説明

内容物注出構造、接続構造、電子機器及び容器

【課題】加圧していない内容物を容器内に収容したものとしても、容器を機器側に接続した際に容器内の内容物が注出できるようにする。
【解決手段】内容物注出構造10は、注出口15を有するとともにその注出口15で開口した中空を有する注出管11と、注出管11の中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、注出管11の注出口15に対して接離し、弾性を有する可動栓12と、可動栓12を注出管11の注出口15に向けて付勢する弾性部材13と、を備える。切り込み17が可動栓12を注出管11の注出口15側から反対側にかけて貫通し、切り込み17が可動栓12の弾性力により閉塞される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物注出構造、接続構造、電子機器及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、腕時計、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳等といった小型電子機器がめざましい進歩・発展を遂げている。電子機器の電源として一次電池又は二次電池を用いるのが一般的であるが、エネルギー利用効率のよい燃料電池を電子機器の電源に用いるための研究開発が行われている。電子機器に用いる燃料電池として、直接燃料方式と呼ばれるものや、改質方式と呼ばれるものがある。直接燃料方式とは、燃料電池に直接供給された燃料の電気化学反応により発電する方式である。一方、改質方式とは、燃料を水素にいったん改質し、燃料電池に供給された水素の電気化学反応により発電する方式である。何れの方式にしても液体燃料が必要であるため、液体燃料を収納する容器が必要となる。
【0003】
コネクタが容器及び電子機器本体にそれぞれ設けられており、容器のコネクタが電子機器本体のコネクタに接続されることで、容器内の液体燃料を電子機器本体側に供給できるようになる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ステム弁を用いたコネクタについて開示されている。容器のコネクタについては、容器(4)の口にハウジング(53)が設けられ、ハウジング(53)の中空の径が出口(54)の径よりも大きく、ハウジング(53)の内側であって出口(54)の周囲には弾性のOリング(55)が設けられ、ハウジング(53)内にバネ(52)及びステム弁(51)が収容されている。そして、バネ(52)によりステム弁(51)が付勢され、ステム弁(51)のステム(51a)が出口(54)に挿入されるとともに、ステム弁(51)の弁体(51b)がOリング(55)に押し付けられている。容器(4)には燃料が加圧された状態で収容されていても、Oリング(55)によって密閉されているから、燃料が流出しない。容器(4)のコネクタが機器のコネクタに接続されると、ステム弁(51)が押し込まれて、弁体(51b)がOリング(55)から離れるので、密閉状態が解除され、燃料がステム弁(51)の表面とハウジング(53)の内壁との間の僅かな隙間を通って注出される。
【特許文献1】特開2006−46691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコネクタはステム弁(51)を用いたものであるから、液体燃料を使用する機器(2)から容器(4)を離して保存している状態であっても、容器(4)内の燃料を常時加圧した状態にしなければならない。そのため、容器(4)をその圧力に耐えられるものにする必要がある。
また、容器(4)を耐圧性のないものとすれば、加圧された燃料を容器(4)内に収容することができない。加圧されていない燃料が容器(4)内に収容されていると、弁体(51b)がOリング(55)から離れたものとしても、容器(4)内の燃料がステム弁(51)の表面とハウジング(53)の内壁との間の僅かな隙間を燃料が通過できない。そのため、容器(4)の燃料が機器側に供給されない。
そこで、本発明は、内容物を容器内に常時加圧していない状態で収容しているものとしても、容器を機器側に接続した際に容器内の内容物が確実に注出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様によれば、
注出口及び前記注出口で開口し、内容物を含む中空を有するハウジングと、
前記ハウジングの中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、前記ハウジングの注出口に対して接離し、前記ハウジングの注出口側から反対側にかけて貫通する切り込みを有する可動栓と、
前記可動栓を前記ハウジングの注出口に向けて付勢する弾性部材と、を備え、
前記可動栓の前記切り込みが開いた状態で前記可動栓が前記弾性部材の付勢に抗して移動することによって前記ハウジング内の前記中空の内部を加圧し前記切り込みから前記ハウジングの前記内容物を注出することを特徴とする内容物注出構造が提供される。
好ましくは、前記内容物注出構造が、前記可動栓に関して前記ハウジングの注出口の反対側において前記ハウジングの中空に設けられた逆止弁を更に備え、
前記ハウジングが前記注出口と反対側において前記中空に通じた開口を有し、
前記逆止弁が前記ハウジングの中空から前記開口を通って前記ハウジング外への内容物の流れを阻止する。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
棒状の差込部と、
前記差込部の両端の間において前記差込部の周囲に設けられた押込部と、
を有し、
注出口及び前記注出口で開口し、内容物を含む中空を有するハウジングと、前記ハウジングの中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、前記ハウジングの注出口に対して接離し、前記ハウジングの注出口側から反対側にかけて貫通する切り込みを有する可動栓と、前記可動栓を前記ハウジングの注出口に向けて付勢する弾性部材と、を備える内容物注出構造に対して、前記差込部が前記切り込みに差し込まれて前記切り込みが開いた状態で、前記押込部が前記可動栓を前記弾性部材に抗して前記中空の方向に押すことによって、前記内容物注出構造から前記内容物を注出することを特徴とする接続構造が提供される。
好ましくは、前記ハウジングが差し込まれる受入管を更に備える。
好ましくは、前記受入管は、前記受入管に沿って前記受入管に前記ハウジングが差し込まれると、前記差込部が前記切り込みに当接し、前記押込部が前記可動栓に当接するように、前記差込部を包囲するよう設けられている。
好ましくは、前記受入管は、前記ハウジングを係止する係止部を備える。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
前記接続構造と、
前記接続構造を介して前記内容物を取り込む電子機器本体と、
を備える電子機器が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
内部に内容物を含む容器本体と、
注出口を有するとともに、その注出口で開口してその注出口の反対側で前記容器本体内に通じた中空を有するハウジングと、
前記ハウジングの中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、前記ハウジングの注出口に対して接離し、前記ハウジングの注出口側から反対側にかけて貫通する切り込みを有する可動栓と、
前記可動栓を前記ハウジングの注出口に向けて付勢する弾性部材と、を備え、
前記可動栓の前記切り込みが開いた状態で前記可動栓が前記弾性部材の付勢に抗して移動することによって前記ハウジングを介して前記容器本体の圧力を高めて前記切り込みから前記内容物を注出する容器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内容物注出構造が接続構造に接続されることによってハウジング内の内容物が加圧され、内容物が可動栓の切り込みを通って注出されるので、内容物が予め加圧されていなくとも済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
〔第1の実施の形態〕
本発明を適用した第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態における容器1及びそれに接続されるコネクタ100を概略的に示した断面図である。
【0013】
この容器1においては、容器本体2が有底筒状に設けられている。具体的には、容器本体2は、中空を有するとともに筒状に形成された側壁部3と、側壁部3の一端部を閉塞した底板部4と、側壁部3の他端部に設けられた天板部5と、を有する。側壁部3、底板部4及び天板部5が一体を成し、容器本体2が構成されている。容器本体2はプラスチック、セラミック、ガラス又は金属からなり、剛性又は準剛性を有する。ここで、剛性又は準剛性とは、内容物によって変形しない、又は内容物の形をとらないことをいう。
【0014】
底板部4には通気口6が形成されている。通気口6が底板部4を貫通し、容器本体2の内外が通気口6によって通じている。通気口6には逆止弁7が設けられ、容器本体2内から容器本体2の外への流体の流れが逆止弁7によって阻止されている。容器本体2内の圧力が外の環境気圧に対して負圧となった場合には逆止弁7が開き、そうでない場合には逆止弁7が閉じる。例えば、逆止弁7は、弾性を有する材料をダックビル状に形成してなるダックビル型一方向弁であって、そのダックビル状の先端を容器本体2の内側に向けた状態で通気口6を塞ぐよう設けられている。
【0015】
この容器本体2には、コネクタ100に接続可能な内容物注出構造10が設けられている。そして、コネクタ100と、それに接続される内容物注出構造10とを有する構造が、接続構造である。
【0016】
内容物注出構造10は、天板部5に設けられた注出管11と、注出管11内に収容された可動栓12と、注出管11内に収容された弾性部材13と、を有する。
【0017】
注出管11が、天板部5の中央部において容器本体2の外に向けて突出した状態に設けられている。この注出管11が内部空間を有するハウジングに相当し、注出管11の先端が開口して注出口15が形成され、注出管11の他端も開口して注出管11の中空が容器本体2の中空に通じている。注出管11の内壁であってその容器本体2寄りの部分には、受け部14が凸設されている。受け部14は、例えばリング状に設けられている。注出管11の内壁であってその注出口15寄りの部分には、ストッパ16が凸設されている。
【0018】
注出管11、受け部14及びストッパ16は容器本体2と一体を成し、更に具体的には容器本体2と一体に成型されたものである。注出管11、受け部14及びストッパ16も容器本体2と同様に剛性又は準剛性を有する。
【0019】
可動栓12はストッパ16と受け部14との間において注出管11内に差し込まれている。この可動栓12は、注出管11を閉塞した状態で注出管11の延びる方向に摺動可能に設けられている。可動栓12は、注出管11の内壁と密接に接しており、ストッパ16と受け部14との間のいずれの位置にあっても可動栓12と注出管11の内壁との間から内容物20が漏洩することはない。
【0020】
可動栓12はゴム等の弾性材料からなる。可動栓12には切り込み17が形成されている。この切り込み17が注出管11の注出口15側から付け根部分側にかけて可動栓12を貫通し、切り込み17が注出管11の中心線に重なっている。可動栓12が注出管11に嵌め込まれた状態では、この切り込み17が可動栓12の弾性力によって閉じているので切り込み17から内容物20が漏洩することはない。なお、可動栓12は、差込部102が最初に差し込むまで切り込み17が可動栓12を貫通していない状態で、差込部102が差し込むことによって初めて貫通する構造であってもよい。
【0021】
可動栓12と受け部14との間に弾性部材13が介在している。弾性部材13の一端が受け部14によって係止され、弾性部材13の他端がストッパ16側に弾性力をもたらしている。このため可動栓12が弾性部材13によって注出口15側へ付勢され、可動栓12がストッパ16に当接することによって可動栓12が止められている。このときのストッパ16側の可動栓12の端部は位置P1に位置している。弾性部材13は、内容物20に対する耐腐食性に優れた巻きバネであって、更に詳しくは圧縮バネである。なお、弾性部材13が引張バネであってもよく、この場合には、図示しないが、弾性部材13の一端がストッパ16に連結され、弾性部材13の他端が可動栓12に連結され、可動栓12が弾性部材13によって注出口15側へ引っ張られた状態となっている。また、弾性部材13は、弾性変形するものであって、弾性変形による弾性力で可動栓12を注出口15側へ付勢するのであれば、巻きバネに限るものでない。
【0022】
容器本体2の内部空間は、仕切部21によって注出管11側の領域と底板部4側の領域とに仕切られている。内容物20は、仕切部21よりも注出管11側の領域に充填されている。内容物20は容器本体2内だけでなく、注出管11内にも充填されている。そのため、内容物20が弾性部材13に接している。内容物20が弾性部材13に接しているから、弾性部材13が内容物20に対して耐性のあるものが望ましい。
【0023】
この容器本体2内に収容された内容物20は流体であって、好ましくは液体である。具体的には、内容物20は、液体燃料(例えば、メタノール)、水、燃料水、インク、化学薬品その他の液体である。内容物20がメタノール又はメタノール水である場合、可動栓12が耐メタノール性のあるフッ素ゴムからなる。
【0024】
仕切部21は内容物20に対して親和性の低い液体、ゾル、ゲルその他の流動性材料であり、更に望ましくは内容物20よりも高粘性であって且つ内容物20に対して不溶性の高粘性液体である。更に、好ましくは、仕切部21は、ずれ速度が増大すると見かけの粘度が減少する性質を有している構造粘性流体(異常粘性流体)がよい。具体的にはポリブテン、流動パラフィン、スピンドル油、その他の鉱油類、ジメチルシリコン油、メチルフェニルシリコン油、その他のシリコン油類、これらの組み合わせを仕切部21として用いることができる。
【0025】
仕切部21は、内容物20の末端と接するとともに側壁部3の内壁と内壁全周にわたって接することによって内容物20を仕切っている。容器本体2内の内容物20の量が減って内容物20の末端が移動すると、内容物20との間の負圧によって内容物20の末端とともに移動するため、常時内容物20の末端に位置している。このため、仕切部21で仕切られた空間によって内容物20が密閉されているから、仕切部21の位置が内容物20の充填量に応じたものとなる。即ち、内容物20の充填量がより少ないほど、仕切部21の位置が注出口15により近い。
【0026】
コネクタ100について説明する。
コネクタ100は、ベース101と、ベース101に対して立てた状態に設けられた棒状の差込部102と、差込部102を包囲するようベース101に対して立てた状態に設けられた管部103と、を有する。
【0027】
差込部102は管状に形成されているか、又は液体を吸収する吸液棒である。差込部102が吸液棒である場合、差込部102は繊維材料、不織布、海綿体又はスポンジを棒状に固めたものであったり、セラミック多孔質体、金属多孔質体その他の多孔質体を棒状に形成したものであったりする。容器1がコネクタ100に接続される場合、差込部102が切り込み17に差し込まれる。
【0028】
差込部102が管部103内にある。ベース101を基準とした管部103の先端まで長さH1が差込部102の先端までの長さH2よりも短く、管部103の先端部104が差込部102の基端と先端との間において差込部102の周囲に設けられている。
【0029】
管部103の径は、注出管11の注出口15の最短内径(ストッパ16の位置における注出管11の内径)以下である。また、差込部102の長さH2は、管部103の長さH1と可動栓12の注出口15側の端面から反対側の端面までの長さH4との和より長い。また、管部103の長さH1は、注出管11の先端面からストッパ16で可動栓12が受けられる位置までの長さH3より長い。
【0030】
次に、コネクタ100と容器1の接続方法について説明する。
オペレータが注出管11の注出口15を差込部102の先端に向け、差込部102の先端を切り込み17に差し込む。更に、オペレータが差込部102を切り込み17に差し込んでいくと、差込部102の先端が切り込み17から突き出て、注出管11内の内容物20に接する。更に、オペレータが差込部102を切り込み17に差し込んでいくと、管部103が注出口15に入り込み、管部103の先端部104が可動栓12に当接する。管部103の先端部104が可動栓12に当接するまでは、弾性部材13の弾性力によって可動栓12は、ストッパ16側に位置している。
【0031】
更に、オペレータが管部103を注出管11に差し込んでいくと、図2に示すように、管部103の先端部104が押込部となって、可動栓12が先端部104によって押し込まれ、弾性部材13が圧縮され、ストッパ16側の可動栓12の端部は、位置P1から、位置P1より受け部14側の位置する位置P2に移動する。このとき、仕切部21には瞬間的に応力がかかるが仕切部21は粘度が高いため仕切られている空間を広げる方向に移動することはない。そうすると、可動栓12によって内容物20が充填されている仕切部21で仕切られた空間が縮小して注出管11内の内容物20が圧縮されるから、内容物20が低圧側の差込部102を通って注出される。したがって、差込部102に注入される内容物20の量は、注出管11内における位置P1と位置P2との間の空間の容積にほぼ等しい。
ここで、差込部102は、図示しない電気浸透流ポンプ等のポンプと連通管を介して連通している。また、注出管11内における位置P1と位置P2との間の空間の容積は、差込部102からポンプにいたる空間の容積、つまり、差込部102の管内の空間と連通管内の空間の各容積の和より大きくなるように設定されている。したがって、可動栓12が位置P2まで移動して排出された内容物20は確実にポンプに到達することができる。ただし、位置P1と位置P2との間の空間の容積は、差込部102からポンプにいたる空間の容積と、ポンプからポンプに連通する気化器502(図5参照)に至る流路内の容積の和より小さいので、ポンプを駆動することなしに内容物20が気化器502に到達することはない。
【0032】
容器1がコネクタ100に接続された状態にあっては、容器本体2及び注出管11内の内容物20がポンプによって差込部102を通って注出される。内容物20の減少に伴って仕切部21が天板部5に向かって移動し、内容物20が密閉された状態が保たれる。また、仕切部21が天板部5に向かって移動していくに際しては、仕切部21と通気口6との間の空間が拡張し負圧が生じることによって逆止弁7が開いて、外部の空気が通気口6を通って容器本体2内に流入し、仕切部21よりも底板部4側の領域の圧力がほぼ環境気圧に保たれる。
【0033】
オペレータが管部103を注出管11から引き抜くと、弾性部材13の付勢力によって可動栓12が移動し、可動栓12がストッパ16に当接して止まる。そして、オペレータが差込部102を切り込み17から引き抜くと、可動栓12が元に復元して、切り込み17が塞がれる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、内容物20が予め加圧されていなくとも、可動栓12が管部103の先端部104によって弾性部材13の付勢力に抗して押されると、注出管11内の内容物20が加圧され、内容物が切り込み17に挿入された差込部102を通って注出される。これは、ステム弁ではなくゴム弾性体の可動栓12が用いられ、可動栓12に切り込み17が形成されているためである。特に、本実施形態においては、内容物20が予め加圧されていると、可動栓12が押し込まれずとも、内容物20が切り込み17を通って漏れてしまうおそれもあるので、内容物20が加圧されていないことが好ましい。
また、内容物20が加圧されていないから、容器本体2又は注出管11の耐圧性が低くても済む。そうすると、容器本体2又は注出管11の肉厚を薄くすることができ、この容器1は小型な装置にも応用しやすい。
また、容器本体2が剛性又は準剛性であり、仕切部21によって区切られた2つの領域のうち一方に内容物20が充填されているから、可動栓12が押し付けられることで、内容物が確実に注出される。
【0035】
なお、注出管11が容器本体2の外側に設けられているが、容器本体2の内側に設けられていてもよい。即ち、注出管11が天板部5の内面から容器本体2内に突出し、注出管11の注出口15が天板部5の外面において開口していてもよい。
【0036】
〔第2の実施の形態〕
本発明を適用した第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態における容器1A及びそれに接続されるコネクタ100Aを概略的に示した断面図である。なお、第2実施形態の各部と、それに対応する第1実施形態の部分とに対して同一の符号を付す。
【0037】
第1実施形態の容器1においては容器本体2が剛性又は準剛性であったが、第2実施形態においては容器本体2が可撓性である。ここで、可撓性とは、内容物によって変形し、又は内容物の形をとることをいう。
【0038】
容器本体2内および注出管11の内部には内容物20が密閉されている。容器本体2には出口8が形成されて、この出口8が注出管11の中空に通じている。なお、第1実施形態に設けられていた逆止弁7及び通気口6がこの容器本体2に設けられていない。
【0039】
容器1Aに設けられた内容物注出構造10Aにあっては、注出管11内に逆止弁30が設けられている。具体的には、注出管11の注出口15とは反対側の第2の開口18及び出口8に逆止弁30が嵌め込まれている。逆止弁30は、容器本体2内から注出管11内への内容物20の流れを許容し、その逆の流れを阻止するよう構成されている。即ち、注出管11内の圧力が容器本体2内の圧力より高い場合には、逆止弁30が閉じ、注出管11内の圧力が容器本体2内の圧力より低い場合には、逆止弁30が開く。例えば、逆止弁30は、弾性を有する材料をダックビル状に形成してなるダックビル型一方向弁であって、そのダックビル状の先端を注出口15に向けた状態で注出管11内に設けられている。なお、逆止弁30の設置位置は、可動栓12よりも第2の開口18寄りである。
【0040】
以上に説明したことを除いて、第2実施形態の容器1Aの各部と、それに対応する第1実施形態の容器1の部分とは同様に設けられている。また、第2実施形態のコネクタ100Aは第1実施形態のコネクタ100と同様に設けられている。
【0041】
オペレータが差込部102の先端を切り込み17に差し込んで差込部102の先端を切り込み17から突き出し、管部103の先端部104で可動栓12を押し込む。そうすると、注出管11内の内容物20が差込部102を通って注出される。この際、注出管11内の圧力が容器本体2内の圧力よりも高くなるから、逆止弁30が閉じ、注出管11内の内容物20が容器本体2内に流れ込まれない。そのため、容器本体2が可撓性であっても、可動栓12が押し込みにともない容器本体2の注出管11内部の圧力が高くなるので注出管11内の内容物20が確実に差込部102を通って注出される。
【0042】
容器1Aがコネクタ100Aに接続された状態にあっては、注出管11内の内容物20がポンプ等によって差込部102を通って注出される。この際、注出管11内の圧力が容器本体2内の圧力よりも低くなるから、逆止弁30が開き、容器本体2内の内容物も差込部102を通って注出される。
【0043】
オペレータが管部103を注出管11から引き抜くと、可動栓12が弾性部材13の付勢力によって注出口15に向かって移動し、可動栓12が元に復元して、切り込み17が塞がれる。
【0044】
〔第3の実施の形態〕
本発明を適用した第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態における容器1B及びそれに接続されるコネクタ100Bを概略的に示した断面図である。なお、第3実施形態の各部と、それに対応する第1実施形態の部分とに対して同一の符号を付す。
【0045】
第3実施形態のコネクタ100Bは、第1実施形態のコネクタ100の構成に加えて、受入管105Bを有する。受入管105Bは、管部103を包囲するようベース101に対して立てた状態に設けられている。管部103及び差込部102が受入管105B内にあり、管部103、差込部102及び受入管105Bが同心となっている。受入管105Bの内径が注出管11の外径に等しいか、注出管11の外径よりも僅かながら大きい。
【0046】
ベース101を基準とした差込部102の先端までの長さH2は、受入管105Bの先端までの長さH5よりも短い。そのため、差込部102の先端が受入管105Bの開口から突き出ておらず、差込部102の先端が受入管105B内にある。そのため、差込部102が保護される。
また、受入管105Bの先端までの長さH5は、差込部102の先端までの長さH2と注出管11の先端面からストッパ16で可動栓12が受けられる位置までの長さH3との差以下である。これにより、差込部102の先端と切り込み17の位置あわせをしやすくなる。
【0047】
受入管105Bの先端部であってその内壁には、フッ素樹脂(例えば、テフロン(登録商標))製又はポリプロピレン製の係止爪106Bが凸設されている。一方、注出管11の基端部であってその外壁には、係止部40Bが凹設されている。係止部40Bは係止爪106Bに対応する位置にあり、注出管11が受入管105Bに挿入された場合に、係止爪106Bが係止部40Bに引っ掛かる。
【0048】
また、注出管11が受入管105Bに挿入されやすいように、注出管11の先端面と周面との間の角部が面取りされ、注出管11の先端部が先細りに設けられている。
【0049】
以上に説明したことを除いて、第3実施形態の容器1Bの各部と、それに対応する第1実施形態の容器1の部分とは同様に設けられているとともに、第3実施形態のコネクタ100Bの各部と、それに対応する第1実施形態のコネクタ100とは同様に設けられている。
【0050】
オペレータが注出管11を受入管105Bに差し込んで、受入管105Bに沿って進ませると、自動的に差込部102の先端が切り込み17に到達し差し込まれる位置に設定してある。このように注出管11を受入管105Bに差し込むだけで、差込部102の位置を切り込み17に位置に合わせることが容易である。更に、オペレータが注出管11を受入管105Bに差し込むことで、差込部102の先端が切り込み17から注出管11内に突き出て、可動栓12が管部103の先端部104によって押し込まれる。そうすると、注出管11内の内容物20が差込部102を通って注出される。そして、注出管11の先端がベース101に当接するまで、注出管11が受入管105Bに差し込まれると、係止爪106Bが係止部40Bに係止する。そのため、弾性部材13の弾性力によって注出管11が受入管105Bから抜けにくくなっている。
【0051】
容器1Bがコネクタ100Bに接続された状態にあっては、注出管11及び容器本体2内の内容物20がポンプ等によって差込部102を通って注出され、抽出された内容物20の量にしたがって仕切部21が注出管11側に移動する。この際、仕切部21と通気口6との間の空間が拡張し負圧が生じることによって逆止弁7が開いて、外部の空気が通気口6を通って容器本体2内に流入し、仕切部21よりも底板部4側の領域の圧力がほぼ環境気圧に保たれる。
【0052】
オペレータが受入管105Bから注出管11を引き抜くと、差込部102が切り込み17から抜け、可動栓12が元に復元して、切り込み17が塞がれ、可動栓12が弾性部材13の付勢力によって注出口15に向かって移動する。
【0053】
なお、第2実施形態のコネクタ100Aが、このコネクタ100Bと同様に、管部103を包囲するようベース101に対して立てた状態に設けられた受入管105Bを有していてもよい。
【0054】
〔応用例〕
容器本体2内の内容物20が液体燃料(例えば、メタノール)と水の混合液である場合に、容器1及びコネクタ100を用いた電子機器について説明する。
【0055】
図5は、電子機器を概略的に示した正面図である。図5に示された電子機器は、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳、携帯無線機その他の携帯電子機器である。
【0056】
電子機器の本体400は、筐体401と、筐体401の正面に設けられた表示部402と、筐体401の正面に設けられた操作部403と、を有する。表示部402は液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイを有し、操作部403は押しスイッチ等を有する。なお、図5において、筐体401の一部を破断して示す。
【0057】
筐体401の側面にコネクタ100が設けられている。そして、コネクタ100のベース101が筐体401に相当し、コネクタ100の差込部102が筐体401の表面に立てた状態に設けられている。なお、第1実施形態のコネクタ100の代わりに、コネクタ100A又はコネクタ100Bが筐体401に設けられていてもよい。また、容器1の代わりに容器1A又は容器1Bを用いてもよい。
【0058】
筐体401内には、ポンプ501、気化器502、反応装置503、エアポンプ508、燃料電池509及び回収装置513が設けられている。
【0059】
反応装置503は、改質器505と、一酸化炭素除去器506と、触媒燃焼器507と、断熱パッケージ504とを備える。改質器505、一酸化炭素除去器506及び触媒燃焼器507は断熱パッケージ504に収容されている。
【0060】
燃料電池509は、アノード510と、カソード512と、これらの間に挟まれた電解質膜511とを有する。
【0061】
差込部102がポンプ501に通じ、ポンプ501の下流に気化器502が設けられている。ポンプ501は、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、回転ポンプその他のポンプである。
【0062】
上述のように、容器1がコネクタ100に接続されることで、内容物注出構造10の注出管11内にある内容物20が注出され、内容物20がポンプ501内部まで充填される。ポンプ501が電気浸透流ポンプのように自給機能を有しない場合でも、つまりポンプ501が動作しても、容器1から内容物を吸引することができない場合でも、容器1の内容物注出構造10によって、容器1内の内容物20をポンプ501まで充填することができる。そのため、ポンプ501を正常に動作させることができる。
【0063】
ここで、内容物20がポンプ501内部に充填されるように、差込部102の先端からポンプ501までの経路の容積をQ1(m3)としたら、Q1≦S×Lであることが好ましい。ここで、S(m2)は可動栓12の断面積であり、L(m)は可動栓12の移動距離である。具体的には、L=H1−H3である。また、ポンプ501が駆動していない状態で勝手に内容物20が気化器502よりも下流に注入されないように、差込部102の先端から気化器502までの経路の容積をQ2(m3)としたら、S×L≦Q2であることが好ましい。このように設定することで、ポンプ501の駆動初期時においても定量的に気化器502に内容物20を供給するので気化不良が起きることを防止できる。
【0064】
気化器502が動作した状態で、ポンプ501が作動することで、容器本体2内の燃料と水の混合液(内容物20)が気化器502に送液される。また、エアポンプ508が作動することで、外部の空気が一酸化炭素除去器506、触媒燃焼器507及びカソード512に送られる。
【0065】
気化器502はヒータ等を有し、ヒータで液体を蒸発させるよう構成されている。気化器502で気化した燃料と水の混合気が改質器505に送られる。改質器505では、燃料と水から水素等が触媒により生成される。燃料がメタノールである場合、改質器505では次式(1)に示すような改質反応が起こるとともに、次式(2)に示すような副反応が起こって一酸化炭素が微量に生成される。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
2+CO2→H2O+CO …(2)
【0066】
改質器505で生成された生成物が一酸化炭素除去器506に送出される。一酸化炭素除去器506は、改質器505で生成された生成物のうち一酸化炭素を触媒により優先的に酸化させ(式(3)参照)、一酸化炭素を除去するものである。
2CO+O2→2CO2 …(3)
【0067】
一酸化炭素除去器506を経て得られた生成物が燃料電池509のアノード510に供給される。燃料電池509のアノード510では、一酸化炭素除去器506から送出された生成物中の水素による次式(4)のような反応が起こり、生成した水素イオンが電解質膜を透過して酸素極に到達する。
2→2H++2e- …(4)
一方、カソード512では、電解質膜を透過した水素イオンと、空気中の酸素と、電子とにより、次式(5)に示すように水が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O …(5)
以上により、燃料電池509にて発電が行われる。燃料電池509で生成された電気は電子機器本体400の各部に供給される。
【0068】
燃料電池509のアノード510ではすべての水素が反応するわけでなく、未反応の水素も存在する。その水素は他の生成物とともに触媒燃焼器507に送られる。
【0069】
触媒燃焼器507は、水素を触媒により燃焼するものである。触媒燃焼器507で水素燃焼が生じ、その燃焼熱は改質器505及び一酸化炭素除去器506の加熱に利用される。
【0070】
触媒燃焼器507を経て得られた生成物が回収装置513に送られる。また、カソード512で生成された生成物(主に水)が回収装置513に送られる。回収装置513は、生成物を自然冷却又は強制冷却して液化し、液体と気体に分離し、液体を回収するとともに気体を放出するよう構成されている。
【0071】
なお、図5においては燃料電池509が固体高分子電解質型燃料電池であるが、固体酸化物電解質膜型燃料電池であってもよい。燃料電池509が固体酸化物電解質膜型燃料電池である場合には、一酸化炭素除去器506が設けられず、改質器505で生成された生成物がアノード510に送られる。
また、図5においては燃料電池509が水素と酸素の電気化学反応により発電するものであるが、燃料電池509が燃料水(例えば、メタノール水)と酸素の電気化学反応により発電するものでもよい。燃料電池509が燃料水と酸素の電気化学反応により発電する場合、気化器502、改質器505及び一酸化炭素除去器506が設けられず、容器1内の内容物20が燃料電池509のアノード510に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態における容器及びそれに接続されるコネクタを示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における容器及びそれに接続されたコネクタを示した斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態における容器及びそれに接続されるコネクタを示した斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態における容器及びそれに接続されたコネクタを示した斜視図である。
【図5】本発明を適用した電子機器を示した概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B 容器
2 容器本体
10、10A 内容物注出構造
12 可動栓
13 弾性部材
15 注出口
17 切り込み
20 内容物
21 仕切部
30 逆止弁
40B 係止部
102 差込部
103 管部
104 先端部
105B 受入管
106B 係止爪
400 電子機器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出口及び前記注出口で開口し、内容物を含む中空を有するハウジングと、
前記ハウジングの中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、前記ハウジングの注出口に対して接離し、前記ハウジングの注出口側から反対側にかけて貫通する切り込みを有する可動栓と、
前記可動栓を前記ハウジングの注出口に向けて付勢する弾性部材と、を備え、
前記可動栓の前記切り込みが開いた状態で前記可動栓が前記弾性部材の付勢に抗して移動することによって前記ハウジング内の前記中空の内部を加圧し前記切り込みから前記ハウジングの前記内容物を注出することを特徴とする内容物注出構造。
【請求項2】
前記可動栓に関して前記ハウジングの注出口の反対側において前記ハウジングの中空に設けられた逆止弁を更に備え、
前記ハウジングが前記注出口と反対側において前記中空に通じた開口を有し、
前記逆止弁が前記ハウジングの中空から前記開口を通って前記ハウジング外への内容物の流れを阻止することを特徴とする請求項1に記載の内容物注出構造。
【請求項3】
棒状の差込部と、
前記差込部の両端の間において前記差込部の周囲に設けられた押込部と、
を有し、
注出口及び前記注出口で開口し、内容物を含む中空を有するハウジングと、前記ハウジングの中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、前記ハウジングの注出口に対して接離し、前記ハウジングの注出口側から反対側にかけて貫通する切り込みを有する可動栓と、前記可動栓を前記ハウジングの注出口に向けて付勢する弾性部材と、を備える内容物注出構造に対して、前記差込部が前記切り込みに差し込まれて前記切り込みが開いた状態で、前記押込部が前記可動栓を前記弾性部材に抗して前記中空の方向に押すことによって、前記内容物注出構造から前記内容物を注出する
ことを特徴とする接続構造。
【請求項4】
前記ハウジングが差し込まれる受入管を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の接続構造。
【請求項5】
前記受入管は、前記受入管に沿って前記受入管に前記ハウジングが差し込まれると、前記差込部が前記切り込みに当接し、前記押込部が前記可動栓に当接するように、前記差込部を包囲するよう設けられていることを特徴とする請求項4に記載の接続構造。
【請求項6】
前記受入管は、前記ハウジングを係止する係止部を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の接続構造。
【請求項7】
請求項3から6の何れか一項に記載の接続構造と、
前記接続構造を介して前記内容物を取り込む電子機器本体と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
内部に内容物を含む容器本体と、
注出口を有するとともに、その注出口で開口してその注出口の反対側で前記容器本体内に通じた中空を有するハウジングと、
前記ハウジングの中空を閉塞するよう前記中空に嵌め込まれ、前記ハウジングの注出口に対して接離し、前記ハウジングの注出口側から反対側にかけて貫通する切り込みを有する可動栓と、
前記可動栓を前記ハウジングの注出口に向けて付勢する弾性部材と、を備え、
前記可動栓の前記切り込みが開いた状態で前記可動栓が前記弾性部材の付勢に抗して移動することによって前記ハウジングを介して前記容器本体の圧力を高めて前記切り込みから前記内容物を注出することを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−23877(P2010−23877A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187398(P2008−187398)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】