説明

共重合体エマルジョン及び建築複層弾性塗膜用トップコート塗料

【課題】 本発明の課題は、弾性塗料塗膜への密着性良好であり、外装用としては、雨、紫外線などに対する耐候性、耐水性の良好なトップコート塗料を提供すること、及び該トップコート用塗料に好適な共重合体エマルジョンを提供することである。
【解決手段】水への溶解度が1重量%超の親水性ラジカル重合性モノマー(a)0.1〜10重量%、及び水への溶解度が1重量%以下の疎水性ラジカル重合性モノマー(b)90〜99.9重量%を水性媒体中で重合してなる、ガラス転移温度が0〜50℃の共重合体エマルジョン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築塗料用途に使用される水性塗料に関するものであり、詳しくは複層中塗り用弾性塗膜への密着性に優れた水性トップコートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性アクリルエマルジョンは、水性塗料などの各種コーティング材、水性粘着剤・接着剤、不織布用バインダ−などの繊維加工剤、紙加工用バインダ−、水性インキなどの用途に使用されている。
【0003】
複層中塗りの弾性塗料塗膜の上に塗工されるトップコート塗料は、従来溶剤系樹脂を使用した塗料が主流を占めていた分野である。近年、環境対応から水性化が急速に進み、従来溶剤系樹脂が主流を占めてきた建築用塗料の分野、特に弾性防水塗料の分野にも水性塗料が徐々に使用されつつある。
しかし、より耐久性、耐水性を要求される場合には、トップコート塗料としてはまだまだ溶剤系塗料が使用されているのが現状である。その理由として、弾性塗料塗膜に対する密着性、耐水性、耐候性の不十分なことがあげられる。
【0004】
ここでいう弾性塗料とは、弾性防水塗料、中塗り弾性塗料とも呼ばれており、コンクリートなどの建築物基材に亀裂が生じても塗膜がよく伸縮して、下地の割れをカバーし内部を保護し、温度の昇降に対しても影響を受けにくい機能を有する塗料をいう。
中塗り弾性塗料は、以下に示すように複数の塗料を多数積層して「複層塗膜」形成をする際に使用される。「複層塗膜」形成をすることを複層塗装システムともいう。
即ち、複層塗装システムとは、一般にコンクリートなどの建築物基材に、まず下地調整を目的としたシ−ラ−とも呼ばれている下塗り用塗料を塗布し、その下塗りシーラーの上に中塗り弾性塗料を塗布し、その中塗り弾性塗膜の上に、トップコート塗料を塗装することをいう。
【0005】
この複層塗装システムに用いられる中塗り弾性塗料には、ガラス転移温度が−20℃以下の比較的柔らかいホモポリマーを形成し得る疎水性モノマーを主たる構成成分とする共重合体エマルジョンが多く使用されている。
従って、密着性の観点から、中塗り弾性塗料から形成される中塗り弾性塗膜の上に塗装されるトップコート塗料は、中塗り弾性塗料同様に疎水性に富むとともに組成面でも近似していることが好ましい。
しかし、建築用のトップコート塗料用のエマルジョンには、重合安定性、顔料混和安定性などの各種安定性が要求されるが、疎水性ラジカル重合性モノマ−だけではこれらの要求に十分応えることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、弾性塗料塗膜への密着性良好であり、外装用としては、雨、紫外線などに対する耐候性、耐水性の良好なトップコート塗料を提供すること、及び該トップコート用塗料に好適な共重合体エマルジョンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水への溶解度が1重量%超の親水性ラジカル重合性モノマー(a)0.1〜10重量%、及び水への溶解度が1重量%以下の疎水性ラジカル重合性モノマー(b)90〜99.9重量%を水性媒体中で重合してなる、ガラス転移温度が0〜50℃の共重合体エマルジョンに関するものである。
また、本発明は、共重合体のガラス転移温度が10〜30℃であることを特徴とする上記発明に記載の共重合体エマルジョンに関するものである。
そして、また本発明は、疎水性ラジカル重合性モノマー(b)が、スチレン、及び/またはガラス転移温度が20℃以上のホモポリマーを形成し得る炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする上記発明に記載の共重合体エマルジョンに関するものである。
また、本発明は、炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートが、tert−ブチルメタクリレート(以下、メタクリル酸t−ブチル、と記載する場合もある)であることを特徴とする上記発明に記載の共重合体エマルジョンに関するものである。
そして、本発明は、上記発明のいずれかに記載の共重合体エマルジョンを含有することを特徴とする建築塗料に用いられる複層弾性塗料用トップコート塗料に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複層弾性塗料塗膜との密着性のよい水性アクリル系エマルジョンを得ることができる。その結果として、複層弾性塗膜全体の耐久性が向上し、塗料本来の目的である内部保護機能がいっそう向上した。さらにこの水性アクリル系共重合体エマルジョンは、重合安定性をはじめ顔料混和性などの各種安定性にすぐれ、皮膜化したあとの耐水性も良好で、その他の各種建築塗料用樹脂として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において用いられる水への溶解度が1重量%超の親水性ラジカル重合性モノマー(a)としては、
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマ−ル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマ−、
アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどの水酸基含有モノマー、
アクリルアマイド、メタクリルアマイド、ダイアセトンアクリルアマイドなどのアマイド系モノマー、
N−メチロールアクリルアマイドなどのメチロール基含有モノマー、
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー、などのいわゆるエマルジョンの安定化に寄与する官能基モノマーとも呼ばれている親水性のモノマーが挙げられる。
なお、エマルジョンを構成する共重合体の硬さを支配する骨格モノマーと呼ばれているメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸(メタクリル酸)エステル類、及び酢酸ビニル、アクリロニトリルなども水への溶解度が1重量%超なので本発明でいう親水性モノマーの分類の中に含まれる。
なお、溶解度とは、20℃におけるモノマーの水への溶解度のことである。
【0010】
本発明において用いられる水への溶解度が1重量%以下の疎水性ラジカル重合性モノマー(b)としては、スチレン、ビニルトルエン、αメチルスチレンなどのスチレン系モノマー、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソボロニル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸エステル類、
メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸−isoブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸イソボロニル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル類、
エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマー、
γ−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロキシプロピルトリエトキシシランなどのケイ素含有モノマー、
等が挙げられる。
これらのモノマーの中では、スチレン、及び/またはガラス転移温度が20℃以上のホモポリマーを形成し得る炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
スチレンモノマーは、耐水性、光沢、顔料分散性などの点から共重合モノマー成分として好適である。スチレン以外に、ビニルトルエン、αメチルスチレンなどのスチレン系モノマーなども同様に有用であるが、コスト面などを考慮するとスチレンモノマーが最善である。
また、ガラス転移温度が20℃以上のホモポリマ−を形成し得る炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレ−トは、耐候性、耐汚染性、耐水性などの点から好ましい。
ガラス転移温度が20℃以上のホモポリマ−を形成し得る炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレ−トモノマ−としては、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸−isoブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸イソボロニル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステル類があげられる。
その中でも炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートとしては、tert−ブチルメタクリレートの使用が最も好ましい。
【0011】
建築複層弾性塗膜用トップコート塗料に好適な本発明の共重合体エマルジョンは、上記した疎水性ラジカル重合性モノマ−(b)だけではなく、以下の理由により、水への溶解度が1重量%超の親水性ラジカル重合性モノマー(a)を0.1〜10重量%共重合に供することが必要である。
即ち、親水性ラジカル重合性モノマー(a)が0.1重量%未満であると、スケールアップなどの合成面、顔料混和安定性など各種安定性から実用上難しい。一方、親水性ラジカル重合性モノマー(a)が10重量%よりも多いと形成される塗膜の耐水性が極端に低下し、外装塗料用途の樹脂としては適さない。
【0012】
また、トップコート塗膜は、汚染性、耐久性などの点から、必要以上に柔らかいことは不適切である。即ち、トップコート塗料の主たる成分たる上記共重合体のガラス転移温度は比較的高い方が種々の物性に優れている。従って、トップコート塗料の主たる成分たる上記共重合体としては、ガラス転移温度が0〜50℃であることが重要であり、10〜30℃であることが好ましい。
共重合体のガラス転移温度が0℃未満であると、トップコート塗料用の樹脂としてはタックがありすぎて、塗膜の耐汚染性、耐候性などが不十分である。
また、共重合体のガラス転移温度が50℃以上であると、塗料としての成膜性が不十分になり、均一な塗膜が形成されにくくなる。そして、塗膜を繰り返し温めたり冷やしたりするとクラックが発生したりする。また、耐水性も不良になる。
【0013】
本発明の共重合体のエマルジョンは、界面活性剤を使用し、モノマーを水性媒体中で重合する、通常の一般的な乳化重合方法で合成できる。
界面活性剤はノニオン性界面活性剤とアニオン性活性剤との併用が重合安定性、塗料化時の各種安定性の面から一般的である。
しかし、最終塗料の要求性能によっては、ノニオン性活性剤の単独使用、アニオン性界面活性剤の単独使用の場合もあり得る。
【0014】
ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどのポリオキシ多環フェニルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記の非反応性界面活性剤以外に、化学的に粒子表面に結合し、安定化への寄与度の大きい、モノマー成分と共重合可能な反応性ノニオン性界面活性剤も使用可能である。
【0015】
反応性ノニオン性界面活性剤としては、アデカリアソープER−10、ER−20(旭電化工業株式会社製)、アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50(第一工業製薬株式会社製)、NKエステルM−20G、M−40G(新中村化学工業株式会社製)などが代表的なものである。
乳化重合に際しては、これら1種または2種以上を併用してもよい。
【0016】
アニオン性界面活性剤もノニオン性界面活性剤と同様に、非反応性のアニオン性界面活性剤、及び反応性のアニオン性界面活性剤いずれでも使用できる。
非反応性アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などがあれられる。
反応性のアニオン性界面活性剤としては、アデカリアソープSR−10、SR−20、SE−10N(旭電化工業株式会社製)アクアロンHS−10、HS−20、KH−05、KH−10(第一工業製薬株式会社製)エレミノールJS−2(三洋化成工業株式会社製)などがあげられる。
これら界面活性剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜7重量部であることがより好ましい。
0.1重量部未満では重合時のエマルジョンの安定性が悪く凝集がおこりやすい。また10重量部を超えると粒子径が小さくなりすぎ化学的安定性が悪くなり、又耐水性の点でも好ましくない。
【0017】
本発明における乳化重合時に使用する開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機系過酸化物重合開始剤や、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物や水溶性アゾ系開始剤を使用する。これら開始剤は単独で使用することもできるが、重亜硫酸ナトリウム、エルソルビン酸ナトリウム、チオ尿素、二酸化チオ尿素などの還元剤との併用によるレドックス型で使用してもよい。
これら開始剤はモノマー混合物に対して 0.1〜5.0重量%とすることが一般的である。重合開始時に必要量を一括して使用してもよいし、又、分割して任意の時間ごとに添加して用いてもよい。
また、促進剤として硫酸第一鉄や硫酸銅などの物質を添加してもかまわない。
【0018】
さらに必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが、また保護コロイドとしてポリビニールアルコール、水溶性セルロース誘導体などが、連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類が適量使用できる。
また、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤なども配合可能である。
【0019】
本発明の建築複層弾性塗膜用トップコート塗料は、上記共重合体エマルジョンを含有するものであり、顔料を含まないクリアー塗料としても、また酸化チタンなど着色顔料、重質炭酸カルシウムなどの体質顔料等を含有する塗料とすることもできる。後者の各種顔料を含有する塗料がより汎用的である。使用用途により、顔料の種類や使用量は選択できる。
本発明の建築複層弾性塗膜用トップコート塗料は、上記した各種顔料以外に、テキサノールやブチルセロソルブなどの成膜助剤、エチレングリコールやメタノールなどの凍結防止剤、顔料分散剤、湿潤剤、増粘剤、粘性調整剤、防腐剤、消泡剤、pH調節剤などが目的に応じて使用される。
【0020】
本発明の建築複層弾性塗膜用トップコート塗料が、塗装される基材としては、モルタル、コンクリート、フレキシブルスレート板、珪酸カルシウム板等の汎用建築基材があげられる。
建築基材上に下塗り剤が塗装・乾燥された上に、中塗り弾性塗料が塗装・乾燥され、次いで本発明のトップコート塗料がその塗膜の上に、塗装、乾燥される。
塗装方法は、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装などの方法が一般的である。
トップコート塗膜のうち、比較的薄塗りのフラット系塗膜では、0.1〜0.4Kg/m(乾燥皮膜厚さ:50ミクロン〜300ミクロン)が一般的な塗工量である。
乾燥は、現場施工の塗料であるので、寒冷地、あるいは冬場の5℃前後の雰囲気温度から、夏場の40℃前後までの広い範囲で成膜、乾燥することが必要である。
【実施例】
【0021】
実施例1(表2の10倍量のスケールで実施した)
温度計、滴下ロ−ト、還流冷却管を備え、窒素ガスで置換した反応容器に、イオン交換水(初期仕込み分:434部)を仕込んだ。
モノマー(スチレン:350部、メタクリル酸t−ブチル:257部、アクリル酸2エチルヘキシル:363部、アクリル酸:20部、アクリルアマイド:10部)、アニオン性界面活性剤(アクアロンKH−10、第一工業製薬株式会社製)有効成分15部を溶解した水溶液75部、ノニオン性界面活性剤(エマルゲン1118S−70、花王株式会社製)有効成分10部を溶解した水溶液40部)、及びイオン交換水:260部を混合撹拌し乳化させ、プレエマルジョンを得た。
このプレエマルジョンの3%分(41部)を反応釜に初期分割分として仕込み、内温を65℃に昇温した後、開始剤(過硫酸アンモニウム 5%水溶液:80部及び重亜硫酸ナトリウム 2%水溶液100部)の各々10%を反応釜に添加し、反応を開始した。
反応開始5分後から、上記プレエマルジョンの残り97%を滴下ロートから滴下し始めた。
内温を70℃に保ちながら、4時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後さらにその温度で2時間反応した。
開始剤(残りの90%)も乳化プレエマルジョンの滴下と同時に連続滴下した。
反応率が99%以上なったことを150℃熱風乾燥機で20分間乾燥した乾燥残分で確認し、冷却後25%アンモニア水(13部)でpHを調整した。150メッシュの濾布でろ過し、不揮発分:49.8%、粘度(BH型粘度計・No3ローター 20rpm):2800mPa・s、粒子径:140nmの共重合体エマルジョンを得た。共重合に供したモノマーから求められる共重合体のガラス転移温度(理論値)は25℃であった。
【0022】
実施例2:(実施例1と同様に、表2の10倍量スケールで実施した。)
温度計、滴下ロ−ト、還流冷却管を備え、窒素ガスで置換した実施例1と同様の反応容器に、反応釜量のイオン交換水(452部)を仕込んだ。
表2の滴下分のモノマー成分(スチレン:350部、メタクリル酸t −ブチル:189部、メタクリル酸メチル:50部、アクリル酸2エチルヘキシル:391部、アクリル酸:15部、アクリルアマイド:5部、)、アニオン性界面活性剤成分(ハイテノ−ルNF-08:第一工業製薬株式会社製、有効成分15部を溶解した水溶液75部、ノニオン性界面活性剤(アデカリアソ−プER-20:旭電化工業株式会社製、有効成分5部を溶解した水溶液20部)、イオン交換水(滴下分:266部)を滴下分として仕込み、混合撹拌し乳化させプレエマルジョンを得た。
この乳化プレエマルジョンの3%分(41部)を反応釜に初期分割分として仕込む。
内温を65℃に昇温した後、開始剤(過硫酸アンモニウム5%水溶液:80部及び重亜硫酸ナトリウム2%水溶液100部)の各々、10%を添加し、反応を開始した。
反応開始5分後から乳化プレエマルジョンの残り97%の滴下し始めた。
内温を70℃に保ち4時間かけて連続的に滴下し、さらにその温度で2時間反応した。開始剤(残りの90%)も乳化プレエマルジョンの滴下と同時に連続滴下した。
反応率99%以上になったことを150℃熱風乾燥機で20分間乾燥した乾燥残分で確認し、冷却後25%アンモニア水(11部)で pHを調整した。150メッシュの濾布でろ過し、不揮発分:50.2%、粘度(BH型粘度計・No3ローター 20rpm):1900mPa・s、粒子径:130nm のアクリル系共重合体エマルジョンを得た。共重合に供したモノマーから求められる共重合体のガラス転移温度(理論値)は20℃であった。
【0023】
実施例3〜実施例5
表2に示す組成を実施例1及び実施例2と同様の方法で重合してそれぞれの水性アクリル系共重合体エマルジョンを得た。
【0024】
比較例1〜比較例4
モノマー組成及び界面活性剤の種類以外は、実施例と同様の方法で重合し
それぞれの水性アクリル系共重合体エマルジョンを得た。
【0025】
(評価方法及び評価基準)
(1)重合安定性:反応終了後の反応容器への樹脂の付着量及び、150メッシュの濾布で濾過後の凝集物量を目視で評価した。なお評価基準は次のとおりである。
○:良好(濾過残渣が 0.05%未満)
△:やや問題あり(濾過残渣が 0.05%以上 0.1%未満)
×:不良(濾過残渣が 0.1%以上)
【0026】
(2)塗料化及び弾性塗料塗膜との密着性
下記配合処方にて、塗料化し、密着性評価を行う。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
(3)弾性塗料塗膜との密着性
スレート板に、シーラー及び防水弾性塗料を塗装し、常温乾燥させる。その塗装板の上に、上記作成したトップコート塗料を刷毛で、0.25Kg/m塗装し 室温で1日間乾燥させた後、50℃温水に2時間浸漬した。その試料表面を、へらで引っ掻いて、弾性塗料との密着性を評価する。
○ :密着性良好(剥離するのに抵抗がある)
△ :部分的に剥離する。
× :弾性塗料とトップコートが抵抗なく剥離する。
【0030】
(4)耐候性
スレート板に、シーラー及び防水弾性塗料を塗装し、常温乾燥させる。その塗装板の上に、上記作成したトップコート塗料を刷毛で、0.25Kg/m塗装し、室温で7日間乾燥させる。
その試料を促進耐候性試験機(QUV促進耐候性試験機:三洋貿易株式会社製)を使用し、照射前の光沢を標準とし、500時間照射後の光沢保持率で優劣を比較する。
○ :保持率が 80%以上
△ :保持率が 50%以上 80%未満
× :保持率が 50%未満
【0031】
(5)耐水白化性
エマルジョン100部に成膜助剤として、テキサノール/ブチルセロソルブ=80/20の混合物を5部添加し、5ミルのアプリケーターにてガラス板に塗工する。室温で1日間乾燥後、50℃の温水に浸漬し、白化の程度、膜の状態から判定する。
○ :浸漬30分後で、白化のほとんどないもの。
△ :浸漬30分後で白化する。
× :浸漬30分以内で白化・膨潤する。
尚、白化とは 8ポイントの字がよめなくなる程度のものをいう。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この水性アクリル系共重合体エマルジョンは弾性塗料塗膜への密着性に優れている。また、各種安定性にすぐれ、皮膜化したあとの耐水性も良好で、各種建築塗料用樹脂、例えば、艶ありトップコート用樹脂、単層弾性塗料用樹脂などへの展開が特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水への溶解度が1重量%超の親水性ラジカル重合性モノマー(a)0.1〜10重量%、及び水への溶解度が1重量%以下の疎水性ラジカル重合性モノマー(b)90〜99.9重量%を水性媒体中で重合してなる、ガラス転移温度が0〜50℃の共重合体エマルジョン。
【請求項2】
共重合体のガラス転移温度が10〜30℃であることを特徴とする請求項1記載の共重合体エマルジョン。
【請求項3】
疎水性ラジカル重合性モノマー(b)が、スチレン、及び/またはガラス転移温度が20℃以上のホモポリマーを形成し得る炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1又は2記載の共重合体エマルジョン。
【請求項4】
炭素数4以上のアルキル(メタ)アクリレートが、tert−ブチルメタクリレートであることを特徴とする請求項3記載の共重合体エマルジョン。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の共重合体エマルジョンを含有することを特徴とする建築複層弾性塗膜用トップコート塗料。

【公開番号】特開2006−206800(P2006−206800A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22872(P2005−22872)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】