金属の錯体を始めとする、青色、黄色、オレンジ色及び赤色りん光色素の1種以上、そのいずれか1種又はその組合せを含み得る。好適なエレクトロホスホレセント及びエレクトロフルオレセント金属錯体としては、American Dye Source社(カナダ、ケベック)から供給されるものが使用できる。
【0037】
有機エレクトロルミネセント層(即ち、発光層)は、動作時に電子及び正孔の両方を実質的な濃度で含み、励起子形成及び発光のための部位を提供する有機発光デバイス中の層である。正孔注入層は、陽極に接触していて陽極からOLEDの内層への正孔注入を促進する層であり、電子注入層は、陰極に接触していて陰極からOLED中への電子注入を促進する層であり、電子輸送層は、陰極及び/又は電子注入層から電荷再結合部位への電子伝導を容易にする層である。電子輸送層を含む有機発光デバイスの動作中には、電子輸送層中に存在する電荷キャリヤー(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、発光層中に存在する正孔及び電子の再結合を通じて発光が起こり得る。正孔輸送層は、OLEDの動作時に陽極及び/又は正孔注入層から電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、陽極に直接接触している必要はない層である。正孔輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が正孔であり、残留電子との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。電子輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への電子伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が電子であり、残留正孔との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。
【0038】
陽極として使用するのに適した材料には、四点プローブ技法で測定して約1000オーム/平方未満のバルク抵抗率を有する材料がある。陽極としては、酸化インジウムスズ(ITO)がしばしば使用される。これは、ITOが光の透過に対して実質的に透明であり、したがって電気活性有機層から放出された光の脱出を容易にするからである。陽極層として使用できる他の材料には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛インジウムスズ、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0039】
陰極として使用するのに適した材料には、特に限定されないが、負電荷キャリヤー(電子)をOLEDの内層に注入できる金属及びITOなどの金属酸化物を含む一般導電体がある。陰極として使用するのに適した金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタニド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物がある。陰極層として使用するのに適した合金材料には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。層状の非合金構造体、例えばカルシウムのような金属又はLiFのような金属フッ化物の薄層をアルミニウム又は銀のような金属の厚い層で覆ったものも、陰極として使用できる。特に、陰極はただ1種の金属(とりわけ、アルミニウム金属)からなり得る。
【0040】
電子輸送層中に使用するのに適した材料には、特に限定されないが、ポリ(9,9−一置換又は二置換フルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVがある。
【0041】
正孔輸送層中に使用するのに適した材料には、特に限定されないが、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N'−ビス(4−メチルフェニル)−N,N'−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1'−(3,3'−ジメチル)ビフェニル)−4,4'−ジアミン、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N',N'−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N',N'−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族第三アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及び米国特許第6023371号に開示されているようなポリチオフェンがある。
【0042】
発光層中に使用するのに適した材料には、特に限定されないが、ポリフルオレン、好ましくはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)及びそのコポリマー(例えば、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(F8−TFB))、ポリ(ビニルカルバゾール)及びポリフェニレンビニレン並びにこれらの誘導体のようなエレクトロルミネセントポリマーがある。加えて、発光層は、青色、黄色、オレンジ色、緑色又は赤色りん光色素又は金属錯体或いはこれらの組合せを含み得る。りん光色素として使用するのに適した材料には、特に限定されないが、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(赤色色素)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(緑色色素)及びイリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)(青色色素)がある。ADS社(American Dyes Source社)から商業的に入手可能なエレクトロフルオレセント及びエレクトロホスホレセント金属錯体も使用できる。ADS緑色色素には、ADS060GE、ADS061GE、ADS063GE、ADS066GE、ADS078GE及びADS090GEがある。ADS青色色素には、ADS064BE、ADS065BE及びADS070BEがある。ADS赤色色素には、ADS067RE、ADS068RE、ADS069RE、ADS075RE、ADS076RE、ADS067RE及びADS077REがある。
【0043】
本発明に係るオリゴマー及びポリマーは、正孔輸送層、電子輸送層及び発光層中に使用できる。例えば、2,5−ビス−エチレンジオキサボリル−9,9−ビス(4−メトキシフェニル)フルオレンとジブロモトリアリールアミンとの反応によって生成される50/50コポリマーは、正孔輸送層中に使用するのに適している。別法として、式I及び式IIの化合物の主要部分と発光性トリアリールアミンの小部分との反応によって生成されるコポリマーは、発光層中に使用するのに適している。別法として、式I及び式IIの化合物と、フルオレンの9位に結合したエレクトロフルオレセント及びエレクトロホスホレセント金属錯体のような発光性単位を含むモノマーとの反応によって発光性ポリマーを生成することができる。好適な重合性金属錯体の例は、昭和電工社の国際公開第2003/001616号、Dow Global Technologies社の国際公開第2005/016945号、及びGeneral Electric社の国際公開第2008/014037号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。加えて、2,5−フルオレンホモポリマーは電子輸送層及び濃青色発光層として適している。例えば、2,5−フルオレンホモポリマーを発光色素と混合することで、発光層として使用するのに適したブレンド材料を形成することができる。発光色素は、(主に一重項状態から発光する)蛍光性のもの又は(主に一重項状態ではない状態から発光する)りん光性のものであり得る。さらに、本発明のオリゴマー及びポリマーはまた、例えば何らかの所望電荷輸送能力を得るために上述した正孔及び電子輸送材料とブレンドすることで、特定の正孔輸送機能、電子輸送機能又は発光機能を有する材料用のホストとしても使用できる。
【0044】
定義
本発明の文脈中では、ヒドロカルビルとは、特記しない限り水素及び炭素のみを含む任意の有機部分を意味し、特に限定されないが、アルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル及びこれらの置換類似体を始めとする、芳香族部分、脂肪族部分、脂環式部分並びに芳香族部分、脂肪族部分及び脂環式部分の2以上を含む部分を包含し得る。1以上のS、N、O、P又はSi原子を含むヒドロカルビルには、特に限定されないが、アルコキシ、アシル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、オキサアルキル、ハロアルキル及びシリル並びにこれらの置換類似体がある。
【0045】
アルキルとは、線状、枝分れ又は環状の炭化水素構造及びこれらの組合せを含むものであり、低級アルキル及び高級アルキルを包含する。好ましいアルキル基はC20以下のものである。低級アルキルとは、1〜6の炭素原子、好ましくは1〜4の炭素原子を有するアルキル基をいい、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチルを包含する。高級アルキルとは、7以上の炭素原子、好ましくは7〜20の炭素原子を有するアルキル基をいい、n−ヘプチル、s−ヘプチル、t−ヘプチル、オクチル及びドデシルを包含する。シクロアルキルはアルキルの部分集合であり、3〜8の炭素原子を有する環状炭化水素基を包含する。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びノルボルニルがある。アルケニル及びアルキニルとは、2以上の水素原子がそれぞれ二重結合又は三重結合で置き換えられたアルキル基をいう。
【0046】
アリール及びヘテロアリールとは、窒素、酸素及び硫黄から選択される0〜3のヘテロ原子を含む五員若しくは六員の芳香環又はヘテロ芳香環、窒素、酸素及び硫黄から選択される0〜3のヘテロ原子を含む二環式の九員若しくは十員芳香環系又はヘテロ芳香環系、或いは窒素、酸素及び硫黄から選択される0〜3のヘテロ原子を含む三環式の十三員若しくは十四員芳香環系又はヘテロ芳香環系を意味する。六員ないし十四員の芳香族炭素環には、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン及びフルオレンがあり、五員ないし十員の芳香族複素環には、例えば、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールがある。
【0047】
アリールアルキルとは、アリール環に結合したアルキル残基を意味する。その例はベンジル及びフェネチルである。ヘテロアリールアルキルとは、ヘテロアリール環に結合したアルキル残基を意味する。その例はピリジニルメチル及びピリジニルエチルである。アルキルアリールとは、1以上のアルキル基が結合したアリール残基を意味する。その例はトリル及びメシチルである。
【0048】
アルコキシ又はアルコキシルとは、酸素を介して母体構造に結合した、直鎖、枝分れ又は環状構造を有する炭素原子数1〜8の基及びこれらの組合せをいう。その例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ及びシクロヘキシルオキシがある。低級アルコキシとは、1〜4の炭素原子を含む基をいう。
【0049】
アシルとは、カルボニル官能基を介して母体構造に結合した、直鎖、枝分れ又は環状構造を有する炭素原子数1〜8の基をいい、飽和、不飽和及び芳香族のもの並びにこれらの組合せを包含する。アシル残基中の1以上の炭素は、母体への結合点がカルボニルに保たれる限り、窒素、酸素又は硫黄で置き換えることができる。その例には、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t−ブトキシカルボニル及びベンジルオキシカルボニルがある。低級アシルとは、1〜4の炭素原子を含む基をいう。
【0050】
複素環とは、1〜2の炭素が酸素、窒素又は硫黄のようなヘテロ原子で置き換えられたシクロアルキル又はアリール残基を意味する。本発明の範囲内に含まれる複素環の例には、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する場合には一般にメチレンジオキシフェニルといわれる)、テトラゾール、モルホリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、ジオキサン及びテトラヒドロフランがある。
【0051】
置換されたとは、特に限定されないがアルキル、アルキルアリール、アリール、アリールアルキル及びヘテロアリールを含む残基において、該残基の3以下のH原子が低級アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ハロアルキル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルコキシ、カルボキサミド、アシルオキシ、アミジノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、OCH(COOH)、シアノ、第一アミノ、第二アミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、スルホキシド、スルホン、フェニル、ベンジル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヘテロアリール又はヘテロアリールオキシで置き換えられたものをいう。
【0052】
ハロアルキルとは、1以上のH原子がハロゲン原子で置き換えられたアルキル残基をいう。ハロアルキルという用語はペルハロアルキルを包含する。本発明の範囲内に含まれるハロアルキル基の例には、CHF、CHF及びCFがある。
【0053】
オキサアルキルとは、1以上の炭素が酸素で置き換えられたアルキル残基をいう。それはアルキル残基を介して母体構造に結合される。その例には、メトキシプロポキシ、3,6,9−トリオキサデシルなどがある。オキサアルキルという用語は、当技術分野で理解されている通りであると意図されている[米国化学会発行のNaming and Indexing of Chemical Substances for Chemical Abstracts,196を参照されたいが、127(a)の制約は受けない。]。即ち、それは酸素が単結合を介して隣接原子に結合し(てエーテル結合を形成し)ている化合物をいい、カルボニル基に見られるように二重結合した酸素を意味しない。同様に、チアアルキル及びアザアルキルとは、1以上の炭素がそれぞれ硫黄又は窒素で置き換えられたアルキル残基をいう。その例には、エチルアミノエチル及びメチルチオプロピルがある。
【0054】
シリルとは、1〜3の炭素が四価ケイ素で置き換えられかつケイ素原子を介して母体構造に結合されたアルキル残基を意味する。シロキシとは、2つの炭素がアルキル残基、アリール残基又はシクロアルキル残基で末端封鎖された四価ケイ素で置き換えられかつ酸素原子を介して母体構造に結合されたアルコキシ残基である。
【実施例】
【0055】
一般手順
2,5−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレンからのポリ−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシ)フェニル−2,7−ジイル−alt−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシ)フェニル−2,5−ジイルの製造をスキーム1に示す。2,5−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを、2,7−ジブロモ異性体及び2,5−ジブロモ異性体の約80/20混合物から単離した。かかる異性体混合物は、ポリマー結合メルカプタンを促進剤として使用しながらメタンスルホン酸中で2,7−ジブロモフルオレノン及び2,5−ジブロモフルオレノンの混合物を過剰のフェノールと反応させることで得た。ジブロモフルオレノン異性体混合物は、酢酸/メタンスルホン酸混合物中において約50℃でフルオレノンをN−ブロモスクシンイミドで臭素化することで得た。純粋なビスフェノールの単離は、選択的抽出及びそれに続く反復クロマトグラフィーによって行った。
【0056】
【化10】

【0057】
例1:2,5−ジブロモ−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレンの製造
50%NaOH水溶液1.0ml(約5mmol)及びAdogen 464(約100mg)を加えたトルエン(10ml)中における2,5−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン2.54g(5.0mmol)及びn−ヘキシルブロミド2.06g(12.5mmol)の磁気撹拌混合物を約16時間加熱還流した。冷却した混合物をトルエン(15ml)及び水(20ml)で希釈し、次いで分液漏斗に移し、水性相を廃棄した。有機相を水(3×25ml)及びブライン(1×25ml)で洗浄し、次いでDrieriteのコーンに通した。溶媒の蒸発によって3.4gの無色油状物を得、これをヘキサン−酢酸エチル勾配(0〜10%EtOAc)で溶出するシリカゲル(120g)上でのクロマトグラフィーにかけた。生成物を無色の粘着性ガム質として単離した。この物質を−20℃のエタノールから結晶化したが、結晶は室温未満で融解した。
【0058】
例2:ポリ−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレン−2,7−ジイル−alt−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレン−2,5−ジイルの製造
化合物 279mg(0.413mmol)、2,7−ビス−エチレンジオキサボリル−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレン272mg(0.414mmol)及び2−(2,6−ジメトキシフフェニル)フェニルジシクロヘキシルホスフィン17.8mg(0.043mmol)のトルエン(25ml)溶液をアルゴンで10分間脱気し、酢酸パラジウム2.8mg(0.0124mmol)を添加した。別のフラスコ内において、水酸化テトラエチルアンモニウム3.04g(2.07mmol)の10%溶液を15分間脱気し、次いでトルエン溶液に添加した。フラスコを70℃の油浴中に浸し、正のN圧力下で20時間撹拌した。冷却した混合物をトルエン及び水で希釈し、次いでCeliteで濾過した。水性相を廃棄し、有機相を水(3×50ml)及びブライン(1×50ml)で洗浄し、次いでCelite、アミン官能性シリカゲル及びDrieriteを層状化したコーンに通した。濾液を真空下で約5mlの体積に濃縮し、メタノール(約75ml)中での沈殿によってポリマーを単離した。ポリマーの数平均分子量は(ポリスチレン標準に比べて)約13Kであった。
【0059】
例3:ポリ−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレン−2,7−ジイルの製造
ポリマーの製造に関して記載した手順と同様にして、2,7−ビス−エチレンジオキサボリル−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレンと2,7−ジブロモ−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレンとのPd(0)触媒カップリングによってポリマーを得た。ポリマーの数平均分子量は(ポリスチレン標準に比べて)約182Kであった。
【0060】
例4:9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)−2,7−ビス(9,9−ジオクチルフルオレン−2−イル)フルオレンの製造
化合物 100mg(0.153mmol)、2−(2,2−ジメチル)プロピレンジオキシボリル−9,9−ジオクチルフルオレン161mg(0.321mmol)及び2−(2,6−ジメトキシフフェニル)フェニルジシクロヘキシルホスフィン10.0mg(0.025mmol)のトルエン(5ml)溶液をアルゴンで10分間脱気し、酢酸パラジウム1.5mg(0.007mmol)を添加した。別のフラスコ内において、水酸化テトラエチルアンモニウム1.2g(0.822mmol)の10%溶液を15間脱気し、次いでトルエン溶液に添加した。フラスコを70℃の油浴中に浸し、正のN圧力下で20時間撹拌した。冷却した混合物をトルエン及び水で希釈し、次いでCeliteで濾過した。水性相を廃棄し、有機相を水(3×50ml)及びブライン(1×50ml)で洗浄し、次いでCelite、アミン官能性シリカゲル及びDrieriteを層状化したコーンに通した。濾液を真空下で濃縮乾固し、得られた残留物をシリカゲル(12g)上でのクロマトグラフィー(0〜10%EtOAc/ヘキサン)にかけることで、150mg(76%)の化合物を無色の油状物として得た。
【0061】
【化11】

【0062】
例5:フルオレン三量体の製造
同様にして、2−(2,2−ジメチル)プロピレンジオキシボリル−9,9−ジオクチルフルオレンを2,7−ジブロモ−9,9−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フルオレンと縮合させることでフルオレン三量体を製造した。ポリマー及び対応する2,7−結合ポリフルオレンに関する一重項(S1)及び三重項(T1)エネルギーを表2に示す。2,7−結合フルオレンの50%を2,5−結合フルオレンで置き換えると、すべてのフルオレンポリマーに関して三重項エネルギーが0.1〜0.2eV増加する。
【0063】
【表2】

【0064】
例6:9,9−ビス(4−メトキシフェニル)フルオレン−2,5−ビス−ネオペンチルグリコールボロネートの製造
【0065】
【化12】

【0066】
磁気撹拌棒、漿液ストッパー及び窒素入口を備えた乾燥250mlフラスコに、9,9−ビス(4−メトキシフェニル)−2,5−ジブロモフルオレン2.841g(5.30mmol)の無水テトラヒドロフラン(100ml)溶液を仕込んだ。フラスコ及び内容物を−78℃に冷却し、ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.06M、6.5ml、13.25mmol)を2〜3分かけて添加した。淡黄色溶液を−78℃で5.5時間撹拌し、次いでトリエチルボレート3.2ml(18.55mmol)を添加した。混合物を室温まで放温し、一晩撹拌し、次いで飽和塩化アンモニウム(25ml)及び0.1N HCl(5ml)の添加によって奪活した。この混合物を分液漏斗に移し、水性相をエーテル(50ml)で抽出した。合わせた有機相を水(1×100ml)及びブライン(1×100ml)で洗浄し、次いで無水CaSOのコーンで濾過した。溶媒の蒸発によって2.82gの白色固体を得た。この固体をクロロホルム(50ml)及びネオペンチルグリコール(1.20g、11.5mmol)の混合物と共に還流した。1時間後、冷却した混合物を分液漏斗に移し、有機相をブラインで洗浄し、次いで濃縮して約4.5gの固体塊を得、これをヘキサン中5〜60%酢酸エチルで溶出する120gのシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけた。シリカゲル上でのクロマトグラフィー後、生成物を2.36g(74%)の無色泡状物として単離し、これをエーテル/ヘキサンから再結晶して無色の結晶を得た。H NMR(CDCl)δ 8.30(d,1,フルオレニル−4−H)、7.80(m,1,フルオレニル−H)、7.75(s,1,フルオレニル−H)δ、7.69(m,1,フルオレニル−H)、7.40(m,1,フルオレニル−H)、7.28(t,1,フルオレニル−7H)、7.12及び6.79(二重線(9−アリール−H)の二重線),3.94(s,4,ボレート−CH's)、3.77(s,10,ArOCH及びボレート−CH's)、1.17(s,6,ジェミナルCH)及び1.04ppm(s,6,ジェミナルCH)。
【0067】
例7:ポリ−9,9−ビス(4−メトキシフェニル)−2,5−フルオレン−alt−N−4−ブチルフェニル−4,4’−ジフェニルアミン−ジイルの製造
【0068】
【化13】

【0069】
9,9−ビス(4−メトキシフェニル)フルオレン−2,5−ビス−ネオペンチルグリコールボロネート327mg(0.543mmol)、N−4−ブチルフェニル−4,4−ビス−4−ブロモフェニル−トリフェニルアミン249mg(0.543mmol)及びジシクロヘキシル−2−(2,6−ジメトキシフフェニル)フェニルホスフィン16mg(0.0385mmol)のトルエン(12ml)溶液をアルゴンで15分間脱気し、酢酸パラジウム2.4mg(0.011mmol)を添加した。水酸化テトラエチルアンモニウム3.8gの脱気した10%溶液を添加し、混合物を70℃の油浴中に浸し、窒素下においてその温度で19時間撹拌した。冷却した混合物を水(10ml)及びトルエン(20ml)で希釈し、次いでCeliteで濾過した。濾液を分液漏斗に移し、水性相を廃棄し、有機相を水(3×25ml)及びブライン(2×25ml)で洗浄し、次いで無水CaSOのコーンに通した。濾液を250mgのアミン官能性シリカゲルと共に一晩撹拌し、次いで濾過した。濾液を約10mlの体積に濃縮した。濃縮物を激しく撹拌しながら、メタノール75mlを少量ずつ添加した。沈殿を濾過によって集め、40℃の真空炉内で一晩乾燥した。収量は362mg(98%)であった。H NMR(CDCl)δ 7.75−6.75(m,26,ArH)、3.80(m,6,arOCH)、2.65(m,2,NCHR)、1.60(m,2,NCHCHCH)、1.45(m,2,NCHCHCH)及び1.0ppm(m,3,NCHCHCH)。UVスペクトル(CHCl)λmax=359nm;ε=30,563。
【0070】
例8A:9,9−ジオクチル−2−(9,9−ビス−4−(2−モルホリノエトキシフェニル)−2,7−ジイル)−9,9−ジオクチルフルオレン−2−イルテルフルオレンの製造
【0071】
【化14】

【0072】
材料:9,9−ビス−4−(2−モルホリノエトキシ)フェニル−2,7−ジブロモフルオレンは、相間移動触媒としてのAdogen 464の存在下で50%NaOH/トルエンを使用しながら、9,9−ビス−4−ヒドロキシフェニル−2,7−ジブロモフルオレンを2−クロロエチルモルホリン塩酸塩でアルキル化することで製造した。9,9−ジオクチル−2−ネオペンチルグリコールボロネートは、9,9−ジオクチルフルオレンのリチウム化(BuLi、EtO/−78℃)、次いでボリル化(トリエトキシボレート)、加水分解及びネオペンチルグリコールでの再エステル化によって製造した。
【0073】
三量体の製造:9,9−ビス−4−(2−モルホリノエトキシ)フェニル−2,7−ジブロモフルオレン1.101g(1.5mmol)、9,9−ジオクチル−2−ネオペンチルグリコールボロネート1.544g(3.075mmol)及びジシクロヘキシル−2−(2,6−ジメトキシフフェニル)フェニルホスフィン0.054g(0.131mmol)のトルエン(30ml)溶液を15分間脱気し、次いでPd(OAc) 0.084g(0.0375mmol)及び水酸化テトラエチルアンモニウム11gの別途に脱気した10%水溶液を添加した。撹拌混合物を70℃の油浴中に浸し、窒素下で18時間撹拌した。冷却した混合物を濾過し、分液漏斗に移した。水性相を廃棄し、有機相を水(3×50ml)及びブライン(1×50ml)で洗浄し、次いで無水CaSOのコーンに通した。溶媒の除去によって白色の泡状物を得、これを80gのアルミナ(中性)上でのクロマトグラフィーによって精製した−収量1.23g(60%)。H NMR(CDCl)δ 8.0−7.4(m,20,フルオレニル−H)、7.3及び6.8(AB二重線,8,9−アリールH)、4.1(t,4,arOCH)、3.7(t,8,モルホリン−OCH)、2.75(t,4,arOCHN)、2.5(t,8,モルホリン−NCH)、2.08(t,8,9−CHR)、1.3−1.0(m,40,9−CH(CCHCH)、0.8(t,12,9−CH(CHCH)及び0.7ppm(m,8,9−CH(CHCH)。
【0074】
例8B:9,9−ジオクチル−2−(9,9−ビス−4−(2−モルホリノエトキシフェニル)−2,5−ビス−9,9−ジオクチルフルオレン−2−イルの製造
【0075】
【化15】

【0076】
材料:9,9−ビス−4−(2−モルホリノエトキシ)フェニル−2,5−ジブロモフルオレンは、相間移動触媒としてのAdogen 464の存在下で50%NaOH/トルエンを使用しながら、9,9−ビス−4−ヒドロキシフェニル−2,5−ジブロモフルオレンを2−クロロエチルモルホリン塩酸塩でアルキル化することで製造する。9,9−ジオクチル−2−ネオペンチルグリコールボロネートは、9,9−ジオクチルフルオレンのリチウム化(BuLi、EtO/−78℃)、次いでボリル化(トリエトキシボレート)、加水分解及びネオペンチルグリコールでの再エステル化によって製造する。
【0077】
三量体の製造:9,9−ビス−4−(2−モルホリノエトキシ)フェニル−2,5−ジブロモフルオレン1.101g(1.5mmol)、9,9−ジオクチル−2−ネオペンチルグリコールボロネート1.544g(3.075mmol)及びジシクロヘキシル−2−(2,6−ジメトキシフフェニル)フェニルホスフィン0.054g(0.131mmol)のトルエン(30ml)溶液を15分間脱気し、次いでPd(OAc) 0.084g(0.0375mmol)及び水酸化テトラエチルアンモニウム11gの別途に脱気した10%水溶液を添加する。撹拌混合物を70℃の油浴中に浸し、窒素下で18時間撹拌する。冷却した混合物を濾過し、分液漏斗に移す。水性相を廃棄し、有機相を水(3×50ml)及びブライン(1×50ml)で洗浄し、次いで無水CaSOのコーンに通す。溶媒の除去によって白色の泡状物を得、これを80gのアルミナ(中性)上でのクロマトグラフィーによって精製する。
【0078】
デバイスの作製
以下の例は、ポリマー又は商業的に入手できるポリ−2,7−フルオレン(ADS−131)を発光層として使用するデバイスの作製及び評価を記載している。ポリマーを発光層として用いて作製した試験用OLEDデバイスは、商業的に入手できるポリ−2,7−フルオレン(ADS−131)を発光層として用いて作製した類似のデバイスと同等の性能を示した。
【0079】
例9:2,5−フルオレンポリマーを有するOLED
UV−オゾン処理した清浄な2.5cm×2.5cmのITOパターン化ガラス基板上に、約60nmの厚さを有するPEDOT/PSS(Baytron P VP 8000、HC Starck社から溶液として入手したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート))の層をスピンコーティングによって堆積させた。次いで、被覆基板を空気中においてホットプレート上で160℃で30分間ベークした。F8−TFB層上にエレクトロルミネセントポリマーの層を溶液から堆積させた。この層は、プロフィロメトリー(profilometry)で測定して約40〜50nmの厚さを有していた。
【0080】
二層(NaF、Al)陰極を堆積させた。次に、被覆基板をベルジャー蒸発器内に配置し、系を約1×10−6torrの圧力が得られるまで排気した。次いで、物理蒸着により、(較正水晶微量てんびんで測定して)厚さ約3nmのフッ化ナトリウム層を被覆基板の最終層上に堆積させた。続いて、真空下での蒸着によってフッ化ナトリウム層上に厚さ約130nmのアルミニウム金属層を堆積させることでOLEDの陰極構成部材を形成した。
【0081】
例10:2,5−フルオレンポリマー及びTFB中間層を有するOLED
UV−オゾン処理した清浄な2.5cm×2.5cmのITOパターン化ガラス基板上に、約60nmの厚さを有するPEDOT/PSS(Baytron P VP 8000、HC Starck社から溶液として入手したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート))の層をスピンコーティングによって堆積させた。次いで、被覆基板を空気中においてホットプレート上で160℃で30分間ベークした。次いで、PEDOT/PSS被覆基板上に、約10〜20nmの厚さを有するF8−TFB(Sumation社から入手したオクチルフルオレン−トリアリールアミンコポリマー)の正孔輸送層をスピンコートした。次いで、F8−TFB−PEDOT/PSS被覆基板をアルゴン中においてホットプレート上で170℃で30分間ベークした。F8−TFB層上にエレクトロルミネセントポリマーの最終層を溶液から堆積させた。この層は約40〜50nmの厚さを有していた。
【0082】
二層(NaF、Al)陰極を堆積させた。次に、被覆基板をベルジャー蒸発器内に配置し、系を約1×10−6torrの圧力が得られるまで排気した。次いで、物理蒸着により、(較正水晶微量てんびんで測定して)厚さ約3nmのフッ化ナトリウム層を被覆基板の最終層上に堆積させた。続いて、真空下での蒸着によってフッ化ナトリウム層上に厚さ約130nmのアルミニウム金属層を堆積させることでOLEDの陰極構成部材を形成した。
【0083】
例11:2,5−フルオレンポリマー/TFBブレンド及びTFB中間層を有するOLED
UV−オゾン処理した清浄な2.5cm×2.5cmのITOパターン化ガラス基板上に、約60nmの厚さを有するPEDOT/PSS(Baytron P VP 8000、HC Starck社から溶液として入手したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート))の層をスピンコーティングによって堆積させた。次いで、被覆基板を空気中においてホットプレート上で160℃で30分間ベークした。次いで、PEDOT/PSS被覆基板上に、約10〜20nmの厚さを有するF8−TFB(Sumation社から入手したオクチルフルオレン−トリアリールアミンコポリマー)の正孔輸送層をスピンコートした。次いで、F8−TFB−PEDOT/PSS被覆基板をアルゴン中においてホットプレート上で170℃で30分間ベークした。F8−TFB層上に、エレクトロルミネセントポリマー(JC392−147)とF8−TFBとのブレンド(90:10比)からなる最終層を溶液から堆積させた。この層は約40〜50nmの厚さを有していた。
【0084】
二層(NaF、Al)陰極を堆積させた。次に、被覆基板をベルジャー蒸発器内に配置し、系を約1×10−6torrの圧力が得られるまで排気した。次いで、物理蒸着により、(較正水晶微量てんびんで測定して)厚さ約3nmのフッ化ナトリウム層を被覆基板の最終層上に堆積させた。続いて、真空下での蒸着によってフッ化ナトリウム層上に厚さ約130nmのアルミニウム金属層を堆積させることでOLEDの陰極構成部材を形成した。
【0085】
比較例:2,7−フルオレン及びTFB中間層を有するOLED
UV−オゾン処理した清浄な2.5cm×2.5cmのITOパターン化ガラス基板上に、約60nmの厚さを有するPEDOT/PSS(Baytron P VP 8000、HC Starck社から溶液として入手したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート))の層をスピンコーティングによって堆積させた。次いで、被覆基板を空気中においてホットプレート上で160℃で30分間ベークした。次いで、PEDOT/PSS被覆基板上に、約10〜20nmの厚さを有するF8−TFB(Sumation社から入手したオクチルフルオレン−トリアリールアミンコポリマー)の正孔輸送層をスピンコートした。次いで、F8−TFB−PEDOT/PSS被覆基板をアルゴン中においてホットプレート上で170℃で30分間ベークした。F8−TFB層上に、エレクトロルミネセントポリマーADS131(American Dye Source社から入手したポリフルオレン)の最終層を溶液から堆積させた。この層は約40〜50nmの厚さを有していた。
【0086】
二層(NaF、Al)陰極を堆積させた。次に、被覆基板をベルジャー蒸発器内に配置し、系を約1×10−6torrの圧力が得られるまで排気した。次いで、物理蒸着により、(較正水晶微量てんびんで測定して)厚さ約3nmのフッ化ナトリウム層を被覆基板の最終層上に堆積させた。続いて、真空下での蒸着によってフッ化ナトリウム層上に厚さ約130nmのアルミニウム金属層を堆積させることでOLEDの陰極構成部材を形成した。
【0087】
上記の例に記載したOLEDの各々に関し、ルーメン/ワット(LPW)、外部量子効率(EQE)、電流対電圧(IV)特性及びスペクトル特性を測定した。各デバイスのIV特性を測定するためには、電圧を印加し、得られる電流応答をKeithley 237光源測定ユニットを用いて測定した。同時に、Minolta LS 110輝度計に対して較正したシリコンダイオードを用いて、カンデラ/平方メートル単位の輝度出力を測定した。輝度計で測定したcd/m値をルーメン値に変換するためには、ランベルト発光パターンを仮定し、次の式を使用した。ルーメン=(cd/m)×(デバイス面積)×(π)。上記の例に記載した各OLEDのスペクトルは、1/4メートルのActon研究用分光計上に取り付けたCCDカメラを用いて測定した。CCD/分光計の組合せの相対スペクトル応答は、較正白熱電球を用いて較正した。スペクトル測定結果は、CIEx点及びCIEy点を決定すると共に、LPWデータからEQEデータへの変換を可能にする。10ma/cmの電流密度で測定したデバイス性能データの要約を表3に示す。下記のデバイスデータは、本発明に記載した材料から作製したこれらのOLEDデバイスが対照のポリ−2,7−フルオレン材料と同等なEQE性能を示すことを表している。これは、本発明の化合物が各種のエレクトロルミネセント材料用の基本構成単位として広く適することを示唆している。
【0088】
【表3】

【0089】
以上、本明細書中には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるこのような修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式Iの化合物。
【化1】

(式中、R及びRは各々独立にH、C1−20ヒドロカルビル、1以上のS、N、O、P若しくはSi原子を含むC1−20ヒドロカルビル、C4−16ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はC4−16アリール(トリアルキルシロキシ)であるか、或いはR及びRは介在炭素原子と共にC5−20ヒドロカルビル環又は1以上のS、N若しくはOヘテロ原子を含むC4−20ヒドロカルビル環を形成し、
及びRは各々独立にC1−20ヒドロカルビル、C1−20ヒドロカルビルオキシ、C1−20チオエーテル、C1−20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
Xは各々独立にハロ、トリフレート、−B(OH)、−B(OR)、−BOR又はこれらの組合せであり、
Rはアルキル又はアルキレンであり、
a及びbは独立に0又は1である。)
【請求項2】
Xがハロである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xがブロモである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Xが−B(OH)、−B(OR)又は−BORである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
及びRがHである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
及びRがアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
及びRがアルコキシフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
及びRがアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
次の式を有する、請求項1記載の化合物。
【化2】

【請求項10】
次の式を有する、請求項1記載の化合物。
【化3】

【請求項11】
次の式を有する、請求項1記載の化合物。
【化4】

【請求項12】
次の式を有する、請求項1記載の化合物。
【化5】

【請求項13】
次の式を有する、請求項1記載の化合物。
【化6】

【請求項14】
次の式IIの化合物。
【化7】

(式中、R及びRは各々独立にH、C1−20ヒドロカルビル、1以上のS、N、O、P若しくはSi原子を含むC1−20ヒドロカルビル、C4−16ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はC4−16アリール(トリアルキルシロキシ)であるか、或いはR及びRは介在炭素原子と共にC5−20ヒドロカルビル環又は1以上のS、N若しくはOヘテロ原子を含むC4−20ヒドロカルビル環を形成し、
及びRは各々独立にH、C1−20ヒドロカルビル、C1−20ヒドロカルビルオキシ、C1−20チオエーテル、C1−20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
X及びYの一方はハロ又はトリフレートであり、X及びYの他方は−B(OH)、−B(OR)又は−BORであり、
Rはアルキル又はアルキレンであり、
a及びbは独立に0又は1である。)
【請求項15】
Xがハロであり、Yが−B(OH)、−B(OR)又は−BORである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
Xが−B(OH)、−B(OR)又は−BORであり、Yがハロである、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
X及びYの一方がブロモであり、X及びYの他方が−BORである、請求項14記載の化合物。
【請求項18】
及びRがHである、請求項14記載の化合物。
【請求項19】
及びRがアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである、請求項14記載の化合物。
【請求項20】
及びRがアルコキシフェニルである、請求項14記載の化合物。
【請求項21】
及びRがアルキルである、請求項14記載の化合物。
【請求項22】
次の式を有する、請求項14記載の化合物。
【化8】

【請求項23】
次の式を有する、請求項14記載の化合物。
【化9】


【公表番号】特表2012−505831(P2012−505831A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531041(P2011−531041)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/051476
【国際公開番号】WO2010/044940
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】