説明

入力装置

【課題】操作部を押圧操作する際の操作荷重により回転検出手段が故障してしまうことを防止することができ、耐久性や信頼性を向上することができる入力装置を提供する。
【解決手段】回転し揺動する回転軸17に一体化されたサムホイール3と、回転軸17の回転量を検出するエンコーダ15(回転検出手段)と、回転軸17の揺動により操作されるスイッチ16とを備え、回転軸17とエンコーダ15との間に第1のギア24(回転体)を設け、この第1のギア24に、回転軸17を揺動可能に且つ当該回転軸17の回転をこの第1のギア24に伝達するように連結する。サムホイール3を押圧操作してスイッチ16を操作する際の操作荷重は、エンコーダ15ではなく、回転軸17が連結された第1のギア24に印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作可能且つ押圧操作可能に構成された操作部と、この操作部の回転量を検出する回転検出手段とを備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のカーナビゲーション装置を操作するための入力装置には、回転操作可能且つ押圧操作可能に構成された操作部が設けられており、この種の操作部は、親指により操作されることが多いことから、一般にサムホイールと称されている。このサムホイールは、回転し揺動する回転軸に一体化されており、この回転軸の一端側はサムホイールの回転量を検出するエンコーダ(回転検出手段)に連結され、回転軸の他端側は入力決定用のスイッチに対向する位置に配置されている。そして、サムホイールを回転操作すると、エンコーダにより検出された回転軸の回転量に応じて、表示画面に表示された項目が順次選択されるようになっている。また、サムホイールを押圧操作すると、回転軸の揺動によりスイッチが操作され、選択された項目の入力が行われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−350573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の入力装置によれば、サムホイールの回転操作および押圧操作により、入力操作を容易に行うことができる。しかしながら、サムホイールの回転軸の一端側がエンコーダにより支えられた状態となっていることから、サムホイールを押圧操作する際の操作荷重はエンコーダに直接印加されることとなる。そのため、エンコーダの故障を招くおそれがあり、耐久性や信頼性が低下してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作部を押圧操作する際の操作荷重により回転検出手段が故障してしまうことを防止することができ、耐久性や信頼性を向上することができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の入力装置は、回転し揺動する回転軸に一体化された操作部と、前記回転軸の回転量を検出する回転検出手段と、前記回転軸の揺動により操作されるスイッチとを備えた入力装置において、前記回転軸と前記回転検出手段との間に回転体を設け、この回転体に、前記回転軸を揺動可能に且つ当該回転軸の回転をこの回転体に伝達するように連結したことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の入力装置によれば、操作部が回転操作されると、回転軸の回転が回転体に伝達され、回転検出手段は、この回転体の回転量を操作部の回転量として検出する。一方、操作部が押圧操作されると、回転軸は係合部を支点に揺動しスイッチを操作する。この場合、操作部を押圧操作する際の操作荷重は、回転軸が連結された回転体に印加され、回転検出手段に直接印加されることはない。これにより、操作部を押圧操作する際の操作荷重により回転検出手段が故障してしまうことを防止することができ、耐久性や信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を例えば自動車のカーナビゲーション装置(図示せず)を操作するための入力装置1に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態において、図3に示す入力装置1は、例えば何れも図示しないステアリングホイールの中央部(ハブ)と外周部(リム)とを連結する中間部(スポーク)に設けられている。
【0008】
入力装置1の外郭を構成するケース本体2には、当該ケース本体2のほぼ中央部に設けられたサムホイール3(操作部に相当)と、このサムホイール3の左右両側に設けられた一対の大ボタン4,5と、サムホイール3の下方に設けられた左右一対の小ボタン6,7が備えられている。サムホイール3は、全体として横軸のほぼ円盤形状をなしており、後述する構成により、回転軸17を中心に図3中矢印A1,A2方向に回転操作可能に構成されているとともに、入力装置1の前面側から図1中矢印B方向に押圧操作可能に構成されている。大ボタン4,5および小ボタン6,7は、それぞれ入力装置1の前面側から押圧操作可能に構成されており、これらのボタン4,5,6,7が操作されると、ケース本体2内に設けられたスイッチ8,9,10,11が、それぞれ操作されるようになっている。
【0009】
次に、入力装置1の内部構成について図1を参照して説明する。ケース本体2は、当該ケース本体2の後部側(図1では下側)を構成するベース部材12と、このベース部材12を覆う蓋部材13と、この蓋部材13の前面(図1では上側の面)を覆う前面カバー14とから構成されている。ベース部材12の中央部には、水抜き穴12aが設けられており、蓋部材13および前面カバー14の中央部には、それぞれ開口部13aおよび開口部14aが設けられている。
【0010】
このケース本体2内には、上記したサムホイール3の他に、エンコーダ15(回転検出手段に相当)およびスイッチ16が設けられている。エンコーダ15は、回転軸17の回転量を検出するためのものであり、ケース本体2内の一端側(図1では左側)に設けられた制御基板18に配置されている。スイッチ16は、カーナビゲーション装置への入力操作を決定するためのものであり、ケース本体2内の他端側(図1では右側)に設けられた制御基板19に配置されている。
【0011】
サムホイール3は、回転軸17に一体化されており、上記した水抜き穴12a、開口部13aおよび開口部14aにより形成される空間内に配置されている。また、サムホイール3の周側部の一部(図1では上側の部分)がケース本体2の前面から突出した状態となっている。回転軸17の一端側(図1では左側)には、係合部20が設けられており、この係合部20は、径方向に見てほぼ球形状に形成されているとともに、軸方向に見て多角形状(この場合、六角形状)に形成されている。
【0012】
また、回転軸17の他端側(図1では右側)には、当該回転軸17の径よりも径大な径大部21が設けられており、この径大部21は、スイッチ16を覆う弾性変形可能なスイッチカバー22に載置されて支えられている。また、この回転軸17においてサムホイール3の左右両側に近接する部分は、水抜き穴12aから前方(図1では上方)に向けてU字状に突出する壁12bおよび開口部13aから後方(図1では下方)に向けてU字状に突出する壁13bにより囲まれ、これらにて、ケース本体2内のエンコーダ15側並びにスイッチ16側への水の浸入を極力防止するようにしている。
【0013】
制御基板18には、ギア支持部材23が設けられており、このギア支持部材23には、軸方向が横向きの第1のギア24(回転体に相当)および軸方向が縦向きの第2のギア25が配置されている。第1のギア24の周側部には、当該第1のギア24の周方向に沿って溝部24aが形成されており、この溝部24aには、ギア支持部材23に設けられた支持部23aおよび蓋部材13の内面に設けられた支持部13cが嵌め込まれている。これにより、第1のギア24は横軸周りに回転可能に支持されている。
【0014】
第2のギア25の前側(図1では上側)の中央部には、軸受孔25aが設けられており、この軸受孔25aには、蓋部材13の内面から後方に向けて突出する軸部13dが挿入されている。これにより、第2のギア25は縦軸周りに回転可能に支持されている。第2のギア25の後側(図1では下側)の中央部には、後方に向けて突出する回転軸25bが設けられており、この回転軸25bは、エンコーダ15に連結されている。
これら第1のギア24と第2のギア25は、この場合、かさ歯車にて、それぞれの軸方向がほぼ直交した状態で噛み合わされており、第1のギア24の回転に応じて第2のギア25が回転するようになっている。
【0015】
図4に示すように、第1のギア24の中央部には、係合部20の周側部の形状(六角形状)に対応して、軸方向に見て断面六角形状の孔が被係合部24bとして設けられており、この被係合部24bには、回転軸17の係合部20が挿入されている。これにより、第1のギア24は、サムホイール3が回転操作された場合には回転軸17により回転され、サムホイール3が押圧操作された場合には回転軸17の一端側(係合部20)を支点に当該回転軸17を図1中矢印C方向に揺動させるようになっている。
【0016】
次に、上記構成の作用について図1および図2を参照して説明する。
ユーザがサムホイール3を図3中矢印A1方向あるいは矢印A2方向に回転操作すると、回転軸17により第1のギア24が回転され、この第1のギア24の回転に応じて第2のギア25が回転する。この第2のギア25の回転量はエンコーダ15により検出され、検出された回転量に応じてカーナビゲーション装置の表示画面(図示せず)に表示された項目が順次選択される。
【0017】
所望の項目が選択された状態で、ユーザがサムホイール3を図1中矢印B方向に押圧操作すると、回転軸17が係合部20を支点に図1中矢印C方向に揺動する。これにより、図2に示すように、径大部21によりスイッチ16が操作され、これにより、選択された項目の入力が行われる。
【0018】
以上、説明したように本実施形態によれば、サムホイール3が回転操作されると、回転軸17の回転は第1のギア24に伝達され、エンコーダ15は、この第1のギア24により回転する第2のギア25の回転量をサムホイール3の回転量として検出する。一方、サムホイール3が押圧操作されると、回転軸17は係合部20を支点に揺動しスイッチ16を操作する。この場合、サムホイール3を押圧操作する際の操作荷重は、回転軸17が連結された第1のギア24に印加され、エンコーダ15に直接印加されることはない。これにより、サムホイール3を押圧操作する際の操作荷重によりエンコーダ15が故障してしまうことを防止することができ、耐久性や信頼性を向上することができる。
【0019】
また、回転軸17とエンコーダ15との間に第1のギア24および第2のギア25を設けたので、操作荷重が印加される第1のギア24とエンコーダ15との間に第2のギア25が介在する構成となっている。これにより、サムホイール3を押圧操作する際の操作荷重がエンコーダ15に印加されてしまうことを一層防止することができる。
【0020】
なお、本発明は上記した一実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
係合部20は、軸方向に見て六角形状に形成したものに限られず、例えば六角形よりも角数の小さい五角形状に形成しても良いし、六角形よりも角数の大きい七角形状や八角形状に形成しても良い。この場合、その係合部の周側部の形状に対応して、被係合部24bを設ければ良い。
【0021】
第1のギア24の軸方向と第2のギア25の軸方向が斜交するように構成しても良い。
本発明は、回転操作可能且つ押圧操作可能に構成された操作部と、この操作部の回転量を検出する回転検出手段とを備えた入力装置であれば、自動車のカーナビゲーション装置を操作するための入力装置に限らず、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、入力装置の内部構成を概略的に示す縦断側面図
【図2】サムホイールを押圧操作した状態を示す入力装置の縦断側面図
【図3】入力装置の正面図
【図4】係合部および被係合部を示す図
【符号の説明】
【0023】
図面中、1は入力装置、3はサムホイール(操作部)、15はエンコーダ(回転検出手段)、16はスイッチ、17は回転軸、24は第1のギア(回転体)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転し揺動する回転軸に一体化された操作部と、
前記回転軸の回転量を検出する回転検出手段と、
前記回転軸の揺動により操作されるスイッチとを備えた入力装置において、
前記回転軸と前記回転検出手段との間に回転体を設け、
この回転体に、前記回転軸を揺動可能に且つ当該回転軸の回転をこの回転体に伝達するように連結したことを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−176629(P2008−176629A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10368(P2007−10368)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】