説明

入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、並びに前記表示装置を用いた電子機器

【課題】 入力装置の側方から外部へ延出する配線部材の耐折性を向上させることができる入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、並びに前記表示装置を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】 下部基板3の、フレキシブルプリント基板(FPC)6が引き出される側の側端部3bに、載置部8を下部基板3と一体に形成する。載置部8の、上部シート2の側端部2bからの突出長さL0を、FPC6の配線露出部6a2の長さL1よりも長くする。そして、載置部8上に、配線露出部6a2と、FPC6の後端部6eの一部とを載置する。
このようにすると、FPC6を下方向へ折り曲げようとする場合に、折り曲げ力に最も弱い配線露出部6a2に対し前記折り曲げ力が作用しにくくなり、FPC6の耐折性を適切に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばタッチパネルなどの入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置およびこの表示装置を用いた電子機器に係り、特に、入力装置の側方から外部へ延出する配線部材の耐折性を向上させることができる入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、並びに前記表示装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タッチパネルの具体的な構造について開示されている。
前記タッチパネルは、下面にITO(酸化インジウムスズ)等からなる透明電極を有し、略長方形に形成された透明フィルムからなる可撓性の上部電極シートと、上面にITO等からなる透明電極を有し、前記上部電極シートとほぼ同形に形成された透明プラスチック基板からなる下部電極基板とを有している。前記上部電極シートと前記下部電極基板は、それぞれの透明電極どうしが所定の間隔を保って対向するように、その長方形の外周部に所定幅に形成された回路レジストで対向配置されている。
【0003】
前記タッチパネルの具体的な構造について図6,図7を用いて説明する。
図6に示すように、入力装置1は、上部シート2と下部基板3を有しており、たとえば液晶ディスプレイ等の表示部材4の上方に所定の間隔を空けて、筐体5に位置決め固定される。
【0004】
上部シート2の下面2aの全面には図示しない抵抗膜(ITO膜)が所定の厚さで形成されており、この抵抗膜下には、X1−X2方向に間隔を置いて平行に形成された1対の上部電極(図示しない)が形成されている。
【0005】
下部基板3の上面3aの全面には図示しない抵抗膜(ITO膜)が所定の厚さで形成されており、この抵抗膜上には、Y方向に間隔を置いて平行に形成された1対の下部電極(図示しない)が形成されている。
【0006】
上部シート2は、下面2aに形成された抵抗膜を下部基板3に形成された抵抗膜に対向させ、かつ、前記上部電極を前記下部電極が存在しない側部に位置させて配置し、図示しない回路レジストによって、所定の間隔を空けて下部基板3と対向するように組み合わされている。
【0007】
前記回路レジストは、上部シート2及び下部基板3の、所定の側端部近傍には形成されておらず、図7に示すように、前記所定の側端部近傍では前記下部電極及び前記上部電極からの引き出し電極21,31が形成されており、引き出し電極21,31がフレキシブルプリント基板6(以下、FPC6と言う)に導電性接着剤7を介して接合されている。FPC6は、熱圧着されており、上部シート2及び下部基板3の側端部2b,3bから外部方向へ引き出されている。
【0008】
図7に示すように、FPC6は、ベースフィルム8と、その上下に形成された配線部90,90、配線部90,90を覆うポリイミド等のカバー層100とを有して構成される。
【0009】
図7に示すように、FPC6の先端部6aは、ベースフィルム8の上下に配線部90が露出した状態になっている。これは、引き出し電極21,31と配線部90,90とを導電性接着剤7,7を介して電気的に接続させるためである。
【特許文献1】特開2002−222055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7に示すように、FPC6の先端部6aの長さT0は、上部シート2と下部基板3との間での接合長さT2よりも長い寸法で形成される。
【0011】
これは、例えば先端部6aの長さT0と接合長さT2とをほぼ同程度で形成すると、位置ずれなどが生じてFPC6が上部シート2と下部基板3間に接合されたとき、FPC6を構成するカバー層100が引き出し電極21,31との間に入り込む可能性があり、このような場合には、引き出し電極21,31と配線部90間を適切に電気的に接続させることができなくなるからである。
【0012】
このため、先端部6aの長さT0は、接合長さT2よりも長くするが、このことによって、配線部90が剥き出しにされた部分が、上部シート2及び下部基板3の側端部2b,3bから長さT1だけ外部へ延出した状態にされる。
【0013】
図6に示すFPC6の外部接続端子6bは、図示しない表示装置や電子機器の端子部と接合される部分であり、通常、図7のように、図示下方向かあるいは上方向へ折り曲げられて、前記表示装置等の端子部と電気的に接続される。
【0014】
しかし、FPC6には、配線部90が剥き出しにされた長さT1の配線箇所があるため、この部分での耐折性は非常に弱く、何回かFPC6を上下方向へ折り曲げると、前記長さT1部分での配線部90が断線するといった問題があった。
【0015】
一方、上記のような断線を抑制するために、接着剤や樹脂およびテープ等の補強部材を、配線部90が剥き出しにされた配線箇所の下面などに設ける等の手段も考えられた。しかし、そのような場合でも、FPC6を折り曲げる際に、剥き出しにされた配線部90に強い折り曲げ力が作用し、断線しやすい。また、前記補強部材を形成する煩雑さや、前記補強部材を高精度に形成しないと、所定の箇所からFPC6を折り曲げることができない等の不具合があった。
【0016】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、特に、入力装置の側方から外部へ延出する配線部材の耐折性を向上させることができる入力装置およびこの入力装置を用いた表示装置、並びに前記表示装置を用いた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、
下面に上部抵抗膜が形成されるとともに、前記上部抵抗膜下に一対の上部電極が形成された可撓性の上部シートと、上面に下部抵抗膜が形成されるとともに、前記下部抵抗膜上に一対の下部電極が形成された下部基板と、前記下部基板と前記上部シートとの間に介在し、前記上部電極及び前記下部電極に電気的に接続されるとともに、前記上部シート及び前記下部基板の側方から外部へ引き出される配線部材とを有し、
前記上部シートの操作領域上を前記下部基板方向へ押圧したときに、その押圧点の平面座標が、前記上部電極及び下部電極から前記配線部材を介して検出される入力装置において、
前記下部基板の側端部には部分的に前記上部シートの側端部よりも外部方向へ突出する載置部が前記下部基板と一体に成形され、
前記配線部材の先端部は、前記下部基板と前記上部シートとの間に固定されるとともに前記載置部上に載置されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、下部基板の側端部には部分的に上部シートの側端部よりも外部方向へ突出する載置部が下部基板と一体に成形されている。
【0019】
従来では、下部基板と上部シートとは同じ寸法で形成されていたが、本発明では、下部基板に上部シートの側端部よりも外部方向へ突出する、配線部材の先端部を載置するための載置部を設けた。このため、従来、断線の生じやすかった配線部材の固定端(下部基板と上部シート間で固定される箇所)の付け根付近を、載置部上に載置することができ、折り曲げ力が極力、作用しないようにすることができ、配線部材の耐折性を向上させることができる。
【0020】
従来では、配線部材の耐折性を、接着剤や樹脂等、別部材による補強部材によって確保することが考えられたが、本発明では、配線部材のための載置部を下部基板と一体に成形したことで、より簡単な手法で配線部材の耐折性を向上させることが可能になる。
【0021】
本発明では、前記配線部材は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上下に形成された配線部と、前記配線部を覆うカバー層とを有して構成され、
前記配線部が前記上部電極及び前記下部電極と電気的に接続されており、
前記配線部材の先端部は前記配線部が露出した状態になっており、前記配線部材の後端部は前記配線部が前記カバー層で覆われた状態になっており、
前記載置部の前記上部シートの側端部からの突出長さが、前記先端部のうち前記上部シートの側端部から外方へ延出する配線露出部の長さより長いことが好ましい。
【0022】
これにより、折り曲げ力に最も弱い配線露出部が、載置部上に完全に載置されることで、配線露出部に折り曲げるときの力が作用しにくくなり、配線部材の耐折性を適切に向上させることができる。
【0023】
また本発明では、前記載置部には前記配線部材の位置決め手段が設けられていることが好ましい。この場合、前記載置部には前記配線部材方向に向けて突出する突起部が設けられ、前記配線部材には前記突起部と対向する位置に開口部が設けられ、前記突起部が前記開口部に挿入されて前記配線部材が位置決めされることが好ましい。あるいは、前記載置部には前記配線部材方向に向けて突出する突起部が設けられ、前記突起部が、前記配線部材を幅方向に固定することで前記配線部材が位置決めされることが好ましい。
【0024】
このように、突出する載置部を設けることで、載置部に配線部材のための位置決め手段を設けることができるとともに、配線部材を載置部上に適切に固定することが可能である。
【0025】
また本発明では、前記配線部材が、前記載置部上で固定部材を介して接合されて固定されることが好ましい。これによって、より効果的に配線部材を載置部上に固定することができる。
【0026】
本発明では、前記載置部は、前記下部基板と一体に射出成形されたものであることが好ましい。
【0027】
射出成形により、載置部を下部基板に簡単に一体成形することができる。
また本発明では、前記下部基板はプラスチック材料で形成されていることが好ましい。この場合、前記下部基板が、ノルボン系透明樹脂またはポリオレフィン系透明樹脂で形成されていることが好ましい。
【0028】
ノルボン系透明樹脂およびポリオレフィン系透明樹脂は、光の透過率が高く、かつ下部基板内部において複屈折が起きにくい。このため、下部基板の下方に設けられた表示部材に表示された画像等が鮮明に写し出され、上方から前記画像等を確実に見ることができる。また、ノルボン系透明樹脂およびポリオレフィン系透明樹脂は、耐熱性に優れており、射出成形時の高温にも耐えることができ、下部基板の成形時の反りを少なくすることができる。さらに、ノルボン系透明樹脂およびポリオレフィン系透明樹脂は、吸湿性に劣っている。このため、吸湿される空気中の水蒸気などが少なく、吸湿による下部基板の強度変化を防止することができる。
【0029】
本発明の表示装置は、上記のいずれかに記載の入力装置が実装されたことを特徴とするものである。
また本発明の電子機器は、上記の表示装置が搭載されたことを特徴とするものである。
【0030】
上記したように、本発明では、配線部材の耐折性を向上させることができるので、表示装置あるいは電子機器の端子部へ接続させるために、配線部材をどのように折り曲げても、配線部材に断線が生じにくく、電気的接続性に優れた表示装置及び電子機器を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、入力装置の側方から外部へ延出する配線部材の耐折性を、従来に比べて簡単な手法で向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は本発明の入力装置を示す断面図、図2は図1の部分拡大図、図3は本発明のフレキシブルプリント基板と載置部付近を上方からみたときの部分拡大平面図である。なお、図6および図7に示す従来の入力装置と同じ部分には、図6および図7に示した符号と同一の符号を付している。
【0033】
図1に示すように、本発明の入力装置1は、上部シート2と下部基板3を有しており、たとえば液晶ディスプレイ等の表示部材4の上方に所定の間隔を空けて、筐体5に位置決め固定される。
【0034】
上部シート2は透明なポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂から形成されて可撓性を有しており、上部シート2の下面2aの全面には図示しない上部抵抗膜が所定の厚さで形成されている。前記上部抵抗膜は、ITO(酸化インジウムスズ)を原料としてスパッタリング法や真空蒸着法などで成膜される。前記上部抵抗膜下には、X1−X2方向に間隔を置いて平行に形成された銀等からなる1対の上部電極21a,21aが形成され、上部電極21a,21a間に操作領域22が形成されている。
【0035】
下部基板3は透明なプラスチック基板であり、下部基板3の上面3aの全面には、前記上部シート2に形成される抵抗膜と同様にITOから形成される、図示しない下部抵抗膜が所定の厚さで形成されている。この下部抵抗膜上には、Y1−Y2方向に間隔を置いて平行に形成された銀等からなる1対の下部電極31a,31aが形成され、下部電極31a,31a間に操作領域32が形成されている。
【0036】
上部シート2は、下面2aに形成された上部抵抗膜を下部基板3に形成された下部抵抗膜に対向させ、かつ、上部電極21aを下部電極31aが存在しない側部に位置させて配置し、図示しない絶縁スペーサによって、所定の間隔を空けて下部基板3と対向するように組み合わされる。
【0037】
図2に示すように、上部電極21aと接続される引き出し上部電極21bが上部シート2の側端部近傍に形成され、一方、下部電極31aと接続される引き出し下部電極31bが、下部基板3の側端部近傍に形成される。
【0038】
引き出し上部電極21bが形成された上部シート2、および引き出し下部電極31bが形成された下部基板3の側端部近傍には、前記絶縁スペーサは形成されず、図2に示すように、引き出し上部電極21bと引き出し下部電極31bに導電性接着剤7を介してフレキシブルプリント基板6(以下、FPC6という)が接合されている。
【0039】
そして、たとえば図示しない入力ペン等で上部シート2の操作領域22内の任意の箇所を下方へ押圧すると、まず上部シート2が下方に変形して操作領域22と32との間において、上部シート2に形成された上部抵抗膜と下部基板3に形成された下部抵抗膜が接触する。
【0040】
押圧点でのX座標検出は、上部シート2の上部電極21a間に電圧を印加すると、上部シート2の下面2aに形成された上部抵抗膜の抵抗によって上部電極21a間に電位勾配が生じる。押圧点での電位を、下部基板3に形成された下部電極31aからFPC6の外部接続端子6bを通じて検出すると、押圧点でのX座標を知ることができる。
【0041】
また、押圧点でのY座標検出は、下部基板3の下部電極31a間に電圧を印加すると、下部基板3の上面3aに形成された下部抵抗膜の抵抗によって下部電極31a間に電位勾配が生じる。押圧点での電位を、上部シート2の上部電極21aからFPC6の外部接続端子6bを通じて検出すると、押圧点でのY座標を知ることができる。
【0042】
FPC6は、ポリイミドフィルム等からなるベースフィルム6dと、ベースフィルム6dの上下に形成された銅箔等からなる配線部6b1,6b2と、ポリイミド等からなり、配線部6b1,6b2を覆うカバー層6cとを有して構成される。
【0043】
図2,図3に示すように、上部配線部6b1は2本設けられており、同じく2本設けられた引き出し上部電極21bに導電性接着剤7を介して接合されている。また、下部配線部6b2も同様に2本設けられており、同じく2本設けられた引き出し下部電極31bに導電性接着剤7を介して接合されている。なお、各引き出し電極と各配線部とは熱圧着されて接合されることが好ましい。
【0044】
本発明では、図2および図3に示すように、下部基板3の側端部3bには、部分的に上部シート2の側端部2bよりも外部方向へ突出する載置部8が、下部基板3と一体に成形されている。
【0045】
FPC6の先端部6aは、ベースフィルム6dと、その上下に形成された配線部6b1,6b2のみで形成され、配線部6b1,6b2が露出した状態になっている。FPC6の後端部6eは、ベースフィルム6dの上下に形成された配線部6b1,6b2がカバー層6cで覆われた領域である。
【0046】
FPC6の先端部6aは、引き出し電極21b,31bとの間に、導電性接着剤7を介して接合される固定端部6a1と、外部に配線部6b1,6b2が剥き出しの状態にある配線露出部6a2とで構成される。
【0047】
載置部8上には、FPC6の配線露出部6a2と、後端部6eの一部とが載置されている。
【0048】
すなわち、載置部8は、上部シート2の側端部2bからの突出長さ(X1−X2方向の長さ)L0が、上部シート2の側端部2bから外方へ延出する配線露出部6a2の長さL1よりも長く形成されている。なお、図3に示すように、載置部8は下部基板3の側端部3bから部分的に突出成形される。載置部8の幅寸法(図示Y1−Y2方向の長さ)は、少なくともFPC6の幅寸法より広ければよい。
【0049】
上記したように、載置部8上には、配線露出部6a2と、カバー層6cによって配線部6b1,6b2が保護された後端部6eの一部が載置される。よって、図2に示すように、FPC6を下方向へ折り曲げようとすると、カバー層6cの存在により最も折り曲げ力に強いFPC6の後端部6eの載置部8との境界付近から、FPC6が下方向へ折り曲げられるので、折り曲げ力に最も弱い配線露出部6a2に対し前記折り曲げ力が作用しにくくなり、FPC6の耐折性を適切に向上させることができる。
【0050】
また、図2の矢印方向に示すように、FPC6を図示上方向へ折り曲げようとした場合は、カバー層6cが形成されていないことで最も剛性力の低い配線露出部6a2から折り曲がりやすくなるため、配線露出部6a2での断線が生じやすい。
【0051】
このため、図2,図3に示すように、載置部8とFPC6との間に接着剤等の固定部材40を介在させて、載置部8とFPC6間を固定することが好ましい。
【0052】
固定部材40は両面テープや接着剤などを用いることができる。
なお、固定部材40に例えば片面接着テープを用いて、FPC6の上面側から載置部8の上面に前記片面接着テープをかけて貼り付け、FPC6と載置部8とを固定してもよい。
【0053】
なお、本発明では、固定部材40を、FPC6を図示下方向、すなわち載置部8方向へ曲げるときに設けてよい。このような場合でも、配線露出部6a2に折り曲げ力が作用するのを適切に抑制でき、耐折性に優れた構造にすることができる。
【0054】
なお、載置部8の形状は、FPC6の配線露出部6a2と後端部6eの一部を載置できる形状であれば、図2および図3に示すような形状には限定されず、たとえば断面形状(図2における形状)が長方形で、上方からみたときの形状(図3における形状)が楕円形状等であってもよい。
【0055】
図4は本発明の他の変形例のFPC6と載置部8との近傍を上方からみたときの部分拡大平面図、図5は図4に示す他の変形例を膜厚方向から切断した部分断面図である。
【0056】
本変形例では、図4,図5に示すように、載置部8上からは突起部9が設けられており、FPC6には突起部9と対向する位置に貫通孔10が設けられている。突起部9は載置部8に一体に成形されていることが好ましく、そのような場合には、突起部9は射出成形により形成される。
【0057】
突起部9や貫通孔10はFPC6の位置決め手段として機能する。たとえば図5に示すように、突起部9および貫通孔10の双方を形成し、突起部9を貫通孔10に嵌合させることで、FPC6を載置部8上で適切に固定できるとともに、FPC6を適切に位置決めできる。また、突起部9と貫通孔10との嵌合により、たとえば製造工程中(FPC6と引き出し電極21b,31b間を導電性接着剤7によって接合する前の工程中)に、水平方向(X−Y平面と平行な方向)の引っ張り力がFPC6に加えられた場合に、前記引っ張り力に対する耐久性が向上し、前記引っ張り力によって、FPC6が載置部8上から外されることを防止することができる。
【0058】
FPC6の位置決め手段は、図4,図5に示す形態(形状)には限られない。図4に示すように、突起部9はピン形状であったが、リブ形状であってもよい。また、突起部9は、FPC6に貫通させるものではなく、FPC6の幅寸法に合わせた突起であり、FPC6が突起部9によって幅方向に固定されて、位置決めされてもよい。また、貫通孔10ではなく切り欠きであってもよい。
【0059】
その他、載置部8の寸法や固定部材40等に関しては、図2,図3で説明したものと同じである。
【0060】
本発明の下部基板3は、プラスチック材で形成され、特にノルボン系透明樹脂またはポリオレフィン系透明樹脂で形成されていることが好ましい。前記ノルボン系透明樹脂およびポリオレフィン系透明樹脂は、光の透過率が高く、かつ下部基板3内部において複屈折が起きにくい。このため、表示部材4に表示された画像等が鮮明に写し出され、上方から前記画像等を確実に見ることができる。また、ノルボン系透明樹脂およびポリオレフィン系透明樹脂は、耐熱性に優れており、射出成形時の高温にも耐えることができ、下部基板3の成形時の反りを少なくすることができる。さらに、ノルボン系透明樹脂およびポリオレフィン系透明樹脂は、吸湿性に劣っている。このため、吸湿される空気中の水蒸気などが少なく、吸湿による下部基板3の強度変化を防止することができる。
【0061】
本発明では、上記のように、下部基板3をプラスチック材で形成することで、載置部8や載置部8上に形成される突起部9を、下部基板3と一体に射出成形することが可能である。
【0062】
図1に示すように、上記のような入力装置1と表示部材4と導光部材11と図示しない光源を有する装置を表示装置として用いることができる。このような表示装置は、FPC6の断線が防止される。このため、入力装置1の信頼性が損なわれることが防止され、表示部材4から映し出される画像等を、入力装置1によって確実に選択等することができる。
【0063】
上記のような、本発明の入力装置1が実装された表示装置は、PDA(パーソナルディジタルアシスタント)や手のひらサイズの小型パーソナルコンピュータ、あるいは携帯電話等の電子機器に搭載することができる。
【0064】
このような電子機器は、本発明の入力装置1を備えているため、FPC6の断線が防止され、よってPDA等のような小型の電子機器においても、入力装置1の信頼性が損なわれることが防止され、入力装置1によって確実に所望の情報を入力することができる。
【0065】
さらに、前記電子機器は前記表示装置を備えているため、表示部材4から映し出される画像等を、入力装置1によって確実に選択等することもできる。したがって、前記電子機器の操作者は、前記画像等を確認しながら正確に前記電子機器を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の入力装置を示す断面図、
【図2】図1の部分拡大図、
【図3】本発明のフレキシブルプリント基板と載置部付近を上方からみたときの部分拡大平面図、
【図4】本発明の他の変形例のFPC6と載置部8との近傍を上方からみたときの部分拡大平面図、
【図5】図4に示す他の変形例を膜厚方向から切断した部分断面図、
【図6】従来の入力装置におけるフレキシブルプリント基板の補強方法を示す図、
【図7】図6の部分拡大図
【符号の説明】
【0067】
1 入力装置
2 上部シート
3 下部基板
4 表示部材
5 筐体
6 フレキシブルプリント基板(FPC)
6a2 配線露出部
6e 後端部
7 導電性接着剤
8 載置部
9 突起部
10 貫通孔
11 導光部材
21b 引き出し上部電極
31b 引き出し下部電極
40 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に上部抵抗膜が形成されるとともに、前記上部抵抗膜下に一対の上部電極が形成された可撓性の上部シートと、上面に下部抵抗膜が形成されるとともに、前記下部抵抗膜上に一対の下部電極が形成された下部基板と、前記下部基板と前記上部シートとの間に介在し、前記上部電極及び前記下部電極に電気的に接続されるとともに、前記上部シート及び前記下部基板の側方から外部へ引き出される配線部材とを有し、
前記上部シートの操作領域上を前記下部基板方向へ押圧したときに、その押圧点の平面座標が、前記上部電極及び前記下部電極から前記配線部材を介して検出される入力装置において、
前記下部基板の側端部には部分的に前記上部シートの側端部よりも外部方向へ突出する載置部が前記下部基板と一体に成形され、
前記配線部材の先端部は、前記下部基板と前記上部シートとの間に固定されるとともに前記載置部上に載置されることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記配線部材は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上下に形成された配線部と、前記配線部を覆うカバー層とを有して構成され、
前記配線部が前記上部電極及び前記下部電極と電気的に接続されており、
前記配線部材の先端部は前記配線部が露出した状態になっており、前記配線部材の後端部は前記配線部が前記カバー層で覆われた状態になっており、
前記載置部の前記上部シートの側端部からの突出長さが、前記先端部のうち前記上部シートの側端部から外方へ延出する配線露出部の長さより長い請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記載置部には前記配線部材の位置決め手段が設けられている請求項1または2記載の入力装置。
【請求項4】
前記載置部には前記配線部材方向に向けて突出する突起部が設けられ、前記配線部材には前記突起部と対向する位置に開口部が設けられ、前記突起部が前記開口部に挿入されて前記配線部材が位置決めされる請求項3記載の入力装置。
【請求項5】
前記載置部には前記配線部材方向に向けて突出する突起部が設けられ、前記突起部が、前記配線部材を幅方向に固定することで前記配線部材が位置決めされる請求項3記載の入力装置。
【請求項6】
前記配線部材が、前記載置部上で固定部材を介して接合されて固定される請求項1ないし5のいずれかに記載の入力装置。
【請求項7】
前記載置部は、前記下部基板と一体に射出成形されたものである請求項1ないし6のいずれかに記載の入力装置。
【請求項8】
前記下部基板は、プラスチック材料で形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の入力装置。
【請求項9】
前記下部基板が、ノルボン系透明樹脂またはポリオレフィン系透明樹脂で形成されている請求項8記載の入力装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の入力装置が実装されたことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項10記載の表示装置が搭載されたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−48388(P2006−48388A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228798(P2004−228798)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】