説明

入力装置

【課題】タッチパネルの近接する操作キーの入力において、より高精度な誤入力の防止を実現できる入力装置を提供する。
【解決手段】複数の操作キーを表示するとともに、所定の操作キーに対応する領域への接触により入力を受け付けるタッチパネルを備えた入力装置であって、操作者によりフリックが行われた場合に、操作者による接触が終了した座標を含む領域に対応付けられた操作キーの中から、フリックが行われた方向に基づいて、操作された操作キーを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の操作キーを表示するとともに、所定の操作キーに対応する領域への接触により入力を受け付けるタッチパネルを備えた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パソコンや携帯電話等の情報処理装置において、タッチパネルの適用が増えてきている。本発明に関連するタッチパネルの技術例として、例えば特許文献1に開示されている発明がある。この特許文献1の発明では、操作者が指などで、隣り合う操作キーを重複してタッチ(接触)したとしても、誤入力を防ぐことができるとしている。なお、「操作キー」とは、操作者により指やスタイラスペンなどで接触されるキーやボタンを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−261935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明では、隣り合う操作キーでタッチが重複した場合に、指などが接触している面積が大きい方の操作キーを、操作者が操作を意図した操作キーであると判定している。しかしながら、操作者は必ずしも、操作したい操作キーに対して指などの接触面積が大きくなるように意識して操作するとは限らない。よって、操作者が、操作したい操作キーをタッチしたときに、その操作キーに近接する別の操作キーに対してより多くの接触をすることもありうる。よって、特許文献1の発明では、誤入力の防止を精度良く行うことはできない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、操作キーが近接して表示されるタッチパネルにおいて、操作キーの誤入力の防止を高精度に実現できる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の入力装置は、複数の操作キーを表示するとともに、所定の操作キーに対応する領域への接触により入力を受け付けるタッチパネルを備えた入力装置であって、操作者によりフリックが行われた場合に、操作者による接触が終了した座標を含む領域に対応付けられた操作キーの中から、フリックが行われた方向に基づいて、操作された操作キーを特定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作キーが近接して表示されるタッチパネルにおいて、操作キーの誤入力の防止を高精度に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る操作キーの表示例を示すイメージ図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る操作キーに対応する領域の配置例を示すイメージ図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る入力装置の動作例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本実施形態の入力装置は、例えばパソコンや携帯電話等の情報処理装置に備えられ、操作者からの入力(指示)を受け付ける装置である。中でも、本実施形態の入力装置は、操作キーの表示が小さいために誤入力が起こりがちな携帯端末への適用が有効である。
【0011】
まず、本実施形態の入力装置の構成について、図1を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態の入力装置は、タッチパネル11、位置検出手段12、方向検知手段13、キー特定手段14を備える。
【0012】
タッチパネル11は、複数の操作キーを表示し、また、所定の操作キーに対応する領域(少なくとも操作キーの表示部分に相当する領域を含む)への接触により入力(指示)を受け付ける。複数の操作キーには予め、タッチパネル11の領域が設定されている(詳細は図3を用いて後述する)。また、複数の操作キーには予め、入力可能な文字・記号や機能などが設定されている。予め設定された文字・記号や機能などは、操作キー毎に、操作者が視認できるように表示される。操作者は、入力を行う場合、指又はスタイラスペンなど(以下「指等」という)を、所望の操作キーが表示されている部分(所望の操作キーに対応する領域)へ接触させる。なお、タッチパネル11の詳細な構成については、従来一般的に用いられているタッチパネルの構成を適用できるので、ここでの説明は省略する。
【0013】
位置検知手段12は、操作者がタッチパネル11への接触を開始したときには、接触が開始された位置(接触が開始された座標を含む領域。接触開始領域という)を検知する。また、位置検知手段12は、操作者がタッチパネル11への接触を終了したとき(タッチパネルから指等を離したとき)には、接触が終了された位置(接触が終了された座標を含む領域。接触終了領域)を検知する。
【0014】
方向検知手段13は、操作者がタッチパネル11にてフリックを行ったときに、そのフリックの方向を検知する。フリックとは、指等をタッチパネル11に接触させた状態で所定の方向に移動させた後、タッチパネル11から指等を離す操作である。複数の操作キーには予め、操作者により行われるべきフリックの方向(上、下、左、右、斜め、又は、方向なし)が設定されている。このフリックの方向は、近接する操作キー同士では互いに異なるように設定される。これについて、図2(a)、(b)に示すように、各数字を入力可能な操作キーが隣り合うように並んで表示される場合を例として以下に説明する。
【0015】
図2(a)の表示例では、各操作キーにおいて、操作者が視認できるように、入力可能な数字が示されているとともに、予め設定されたフリックの方向が矢印で示されている。図2(b)の表示例では、各操作キーにおいて、操作者が視認できるように、入力可能な数字が示されているとともに、予め設定されたフリックの方向がキーの形状で示されている。例えば、図2(a)の「1」キーと図2(b)の「1」キーは、予め設定されたフリックの方向が下であることを操作者が認識できる表示となっており、図2(a)の「2」キーと図2(b)の「2」キーは、予め設定されたフリックの方向が上であることを操作者が認識できる表示となっている。なお、「1」キーとは「操作することで数字の1を入力できるキー」を意味し、「2」キーとは「操作することで数字の2を入力できるキー」を意味する。操作者は、数字の1を入力したい場合、タッチパネル11において、所定の位置から下方向にフリックを行い、「1」キーが表示されている部分(「1」キーに対応する領域であってもよい)にて指等を離す。また、数字の2を入力したい場合、操作者は、タッチパネル11において、所定の位置から上方向にフリックを行い、「2」キーが表示されている部分(「2」キーに対応する領域であってもよい)にて指等を離す。つまり、本実施形態では、フリックの開始位置はどこであってもよく、フリックの終了位置(接触終了領域)が所望の操作キーに対応する領域であればよい。なお、操作キーの配列は、図2(a)、(b)に示すように横一線に並んだ形態に限定されるものではない。例えば、図2(c)、(d)に示すような配列であってもよい。
【0016】
キー特定手段14は、操作者により操作された操作キーを特定する。この操作キーの特定は、位置検知手段12により検知された接触終了領域と、方向検知手段13により検知されたフリック方向とに基づいて行われ、位置検知手段12により検知された接触開始領域は考慮されない。これについて、図3を用いて以下に説明する。図3は、図2(b)の操作キーに対応する領域のイメージ例を示す図である。
【0017】
図3において、領域Aは「1」キーに対応する領域であり、領域Bは「2」キーに対応する領域であり、領域Cは領域Aと領域Bとが重複する領域である。このように、タッチパネル11では、近接(図3では隣接)する操作キーの領域が重複している。このような構成のタッチパネル11において例えば、操作者が、所定位置(例えば領域A及びその近傍)から下方向にフリックを行い、領域Cを除く領域Aにて指等をタッチパネル11から離すと、位置検知手段12が接触終了領域として領域Aを検知し、かつ、方向検知手段13がフリック方向として下方向を検知する。予め「1」キーには「領域A」及び「下方向」が設定されているので、キー特定手段14は、検知結果と予めなされた設定とを基に、操作された操作キーが「1」キーであると特定する。また例えば、タッチパネル11において、操作者が、所定位置(例えば領域C及びその近傍)から上方向にフリックを行い、領域Cにて指等をタッチパネル11から離すと、位置検知手段12が接触終了領域として領域A及び領域Bを検知し、かつ、方向検知手段13がフリック方向として上方向を検知する。予め「1」キーには「領域A」及び「下方向」が設定されおり、予め「2」キーには「領域B」及び「上方向」が設定されているので、キー特定手段14は、検知結果と予めなされた設定とを基に、操作された操作キーが「2」キーであると特定する。なお、下方向のフリックが行われて領域Cにて指等が離れた場合は、操作された操作キーは「1」キーであると特定される。
【0018】
上述した操作キーの特定が終わると、キー特定手段14は、例えば、特定した操作キーを示す情報を、情報処理装置の制御手段(図示せず)に出力する。制御手段は、特定された操作キーに予め設定されている文字・記号の入力や機能の実行を行う。例えば、特定された操作キーが「1」キーであれば、「1」キーには予め「数字の1の入力」が設定されているので、制御手段は、数字の「1」を入力する処理を実行する。
【0019】
なお、図1には図示していないが、本実施形態の入力装置は、位置検知手段12により所定の操作キーに対応する領域への接触が検知された場合に、その領域の文字や記号の表示の色を反転させる制御を行う表示制御手段を備えるようにしてもよい。
【0020】
次に、図4を参照して、以上のように構成された本実施形態の入力装置の動作例について説明する。ここでは例として、図2(a)に示す各操作キーが表示されているとする。
【0021】
操作者が指等によりタッチパネル11への接触を開始すると、位置検知手段12が接触開始領域を検知する(S1)。上述したように、この接触開始領域は、操作キーの特定には考慮されない。よって、操作者は、タッチパネル11への接触を開始する際に、必ずしも、操作したい操作キーの表示部分(操作したい操作キーに対応する領域)に接触する必要はなく、タッチパネル11のどの領域に対して接触を行ってもよい。その後、操作者は、タッチパネル11に指等を接触させた状態で指等をスライドさせ(以下スライド操作という)、操作したい操作キーの表示部分へ移動させればよい。すなわち、図2(a)に示す各操作キーにおいて「1」キーを操作したい場合を例とすると、操作者は、最初に「5」キーの表示部分に指等を接触させた後で、スライド操作により指等を「1」キーの表示部分へ移動させればよいことになる。もちろん、「1」キーへ指等を移動させた後で別の操作キーを操作したくなれば、さらにスライド操作を行って別の操作キーの表示部分へ指等を移動させることも可能である。このように本実施形態では、キーの特定に接触開始領域を考慮しないので、指等をタッチパネル11に接触させたまま任意に移動させることで、操作者は所望の操作キーを自由に選択・変更することができる。
【0022】
なお、上記接触開始後、入力自体をキャンセルしたい場合、操作者は、複数の操作キーが表示されている領域以外の領域(以下キー非表示領域という)へ指等をスライドさせ、一定時間待機する。位置検知手段12が、キー非表示領域において、予め設定された一定時間の接触を検知すると(S2/YES)、キー特定手段14は、操作キーの特定を行わずに、S1にて開始された接触を取り消し、入力自体をなかったことにする(S6)。
【0023】
操作者は、タッチパネル11において、操作したい操作キーの表示部分又はその近傍に指等を移動させた後、その操作キーに示されているフリック方向に従ってフリックを行い、操作したい操作キーの表示部分で指等を離す(S3)。例えば、操作者が図2(a)に示す「1」キーを操作したい場合、「1」キーの表示部分又はその近傍から下方向にフリックを行い、「1」キーの表示部分(図3の領域Aであってもよい)で指等を離す。
【0024】
タッチパネル11にてフリックが受け付けられると、位置検知手段12はフリックが終了した(フリックにより指等が離れた)領域を接触終了領域として検知し、かつ、方向検知手段13はフリックが行われた方向をフリック方向として検知する(S4)。例えば、操作者が下方向にフリックを行い、図3に示す「1」キーの表示部分(領域Aであってもよい)で指等を離した場合、接触終了領域は領域A、フリック方向は下方向として検知される。
【0025】
キー特定手段14は、S3での2つの検知結果と予めなされた設定とに基づいて、操作者により操作された操作キーを特定する(S5)。予めなされた設定は、操作キー毎になされ、操作キーに対応する領域と、行われたフリックの方向とがその内容となる。例えば「1」キーの場合、「領域A」と「下方向」とが設定内容となる。この設定内容は、「1」キーは領域Aにて下方向のフリックが終了した場合に操作されたとする旨を意味する。このような操作キー毎の対応領域及びフリック方向は、予めキー特定手段14に設定されている。
【0026】
キーの特定後、キー特定手段14は、特定した操作キーを示す情報を、例えば情報処理装置の制御手段(図示せず)に出力する。制御手段には予め、複数の操作キー毎に、入力可能な文字・記号や機能などが設定されている。よって、制御手段は、キー特定手段14から受け取った情報が示す操作キーが、どのようなキーであるのかを認識できる。これにより、制御手段は、特定された操作キーに予め設定されている文字・記号の入力や機能の実行を行う。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の入力装置によれば、複数の操作キーを表示するとともに、所定の操作キーに対応する領域への接触により入力を受け付けるタッチパネルを備え、複数の操作キーは、近接する操作キーのフリックの方向が異なるように予め設定されており、操作者によりフリックが行われた場合に、操作者による接触が終了した領域(接触終了領域)及びフリックが行われた方向(フリック方向)に基づいて、操作者により操作された操作キーを特定することを特徴とする。従って、操作キーが近接して表示されるタッチパネルにおいて、操作キーの誤入力の防止を高精度に実現できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0029】
例えば、上述した実施形態における動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0030】
ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させてもよい。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させてもよい。
【0031】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。
【0032】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送してもよい。または、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送してもよい。コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0033】
また、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
11 タッチパネル
12 位置検知手段
13 方向検知手段
14 キー特定手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作キーを表示するとともに、所定の操作キーに対応する領域への接触により入力を受け付けるタッチパネルを備えた入力装置であって、
操作者によりフリックが行われた場合に、前記操作者による接触が終了した座標を含む領域に対応付けられた操作キーの中から、前記フリックが行われた方向に基づいて、操作された操作キーを特定することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記複数の操作キーには、それぞれフリック方向が予め対応付けられており、
前記予め対応付けられたフリック方向は、隣接して配置される操作キー同士では相互に異なることを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記複数の操作キーにそれぞれ対応する領域は、近接する操作キーの領域が重複して配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の入力装置。
【請求項4】
前記複数の操作キーは、前記フリックの方向が示されて表示されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項5】
操作者によりフリックが行われた場合に、前記操作者による接触が開始した領域を考慮せずに、前記操作者による接触が終了した領域及び前記フリックが行われた方向に基づいて、操作された操作キーを特定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
前記操作者による接触が開始された後、前記複数の操作キーが表示されている領域以外の領域への接触を一定時間検出した場合、入力自体をキャンセルすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の入力装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−155491(P2012−155491A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13378(P2011−13378)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(311012169)NECパーソナルコンピュータ株式会社 (116)
【Fターム(参考)】