説明

内燃機関の制御装置

【課題】自動停止、再始動時において実吸入空気量の変動を抑え、安定した自動停止及び再始動を可能とする。
【解決手段】吸気弁のリフト量を可変する可変バルブ機構と、吸気弁の上流側に設けられ吸気通路の開口面積を可変するスロットル弁と、所定の停止条件の成立時にエンジンを自動停止させる自動停止手段とを備えたエンジンの制御装置において、可変バルブ機構により吸気弁のリフト量が所定量以下でスロットル弁の開度が所定開度より大きい第1吸気制御状態と、吸気弁のリフト量が所定量より大きくスロットル弁の開度が所定開度以下となる第2吸気制御状態とに可変可能であり、所定の停止条件が成立したとき、吸気弁のリフト量が所定量以下の場合にのみ(S30)、エンジンを自動停止する(S50)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変動弁機構を備えた自動停止再始動車両の内燃機関の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走行停止時にエンジン(内燃機関)を自動的に停止して燃費を向上させる自動停止再始動車両が開発されている。自動停止再始動車両は、例えば車速が0、アイドル運転である等の所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止する。また、このエンジンの自動停止後にブレーキ操作解除等の所定の始動条件が成立したときにエンジンを自動的に再始動させる。
【0003】
一方、エンジンの吸気バルブのリフト量を可変させる可変動弁機構を備えたエンジンが開発されている。このような可変動弁機構を備えたエンジンでは、始動性を確保するため、始動時に実圧縮比が比較的高くなるような設定やアイドル時にスロットル弁と連動して吸入空気量を抑え実圧縮比が低くなるような設定に変更できる。
しかしながら、このように実圧縮比が高くなるように設定すると、始動性は高まるがトルク変動が大きくなるので、エンジン停止時及び始動時に振動やスタータの打音が大きくなるといった問題点が発生する。特に、上記のような自動停止再始動車両では、自動停止、再始動時に、乗員に感知されないように振動等を極力抑えることが望ましい。
【0004】
そこで、可変動弁装置付エンジンを備えた自動停止再始動車両において、自動停止あるいは再始動時には、実圧縮比が抑えられるように可変動弁機構を制御する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−34913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、自動停止あるいは再始動時に、リフト量を増加させ吸気弁の閉弁時期を圧縮行程内で遅角させることで、実圧縮比を低下させている。
しかしながら、自動停止中はスロットル弁が閉じ側に設定されていたとしても時間が経過するに連れてスロットル弁と吸気弁との間の負圧が変化することになる。この状態で再始動した場合、リフト量が増加側に設定されているため、吸入空気量はそのときの負圧に大きく左右され、エンジンの回転速度やトルクが依然として安定せず、乗員に違和感を与える虞がある。
【0007】
本願はこのような問題に鑑み発明されたものであって、自動停止、再始動時において実吸入空気量の変動を抑え、安定した自動停止及び再始動を可能とする内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、吸気弁のリフト量を可変する可変動弁機構と、吸気弁の上流側に設けられ吸気通路の開口面積を可変するスロットル弁と、内燃機関を自動停止する自動停止手段とを備えた内燃機関の制御装置において、所定の運転状態に対し少なくとも吸気弁のリフト量が所定量以下でスロットル弁の開度が所定開度より大きい第1吸気制御状態と、吸気弁のリフト量が所定量より大きくスロットル弁の開度が所定開度以下となる第2吸気制御状態とを有し、予め定められた車両状態となる内燃機関の停止条件が成立したとき、吸気弁のリフト量が所定量以下の場合に自動停止手段により内燃機関を自動停止することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1において、ブレーキブースタの負圧を検出する負圧検出手段を備え、停止条件が成立し、且つ吸気弁のリフト量が所定量以下のとき、負圧検出手段にて検出した負圧が第1の所定圧以下の場合には、負圧が第1の所定値を超えるまで自動停止手段による内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2において、停止条件が成立し、吸気弁のリフト量が所定量以下で、且つ負圧検出手段にて検出した負圧が第1の所定圧以下の場合には、吸気弁とスロットル弁を第2吸気制御状態とし、負圧検出手段の検出値が第1の所定圧を超えたとき吸気弁とスロットル弁を第1吸気制御状態することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかにおいて、可変動弁機構は、吸気弁の閉弁時期が第1吸気制御状態では吸気下死点より進角され、かつ、第2吸気制御状態の閉弁時期よりも進角となることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかにおいて、負圧検出手段の検出値が第2の所定圧を超えたとき内燃機関を再始動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の内燃機関の制御装置によれば、自動停止及び再始動時に実圧縮比が低下するので、トルク変動を抑え、振動を抑えることができる。特に、リフト量を低下させることで実圧縮比を低下させ、リフト量が所定量以下の場合に自動停止を許可するので、自動停止時に吸気マニホールド内の圧力の変動を抑え、吸入空気量の変動を抑制することができる。したがって、エンジンの回転速度やトルクがより安定して、乗員に違和感のない安定した自動停止及び再始動を可能にすることができる。
【0012】
本発明の請求項2の内燃機関の制御装置によれば、ブレーキブースタ内の負圧が第1の所定圧を超えるまで自動停止手段による自動停止が禁止されるので、自動停止時にリフト量が低下することでブレーキブースタ内の負圧が低下した場合には自動停止が行われず、自動停止時の制動力不足を回避することができる。
本発明の請求項3の内燃機関の制御装置によれば、ブレーキブースタ内の負圧が第1の所定圧以下の場合には、第2吸気制御状態として吸気弁のリフト量を所定量より大きくかつスロットル弁の開度を所定開度以下にするので、ブレーキブースタ内の負圧を積極的に増加させることができる。したがって、自動停止の禁止を迅速に解除することができ、自動停止の頻度を増加させ、燃費低減効果を向上させることができる。
【0013】
本発明の請求項4の内燃機関の制御装置によれば、自動停止が許可される第1吸気制御状態では、吸気弁の閉弁時期が吸気下死点より進角するので、実圧縮比が低くかつポンピングロスが少なくなり、自動停止による燃費低減効果をより向上させることができる。
本発明の請求項5の内燃機関の制御装置によれば、内燃機関の自動停止時にブレーキブースタ内の負圧が第2の所定圧よりも小さくなった場合に、内燃機関を再始動することで、例えば運転者のブレーキ操作によりブレーキブースタ内のの負圧が不足したとしても負圧を積極的に増加させることができる。したがって、ブレーキ性能を維持することが可能となるので、安全性が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るエンジン制御系の概略構成図である。
【図2】本実施形態のエンジンのバルブタイミングを示すグラフである。
【図3】第1吸気制御状態でブレーキ負圧が十分に得られるエンジンでの、自動停止の可否判定の制御要領を示すフローチャートである。
【図4】第1吸気制御状態でブレーキ負圧が十分に得られないエンジンでの、自動停止の可否判定の制御要領を示すフローチャートである。
【図5】エンジンの自動停止中にブレーキ負圧検出値に従い再始動の可否判定の制御要領を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る自動停止再始動車両のエンジン制御系の概略構成図である。
本実施形態の自動停止再始動車両は、エンジン1に可変バルブリフト機構2(可変動弁機構)を備えている。
図1に示すように、エンジン1は、1本のカムシャフト10に吸気カム11及び排気カム12を備えた所謂SOHC式エンジンである。可変バルブリフト機構2の構造は、例えば特開平2005−299536号公報に記載されており、詳細な構造については省略するが、カムシャフト10、及び吸気バルブ13を駆動するロッカアーム14の他に、センタロッカアーム15及びスイングカム16を備えている。そして、吸気カム11の回転によりロッカアーム14を上下動する際に、モータ17によりロッカシャフト18を回転駆動してセンタロッカアーム14の支点位置を移動させることで、吸気バルブ13の最大リフト量を変化させつつ、最大リフト量から最小リフト量まで、開弁時期を略一定に保ちながらリフト量の減少に伴って一義的に吸気バルブ13の閉弁時期を進角させることが可能となっている。また、モータ17には、その回転角を検出する回転角センサ20が設けられている。
【0016】
エンジン1の吸気通路21には、吸気流量を制御するスロットル弁22が設けられている。スロットル弁22は、吸気マニホールド23の上流に配置され、ECU30によりアクセル開度に基づいて制御される。
また、車両には、ブレーキペダル24の踏力を倍増してブレーキシリンダ25を作動させるブレーキブースタ26が設けられている。ブレーキブースタ26は、負圧通路27を介して吸気マニホールド23と接続されている。負圧回路27には、吸気通路21からブレーキブースタ26への逆流を防止するチェックバルブ28が介装されている。ブレーキブースタ28は、負圧通路27を介してエンジン作動時に吸気通路21内の負圧を利用して内部に負圧を発生させる。ブレーキブースタ28には、その内部の負圧を検出する負圧センサ29(負圧検出手段)が設けられている。
【0017】
ECU30は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)を含んで構成されており、スロットル弁22等のエンジン1全般の制御を行う。特に、ECU30は、キースイッチ31の操作情報、モータ17の回転角や、その他アイドルスイッチ、ブレーキスイッチ、車速、エンジン回転速度等の各種エンジン運転情報を入力し、可変バルブリフト機構制御機能としてモータ17の作動制御を行うとともに、自動停止再始動制御機能としてスタータモータ32、燃料噴射弁33、点火装置34の作動を制御する。
【0018】
詳しくは、ECU30は、自動停止再始動制御機能として、所定の停止条件(アイドルストップ条件)、例えばキースイッチ31、ブレーキスイッチがオン、車速が所定車速以下、エンジン回転速度が所定回転数以下ならびにアイドル状態である場合に、燃料噴射弁33からの燃料噴射を停止してエンジン1の運転を自動停止させる(自動停止手段)。また、ECU30は、当該自動停止(アイドルストップ)時に、所定の始動条件、例えばブレーキ操作解除によりブレーキスイッチがオフとなった場合に、スタータモータ32及び点火装置34を作動させてエンジン1を再始動させる。
【0019】
図2は、本実施形態のエンジン1のバルブタイミングを示すグラフである。詳しくは、図2は、吸気バルブ13及び排気バルブのリフト量の推移を示している。
図2に記載のように、上記可変バルブリフト機構2を備えたエンジン1では、吸気バルブ13のバルブタイミング(リフト量及び閉弁時期の設定)が、吸気バルブ13の閉弁時期が下死点(BDC)より進角し最小リフト量となる第1吸気制御状態から、吸気バルブ13の閉弁時期が下死点(BDC)より遅角し最大リフト量となる第2吸気制御状態までの間で連続的に可変設定可能である。
【0020】
第1吸気制御状態では、実圧縮比が最も小さくなる。第2吸気制御状態では、吸気バルブ13の閉弁時期が下死点(BDC)付近である状態より実圧縮比は低下するものの、リフト量の増加により第1吸気制御状態よりは実圧縮比は高くなる。
更に、本実施形態では、ECU30は、このような可変バルブリフト機構2の制御とともにスロットル弁22の開度(スロットル開度)を合わせて制御する。特に、第1吸気制御状態においてはスロットル開度を大きくし、第2吸気制御状態においてはスロットル開度を小さくするようにスロットル弁22を制御することで、いずれのリフト量であってもアイドル運転が可能となっている。
【0021】
また、ECU30は、ブレーキブースタ26内の負圧と関連させて、自動停止再始動制御機能における自動停止の可否を判定する。以下、図3及び図4を用いてその詳細を説明する。
自動停止の可否判定は、エンジン1の特性によって異なる制御が行われる。詳しくは、可変バルブリフト機構2によるバルブタイミングの設定、即ち吸気バルブ13のリフト量を第1吸気制御状態に設定したときに、所定の踏力でブレーキ性能を十分に確保できる程度まで、ブレーキブースタ26内の負圧(ブレーキ負圧)が大きく得られるエンジンでは、図3に示す自動停止の可否判定を行う。リフト量を第1吸気制御状態に設定したときに、所定の踏力でブレーキ性能が十分に確保できる程度まで、ブレーキ負圧が大きく得られないエンジンでは、図4に示す自動停止の可否判定を行う。
【0022】
図3は、第1吸気制御状態でブレーキ負圧が十分に得られるエンジンにおける、自動停止の可否判定の制御要領を示すフローチャートである。
ECU30は、キースイッチオン時に図3に示すルーチンを繰り返し行う。
まず、ステップS10では、車両の運転情報より車速が所定値X以下であるか否かを判別する。この所定値Xは、自動停止再始動制御機能による自動停止の条件の1つであって、適宜設定すればよい。車速が所定値X以下である場合には、ステップS20に進む。
【0023】
ステップS20では、アイドル運転状態であるか否かを判別する。アイドル運転状態か否かは、ECU30におけるエンジン1の制御情報から得られる。アイドル運転状態である場合にはステップS30に進む。
ステップS30では、回転角センサ20からモータ17の回転角を入力し、現在の可変バルブリフト機構2にて設定されている吸気バルブ13のリフト量が所定量L以下であるか否かを判別する。この所定量Lは、リフト量が最も小さくなる第1吸気制御状態付近であるか否かを判別可能なように設定すればよい。リフト量が所定量L以下である場合には、ステップS40に進む。
【0024】
ステップS40では、負圧センサ29によりブレーキ負圧を検出し、所定圧Y(第1の所定圧)以上であるか否かを判別する。所定圧Yは、所定の踏力でブレーキ性能が十分に得られる値に設定すればよい。ブレーキ負圧が所定圧Y以上である場合には、ステップS50に進む。
ステップS50では、自動停止再始動制御機能における自動停止制御を実行する。具体的には、燃料噴射弁33からの燃料噴射を停止させて、エンジン1を停止させる。そして、本ルーチンをリターンする。
【0025】
ステップS40において、ブレーキ負圧が所定圧Y未満であると判定された場合には、ステップS60に進む。
ステップS60では、ブレーキ負圧が所定圧Y以上となるように、エンジン1を一定時間運転させる。そして、ステップS40に戻る。
また、ステップS10において車速が所定値Xより大きいと判定された場合、ステップS20においてアイドル運転状態ではないと判定された場合、またはステップS30においてバルブリフト量の設定が所定量L以下でないと判定された場合には、本ルーチンをリターンする。
【0026】
以上のように本実施形態では、自動停止及び再始動時に吸気バルブ13のリフト量を低下させることで実圧縮比を低下させるので、エンジン1の回転速度やトルクの変動が抑えられる。特に、リフト量を低下させることで実圧縮比を低下させ、リフト量が所定量以下の場合に自動停止を許可するので、自動停止時に吸気マニホールド23内の圧力の変動を抑え、吸入空気量の変動を抑制することができる。したがって、エンジン1の回転速度やトルクが確実に安定して、乗員に違和感のない安定した自動停止及び再始動を可能にすることができる。
【0027】
また、自動停止が許可される第1吸気制御状態付近では、吸気バルブ13の閉弁時期が吸気下死点より進角するので、実圧縮比がより低くかつポンピングロスが少なくなり、自動停止による燃費低減効果をより向上させることができる。
更に、本実施形態では、車速が所定値X以下、及びアイドル運転状態であるといった自動停止条件成立時において、吸気バルブ13のリフト量が所定量L以下の低い設定であってかつブレーキ負圧がY以上である場合にのみ自動停止が許可される。したがって、自動停止時には常にブレーキ負圧が所定圧Y以上となるので、自動停止時においてブレーキの作動を安定化し確実な停車を維持することができる。
【0028】
更に、ブレーキ負圧が所定圧Y未満である場合には、他の自動停止条件が成立していても一定時間エンジン1が継続して運転されるので、ブレーキ負圧が増加する。したがって、ブレーキ負圧不足による自動停止の規制を解消し、自動停止の頻度を増加させることができ、燃費低減効果を高めることができる。
図4は、第1吸気制御状態においてブレーキ負圧を十分に得られないエンジンでの、自動停止の可否判定の制御要領を示すフローチャートである。
【0029】
ECU30は、キースイッチオン時に図4に示すルーチンを繰り返し行う。
本ルーチンのステップS10〜S50までの制御は、図3に示すルーチンと同一であるので、説明を省略する。
ステップS40において、ブレーキ負圧が所定圧Y未満であると判定された場合には、ステップS100に進む。
【0030】
ステップS100では、バルブリフトアップ運転でのアイドル運転が可能であるか否かを判定する。詳しくは、吸気バルブ13のリフト量を第2吸気制御状態まで増加させ、これに伴い上記のようにスロットル開度を減少させた状態で、アイドル運転が可能であるか否かを判別する。アイドル運転が可能であれば、ステップS110に進む。
ステップS110では、吸気バルブ13のリフト量を第2吸気制御状態まで増加させ、スロットル弁22の開度を減少させてバルブリフトアップ運転を実施する。そして、ステップS120に進む。
【0031】
ステップS120では、負圧センサ29によりブレーキ負圧を検出し、所定圧Y以上であるか否かを判別する。ブレーキ負圧が所定圧Y以上である場合には、ステップS130に進む。
ステップS130では、吸気バルブ13のリフト量を第1吸気制御状態に設定し、低バルブリフトでのアイドル運転を実施する。そして、ステップS50に進む。
【0032】
また、ステップS10において車速が所定値Xより大きいと判定された場合、ステップS20においてアイドル運転状態ではないと判定された場合、またはステップS30において吸気バルブ13のリフト量の設定が第1吸気制御状態でないと判定された場合、またはステップS100においてバルブリフトアップ運転でのアイドル運転が可能でないと判定された場合には本ルーチンをリターンする。
【0033】
以上のように制御することで、本実施形態では、ブレーキ負圧が所定圧Y未満である場合に、可能であればバルブリフトアップ運転、即ち吸気バルブ13のリフト量を増加させてエンジン1を運転させ、ブレーキ負圧を積極的に増加させる。したがって、ブレーキ負圧を迅速に所定圧Y以上に上昇させて自動停止を可能とすることで、自動停止時間を多く確保し、燃費低減効果をより高めることができる。
【0034】
図5は、アイドルストップ時にブレーキ負圧検出値に従い再始動の可否判定の制御要領を示すフローチャートである。運転者のブレーキペダルの操作や圧力の漏れなどにより、ステップS70において、ブレーキ負圧が所定圧Z(第2の所定圧)より小さい負圧未満に変化したと判定された場合には、ステップS80に進む。
ステップS80では、自動停止再始動制御機能における再始動制御を実行する。具体的には、クランキングを実施し、エンジン1を起動させる。そして、本ルーチンをリターンする。
【0035】
ここで、ステップS70での所定圧Zを前述の所定圧Yと同じ値としてもよいが、所定圧Yよりも小さい負圧に設定することで、不必要な再始動や停止の回数を軽減させて、燃費低減効果をより高めることができる。また、始動に関る部品の耐久性の向上や運転者への違和感の軽減ともなる。
また、パーキングブレーキ作動時は再始動しない設定にすることもできる。
【0036】
なお、以上の実施形態では、ステップS30において、吸気バルブ13のリフト量が第1吸気制御状態付近であるか否かを判別しているが、これは、アイドル時のリフト量は一定の値に設定されているのではなく、燃焼安定性を考慮して微調整されるので、気圧等の運転環境によってはアイドル時にリフト量が若干変動する場合があるためである。このように閾値である所定量Lを最小値ではなくその付近として範囲を持たせることで、安定したアイドル運転を維持しつつ自動停止の頻度を増加させることができ、更なる燃費向上を図ることができる。また、本実施形態では、リフト量を回転角センサ20により求めているが、モータ17の制御値から求めてもよい。更には、モータ17の制御値だけでなく、マニホールド圧力、スロットル開度を総合して判定するとよい。このようにすれば、上記のようにアイドル時にリフト量を微調整する場合でも、モータ17の制御値が求められた時点で微調整する前にリフト量を推定でき、ステップS30における判定を迅速にして、自動停止を許可するタイミングを早め、更なる自動停止時間の確保を図ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
2 可変バルブリフト機構
13 吸気バルブ
22 スロットル弁
26 ブレーキブースタ
29 負圧センサ
30 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁のリフト量を可変する可変動弁機構と、前記吸気弁の上流側に設けられ吸気通路の開口面積を可変するスロットル弁と、内燃機関を自動停止する自動停止手段とを備えた内燃機関の制御装置において、
所定の運転状態に対し少なくとも前記吸気弁のリフト量が所定量以下で前記スロットル弁の開度が所定開度より大きい第1吸気制御状態と、前記吸気弁のリフト量が前記所定量より大きく前記スロットル弁の開度が前記所定開度以下となる第2吸気制御状態とを有し、
予め定められた車両状態となる前記内燃機関の停止条件が成立したとき、前記吸気弁のリフト量が所定量以下の場合に前記自動停止手段により内燃機関を自動停止することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
ブレーキブースタの負圧を検出する負圧検出手段を備え、
前記停止条件が成立し、且つ前記吸気弁のリフト量が所定量以下のとき、前記負圧検出手段にて検出した負圧が第1の所定圧以下の場合には、前記負圧が第1の所定値を超えるまで前記自動停止手段による内燃機関の自動停止を禁止することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記停止条件が成立し、前記吸気弁のリフト量が所定量以下で、且つ前記負圧検出手段にて検出した負圧が所定圧以下の場合には、前記吸気弁と前記スロットル弁を前記第2吸気制御状態とし、前記負圧検出手段の検出値が第1の所定圧を超えたとき前記吸気弁と前記スロットル弁を前記第1吸気制御状態することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記可変動弁機構は、吸気弁の閉弁時期が前記第1吸気制御状態では吸気下死点より進角され、かつ、前記第2吸気制御状態の閉弁時期よりも進角となることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の自動停止中に前記負圧検出手段にて検出した負圧が第2の所定圧以下になった場合、前記内燃機関を始動することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163320(P2011−163320A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30340(P2010−30340)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】