説明

内燃機関の始動制御装置

【課題】エンジン等の内燃機関の排熱を回生するランキンサイクルシステムにより、内燃機関を始動させることができる内燃機関の始動制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関(10)から発生する熱エネルギーを回転エネルギーに回生する排熱回生システム(30)と、排熱回生システム(30)により発生する回転エネルギーを慣性力として畜勢する畜勢手段(44、35)と、内燃機関(10)の始動を制御する制御装置(40)と、を備え、制御装置(40)は、内燃機関(10)を始動させるときに、畜勢手段(44、35)の回転エネルギーを内燃機関(10)の回転軸(12)に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排熱を回転エネルギーに回生するランキンサイクルシステムを備えた内燃機関の始動を制御する内燃機関の始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるエンジン等の内燃機関の排熱による熱エネルギーを用いて媒体を気液変換することにより機械エネルギーとして再利用できるランキンサイクルシステムが広く知られている。
【0003】
このようなランキンサイクルシステムにおいて、エンジン停止時に蒸発器内部に残存する熱エネルギーを回収できるようにしたランキンサイクル装置(特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
また、アイドル時のような低負荷時など、タービン出力が十分でないときに、内燃機関の回転駆動力を利用する動力装置(特許文献2参照。)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−250075号公報
【特許文献2】特開2000−345915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような従来のランキンサイクルシステムは、タービンによる回転エネルギーを例えば発電機によって電気エネルギーに変換している。
【0007】
ここで、この回転エネルギーをエンジンの駆動力の補助として活用することも考えられるが、エンジンの制動にはこの回転エネルギーを活用することはできない。また、エンジンが停止した後はタービンが十分に回転できないため、エンジンの始動に使うことは難しい。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、エンジン等の内燃機関の排熱を回生するランキンサイクルシステムにより、内燃機関を始動させることができる内燃機関の始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様によると、内燃機関から発生する熱エネルギーを回転エネルギーに回生する排熱回生システムと、排熱回生システムにより発生する回転エネルギーを慣性力として畜勢する畜勢手段と、内燃機関の始動を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、内燃機関を始動させるときに、畜勢手段の回転エネルギーを内燃機関の回転軸に伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、畜勢手段によって畜勢された回転エネルギーにより内燃機関をクランキングすることによって内燃機関を始動させることができので、始動時の内燃機関の負荷を低減させることができ、燃費を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態のエンジンの始動制御装置の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態のエンジンの始動制御装置の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態のエンジンの始動制御装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態のエンジン10の始動制御装置の説明図である。
【0014】
内燃機関としてのエンジン10は、燃料混合吸気を爆発させることにより回転軸であるクランクシャフト12を回転駆動する。エンジン10は、吸排気管やバルブ等の構成を備えるエンジンヘッド11を備える。
【0015】
クランクシャフト12の一方の端部(フロント側)には、ベルトを介して補機等に回転を伝達するためのプーリ14を備える。また、クランクシャフト12の他方(リア側)には、第1クラッチ21、発電機44、トルクコンバータ25及び第2クラッチ22を介して、変速機20が接続されている。これら第1クラッチ21及び第2クラッチ22が、クランクシャフト12と、タービン31及び発電機44と、変速機20とを断続する断続手段として構成されている。
【0016】
ランキンサイクルシステム30は、エンジン10の運転により発生する排熱を回転エネルギーに変換する。
【0017】
エンジンヘッド11には、ランキンサイクルシステムが用いる媒体が流通する流路34が備えられている。この流路34が、エンジン10と媒体とで熱交換を行う蒸発器として構成されている。エンジンの熱を吸収した媒体は液相から気相へと相変換されて、体積膨張によりタービン31を回転させる。タービン31を通過した媒体は、ポンプによって圧送された後、ファン等を備えるコンデンサ(凝縮器)33により大気と熱交換が行われて気相へと相変換される。その後、再びエンジンヘッド11の流路34へと循環する。
【0018】
タービン31は、例えばスクロール型やボリュート型のタービンが用いられる。また、媒体は、冷却水やフルオロカーボン類(例えばHFC134a)、アンモニア等が用いられる。
【0019】
タービン31は、発電機44が接続されている。発電機44はタービン31と共にクランクシャフト12を軸として回転するように構成されている。タービン31が回転することによって発電機44が発電する。発電機44は、インバータ45が電気的に接続されている。インバータ45は、発電機44が発電する電力の電圧調整や交/直流変換等を行い、バッテリ46に充電する。
【0020】
制御装置40は、第1クラッチ21、第2クラッチ22の断続を制御する。また、ポンプ32の駆動力を制御して、ランキンサイクルシステム30によるエネルギーの回生を制御する。また、インバータ45を制御して、発電機44の発電及びバッテリ46の充電を制御する。
【0021】
次に、このように構成されたエンジン10の始動制御装置の動作を説明する。
【0022】
ランキンサイクルシステム30は、エンジン10の排熱により媒体を膨張させて、タービン31により回転エネルギーを得る。この回転エネルギーは発電機44によって電気エネルギーに変換される。
【0023】
ここで、本発明の第1の実施形態では、ランキンサイクルシステム30により回転駆動されるタービン31の回転エネルギーを、エンジン10の始動のために用いるように構成した。
【0024】
以下に、その詳細を説明する。
【0025】
図1に示すように、ランキンサイクルシステム30のタービン31と発電機44とは、同軸に直結されている。発電機44は、その周囲に永久磁石又はコイル等を備えるので、これらの重量の慣性によって、回転エネルギーを一時的に畜勢する畜勢手段として構成されている。
【0026】
そこで、例えばアイドルストップからエンジン10を始動するときに、第1クラッチ21を締結して、タービン31及び発電機44に畜勢された回転エネルギーをクランクシャフト12に伝達することよって、エンジン10をクランキングさせて、エンジン10を始動させる。
【0027】
またさらに、エンジン10が始動した後、エンジン10の運転中に、第1クラッチ21を締結して、タービン31及び発電機44の回転エネルギーをクランクシャフトに伝達することによって、エンジン10の駆動力を補助することができる。
【0028】
図2は、本発明の第1の実施形態の制御装置40により実行される制御のフローチャートである。
【0029】
このフローチャートは、所定の周期(例えば1ms間隔)で、制御装置40によって実行される。
【0030】
まず、制御装置40は、ランキンサイクルシステム30が稼働中であるか否かを判定する(S101)。
【0031】
ランキンサイクルシステム30は、制御装置40によってポンプ32が駆動され、このポンプ32により媒体の圧力を制御することにより熱エネルギーを回生する。一方で、エンジン10の停止中など、温度が低く熱エネルギーの回生が見込めないと判定した場合には、ランキンサイクルシステム30の駆動がエンジン10に対する負荷となってしまうため、ランキンサイクルシステム30の稼働を停止する。
【0032】
ランキンサイクルシステム30が稼働していると判定した場合はステップS102に移行する。稼働していないと判定した場合はステップS111に移行する。
【0033】
ステップS102では、制御装置40は、エンジン10の運転状態がアイドルストップ中であるか否かを判定する。アイドルストップ中であると判定した場合はステップS103に移行する、アイドルストップ中でないと判定した場合はステップS105に移行する。
【0034】
ランキンサイクルシステム30が稼働中である場合は、タービン31の回転エネルギーにより発電機44が回転している。一方、エンジン10がアイドルストップ中である場合は、クランクシャフト12及び変速機20は非回転状態である。そこで、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を開放して(S103及びS104)、タービン31及び発電機44が、クランクシャフト12の回転状態にかかわらず自在に回転できる状態とする。この状態では、エンジン10の運転状態にかかわらず、タービン31の回転によって発電機44が発電可能な状態となる。
【0035】
ステップS102において、アイドルストップ中でないと判定した場合は、ステップS105に移行し、制御装置40は、エンジン10の始動が開始されているか否かを判定する。エンジン10の始動が開始されていない状態、すなわち、既にエンジン10の始動が完了している場合は、ステップS111に移行する。
【0036】
エンジン10の始動が開始されたと判定した場合は、ステップS106に移行し、制御装置40は、タービン31の回転速度(トルクコンバータ25の入力側の回転速度)を取得し、取得した回転速度が予め設定された第1の所定値以上であるか否かを判定する。なお、この第1の所定値は、畜勢手段としてのタービン31及び発電機44の回転エネルギーがエンジン10を適切にクランキングさせるのに十分であるか否かの閾値である。
【0037】
取得した回転速度が第1の所定値以上であると判定した場合は、制御装置40は、エンジン10をクランキングさせるのに十分であると判定して、ステップS107に移行する。そして、制御装置40は、第1クラッチ21を締結すると共に第2クラッチ22を開放して(S107及びS108)タービン31の回転エネルギーをエンジン10側に伝えるように制御する。これによりエンジン10がクランキングされ、エンジン10が始動する。
【0038】
一方、取得した回転速度が第1の所定値に満たないと判定した場合は、制御装置40は、回転速度がエンジン10をクランキングさせるのには不十分であると判定する。そして、第1クラッチ21を開放すると共に第2クラッチ22を締結する(S109及びS110)。これにより、エンジン10のクランクシャフト12とタービン31とは連結されない。この場合は、エンジン10は他のクランキング手段(スターターモータ等)によってクランキングされ、エンジン10が始動する。
【0039】
なお、このとき第2クラッチ22が締結されるが、タービン31の回転はトルクコンバータ25により減速されるので、変速機20の回転速度には影響を受けない。これは、エンジン10の始動後、直ちにクランクシャフト12の回転を変速機220へと伝えるための準備である。
【0040】
前述のステップS101でランキンサイクルシステム30が稼働していないと判定したとき、又は、前述のステップS105で既にエンジン10が始動していると判定した場合は、制御装置40は、第1クラッチ21及び第2クラッチ22を締結する(S111及びS1112)。
【0041】
この状態では、エンジン10のクランクシャフト12と変速機20とがトルクコンバータ25を介して接続される。このとき、ランキンサイクルシステム30が稼働中である場合は、タービン31の回転エネルギーが、エンジン10の駆動力を補助する。また、ランキンサイクルシステム30が稼働中でない場合は、タービン31及び発電機44は、クランクシャフト12と共に回転し、エンジン10の駆動力が変速機20へと伝えられる。
【0042】
次に、制御装置40は、バッテリ46のSOC等を計測し、バッテリ46充電可能な状態であるか否かを判定する(S120)。バッテリ46が充電可能であると判定した場合は、ステップS121に移行する。バッテリ46が充電可能でないと判定した場合は、ステップS123に移行して、制御装置40は、発電機44による発電を行わないように制御する。
【0043】
ステップS121では、制御装置40は、タービン31の回転速度(トルクコンバータ25の入力側の回転速度)を取得し、取得した回転速度が、予め設定された第2の所定値以上であるか否かを判定する。なお、この第2の所定値は、タービン31の回転エネルギーが発電機44を適切に発電させるために十分であるか否かの閾値である。
【0044】
取得した回転速度が第2の所定値以上であると判定した場合は、制御装置40は、回転速度が発電機44を発電させるのに十分であると判定して、ステップS122に移行して、発電機44による発電を開始するように制御する。これにより、発電機44によって発電された電力が、バッテリ46に充電される。なお、このときランキンサイクルシステム30が稼働していない場合にも、エンジン10の駆動力によって発電機44を発電可能である
一方、取得した回転速度が第2の所定値に満たないと判定した場合は、制御装置40は、回転速度が発電機44を発電させるのには不十分であると判定して、ステップS123に移行して、発電機44による発電を行わないように制御する。
【0045】
このような制御によって、エンジン10の排熱を回生するランキンサイクルシステム30により発生する回転エネルギーを、発電機44の充電だけでなく、エンジン10の始動及び駆動力のアシストに用いることができる。
【0046】
また、ランキンサイクルシステム30の媒体によってエンジン10のエンジンヘッド11が冷却されるため、加速時などエンジンの負荷が高い場合にもノックの発生が抑制される。これにより、点火時期を進角することができるため、車両の加速性能を向上させることができる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0048】
第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して、タービン31及びクラッチの構造が異なる。なお、第1の実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0049】
図3は、本発明の第2の実施形態のエンジン10の始動制御装置の説明図である。
【0050】
タービン31は、中空軸36を介してクランクシャフト12に接続される。そして、このタービン31とクランクシャフト12との間に、これらを断続する断続手段としての第3クラッチ23が備えられている。
【0051】
この第3クラッチ23を締結することで、クランクシャフト12とタービン31とが締結され、クランクシャフト12とタービン31とが、共に同軸に回転する。一方、第3クラッチ23を解放することで、クランクシャフト12とタービン31とは、中空軸36により、互いに自在に回転可能となる。
【0052】
また、タービン31の外周には、フライホイール35が備えられている。このフライホイール35は、その重量の慣性によって、タービン31の回転エネルギーを一時的に畜勢する畜勢手段として構成されている。
【0053】
次に、この第2の実施形態のランキンサイクルシステム30における動作を説明する。
【0054】
図4は、本発明の第2の実施形態の制御装置40により実行される制御のフローチャートである。
【0055】
このフローチャートは、所定の周期(例えば1ms間隔)で、制御装置40によって実行される
まず、制御装置40は、ランキンサイクルシステム30が稼働中であるか否かを判定する(S201)。
【0056】
ランキンサイクルシステム30が稼働していると判定した場合はステップS202に移行する。稼働していないと判定した場合はステップS210に移行する。
【0057】
ステップS202では、制御装置40は、エンジン10の運転状態がアイドルストップ中であるか否かを判定する。アイドルストップ中であると判定した場合はステップS203に移行する、アイドルストップ中でないと判定した場合はステップS204に移行する。
【0058】
ランキンサイクルシステム30が稼働中である場合は、タービン31が回転している。一方、エンジン10がアイドルストップ中である場合は、クランクシャフト12及び変速機20は非回転状態である。そこで、第3クラッチ23を開放して(S203)、タービン31が、クランクシャフト12の回転状態にかかわらず自在に回転できる状態とする。
【0059】
ステップS202においてアイドルストップ中でないと判定した場合は、ステップS204に移行し、制御装置40は、エンジン10の始動が開始されているか否かを判定する。エンジン10の始動が開始されていない状態、すなわち、既にエンジン10の始動が完了している場合は、ステップS207に移行する。
【0060】
エンジン10の始動が開始されたと判定した場合は、ステップS205に移行し、制御装置40は、タービン31の回転速度を取得し、取得した回転速度が予め設定された第1の所定値以上であるか否かを判定する。なお、この第1の所定値は、第1の実施例と同様に、畜勢手段としてのタービン31及びフライホイール35の畜勢力がエンジン10を適切にクランキングさせるのに十分であるか否かの閾値である。
【0061】
取得した回転速度が第1の所定値以上であると判定した場合は、制御装置40は、エンジン10をクランキングさせるのに十分であると判定して、ステップS206に移行する。そして、制御装置40は、第3クラッチ23を締結して(S206)タービン31の回転エネルギーをエンジン10に伝えるように制御する。これによりエンジン10がクランキングされ、エンジン10が始動する。
【0062】
一方、取得した回転速度が第1の所定値に満たないと判定した場合は、制御装置40は、回転速度がエンジン10をクランキングさせるのには不十分であると判定する。そして、第3クラッチ23を開放する。これにより、エンジン10のクランクシャフト12とタービン31とは連結されない。この場合は、エンジン10は他のクランキング手段によってクランキングされ、エンジン10が始動する。
【0063】
前述のステップS204で、既にエンジン10の始動が完了している場合は、ステップS207において、制御装置40は、タービン31の回転速度を取得し、取得した回転速度が予め設定された第3の所定値以上であるか否かを判定する。なお、この第3の所定値は、畜勢手段としてのタービン31及びフライホイール35の回転エネルギーが運転中のエンジン10の駆動力を補助するのに十分であるか否かの閾値である。
【0064】
取得した回転速度が第3の所定値以上であると判定した場合は、制御装置40は、回転速度がエンジン10の駆動力を補助するのに十分であると判定して、ステップS209に移行する。そして、制御装置40は、第3クラッチ23を締結して、タービン31の回転をエンジン10に伝達するように制御する。これにより、タービン31の回転エネルギーがエンジン10の駆動力を補助する。
【0065】
一方、取得した回転速度が第3の所定値に満たないと判定した場合は、制御装置40は、回転速度がエンジン10の駆動力を補助するのには不十分であると判断する。この状態では、タービン31が逆にエンジン10の負荷になってしまうので、第3クラッチ23を開放する(S208)。これにより、エンジン10のクランクシャフト12とタービン31とが解放され、エンジン10とタービン31とは、互いに自在に回転できる状態とする。
【0066】
また、前述のステップS201でランキンサイクルシステム30が稼働していないと判定したときは、制御装置40は、第3クラッチ23開放する(S210)。この状態では、エンジン10のクランクシャフト12とタービン31とが解放され、エンジン10とタービン31とは、互いに自在に回転できる状態とする。
【0067】
このように、第2の実施の形態では、クランクシャフト12とタービン31とを、ただ一つのクラッチ(第3クラッチ23)により断続可能とした。このような構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
なお、第2の実施の形態では、発電機44を備えず、タービン31がフライホイール35を畜勢するように構成したが、第1の実施形態と同様に、発電機44を備え、タービン31の回転エネルギーにより発電してもよい。この場合、前述の図2のステップS120からS123に示したように、制御装置40が、回転速度を判定して、発電機44の発電を制御する。
【0069】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0070】
第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、クランクシャフト12とタービン31とを、ただ一つのクラッチ(第3クラッチ23)により断続可能とした。なお、第1又は第2の実施形態と同じ構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0071】
図5は、本発明の第3の実施形態のエンジン10の制御装置の説明図である。
【0072】
タービン31は、エンジン10のクランクシャフト一方の端部(フロント側)に、第4クラッチ24を介して接続される。第4クラッチ24は、タービン31とクランクシャフト12とを断続する断続手段として構成されている。
【0073】
この第4クラッチ24を締結することで、クランクシャフト12とタービン31とが締結され、クランクシャフト12とタービン31とが共に同軸に回転する。一方、第4クラッチ24を解放することで、クランクシャフト12とタービン31とは、互いに自在に回転可能となる。
【0074】
また、タービン31の外周には、フライホイール35が備えられている。このフライホイール35は、その重量の慣性によって、タービン31の回転エネルギーを一時的に畜勢する畜勢手段として構成されている。
【0075】
なお、エンジン10のクランクシャフト12の他側(エンド側)は、トルクコンバータ25のみを介して変速機20に接続されている。
【0076】
このように構成された第3の実施形態の動作は、前述の第3の実施形態の図3に示すフローチャートと同様である。
【0077】
すなわち、タービン31の回転エネルギーをエンジン10に伝える場合は、第4クラッチ24(第2の実施形態の第3クラッチ23に相当)を締結する。一方、タービン31とクランクシャフト12とを互いに自在に回転可能にする場合は、第4クラッチ24を開放する。
【0078】
特に、第3の実施形態では、タービン31とクランクシャフト12とが、第4クラッチ24の開放により完全に分離されるため、第2の実施形態の中空軸36によるクランクシャフト12とのフリクションロスがなく、第4クラッチ24の解放時に、回転力の減衰を相対的に抑えることができる。
【0079】
なお、第3の実施の形態では、第2の実施形態と同様に、発電機44を備えず、タービン31がフライホイール35を畜勢するように構成したが、第1の実施形態と同様に、発電機44を備え、タービン31の回転力により発電してもよい。この場合、前述の図2のステップS120からS123に示したように、制御装置40が発電機44を制御する。
【0080】
以上のように、本発明の実施形態では、エンジン10の排熱を回転エネルギーに回生するランキンサイクルシステムを備え、この回転エネルギーを畜勢手段(発電機44またはフライホイール35)に畜勢しておき、エンジン10の始動時に、この畜勢手段によって畜勢された回転エネルギーによりエンジン10をクランキングすることによってエンジン10を始動させることができる。また、エンジン10の始動後は、畜勢された回転エネルギーにより、エンジンの駆動力を補助することができる。
【0081】
このように構成することによって、始動時のエンジン10の負荷を低減させることができ、燃費を向上することができる。
【0082】
また、タービン31の回転速度が十分でない場合は、断続手段(第1クラッチ21、第2クラッチ22、第3クラッチ23又は第4クラッチ24)によってエンジン10の回転軸であるクランクシャフトとタービン31とを切り離すので、タービン31や畜勢手段がエンジン10の負荷となってしまうことを防ぐことができる。
【0083】
また、ランキンサイクルシステム30の媒体によってエンジン10のエンジンヘッド11が冷却されるため、加速時などエンジンの負荷が高い場合にもノックの発生が抑制される。これにより、点火時期を進角することができるため、車両の加速性能を向上させることができる。
【0084】
なお、本発明の実施形態では、タービン31に発電機44を備える例を第1実施形態として、発電機44を備えずタービン31にフライホイール35を備える例を第2実施形態及び第3実施形態としたが、第1の実施形態において、発電機44を備えずタービン31にフライホイール35を備える構成としてもよい。
【0085】
10 エンジン(内燃機関)
12 クランクシャフト(回転軸)
20 変速機
21 第1クラッチ(断続手段)
22 第2クラッチ(断続手段)
23 第3クラッチ(断続手段)
24 第4クラッチ(断続手段)
25 トルクコンバータ
30 ランキンサイクルシステム(排熱回生システム)
31 タービン
32 ポンプ
33 コンデンサ(凝縮器)
34 流路(蒸発器)
35 フライホイール(畜勢手段)
36 中空軸
40 制御装置
44 発電機(畜勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から発生する熱エネルギーを回転エネルギーに回生する排熱回生システムと、
前記排熱回生システムにより発生する回転エネルギーを慣性力として畜勢する畜勢手段と、
前記内燃機関の始動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関を始動させるときに、前記畜勢手段の回転エネルギーを前記内燃機関の回転軸に伝達することを特徴とする内燃機関の始動制御装置。
【請求項2】
前記畜勢手段と前記回転軸との間で回転力を断続する断続手段を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関を始動させるときに、前記断続手段を締結することによって、前記畜勢手段の回転エネルギーを前記内燃機関の回転軸に伝達することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内燃機関を始動させるときに、前記畜勢手段の回転速度が所定の回転速度以上である場合に、前記断続手段を締結することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関が運転中に、前記断続手段を締結することによって、前記畜勢手段の回転エネルギーを前記内燃機関の回転軸に伝達することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の始動制御装置。
【請求項5】
前記畜勢手段は、前記内燃機関のフロント側に配置され、
前記制御装置は、前記内燃機関が運転中であって、前記畜勢手段の回転速度が所定の回転速度未満である場合に、前記断続手段を解放することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−196586(P2010−196586A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42250(P2009−42250)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】