説明

入力装置

【課題】押圧力を軽減できると共に操作性に優れた入力装置を提供すること。
【解決手段】基板20と、当該基板20の上方に配置されるキートップ部材10とを備える入力装置100であって、キートップ部材10は、少なくとも、操作面を有する操作パネル13と、当該操作パネル13の裏面に、基板20側に突出するように固定された導電性弾性体からなる導電部材14とを有し、基板20上には、少なくとも一部の導電部材14と対向するように、センサ部30が設けられ、操作パネル13には、導電部材14の裏側の位置に、当該操作パネル13の裏面から表面に向かって窪む凹部17が設けられている入力装置100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、PDA等の電子機器に搭載される入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オーディオ機器、携帯電話機等の操作部には、数字を入力するため、あるいは方向を指示するための入力装置が設置されている。この種の入力装置では、例えば、特許文献1等に開示されているように、「方向キー」の左右方向は、表示部画面の左右方向に対応付けられている。即ち、表示画面の左または右側を示すアイコンで代表される処理には、左右方向に並んで配置された操作キー(操作部)が割り当てられている。
【0003】
しかしながら、多機能の電子機器であればあるほど多くの操作項目が設けられ、その各種の操作項目を確実に実現する必要がある。このため、近年の技術の進歩と伴い、タッチパネル式の入力装置が開発されている。タッチパネル式の入力装置は、タッチパネル上に軽く触れた指の動きを読み取り、当該動きを信号に変換するため、押釦スイッチと異なり、強く押圧する必要がない。
【0004】
さらに、携帯電子機器の高機能化を実現するために、指を連続的にタッチパネルに沿って触れることで楽に画面移動等ができる入力装置が求められている。このような要求を満足するものとしては、スライドキーの内面側に配置され、スライドキーの中心軸回りにスライドキーに向って拡径する皿状の傾斜面を構成する操作板と、その操作板が搭載保持されるさら穴状の凹部を上面に有し、その凹部の皿状内周面の位置と対応して下面に断面円筒面状をなす凸部が環状に形成された弾性材よりなるシートとを具備し、スライドキーの操作により、その操作方向の傾斜面がスライドキーによって押圧され、その押圧によりシートの皿状内周面が操作板を介して押圧されて、当該凸部がその凸部の下方に配置されている感圧部材を押圧する構造とされている入力装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の入力装置は、感圧部材を使用しているため、押圧によって操作方向および操作量を検出できる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−174495号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2003−99188号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、長年、「方向キー」を有する入力装置を使用してきたユーザは、タッチパネル式の入力装置を使用する際にクリック感が得られないため、電子機器の操作に違和感を感じるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示される入力装置の場合にも、ゴム等の弾性材よりなる押圧凸部は、押圧でその押圧凸部の下方に配置されている感圧部材に接触し、入力操作が行われる。このため、上述したタッチパネル式の入力装置と同様に、操作者に入力操作が行われる際に押圧凸部を変形させるための押圧が大きく、操作性が良くないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、押圧力を軽減できると共に操作性に優れた入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、基板と、当該基板の上方に配置されるキートップ部材とを備える入力装置であって、キートップ部材は、少なくとも、操作面を有する操作パネルと、当該操作パネルの裏面に、基板側に突出するように固定された導電性弾性体からなる導電部材とを有し、基板上には、少なくとも一部の導電部材と対向するように、センサ部が設けられ、操作パネルには、導電部材の裏側の位置に、当該操作パネルの裏面から表面に向かって窪む凹部が設けられている入力装置としている。
【0010】
このような入力装置とすることで、多方向検出機能を備えた入力装置として機能すると共に、多方向検出を行う際に押圧力を軽減できる入力装置となる。すなわち、凹部が形成されることによって、入力装置を操作する際に、操作パネルを軽く押すと、押された部分の裏側にある1つまたは複数の導電性弾性体からなる導電部材が押し下げられて、導電部材がセンサ部を構成する導電パターンに接触する。すると、センサ部の電極間は、導電部材により導通する。さらに、強く押し下げると、導電部材は変形して操作パネルの凹部にもぐり込みながら、センサ部への接触面積を増加する。この一連の操作による得られた1つまたは複数のセンサ部の接触面積の変化に応じて生じる電圧量あるいは抵抗値の変化を入力装置のCPUが測定することによって、指が押されているキーの方向と押圧力を検出することができる。凹部が形成されていない構造と比べて、操作を行うための荷重が小さくなるので、操作性をより良くすることができる。
【0011】
また、別の発明は、上述の発明に加え、凹部は、その凹部の面内中心よりも操作パネルの径方向外側寄りに最も深い最深部を有する形状である入力装置としている。
【0012】
入力装置を操作する際に、操作パネルの外側ほど大きな荷重がかかる。このような凹部とすることで、凹部において、その外側の荷重が大きい部分に、導電部材がもぐりこみやすい。
【0013】
また、別の発明は、上述の発明に加え、凹部は、その中心より前記操作パネルの径方向外側寄りにその凹部の最深部を有し、その最深部から前記操作パネルの中心側の縁までの傾斜よりも、その最深部から前記操作パネルの中心と反対側の縁までの傾斜が急になる形状とする入力装置としている。
【0014】
このため、このような凹部において、その外側の荷重が大きい部分に、導電部材がもぐりこみやすい。その結果、操作性をより良くすることができる。
【0015】
また、別の発明では、上述の発明に加え、操作パネルは、円状若しくは環状とされ、凹部における最深部は、操作パネルの中心と同一の中心を有する第1の円の円周上に形成され、導電部材の中心は、第1の円の内側の第2の円の円周上に配置される入力装置としている。環状の操作パネルとは、操作パネルの真中に中心キートップを配置したものという。円状の操作パネルとは、操作パネルの真中に中心キートップを配置していないものという。
【0016】
このような入力装置とすることで、タッチパネルとしての精度が良いものとなると共に、多方向検出機能を有する入力装置としても操作しやすいものとなる。
【0017】
また、別の発明では、上述の発明に加え、導電性弾性体は、導電性ゴムである入力装置としている。このため、押圧によって効率良く多方向検出機能および確定入力機能を果たすことができる。
【0018】
本明細書において、「キートップ部材」とは、入力装置を構成する基板の上方に配置され、中心キートップおよび操作パネルのみではなく、中心キートップおよび操作パネルの下方に形成された押圧子を含む押圧するための集合体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、押圧力を軽減できると共に操作性に優れた入力装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る入力装置の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な各実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置100を備える電子機器1を操作面側から見た斜視図である。図2は、図1の一点鎖線で示される領域Aについて、表側より基板20を見たときの平面図である。また、図3は、図1の一点鎖線で示される領域Aについて、キートップ部材10の裏側を下方より見たときの平面図である。
【0022】
電子機器1には、入力装置100に加え、押釦スイッチが設けられている。したがって、電子機器1の操作面には、押釦スイッチを構成する複数のキートップ2およびキートップ部材10を構成する操作パネル13が配置されている。操作パネル13は、環状であり、環状の操作パネル13で囲まれた内側部分には、中心キートップ12が配置されている。
【0023】
図2に示すように、入力装置100を構成する基板20には、センサ部30、スイッチ部40および中心操作部50が設けられている。中心操作部50は固定接点52と導電性の皿バネ部材55とからなる。当該皿バネ部材55は、ドーム形状とされ、固定接点52を覆うように形成されている。また、スイッチ部40は、固定接点41と導電性の皿バネ部材42とからなる。当該皿バネ部材42は、ドーム形状とされ、固定接点41を覆うように形成されている。センサ部30は、櫛歯状の一対の電極が互いに接触することなく噛み合った形態を有する導電パターン45で構成されている。センサ部30は、中心操作部50を中心として、直径がXである円上18に円周方向に所定角度毎に設けられる。例えば、所定角度を90度の角度として円上18の4箇所に等角度にセンサ部30を設けても良い。また、スイッチ部40は、同じ直径がXである円上18に円周方向に隣り合うセンサ部30の間にセンサ部30とそれぞれ重ならないように配置される。特に、中心操作部50の中心を基準として、隣接するセンサ部30から、円周方向に45度の角度を為して設けるのがより好ましい。上述の位置にセンサ部30およびスイッチ部40を配置することにより、誤操作が生じにくく、効率良く多方向検出機能を果たす入力装置100となる。ただし、上述した配置位置に限定せず、他の形態に配置しても良い。
【0024】
図3に示すように、キートップ部材10を構成する弾性シートの裏側には、導電部材14、押圧子15および中心押圧子11が設けられている。導電部材14、押圧子15および中心押圧子11は、重ならないように、基板20に配置されたセンサ部30、スイッチ部40および中心操作部50と対向してそれぞれ配置されている。
【0025】
図4は、図1の一点鎖線で示す領域AのB−B線の断面を拡大して示す拡大断面図である。図5は、図1の一点鎖線で示す領域AのC−C線の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【0026】
図4に示すように、中心キートップ12および操作パネル13の裏側には、弾性シート25が貼り付けられている。また、弾性シート25の裏面であって、中心キートップ12に対応する位置には、中心押圧子11が形成されている。操作パネル13には、操作パネル13の裏面から表面に向かって凹部17が設けられている。当該凹部17は、その中心より外側寄りに最深部(以下、「頂点」という)19を有し、その頂点19から操作パネル13の中心側の縁までの傾斜よりも、その頂点19から操作パネル13の中心と反対側の縁までの傾斜が急になる略円錐状を有する。ただし、凹部17の形状は、上述の形態に限定せず、必要に応じて様々な形状に変更しても良い。例えば、頂点19を凹部17の開口底面の中心上方にしても良い。また、水平面における凹部17の投影の面積は、弾性シート25と接する導電部材14の面積より大きい方が好ましい。なお、弾性シート25の厚さおよび弾性シート25と接する導電部材14の面積に応じて、凹部17の大きさを適宜に調整すると良い。これにより、操作荷重軽減の効果を向上できる。また、凹部17の最も操作パネル13の中心側の縁部は、導電部材14の内側の縁部と一致し、もしくは導電部材14の内側の縁部が凹部17の最も操作パネル13の中心側の縁部より内側に位置するのが好ましい。このため、凹部17の頂点19の真下近傍の弾性シート25が主として凹部17に入り込むように変形する。その結果、凹部17全域の下方にある弾性シート25全体が変形せず、安定した電気的変化が得やすくなる。
【0027】
また、弾性シート25に対向して、基板20が設けられている。基板20の弾性シート25に対向する面には、センサ部30および中心操作部50が設けられている。センサ部30は、櫛歯状の一対の電極が互いに接触することなく噛み合った形態を有する導電パターン45で構成されている。また、中心操作部50は、固定接点52と導電性の皿バネ部材55とからなり、当該導電性の皿バネ部材55は、ドーム形状とされ、固定接点52を覆うように形成されている。また、センサ部30と、凹部17の直下にある導電部材14とは、弾性シート25を挟んで対向して設けられている。中心押圧子11と中心操作部50とは、対向して設けられている。
【0028】
また、図5に示すように、基板20の弾性シート25に対向する面には、スイッチ部40が設けられている。スイッチ部40は、固定接点41と導電性の皿バネ部材42とからなる。当該皿バネ部材42は、ドーム形状とされ、固定接点41を覆うように形成されている。また、操作パネル13のスイッチ部40と対向する部分の裏面に、図4に示すような操作パネル13の形態と異なり、凹部17が設けられていない。また、押圧子15とスイッチ部40とは、対向して設けられている。
【0029】
中心キートップ12は、樹脂、金属あるいはそれらのコンポジット等からなる部材であり、単一成形体であるか複数の層から成る成形体であるかを問わない。複数の層から成る中心キートップ12を採用する場合、中心キートップ12は、表面が樹脂シートで被覆されている部材が好ましく、被覆領域が一部であっても全部であっても良い。中心キートップ12の材料には、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂等の各樹脂を使用できるが、特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂である。
【0030】
本実施の形態において、操作パネル13としては、例えば、厚さが約1mm、外周円の直径が約20mm、内周円の直径が約7mmの環状パネルを好適に用いることができる。また、操作パネル13に指を沿わせて環状になぞることを容易にする目的で、例えば、約0.2mm間隔で同心円状の溝を形成しても良い。また、操作パネル13の位置が指触にてわかるように、操作パネル13の外周部分の厚さを外周以外の部分よりも厚くすることで、円輪状の縁を形成しても良い。操作パネル13は、上述の中心キートップ12と同じ樹脂材料またはゴム状弾性体からなる部材である。具体的なゴム状弾性体の材料としては、熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーにて形成される。熱硬化性エラストマーとしては、例えば、シリコーンゴムの他、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アミド系、ブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、フッ素ゴム系、イソプレン系、塩素化ポリエチレン系等のものが採用できる。この中でも、耐環境性、加工性および柔軟性等を考慮すると、特にシリコーンゴムが好ましい。ただし、上述のゴム状弾性体は一例に過ぎず、他のゴム状弾性体を採用しても良い。なお、二種類以上のゴム状弾性体の混合物を採用しても良い。
【0031】
弾性シート25は、中心キートップ12、操作パネル13および導電部材14を所定の位置に固定している。具体的には、弾性シート25は、中心キートップ12、操作パネル13および導電部材14の裏面部分に設けられた接着層(図示せず)を介して接着されている。弾性シート25の材料としては、上方から押した際に変形することのできる柔らかい材料が好ましい。具体的には、厚さが10〜200μmであり、かつショアーA硬度が20〜90である弾性シート25が特に好適である。そのような弾性シート25として、例えば、ウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムあるいは天然ゴム等から成るシートが挙げられる。さらに、弾性シート25は、加飾されていてもよい。また、弾性シート25は、光透過率が高いものとしても良い。光透過率が高い弾性シート25を採用した場合には、弾性シート25の裏側より照光することにより、中心キートップ12および操作パネル13の外周を照光できるため、暗所でも中心キートップ12および操作パネル13の位置がわかりやすくなる。
【0032】
本実施の形態において、中心操作部50に含まれる固定接点52は、基板20の上に設けられた導電部分である。具体的には、絶縁性のある樹脂を含浸した基板上に、銅箔等の導電体にて形成される。また、本実施形態における導電性の皿バネ部材55としては、金属製の皿バネ部材55を好適に用いることができる。しかし、導電性の皿バネ部材55は、金属製に限らず、導電性樹脂等により形成されていても良い。なお、導電性の皿バネ部材55を金属製とする場合には、クリック感がさらに良く、良好な操作感覚を得ることができる。
【0033】
また、入力装置100を構成する導電部材14に用いられる導電性弾性体としては、操作パネル13の表面に指が触れることにより容易に変形するような弾性体であって、例えば、導電性フィラーであるカーボンブラック等を分散させたゴム若しくはエラストマーが好ましい。
【0034】
次に、入力装置100の使用方法とその作用について説明する。
【0035】
図6は、図4の点線で示される領域Dについて拡大した拡大断面図であり、(A)は、操作パネル13の押圧位置Eに荷重をかけていない状態を、(B)は操作パネル13の押圧位置Eに荷重をかけた状態を、それぞれ示す。
【0036】
図6(A)に示す状態から、目的とする入力装置100の操作パネル13の押圧位置Eに指を置き圧力を軽く加えると、押された部分の裏側にある1つまたは複数の導電性弾性体からなる導電部材14が押し下げられて、導電部材14がセンサ部30を構成する導電パターン45に接触する。すると、センサ部30の電極間は、導電部材14により短絡する。さらに、強く押し下げると、導電部材14は、図6(B)に示すように、弾性シート25と共に、大きく変形して操作パネル13の凹部17にもぐり込みながら、センサ部30への接触面積が増加する。入力装置100を操作する際に、操作パネル13の外側に触れて操作する傾向がある。凹部17は、その中心より外側寄りに頂点19を有し、その頂点19から操作パネル13の中心側の縁までの傾斜よりも、その頂点19から操作パネル13の中心と反対側の縁までの傾斜が急になる形状を有する。このため、凹部17において、その外側の荷重が大きい部分に、導電部材14と弾性シート25がもぐりこみやすく、操作性をより良くすることができる。また、導電パターン45の接触面積の変化に応じて生じる電圧あるいは抵抗値の変化を装置内部の中央処理装置(図示せず)が検知することにより、入力装置100は、指が触れているキーの方向と押圧力を把握することができる。この一連の操作により得られた1つまたは複数のセンサ部30の接触面積の変化に応じて生じる電圧あるいは抵抗値の変化を入力装置100内部の中央処理装置(図示せず)が測定することによって、入力装置100は、指が触れているキーの方向と押圧力を把握することができる。すなわち、操作パネル13に指を沿わせて環状になぞることでその軌跡を容易に検知できる。その結果、指が周回することにより、電子機器1の操作面をスクロールさせることが可能となり、また、操作面内のカーソルを多方向キーとして動かすことも可能となる。一方、図5に示すように、本実施形態におけるスイッチ部40は、押圧子15と組み合わせて4方向キーとして使われている。押圧子15で導電性の皿バネ部材42を押圧することにより、皿バネ部材42が座屈し、明確なクリック感触が操作者に伝わると共に、皿バネ部材42が固定接点41に接触し、固定接点41の電極間を皿バネ部材42による導通させることで、ボタンが押されたことが認識される。その結果、全ての動作方法を操作モードに応じてソフトで制御すれば、入力装置100を構成するセンサ部30およびスイッチ部40を用途に応じて使い分けることによって、多彩な操作が可能となる。
【0037】
以上に説明したように、入力装置100では、接触した軌跡で効率良く多方向検出機能を実現すると共に、凹部17が形成されていることにより、押圧力が小さく操作しやすい。
【0038】
次に、入力装置100の製造方法について説明する。図7は、入力装置100の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0039】
まず、センサ部30、スイッチ部40および中心操作部50が配置された基板20を形成する(ステップS101)。この実施の形態では、センサ部30は、櫛歯状の一対の電極が互いに接触することなく噛み合った状態を有する導電パターン45で構成されている。基板20上に導電パターン45を配置したことによって、センサ部30が形成される。また、スイッチ部40は、固定接点41と導電性の皿バネ部材42とからなり、当該皿バネ部材42は、ドーム形状とされ、固定接点41を覆うように形成されている。また、中心操作部50は、固定接点52と導電性の皿バネ部材55とからなり、基板20上に固定接点52を配置した後、当該ドーム形状の導電性の皿バネ部材55は、固定接点52を覆うように形成されている。基板20としては、所定の配線パターンが形成されたプリント基板を好適に用いることができる。導電性の皿バネ部材55の配置方法としては、例えば、導電性の皿バネ部材42,55を粘着シートの粘着面に配置したものを基板20に貼り付けることにより、導電性の皿バネ部材42,55が固定される。
【0040】
ステップS101に続いて、凹部17を有する操作パネル13を形成する(ステップS102)。この実施の形態では、凹部17の形成工程は、成型用金型を用いて、凹部17を有する操作パネル13をインジェクション成形法により製造するのが好ましいが、特に限定されず、インジェクション成形法の他、例えば、予め成形された操作パネルを切削することによって、凹部17を形成しても良い。また、水平面における凹部17の投影の面積は、弾性シート25と接する導電部材14の面積より大きい方が好ましい。なお、弾性シート25の厚さおよび弾性シート25と接する導電部材14の面積に応じて、凹部17の大きさを適宜に調整しても良い。例えば、弾性シート25の厚さを0.2mmとした場合、水平面における凹部17の円形投影の直径は、直径が3mmである導電部材14より0.2mm大きく、3.2mmとする。これにより、操作荷重軽減の効果が向上できる。円形投影の直径は、4.2mm以下とするのが特に好ましい。4.2mm以下とすると、導電部材14に十分な荷重をかけることができ、より効果的に、操作時の自然な荷重の変化を信号に変換することができる。また、凹部17の深さは、導電部材14の高さより小さいのが好ましい。これにより、全ての導電部材14が凹部17に入り込まず、導電部材14は、センサ部30に確実に接触することができ、良好な操作を得ることができる。また、レーザーエッチングまたはヘアライン等の加工方法により、操作パネル17の表面に機能を示す識別部を形成しても良い。また、操作パネル17の表面に、塗布(スプレー)または塗装等の方法によって、透明な樹脂塗装層が付着されても良い。透明な樹脂塗装層としての樹脂塗料の種類には、アクリル系、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系、不飽和ポリエステル系等の樹脂塗料を好適に用いることができ、特に硬度が高い樹脂塗料を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂塗料は一例に過ぎず、他の樹脂塗料を採用しても良い。
【0041】
ステップS102に続いて、導電部材14、押圧子15および中心押圧子11が配置される弾性シート25を形成する(ステップS103)。具体的には、予め成形された弾性シート25の裏面のセンサ部30、スイッチ部40および中心操作部50に対向する位置には、それぞれ、予め成形された導電部材14、押圧子15および中心押圧子11を接着剤にてそれぞれ貼り付ける。この結果、導電部材14、押圧子15および中心押圧子11が配置される弾性シート25が得られる。次に、弾性シート25の表面に、上述したステップS102にて得られた凹部17を有する操作パネル13を、接着剤にて貼り付ける(ステップS104)。最後に、ステップS101にて用意した基板20と重ね合わせる(ステップS105)。
【0042】
なお、操作パネル13、導電部材14、押圧子15および中心押圧子11は、接着剤により弾性シート25に接着することもできるし、両面テープ等の接着層を介在させる、あるいは熱融着等により接着してもよい。また、同じ材料を用いて、1ステップにより弾性シート25、押圧子15と中心押圧子11とを一体成形するのが好ましい。この場合、まず、押圧子15および中心押圧子11の形状を形成できる成形用金型を用意する。次に、導電部材14を配置する。さらに、弾性体材料として、例えば、シリコーンゴムを成形用金型に配置し、加熱圧縮により成形を行い硬化させ、導電部材14、押圧子15および中心押圧子11が一体となった弾性シート25が得られる。これにより、製造工程を簡略化できる。
【0043】
(他の実施の形態)
図8は、図1の一点鎖線で示される領域Aについて、別の実施の形態を有する操作パネル13の裏側を下方より見たときの平面図である。図9は、図8の点線で示される領域Fの導電部材14の裏側に配置される凹部17を示す図面である。図10と図11は、図8の点線で示される領域Fの導電部材14の裏側に配置される別の実施の形態を有する凹部17を示す図面である。
【0044】
図8および図9に示すように、キートップ部材10を構成する弾性シート25の裏側には、導電部材14、押圧子15および中心押圧子11が設けられている。導電部材14、押圧子15および中心押圧子11は、重ならないように、基板20に配置されたセンサ部30、スイッチ部40および中心操作部50と対向してそれぞれ配置されている。操作パネル13には、操作パネル13の裏面から表面に向かって凹部17が設けられている。当該凹部17は、導電部材14の中心と対応する位置より操作パネル13の径方向外側寄りに操作パネル13の底面までの深さが0.2mmである頂点19を有すると共に、導電部材14の支持部を形成するためのライン部16の交点16aは約90度に形成されている。なお、支持部が水平面における導電部材14の投影エリアに重なる。また、交点16aから放射状に下方に傾斜している(矢印H方向下り傾斜)。一方、頂点19より操作パネル13の径方向外側は、矢印Jの方向に下り急傾斜している。当該急傾斜は矢印Hの方向の傾斜よりも急である。さらに、それぞれのライン部16から頂点19に向かう谷間は、下方に傾斜している。ただし、導電部材14を撓ませるためのライン部16の形状は、上述の形態に限定せず、必要に応じて様々な形状に変更しても良い。例えば、図10および図11に示すように、ライン部16は、操作パネル13の中心からの同心円形状に形成しても良く、水平面における凹部17の投影の形状は、操作パネル13の中心から弧を描いた形状に形成しても良い。なお、弾性シート25の厚さおよび弾性シート25と接する導電部材14の面積に応じて、凹部17の大きさおよび形状を適宜に調整するのが好ましい。これにより、操作荷重軽減の効果を向上できる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態に係る入力装置100の好適な形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に何ら限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0046】
例えば、本実施の形態では、入力装置100の形状に関わる直径または角度等は、必要に応じて適宜変更されても良い。例えば、操作パネル13の大きさを変化させることで、直径、角度等のパラメータは変化しうるものである。また、操作パネル13の凹部17、導電部材14、押圧子15、センサ部30およびスイッチ部40は、必ずしも等間隔に配置されていなくてもよい。
【0047】
また、本実施の形態において、導電部材14および押圧子15を、それぞれ4箇所、合計8箇所に設け、センサ部30およびスイッチ部40を、それぞれ4箇所、合計8箇所に設けたが、操作パネル13、導電部材14、押圧子15、センサ部30およびスイッチ部40の大きさ等により、合計7箇所以下でもよいし、9箇所以上でもよい。8箇所よりも少なく設ける際には、3箇所以上設けることにより、タッチパネルとして十分機能することができる。
【0048】
また、図12および図13に示すように、直径がXである円上18に円周方向にスイッチ部40を配置せず、センサ部30のみを設け、直径がXである円上18より外側または内側の円周方向にスイッチ部40を設けても良い。また、操作パネル13の中心に位置する中心キートップ12は、配置されなくても良く、また、これを1つではなく複数としても良い。また、操作パネル13の形状および厚さ、導電部材14の形状またはセンサ部30の配置位置等に応じて、凹部17の形状または位置を適宜に変更しても良い。
【0049】
また、本実施の形態において、センサ部30を構成する導電パターン45は、櫛歯型の電極パターンを有するものとしているが、そのような形状に限らない。たとえば、同心円状のパターンを有するものとしてもよいし、他の形状でも良い。また、静電容量により導電性弾性体の圧縮量が測定されるようなセンサを用いても良い。また、圧縮されることにより導電率が向上するような導電性弾性体または圧縮されることにより電流抵抗値が変化するような導電性弾性体を用いることにより、その導電性弾性体に加わる圧力を測定するようなシステムにしても良い。
【0050】
また、本実施の形態では、環状の操作パネル13としているが、環状に限らない。例えば、環の一部分のみを用いてもよい。あるいは、円、十字、直線、三角、四角以上の多角形、曲線、あるいは楕円等、どのような形態でもよい。しかし、環状の場合には、指の動きを止めることなく、動かし続けて操作するような入力装置100とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、各種の入力装置に利用できる。特に、電子機器の入力装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力装置を操作面側から見た斜視図である。
【図2】図1の一点鎖線で示される領域Aについて、表側より基板を見たときの平面図である。
【図3】図1の一点鎖線で示される領域Aについて、操作パネルの裏側を下方より見たときの平面図である。
【図4】図1の一点鎖線で示す領域AのB−B線の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】図1の一点鎖線で示す領域AのC−C線の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【図6】図4の点線で示される領域Dについて拡大した拡大断面図であり、(A)は、操作パネルの押圧位置Eに荷重をかけていない状態を、(B)は操作パネルの押圧位置Eに荷重をかけた状態を、それぞれ示す図である。
【図7】本実施の形態に係る入力装置の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【図8】図1の一点鎖線で示される領域Aについて、別の実施の形態を有する操作パネルの裏側を下方より見たときの平面図である。
【図9】図8の点線で示される領域Fの導電部材の裏側に配置される凹部を示す図面である。
【図10】図8の点線で示される領域Fの導電部材の裏側に配置される別の実施の形態を有する凹部を示す図面である。
【図11】図8の点線で示される領域Fの導電部材の裏側に配置される別の実施の形態を有する凹部を示す図面である。
【図12】図1の一点鎖線で示される領域Aについて、別の実施の形態を有する表側より基板を見たときの平面図である。
【図13】図1の一点鎖線で示される領域Aについて、別の実施の形態を有する表側より基板を見たときの平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 電子機器
10 キートップ部材
11 中心押圧子
12 中心キートップ
13 操作パネル
14 導電部材
15 押圧子
16 ライン部
17 凹部
19 頂点(最深部)
20 基板
25 弾性シート
30 センサ部
40 スイッチ部
41 固定接点
42 皿バネ部材
45 導電パターン
50 中心操作部
52 固定接点
55 皿バネ部材
100 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、当該基板の上方に配置されるキートップ部材とを備える入力装置であって、
上記キートップ部材は、少なくとも、操作面を有する操作パネルと、当該操作パネルの裏面に、基板側に突出するように固定された導電性弾性体からなる導電部材とを有し、
上記基板上には、少なくとも一部の上記導電部材と対向するように、センサ部が設けられ、
上記操作パネルには、上記導電部材の裏側の位置に、当該操作パネルの裏面から表面に向かって窪む凹部が設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記凹部は、その凹部の面内中心よりも前記操作パネルの径方向外側寄りに最も深い最深部を有する形状であることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記凹部は、その中心より前記操作パネルの径方向外側寄りにその凹部の最深部を有し、その最深部から前記操作パネルの中心側の縁までの傾斜よりも、その最深部から前記操作パネルの中心と反対側の縁までの傾斜が急になる形状とすることを特徴とする請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記操作パネルは、円状若しくは環状とされ、
前記凹部における前記最深部は、前記操作パネルの中心と同一の中心を有する第1の円の円周上に形成され、
前記導電部材の中心は、上記第1の円の内側の第2の円の円周上に配置されることを特徴とする請求項2または3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記導電性弾性体は、導電性ゴムであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−50030(P2010−50030A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215306(P2008−215306)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】