説明

共通画像平面決定プログラム、共通画像平面決定方法、および共通画像平面決定装置

【課題】被写体の立体的処理にかかる精度が十分に確保できる共通画像平面を決定する共通画像平面決定プログラムを提供する。
【解決手段】コンピュータは、第1のステップで、2つのカメラの撮像中心を結ぶ基線軸に平行な回転軸を含む基準共通画像平面を設定する。コンピュータは、第2のステップで、予め設定されている複数の回転角度毎に、第1のステップで設定した基準共通画像平面を、前記回転軸において回転させた判定対象共通画像平面を設定する。コンピュータは、第3のステップで、第2のステップで設定した判定対象共通画像平面毎に、カメラの撮像画像が投影される投影画像領域を検出する。そして、コンピュータは、第4のステップで、第3のステップが検出した投影画像領域の大きさに基づいて、第2のステップで設定した判定対象共通画像平面中から、共通画像平面を選択し決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異なる位置に配置した2つのカメラ(所謂、ステレオカメラ)で撮像した被写体を立体的に処理(3次元処理)する際に用いる共通画像平面を決定する共通画像平面決定プログラム、共通画像平面決定方法、および共通画像平面決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる位置に配置した2つのカメラ(所謂、ステレオカメラ)で撮像した被写体を立体的に処理(3次元処理)することが行われている(特許文献1、2等参照)。これにより、被写体の3次元形状の復元や、被写体を撮像した視点以外の仮想視点から被写体を撮像した場合の撮像画像を生成することができる。
【0003】
この3次元処理は、一方のカメラの撮像画像に対して定めた参照点毎に、他方のカメラの撮像画像における対応点を探索する。また、2つのカメラの位置や撮像方向等の相違により生じる両撮像画像の視差(撮像画像における参照点と、対応点との座標位置の差)を算出する。そして、三角測量の原理に基づき、各参照点の3次元位置情報を得る。これにより、参照点毎に3次元位置情報を持たせた距離画像が生成でき、被写体の3次元処理が行える。
【0004】
また、上述の3次元処理において、一方のカメラの撮像画像の参照点について、他方のカメラの撮像画像における対応点を探索する探索処理を簡単にするため、2つのカメラの撮像画像を、仮想的に並列化する処理(所謂、レクティファイ処理)を行っている。
【0005】
このレクティファイ処理は、2つのカメラの撮像画像を、共通画像平面に投影する処理である。この共通画像平面は、2つのカメラの撮像中心(撮像素子の中心)を結ぶ基線軸に平行な軸を含む平面である。この共通画像平面に投影した2つのカメラの撮像画像(2つの投影画像)は、撮像画像上で水平方向、および鉛直方向が一致する。これにより、参照点に対する対応点の探索にかかる処理が簡単になり、この処理にかかる時間が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−216191号公報
【特許文献2】特開2006− 31349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基線軸に平行な軸を含む平面は、この基線軸に平行な軸(以下、回転軸と言う。)における回転角度が異なる平面が複数存在する。このため、回転軸を含む平面の中から、適当な平面を共通画像平面として選択すると、各カメラの撮像画像を投影した投影画像が小さくなりすぎ、参照点の総数が減少し、被写体の3次元処理の精度を低下させることがある。
【0008】
この発明の目的は、被写体の立体的処理にかかる精度が十分に確保できる共通画像平面を決定する共通画像平面決定プログラム、共通画像平面決定方法、および共通画像平面決定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる共通画像平面決定プログラムは、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0010】
この共通画像平面決定プログラムは、インストールされたコンピュータに、異なる位置に配置した2つのカメラで撮像した被写体を立体的に処理(被写体の3次元処理)する際に、各カメラの撮像画像を投影する共通画像平面を決定させるものである。
【0011】
コンピュータは、第1のステップで、2つのカメラの撮像中心を結ぶ基線軸に平行な回転軸を含む基準共通画像平面を設定する。この基準画像平面については、回転軸における回転角度が予め定めた角度である平面とすればよい。
【0012】
コンピュータは、第2のステップで、予め設定されている複数の回転角度毎に、第1のステップで設定した基準共通画像平面を、前記回転軸において回転させた判定対象共通画像平面を設定する。例えば、複数の回転角度が、3°間隔で設定されている場合には、回転角度が異なる60個の判定対象共通画像平面が設定される。
【0013】
コンピュータは、第3のステップで、第2のステップで設定した判定対象共通画像平面毎に、カメラの撮像画像が投影される投影画像領域を検出する。そして、コンピュータは、第4のステップで、第3のステップが検出した投影画像領域の大きさに基づいて、第2のステップで設定した判定対象共通画像平面中から、共通画像平面を選択し決定する。
【0014】
例えば、第3のステップが検出した投影画像領域が最大であった判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する。
【0015】
また、判定対象共通画像平面毎に、第3のステップで検出した投影画像領域全体を含む、最小の矩形領域を検出し、この矩形領域における投影画像領域が占める比率が最大であった判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定するようにしてもよい。
【0016】
また、この最小の矩形領域は、基線軸に平行な2辺を有する最小の矩形領域としてもよい。このようにすれば、この最小の矩形領域の検出処理にかかる時間の短縮が図れる。
【0017】
これにより、各カメラの撮像画像を投影した投影画像が小さくなりすぎ、参照点の総数が減少するのが抑えられ、被写体の3次元処理の精度を十分に確保できる。
【0018】
また、第3のステップは、カメラの撮像画像における被写体を立体的に処理する領域について、投影画像領域を検出する処理にしてもよいし、カメラの撮像画像における4角を判定対象共通画像平面に投影し、投影した4点が囲む領域を投影画像領域として検出する処理にしてもよい。
【0019】
さらには、第3のステップは、カメラの一方についてのみ、撮像画像が投影される投影画像領域を検出する処理とすることにより、処理時間の短縮が図れる。
【0020】
一方、この第3のステップは、カメラの両方について、撮像画像が投影される投影画像領域を検出する処理としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、被写体の立体的処理にかかる精度が十分に確保できる共通画像平面を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ステレオ画像処理システムの構成を示す概略図である。
【図2】画像処理装置における被写体の立体的処理を示すフローチャートである。
【図3】参照点に対する対応点の探索にかかる処理を説明する図である。
【図4】情報処理装置の主要部の構成を示す図である。
【図5】共通画像平面を決定する処理を示すフローチャートである。
【図6】判定対象共通画像平面における投影画像を示す図である。
【図7】判定対象共通画像平面における投影画像を示す図である。
【図8】回転軸における基準画像平面の回転角度が異なる複数の判定対象共通画像平面毎の面積比を示す図である。
【図9】別の例にかかる判定対象共通画像平面における投影画像を示す図である。
【図10】別の例にかかる判定対象共通画像平面における投影画像を示す図である。
【図11】別の例にかかる回転軸における基準画像平面の回転角度が異なる複数の判定対象共通画像平面毎の面積比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0024】
まず、異なる位置に配置した2つのカメラ(所謂、ステレオカメラ)で撮像した被写体を立体的に処理(3次元処理)するステレオマッチングについて簡単に説明し、その後で、この発明にかかる、このステレオマッチングで用いる共通画像平面を決定する手法について説明する。
【0025】
図1は、ステレオ画像処理システムを示す概略図である。このステレオ画像処理システムは、ステレオカメラ1と、画像処理装置2と、を備えている。ステレオカメラ1は、2つのカメラ11、12を有している。カメラ11、12は、所謂ディジタルカメラであり受光素子をマトリクス状に配置した撮像素子を有している。また、カメラ11、12は、撮像エリアを撮像素子上に投影する光学系を有している。カメラ11の撮像エリアと、カメラ12の撮像エリアとは、その一部が重なっている。この重なっている撮像エリアに位置する被写体、すなわち、カメラ11、12の両方が撮像した被写体、について3次元処理が行える。ステレオカメラ1は、2つのカメラ11、12を異なる位置に配置しているので、2つのカメラ11、12の撮像画像には視差がある。ステレオカメラ1は、略同じタイミングで、2つのカメラ11、12が撮像エリアを撮像した一対の撮像画像を出力する。
【0026】
図1では、カメラ11、12を並列ではなく、非並列に配置した例を示している。並列配置とは、2つのカメラ11、12の撮像素子の中心(撮像画像の中心)を結ぶ基線軸に対して、2つのカメラ11、12の撮像方向を直交させた配置である。2つのカメラ11、12の撮像素子の中心間の距離を基線長という。
【0027】
画像処理装置2は、制御部20と、右画像入力部21と、左画像入力部22と、画像処理部23と、パラメータ記憶部24と、出力部25と、を備えている。制御部20は、画像処理装置2本体各部の動作を制御する。右画像入力部21は、カメラ11の撮像画像(以下、右画像と言う。)が入力される。また、右画像入力部21は、入力された右画像を一時的に記憶するバッファを有している。左画像入力部22は、カメラ12の撮像画像(以下、左画像と言う。)が入力される。また、左画像入力部22は、入力された左画像を一時的に記憶するバッファを有している。
【0028】
画像処理部23は、右画像入力部21、および左画像入力部22に入力された一対の撮像画像(略同じタイミングで撮像された右画像、および左画像)を用いて、撮像されている被写体について3次元処理(ステレオマッチング)を行う。
【0029】
パラメータ記憶部24は、画像処理部23が被写体の3次元処理で用いる各種パラメータを記憶している。例えば、2つのカメラ11、12の基線軸を特定する基線軸パラメータや、基線長を示す基線長パラメータ、カメラ11、12毎の焦点距離等の撮像光学系にかかる光学パラメータ、カメラ11、12毎の撮像方向にかかる撮像方向パラメータ等を記憶している。また、パラメータ記憶部24は、右画像を共通画像平面に投影する第1のパラメータ(後述する、RecR)、共通画像平面に投影した右画像を元の画像平面(カメラ画像平面)に戻す第2のパラメータ(後述する、RecR-1)、左画像を共通画像平面に投影する第3のパラメータ(後述する、RecL)、共通画像平面に投影した左画像を元の画像平面(カメラ画像平面)に戻す第4のパラメータ(後述する、RecL-1)も記憶している。
【0030】
共通画像平面は、2つのカメラ11、12の基線軸に平行な軸を含む平面である。また、この共通画像平面は、後述する処理で決定している。
【0031】
出力部25は、以下に示す3次元処理により得られた、参照点毎に3次元位置情報を持たせた距離画像を出力する。
【0032】
次に、このステレオ画像処理システムにおける被写体の3次元処理について説明する。図2は、画像処理装置における被写体の3次元処理を示すフローチャートである。画像処理装置2は、2つのカメラ11、12が略同じタイミングで撮像した一対の撮像画像が、右画像入力部21、および左画像入力部22に入力される(s1)。右画像(カメラ11の撮像画像)は、右画像入力部21に入力され、左画像(カメラ12の撮像画像)は、左画像入力部22に入力される。
【0033】
画像処理部23は、右画像入力部21に入力された右画像を共通画像平面に投影するレクティファイ処理を行う(s2)。また、画像処理部23は、左画像入力部22に入力された左画像を共通画像平面に投影するレクティファイ処理を行う(s3)。s2、およびs3にかかる処理の順番は逆であってもよい。s2では、パラメータ記憶部24が記憶している第1のパラメータを用いて行う。また、s3では、パラメータ記憶部24が記憶している第3のパラメータを用いて行う。
【0034】
第1のパラメータ(RecR)は、右画像上の点uRを、共通画像平面に投影した点uR’に座標変換するパラメータ(変換行列)であり、第3のパラメータ(RecL)は、左画像上の点uLを、共通画像平面に投影した点uL’に座標変換するパラメータ(変換行列)である。すなわち、レクティファイ処理にかかる座標変換は、
uR’=RecR・uR
uL’=RecL・uL
によって行われる。
【0035】
第1のパラメータ(RecR)は、カメラ11のカメラ画像平面と、共通画像平面とに基づいて算出されている。同様に、第3のパラメータ(RecL)は、カメラ12のカメラ画像平面と、共通画像平面とに基づいて算出されている。
【0036】
なお、第2のパラメータ(RecR-1)は、第1のパラメータ(RecR)の逆行列であり、第4のパラメータ(RecL-1)は、第3のパラメータ(RecL)の逆行列である。
【0037】
s2、s3にかかる処理は、2つのカメラ11、12が仮想的に並列に配置されているとした場合における、カメラ11の撮像画像(右投影画像)と、カメラ12の撮像画像(左投影画像)と、を得る処理である。
【0038】
画像処理装置2は、共通画像平面に投影した右投影画像の参照点(参照画素)毎に、対応する左投影画像の対応点(対応画素)を探索する(s4)。上述したs2、およびs3にかかる処理は、このs4にかかる処理を簡単にし、処理時間を短縮するものである。具体的には、画像上で水平方向、および鉛直方向を一致させた右投影画像と、左投影画像とを得る処理である。2つのカメラ11、12が非並列に配置されている場合、水平方向、および鉛直方向が、右画像と、左画像とで一致していない。この場合、右画像の参照点uRに対して、対応点uLを探索する左画像上のライン(一般に、エピポーララインと呼ばれている。)が、図3(A)に示すように、左画像上で斜めに走るラインになる。その結果、対応点の探索にかかる処理が複雑になる。これに対して、水平方向、および鉛直方向を一致させた右投影画像と、左投影画像とである場合、右投影画像の参照点uR’に対して、対応点uL’を探索する左投影画像上のエピポーララインが、図3(B)に示すように、左投影画像上で水平に走るラインになる。その結果、対応点の探索にかかる処理が簡単になり、処理時間が短縮できる。
【0039】
画像処理装置2は、対応点を探索した参照点毎に、3次元位置情報を取得する(s5)。s5では、参照点毎に、対応する対応点との視差を算出し、この視差を用いて三角測量の原理に基づき、その参照点における3次元位置情報を得る。これにより、参照点毎に、3次元位置情報を持たせた距離画像が生成できる。ここで生成した距離画像は、共通画像平面上での距離画像である。画像処理装置2は、共通画像平面上での距離画像を、元のカメラ11のカメラ平面上での距離画像に戻す(s6)。すなわち、逆レクティファイ処理を行う。s6では、パラメータ記憶部24に記憶している第2のパラメータや、第4のパラメータを用いて行う。
【0040】
第2のパラメータ(RecR-1)は、共通画像平面に投影した点uR’を、カメラ11の撮像画像上の点をuRに座標変換するパラメータ(変換行列)であり、第4のパラメータ(RecL-1)は、共通画像平面に投影した点uL’を、カメラ12の撮像画像上の点をuLに座標変換するパラメータ(変換行列)である。すなわち、逆レクティファイ処理にかかる座標変換は、
uR=RecR-1・uR’
uL=RecL-1・uL’
によって行われる。
【0041】
なお、図2では、s6を右画像についてカメラ平面上の距離画像を得る処理としたが、左画像についてもカメラ平面上の距離画像を得る処理としてもよい。
【0042】
画像処理装置2は、上記の処理で得たカメラ平面上での距離画像を出力部25から出力する。出力部25には、このカメラ平面上での距離画像を利用する装置が接続されている。
【0043】
上述の被写体の立体的処理の精度を十分に確保するには、共通画像平面を適正に設定する必要がある。共通画像平面は、基線軸に対して平行な軸(回転軸)に対する回転角度が異なる複数の平面が設定可能である。
【0044】
なお、設定する共通画像平面によって、上述した画像処理装置2のパラメータ記憶部24に記憶させる第1〜第4のパラメータが異なることはいうまでもない。
【0045】
以下、ステレオカメラ1に対して、共通画像平面を決定する処理について説明する。この発明にかかる共通画像平面決定プログラムは、この処理をコンピュータに実行させるものである。
【0046】
図4は、情報処理装置の主要部の構成を示す図である。この情報処理装置5は、制御部50と、右画像記憶部51と、左画像記憶部52と、画像処理部53と、パラメータ記憶部54と、出力部55と、を備えている。この情報処理装置5は、この発明にかかる共通画像平面決定プログラムをインストールしている。制御部50は、本体各部の動作を制御する。右画像記憶部51は、共通画像平面を決定するステレオカメラ1のカメラ11の撮像画像(右画像)を記憶している。また、左画像記憶部52は、共通画像平面を決定するステレオカメラ1のカメラ12の撮像画像(左画像)を記憶している。
【0047】
なお、右画像記憶部51、および左画像記憶部52は、上述した右画像入力部21、および左画像入力部22に置き換え、実際に共通画像平面を決定するステレオカメラ1を接続する構成であってもよい。
【0048】
また、パラメータ記憶部54は、共通画像平面を決定するステレオカメラ1について、2つのカメラ11、12の基線軸を特定する基線軸パラメータや、基線長を示す基線長パラメータ、カメラ11、12毎の焦点距離等の撮像光学系にかかる光学パラメータ、カメラ11、12毎の撮像方向にかかる撮像方向パラメータ等を記憶している。
【0049】
出力部55は、決定した共通画像平面に対する、上述の第1〜第4のパラメータを出力する。
【0050】
図5は、共通画像平面を決定する処理を示すフローチャートである。制御部50は、パラメータ記憶部54に記憶しているパラメータを用いて、ステレオカメラ1の2つのカメラ11、12の基線軸に平行な軸(以下、回転軸と言う。)を含む、基準共通画像平面を設定する(s11)。この基準共通画像平面は、例えば、鉛直方向に立設する平面とすればよい。s11では、特に回転軸における回転角度を気にすることなく、基準共通画像平面を設定すればよい。
【0051】
制御部50は、s11で設定した基準共通画像平面を、回転軸において0°回転させた平面(すなわち、基準共通画像平面)を判定対象共通画像平面として設定する(s12)。
【0052】
制御部50は、一方のカメラ11のカメラ画像平面を、今回設定した判定対象共通画像平面に投影する変換パラメータ(上述の第1のパラメータに相当する。)を算出する(s13)。画像処理部53は、制御部50がs13で算出した変換パラメータを用いて、右画像記憶部51に記憶している右画像を判定対象共通画像平面に投影した右投影画像を得る(s14)。s14では、図6(A)に示す右画像を、判定対象共通画像平面に投影した右投影画像(図6(B)参照)を得る。
【0053】
画像処理部53は、s14で判定対象共通画像平面に投影した右投影画像を内包し、基線軸に平行な2辺を有する最小の矩形領域を求める(s15)。s15では、図6(C)に示す矩形領域を求める。
【0054】
なお、ここでは、この最小の矩形領域の検出にかかる時間の短縮を図るために、基線軸に平行な2辺を有する最小の矩形領域としたが、基線軸に平行な辺を有していない矩形も含めて、最小の矩形領域を検出してもよい。
【0055】
画像処理部53は、s15で求めた矩形領域における、s14で投影した右投影画像の面積比を算出する(s16)。制御部50は、今回の判定対象共通画像平面の回転角度(回転軸における基準共通画像平面に対する回転角度)と、s16で算出した面積比を対応付けて記憶する(s17)。
【0056】
制御部50は、今回の判定対象共通画像平面の回転角度に、予め定めた角度n°(例えば、3°)を加算した角度が180°以上であるかどうかを判定する(s18)。制御部50は、s18で180°未満であると判定すると、この時点における判定対象共通画像平面を、回転軸において、さらにn°回転させた平面を、新たな定対象共通画像平面に設定し(s19)、s13以降の処理を繰り返す。
【0057】
制御部50は、上述の処理を行うことで、回転軸において基準画像平面をn°ずつ回転させた複数の判定対象共通画像平面毎に、s16で算出した面積比を記憶する。
【0058】
図7に示すように、回転軸における基準画像平面の回転角度が異なる判定対象共通画像平面間では、右画像(図7(A)参照)を投影した右投影画像(図7(B)参照)が異なる。したがって、右投影画像を内包し、基線軸に平行な2辺を有する最小の矩形領域も異なる(図7(C)参照)。その結果、s17で算出される面積比も異なる。
【0059】
情報処理装置5は、上述の処理を行うことにより、回転軸における基準画像平面の回転角度が異なる複数の判定対象共通画像平面毎に、s16で算出した面積比を得る(図8参照)。
【0060】
制御部50は、s18で180°以上であると判定すると、s16で算出した面積比が最大であった回転角度の判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する(s20)。制御部50は、s20で決定した共通画像平面に対する、上述の第1〜第4のパラメータを算出し、これを出力する(s21、s22)。ここで出力した第1〜第4のパラメータは、今回対象としたステレオカメラ1を用い、被写体の3次元処理を行う画像処理装置2のパラメータ制御部24に記憶される。
【0061】
このように、上述した処理で決定される共通画像平面は、右画像が最も効率的に投影される平面である。したがって、上述したステレオマッチングにかかる処理が適正に行える、共通画像平面が決定できる。
【0062】
なお、上記の説明は、右画像を基にして、共通画像平面を決定するものであったが、左画像を基にして共通画像平面を決定する処理であっても、同様である。
【0063】
また、s16では面積比を算出するとしたが、s15で求めた矩形領域を予め定めた大きさに正規化し、この中に含まれる投影画像の画素数をカウントする構成としてもよい。この場合には、s20で画像数のカウント値が最大であった、回転角度の判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定すればよい。この場合も、共通画像平面を、右画像(または左画像)が最も効率的に投影される平面に決定できる。
【0064】
また、上記の例では、右画像全体を投影した右投影画像の面積比に基づいて、共通画像平面を決定するとしたが、図9に示すように、右画像において距離計測を行う領域(2つのカメラ11、12の撮像領域が重複している領域)を抽出する(図9(A),(B)参照)。そして、ここで抽出した距離計測を行う領域を、判定対象共通画像平面毎に投影し(図9(C)参照)、この投影した画像を内包し、基線軸に平行な2辺を有する最小の矩形領域を求め(図9(D)参照)、その面積比を算出する。情報処理装置5は、その面積比が最大であった判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する。このようにすれば、共通画像平面を、右画像において距離計測に用いる領域が最も効率的に投影される平面に決定できる。
【0065】
また、図10に示すように、右画像(図10(A)参照)の4角を判定対象共通画像平面毎に投影し(図10(B)参照)、投影した4点が囲む領域を内包し、基線軸に平行な2辺を有する最小の矩形領域を求め(図10(C)参照)、その面積比を算出するようにしてもよい。このようにすれば、判定対象共通画像平面毎に、面積比を算出する処理が簡単になり、処理時間が短縮できる。
【0066】
さらに、上述の例では、一方の画像(右画像、または左画像)を判定対象共通画像平面毎に投影し、共通画像平面を決定するとしたが、右画像、および左画像の両方を判定対象共通画像平面毎に投影し、その結果に基づいて共通画像平面を決定するようにしてもよい。この場合には、図11に示すように、回転軸における基準画像平面の回転角度が異なる複数の判定対象共通画像平面毎に、右画像、および左画像の両方について、上述の面積比を得るために、s13〜s17にかかる処理を、右画像、および左画像の両方について行えばよい。
【0067】
共通画像平面を決定する方法は、
(1)右画像、および左画像の両方において、面積比が最大であった回転角度の判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する。
(2)右画像の面積比と、左画像の面積比の和が最大であった回転角度の判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する。
(3)右画像、および左画像の両方において、面積比が予め定めた値(閾値)以上であり、且つ、その中で、面積比が最大であった回転角度の判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する。
(4)右画像、および左画像の両方において、面積比が予め定めた値(閾値)以上であり、且つ、その中で、右画像の面積比と、左画像の面積比の和が最大であった回転角度の判定対象共通画像平面を、共通画像平面に決定する。
等のいずれかから選択すればよい。
【0068】
なお、上述の説明では、2つのカメラ11、12が非並列に配置されているステレオカメラ1について、共通画像平面を決定する場合を例示しながら説明したが、2つのカメラ11、12が並列に配置されているステレオカメラ1であっても、共通画像平面を適正に決定できる。
【0069】
また、共通画像平面を決定する処理は、上述の画像処理装置2でも行える。
【符号の説明】
【0070】
1…ステレオカメラ
2…画像処理装置
5…情報処理装置
11、12…カメラ
20…制御部
21…右画像入力部
22…左画像入力部
23…画像処理部
24…パラメータ記憶部
25…出力部
50…制御部
51…右画像記憶部
52…左画像記憶部
53…画像処理部
54…パラメータ記憶部
55…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置に配置した2つのカメラで撮像した被写体を立体的に処理する際に、各カメラの撮像画像を投影する共通画像平面を決定する処理をコンピュータに実行させる共通画像平面決定プログラムであって、
前記2つのカメラの撮像中心を結ぶ基線軸に平行な回転軸を含む基準共通画像平面を設定する第1のステップと、
予め設定されている複数の回転角度毎に、前記第1のステップで設定した前記基準共通画像平面を、前記回転軸において回転させた判定対象共通画像平面を設定する第2のステップと、
前記第2のステップで設定した前記判定対象共通画像平面毎に、前記カメラの撮像画像が投影される投影画像領域を検出する第3のステップと、
前記第3のステップが検出した投影画像領域の大きさに基づいて、前記第2のステップで設定した前記判定対象共通画像平面中から、共通画像平面を選択し決定する第4のステップと、をコンピュータに実行させる共通画像平面決定プログラム。
【請求項2】
前記第4のステップは、前記判定対象共通画像平面毎に、前記第3のステップで検出した投影画像領域全体を含む最小の矩形領域を検出し、この矩形領域における投影画像領域が占める比率に基づいて判定対象共通画像平面を、共通画像平面として選択し決定する処理である、請求項1に記載の共通画像平面決定プログラム。
【請求項3】
前記第4のステップは、前記最小の矩形領域として、前記基線軸に平行な2辺を有する矩形領域を検出する、請求項2に記載の共通画像平面決定プログラム。
【請求項4】
前記第3のステップは、前記カメラの撮像画像における被写体を立体的に処理する領域について、投影画像領域を検出する請求項1〜3のいずれかに記載の共通画像平面決定プログラム。
【請求項5】
前記第3のステップは、前記カメラの撮像画像における4角を前記判定対象共通画像平面に投影し、投影した4点が囲む領域を前記投影画像領域として検出する請求項1〜3のいずれかに記載の共通画像平面決定プログラム。
【請求項6】
前記第3のステップは、前記カメラの一方についてのみ、撮像画像が投影される前記投影画像領域を検出する請求項1〜5のいずれかに記載の共通画像平面決定プログラム。
【請求項7】
前記第3のステップは、前記カメラの両方について、撮像画像が投影される前記投影画像領域を検出する請求項1〜5のいずれかに記載の共通画像平面決定プログラム。
【請求項8】
コンピュータで、異なる位置に配置した2つのカメラで撮像した被写体を立体的に処理する際に、各カメラの撮像画像を投影する共通画像平面を決定する共通画像平面決定方法であって、
前記2つのカメラの撮像中心を結ぶ基線軸に平行な回転軸を含む基準共通画像平面を設定する第1のステップと、
予め設定されている複数の回転角度毎に、前記第1のステップで設定した前記基準共通画像平面を、前記回転軸において回転させた判定対象共通画像平面を設定する第2のステップと、
前記第2のステップで設定した前記判定対象共通画像平面毎に、前記カメラの撮像画像が投影される投影画像領域を検出する第3のステップと、
前記第3のステップが検出した投影画像領域の大きさに基づいて、前記第2のステップで設定した前記判定対象共通画像平面中から、共通画像平面を選択し決定する第4のステップと、をコンピュータで実行する共通画像平面決定方法。
【請求項9】
異なる位置に配置した2つのカメラで撮像した被写体を立体的に処理する際に、各カメラの撮像画像を投影する共通画像平面を決定する共通画像平面決定装置であって、
前記2つのカメラの撮像中心を結ぶ基線軸に平行な回転軸を含む基準共通画像平面を設定する基準共通画像平面設定手段と、
予め設定されている複数の回転角度毎に、前記基準共通画像平面設定手段が設定した前記基準共通画像平面を、前記回転軸において回転させた判定対象共通画像平面を設定する判定対象共通画像平面設定手段と、
前記判定対象共通画像平面設定手段が設定した前記判定対象共通画像平面毎に、前記カメラの撮像画像が投影される投影画像領域を検出する投影画像領域検出手段と、
前記投影画像領域検出手段が検出した投影画像領域の大きさに基づいて、前記判定対象共通画像平面設定手段が設定した前記判定対象共通画像平面中から、共通画像平面を選択し決定する共通画像平面決定手段と、を備えた共通画像平面決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図11】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−186868(P2011−186868A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52525(P2010−52525)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】