説明

免震ダンパ

【課題】免震装置を構成する伸縮体を位置ズレ修正回路で中立状態に復帰させる際に、伸縮体のリザーバにおける液面位置を最適な状態に維持して、伸縮体の伸縮作動の妨げを防止できる免震ダンパを提供する。
【解決手段】免震装置を構成する伸縮体1が外筒14とシリンダ体11との間にリザーバRを有するユニフロー型に設定される。シリンダ体11内にピストン体13で画成されるピストン側室R1およびロッド側室R2を、伸縮体1に着脱自在に設けられて、タンクの作動流体を給排路31,32を介して給排する位置ズレ修正回路3に連結させる。位置ズレ修正回路3に連結されてリザーバRにおける液面位置Oを設定する排出ポートを外筒14に設けた排出路17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震ダンパに関し、特に、地震後の建築物に発現される横方向の位置ズレを修正するジャッキ機能を備える免震ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
免震ダンパを有する免震装置の作動後に建築物に発現される横方向の位置ズレ、すなわち、地盤と建築物との間、あるいは、高層建築物の中間層における下方階と上方階との間に発現される横方向の位置ズレについては、たとえば、建築物に設置されるエレベータの運転を保障する上で修正される必要がある。そのため、たとえば、特許文献1に開示の位置ズレ修正回路の提案がある。
【0003】
この位置ズレ修正回路は、免震ダンパを構成する伸縮体に向けてタンクの作動流体を吐出する供給源と、この供給源からの作動流体の伸縮体に向けての供給方向を切り換える切換弁と、この切換弁と伸縮体との間に接続される給排路とを有する。
【0004】
免震ダンパの伸縮体は、流体圧シリンダ構造に形成されて伸縮作動時に作動流体を一方向に流すユニフロー型に設定されると共に作動流体を収容する閉鎖型に設定されるリザーバを有する。
【0005】
この伸縮体にはこの伸縮体の伸縮作動時に減衰力を発生させる減衰部が接続されており、この減衰部は、常開型に設定されるロック弁と、このロック弁の下流に配設されて減衰弁として機能するリリーフ弁とを有する。
【0006】
そして、伸縮体におけるシリンダ体内に摺動可能に収装されるピストン体でシリンダ体内に画成されるピストン側室とリザーバとの間、および、上記シリンダ体内に同じく上記ピストン体で画成されるロッド側室とロック弁との間に、上記位置ズレ修正回路における給排路が連結可能に形成される。
【0007】
それゆえ、免震装置の作動後に建築物に横方向の位置ズレが生じた場合には、位置ズレ修正回路を伸縮体に連結することにより、この位置ズレ修正回路におけるタンクからの作動流体の供給で伸縮体を中立状態に復帰できる。つまり、伸縮体にジャッキ機能を発揮させて建築物における横方向の位置ズレを修正できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−188043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示の免震ダンパは、位置ズレ修正回路で伸縮体を中立状態に復帰させる際には、上記ロック弁をロック状態にする必要がある。しかし、実際の作業で、たとえば、作業員がロック弁の操作を忘れてしまうなどして、ロック弁がロック状態にされないと、位置ズレ修正回路から作動流体を供給しても伸縮体が中立状態に復帰できず、ジャッキ機能を発揮できない。
【0010】
また、これにより、位置ズレ修正回路からの作動流体がリザーバの許容する作動流体の量を超えてリザーバに供給されることで、伸縮体の伸縮を妨げる可能性がある。
【0011】
そこで、この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、減衰部におけるロック弁がロック状態とされなくても、伸縮体の伸縮作動の妨げを防止できる免震ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、この発明による免震ダンパの構成を、基本的には、地盤と建築物との間、あるいは、建築物における下方階と上方階との間に配設される免震ダンパが、ユニフロー型に設定されると共に横置き配置されて一端を上記建築物あるいは上方階に連結し他端を上記地盤あるいは下方階に連結する伸縮体と、この伸縮体に接続されてこの伸縮体の伸縮作動時に減衰力を発生する減衰部とで構成され、減衰部が、上記伸縮体からの作動流体の通過を許容しあるいは阻止するロック弁と、このロック弁の下流側に配設されて作動流体の通過時に減衰力を発生する減衰弁とを有し、上記伸縮体が、作動流体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に入出可能に挿通するロッド体と、このロッド体に保持されると共にシリンダ体内に摺動可能に収装されて上記シリンダ体内にピストン側室とロッド側室とを画成するピストン体と、上記シリンダ体の外に配設されて作動流体を収容すると共に上記シリンダ体内からの作動流体の流出および上記シリンダ体内への作動流体の流入を可能にするリザーバとを有し、リザーバがチェック弁を介して上記ピストン側室に連通し、ピストン側室がチェック弁を介して上記ロッド側室に連通し、ロッド側室が上記減衰部を介して上記リザーバに連通し、上記伸縮体が着脱自在に連結される位置ズレ修正回路の作動時に、上記ロッド側室および上記ピストン側室に位置ズレ修正回路からの作動流体の供給を受けて伸縮自在とされる免震ダンパにおいて、上記伸縮体が上記位置ズレ修正回路に連通すると共に上記リザーバに収容される作動流体の液面位置を設定する排出ポートを設けてなるとする。
【0013】
この発明による免震ダンパでは、ロック弁がロック状態に維持されたとき、位置ズレ修正回路からの作動流体を伸縮体に供給して、伸縮体をジャッキ作動させることが可能になる。
【0014】
そして、この発明による免震ダンパでは、伸縮体が位置ズレ修正回路に連通すると共にリザーバに収容される作動流体の液面位置を設定する排出ポートを設けてなるから、誤作動で減衰部におけるロック弁がロック状態に維持されない状態で、ジャッキ作動を意図して位置ズレ修正回路からの作動流体を伸縮体に供給させてしまっても、リザーバの中立状態時の作動流体量より多くなる作動流体が排出ポートを介して位置ズレ修正回路に戻る。
【発明の効果】
【0015】
この発明による免震ダンパによれば、誤作動などで減衰部におけるロック弁がロック状態とされないで、たとえば、ジャッキ作動を行っても、伸縮体に必要以上の収容されることによるこの伸縮体の伸縮作動の妨げを防止でき、伸縮体における伸縮作動を保障できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明による免震ダンパの回路例を示す概略図である。
【図2】位置ズレ修正回路の一例を示す回路図である。
【図3】ロック弁がロック状態に維持されたときの減衰部の一例を示す回路図である。
【図4】伸縮体に位置ズレ修正回路が連結された一の状態例を部分的に示す概略図である。
【図5】伸縮体に位置ズレ修正回路が連結された他の状態例を部分的に示す概略図である。
【図6】排出ポートおよび補給ポートの取り付け例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による免震ダンパ100は、図1に示すように、伸縮体1と、この伸縮体1に接続されてこの伸縮体1の伸縮作動時に減衰作用をする減衰部2とで構成される。
【0018】
そして、免震ダンパ100は、図示しないが、低層建築物あるいは中層建築物における地盤と建築物との間、あるいは、高層建築物の中間層における下方階と上方階との間に同じく図示しない免震支承と共に配設される。
【0019】
このとき、免震ダンパ100を構成する伸縮体1が横置き配置されると共に、この伸縮体1の一端が建築物あるいは上方階に連結されると共に他端が地盤あるいは下方階に連結される。
【0020】
それゆえ、免震ダンパ100は、免震装置における免震支承があるがゆえに地盤側と縁が切れている建築物が横揺れするときに、この建築物の横揺れを減衰部2における減衰力の発生で速やかに沈静化することが可能になる。
【0021】
そして、この免震ダンパ100は、伸縮体1を強制的に伸縮させると、ジャッキとして機能することになり、建築物における横方向の位置ズレ、すなわち、地盤と建築物との間、あるいは、高層建築物の中間層における下方階と上方階との間の横方向の位置ズレを修正することが可能になる。
【0022】
ちなみに、上記の免震支承は、基本的には、任意の構成のものとされて良く、図示しないが、たとえば、低層建築物とされる一般住宅などの戸建建築物における地盤と建築物との間に配設されるボールアイソレータの他に、中層建築物における地盤と建築物との間に配設される積層ゴム支柱からなるものがある。
【0023】
この積層ゴム支柱からなる免震支承は、規模を異にするが、高層建築物の中間層における下方階と上方階との間にも配設される。なお、図示しないが、建築物が低層建築物とされる一般住宅などの戸建建築物である場合、あるいは、中層建築物である場合であっても、一階と二階以上に渡るエレベータを設ける場合には、エレベーターピットが地下に設けられることがあり、いわゆる地下階と一階との間でエレベータの軌条が横ズレすることがある。この横ズレした軌条を修正する観点からすれば、一般住宅などの戸建建築物や中層建築物にあっても、この発明による免震ダンパ100を利用できる。
【0024】
一方、免震ダンパ100には、図2に示すように、この免震ダンパ100を構成する伸縮体1に着脱自在に設けられる位置ズレ修正回路3が連結され、この位置ズレ修正回路3で伸縮体1が伸縮させ、ジャッキ機能が発揮される。
【0025】
ここで、ジャッキ作動とは、免震ダンパ100を構成する伸縮体1が位置ズレ修正回路3によって伸縮することを言い、ジャッキ機能とは、位置ズレ修正回路3によって伸縮する伸縮体1が建築物における横方向の位置ズレを修正することを言う。
【0026】
なお、位置ズレ修正回路3は、免震ダンパ100にジャッキ機能を発揮させるときに、免震ダンパ100を構成する伸縮体1に連結されるが、伸縮体1に常時連結されていても良い。
【0027】
以下に、詳しく説明すると、図1に戻って、免震ダンパ100にあって、伸縮体1は、作動流体を収容するシリンダ体11と、このシリンダ体11内に入出可能に挿通するロッド体12と、このロッド体12に保持されると共にシリンダ体11内に摺動可能に収装されてシリンダ体11内にピストン側室R1とロッド側室R2とを画成するピストン体13と、シリンダ体11の外に配設されてシリンダ体11との間に収容される作動流体の液面Oを境にする気室Aを有するリザーバRを画成する外筒14とを有する。
【0028】
また、リザーバRがチェック弁C1を介してピストン側室R1に連通し、ピストン側室R1がチェック弁C2を介してロッド側室R2に連通し、ロッド側室R2が減衰部2を介してリザーバRに、すなわち、ロッド側室R2が減衰部2に連通すると共にこの減衰部2がリザーバRに連通する。
【0029】
それゆえ、たとえば、ロッド体12が図1中で左行してシリンダ体11内から突出する伸長作動時に、ピストン体13の移動で収縮するロッド側室R2からの作動流体が減衰部2に向けて流出する。このとき、ピストン体13の言わば後退で膨張するピストン側R1にリザーバRからの作動流体がチェック弁C1を介して流入する。
【0030】
そして、ロッド体12が図1中で右行してシリンダ体11内に没入する収縮作動時に、ピストン体13の移動で収縮するピストン側室R1からの作動流体がピストン体13に配設されるチェック弁C2を介してロッド側室R2に流入する。このとき、ロッド侵入体積分に相当する量の作動流体がロッド側室R2から減衰部2に向けて流出する。
【0031】
そして、上述のように、伸縮体1の伸長作動時および収縮作動時に減衰部2に流入した作動流体は、伸縮体1におけるリザーバRに流出する。つまり、伸縮体1は、シリンダ体11に対してロッド体12が入出する伸縮作動時にロッド側室R2からの作動流体を減衰部2に向けて吐出すると共に、減衰部2を介して作動流体をリザーバRに流出する。それゆえ、伸縮体1は、ユニフロー型に設定されている。
【0032】
ちなみに、伸縮体1がユニフロー型に設定される場合には、ピストン側室R1とロッド側室R2との受圧面積比が2:1とされるのが良い。その理由は、伸縮体1の伸長作動時と収縮作動時とにおけるロッド側室R2から吐出される作動流体量がそれぞれ同じになることで、伸縮体1の伸縮作動時に減衰部2における減衰弁23によって発生される減衰力がそれぞれ同じになることによる。
【0033】
また、具体的には、位置ズレ修正回路3が利用されるとき、たとえば、ピストン側室R1に作動流体が位置ズレ修正回路3から強制的に供給されてロッド側室R2が収縮するときには、伸縮体1が伸長方向にジャッキ作動し、反対に、ロッド側室R2に作動流体が位置ズレ修正回路3から強制的に供給されてピストン側室R1が収縮するときには、伸縮体1が収縮方向にジャッキ作動する。
【0034】
なお、図示するところでは、伸縮体1がシリンダ体11と外筒14との間に形成されるリザーバRをその内部に有する複筒構造に形成されるが、これに代えて、たとえば、前記した特許文献1に開示の伸縮体のように、リザーバを外装する単筒構造に形成されても良い。
【0035】
また、図1に示すシリンダ体11内のピストン側室R1は、ピストン体13に配設されるチェック弁C2を介してロッド側室R2に連通するが、このチェック弁C2については、図示するところに代えて、同じく前記した特許文献1に開示されているように、シリンダ体11の外に配設されても良い。
【0036】
ところで、伸縮体1は、ピストン側室R1に連通すると共に位置ズレ修正回路3に連通可能とされる第一給排路15、および、ロッド側室R2に連通すると共に位置ズレ修正回路3に連通可能とされる第二給排路16を有する。
【0037】
これにより、位置ズレ修正回路3の連結を可能にして、この位置ズレ修正回路3からの作動流体のシリンダ体11内のピストン側室R1およびロッド側室R2に対する給排を可能にする。
【0038】
そして、伸縮体1は、上記の第一給排路15,第二給排路16に加えて、後述する排出ポート17a(図6参照)に連通すると共に位置ズレ修正回路3に連通可能とされる排出路17、および、同じく後述する補給ポート18a(図6参照)に連通すると共に位置ズレ修正回路3に連通可能とされる補給路18を有する。
【0039】
上記の第一給排路15,第二給排路16,排出路17および補給路18における位置ズレ修正回路3への連結を実現する端部は、詳しくは図示しないが、位置ズレ修正回路3が、あるいは、位置ズレ修正回路3に接続される流路を形成するパイプ類が連結されるときに開放状態になって、第一給排路15,第二給排路16,排出路17および補給路18の位置ズレ修正回路3への連通を許容する任意の構造に形成される。
【0040】
つまり、第一給排路15,第二給排路16,排出路17および補給路18の各端部は、たとえば、オペレートチェック弁構造に形成されて、位置ズレ修正回路3に連結されないとき、作動流体の外部への流出を阻止すると共に、位置ズレ修正回路3に、たとえば、ワンタッチで連結されるとき、作動流体の外部たる位置ズレ修正回路3に対する流出入を可能にするように構成される。
【0041】
上記の排出ポート17aは、図示する実施形態では、図6に示すように、伸縮体1を形成する外筒14の径方向の断面にあって、たとえば、外筒14の右斜め上に設けられ、位置ズレ修正回路3に連通されないときには、着脱可能な栓体17bで封止される。
【0042】
また、上記の補給ポート18aは、同じく外筒14の径方向の断面にあって、たとえば、外筒14の上端に設けられ、位置ズレ修正回路3に連通されないときには、着脱可能な栓体18bで封止される。
【0043】
また、排出ポート17aおよび補給ポート18aは、図示しないが、栓体17bあるいは栓体18bが取り外されるときには、位置ズレ修正回路3が、あるいは、位置ズレ修正回路3に接続される流路を形成するパイプ類が連結される。
【0044】
排出ポート17aの開穿位置は、外筒14の上端から脇側にかけての間、具体的には、たとえば、外筒14の中心を通る水平線に対して約35度ほどの傾斜、となる位置とされる。これによって、この排出ポート17aがリザーバRに開口し、したがって、リザーバRで中立位置の液面位置を超える量の作動流体が外筒14に設けた排出ポート17aを介して伸縮体1の外、つまり、位置ズレ修正回路3に流出される。
【0045】
一方、減衰部2は、伸縮体1からの作動流体の通過を許容しあるいは阻止するロック弁22と、このロック弁22の下流側に配設されて作動流体の通過時に減衰力を発生する減衰弁23とを有する。
【0046】
ロック弁22は、ポペット弁体22aを有し、このポペット弁体22aが背後に配設される附勢バネ22bの附勢力で前進して、その先端をバルブシート部(符示せず)に着座させるときに閉鎖状態、つまり、ロック状態になり、その先端がバルブシート部から離れるときに開放状態、つまり、アンロック状態になる。
【0047】
また、ポペット弁体22aは、先端側と後端側との連通を許容する絞り22cを有し、この絞り22cにより、後端側が後述する切換弁24の作動で開放状態になるとき、先端側と後端側との間における差圧発生を可能にする。差圧発生時には、ポペット弁体22aの先端側の圧力がポペット弁体22aの背後側の圧力に勝り、これにより、ポペット弁体22aの後退が可能とされ、このロック弁22をアンロック状態になる。
【0048】
また、減衰部2は、ロック弁22の背後に配設される常開型の切換弁24を有する。この切換弁24は、附勢バネ24aの附勢力で維持される連通ポジション24bと、附勢バネ24aの附勢力に抗するソレノイド24cの励磁力で切り換わる遮断ポジション24dとを有する。
【0049】
それゆえ、この切換弁24は、これが連通ポジション24bに維持されるとき、ロック弁22を開放作動させてアンロック状態にし、これが遮断ポジション24dに維持されるとき、ロック弁22を開放作動させないで、ロック状態にする。
【0050】
ちなみに、この切換弁24は、地震の発生時には、必ず連通ポジション24bに維持されていることが肝要となるから、地震の発生時にソレノイド24cへの通電が遮断されてもその影響を受けないように附勢バネ24aで連通ポジション24bに維持される構成とされる。
【0051】
また、この切換弁24は、何時地震が発生してもロック弁22が開放作動できるように常開型に設定されるが、たとえば、低層建築物たる一般住宅などの戸建建築物が台風などの強風で揺れるとき、この切換弁24を図示しない切換スイッチなどで遮断ポジション24dに切り換えて、免震ダンパ100を作動させない、つまり、建築物が風の力に対向して揺れないようにすることも可能になる。そして、ロック弁22に流入する作動流体の圧力は、リリーフ弁25で設定される。
【0052】
したがって、たとえば、減衰部2に流入する作動流体の流量が大きくなることが想定される場合には、図示しないが、この減衰部2が複数並列されて伸縮体1に接続されることで流量が大きくなることに対応するとしても良い。
【0053】
それゆえ、減衰部2は、伸縮体1における伸縮作動時にロッド側室R2からの作動流体が流路21を介して流入されると、切換弁24が連通ポジション24bに維持されて開放状態にあるときに、作動流体がロック弁22に引き続いて減衰弁23を通過し、減衰弁23による所定の減衰力の発生が実現されると共に、流路21、ロック弁22および減衰弁23を介して作動流体を伸縮体1におけるリザーバRに戻し、伸縮体1において作動流体の過不足を生じさせない。
【0054】
以上のように、免震ダンパ100は、免震支承と共に免震装置を構成して、地盤と建築物との間、あるいは、高層建築物の中間層における下方階と上方階との間に配設され、地震があったときには、建築物における横揺れを沈静化する。
【0055】
すなわち、建築物が横揺れするとき、伸縮体1は、言わば強制的に伸縮する。したがって、ロッド側室R2から吐出される作動流体が減衰弁23を通過してリザーバRに流出して、また、作動流体が減衰弁23を通過することで所定の減衰力が発生して、建築物の横揺れが沈静化する。
【0056】
位置ズレ修正回路3は、図2に示すように、ハウジングH内に、タンクTと、ポンプPと、往路L1および復路L2と、切換弁Vと、第一給排路31および第二給排路32と、補給路33および排出路34とを有する。
【0057】
ちなみに、第一給排路31,第二給排路32,補給路33および排出路34のハウジングHの外周に露呈する各端部は、前記した伸縮体1における第一給排路15,第二給排路16,排出路17および補給路18における各端部と同様に、たとえば、オペレートチェック弁構造に形成されて、伸縮体1に連結されないとき作動流体の外部への流出を阻止すると共に、伸縮体1に、たとえば、ワンタッチで連結されるときには、作動流体の外部たる伸縮体1に対する流出入を可能にするように構成される。
【0058】
また、図示しないが、この位置ズレ修正回路3が伸縮体1に連結されるときには、位置ズレ修正回路3におけるタンクTに収容の作動流体における液面の高さ位置が伸縮体1のリザーバRにおける液面Oの高さ位置より下方にあることが好ましい。
【0059】
位置ズレ修正回路3について、逐次説明すると、ハウジングHは、図中に一点鎖線で示すように、前記した免震ダンパ100が配設されている場所までこの位置ズレ修正回路3の移動を可能にするための移動手段H1をその下端に有する。
【0060】
そして、ハウジングHは、その上端に吊り輪H2を有し、この吊り輪H2を利用して、たとえば、クレーンによるハウジングHの吊持を可能にし、外部から高層建築物における中間層への搬送たる吊り上げを可能にするように配慮されている。
【0061】
タンクTは、伸縮体1に供給する作動流体を収容する。ここでの作動流体は、伸縮体1に収容されて伸縮体1の伸縮作動を実現可能にする作動流体と同じものとされる。
【0062】
ちなみに、作動流体としては、いわゆる作動油があるが、その他の、たとえば、錆びや腐敗を防止する成分を含有する水が利用されるとしても良い。このような水を利用する場合には、いわゆる漏出時に、油汚れよりは被害を少なくできる点で有利になる。また、タンクTは、タンク機能を発揮するものとして捉える観点からすれば、これが伸縮体1におけるリザーバR(図1参照)に代えられても良い。
【0063】
ポンプPは、タンクTに収容されている作動流体を駆動源たるモータMの駆動で汲み上げる供給源であって、図示するところでは、作動流体の吐出量を一定にする固定型に設定されているが、これに代えて、作動流体の吐出量を大小させる可変型に設定されても良い。
【0064】
ポンプPが可変型に設定される場合には、この可変型に設定されるポンプは、伸縮体1における作動流体の圧力状態に応じて、つまり、伸縮体1における圧力情報をフィードバックさせて作動流体の吐出量を可変にしても良いことはもちろんである。
【0065】
往路L1は、ポンプPから吐出される作動流体を切換弁Vに向けて流通させる。往路L1には、いわゆる逆流を阻止するチェック弁C3と、作動流体の浄化を可能にするフィルタF1とが設けられる。
【0066】
そして、往路L1には、復路L2に接続される分岐路35が接続され、この分岐路35には、リリーフ弁35aが配設される。このリリーフ弁35aは、ポンプPが駆動して往路L1に作動流体を吐出するときの吐出圧を設定する。
【0067】
一方、復路L2は、切換弁Vからの作動流体をタンクTに戻す。復路L2には、上記した分岐路35が接続される部位より下流となる部位に作動流体の浄化を可能にするフィルタF2が設けられ、フィルタF2は、図中で下端となる開口端をタンクTに臨ませている。
【0068】
切換弁Vは、往路L1からの作動流体の流れ方向、すなわち、伸縮体1への供給方向を切換可能にするもので、方向切換弁と称されても良い。なお、切換弁Vは、図示するところでは、手動切換弁からなるが、自動切換弁からなっても良い。
【0069】
すなわち、切換弁Vは、中立位置たる遮断ポジションV1を有すると共に、手動レバーV2による切換動作で遮断ポジションV1から切り換る伸長ポジションV3と、同じく手動レバーV2による切換動作で遮断ポジションV1から切り換る収縮ポジションV4とを有する。
【0070】
さらに、切換弁Vは、各ポジションV1,V3,V4に切り換った状態を保持する保持手段V5を有し、この保持手段V5は、たとえば、ディテント構造に形成される。
【0071】
そして、切換弁Vは、これが遮断ポジションV1にあるときには、ポンプPに連通する往路L1をタンクTに連通する復路L2に連通させ、ポンプPから吐出されることがある作動流体を復路L2に流入させて、タンクTに戻す。
【0072】
また、切換弁Vは、これが伸長ポジションV3にあるときには、ポンプPに連通する往路L1を第一給排路31に連通させると共に、第二給排路32をタンクTに連通する復路L2に連通させる(図5参照)。
【0073】
また、この切換弁Vは、これが収縮ポジションV4にあるときには、ポンプPに連通する往路L1を第二給排路32に連通させると共に、第一給排路31をタンクTに連通する復路L2に連通させる(図4参照)。
【0074】
なお、切換弁Vに連通する第一給排路31は、図1に示した伸縮体1における第一給排路15に連通可能とされ、同じく切換弁Vに連通する第二給排路32は、伸縮体1における第二給排路16に連通可能とされる。
【0075】
ところで、図2に示した第一給排路31には、分岐路たる補給路33が接続され、この補給路33は、図1に示した伸縮体1における補給路18に連通可能とされる。
【0076】
補給路33と補給路18とが連通されるときには、タンクTの作動流体が補給ポート18aを介してリザーバRに補給される。補給路33には、手動バルブ33aが配設され、補給路33における作動流体の流通を要しないときには、この手動バルブ33aが閉じられ、ポンプPからの作動流体が補給路33に連通する補給路18に流通されない。
【0077】
そして、上記した第二給排路32には、伸力設定弁32aが配設される。したがって、ポンプPは、この伸力設定弁32aで発生する圧力以上の圧力で作動流体を吐出することが肝要になる。
【0078】
すなわち、ジャッキとして機能する伸縮体1について、ピストン側室R1とロッド側室R2との間に圧力差を生じないと、ピストン体13がシリンダ体11内を摺動しない、すなわち、伸縮体1が伸長作動しない。
【0079】
そこで、切換弁Vを伸長ポジションV3に切り換えて、タンクTからの作動流体をピストン側室R1に供給して伸縮体1を伸ばすことを可能にするために、ロッド側室R2における圧力を上記の伸力設定弁32aで設定し、このロッド側室R2における圧力に勝る圧力の作動流体をポンプPによってピストン側室R1に供給することで、ピストン体13がシリンダ体11内を伸側に摺動し、伸縮体1が伸長作動する。
【0080】
ちなみに、上記の伸力設定弁32aは、たとえば、カウンターバランス弁あるいはリリーフ弁からなる。なお、伸力設定弁32aは、絞り効果が得られれば良いから、単なる絞りからなるとしても良い。
【0081】
以上からすると、前記した往路L1と復路L2とを連結する分岐路35に配設されるリリーフ弁35aは、上記の伸力設定弁32aで設定される圧力以上の圧力のときにリリーフ作動するように設定される。
【0082】
また、伸力設定弁32aにはチェック弁32bが並列に接続され、手動バルブ31a,32cについては、第一給排路31および第二給排路32にそれぞれ設けられる。
【0083】
この手動バルブ31a,32cは、位置ズレ修正回路3にあって、伸縮体1から分離されるいわゆる不使用時における作動流体の外部への漏出を手動で確実に阻止し得る点で有利となる。
【0084】
特に、補給路33に設けられる手動バルブ33aは、補給ポート18aを介して伸縮体1におけるリザーバRに作動流体を補給するとき以外は、閉じられていることが良い。
【0085】
つまり、補給路33は、第一給排路31から分岐するが、作動流体がこの第一給排路31を介して伸縮体1に向けて流通する場面は、伸縮体1におけるピストン側室R1に作動流体を供給するときである。
【0086】
このとき、分岐路33が作動流体の流通を許容する場合には、ピストン側室R1に作動流体が供給される間中、リザーバRにも作動流体が補給されることになり、ピストン側室R1に作動流体を供給して伸縮体1をジャッキ作動させることが効率良く実現されなくなる不具合を招来する。この不具合を回避するために、上記の手動バルブ33aを操作して遮断する。
【0087】
そして、位置ズレ修正回路3は、図1中で下端となる下流側端がタンクTに連通すると共に、図1中で上端となる上流側端が外部に連通可能とされる。具体的には、位置ズレ修正回路3は、図1に示した伸縮体1における排出路17に連通可能とされる排出路34を有する。
【0088】
そして、この排出路34には、伸縮体1におけるリザーバRから流出される作動流体をタンクTに流入させ、いわゆる逆流をさせないようにチェック弁34aが設けられる。
【0089】
次に、位置ズレ修正回路3の作動例を説明する。ちなみに、この位置ズレ修正回路3を伸縮体1に接続して作動させる際には、図3に示すように、減衰部2の切換弁24をソレノイド24cへの励磁で遮断ポジション24dに切り換える。
【0090】
これによって、減衰部2において、ロック弁22がロック状態になり、ロッド側室R2(図1参照)からの作動流体が流路21を介してこの減衰部2に流入することが阻止される。
【0091】
そして、このときには、図4および図5に示すように、伸縮体1に減衰部2(図3参照)が回路的に接続されない状況になり、したがって、位置ズレ修正回路3からの作動流体は、減衰部2を介することなく、伸縮体1に対して給排される。
【0092】
そこで、以下には、減衰部2が接続されずに位置ズレ修正回路3が伸縮体1に連結されると共に、この位置ズレ修正装置3の作動で伸縮体1がどのように作動するかを図4および図5に基づいて説明する。
【0093】
なお、作業員に起因する誤作動などで、切換弁24が遮断ポジション24dに切り換えられない場合もあるが、そのことについては、後述する。
【0094】
この発明による免震ダンパ100では、ロック弁22がロック状態に維持されたとき、位置ズレ修正回路3からの作動流体を伸縮体1に供給して、伸縮体1をジャッキ作動させることが可能になる。
【0095】
そして、この発明による免震ダンパ100では、伸縮体1が位置ズレ修正回路3に連通すると共にリザーバRに収容される作動流体の液面O位置を設定する排出ポート17aを設けてなるから、誤作動で減衰部2におけるロック弁22がロック状態に維持されない状態で、ジャッキ作動を意図して位置ズレ修正回路3からの作動流体を伸縮体1に供給させてしまっても、リザーバRの中立状態時の作動流体量より多くなる作動流体が排出ポート17aを介して位置ズレ修正回路3に戻る。
【0096】
すなわち、先ず、図4に示すように、伸縮体1に連結される位置ズレ修正回路3における切換弁Vが収縮ポジションV4に切り換った場合を説明する。このときには、ポンプPから吐出される作動流体が、図中に矢印で示すように、第二給排路32に配設される伸力設定弁32aに並列接続するチェック弁32bおよび第二給排路32を介して伸縮体1におけるロッド側室R2に供給される。
【0097】
伸縮体1におけるピストン側室R1は、第一給排路31に連通し、この第一給排路31は、切換弁Vを介してタンクTに連通するから、タンクTからの作動流体がロッド側室R2に供給されると、図中に矢印で示す方向にピストン体13がシリンダ体11内を摺動して、このロッド側室R2が膨張し、図中に矢印で示すように、ピストン側室R1の作動流体が第一給排路31を介してタンクTに排出されて、伸縮体1が収縮作動する。このとき、伸縮体1は、作動流体の供給を受けて収縮作動するから、収縮方向のジャッキとして機能する。
【0098】
次に、図5に示すように、伸縮体1に連結される位置ズレ修正回路3における切換弁Vが伸長ポジションV3に切り換った場合を説明する。このときには、ポンプPから吐出される作動流体が、図中に矢印で示すように、第一給排路31を介して伸縮体1におけるピストン側室R1に供給される。
【0099】
ちなみに、このとき、第一給排路31から分岐する分岐路33については、図2に示した手動バルブ33aの操作で遮断状態におかれ、ポンプPからの作動流体は、補給路18を介してリザーバRに供給されず、伸縮体1におけるピストン側室R1のみに供給される。
【0100】
伸縮体1におけるロッド側室R2は、第二給排路32に連通し、この第二給排路32は、伸力設定弁32aが配設されて、切換弁Vを介してタンクTに連通する。これにより、タンクTからの作動流体がピストン側室R2に供給されると、図中に矢印で示す方向にピストン体13がシリンダ体11内を摺動してこのピストン側室R1が膨張し、図中に矢印で示すように、ロッド側室R2の作動流体が第二給排路32を介してタンクTに排出されて、伸縮体1が伸長作動する。このとき、伸縮体1は、作動流体の供給を受けて伸長作動するから、伸長方向のジャッキ機能を発揮する。
【0101】
ところで、前述したが、位置ズレ修正回路3を伸縮体1に連結して伸縮体1を中立状態に復帰させる作業の際に、作業員に起因する誤作動などで、切換弁24が遮断ポジション24dに切り換えられないとき、たとえば、図1に示す状態のとき、この状態で位置ズレ修正回路3が作動すると、ロッド側室R2に流入した位置ズレ修正回路3からの作動流体が減衰部2を通過して、リザーバRに流入する。
【0102】
そして、このことが作業員に気付かれないまま継続されると、リザーバRに設定量以上の作動流体が流入し、甚だしい場合には、伸縮体1の破損する可能性がある。
【0103】
しかしながら、この発明による免震ダンパ100では、伸縮体1が位置ズレ修正回路3に連通すると共にリザーバRに収容される作動流体の液面O位置を設定する排出ポート17aを設けるから、誤作動で減衰部2におけるロック弁22がロック状態に維持されない状態で、ジャッキ作動を意図して位置ズレ修正回路3からの作動流体を伸縮体1に供給させてしまっても、リザーバRの中立状態時の作動流体量より多くなる作動流体が排出ポート17aを介して位置ズレ修正回路3に戻る。
【0104】
これにより、伸縮体1に必要以上の作動流体が収容されることで引き起こされる破損を回避できると共に、また、位置ズレ修正回路3が分離された後であっても、伸縮体1を有する免震ダンパ100の所定の伸縮作動が保障される。
【0105】
つまり、誤作動などで減衰部2におけるロック弁22がロック状態とされないで、たとえば、ジャッキ作動を行っても、伸縮体1に必要以上の収容されることによるこの伸縮体1の伸縮作動の妨げを防止でき、伸縮体1における伸縮作動を保障できる。
【0106】
そして、ロック弁22がロック状態に維持されたとき、位置ズレ修正回路3からの作動流体を伸縮体1に供給して、伸縮体1をジャッキ作動させることが可能になる。
【0107】
このとき、リザーバRにおいて作動流体の液面O位置が排出ポート17aによって中立状態位置に維持されるから、ジャッキ作動後も、伸縮体1に必要以上の作動流体が収容されることで引き起こされる破損を回避でき、また、伸縮体1が中立状態に戻った後の伸縮作動を保障できる。
【0108】
たとえば、伸縮体1が最収縮した状態では、伸縮体1のリザーバRにおける作動流体の液面O位置が中立状態にあるときより上昇した状態にある。
【0109】
この状態下に、ピストン側室R1に位置ズレ修正回路3からの作動流体が供給され、ピストン体13がシリンダ体11内を摺動して伸縮体1がいわゆる中立状態に戻ったとすると、伸縮体1におけるリザーバRにあっては、作動流体の給排がないので、液面O位置が低くならないままに維持される。
【0110】
しかしながら、この発明にあっては、伸縮体1がリザーバRにおける作動流体の液面O位置を中立状態のときの状態に維持する排出ポート17aを有するから、上記の液面O位置を中立時の設定高さ位置に戻すことが可能になる。
【0111】
すなわち、排出ポート17aより高い位置にある作動流体がこの排出ポート17aを介して外部に流出することにより伸縮体1が最収縮状態にあるときのリザーバRにおける液面O位置が、伸縮体1が伸長作動してジャッキ機能を発揮するときに中立状態の位置に戻され、位置ズレ修正回路3が分離された後の伸縮体1を有する免震ダンパ100における所定の伸縮作動が保障される。
【0112】
つまり、排出ポート17aより高くなる分が排出ポート17aに流出し、したがって、シリンダ体11内をピストン体13が摺動されて中立状態に戻るときに、伸縮体1が伸長してジャッキ機能を発揮すると共にリザーバRにおける液面O位置が中立状態の位置に戻される。
【0113】
ところで、伸縮体1が最収縮されていた場合の中立状態への復帰に際してのことであるが、逆に、伸縮体1が最伸長されていた場合に中立状態に復帰させるのに際しては、伸縮体1のリザーバRにおいて液面O位置が下がる。すなわち、伸縮体1において収容される作動流体量に不足をきたす可能性がある。
【0114】
つまり、図示しないが、伸縮体1が最伸長されて、また、ロック弁22が正常にロック状態に維持されるとき、タンクTからの作動流体がロッド側室R2に供給されると、ピストン体13がシリンダ体11内で摺動され、ピストン側室R1が収縮されて伸縮体1が中立状態に復帰でき、ジャッキ機能を発揮する。しかし、伸縮体1が最伸長状態にあるときのリザーバRにおける液面O位置は、言わば最下降位置にある。
【0115】
したがって、この状態のときにピストン側室R1にあった作動流体が位置ズレ修正回路3のタンクTに排出されると、伸縮体1のリザーバRにおける液面O位置が中立状態の高さ位置まで復帰できず、伸縮体1のリザーバRにおいて作動流体が不足する事態を招来する。
【0116】
しかしながら、この発明による伸縮体1は、補給ポート18aを有するから、また、この補給ポート18aが位置ズレ修正回路3に連通されるから、位置ズレ修正回路3からの作動流体を補給ポート18aからリザーバRに補給することで、伸縮体1が中立状態に復帰した時の液面O位置を適正に修正することが可能になる。
【0117】
そして、補給ポート18aを利用してリザーバRに作動流体を補給するとき、作業者の誤操作などの理由で補給量が過度になるとしても、前記したように排出ポート17aがリザーバRに設けられるので、上記の過度となる作動流体がこの排出ポート17aを介して位置ズレ修正回路3におけるタンクTに戻る。これにより、中立状態に復帰した伸縮体1のリザーバRにおける液面O位置を適正に維持することが可能になる。
【0118】
補給ポート18aを利用して作動流体のリザーバRへの補給については、位置ズレ修正回路3が分離されていて、つまり、利用されないで作業員による手差して実行されても良いことはもちろんである。
【0119】
前記したところは、位置ズレ修正回路3が言わば自前のタンクTを有して作動流体を有するとしたが、これに代えて、位置ズレ修正回路3が流通させる作動流体をリザーバRから供給させるようにしても良い。
【0120】
つまり、位置ズレ修正回路3は、タンクTを有せず、その代わり、リザーバRをタンクTの代わりにするとしても、作動流体の供給で伸縮体1を伸縮させる上では問題ない。
【符号の説明】
【0121】
1 伸縮体
2 減衰部
3 位置ズレ修正回路
11 シリンダ体
12 ロッド体
13 ピストン体
14 外筒
15,31 第一給排路
16,32 第二給排路
17,34 排出路
17a 排出ポート
17b,18b 栓体
18,33 補給路
18a 補給ポート
21 流路
22 ロック弁
22a ポペット弁体
22b,24a 附勢バネ
22c 絞り
23 減衰弁
24,V 切換弁
24b 連通ポジション
24c ソレノイド
24d,V1 遮断ポジション
25,35a リリーフ弁
31a,32c,33a 手動バルブ
32a 伸力設定弁
32b,34a,C1,C2,C3 チェック弁
35 分岐路
100 免震ダンパ
A 気室
F1,F2 フィルタ
H ハウジング
H1 移動手段
H2 吊り輪
L1 往路
L2 復路
M モータ
O 液面
P ポンプ
R リザーバ
R1 ピストン側室
R2 ロッド側室
T タンク
V2 手動レバー
V3 伸長ポジション
V4 収縮ポジション
V5 保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤と建築物との間、あるいは、建築物における下方階と上方階との間に配設される免震ダンパが、ユニフロー型に設定されると共に横置き配置されて一端を上記建築物あるいは上方階に連結し他端を上記地盤あるいは下方階に連結する伸縮体と、この伸縮体に接続されてこの伸縮体の伸縮作動時に減衰力を発生する減衰部とで構成され、
上記減衰部が、上記伸縮体からの作動流体の通過を許容しあるいは阻止するロック弁と、このロック弁の下流側に配設されて作動流体の通過時に減衰力を発生する減衰弁とを有し、
上記伸縮体が、作動流体を収容するシリンダ体と、このシリンダ体内に入出可能に挿通するロッド体と、このロッド体に保持されると共にシリンダ体内に摺動可能に収装されて上記シリンダ体内にピストン側室とロッド側室とを画成するピストン体と、上記シリンダ体の外に配設されて作動流体を収容すると共に上記シリンダ体内からの作動流体の流出および上記シリンダ体内への作動流体の流入を可能にするリザーバとを有し、リザーバがチェック弁を介して上記ピストン側室に連通し、ピストン側室がチェック弁を介して上記ロッド側室に連通し、ロッド側室が上記減衰部を介して上記リザーバに連通し、
上記伸縮体が着脱自在に連結される位置ズレ修正回路の作動時に、上記ロッド側室および上記ピストン側室に上記位置ズレ修正回路からの作動流体の供給を受けて伸縮自在とされる免震ダンパにおいて、
上記伸縮体が、上記位置ズレ修正回路に連通すると共に上記リザーバに収容される作動流体の液面位置を設定する排出ポートを設けてなることを特徴とする免震ダンパ。
【請求項2】
上記伸縮体が、上記位置ズレ修正回路に連通すると共に上記リザーバにおける作動流体量を変更する補給ポートを設けてなる請求項1に記載の免震ダンパ。
【請求項3】
上記位置ズレ修正回路が、作動流体を収容するタンクと、このタンクに収容される作動流体を伸縮体に向けて供給する供給源と、この供給源から供給される作動流体を伸縮体側に向けて流通させる往路と、この往路に並列して上記伸縮体側から流通した作動流体を上記タンクに向けて流通させる復路と、往路から流通した作動流体の上記伸縮体側に向けての流れ方向を切換自在な切換弁と、この切換弁に連通して上記ピストン側室に連通自在な第一給排路と、上記切換弁に連通して上記ロッド側室に連通自在な第二給排路と、上記切換弁に連通して上記補給ポートに連通自在な補給路と、上記タンクに連通して上記排出ポートに連通自在な排出路とを有する請求項1または請求項2に記載の免震ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219965(P2012−219965A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88720(P2011−88720)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】