説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】ポジションセンサを用いることなく安価なシステムでエンジン作動中に変化するトルクを推定し、そのトルクに基づいて昇温手段を制御することができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】制御装置30は、空燃比センサ33により検出された酸素濃度検出結果に基づいて標高を推定するとともに、推定された標高に応じた換算近似式(例えばY2で示す換算近似式)を選定する。さらに、制御装置30は、選定された換算近似式を用いてエンジントルクを推定するとともに、推定されたエンジントルクと、検出されたエンジン回転数とを用いてPM堆積量を推定する。そして、制御装置30は、推定されたPM堆積量が所定量以上であれば、フィルタ20の再生処理モードを開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジン(内燃機関)の排気通路には、排気中のPM(Particulate Matter)を捕集するフィルタを備えた排気浄化装置が搭載されている。こうした排気浄化装置では、フィルタに捕集されたPMの量が増大するにつれてフィルタの圧力損失が増大し、排気抵抗が増大してエンジントルクの低下等をもたらすことになる。また、フィルタの捕集機能も低下する。このため、排気浄化装置では、昇温手段によりフィルタ前の排気温度を適切な温度まで昇温させ、フィルタに捕集されたPMを燃焼させてフィルタの捕集機能を再生させるための再生処理が実行される。
【0003】
電子制御装置を備えたコモンレール式ディーゼルエンジンでは、例えば、フィルタ前に酸化触媒が配置されるとともに、フィルタの再生処理の際に、電子制御装置により燃料噴射弁の噴射時期が制御され、フィルタの再生処理のために燃料が排気行程で噴射され、排気通路へ供給される。そして、排気通路へ供給された燃料が酸化触媒により酸化することにより、フィルタ前の排気温度を昇温させている。
【0004】
しかし、ディーゼルエンジンとしては、電子制御装置を持たず、VE型等、機械式の燃料噴射ポンプにより燃料噴射時期を制御するものがある(例えば特許文献1参照)。特許文献1のディーゼル機関の燃料噴射時期制御装置は、機関により駆動される低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとを備え、低圧燃料ポンプの燃料吸入圧力と燃料吐出圧力とを噴射時期制御用のプランジャの両側に作用させて、このプランジャを往復移動させることにより、高圧燃料ポンプから機関の各気筒に噴射される燃料噴射時期を制御するものである。
【0005】
特許文献1のような燃料噴射ポンプを備えたディーゼルエンジンは、比較的小型のディーゼルエンジン、例えば小型のフォークリフトのエンジン等で未だ多用されている。これは、コモンレール式ディーゼルエンジンは、非常に高圧な燃料をコモンレールに維持する関係上、コモンレールをはじめとする燃料系に高い強度が求められ、サイズ、重量、コストなどの都合により、特に小型のエンジンには採用しづらいことによる。
【0006】
しかしながら、機械式の燃料噴射ポンプは、コモンレール式ディーゼルエンジンのように、フィルタの再生処理のときだけ、排気温度の昇温のために燃料を噴射するといった自由な制御ができない。また、特許文献1のような機械式の燃料噴射ポンプを備えたディーゼルエンジンは、特にフォークリフトへの適用時においては、走行目的とともに荷役目的でもエンジンを駆動させる為、ディーゼルエンジンのトルクの推定が困難であるという問題があった。このため、エンジン負荷の変化に伴う排気温度の変化を推定することができず、排気中に噴射する燃料量を制御することができず、フィルタの再生処理の制御を行うことができない。よって、フィルタの再生処理が必要な際には、フォークリフトによる荷役作業を中断してフィルタの再生処理を手動で行わざるを得ず、作業効率が悪くなってしまっている。
【0007】
このようなディーゼルエンジンにおいては、フィルタの再生処理のための専用の燃料噴射装置を備えるとともに、この燃料噴射装置の燃料噴射量を制御可能な制御装置を備えたものが、例えば、特許文献2に挙げられる。特許文献2のディーゼルエンジンの排ガス浄化用燃焼器では、燃料油タンクに貯留された燃料油が燃料ポンプによりノズルを介して燃焼器内に注入され、グロープラグにより燃料が着火燃焼される結果、燃焼器内を流れる排気温度を昇温させている。
【0008】
また、特許文献2の排ガス浄化用燃焼器は、排気中の酸素濃度を検出する酸素センサ(酸素濃度検出手段)と、排気温度を検出する温度センサと、DPF出力の排気圧力を検出する圧力センサとを備えている。そして、酸素センサの信号、温度センサの信号及び圧力センサの信号に基づいて、排気温の昇温のための着火・安定燃焼が可能な条件が確保されていることを確認して、燃料油を投入してグロープラグにより燃料を着火燃焼させて排気温を昇温させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭54−53715号公報
【特許文献2】特開2002−242661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献2の排ガス浄化用燃焼器において、フィルタの再生処理のために排気温度を昇温させるためには、燃焼器内を流れる排気温度を検出してノズルから噴射される燃料の噴射量を制御する必要がある。排気温度を検出する方法としては、特許文献2のように温度センサ(例えば熱電対)を用いる方法もあるが、温度センサの熱容量により、負荷が瞬時に大きく変わるような、例えばフォークリフト用(建設機械用)エンジンには追随できないという問題がある。
【0011】
また、排気温度を検出する方法としては、噴射量からトルクを検出し、そのトルクから排気温度を推定する方法もある。このような場合のトルク検出としては、例えば、アクセル開度センサ(ポジションセンサの一種)が用いられるが、フォークリフトに用いられるオールスピードガバナの特性では、回転数の僅かな変化に対してトルクが大きく変化してしまうため、トルクを精度良く検出することができない。そのため、アクセル開度センサを用いて検出されたトルクから排気温度を精度良く推定することができない。
【0012】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、ポジションセンサを用いることなく安価なシステムでエンジン作動中に変化するトルクを推定し、そのトルクに基づいて昇温手段を制御することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内燃機関で発生する排気を導く排気通路に設けられるとともに排気に含まれるPMを捕集するフィルタと、前記フィルタにおけるPM堆積量を推定する堆積量推定手段と、前記排気通路における前記フィルタよりも上流側の排気温度を昇温させる昇温手段と、前記排気通路における前記昇温手段よりも上流側に設けられるとともに前記排気通路を流れる排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいてトルクを推定するトルク推定手段と、前記トルク推定手段により推定されたトルクを利用して前記昇温手段を制御する制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、トルク推定手段により排気中の酸素濃度に基づいてトルクを推定している。したがって、トルク推定手段により推定されたトルクに基づいて排気温度を推定し、昇温手段を制御することができる。よって、排気温度検出のために、熱電対のような温度センサを必要とせず、装置自体を簡素化することができる。また、内燃機関が回転数の僅かな変化に対してトルクが大きく変化するようなガバナ特性を有していても、酸素濃度からトルクを推定することで、ポジションセンサを用いることなく安価なシステムでエンジン作動中に変化するトルクを推定することができる。そして、そのトルクに基づいて昇温手段を制御して、フィルタよりも上流の排気温度を適切な温度に昇温させ、フィルタに堆積したPMを除去することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記酸素濃度検出手段により検出された排気中の酸素濃度に基づいて標高を推定する標高推定手段をさらに備え、前記トルク推定手段は、前記標高推定手段により推定された標高に応じてトルクを推定することを要旨とする。
【0016】
高地の酸素量は低地の酸素量よりも低いため、高地走行時と低地走行時とでは、排気中の酸素濃度が変化してしまい、推定されるトルクも変化してしまう。この発明によれば、標高推定手段は、排気中の酸素濃度に基づいて標高を推定している。よって、例えば、気圧センサ等を用いて標高を推定する場合に比べて、部品点数を増加させることなく、標高を推定することができる。そして、トルク推定手段は、標高推定手段により推定された標高に応じてトルクを推定する。よって、排気中の酸素濃度が標高によって変動したとしても、トルクを正確に推定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記標高推定手段は、前記内燃機関が無負荷状態のときに前記酸素濃度検出手段により検出された排気中の酸素濃度に基づいて標高を推定することを要旨とする。
【0018】
例えば、アクセルペダルを踏み込むことでトルクが変動すると、排気中の酸素濃度にばらつきが生じる。しかし、この発明によれば、標高推定手段は、内燃機関が無負荷状態のときの酸素濃度に基づいて標高を推定しているため、酸素濃度検出手段により検出される酸素濃度にばらつきが生じることがなく、標高を正確に推定することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記トルク推定手段は、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度とトルクとの関係から得られる換算近似式を、前記標高推定手段により推定された標高に応じて選定し、選定された前記換算近似式と、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度との関係を用いて、前記標高推定手段により推定された標高に応じたトルクを推定することを要旨とする。
【0020】
この発明によれば、酸素濃度とトルクとの関係から得られる換算近似式を標高に応じて選定し、選定された換算近似式を用いることで、酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度のみをパラメータとして使用するだけで、トルクを推定することができる。よって、トルクを推定するための演算処理が簡素化される。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記トルク推定手段は、前記内燃機関の回転数と、トルクとの関係を表す酸素濃度マップを、前記標高推定手段により推定された標高に応じて選定し、前記トルク推定手段は、選定された前記酸素濃度マップを用いて、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記内燃機関の検出された回転数とに応じたトルクを推定することを要旨とする。
【0022】
この発明によれば、標高に応じた酸素濃度マップを用い、且つ内燃機関の回転数を検出してトルクを推定している。よって、酸素濃度からトルクを推定する場合に比べて、内燃機関の回転数をパラメータとして考慮している分、さらに正確なトルクを得ることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記堆積量推定手段は、前記トルク推定手段により推定されたトルクを利用して前記フィルタにおけるPM堆積量を推定することを要旨とする。
【0024】
この発明によれば、酸素濃度検出に基づいて推定されたトルクに基づいてフィルタにおけるPM堆積量を推定しているため、部品点数の増加や、装置構成の複雑化をもたらさず簡単な構成でPM堆積量を正確に推定することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記堆積量推定手段は、前記フィルタの上流側及び下流側の圧力を検出する差圧センサの検出値からPM堆積量を推定することを要旨とする。
【0026】
この発明によれば、フィルタの上流側及び下流側に差圧が所定の閾値を越えたことのみを判定すればよいため、単純な制御でフィルタ再生の要否を判断することができる。また差圧センサであればセンサは1個で済むため、温度センサなど2個の絶対圧センサを用いる場合に比べて、部品点数の低減に加えて個体差のばらつきによる推定精度の低下を低減することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記昇温手段は、前記排気通路に燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料を着火燃焼させるための点火プラグと、前記燃料噴射ノズルにエアを供給するエアポンプと、前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料ポンプとを備えたバーナ装置であることを要旨とする。
【0028】
この発明によれば、燃料噴射ノズルから噴射された燃料を点火プラグにより着火燃焼することで、フィルタ上流の排気温度を昇温させることができる。そして、制御手段は、エアポンプ及び燃料ポンプを制御して燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴射量を制御することで、フィルタ上流の排気温度を所定の温度に維持することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、ポジションセンサを用いることなく安価なシステムでエンジン作動中に変化するトルクを推定し、そのトルクに基づいて昇温手段を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は第1の実施形態における排気浄化装置を備えたエンジン及びその周辺構成を示す概略図、(b)は排気中の酸素濃度とエンジントルクとの関係を示すグラフ。
【図2】オールスピードガバナのガバナ特性を示すグラフ。
【図3】制御装置におけるフィルタの再生処理の制御手順を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態における酸素濃度に基づいて得られるエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示す酸素濃度マップ。
【図5】制御装置におけるフィルタの再生処理の制御手順を示すフローチャート。
【図6】第3の実施形態における排気浄化装置を備えたエンジン及びその周辺構成を示す概略図。
【図7】制御装置における失火対策処理の制御手順を示すフローチャート。
【図8】第4の実施形態における排気浄化装置を備えたエンジン及びその周辺構成を示す概略図。
【図9】制御装置におけるフィルタの再生処理の制御手順を示すフローチャート。
【図10】別例の制御装置における失火対策処理の他の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明を内燃機関としてのフォークリフト用ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」と記載する)の排気浄化装置に具体化した第1の実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
【0032】
図1(a)に示すように、エンジン10の燃焼室11aには、吸気通路12と排気通路13とが接続されるとともに、気筒11毎に燃料噴射弁14がそれぞれ設けられている。これら燃料噴射弁14には、燃料噴射ポンプ15からそれぞれ独立して延びる燃料供給管15aが接続されている。そして、エンジン10の駆動力により燃料噴射ポンプ15が駆動されるとともに、燃料タンク16に貯留された燃料が燃料噴射ポンプ15の駆動により、燃料供給管15aを介して各燃料噴射弁14に供給されるようになっている。また、燃料噴射ポンプ15は、アクセルペダル18の踏み込み量に応じて各燃料噴射弁14から各気筒11への燃料噴射量が調整されるようになっている。アクセルペダル18には、踏み込み量を検出するためのアクセルポジションセンサ31が接続されている。
【0033】
エンジン10は、オールスピードガバナ(図示せず)を備えるとともに、図2に示すようなガバナ特性を有するものとなっている。図2は、横軸にエンジン回転数を示すとともに、縦軸にエンジントルクを示し、特性線によりアクセル開度(%)に応じたエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示している。例えば、アクセル開度30%のときのエンジン回転数とエンジントルクとの関係は、図2に示す特性線Lのようになっている。
【0034】
図2に示すように、エンジン10は、アクセル開度に応じた各特性線の傾きが大きくなればなるほど、エンジン回転数の変化に対するエンジントルクの変化が大きくなる。すなわち、エンジン10では、例えば、フォークリフトがフォーク上に荷を載置した状態で作業を行うときのように負荷が異なる場合、エンジン回転数を一定に維持させるために、アクセルペダル18の踏み込み量が一定であったとして、燃料噴射弁14の燃料噴射量を機械的に調整してエンジントルクを上げることができるようになっている。つまり、エンジン10では、アクセルペダル18の踏み込み量が一定であったとしても発生するエンジントルクにばらつきが生じるため、アクセルポジションセンサ31によって検出されたアクセルペダル18の踏み込み量によりエンジントルクを推定することが困難になっている。
【0035】
また、図2に示すように、エンジン10のガバナ特性は、アクセルペダル18の踏み込み量に対しエンジントルクが大きく変動するようになっているため、アクセルペダル18又はアクセルポジションセンサ31の個体差によるエンジントルク推定の誤差も相対的に大きくなる。そのため、アクセルペダル18の踏み込み量によりエンジントルクを推定することが困難となっている。
【0036】
図1(a)に示すように、排気通路13の下流側にはフィルタ20が設けられている。フィルタ20は、多孔質のセラミック構造体で構成されており、排気中のPMはこの多孔質の壁を通過する際に捕集される。
【0037】
フィルタ20は、PMが所定量以上堆積すると、フィルタ20に堆積したPMを燃焼除去させてフィルタ20の捕集機能を再生する必要がある。PMを燃焼除去するためには、フィルタ20上流の排気温度を適切な温度(例えば650℃以上の高温)にする必要がある。この高温を実現するために、本実施形態では、バーナ装置40が排気通路13におけるフィルタ20よりも上流側に設けられるとともに、このバーナ装置40での燃料の着火燃焼によりフィルタ20上流の排気温度が昇温されるようになっている。
【0038】
バーナ装置40は、排気通路13におけるフィルタ20よりも上流側に配置されるバーナ管40aを備えるとともに、バーナ管40aには燃料噴射ノズル41と点火プラグ42とが設けられている。燃料噴射ノズル41には、エア通路43aを介してエアポンプ43が接続されるとともに、エアポンプ43により燃料噴射ノズル41内に空気が供給されるようになっている。また、燃料噴射ノズル41には、燃料通路44aを介して燃料ポンプ44が接続されるとともに、燃料ポンプ44は燃料タンク16に接続されている。
【0039】
そして、燃料噴射ノズル41に供給された空気と燃料とが燃料噴射ノズル41内でミキシングされた後、このミキシングされて微粒化された燃料が燃料噴射ノズル41を介して点火プラグ42に向かって噴射されるようになっている。点火プラグ42に向かって噴射された燃料は、点火プラグ42によりスパーク着火されて燃焼するとともに、この燃料の着火によりバーナ管40a内でフィルタ20上流の排気温度が昇温されるようになっている。よって、本実施形態では、燃料噴射ノズル41と、点火プラグ42と、エアポンプ43と、燃料ポンプ44とから昇温手段が構成されている。
【0040】
点火プラグ42、エアポンプ43及び燃料ポンプ44は、制御装置30の制御を受ける。この制御装置30は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0041】
制御装置30には、アクセルポジションセンサ31、クランク角度検出器32及び酸素濃度検出手段としての空燃比センサ33が信号接続されるとともに、エアポンプ43及び燃料ポンプ44が電気的に接続されている。アクセルポジションセンサ31によって検出されたアクセル踏み込み量検出結果は、制御装置30へ送られる。
【0042】
また、クランク角度検出器32は、図示しないクランク軸の回転角度(クランク角度)を検出する。クランク角度検出器32によって検出されたクランク角度情報は、制御装置30へ送られる。制御装置30は、クランク角度検出器32によって検出されたクランク角度検出結果に基づいて、エンジン回転数を算出する。そして、制御装置30は、後述するエンジントルク推定結果(排気温度に関連)及びエンジン回転数(排気流量に関連)に基づき、燃料噴射ノズル41に所定量の空気及び燃料が供給されるようエアポンプ43及び燃料ポンプ44を駆動させて、燃料噴射ノズル41による燃料噴射量を制御する制御手段としての機能を有する。
【0043】
また、空燃比センサ33は、排気通路13を流れる排気中の酸素濃度を検出する。空燃比センサ33によって検出された酸素濃度検出結果は、制御装置30に送られる。
排気中の酸素濃度は標高により変動する。ここで、図1(b)に、排気中の酸素濃度とエンジントルクとの関係をグラフで示す。横軸に排気中の酸素濃度を示し、縦軸にエンジントルクを示している。図1(b)において、標高が高いときの酸素濃度とエンジントルクとの関係を実線Y1で示し、また、標高が低いときの酸素濃度とエンジントルクとの関係を破線Y2で示している。
【0044】
実線Y1及び破線Y2は、実測した酸素濃度データから一次式で近似したものであり、これら一次式のグラフは、例えば、次式で示される。
Y1=−ax+b…(1)
Y2=−cx+d…(2)
ここで、a,cは定数であり、|a|<|c|となっている。b,dはエンジン10が無負荷の時の酸素濃度に対応する。そして、上記(1)、(2)式は、それぞれの標高に応じて設定された酸素濃度とエンジントルクとの関係を示す換算近似式であり、ROMには標高に応じた換算近似式がY1,Y2以外にも複数記憶されている。また、この換算近似式を用いることで、標高に応じた酸素濃度からエンジントルクが推定できるようになっている。よって、本実施形態における制御装置30は、エンジントルクを推定するトルク推定手段としての機能も有する。
【0045】
また、アクセル踏み込み量が零、すなわち、エンジン10が無負荷状態のとき(アイドル状態のとき)は、負荷を扱うこと等による酸素濃度変化がないため、エンジン10が無負荷状態のときの排気中の酸素濃度を検出することで、標高を正確に推定することができる。そして、制御装置30は、無負荷状態のときの空燃比センサ33による酸素濃度検出結果に基づいて標高を推定する。よって、制御装置30は標高推定手段としての機能も有する。
【0046】
さらに、ROMには、エンジントルクとエンジン回転数とを関係付けた排気温マップが予め記憶されており、制御装置30は、この排気温マップを用いて排気温度を推定する。また、ROMには、エンジントルクとエンジン回転数とを関係付けたPM排出量マップが予め記憶されている。そして、制御装置30は、このPM排出量マップによりフィルタ20に堆積したPM堆積量を推定する。よって、本実施形態における制御装置30は、PM堆積量を推定する堆積量推定手段としての機能も有する。
【0047】
次に、本実施形態の制御装置30におけるフィルタ20の再生処理の制御手順について説明する。この再生処理の制御は、所定時間ごとに実行されるものである。
図3に示すように、まず、制御装置30は、アクセルポジションセンサ31により検出されたアクセル踏み込み量検出結果に基づいてエンジン10が無負荷状態であるか否かを判定する(ステップS10)。この判定結果が肯定(アクセル踏み込み量が零)の場合(ステップS10においてYES)、制御装置30は、空燃比センサ33により検出された酸素濃度検出結果に基づいて標高を推定する(ステップS11)。ステップS11において推定された標高はRAMに記憶される。一方、ステップS10の判定結果が否定の場合(ステップS10においてNO)、ステップS10の処理を繰り返し実行する。
【0048】
次に、制御装置30は、ステップS11において推定された標高に応じた換算近似式を選定する(ステップS12)。そして、制御装置30は、ステップS12において選定された換算近似式と、酸素濃度検出結果とに基づいてエンジントルクを推定する(ステップS13)。次に、制御装置30は、クランク角度検出器32によって検出されたクランク角度検出結果に基づいてエンジン回転数を算出するとともに、そのエンジン回転数と、ステップS13において推定されたエンジントルクとに基づいてPM排出量マップからPM堆積量を推定する(ステップS14)。
【0049】
そして、ステップS14において推定されたPM堆積量が所定量以上であるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15の判定結果が否定の場合(ステップS15においてNO)、フィルタ20におけるPM堆積量にまだ余裕があり、フィルタ20の再生処理を必要としていないため、この一連の処理を終了する。一方、この判定結果が肯定の場合(ステップS15においてYES)、制御装置30は、フィルタ20の再生処理モードを開始する制御を行う(ステップS16)。
【0050】
そして、制御装置30は、エアポンプ43及び燃料ポンプ44を駆動させるとともに燃料噴射ノズル41から燃料を噴射するように制御して、点火プラグ42により燃料を着火燃焼させる(ステップS17)。すると、バーナ管40aで燃料が燃焼し、フィルタ20上流の排気温度が昇温する。次に、制御装置30は、ステップS13において推定されたエンジントルク及びエンジン回転数を用いて、排気温マップから排気温度を推定する(ステップS18)。そして、制御装置30は、ステップS18において推定された排気温度が適切な温度として予め設定された温度(例えば、650℃)に維持されるように、エアポンプ43及び燃料ポンプ44の駆動を制御して、燃料噴射ノズル41による燃料噴射量を制御する(ステップS19)。ここで、排気温度が650℃に維持されている時間はタイマカウンタによりカウントされている。
【0051】
次に、制御装置30は、タイマカウンタによりカウントされた時間が所定時間経過したか否かを判定して、フィルタ20の再生処理が完了したか否かを判定する(ステップS20)。ここで、「所定時間」とは、フィルタ20に堆積したPMを燃焼除去するために必要な時間のことをいう。この判定結果が肯定の場合(ステップS20においてYES)、フィルタ20に堆積したPMが燃焼除去されたと判断し、制御装置30によるフィルタ20の再生処理の制御が終了する。一方、ステップS20の判定結果が否定の場合(ステップS20においてNO)、ステップS18へ移行する。
【0052】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)制御装置30は、空燃比センサ33により検出された酸素濃度検出結果に基づいてエンジントルクを推定している。そして、推定されたエンジントルクと、検出されたエンジン回転数とに基づいてフィルタ20におけるPM堆積量を推定する。よって、例えば、フィルタ20におけるPM堆積量を推定するために、フィルタ20の上流側及び下流側に温度センサを設ける必要がなく、簡単な構成でフィルタ20におけるPM堆積量を推定することができる。さらに、制御装置30は、推定されたトルクに基づいて排気温度を推定することができる。よって、排気温度検出のために、熱電対のような温度センサを必要とせず、装置自体を簡素化することができる。また、エンジン10が図2に示すようなガバナ特性を有していても、制御装置30は、酸素濃度検出結果からエンジントルクを推定することで、エンジン10の無負荷状態を検知する以外にアクセルポジションセンサ31を用いることなく安価なシステムでエンジントルクの変化を推定することができる。そして、制御装置30は、そのエンジントルクに基づいて燃料噴射ノズル41によるPM除去のための燃料噴射量を制御することで、フィルタ20よりも上流の排気温度を適切な温度に昇温させ、フィルタ20に堆積したPMを除去することができる。
【0053】
(2)制御装置30は、排気中の酸素濃度に基づいて標高を推定する。よって、例えば、気圧センサ等を用いて標高を推定する場合に比べて、部品点数を増加させることなく標高を推定することができる。そして、制御装置30は、標高に応じて選定された換算近似式を用いて、その標高に車両があるときの空燃比センサ33により検出された酸素濃度に基づいて、そのときのエンジントルクを推定している。よって、排気中の酸素濃度が標高によって変動したとしても、エンジントルクを正確に推定することができる。
【0054】
(3)例えば、アクセルペダル18を踏み込むことでトルクが変動すると、排気中の酸素濃度にばらつきが生じるが、制御装置30は、エンジン10が無負荷状態のときの酸素濃度に基づいて標高を推定している。よって、空燃比センサ33により検出される酸素濃度にばらつきが生じることがなく、標高を正確に推定することができる。
【0055】
(4)本実施形態では、昇温手段として、燃料噴射ノズル41と、点火プラグ42と、エアポンプ43と、燃料ポンプ44とを備えたバーナ装置40を適用した。よって、エアポンプ43及び燃料ポンプ44を制御し燃料噴射ノズル41からの燃料噴射量を制御することで、フィルタ20上流の排気温度を制御することができる。よって、フィルタ20の再生処理のために燃料を噴射するといった自由な制御ができないエンジン10であっても、フィルタ20よりも上流側にバーナ装置40を設けることで、フィルタ20の再生処理のために燃料を噴射してフィルタ20上流の排気温度を昇温させることができる。したがって、エンジン10がコモンレール式ディーゼルエンジンのように電子制御装置を備えていなくても、簡単な構成でフィルタ20上流の排気温度を制御することができる。
【0056】
(5)制御装置30は、標高に応じた換算近似式を用いて推定されたエンジントルクと、エンジン回転数とを用いてPM堆積量を推定しているため、その標高に車両があるときにおけるフィルタ20に堆積したPM堆積量を正確に推定することができる。
【0057】
(6)例えば、温度センサとしての熱電対により排気温度を検出する場合、熱電対自身が熱容量を持つため、例えばエンジントルクが瞬時に大きく変わるフォークリフト用(建設機械用)エンジンには追随できず、熱電対では正確な温度検出ができない場合がある。しかし、上記構成の排気浄化装置によれば、空燃比センサ33により検出される排気中の酸素濃度検出結果を用いて排気温度を推定することができるため、排気温度の変化が速い場合にも、熱電対により排気温度を検出する場合に比べて、正確に排気温度を推定することができる。
【0058】
(7)換算近似式を用いることで、空燃比センサ33により検出された酸素濃度のみをパラメータとして使用するだけで、エンジントルクを推定することができる。よって、エンジントルクを推定するための演算処理が簡素化される。
【0059】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態の制御装置30におけるフィルタ20の再生処理の制御手順について図4及び図5にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0060】
本実施形態では、エンジントルクの推定方法として、換算近似式ではなく、酸素濃度マップを用いている。ここにおける酸素濃度マップは、標高毎に設定された複数の酸素濃度マップである。なお、ROMには、図4に示すような標高に応じた酸素濃度マップが予め複数記憶されている。
【0061】
図4は、ある標高における酸素濃度に基づいて得られるエンジン回転数とエンジントルクとの関係を示す酸素濃度マップである。この酸素濃度マップにおいて、帯状部分により排気中の酸素濃度帯を示すとともに、横軸にエンジン回転数を示し、縦軸にエンジントルクを示している。図4に示すように、排気中の酸素濃度帯毎は、エンジントルクと関係がある。このため、空燃比センサ33による酸素濃度検出結果及びエンジン回転数に基づいてエンジントルクを推定することができるのである。
【0062】
図5に示すように、まず、制御装置30は、第1の実施形態と同様にステップS10の処理にてエンジン10が無負荷状態であるか否かを判定するとともに、この判定結果が肯定の場合に、ステップS11の処理にて空燃比センサ33により検出された酸素濃度検出結果に基づいて標高を推定する。
【0063】
次に、制御装置30は、ステップS11において推定された標高に応じた酸素濃度マップを選定する(ステップS21)。そして、制御装置30は、ステップS21において選定された酸素濃度マップを用いて、酸素濃度検出結果と、検出されたエンジン回転数とに基づいてエンジントルクを推定する(ステップS22)。例えば、図4に示す酸素濃度マップが選定された場合、検出されたエンジン回転数(例えばエンジン回転数Nx)と、検出された酸素濃度(例えば酸素濃度14%)とからエンジントルクTxが推定される。次に、制御装置30は、ステップS14の処理へ移行して、PM堆積量を推定する。なお、ステップS14以降については、第1の実施形態における制御装置30におけるフィルタ20の再生処理の制御手順と同様のため、その説明を省略する。
【0064】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(6)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(8)制御装置30は、標高と、エンジン回転数と、エンジントルクとの関係を表す酸素濃度マップを標高に応じて選定し、選定された酸素濃度マップを用いて酸素濃度とエンジン回転数とに応じたエンジントルクを推定している。よって、酸素濃度とエンジントルクとの関係からエンジントルクを推定する場合に比べて、エンジン回転数をパラメータとして考慮している分、さらに正確なエンジントルクを得ることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態を図6及び図7にしたがって説明する。
図6に示すように、バーナ管40a内には温度センサ51が設けられるとともに、温度センサ51によって検出された温度検出結果が制御装置30に送られるようになっている。また、エンジン10はオートチョーク52を備えている。オートチョーク52は、制御装置30と信号接続されるとともに、制御装置30は、排気温度が所定温度よりも低い場合にオートチョーク52をONにするようオートチョーク52に対して指令信号を送り、排気温度が所定温度よりも高くなると、オートチョーク52をOFFにするようにオートチョーク52に対して指令信号を送るようになっている。
【0066】
そして、本実施形態では、制御装置30がフィルタ20の再生処理モードを開始した後に行われる失火対策処理が、フィルタ20の再生処理に組み込まれている。この失火対策処理は、図3又は図5に示すフローチャートにおいて、ステップS16とステップS18との間に組み込まれている。なお、以下の説明では、ステップS10からステップS16までの処理、及びステップS18からステップS20までの処理は、第1及び第2の実施形態と同様のためその説明を省略するとともに、図7においてその図示を簡略化している。
【0067】
図7に示すように、制御装置30は、ステップS16の処理の後、ステップS13又はステップS22において推定されたエンジントルク及びエンジン回転数を用いて排気温度を推定し、推定された排気温度が所定温度である100℃以上であるか否かを判定する(ステップS31)。この判定結果が肯定の場合(ステップS31においてYES)、制御装置30は、排気温度が所定温度よりも低い状態ではないと判断し、ステップS17に移行した後、ステップS18に移行する。一方、ステップS31の判定結果が否定の場合(ステップS31においてNO)、排気温度が所定温度よりも低い状態であると判断し、制御装置30は、オートチョーク52をONにするようオートチョーク52に対して指令信号を送る(ステップS32)。すると、吸気通路12を流れる吸気が自動的に絞られてエンジン回転数が上昇し、その結果、排気温度が上昇する。
【0068】
次に、制御装置30は、ステップS13又はステップS22において推定されたエンジントルクと、検出されたエンジン回転数とを用いて、ROMに予め記憶された排気温マップから排気温度を推定し、その推定された排気温度が100℃以上であるか否かを判定する(ステップS33)。この判定結果が肯定の場合(ステップS33においてYES)、制御装置30は、ステップS17に進んだ後、温度センサ51により検出された温度検出結果に基づいて、バーナ管40a内の温度が150℃以上であるか否かを判定する(ステップS34)。この判定結果が肯定の場合(ステップS34においてYES)、バーナ管40a内の温度が排気により暖められており、燃料噴射ノズル41から噴射される燃料を点火プラグ42により着火燃焼する際に、バーナ管40a内で燃料が失火してしまう虞がない。よって、制御装置30は、オートチョーク52をOFFにするようにオートチョーク52に対して指令信号を送る(ステップS35)。すると、排気温度を昇温させるためにエンジン回転数を上げる制御が終了して、ステップS18へ移行する。一方、ステップS33又はステップS34の判定結果が否定の場合(ステップS33又はステップS34においてNO)は、ステップS33又はステップS34の処理を繰り返し実行する。
【0069】
したがって、第3の実施形態によれば以下に示す効果を得ることができる。
(9)制御装置30は、排気温度が所定温度よりも低い状態である場合に、フィルタ20の再生処理モードを開始するようにバーナ装置40に指令信号を送ってから、点火プラグ42により燃料を着火するまでの間に、エンジン回転数を上げて排気温度を上昇させる制御を行う。よって、排気温度が所定温度よりも低い状態で燃料噴射ノズル41から噴射される燃料を点火プラグ42により着火燃焼させる際に、バーナ管40a内で燃料が失火してしまうことを抑制することができる。
【0070】
(第4の実施形態)
以下、本発明を具体化した第4の実施形態を図8及び図9にしたがって説明する。本実施形態では、PM堆積量の推定方法として、トルクによる推定ではなく、差圧センサの検出値を用いている。
【0071】
図8に示すように、フィルタの上流側及び下流側の差圧ΔPを検出する差圧センサ61が設けられるとともに、差圧センサ61によって検出された検出値(差圧ΔP)が制御装置30に送られるようになっている。そして、図9に示すように、第1の実施形態と同様にステップS10からS13の処理を行った後、制御装置30は、差圧センサ61によって検出された差圧ΔPに基づいてPM堆積量を推定する(ステップS41)。次に、制御装置30は、ステップS15の処理へ移行し、ステップS41において推定されたPM堆積量が所定量以上であるか否かを判定する。なお、ステップS15以降については、第1の実施形態における制御装置30におけるフィルタ20の再生処理の制御手順と同様のため、その説明を省略する。
【0072】
したがって、第4の実施形態によれば、第1の実施形態の効果(2)〜(4)、(6)、(7)と同様の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(10)制御装置30は、差圧センサ61によって検出されるフィルタの上流側及び下流側の差圧ΔPが所定の閾値を越えたことのみを判定すればよいため、トルク推定によるPM堆積量の積算で再生の要否の判断をすることと比較して、単純な制御でフィルタ再生の要否を判断することができる。また、差圧センサ61であればセンサは1個で済むため、温度センサなど2個の絶対圧センサを用いる場合に比べて、部品点数の低減に加えて個体差のばらつきによる推定精度の低下を低減することができる。
【0073】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第3の実施形態の失火対策処理を第1、第2及び第4の実施形態に適用してもよい。その際には、エンジントルク及びエンジン回転数により推定される排気温度が200℃を越えるまでオートチョーク52を作動させる。具体的には、図10に示すように、まず、制御装置30は、排気温度が所定温度よりも低い状態のとき(ステップS31においてNO)、ステップS32においてオートチョーク52をONにする。次に、制御装置30は、ステップS33を介してステップS17に移行した後、エンジントルク及びエンジン回転数により推定される排気温度が200℃以上であるか否かを判定する(ステップS51)。この判定結果が肯定の場合(ステップS51においてYES)、バーナ管40a内の温度が排気により暖められており、燃料噴射ノズル41から噴射される燃料を点火プラグ42により着火燃焼する際に、バーナ管40a内で燃料が失火してしまう虞がない。よって、制御装置30は、ステップS35へ移行して、オートチョーク52をOFFにするようにオートチョーク52に対して指令信号を送る。一方、ステップS51の判定結果が否定の場合(ステップS51においてNO)、制御装置30は、エンジントルク及びエンジン回転数により推定される排気温度が200℃以上になるまでオートチョーク52を作動させる。このようにすれば、温度センサ51によりバーナ管40a内の温度を検出する必要がないため、温度センサ51を省略しつつ失火対策処理をすることができる。
【0074】
○ 上記各実施形態において、制御装置30は、エンジン10が無負荷状態のときに、空燃比センサ33により検出された酸素濃度検出結果に基づいて標高を推定したが、これに限らず、例えば、所定のエンジン回転数のときに、空燃比センサ33により検出された酸素濃度検出結果に基づいて標高を推定してもよい。
【0075】
○ 上記各実施形態において、制御装置30は再生処理が開始すると、常にステップ11において標高を推定したが、これに限らない。例えば、標高差がそれほどない場所でエンジン10を使用するならば、一度ステップS10〜ステップS12の処理を経た場合に、エンジン10が作動継続であることを条件として、ステップ15がNOの判定のときに、ステップS13に戻りステップS15がYESの判定になるまでステップS13〜ステップS15を繰り返す処理をしてもよい。
【0076】
○ 上記各実施形態では、ステップS18においては、ステップS13あるいはステップS22において推定されたエンジントルク及びエンジン回転数を用いて、排気温マップから排気温度を推定していたが、これに限らない。例えば、ステップS18において、再度エンジントルクを空燃比センサ33によって推定し、エンジン回転数を検出して、排気温マップから排気温度を推定してもよい。
【0077】
○ 上記各実施形態では、昇温手段としてバーナ装置40を用いたが、これに限らず、例えば、電気加熱によりフィルタ20上流の排気温度を昇温させる電気ヒータを用いてもよい。
【0078】
○ 上記各実施形態では、エンジン10の無負荷状態を検知するのにアクセルポジションセンサ31を用いていたが、これに限らず、例えば、燃料噴射ポンプ15の作動状態でエンジン10の無負荷状態を検知してもよく、単にアクセル踏み込み量が零かどうかのみを検出するものであってもよい。
【0079】
○ 第3の実施形態では、オートチョーク52を用いて、吸気通路12を流れる吸気を自動的に絞るようにしたが、これに限らず、手動式のチョークを用いて、吸気通路12を流れる吸気を絞るようにしてもよい。
【0080】
○ 本発明を、コモンレール式ディーゼルエンジンに適用してもよい。
○ 本発明は、フォークリフト用ディーゼルエンジンに限らず、例えば、パワーショベル等の建設機械用エンジンに適用することもできる。
【0081】
○ 本発明は、ディーゼルエンジンの排気浄化装置に限らず、ガソリンエンジンの排気浄化装置に適用することもできる。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0082】
(イ)前記内燃機関は、燃料噴射量を機械的に調整する燃料噴射ポンプを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【符号の説明】
【0083】
10…内燃機関としてのエンジン、13…排気通路、20…フィルタ、33…酸素濃度検出手段としての空燃比センサ、30…トルク推定手段、標高推定手段、堆積量推定手段、及び制御手段としての機能を有する制御装置、40…昇温手段としてのバーナ装置、41…燃料噴射ノズル、42…点火プラグ、43…エアポンプ、44…燃料ポンプ、61…差圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関で発生する排気を導く排気通路に設けられるとともに排気に含まれるPMを捕集するフィルタと、
前記フィルタにおけるPM堆積量を推定する堆積量推定手段と、
前記排気通路における前記フィルタよりも上流側の排気温度を昇温させる昇温手段と、
前記排気通路における前記昇温手段よりも上流側に設けられるとともに前記排気通路を流れる排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいてトルクを推定するトルク推定手段と、
前記トルク推定手段により推定されたトルクを利用して前記昇温手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記酸素濃度検出手段により検出された排気中の酸素濃度に基づいて標高を推定する標高推定手段をさらに備え、
前記トルク推定手段は、前記標高推定手段により推定された標高に応じてトルクを推定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記標高推定手段は、前記内燃機関が無負荷状態のときに前記酸素濃度検出手段により検出された排気中の酸素濃度に基づいて標高を推定することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記トルク推定手段は、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度とトルクとの関係から得られる換算近似式を、前記標高推定手段により推定された標高に応じて選定し、
選定された前記換算近似式と、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度との関係を用いて、前記標高推定手段により推定された標高に応じたトルクを推定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記トルク推定手段は、前記内燃機関の回転数と、トルクとの関係を表す酸素濃度マップを、前記標高推定手段により推定された標高に応じて選定し、
前記トルク推定手段は、選定された前記酸素濃度マップを用いて、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度と、前記内燃機関の検出された回転数とに応じたトルクを推定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記堆積量推定手段は、前記トルク推定手段により推定されたトルクを利用して前記フィルタにおけるPM堆積量を推定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記堆積量推定手段は、前記フィルタの上流側及び下流側の圧力を検出する差圧センサの検出値からPM堆積量を推定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記昇温手段は、前記排気通路に燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、前記燃料噴射ノズルから噴射された燃料を着火燃焼させるための点火プラグと、前記燃料噴射ノズルにエアを供給するエアポンプと、前記燃料噴射ノズルに燃料を供給する燃料ポンプとを備えたバーナ装置であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−252486(P2011−252486A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128866(P2010−128866)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】