説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】内燃機関の排気浄化装置に関し、DPF再生時の排気温度をPM燃焼温度に安定させる。
【解決手段】車両1に搭載される内燃機関11の排気浄化装置10に、制動時に推進軸32に接続されるとともに、推進軸32の回転力で発電作動する発電機25と、排気通路15に設けられ、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタ44を有する排気浄化部40と、制動時に発電機25から供給される電力を利用して通過する排気を昇温する電熱ヒータ43と、制動時に電熱ヒータ43を通過する排気の流量を調整する排気流量調整手段50と、制動時に電熱ヒータ43を通過する排気が粒子状物質の燃焼温度まで昇温される流量となるように、排気流量調整手段50を制御する制御手段60とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気中に含まれる粒子状物質(以下、PMという)を除去するフィルタとして、DPF(Diesel Particulate Filter)が知られている。このDPFは、ポスト噴射や排気管噴射により上流側の酸化触媒に燃料を供給するとともに、酸化触媒で発生する酸化熱を利用して堆積したPMを燃焼除去する再生が行われる。
【0003】
しかし、DPFの再生時に行われるポスト噴射等の燃料噴射は、燃費の悪化を招く可能性がある。そこで、酸化触媒とDPFとの間に電熱ヒータを設け、この電熱ヒータにより排気を昇温してDPFに堆積したPMを燃焼除去する再生装置が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、車両の制動時におけるプロペラシャフトの回転で発電機を駆動させ、発電された電力を利用して電熱ヒータにより排気を昇温するDPFの再生装置が開示されている。
【0005】
この特許文献1に記載の再生装置では、発電機による発電作動を車両の制動時に行い、電熱ヒータによる排気の昇温も車両の制動時に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−82288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の再生装置によれば、プロペラシャフトの回転数は車速と比例するので、制動時における発電機の発電量も車速と比例することになる。
【0008】
しかし、ディーゼルエンジンから排出される排気流量(空気流量)は、運転状態によって車速と比例しないことがあり、そのため、排気流量と発電機による発電量とが比例しない場合もある。すなわち、排気流量と発電量とが比例しないような運転状態においては、電熱ヒータにより排気をPM燃焼温度まで昇温することができず、DPFの再生を十分に行えない可能性がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、DPFの再生時に、電熱ヒータを通過する排気の温度を昇温してPM燃焼温度に安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、車両に搭載される内燃機関の排気浄化装置であって、前記車両の制動時に前記車両の推進軸に接続されるとともに、前記推進軸の回転力で発電作動する発電機と、前記内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気浄化部と、前記フィルタよりも上流側の前記排気浄化部に設けられ、前記車両の制動時に前記発電機から供給される電力を利用して通過する排気を昇温する電熱ヒータと、前記排気浄化部に設けられ、前記車両の制動時に前記電熱ヒータを通過する排気の流量を調整する排気流量調整手段と、前記車両の制動時に前記電熱ヒータを通過する排気が粒子状物質の燃焼温度まで昇温される流量となるように、前記排気流量調整手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記発電機による発電量を測定する発電量測定手段をさらに備え、前記制御手段は、前記発電量測定手段の測定値に応じて、前記車両の制動時に前記電熱ヒータを通過する排気が粒子状物質の燃焼温度まで昇温される流量となるように、前記排気流量調整手段を制御してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、DPFの再生時に、電熱ヒータを通過する排気の温度を昇温してPM燃焼温度に安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を示す模式的な全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の開度設定マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1,2に基づいて、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置10について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置10は、トラック等の車両1に適用されるもので、図1に示すように、内燃機関としてのディーゼルエンジン(以下、エンジンという)11と、車両1の駆動系から動力を取り出す動力取出部20と、この動力取出部20から伝達される動力で発電作動する発電機25と、エンジン11の排気系に設けられた排気浄化部40と、ECU(電子制御ユニット)60とを備える。
【0016】
エンジン11は、図1に示すように、車両1の前方に搭載されている。また、エンジン11の出力軸は、変速機クラッチ30を介して変速機31の入力軸と断接可能に連結されている。変速機31の出力軸にはプロペラシャフト(推進軸)32の一端が接続され、プロペラシャフト32の他端には差動装置33が接続されている。また、プロペラシャフト32には、動力取出部20の一部を構成するプロペラシャフト側プーリ21が設けられている。さらに、差動装置33には、左右方向にそれぞれ延びるとともに、先端に駆動輪34がそれぞれ取り付けられた左右一対の駆動軸35が設けられている。
【0017】
エンジン11には吸気マニホールド12と排気マニホールド13とが設けられている。吸気マニホールド12には、エンジン11内の吸気弁(不図示)の開弁により新気を導入する吸気通路14が接続されている。また、排気マニホールド13には、排気弁(不図示)の開弁により排気を排出する排気通路15が接続されている。
【0018】
吸気通路14には、上流側から順にエアフィルタ16と、ターボ過給機17のコンプレッサ17aと、インタクーラ18が配設されている。また、排気通路15には、上流側から順にターボ過給機17のタービン17bと、排気浄化部40が配設されている。
【0019】
動力取出部20は、プロペラシャフト側プーリ21と、プロペラシャフト側プーリ21にベルト22を介して連結された発電機側プーリ23と、発電機側プーリ23と発電機25の入力軸とを断接可能に連結する発電機クラッチ24とを備える。この発電機クラッチ24は、電気配線を介してECU60に接続されており、ECU60から出力される作動信号に応じて断接が制御される。
【0020】
発電機25は、車両1の制動時に発電機クラッチ24がECU60によって接状態に制御されると、プロペラシャフト32から動力取出部20を介して取り出した動力で発電作動する。また、発電機25は、電気配線を介してECU60に接続されており、制動時に発電した電力を排気浄化部40の電熱ヒータ43に供給するように構成されている。
【0021】
排気浄化部40は、ケーシング41内に上流側から順に、酸化触媒(以下、DOCという)42と、電熱ヒータ43と、パティキュレートフィルタ(以下、DPFという)44と、排気流量調整バルブ(排気流量調整手段)50とを備え構成されている。
【0022】
DOC42は、セラミック製のハニカム構造を有する担体に、白金(Pt)等を担持して形成されている。このDOC42は、排気中のNOを酸化してNO2を生成するとともに、排気中のHCとCOとを酸化してH2OとCO2とを生成する。
【0023】
電熱ヒータ43は、電気配線を介してECU60に接続されている。この電熱ヒータ43は、車両1の制動時に発電機25で発電された電力がECU60を介して供給されることで、電熱ヒータ43を通過する排気を昇温するように構成されている。
【0024】
DPF44は、セラミック製のハニカム構造体からなる多数のセル内をガス流路として備え、上流側と下流側とを交互に目封じして形成されている。このDPF44は、排気中に含まれるPMを捕集する。また、車両1の制動時に上流側の電熱ヒータ43により排気がPM燃焼温度まで昇温されると、堆積したPMを燃焼除去する再生が行われる。
【0025】
排気流量調整バルブ50は、例えばバタフライバルブであって、ECU60によりその開度を連続的に調整可能に構成されている。この排気流量調整バルブ50の開度を調整することで、電熱ヒータ43を通過してDPF44に流れ込む排気の流量は調整される。なお、本実施形態において、排気流量調整バルブ50は、DPF44よりもよりも下流側の排気浄化部40(ケーシング41内)に設けられているが、電熱ヒータ43よりも上流側の排気浄化部40(ケーシング41内)に設けてもよい。
【0026】
ECU(電子制御ユニット)60は、車両1やエンジン11の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。この各種制御を行うために、ECU60には、図示しない車速センサ、エンジン回転センサ、アクセル開度センサ(不図示)等の各種センサの出力信号がA/D変換された後に入力される。
【0027】
また、ECU60は、発電機クラッチ制御部61と、発電量測定部62と、排気流量調整制御部63とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアであるECU60に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0028】
発電機クラッチ制御部61は、車両1の制動時に発電機クラッチ24を接状態に制御し、制動時以外の運転状態においては、発電機クラッチ24を断状態に制御する。具体的には、この発電機クラッチ制御部61は、車速センサやアクセル開度センサ等の検出値に基づいて、車両1が制動中であるか否かを判定する。そして、制動中と判定した場合、発電機クラッチ制御部61は、発電機クラッチ24にクラッチを接状態にする作動信号を出力する。すなわち、発電機25はプロペラシャフト32から取り出した動力で発電作動し、発電された電力がECU60を介して電熱ヒータ43に供給されるように構成されている。
【0029】
一方、制動中でないと判定した場合、発電機クラッチ制御部61は、発電機クラッチ24にクラッチを断状態にする作動信号を出力する。すなわち、発電機25の入力軸と発電機側プーリ23とが断状態となることで、発電機25は発電作動しないように構成されている。
【0030】
発電量測定部62は、発電機25から電気配線を介して供給される電流と電圧とに基づいて、車両1の制動時に発電機25で発電される発電量を算出する。
【0031】
排気流量調整制御部63は、車両1の制動時に電熱ヒータ43を通過する排気がPM燃焼温度(例えば500〜550℃)まで昇温される流量となるように、排気流量調整バルブ50の開度を制御する。具体的には、このECU60には、予め実験等で作成した、プロペラシャフト32の回転数と、発電機25の発電量と、排気流量調整バルブ50の開度と、電熱ヒータ43を通過する排気流量との関係を示す開度設定マップ(図2参照)が記憶されている。そして、排気流量調整制御部63は、この開度設定マップと発電量測定部62で算出された発電機25の発電量とに基づいて、電熱ヒータ43により昇温される排気の温度がPM燃焼温度で安定するように、排気流量調整バルブ50の開度を制御する。例えば、電熱ヒータ43を通過する排気流量が多い場合、排気流量調整バルブ50の開度は大きく設定される。一方、電熱ヒータ43を通過する排気流量が少ない場合、排気流量調整バルブ50の開度は小さく設定される。このように、車両1の制動時に排気流量が発電量に応じて調整されることで、電熱ヒータ43を通過する排気の温度はPM燃焼温度で安定し、DPF44に堆積したPMが確実に燃焼除去される。
【0032】
以上のような構成により、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置10によれば以下のような作用効果を奏する。
【0033】
車両1の制動時に発電機クラッチ24が接状態に制御されると、発電機25はプロペラシャフト32から取り出した動力で発電作動する。そして、発電機25で発電された電力は電熱ヒータ43に供給され、電熱ヒータ43を通過する排気が昇温される。この時、電熱ヒータ43を通過する排気はPM燃焼温度まで昇温される流量となるように、排気流量調整バルブ50の開度が発電機25の発電量に応じて調整される。
【0034】
すなわち、発電機25の発電量の変化に応じて、排気流量調整バルブ50の開度が調整されることで、電熱ヒータ43を通過してDPF44に流れ込む排気の温度をPM燃焼温度に安定して維持することが可能となる。
【0035】
したがって、車両1の制動時に電熱ヒータ43を通過する排気の温度をPM燃焼温度に安定させることで、DPF44に堆積したPMを効率よく燃焼除去することができ、DPF44の再生を確実に行うことが可能となる。
【0036】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0037】
例えば、排気流量調整バルブ50の開度は、発電機25の発電量に応じて調整されるものとして説明したが、プロペラシャフト32の回転数に応じて調整してもよい。
【0038】
また、排気流量調整バルブ50の開度を電熱ヒータ43よりも下流側に設けた図示しない排気温度センサの検出値に応じて、この検出値がPM燃焼温度を維持するように調整してもよい。
【0039】
また、排気流量調整バルブ50の開度は、必ずしも開度設定マップ(図2参照)に基づいて設定される必要はなく、発電機25の発電量と排気流量調整バルブ50の開度との関係式を予め実験等で作成し、この関係式から算出してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
11 ディーゼルエンジン(内燃機関)
15 排気通路
25 発電機
32 プロペラシャフト(推進軸)
40 排気浄化部
43 電熱ヒータ
44 DPF(フィルタ)
50 排気流量調整バルブ(排気流量調整手段)
60 ECU(制御手段)
62 発電量測定部(発電量測定手段)
63 排気流量調整制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関の排気浄化装置であって、
前記車両の制動時に前記車両の推進軸に接続されるとともに、前記推進軸の回転力で発電作動する発電機と、
前記内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気浄化部と、
前記フィルタよりも上流側の前記排気浄化部に設けられ、前記車両の制動時に前記発電機から供給される電力を利用して通過する排気を昇温する電熱ヒータと、
前記排気浄化部に設けられ、前記車両の制動時に前記電熱ヒータを通過する排気の流量を調整する排気流量調整手段と、
前記車両の制動時に前記電熱ヒータを通過する排気が粒子状物質の燃焼温度まで昇温される流量となるように、前記排気流量調整手段を制御する制御手段と、を備える
ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記発電機による発電量を測定する発電量測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記発電量測定手段の測定値に応じて、前記車両の制動時に前記電熱ヒータを通過する排気が粒子状物質の燃焼温度まで昇温される流量となるように、前記排気流量調整手段を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−132378(P2012−132378A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285785(P2010−285785)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】