説明

内燃機関の制御装置

【課題】潤滑油の蒸発を抑制しながら、排気を吸気側へ再循環させる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】ECUは、多気筒エンジンに対して一部の気筒を休止させる減筒運転を行う。ECUは、休止気筒のピストンが下動する吸気行程において、吸気バルブの開弁と、排気バルブの開弁とを行い、休止気筒の燃焼室内において新気と排気とを混合した気筒内混合吸気を生成し、休止気筒のピストンが上動する排気行程において、吸気バルブの開弁のみを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置、特に減筒運転時の休止気筒における吸気バルブの開閉と排気バルブの開閉とを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の気筒を備えた内燃機関においては、全気筒において燃焼を行う全筒運転と、一部の気筒においてのみ燃焼を行う減筒運転とを行うものがある。そして、内燃機関は、燃焼を停止した休止気筒において、吸気行程で吸気バルブを閉弁するとともに排気バルブを開弁し、排気行程で吸気バルブを開弁するとともに排気バルブを閉弁することで、排気マニホールドから吸気マニホールドへ排気を供給することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−144634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような内燃機関では、燃焼気筒の排気が休止気筒に供給されるため、燃焼直後における高温の排気が休止気筒内に取り込まれる。その結果、燃料が燃焼されていないにもかかわらず、休止気筒内において潤滑油の蒸発が進むおそれがある。そこで、潤滑油の蒸発を抑制しながら、排気を吸気側へ再循環させる内燃機関の制御装置が求められている。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑油の蒸発を抑制しながら、排気を吸気側へ再循環させる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
本発明は、多気筒内燃機関に対して一部の気筒を休止させる減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、休止気筒のピストンが下動する際に、前記休止気筒の吸気バルブの開弁と、前記休止気筒の排気バルブの開弁とを行い、前記休止気筒のピストンが上動する際に、前記吸気バルブの開弁のみを行うことをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、減筒運転時に休止気筒のピストンが下動した際に、吸気バルブと排気バルブとが開弁するため、休止気筒内には、排気だけでなく新気も取り込まれる。そして、燃焼直後の高温の排気と、新気とが休止気筒に導入されるため、燃焼直後の高温の排気のみが休止気筒内に導入されることがない。よって、燃焼直後の高温の排気のみが休止気筒に導入される場合と比べて、休止気筒内に取り込まれた気体の温度が下げられ、休止気筒内の潤滑油の蒸発を抑制できるとともに、休止気筒を介して吸気側に排気を再循環させることが可能となる。
【0008】
本発明は、前記休止気筒のピストンが下動する際の前記吸気バルブの開き量と、前記休止気筒のピストンが下動する際の前記排気バルブの開き量とを変更することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、吸気バルブの開き量と排気バルブの開き量とが変更されることで、休止気筒内における排気の割合が変更される。このため、燃焼している気筒に吸気される混合吸気における排気の割合を変更することが可能である。
【0010】
本発明は、前記休止気筒のピストンが下動する際に、前記吸気バルブを閉弁した後に、前記排気バルブを開弁することをその要旨としている。
同構成によれば、休止気筒内に新気が吸気された後に、該休止気筒内に排気が吸気されるので、休止気筒内に温度の低い新気がある状態で排気が加えられることとなる。このため、休止気筒内に排気がある状態で新気が加えられる場合と比べて、休止気筒内における気体の温度が高くなることを更に抑制することが可能となる。
【0011】
本発明は、前記休止気筒のピストンが下動する際に、前記吸気バルブの開弁と前記排気バルブの開弁とを行うことで、新気と排気とが混合した気筒内混合吸気を生成し、前記休止気筒のピストンの上動によって前記気筒内混合吸気を圧縮し、前記休止気筒のピストンの下動によって前記気筒内混合吸気を膨張し、前記休止気筒のピストンが上動する際に、前記吸気バルブの開弁のみを行うことをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、休止気筒内に吸気された新気と排気とからなる気筒内混合吸気を圧縮して膨張させた後に吸気側へ排出するので、新気と排気とが十分に撹拌された状態で吸気通路に供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、潤滑油の蒸発を抑制しながら、排気を吸気側へ再循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ピストン下動時のバルブ状態及び内燃機関の概略構成を示すブロック図。
【図2】ピストン下動時のバルブ状態及び内燃機関の概略構成を示すブロック図。
【図3】ピストン上動時のバルブ状態及び内燃機関の概略構成を示すブロック図。
【図4】通常運転時及び燃焼停止運転時のバルブタイミングを示す図。
【図5】減筒運転時の内燃機関の吸気及び排気の流れを示す図。
【図6】通常運転時及び減筒運転時の各気筒の動作行程を示す図。
【図7】通常運転時及び燃焼停止運転時のバルブタイミングを示す図。
【図8】減筒運転時の内燃機関の吸気及び排気の流れを示す図。
【図9】通常運転時及び減筒運転時の各気筒の動作行程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明をディーゼルエンジンの制御装置に具体化した第1の実施形態について図1〜図6を参照して説明する。なお、本実施形態におけるディーゼルエンジンは、直列4気筒のディーゼルエンジンであって、図1〜図3では、ディーゼルエンジンにおける4つの気筒のうち1つの気筒における駆動の態様を例示する。
【0016】
図1に示されるように、気筒としてのシリンダ1が形成されたシリンダブロック2には、シリンダヘッド3が搭載されている。該シリンダヘッド3には、シリンダ1に連通する吸気通路4と排気通路5とが形成されている。シリンダ1内には、ピストン6がクランク7によって往復動可能に収容され、これらピストン6とシリンダヘッド3とによって燃焼室8が区画されている。
【0017】
吸気通路4を構成する吸気ポート4aには、2つの吸気バルブ11が取り付けられている。また、排気通路5を構成する排気ポート5aには、2つの排気バルブ12が取り付けられている。吸気バルブ11は、該吸気バルブ11を駆動する吸気バルブ駆動装置13に連結されている。また、排気バルブ12は、該排気バルブ12を駆動する排気バルブ駆動装置14に連結されている。なお、吸気バルブ駆動装置13が吸気バルブ11を駆動しない状態では、図示しないクランクシャフトに連動して回動する吸気カムによって、吸気バルブ11は駆動される。また、排気バルブ駆動装置14が排気バルブ12を駆動しない状態では、図示しないクランクシャフトに連動して回動する排気カムによって排気バルブ12は駆動される。
【0018】
シリンダヘッド3には、燃焼室8内に燃料を噴射するインジェクタ9が取り付けられている。吸気ポート4aには、該吸気ポート4aと他の吸気ポート4aとを連通する吸気マニホールド4bが接続されている。また、排気ポート5aには、該排気ポート5aと他の排気ポート5aとを連通する排気マニホールド5bが接続されている。
【0019】
ディーゼルエンジンに対する各種制御を行う制御装置としてのECU(Engine Control Unit)10は、これらインジェクタ9、吸気バルブ駆動装置13、及び排気バルブ駆動装置14に接続されている。そして、全ての気筒で燃料が燃焼される全筒運転にて、ECU10は、吸気バルブ11と排気バルブ12とが上記各カムによって駆動されるように、吸気バルブ駆動装置13及び排気バルブ駆動装置14による駆動を解除する。これに対し、一部の気筒のみで燃料が燃焼される減筒運転にて、ECU10は、例えば2つのシリンダ1において燃料の噴射を停止する。そして、ECU10は、燃焼が行われていない2つの休止気筒を通じて、排気マニホールド5bから吸気マニホールド4bへ排気を導入し、該排気と吸入空気とを混合する、いわゆる排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)を行う。このとき、ECU10は、各カムが吸気バルブ11と排気バルブ12とを駆動しない位置に各カムをずらし、吸気バルブ駆動装置13及び排気バルブ駆動装置14によって吸気バルブ11と排気バルブ12とを駆動する。
【0020】
次に、減筒運転時の休止気筒に対して上記ECU10が行うバルブの制御について説明する。
図1に示されるように、ピストン6が上死点(TDC:Top Dead Center)付近から下動し始めると、ECU10は、吸気バルブ11を開く。続いて、図2に示されるように、ピストン6が下動している途中で、ECU10は、吸気バルブ11を閉じるとともに排気バルブ12を開く。次いで、ピストン6が下死点(BDC:Bottom Dead Center)付近になると、ECU10は、排気バルブ12を閉じる。そして、図3に示されるように、ピストン6が下死点(BDC)付近から上動し始めると、ECU10は、吸気バルブ11を開き、その後、ピストン6が上死点(TDC)付近まで上動すると、ECU10は、吸気バルブ11を閉じる。
【0021】
次に、上述したECU10によるバルブ制御の態様を各バルブの開き量とクランクアングルとの関係を用いて詳細に説明する。
[通常運転]
まず、全筒運転において通常運転下にある気筒に関し、該気筒におけるバルブ制御の態様を、第1気筒を一例として、それの吸気行程、圧縮行程、膨脹行程、排気行程の順に説明する。なお、これら吸気行程、圧縮行程、膨脹行程、及び排気行程とは、通常運転下の気筒がクランクアングルに応じて行う行程であり、以下、説明の便宜上、燃焼停止運転下の気筒に対しても、同クランクアングルに対応付けられた行程として用いる。
【0022】
図4の上側に示されるように、クランクアングルが略360〜略540degである吸気行程にて、ECU10は、通常運転下の気筒に対し、吸気バルブ11を開き、該気筒の燃焼室8内に燃料が噴射された新気を吸入する。そして、クランクアングルが略540〜720degである圧縮行程にて、ECU10は、吸気バルブ11及び排気バルブ12を閉じ続ける。これにより、燃焼室8内の気体が、それの圧縮により撹拌される。
【0023】
次いで、クランクアングルが0〜略180degである膨張行程にて、ECU10は、ここでも吸気バルブ11及び排気バルブ12を閉じ続ける。これにより、燃焼室8内の気体は、ピストン6の下動によって膨張する。そして、クランクアングルが略180〜略360degである排気行程にて、ECU10は、排気バルブ12を開いて燃焼室8内から気体を排出する。
【0024】
[燃焼停止運転]
次に、減筒運転において燃焼停止運転下にある休止気筒に関し、該休止気筒におけるバルブ制御の態様を、第1気筒を一例として、それの吸気行程、圧縮行程、膨脹行程、排気行程の順に説明する。
【0025】
図4の下側に示されるように、クランクアングルが略360〜略540degであるとき、ECU10は、燃焼停止運転下の休止気筒に対し、まず、通常運転下の吸気行程における吸気バルブ11の開き量よりも少ない開き量で吸気バルブ11を開く。次いで、ECU10は、吸気バルブ11を閉じ、その後、これもまた通常運転下の排気行程における排気バルブの開き量よりも少ない開き量で排気バルブ12を開いて閉じる。これによって、休止気筒における吸気行程では、まず、吸気通路4から燃焼室8内に新気が吸気され、その後、排気通路5から燃焼室8内に排気が吸入される。
【0026】
この際、ECU10は、吸気バルブ11の開き量と排気バルブ12の開き量とを休止気筒の吸気行程で調整することにより、燃焼気筒への吸気に占められる排気の割合を調整することができる。具体的には、ECU10は、燃焼気筒への吸気に占められる排気の割合を高める場合、燃焼気筒の燃焼状態に応じて、休止気筒の吸気行程では、吸気バルブ11の開き量よりも排気バルブ12の開き量を大きくする。なお、開き量は、リフト量と開き時間とによって決まる値であって、リフト量を時間で積分した値として定められる。
【0027】
続いて、クランクアングルが略540〜720degである間、ECU10は、通常運転下の圧縮行程と同じく、吸気バルブ11及び排気バルブ12を閉じ続ける。これによって、先の吸気行程において燃焼室8内に供給された新気と排気とが圧縮によって混合される。なお、新気と排気とがシリンダ1内で混合された気体を気筒内混合吸気と呼ぶ。
【0028】
次いで、クランクアングルが0〜略180degである間、ECU10は、通常運転下の膨張行程と同じく、吸気バルブ11及び排気バルブ12を閉じ続ける。これによって、新気と排気とが混合された燃焼室8内の気筒内混合吸気が、それの膨張により撹拌される。
【0029】
そして、クランクアングルが略180〜略360degであるとき、ECU10は、通常運転下の排気行程における排気バルブ12の開き量と略等しい開き量で吸気バルブ11を開いて閉じる。これによって、新気と排気とが混合された燃焼室8内の気筒内混合吸気が、燃焼室8内から吸気通路4に排出される。
【0030】
なお、こうした一連の行程では、吸気通路4の圧力よりも排気通路5の圧力の方が高くなる。そのため、排気通路5から排気が吸入される際、また、吸気通路4に気筒内混合吸気が排出される際に、吸気と排気との圧力差分の仕事を上述した気体がピストン6に対してすることになり、燃費が改善されることとなる。
【0031】
次に、上述した減筒運転において通常運転下にある気筒に関し、該気筒における燃焼の状態について図5及び図6を参照して説明する。なお、図5では、破線の円で記載される4つの気筒を、上方に記載された気筒から順に、第1シリンダ、第2シリンダ、第3シリンダ、第4シリンダとするとともに、この順に1,2,3,4の番号を付す。そして、以下では、これら4つの気筒のうち、第1シリンダと第4シリンダとが休止気筒であるものとする。また、図6は、4つのシリンダの各々における行程の内容をクランクアングルごとに記載した図である。
【0032】
上述した減筒運転時において、吸気通路4に供給された気筒内混合吸気は、吸気マニホールド4bを介して休止気筒から燃焼運転している燃焼気筒へ供給される。すなわち、第1シリンダが排気行程である際に、吸気行程である第2シリンダに気筒内混合吸気が新気とともに吸入され、排気を含む混合吸気が供給される。また、第4シリンダが排気行程である際に、吸気行程である第3シリンダに気筒内混合吸気が新気とともに吸入され、排気を含む混合吸気が供給される。これにより、燃焼運転している燃焼気筒に新気のみが供給されるときよりも、該燃焼気筒内における酸素濃度が下げられるため、NOxが発生することを抑制できるとともに、燃費を向上することができる。
【0033】
なお、上述したように、減筒運転時の休止気筒では、吸気行程において吸気バルブ11を開いた後に排気バルブ12を開くことで排気と新気とが混合された気筒内混合吸気が生成される。そして、圧縮行程及び膨張行程を経ることで新気と排気とが撹拌され、このようにして攪拌された気筒内混合吸気が排気行程にて吸気通路4に供給される。このため、攪拌されることのない気筒内混合吸気が吸気通路4に供給される場合と比べて、通常運転下にある燃焼気筒に新気と排気とが良く混ざり合った混合吸気を供給することができる。また、休止気筒内に取り込まれた気体の温度が下げられることで、シリンダ1内の潤滑油の蒸発が抑制されるとともに、燃焼効率を向上することができる。
【0034】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)減筒運転時に休止気筒のピストン6が下動した際に、吸気バルブ11と排気バルブ12とを開弁するため、休止気筒の燃焼室8内に排気だけでなく新気も取り込まれる。そして、燃焼直後の高温の排気と、新気とが休止気筒の燃焼室8内に導入されるため、燃焼直後の高温の排気のみが休止気筒の燃焼室8内に導入されることがない。よって、燃焼直後の高温の排気のみが休止気筒の燃焼室8内に導入される場合と比べて、休止気筒の燃焼室8内に取り込まれた気体の温度が下げられ、休止気筒の燃焼室8内の潤滑油の蒸発を抑制できるとともに、休止気筒を介して吸気側に排気を再循環させることができる。
【0035】
(2)吸気バルブ11の開き量と排気バルブ12の開き量とが変更されることで、休止気筒内における排気の割合が変更される。このため、燃焼している気筒に吸気される混合吸気における排気の割合を変更することができる。
【0036】
(3)休止気筒の燃焼室8内に新気が吸気された後に、該休止気筒の燃焼室8内に排気が吸気されるので、休止気筒の燃焼室8内に温度の低い新気がある状態で排気が加えられることとなる。このため、休止気筒の燃焼室8内における気体の温度が高くなることを更に抑制することができる。
【0037】
(4)休止気筒内に吸気された新気と排気とからなる気筒内混合吸気を圧縮して膨張させた後に吸気側へ排出するので、新気と排気とが十分に撹拌された状態で吸気マニホールド4bに供給することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
以下、本発明をディーゼルエンジンの制御装置に具体化した第2の実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。第2の実施形態におけるECU10は、休止気筒の膨張行程においても該休止気筒で吸気を行ない、休止気筒の圧縮行程においても該休止気筒で排気を行う点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第2の実施形態のディーゼルエンジンは、第1の実施形態のディーゼルエンジンと同様の構成を備えている。
【0039】
図7の下側に示されるように、クランクアングルが吸気行程にあるとき、ECU10は、まず、通常運転下の吸気行程における吸気バルブ11の開き量よりも少ない開き量で吸気バルブ11を開いて閉じる。その後、ECU10は、通常運転下の排気バルブ12の開き量よりも少ない開き量で排気バルブを開いて閉じる。これによって、休止気筒が吸気行程を行うとき、該休止気筒の燃焼室8内に新気が吸気された後に、該燃焼室8内に排気が吸入され、新気と排気とが混合された気筒内混合吸気が休止気筒内に生成される。
【0040】
続いて、クランクアングルが圧縮行程にあるとき、ECU10は、通常運転下の圧縮行程における吸気バルブ11の開き量と等しい開き量で吸気バルブ11を開いて閉じる。これによって、新気と排気とが混合された気筒内混合吸気が燃焼室8内から吸気通路4に排出される。つまり、先に説明した第1の実施形態における圧縮行程のように気筒内混合吸気が休止気筒で圧縮されるのではなく、燃焼室8内の気筒内混合吸気が吸気通路4に排出される。
【0041】
続いて、クランクアングルが膨脹行程にあるとき、ECU10は、通常運転下の吸気バルブ11の開き量よりも少ない開き量で吸気バルブ11を開いて閉じる。その後、ECU10は、通常運転下の排気バルブ12の開き量よりも少ない開き量で排気バルブを開いて閉じる。これによって、吸気通路4から燃焼室8内に新気が吸気された後に、排気通路5から燃焼室8内に排気が吸入され、新気と排気とが混合された気筒内混合吸気が休止気筒内に生成される。つまり、吸気行程と同様に、排気と新気とが燃焼室8内に再度吸入され、気筒内混合吸気が生成される。
【0042】
そして、クランクアングルが排気行程にあるとき、ECU10は、通常運転下の吸気バルブ11の開き量と略等しい開き量で吸気バルブ11を開いて閉じる。これによって、気筒内混合吸気が燃焼室8内から吸気通路4に排出される。
【0043】
こうした一連の行程によれば、吸気通路4の圧力と排気通路5の圧力との圧力差による仕事が第1の実施形態よりも2倍行われることとなり、燃費を更に向上させることができる。
【0044】
次に、上述した減筒運転において通常運転下にある気筒に関し、該気筒における燃焼の状態について図8及び図9を参照して説明する。なお、図8及び図9は、第1の実施形態で説明した図5及び図6に対応する図である。
【0045】
上述した減筒運転時において、吸気通路4に供給された気筒内混合吸気は、吸気マニホールド4bを介して休止気筒から燃焼運転している燃焼気筒へ供給される。すなわち、第1シリンダ及び第4シリンダが排気行程である際に、吸気行程である第2シリンダ又は第3シリンダに気筒内混合吸気が新気とともに吸入され、排気を含む混合吸気が供給される。本実施形態では、通常運転下にある休止気筒の圧縮行程においても気筒内混合吸気を吸気通路4に排出するので、通常運転において、1回燃焼する間に気筒内混合吸気を吸気通路4に2回供給することができる。これにより、新気のみを供給したときよりも酸素濃度を下げて燃焼を抑制し、NOxの発生を抑制できるとともに、燃費を向上できる。また、2個の休止気筒が同時に排気を吸入して排出するので、各気筒が高温の排気を大量に吸入しなくても済む。
【0046】
なお、上述したように、減筒運転時の休止気筒では、吸気行程と膨張行程とにおいて新気と排気とが混合された気筒内混合吸気が生成され、排気行程と圧縮行程とにおいて気筒内混合吸気が吸気通路4に排出される。このため、同時に2個の休止気筒が排気を吸入するので、1個の休止気筒が吸入する排気の量を第1の実施形態よりも少なくすることができる。よって、休止気筒内に取り込まれた気体の温度を下げられ、シリンダ1内の潤滑油の蒸発を抑制できるとともに、休止気筒を介して吸気側に排気を再循環させることができる。
【0047】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(3)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(5)減筒運転時の休止気筒では、吸気行程と膨張行程とにおいて気筒内混合吸気が生成され、排気行程と圧縮行程とにおいて気筒内混合吸気が吸気通路4に排出される。このため、1個の休止気筒が吸入する排気の量を第1の実施形態よりも少なくすることができる。よって、休止気筒内に取り込まれた気体の温度を下げられ、シリンダ1内の潤滑油の蒸発を更に抑制できる。
【0048】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、通常運転時における各バルブの駆動をカムによって行い、減筒運転時には各バルブ11,12を吸気バルブ駆動装置13と排気バルブ駆動装置14とによって行うようにしたが、通常運転時においても各バルブ11,12を吸気バルブ駆動装置13と排気バルブ駆動装置14とによって行うようにしてもよい。
【0049】
・上記実施形態において、エンジンの燃焼状態に応じて、休止気筒における吸気行程での吸気バルブ11の開き量と排気バルブ12の開き量とを調整して、燃焼気筒へ吸気に占める排気の供給量を調整してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、4気筒のエンジンを内燃機関の一例として説明したが、内燃機関は5気筒以上のエンジンであってもよい。例えば、6気筒のエンジンでは、シリンダ間における排気と吸入とのタイミングがクランクアングルで60degずれているので、休止気筒において生成された気筒内混合吸気を吸気マニホールドに排出した後に燃焼気筒が吸い込むこととなり、更に燃焼気筒に供給することができる。
【0051】
・上記実施形態では、ディーゼルエンジンを内燃機関の一例として説明したが、内燃機関はガソリンエンジンであってもよい。このようにすれば、ガソリンエンジンにおいても、同様の効果を得ることができる。
【0052】
・上記実施形態において、ECU10が行うバルブの制御態様は、休止気筒の吸気行程あるいは膨脹行程において、排気バルブ12の開き量及び吸気バルブ11の開き量の少なくとも一方が一定であってもよい。
【0053】
・上記実施形態において、ECU10が行うバルブの制御態様は、休止気筒の吸気行程あるいは膨脹行程において、排気バルブ12が開弁した後に吸気バルブ11が開弁する態様であってもよい。
【0054】
・上記実施形態において、休止気筒の吸気行程あるいは膨脹行程において、吸気バルブ11が閉弁する前に排気バルブ12が開弁する態様であってもよく、吸気バルブ11が閉弁するときに吸気バルブ11が開弁する態様であってもよい。要は、休止気筒のピストンが下動する際に、休止気筒の吸気バルブ11の開弁と、休止気筒の排気バルブ12の開弁とを行い、休止気筒のピストンが上動する際に、吸気バルブ11の開弁のみを行う態様であればよい。
【符号の説明】
【0055】
1…気筒としてのシリンダ、2…シリンダブロック、3…シリンダヘッド、4…吸気通路、4a…吸気ポート、4b…吸気マニホールド、5…排気通路、5a…排気ポート、5b…排気マニホールド、6…ピストン、7…クランク、8…燃焼室、9…インジェクタ、10…制御装置としてのECU、11…吸気バルブ、12…排気バルブ、13…吸気バルブ駆動装置、14…排気バルブ駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多気筒内燃機関に対して一部の気筒を休止させる減筒運転を行う内燃機関の制御装置において、
休止気筒のピストンが下動する際に、前記休止気筒の吸気バルブの開弁と、前記休止気筒の排気バルブの開弁とを行い、
前記休止気筒のピストンが上動する際に、前記吸気バルブの開弁のみを行う
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記休止気筒のピストンが下動する際の前記吸気バルブの開き量と、前記休止気筒のピストンが下動する際の前記排気バルブの開き量とを変更する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記休止気筒のピストンが下動する際に、前記吸気バルブを閉弁した後に、前記排気バルブを開弁する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記休止気筒のピストンが下動する際に、前記吸気バルブの開弁と前記排気バルブの開弁とを行うことで、新気と排気とが混合した気筒内混合吸気を生成し、
前記休止気筒のピストンの上動によって前記気筒内混合吸気を圧縮し、
前記休止気筒のピストンの下動によって前記気筒内混合吸気を膨張し、
前記休止気筒のピストンが上動する際に、前記吸気バルブの開弁のみを行う
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87660(P2013−87660A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227067(P2011−227067)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】