説明

免震装置

【課題】強風による横揺れを抑制することができるとともに、長期間の使用によってもゴムを劣化させることのない免震装置を提供する。
【解決手段】第1の支持部材11によって建物本体側の固定部材10を支持することにより、固定部材10の水平方向への移動を規制することができるので、強風による建物本体の揺れを抑制することができる。この場合、第2の支持部材12に建物本体側の荷重が加わらないようにすることができるので、長期間の荷重による第2の支持部材12のゴムの劣化を防止することができる。また、第1の支持部材11による固定部材10の支持を解除して第2の支持部材12のみで固定部材10を支持することにより、固定部材10を水平方向に移動自在にすることができるので、第2の支持部材12によって地盤側の揺れを吸収することができ、地震による建物本体側の揺れを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般家屋、マンション、オフィスビル等の建物側と地盤側との間に設けられ、地盤側から建物側へ伝わる地震の揺れを吸収する免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば一般家屋、マンション、オフィスビル等の建物では、地震による建物の倒壊を防止するため、耐震強度の高い構造のものが多くなっている。しかしながら、建物の倒壊は防ぐことができても、地震による揺れが激しい場合は、室内の家具が転倒したり、備品が飛散するなど、室外側の被害が大きい場合がある。そこで、建物側と地盤側との間に免震装置を設け、地盤側から建物側へ伝わる地震の揺れを免震装置によって吸収するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この免震装置は、複数の金属板とゴムとを積層してなり、地震による横揺れをゴムの弾性によって吸収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−205492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記免震装置では、地震時以外でも常にゴムによって建物側の構造物が支持されているため、建物が強風を受けた場合には、ゴムの弾性によって建物が横揺れを生じ、免震装置を備えていない建物よりも強風による横揺れが大きくなるという問題点があった。また、前記免震装置では、建物の荷重が常にゴムに加わっているため、長期間の使用によりゴムが劣化し、定期的なメンテナンスを必要とするという問題点もあった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、強風による横揺れを抑制することができるとともに、長期間の使用によってもゴムを劣化させることのない免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、免震対象物側と地盤側との間に設置され、地盤側から免震対象物側に伝わる地震の揺れを吸収する免震装置において、前記免震対象物側を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材と、免震対象物側を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材とを備え、第1の支持部材による免震対象物側の支持を解除して第2の支持部材のみで免震対象物側を支持可能に構成している。
【0007】
これにより、第1の支持部材によって免震対象物側を支持することにより、免震対象物側の水平方向への移動が規制されることから、強風による建物本体の揺れが抑制されるとともに、第2の支持部材に免震対象物側の荷重が加わらないようにすることができる。また、第1の支持部材による免震対象物側の支持を解除して第2の支持部材のみで免震対象物側を支持することにより、第2の支持部材によって免震対象物側に対する地盤側の揺れが吸収される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の支持部材によって免震対象物側を支持することにより、免震対象物側の水平方向への移動を規制することができるので、強風による建物本体の揺れを抑制することができ、強風によって建物本体が無用に揺れることがないという利点がある。この場合、第2の支持部材に免震対象物側の荷重が加わらないようにすることができるので、第2の支持部材がゴムによって形成されている場合、長期間の荷重によるゴムの劣化を防止することができ、メンテナンスの負担を軽減することができる。また、第1の支持部材による免震対象物側の支持を解除し、第2の支持部材のみで免震対象物側を支持することにより、免震対象物側を水平方向に移動自在に支持することができるので、免震対象物側に対する地盤側の揺れを吸収することができ、地震による建物本体側の揺れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す免震装置の側面図
【図2】免震装置の要部側面断面図
【図3】A−A線矢視方向断面図
【図4】制御系を示すブロック図
【図5】免震装置の動作を示す側面図
【図6】免震装置の動作を示す側面図
【図7】免震装置の動作を示す要部側面図
【図8】免震装置の動作を示す要部側面図
【図9】制御部の動作を示すフローチャート
【図10】本発明の第2の実施形態を示す免震装置の要部側面図
【図11】B−B線矢視方向断面図
【図12】免震装置の動作を示す要部側面図
【図13】免震装置の動作を示す要部側面図
【図14】本発明の第3の実施形態を示す免震装置の要部側面図
【図15】免震装置の動作を示す要部側面図
【図16】本発明の第3の実施形態を示す免震装置の要部側面図
【図17】免震装置の動作を示す要部側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示すもので、免震対象物側の構造物1と地盤側の基礎2との間に設置される免震装置を示すものである。
【0011】
本実施形態の免震装置は、免震対象物としての建物本体側の構造物1に固定された固定部材10と、固定部材10を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材11と、固定部材10を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材12と、地震による地盤側の揺れを検知する地震検知手段として感震スイッチ13と、固定部材10を上昇させるための流体を圧送するシリンダ14と、圧縮空気を吐出することによりシリンダ14を駆動する空気容器15と、固定部材10の上下方向の位置を検知する位置検知手段としての上下一対の位置検知センサ16と、シリンダ14及び空気容器15の動作を制御する制御部17とを備えている。
【0012】
固定部材10は、基板10aを介して建物本体側の構造物1の下面に固定された円筒状の部材からなり、その内部には第2の支持部材12の上端側が上下方向に摺動自在に配置される油圧室10bが設けられている。固定部材10の下面には第1の支持部材11に係合する係合部10cが下方に向かって突設され、係合部10cは固定部材10の周縁に沿って環状に延びるように形成されている。
【0013】
第1の支持部材11は、下端を地盤側の基礎2の上面に固定された円柱状の部材からなり、その上面側には第2の支持部材12の下端側を支持する凹部11aが設けられている。凹部11aは内周面が上方に向かって広がるテーパ状に形成され、その中央は球面状に形成されている。この場合、凹部11aの上面周縁側には固定部材10の下面周縁側が載置されるとともに、固定部材10の係合部10cが凹部11aの上縁側に係合するようになっている。また、第1の支持部材11には、シリンダ14から圧送される流体を流通する流路11bが設けられ、流路11bの一端は第1の支持部材11の側面に開口し、その他端は凹部11aの下端中央部に開口している。
【0014】
第2の支持部材12は、水平方向に弾性変形可能な円柱状のゴムからなり、固定部材10と第1の支持部材11との間に配置されている。第2の支持部材12の上端側には油圧室10bの内径と等しい外径を有するピストン部12aが設けられ、ピストン部12aは固定部材10の油圧室10b内に上下方向に摺動自在に配置されている。ピストン部12aの外周部はフランジ状に形成され、第2の支持部材12の上下方向中央側はピストン部12aの下端から下方に向かって外径が小さくなるテーパ状に形成されている。第2の支持部材12の下端側には複数の補強板12bがゴムを間にして上下方向に積層されており、各補強板12bは中央に貫通孔を有する円形の金属板からなる。第2の支持部材12の下端側は均一な外径で上下方向に延びる円柱状に形成されるとともに、その下端は球面状に形成され、第1の支持部材11の凹部11aの下端中央部に固定されている。第2の支持部材12には、シリンダ14から圧送される流体を流通する流路12cが設けられ、流路12cの一端は第2の支持部材12の下端に開口するとともに、第1の支持部材11の流路11bの他端に連通している。また、流路12cは第2の支持部材12の径方向中央を各補強板12bの中央の貫通孔を通って上下方向に延びており、その他端は第2の支持部材12の上面中央に開口するとともに、固定部材10の油圧室10b内に連通している。
【0015】
感震スイッチ13は、例えば球体の転動や変位を利用したものなど、所定の大きさ以上の揺れによって電気的にスイッチをオンにする周知の機器からなり、地盤側の基礎2に取り付けられている。
【0016】
シリンダ14は一端側に流体としての作動油を収容する油圧シリンダからなり、建物の基礎2側に配置されている。シリンダ14の一端側は油圧配管14aを介して第1の支持部材11の流路11bの一端に接続され、油圧配管14aは第1の電磁弁14bによって開閉するようになっている。シリンダ14の内部にはピストン14aが摺動自在に設けられ、ピストン14cをシリンダ14の一端側に向かって移動させることにより、作動油を油圧配管14a側に押し出すようになっている。
【0017】
空気容器15は、内部に圧縮空気を封入可能な耐圧性の容器からなり、建物の基礎2側に配置されている。空気容器15は、空気配管15aを介してシリンダ14の他端側に接続され、空気配管15aは第2の電磁弁15bによって開閉するようになっている。空気配管15aの第2の電磁弁15bとシリンダ14との間には一端を外部に開放した空気排出管15cの他端が接続され、空気排出管15cは第3の電磁弁15dによって開閉するようになっている。即ち、空気容器15は、空気配管15aを介してシリンダ14の他端側に圧縮空気を供給することにより、圧縮空気の圧力によってピストン14cをシリンダ14の一端側に向かって移動させるようになっている。空気容器15は圧縮機15dを備え、圧縮機15eによって空気容器15内に空気を供給可能になっている。また、空気容器15には、空気容器15内の空気の圧力を検出する圧力センサ15fが設けられている。
【0018】
各位置検知センサ16は、例えば発光部及び受光部を有する周知の光学式センサからなり、互いに上下方向に間隔をおいて配置されている。即ち、各位置検知センサ16は、固定部材10の側面に設けた被検知部16aに検知光を照射することにより、所定の高さ位置まで上昇した固定部材10の被検知部16aを上方の位置検知センサ16によって検知し、所定の高さ位置まで下降した固定部材10の被検知部16aを下方の位置検知センサ16によって検知するようになっている。
【0019】
制御部17は、例えばマイクロコンピュータによって構成され、感震スイッチ13、第1の電磁弁14b、第2の電磁弁15b、第3の電磁弁15d、圧力センサ15f、圧縮機15e及び位置検知センサ16に接続されている。また、制御部18はタイマ17aを備えている。
【0020】
以上のように構成された免震装置は、建物本体側の構造物1と地盤側の基礎2との間に設置され、複数箇所に設けた固定部材10、第1及び第2の支持部材11,12によって建物本体を支持するようになっている。この場合、シリンダ14及び空気容器15を複数箇所の固定部材10、第1及び第2の支持部材11,12ごとに設けるようにしてもよいが、油圧配管14aを分岐して複数の固定部材10、第1及び第2の支持部材11,12ごとにシリンダ14及び空気容器15を一つずつ設けるようにしてもよい。また、図1に示すように第2の支持部材12のピストン部12aは固定部材10の油圧室10b内の上方に位置しているが、固定部材10の下端と第1の支持部材11の上端とが互いに上下方向に当接しているため、構造物1側の荷重は固定部材10と第1の支持部材11に加わるようになっている。この場合、固定部材10の係合部10cが第1の支持部材11の凹部11aに係合することにより、第1の支持部材11に対する固定部材10の水平方向への移動が規制されるようになっている。従って、建物本体が強風を受けた場合でも、固定部材10が第1の支持部材11に対して水平方向に移動することがなく、強風による建物本体の横揺れが抑制される。
【0021】
また、前記免震装置では、図7に示すようにシリンダ14によって作動油が固定部材10の油圧室10b内に流入すると、油圧によって固定部材10が所定の高さ位置まで上昇し、固定部材10と第1の支持部材11とが上下方向に分離して第1の支持部材11による固定部材10の支持が解除される。これにより、固定部材10の係合部10cと第1の支持部材11の凹部11aとの係合も解除されるため、固定部材10が第2の支持部材12のみによって支持される。その際、固定部材10は第2の支持部材12の弾性により水平方向に移動自在に支持されることから、図8に示すように地盤側の基礎2に地震による横揺れが生じた場合でも、地盤側の横揺れが第1の支持部材11から固定部材10に伝わることがなく、第2の支持部材12の弾性変形によって地盤側の横揺れが吸収される。地震の揺れが停止した後は、第2の支持部材12の復元力によって固定部材10が元の位置に戻される。また、大規模な地震が発生した後、暫くの間は余震が続くと考えられるため、例えば1ヶ月程度が経過した後、固定部材10を下降して再び第1の支持部材11によって支持することにより、強風による建物本体の揺れが抑制される。
【0022】
ここで、図9のフローチャートを参照し、前述した固定部材10の上昇及び下降に関する制御部17の動作について説明する。尚、初期状態では、第1の電磁弁14bは開放、第2の電磁弁15bは閉鎖、第3の電磁弁15dは閉鎖しているものとし、空気容器15内には所定圧力P1 の圧縮空気が充填されているものとする。
【0023】
まず、所定の大きさ以上の地震による揺れ(例えば震度5)によって感震スイッチ13がオンになると(S1)、空気配管15aの第2の電磁弁15bを開放する(S2)。これにより、図5に示すように空気容器15の圧縮空気が空気配管15aを介してシリンダ14の他端側に流入し、圧縮空気の圧力によってピストン14cがシリンダ14の一端側に向かって移動する。その際、シリンダ14の一端側に収容されていた作動油がピストン14cによって油圧配管14a側に押し出され、第1の支持部材11の流路11b及び第2の支持部材12の流路12cから作動油が固定部材10の油圧室10bに流入する。これにより、固定部材10が油圧室10bの油圧によって上昇し、上方の位置検知センサ16によって固定部材10が所定の高さ位置まで上昇したことが検知されると(S3)、油圧配管14aの第1の電磁弁14bを閉鎖し(S4)、タイマ17aによる計時を開始する(S5)。これにより、固定部材10が第2の支持部材12のみによって支持される。この後、所定時間T1 (例えば1ヶ月)が経過したらならば(S6)、空気排出管15cの第3の電磁弁15dと油圧配管14aの第1の電磁弁14bをそれぞれ開放する(S7,S8)。これにより、建物側の重量により固定部材10が下降するとともに、油圧室10b内から作動油が押し出され、図6に示すように油圧配管14aの作動油がシリンダ14内の一端側に戻される。その際、シリンダ14に流入する作動油によってピストン14cがシリンダ14の他端側に向かって移動するとともに、シリンダ14の他端側から押し出される空気が空気排出管15cから外部に放出され、シリンダ14内の一端側に作動油が流入した分だけピストン14cがシリンダ14の他端側に移動する。また、油圧室10b内から作動油が流出することにより固定部材10が下降し、下方の位置検知センサ16によって固定部材10が所定の高さ位置(固定部材10の下端と第1の支持部材11の上端とが当接する位置)まで下降したことが検知されると(S9)、空気配管15aの第2の電磁弁15bと空気排出管15cの第3の電磁弁15dをそれぞれ閉鎖する(S10,S11)。これにより、固定部材10が第1の支持部材11によって支持される。次に、圧縮機15eを作動し(S12)、圧縮機15eによって空気容器15内に空気を供給するとともに、圧力センサ15fの検出圧力Pが前記圧力P1 以上になったならば(S13)、圧縮機15eを停止し(S14)、ステップS1に戻る。
【0024】
このように、本実施形態の免震装置によれば、固定部材10を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材11と、固定部材10を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材12とを備えているので、第1の支持部材11によって建物本体側の固定部材10を支持することにより、強風による建物本体の揺れを抑制することができ、強風によって建物本体が無用に揺れることがないという利点がある。この場合、第2の支持部材12に建物本体側の荷重が加わらないようにすることができるので、長期間の荷重による第2の支持部材12のゴムの劣化を防止することができ、メンテナンスの負担を軽減することができる。また、第1の支持部材11による固定部材10の支持を解除して第2の支持部材12のみで固定部材10を支持することにより、第2の支持部材12によって地盤側の揺れを吸収することができるので、地震による建物本体側の揺れを抑制することができる。
【0025】
また、固定部材10と第1の支持部材11とを上下方向に分離させることにより第1の支持部材11による固定部材10の支持を解除するようにしたので、第1の支持部材11による固定部材10の支持を容易に解除することができ、構造の簡素化を図ることができる。
【0026】
この場合、固定部材10側を油圧(流体の圧力)によって上昇させることにより固定部材10と第1の支持部材11とを上下方向に分離させるようにしたので、建物側の重量が大きい場合でも固定部材10側を確実に上昇させることができ、実用化に際して極めて有利である。
【0027】
また、固定部材10が第2の支持部材12に対して上下方向に移動するように構成するとともに、固定部材10と第2の支持部材12との間の油圧室10bに作動油を流入することにより固定部材10を油圧によって上昇させるようにしたので、固定部材10及び第2の支持部材12の外部に油圧室を設ける必要がなく、構造の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0028】
更に、固定部材10を上昇させるための作動油をピストン14cによって押し出すシリンダ14と、予め内部に充填した圧縮空気を吐出可能な空気容器15とを備え、空気容器15から吐出される空気の圧力によりピストン14cを駆動してシリンダ14から作動油を押し出すようにしたので、電力を用いることなくシリンダ14のピストン14cを駆動することができ、ポンプのように電力を必要とする油圧駆動源を用いた場合に比べ、地震による災害で停電した場合でも作動油を確実に圧送することができるという利点がある。
【0029】
また、上方の位置検知センサ16によって固定部材10が所定の高さ位置まで上昇したことを検知するようにしたので、建物の複数箇所に設けられた固定部材10の上昇位置を等しくすることができ、固定部材10を第2の支持部材12のみで支持する際に建物本体側を水平に保つことができる。
【0030】
更に、下方の位置検知センサ16によって固定部材10が所定の高さ位置まで下降したことを検知するようにしたので、固定部材10を常に第1の支持部材11と当接する位置まで下降させることができ、固定部材10を下降させた際に固定部材10を第1の支持部材11によって確実に支持することができる。
【0031】
また、感震スイッチ13によって所定の大きさ以上の地震による揺れが検知されるまでは、第1の支持部材11によって固定部材10を支持し、感震スイッチ13によって所定の大きさ以上の揺れが検知されると、第1の支持部材11による固定部材10の支持を解除して第2の支持部材12のみで固定部材10を支持するようにしたので、地震が発生した際に速やかに免震状態に切り換えることができ、地震による建物本体側の揺れを確実に抑制することができる。
【0032】
更に、第1の支持部材11による固定部材10の支持が解除されると、所定時間T1 が経過した後に再び第1の支持部材11によって固定部材10を支持するようにしたので、所定時間T1 が経過するまでの間は第2の支持部材12によって地震の揺れを吸収することができ、大規模な地震が発生した後の余震による揺れも効果的に抑制することができる。
【0033】
また、第2の支持部材12を水平方向に弾性変形可能なゴムによって形成することにより固定部材10を水平方向に移動自在に支持するようにしたので、地震の揺れが停止した後、第2の支持部材12の復元力によって固定部材10を元の位置に戻すことができ、固定部材10を元の位置に戻すためのダンパー等を別途設ける必要がないという利点がある。
【0034】
尚、前記実施形態では、感震スイッチ13によって所定の大きさ以上の揺れが検知されると、第1の支持部材11による固定部材10の支持を解除するようにしたものを示したが、任意に操作可能なスイッチにより、第1の支持部材11による固定部材10の支持を人為的に解除するようにしてもよい。
【0035】
また、前記実施形態では、第1の支持部材11による固定部材10の支持が解除された後、所定時間T1 が経過した後に再び第1の支持部材11によって固定部材10を支持する動作を自動で行うようにしたものを示したが、任意に操作可能なスイッチにより、第1の支持部材11によって再び固定部材10を支持する動作を人為的に行うようにしてもよい。
【0036】
図10乃至図13は本発明の第2の実施形態を示すもので、前記第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0037】
本実施形態の免震装置は、建物本体側の構造物1に固定された固定部材20と、固定部材20を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材21と、固定部材20を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材22とを備えている。また、本実施形態の免震装置は、第1の実施形態と同様の感震スイッチ13、シリンダ14、空気容器15、上下一対の位置検知センサ16及び制御部17と、これらに付帯する他の構成とを備えているが、その構成及び動作は何れも第1の実施形態と同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0038】
固定部材20は、建物本体側の構造物1の下面に固定された高さの低い円柱状の部材からなり、その下面には第2の支持部材22に接触する球面状の凹部20aが設けられている。固定部材20の下面には第1の支持部材21に係合する係合部20bが下方に向かって突設され、係合部20bは固定部材20の周縁に沿って環状に延びるように形成されている。
【0039】
第1の支持部材21は、下端を地盤側の基礎2の上面に固定された高さの低い円柱状の部材からなり、その上面には第2の支持部材22に接触する球面状の凹部21aが固定部材20の凹部20aと上下方向に間隔をおいて対向するように設けられている。第1の支持部材21の上面には固定部材20の係合部20bが係合する凹状の係合部21bが設けられ、係合部21bは第1の支持部材21の周縁に沿って環状に延びるように形成されている。また、第1の支持部材21には、第1の実施形態のシリンダ14から圧送される作動油を流通する油圧ホース21cが挿通される挿通孔21dが設けられ、挿通孔21dの一端は第1の支持部材21の側面に開口し、その他端は凹部21aに開口している。油圧ホース21cは可撓性を有する周知の高圧ホースからなり、その一端側はシリンダ14の油圧配管14aに接続されている。また、挿通孔21dの他端側は凹部21a内に向かって内径が拡大するように形成され、油圧ホース21cの曲げを許容するようになっている。
【0040】
第2の支持部材22は、径方向に弾性変形可能な球状のゴムからなり、固定部材20の凹部20aと第1の支持部材21の凹部21aとの間に転動自在に配置されている。第2の支持部材22は中空状に形成され、その内部空間は油圧室22bを形成している。第2の支持部材22には油圧ホース21cの他端が接続され、油圧ホース21cは第2の支持部材22の油圧室22aに連通している。
【0041】
以上のように構成された免震装置は、第1の実施形態と同様、建物本体側の構造物1と地盤側の基礎2との間に設置され、複数箇所に設けた固定部材20、第1及び第2の支持部材21,22によって建物本体を支持するようになっている。この場合、図10に示すように固定部材20の下端と第1の支持部材21の上端とが互いに上下方向に当接しているが、第2の支持部材22は各凹部20a,21aによって上下方向に圧縮されており、構造物1側の荷重は固定部材20と第1の支持部材21に加わるようになっている。その際、固定部材20の係合部20bが第1の支持部材21の係合部21bに係合することにより、第1の支持部材21に対する固定部材20の水平方向への移動が規制されるようになっている。従って、建物本体が強風を受けた場合でも、固定部材20が第1の支持部材21に対して水平方向に移動することがなく、強風による建物本体の横揺れが抑制される。
【0042】
また、本実施形態の免震装置では、シリンダ14によって作動油が油圧ホース21cから第2の支持部材22の油圧室22a内に流入すると、図12に示すように油圧によって第2の支持部材22が径方向に膨張し、第2の支持部材22によって固定部材20が押し上げられる。これにより、固定部材20が所定の高さ位置まで上昇し、固定部材20と第1の支持部材21とが上下方向に分離して第1の支持部材21による固定部材20の支持が解除される。これにより、固定部材20の係合部20bと第1の支持部材21の係合部21bとの係合も解除されるため、固定部材20が第2の支持部材22のみによって支持される。その際、固定部材20は第2の支持部材22が各凹部20a,21aに接触しながら転動することにより水平方向に移動自在に支持されることから、図13に示すように地盤側の基礎2に地震による横揺れが生じた場合でも、地盤側の横揺れが第1の支持部材21から固定部材20に伝わることがなく、第2の支持部材22の転動によって地盤側の横揺れが吸収される。その際、揺れが大きい場合は、第2の支持部材22の転動に加え、第2の支持部材22の弾性変形によっても地盤側の横揺れが吸収される。地震の揺れが停止した後は、第2の支持部材12が各凹部20a,21aの中央に戻ろうとする復元作用により、固定部材20が元の位置に戻される。また、大規模な地震が発生した後、暫くの間は余震が続くと考えられるため、第1の実施形態と同様、例えば1ヶ月程度が経過した後、固定部材20を下降して再び第1の支持部材21によって支持することにより、強風による建物本体の揺れが抑制される。
【0043】
このように、本実施形態の免震装置によれば、第1の実施形態と同様、固定部材20を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材21と、固定部材20を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材22とを備えているので、第1の支持部材21によって建物本体側の固定部材20を支持することにより、強風による建物本体の揺れを抑制することができ、強風によって建物本体が無用に揺れることがないという利点がある。この場合、第2の支持部材22に建物本体側の荷重が加わらないようにすることができるので、長期間の荷重による第2の支持部材22のゴムの劣化を防止することができ、メンテナンスの負担を軽減することができる。また、第1の支持部材21による固定部材20の支持を解除して第2の支持部材22のみで固定部材20を支持することにより、第2の支持部材22によって地盤側の揺れを吸収することができるので、地震による建物本体側の揺れを抑制することができる。
【0044】
また、第2の支持部材22を径方向に伸縮可能な中空状のゴムによって形成し、第2の支持部材22内に作動油を流入することにより第2の支持部材22を油圧によって膨張させて固定部材20を上昇させるようにしたので、第2の支持部材22の外部に油圧室を設ける必要がなく、構造の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0045】
更に、第2の支持部材22の転動によって地盤側の揺れを吸収するようにしたので、固定部材20、第1及び第2の支持部材21,22の高さ寸法を小さくすることができ、例えば一般家屋等のように建物本体側の構造物1と地盤側の基礎2との間の上下方向のスペースが小さい場合に有利である。
【0046】
この場合、第2の支持部材22を球状に形成するとともに、固定部材20と第2の支持部材21に互いに対向するように設けられた球面状の凹部20a,21a間に転動自在に配置したので、地震の揺れが停止した後、第2の支持部材22が各凹部20a,21aの中央に戻ろうとする作用により、固定部材20を元の位置に戻すことができ、固定部材20を元の位置に戻すためのダンパー等を別途設ける必要がないという利点がある。
【0047】
図14及び図15は本発明の第3の実施形態を示すもので、前記第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0048】
本実施形態の免震装置は、建物本体側の構造物1に固定された固定部材30と、固定部材30を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材31と、固定部材30を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材32と、第2の支持部材32を上下方向に移動させる可動部材33とを備えている。また、本実施形態の免震装置は、第1の実施形態と同様の感震スイッチ13、シリンダ14、空気容器15、上下一対の位置検知センサ16及び制御部17と、これらに付帯する他の構成とを備えているが、その構成及び動作は何れも第1の実施形態と同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0049】
固定部材30は、建物本体側の構造物1の下面に固定された高さの低い円柱状の部材からなり、その下面には第2の支持部材32に接触する球面状の凹部30aが設けられている。固定部材30の下面には第1の支持部材31に係合する係合部30bが下方に向かって突設され、係合部30bは固定部材30の周縁に沿って環状に延びるように形成されている。
【0050】
第1の支持部材31は、下端を地盤側の基礎2の上面に固定された高さの低い円柱状の部材からなり、その上面側には第2の支持部材32が上下方向に摺動自在に係合する油圧室31aが設けられている。第1の支持部材31の上面には固定部材30の係合部30bが係合する凹状の係合部31bが設けられ、係合部31bは第1の支持部材31の周縁に沿って環状に延びるように形成されている。また、第1の支持部材31には、シリンダ14から圧送される作動油を流通する流路31bが設けられ、流路31bの一端は第1の支持部材31の側面に開口し、その他端は油圧室31aの下端中央部に開口している。
【0051】
第2の支持部材32は、金属製の球状の部材からなり、固定部材30と可動部材33との間に転動自在に配置されている。
【0052】
可動部材33は、第1の支持部材31の油圧室31aに上下方向に摺動自在に設けられたピストン状の部材からなり、その上面には第2の支持部材32に接触する球面状の凹部33aが設けられている。凹部33aは固定部材30の凹部30aと上下方向に間隔をおいて対向するように形成され、各凹部30a,33a間には第2の支持部材32が転動自在に配置されている。可動部材33の外周面には油圧室31aの内周面との間を密閉するシール部材33bが設けられ、シール部材33bは環状のゴムからなる。
【0053】
以上のように構成された免震装置は、第1の実施形態と同様、建物本体側の構造物1と地盤側の基礎2との間に設置され、複数箇所に設けた固定部材30、第1の支持部材31、第2の支持部材32及び可動部材33によって建物本体を支持するようになっている。この場合、図14に示すように固定部材30の下端と第1の支持部材31の上端とが互いに上下方向に当接し、構造物1側の荷重が固定部材30と第1の支持部材31に加わるようになっている。その際、固定部材30の係合部30bが第1の支持部材31の係合部31bに係合することにより、第1の支持部材31に対する固定部材30の水平方向への移動が規制されるようになっている。従って、建物本体が強風を受けた場合でも、固定部材30が第1の支持部材31に対して水平方向に移動することがなく、強風による建物本体の横揺れが抑制される。
【0054】
また、本実施形態の免震装置では、シリンダ14によって作動油が流路31bから第1の支持部材31の油圧室31a内に流入すると、図15に示すように油圧によって可動部材33が上方へ移動し、固定部材30が第2の支持部材32と共に押し上げられる。これにより、固定部材30が所定の高さ位置まで上昇し、固定部材30と第1の支持部材31とが上下方向に分離して第1の支持部材31による固定部材30の支持が解除される。これにより、固定部材30の係合部30bと第1の支持部材31の係合部31bとの係合も解除されるため、固定部材30が第2の支持部材32のみによって支持される。その際、固定部材30は第2の支持部材32が各凹部30a,33aに接触しながら転動することにより水平方向に移動自在に支持されることから、地盤側の基礎2に地震による横揺れが生じた場合でも、地盤側の横揺れが第1の支持部材31から固定部材30に伝わることがなく、第2の支持部材32の転動によって地盤側の横揺れが吸収される。地震の揺れが停止した後は、第2の支持部材32が各凹部30a,33aの中央に戻ろうとする復元作用により、固定部材30が元の位置に戻される。また、大規模な地震が発生した後、暫くの間は余震が続くと考えられるため、第1の実施形態と同様、例えば1ヶ月程度が経過した後、固定部材30を下降して再び第1の支持部材31によって支持することにより、強風による建物本体の揺れが抑制される。
【0055】
このように、本実施形態の免震装置によれば、第1及び第2の実施形態と同様、固定部材30を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材31と、固定部材30を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材32とを備えているので、第1の支持部材31によって建物本体側の固定部材30を支持することにより、強風による建物本体の揺れを抑制することができ、強風によって建物本体が無用に揺れることがないという利点がある。また、第1の支持部材31による固定部材30の支持を解除して第2の支持部材32のみで固定部材30を支持することにより、第2の支持部材32によって地盤側の揺れを吸収することができるので、地震による建物本体側の揺れを抑制することができる。
【0056】
この場合、第2の実施形態と同様、第2の支持部材32を球状に形成するとともに、固定部材30と可動部材33に互いに対向するように設けられた球面状の凹部30a,33a間に転動自在に配置したので、地震の揺れが停止した後、第2の支持部材32が各凹部30a,33aの中央に戻ろうとする作用により、固定部材30を元の位置に戻すことができ、固定部材30を元の位置に戻すためのダンパー等を別途設ける必要がないという利点がある。
【0057】
図16及び図17は本発明の第4の実施形態を示すもので、前記第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0058】
本実施形態の免震装置は、建物本体側の構造物1に固定された固定部材40と、固定部材40を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材41と、固定部材40を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材42とを備えている。また、本実施形態の免震装置は、第1の実施形態と同様の感震スイッチ13、シリンダ14、空気容器15、上下一対の位置検知センサ16及び制御部17と、これらに付帯する他の構成とを備えているが、その構成及び動作は何れも第1の実施形態と同様であるため、図示及び説明は省略する。
【0059】
固定部材40は、上端を建物本体側の構造物1の下面に固定された円柱状の部材からなり、その下面側には第2の支持部材42の下端側を支持する凹部40aが設けられている。凹部40aは内周面が下方に向かって広がるテーパ状に形成され、その中央は球面状に形成されている。
【0060】
第1の支持部材41は、基板41aを介して地盤側の基礎2の上面に固定された円筒状の部材からなり、その内部には第2の支持部材42の下端側が上下方向に摺動自在に配置される油圧室41bが設けられている。第1の支持部材41の上面には固定部材40の凹部40aに係合する係合部41cが上方に向かって突設され、係合部41cは第1の支持部材41の周縁に沿って環状に延びるように形成されている。この場合、第1の支持部材41の上面周縁側に固定部材40の下面周縁側が載置されるとともに、第1の支持部材41の係合部41cが固定部材40の凹部40aの下縁側に係合するようになっている。また、第1の支持部材41には、シリンダ14から圧送される流体を流通する流路41dが設けられ、流路41dの一端は基板41aの側面に開口し、その他端は基板41aの上面中央部から油圧室41b内に開口している。
【0061】
第2の支持部材42は、水平方向に弾性変形可能な円柱状のゴムからなり、第1の支持部材41と固定部材40との間に配置されている。第2の支持部材42の下端側には油圧室41bの内径と等しい外径を有するピストン部42aが設けられ、ピストン部42aは第1の支持部材41の油圧室41b内に上下方向に摺動自在に配置されている。ピストン部42aの外周部はフランジ状に形成され、第2の支持部材42の上下方向中央側はピストン部42aの上端から上方に向かって外径が小さくなるテーパ状に形成されている。第2の支持部材42の上端側には複数の補強板42bがゴムを間にして上下方向に積層されており、各補強板42bは中央に貫通孔を有する円形の金属板からなる。第2の支持部材42の下端側は均一な外径で上下方向に延びる円柱状に形成されるとともに、その下端は球面状に形成され、固定部材40の凹部40aの上端中央部に固定されている。
【0062】
以上のように構成された免震装置は、建物本体側の構造物1と地盤側の基礎2との間に設置され、複数箇所に設けた固定部材40、第1及び第2の支持部材41,42によって建物本体を支持するようになっている。この場合、図16に示すように第2の支持部材42のピストン部42aは固定部材40の油圧室41b内の下方に位置しているが、固定部材40の下端と第1の支持部材41の上端とが互いに上下方向に当接しているため、構造物1側の荷重は固定部材40と第1の支持部材41に加わるようになっている。この場合、第1の支持部材41の係合部41cが固定部材40の凹部40aに係合することにより、第1の支持部材41に対する固定部材40の水平方向への移動が規制されるようになっている。従って、建物本体が強風を受けた場合でも、固定部材40が第1の支持部材41に対して水平方向に移動することがなく、強風による建物本体の横揺れが抑制される。
【0063】
また、前記免震装置では、図17に示すようにシリンダ14によって作動油が第1の支持部材41の油圧室41b内に流入すると、油圧によって固定部材40が所定の高さ位置まで上昇し、固定部材40と第1の支持部材41とが上下方向に分離して第1の支持部材41による固定部材40の支持が解除される。これにより、第1の支持部材41の係合部41cと固定部材40の凹部40aとの係合も解除されるため、固定部材40が第2の支持部材42のみによって支持される。その際、固定部材40は第2の支持部材42の弾性により水平方向に移動自在に支持されることから、地盤側の基礎2に地震による横揺れが生じた場合でも、地盤側の横揺れが第1の支持部材41から固定部材40に伝わることがなく、第2の支持部材42の弾性変形によって地盤側の横揺れが吸収される。地震の揺れが停止した後は、第2の支持部材42の復元力によって固定部材40が元の位置に戻される。また、大規模な地震が発生した後、暫くの間は余震が続くと考えられるため、例えば1ヶ月程度が経過した後、固定部材40を下降して再び第1の支持部材41によって支持することにより、強風による建物本体の揺れが抑制される。
【0064】
このように、本実施形態の免震装置によれば、第1の実施形態と同様、固定部材40を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材41と、固定部材40を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材42とを備えているので、第1の支持部材41によって建物本体側の固定部材40を支持することにより、強風による建物本体の揺れを抑制することができ、強風によって建物本体が無用に揺れることがないという利点がある。この場合、第2の支持部材42に建物本体側の荷重が加わらないようにすることができるので、長期間の荷重による第2の支持部材42のゴムの劣化を防止することができ、メンテナンスの負担を軽減することができる。また、第1の支持部材41による固定部材40の支持を解除して第2の支持部材42のみで固定部材40を支持することにより、第2の支持部材42によって地盤側の揺れを吸収することができるので、地震による建物本体側の揺れを抑制することができる。
【0065】
この場合、第2の支持部材42が地盤側の第1の支持部材41に対して上下方向に移動するように構成するとともに、第1の支持部材41と第2の支持部材42との間の油圧室41bに作動油を流入することにより固定部材40を油圧によって上昇させるようにしたので、第1の支持部材41及び第2の支持部材42の外部に油圧室を設ける必要がなく、構造の簡素化及び小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…構造物、2…基礎、10…固定部材、11…第1の支持部材、12…第2の支持部材、13…感震スイッチ、14…シリンダ、14c…ピストン、15…空気容器、16…位置検知センサ、17…制御部、20…固定部材、20a…凹部、21…第1の支持部材、21a…凹部、22…第2の支持部材、30…固定部材、30a…凹部、31…第1の支持部材、32…第2の支持部材、33…可動部材、33a…凹部、40…固定部材、41…第1の支持部材、42…第2の支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震対象物側と地盤側との間に設置され、地盤側から免震対象物側に伝わる地震の揺れを吸収する免震装置において、
前記免震対象物側を水平方向への移動が規制されるように支持する第1の支持部材と、
免震対象物側を水平方向に移動自在に支持する第2の支持部材とを備え、
第1の支持部材による免震対象物側の支持を解除して第2の支持部材のみで免震対象物側を支持可能に構成した
ことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記免震対象物側と第1の支持部材とを上下方向に分離させることにより第1の支持部材による免震対象物側の支持を解除するように構成した
ことを特徴とする請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記免震対象物側を流体の圧力によって上昇させることにより免震対象物側と第1の支持部材とを上下方向に分離させるように構成した
ことを特徴とする請求項2記載の免震装置。
【請求項4】
前記免震対象物側を上昇させるための流体をピストンによって押し出すシリンダと、
内部に充填された圧縮空気を吐出可能な空気容器とを備え、
空気容器から吐出される空気の圧力によりピストンを駆動してシリンダから流体を押し出すように構成した
ことを特徴とする請求項3記載の免震装置。
【請求項5】
前記免震対象物側が第2の支持部材に対して上下方向に移動するように構成するとともに、
免震対象物側と第2の支持部材との間に流体を流入することにより免震対象物側を流体の圧力によって上昇させるように構成した
ことを特徴とする請求項3または4記載の免震装置。
【請求項6】
前記第2の支持部材が地盤側に対して上下方向に移動するように構成するとともに、
地盤側と第2の支持部材との間に流体を流入することにより免震対象物側を流体の圧力によって上昇させるように構成した
ことを特徴とする請求項3または4記載の免震装置。
【請求項7】
前記第2の支持部材を少なくとも上下方向に伸縮可能な中空状に形成し、
第2の支持部材の内部に流体を流入することにより第2の支持部材を流体の圧力によって少なくとも上下方向に膨張させて免震対象物側を上昇させるように構成した
ことを特徴とする請求項3または4記載の免震装置。
【請求項8】
前記免震対象物側の上下方向の位置を検知する位置検知手段を備え、
位置検知手段によって検知される所定の位置まで免震対象物側を上下方向に移動させるように構成した
ことを特徴とする請求項3、4、5、6または7記載の免震装置。
【請求項9】
地震による地盤側の揺れを検知する地震検知手段を備え、
地震検知手段によって所定の大きさ以上の揺れが検知されるまでは、第1の支持部材によって支持し、地震検知手段によって所定の大きさ以上の揺れが検知されると、第1の支持部材による免震対象物側の支持を解除して第2の支持部材のみで免震対象物側を支持するように構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の免震装置。
【請求項10】
前記第1の支持部材による免震対象物側の支持が解除されると、所定時間が経過した後に再び第1の支持部材によって免震対象物側を支持するように構成した
ことを特徴とする請求項9記載の免震装置。
【請求項11】
前記第2の支持部材を少なくとも水平方向に弾性変形可能な部材によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の免震装置。
【請求項12】
前記第2の支持部材を水平方向に転動可能な部材によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の免震装置。
【請求項13】
前記第2の支持部材を球状に形成するとともに、免震対象物側と地盤側に互いに対向するように設けられた球面状の凹部間に転動自在に配置した
ことを特徴とする請求項12記載の免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−96487(P2013−96487A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239199(P2011−239199)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(506378360)
【Fターム(参考)】