説明

内服用錠剤

【課題】アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分を含有し、優れた崩壊性を有する内服用錠剤を提供する。
【解決手段】(A)アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分と、(B)乾燥水酸化アルミニウムゲルと、(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる成分とを含有する混合物からなる薬物層を有することを特徴とする内服用錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、崩壊性に優れる内服用錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭痛を有する者は、解熱鎮痛剤に即効性を期待する。しかしながら、アスピリン、アセトアミノフェン、無水カフェイン、アリルイソプロピルアセチル尿素、イブプロフェン等の一般的によく使用される解熱鎮痛成分には水難溶性のものが多く、固形製剤とした場合、効果の発現が遅れてしまうことが課題であった。
【0003】
固形製剤が薬効を発揮するためには、一般にその中に含まれる有効成分が消化管から吸収される必要があり、その前段階として固形製剤は崩壊し溶解しなければならない。これまでにも、固形製剤の崩壊性を向上させるために様々な試みがなされている。最も一般的に行われているのは、デンプン等の膨潤性物質を崩壊剤として製剤中に配合する方法である。こうした膨潤性物質は、水を含んで膨潤することにより容積を増大させ、固形製剤の内部構造を破壊して崩壊を促進する。このような崩壊剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム等が一般によく用いられている。また、有効成分を含む錠剤の崩壊性を向上させるために、崩壊剤の量を増量する、界面活性剤を用いて固形製剤の水への濡れ性を向上させる技術も知られている。しかしながら、これらの技術では、錠剤中の有効成分量が少なくなるため錠剤が大きくなり、その結果、服用性が低下するといった問題や、錠剤硬度の低下、製造プロセスの複雑化によるコストアップ等の問題が生じることがある。また、上述のような従来技術によって達成される製剤学的崩壊性は未だ十分に満足できるものではなく、より高い固形製剤の製剤学的崩壊性を達成するために、さらなる有用な技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−139168号公報
【特許文献2】特開2008−74790号公報
【特許文献3】特開2001−122769号公報
【特許文献4】特開平5−294829号公報
【特許文献5】特開2002−87965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分は、固形製剤とした場合に崩壊性が特に悪い有効成分である。従って、アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分を含有し、優れた崩壊性を有する内服用錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分と、(B)乾燥水酸化アルミニウムゲルと、(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる成分とを同じ層中で併用することにより、従来では得られなかった崩壊性、保存後における崩壊性を得ることができると共に、かつ輸送、製造、保管に耐えうる錠剤硬度を有する錠剤を確保できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記内服用錠剤を提供する。
[1].(A)アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分と、(B)乾燥水酸化アルミニウムゲルと、(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる成分とを含有する混合物からなる薬物層を有することを特徴とする内服用錠剤。
[2].上記薬物層と、アスピリンを含有するアスピリン含有層とを有することを特徴とする[1]記載の内服用錠剤。
[3].薬物層中において、(C)/(B)で表される(B)成分と(C)成分との質量比が0.05〜2であることを特徴とする[1]又は[2]記載の内服用錠剤。
[4].薬物層中において、((B)+(C))/(A)で表される(A)、(B)及び(C)成分の質量比が0.07〜0.81であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の内服用錠剤。
[5].薬物層中における(A)成分の含有量が、55〜93質量%であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の内服用錠剤。
[6].薬物層中において、(B)/(A)で表される(A)成分と(B)成分との質量比が0.02〜0.8であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の内服用錠剤。
[7].薬物層中において、(A)成分の粒径が500μm以下のものが(A)成分全体に対して90質量%以上であり、かつ(B)成分の粒径が100μm以下のものが(B)成分全体に対して90質量%以上であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の内服用錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分を含有し、優れた崩壊性を有する内服用錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の内服用錠剤は、(A)アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分と、(B)乾燥水酸化アルミニウムゲルと、(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる成分とを含有する混合物からなる薬物層を有する内服用錠剤である。
【0010】
(A)成分
(A)成分は、アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。アセトアミノフェンは解熱鎮痛成分の一つであり、発熱や頭痛等の症状を抑える解熱鎮痛剤の主要な成分の一つとして使われる薬剤である。無水カフェインは鎮痛効果の補助を目的に解熱鎮痛剤や風邪薬に使われる薬剤である。アリルイソプロピルアセチル尿素は催眠・鎮静作用があり、鎮痛効果の補助目的のため解熱鎮痛剤や風邪薬で一般的に使われる薬剤である。アセトアミノフェンは、キャッピング防止の点から、ヒドロキシプロピルセルロース(第15改正日本薬局方に収録)で被覆された被覆アセトアミノフェンが好ましい。
【0011】
(B)成分
(B)成分は乾燥水酸化アルミニウムゲルであり、日局収録品の制酸薬である。乾燥水酸化アルミニウムゲルは、胃のpHをコントロールする制酸薬として公知である。しかしながら、制酸薬である乾燥水酸化アルミニウムゲルが、後述する特定の崩壊剤である(C)成分と併用することにより、アセトアミノフェン、無水カフェイン又はアリルイソプロピルアセチル尿素を有効成分として含有する錠剤(以下(A)成分を含有する錠剤)の特定有効成分の崩壊性向上効果を特異的に有することは、本発明者の新知見である。
【0012】
(C)成分
(C)成分は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる成分であって、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(第15改正日本薬局方に収録、ヒドロキシプロポキシル基5.0〜16.0質量%)、クロスカルメロースナトリウム(第15改正日本薬局方に収録)を用いることにより、本発明の(A)成分を含有する錠剤の崩壊を顕著に向上させることができる。(A)成分を含有する錠剤は、他の崩壊剤では十分な崩壊性が達成できず、(B)成分と(C)成分とを組み合わせることにより、目的とする崩壊性を得ることができる。なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース(第15改正日本薬局方に収録、ヒドロキシプロポキシル基53.4〜77.5質量%)とは区別されるものである。
【0013】
薬物層中の(A)、(B)及び(C)成分の配合比としては、優れた崩壊性を発揮する点から、下記の範囲が好ましい。
(B)成分に対する(C)成分の質量比、つまり(C)/(B)で表される質量比が0.05〜2の範囲が好ましく、0.1〜1の範囲がより好ましい。また、薬物層中における(B)成分と(C)成分との合計含有量は3〜55質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、7〜35質量%が特に好ましい。
【0014】
また、(A)成分に対する(B)成分と(C)成分の和の質量比、つまり、薬物層中の((B)+(C))/(A)で表される質量比が0.07〜0.81であることが好ましく、0.09〜0.48がより好ましい。また、薬物層中における(A)成分の含有量は55〜93質量%が好ましく、67〜91質量%がより好ましい。
【0015】
さらに、(A)成分に対する(B)成分の質量比、つまり、薬物層中の(B)/(A)で表される質量比は、崩壊性の点から、0.02〜0.8が好ましく、0.04〜0.44がより好ましい。
【0016】
本発明で用いる(A)〜(C)成分の粒径は製造性に問題がない範囲で任意に設定できるが、(A)成分の粒径は、500μm以下のものが(A)成分全体に対して90質量%以上、好適には95〜100質量%であり、(B)成分の粒径は、100μm以下のものが(B)成分全体に対して90質量%以上、好適には95〜100質量%であることが好ましい。(A)成分、(B)成分の粒径をこの範囲に設定することで、混合均一性が優れバインディング等の打錠障害のない錠剤を作製することができる。測定に用いる篩いは、目開き850、710、500、355、250、150、100μmのものを用い、筒井理化学機器社製のM−2型を用いて5分間振動して算出する。
【0017】
また、(C)成分の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの粒径が50μm以下の割合が90個数%以上が好ましく、クロスカルメロースナトリウムの粒径が200μm以下の割合が95個数%以上の範囲が好ましい。上限は特に限定されないが、それぞれ100個数%であってもよい。なお、測定はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津社製 SALD−2200)にて測定する。
【0018】
薬物層には、(A)成分の物性、保存安定性を損なわない範囲で任意に添加剤を配合してもよい。添加剤の例としては、結合剤、(C)成分以外の賦形剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)、色素、安定化剤等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて適量を用いることができる。
【0019】
具体的には、結合剤としては、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等を用いることができる。賦形剤としては、乳糖、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース(セオラス等)、粉糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、L−システイン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を用いることができる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
【0020】
本発明の内服用錠剤は、上記(A)、(B)及び(C)成分を含有する混合物からなる薬物層を有するものであり、このような薬物層を有すれば特に限定されず、1層でも多層でもよい。1層の錠剤の場合は薬物層のみであり、薬物層以外に層を有する場合は、2層以上の多層錠剤となる。このように、同じ層に上記(A)、(B)及び(C)成分を含有する混合物とすることにより、目的とする優れた崩壊性を得ることができる。
【0021】
多層錠における薬物層以外の層は、薬物層と組成が異なれば特に限定されない。例えば、上記薬物層と、アスピリンを含有するアスピリン含有層とを有する多層錠とすることができる。アスピリンを配合することによりさらに優れた解熱鎮痛効果が期待できる。また、アスピリンと薬物層とを別層にすることで、アスピリンと、(B)及び(C)成分との接触を避け、安定性を確保できることも期待できる。
【0022】
アスピリンの量は特に限定されないが、錠剤全体に対して40〜60質量%が好ましく、アスピリン含有層全体に対して80〜100質量%が好ましい。
【0023】
アスピリン含有層には、アスピリン層の崩壊性の点から、賦形剤を配合することが好ましい。賦形剤としては、乳糖、コーンスターチ等のスターチ、タルク、結晶セルロース(セオラス等)、粉糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でも、乳糖、スターチ、マンニトールが好ましく、特にスターチが好ましい。賦形剤の含有量は、アスピリン含有層全体に対して1〜30質量%が好ましい。崩壊性に優れた薬物層とアスピリン含有層とを組み合わせることにより、錠剤全体としての崩壊性がよくなり、結果として良好な医薬品としての効果が期待できる。
【0024】
さらに、本発明のアスピリン含有層には、物性、保存安定性、製造性を損なわない範囲で任意に添加剤を配合してもよい。添加剤の例としては、結合剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)、色素、安定化剤等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて適量を用いることができる。具体的には、結合剤としては、澱粉、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等を用いることができる。香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油など)等が挙げられる。甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
【0025】
薬物層及びアスピリン含有層以外の層には、その他の有効成分や、各種添加剤(結合剤、賦形剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料等)、色素、安定化剤等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせ、適量配合することができる。具体例としては、上記薬物層及びアスピリン含有層に記載したものが挙げられる。
【0026】
本発明の錠剤は、例えば、(A)、(B)、(C)及び必要に応じて任意成分を混合し、この混合物を打錠機内に充填し、打錠することにより得ることができる。多層錠の場合は、上記混合物と、別の組成物、アスピリン含有層の場合はアスピリンが配合されたアスピリン含有組成物(粉末)を打錠機内に積層充填して、打錠して多層錠とすることができる。打錠圧は特に限定されず適宜選定される。
【0027】
得られた錠剤は、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理を施してもよい。かかるコーティング剤としては、本発明が目的とする崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも水溶性高分子化合物、可塑剤が好ましい。具体的には、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、トリアセチン等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格((株)薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。コーティング剤の使用量は、錠剤全体に対して0.5〜1.5質量%程度とするとよい。
【0028】
本発明の錠剤は、解熱鎮痛薬や風邪薬として用いることができ、飲みやすさ、有効性発揮の点から、胃の中で崩壊する胃内崩壊性錠剤であることが好ましい。錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から1錠あたりの錠剤重量としては225mg〜700mg程度が適切である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0030】
[実施例1〜28、比較例1〜36]
表1〜7に示す各成分を下記製法に基づいて配合し、表に示す組成のコーティング錠を得た(但し、コーティング剤を除く)。
ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶解し、流動層造粒装置(フロイント社製:SFC−5型)にてアセトアミノフェンに対してヒドロキシプロピルセルロースが2%付着するよう溶解液を噴霧し、造粒した。得られたアセトアミノフェン造粒物(粒径500μm以下の粒子の割合が97.4%以上)を、無水カフェイン、アリルイソプロピルアセチル尿素、乾燥水酸化アルミニウムゲル(粒径100μm以下の粒子の割合が96.4%)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム又はクロスポビドンと共にボーレコンテナミキサー(コトブキ技研工業社製)で20分間混合した。
一次混合後、ステアリン酸マグネシウムを添加し、さらに10分間混合した。得られた混合粉体を、打錠機(菊水製作所製:リブラ)を用いて打錠し素錠を得た。
実施例21,22、比較例29〜32以外は、打錠機内に上記混合粉体とアスピリン・スターチ・ミクスチャーとを積層充填して、打錠し素錠を得た。
得られた素錠を1000gとり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と可塑剤とからなるフィルムコーティング剤(オパドライ03F48936:日本カラコン社製)を水に溶解し、12%の溶液をコーティング液として用い、1錠全体に対して1.0%となるようにコーティング剤を噴霧しコーティング錠を得た。得られたコーティング錠について下記崩壊試験を行なった。
【0031】
[崩壊試験]
第十五正日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ、6錠の崩壊時間を測定し、その平均値を求めた。結果を平均値から下記基準で示す。
<崩壊性基準>
◎:1分未満で崩壊する
○:1分以上3分未満で崩壊する
△:3分以上10分未満で崩壊する
×:10分以上経過しても崩壊しない
【0032】
[粒径の測定方法]
粉体の粒径は、アセトアミノフェン、無水カフェイン、アリルイソプロピルアセチル尿素、乾燥水酸化アルミニウムゲルについては篩い分け法(測定に用いた篩いは目開き850、710、500、355、250、150、100μmのものを用い、筒井理化学機器社製のM−2型を用いて5分間振動して算出した。)により測定し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとクロスカルメロースナトリウムについては、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津社製 SALD−2200)にて測定した。篩い分け法については質量%により割合を算出した。また、レーザー回折法については個数%により割合を算出した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
実施例1,2に示す通り、(A)成分に対し(B)乾燥水酸化アルミニウムゲル、(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はクロスカルメロースナトリウムを配合した場合、薬物層、錠剤全体共に優れた崩壊性を示した。一方、比較例1〜10にあるように、(B),(C)成分を同時に配合しなかった場合は、優れた崩壊性を示さなかった。また比較例11〜28に示すとおり、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤、(C)成分以外の崩壊剤を選択した場合、いずれにおいても優れた崩壊性を示さなかった。
【0037】
なお、本発明で用いた(A)成分の粒径は、500μm以下の割合が97.4質量%、(B)成分の乾燥水酸化アルミニウムゲルの粒径は、100μm以下の割合が96.4質量%、(C)成分の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの粒径は、50μm以下の割合が96.9個数%、クロスカルメロースナトリウムの粒径は、200μm以下の割合が95.0個数%であった。粒径をこの範囲に設定することでキャッピングやバインディング等の打錠障害がない製造性に優れた錠剤を得ることができた。
【0038】
さらに実施例1,2、比較例1〜28で示した錠剤を気温40℃、湿度75%で保存し、60日後の崩壊性を評価したが、比較例1〜28で示した錠剤はさらに崩壊時間が遅延したにもかかわらず、実施例1,2の錠剤は崩壊性にまったく変化はなかった。
【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
実施例3〜20に示す通り、薬物層において、(B)成分に対する(C)成分の比率が0.05〜2であるとき優れた崩壊性を示した。
【0042】
さらに実施例3〜20で示した錠剤を気温40℃、湿度75%で保存し、60日後の崩壊性を評価したが、いずれの錠剤も崩壊性に変化はなかった。
【0043】
【表6】

【0044】
【表7】

【0045】
さらに、実施例21〜28で示した錠剤を気温40℃、湿度75%で保存し、60日後の崩壊性を評価したが、いずれの錠剤も崩壊性に変化はなかった。
【0046】
上記例に使用した原料を下記に示す。
アスピリン・スターチ・ミクスチャー:ローディア社製(Rhodine 2312):アスピリン90質量%、コーンスターチ10質量%
アセトアミノフェン:岩城製薬社製
無水カフェイン:静岡カフェイン工業所製
アリルイソプロピルアセチル尿素:金剛化学社製(アリプロナール)
乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業社製(乾燥水酸化アルミニウムゲルS100)
ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達社製(HPC−L)
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業社製(LH−31)
クロスカルメロースナトリウム:旭化成社製(キッコレートND−2SH)
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業社製
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学社製(ノイシリンUS2)
酸化マグネシウム:富田製薬社製
炭酸マグネシウム:富田製薬社製
カルメロースカルシウム:五徳薬品社製(E.C.G−505)
カルボキシメチルスターチナトリウム:DMV international社製 (Primojel)
クロスポビドン:BASF社製(コリドンCL)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アセトアミノフェン、アリルイソプロピルアセチル尿素及び無水カフェインから選ばれる成分と、(B)乾燥水酸化アルミニウムゲルと、(C)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる成分とを含有する混合物からなる薬物層を有することを特徴とする内服用錠剤。
【請求項2】
上記薬物層と、アスピリンを含有するアスピリン含有層とを有することを特徴とする請求項1記載の内服用錠剤。
【請求項3】
薬物層中において、(C)/(B)で表される(B)成分と(C)成分との質量比が0.05〜2であることを特徴とする請求項1又は2記載の内服用錠剤。
【請求項4】
薬物層中において、((B)+(C))/(A)で表される(A)、(B)及び(C)成分の質量比が0.07〜0.81であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の内服用錠剤。
【請求項5】
薬物層中における(A)成分の含有量が、55〜93質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の内服用錠剤。
【請求項6】
薬物層中において、(B)/(A)で表される(A)成分と(B)成分との質量比が0.02〜0.8であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の内服用錠剤。
【請求項7】
薬物層中において、(A)成分の粒径が500μm以下のものが(A)成分全体に対して90質量%以上であり、かつ(B)成分の粒径が100μm以下のものが(B)成分全体に対して90質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の内服用錠剤。

【公開番号】特開2010−168287(P2010−168287A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9916(P2009−9916)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【特許番号】特許第4329947号(P4329947)
【特許公報発行日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】