説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】本発明は、PMセンサの検出精度の低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、内燃機関の排気通路において、フィルタより下流側に選択還元型NOx触媒が設けられており、選択還元型NOx触媒よりも下流側にPMセンサが設けられている。そして、選択還元型NOx触媒に還元剤を供給すべく該選択還元型NOx触媒よりも上流側の排気中に還元剤を添加するときに、選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多い場合は、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値以下の場合よりも還元剤の添加周期を短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
選択還元型NOx触媒(以下、単に「NOx触媒」ともいう。)に対して尿素を供給する排気浄化装置において、尿素からアンモニアへの反応途中に生成される中間生成物の排気通路内における蓄積量が上限量に達すると、尿素水の供給を禁止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術によれば、中間生成物の排気通路内における蓄積量が上限量に達するまでは、還元剤をNOx触媒に供給することができる。
【0003】
ところで、排気通路には、粒子状物質(以下、単に「PM」ともいう。)を捕集するためのフィルタを備えることがある。さらに、このフィルタの故障を判定するために、排気中のPM量を検出するPMセンサを排気通路に設けることがある。このPMセンサの電極またはカバーに前記中間生成物が付着すると、PM量を正確に検出することが困難となる虞がある。そうすると、フィルタの故障判定の精度が低くなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−085172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、PMセンサの検出精度の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置では、内燃機関の排気通路において、フィルタより下流側にNOx触媒が設けられており、NOx触媒よりも下流側にPMセンサが設けられている。そして、NOx触媒に還元剤を供給する際には該NOx触媒よりも上流側の排気中に還元剤を周期的に添加する。このとき、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量に基づいて還元剤の添加周期を変更する。
【0007】
より詳しくは、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、
内燃機関の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタよりも下流側に設けられ供給される還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
前記選択還元型NOx触媒に還元剤を供給する際に、該選択還元型NOx触媒よりも上流側の排気中に還元剤を周期的に添加する添加装置と、
前記選択還元型NOx触媒よりも下流側で排気中の粒子状物質の量を検出するPMセンサと、
前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多い場合は、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値以下の場合よりも、前記添加装置からの還元剤の添加周期を短くする制御部と、
を備える。
【0008】
ここで、添加装置から還元剤を供給したときに、排気やNOx触媒の状態によっては、還元剤の一部がNOx触媒におけるNOxの還元に消費されずにNOx触媒を通り抜けて
PMセンサに付着することがある。PMセンサに還元剤が付着すると、該PMセンサの出力値が変化してしまい、PMを正確に検出することが困難となる。
【0009】
そこで、本発明では、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多い場合は、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値以下の場合よりも、添加装置からの還元剤の添加周期を短くする。ここで、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量は、所定期間にNOx触媒を通り抜ける還元剤の量の積算値であってもよく、単位時間当たりにNOx触媒を通り抜ける還元剤の量であってもよい。また、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量における閾値とは、PMセンサに付着する還元剤の量が許容範囲の上限値となる量(即ち、還元剤の付着に起因するPMセンサの出力値の変化量が許容範囲の上限値となる量)であってもよい。
【0010】
還元剤の添加周期を短くすると、一回の添加当たりの還元剤の添加量が減少する。そのため、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量を少なくすることができる。その結果、PMセンサに付着する還元剤の量を少なくできる。従って、PMセンサの検出値が還元剤により変化することを抑制できる。つまり、還元剤の付着に起因するPMセンサの検出精度の低下を抑制することができる。
【0011】
本発明においては、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多いために添加装置からの還元剤の添加周期を短くする場合は、排気通路における還元剤が添加される部分の排気の流量がその脈動によって減少している状態の時に添加装置から還元剤が添加されるように、還元剤の添加周期を排気の脈動周期と同期させてもよい。これによれば、排気の流量が可及的に少ない時(即ち、排気の流速が低い時)に還元剤が添加される。そのため、NOx触媒を還元剤がより通り抜け難くなる。従って、PMセンサに付着する還元剤の量を可及的に少なくできる。
【0012】
ここで、NOx触媒の温度が低くなると、該NOx触媒において還元剤が反応し難くなるため、該NOx触媒を還元剤が通り抜けやすくなる。すなわち、NOx触媒の温度と、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量と、には相関関係がある。また、NOx触媒よりも上流側の排気の温度が低くなると、該NOx触媒において還元剤が反応し難くなるため、該NOx触媒を還元剤が通り抜けやすくなる。すなわち、排気の温度と、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量と、には相関関係がある。
【0013】
また、NOx触媒を通過する排気の流量が多くなると、該NOx触媒において還元剤の反応が終了する前に還元剤が該NOx触媒を通り抜けやすくなる。すなわち、排気の流量と、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量と、には相関関係がある。また、NOx触媒に吸着している還元剤量が多くなると、該NOx触媒に還元剤が吸着し難くなるので、還元剤が該NOx触媒を通り抜けやすくなる。すなわち、還元剤の吸着量と、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量と、には相関関係がある。
【0014】
そこで、本発明において、制御部は、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量を、NOx触媒の温度、排気の温度、排気の流量、又はNOx触媒における還元剤の吸着量の少なくとも1つに基づいて算出してもよい。
【0015】
また、本発明において、制御部は、NOx触媒の温度が閾値より低い場合、排気の温度が閾値より低い場合、排気の流量が閾値より多い場合、又はNOx触媒における還元剤の吸着量が閾値より多い場合の少なくとも1つに該当する場合に、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多いと判断してもよい。
【0016】
なお、排気の流量に代えて排気の流速としてもよい。また、NOx触媒における還元剤の吸着量に代えて、NOx触媒における還元剤の吸着率としてもよい。この吸着率は、吸
着している還元剤量を、最大限吸着可能な還元剤量で除算した値である。
【0017】
また、還元剤には、添加装置から添加される物質、添加装置から添加される物質から最終的に生成される物質、添加装置から添加される物質から最終的に生成される物質に至るまでの中間生成物が含まれる。これらの物質の何れかがNOx触媒においてNOxと反応し、該NOxが還元される。
【0018】
また、本発明において、NOx触媒の温度が閾値より低い場合、排気の温度が閾値より低い場合、排気の流量が閾値より多い場合、又はNOx触媒における還元剤の吸着量が閾値より多い場合の少なくとも1つに該当する場合とは、還元剤がNOx触媒を通り抜ける程度を示す指数であって、NOx触媒の温度または排気の温度が低いほど大きくなる指数、排気の流量が多いほど大きくなる指数、NOx触媒における還元剤の吸着量が多いほど大きくなる指数、の何れか1つの値又は2つ以上を乗算した値が閾値より大きい場合であってもよい。
【0019】
ここで、指数には、NOx触媒の温度の影響で還元剤がNOx触媒を通り抜ける程度を示すもの、排気の温度の影響で還元剤がNOx触媒を通り抜ける程度を示すもの、排気の流量の影響で還元剤がNOx触媒を通り抜ける程度を示すもの、NOx触媒における還元剤の吸着量の影響で還元剤がNOx触媒を通り抜ける程度を示すものがある。還元剤がNOx触媒を通り抜ける程度とは、例えば、NOx触媒に流入する還元剤の量に対する、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量の割合であってもよい。また、指数は、NOx触媒を通り抜ける還元剤の大小を示す値としてもよい。例えば、指数が大きいほど、NOx触媒を通り抜ける還元剤が多くなるとしてもよい。これら指数を用いることにより、温度、流量、吸着量などの異なる物理量を同じように扱うことができる。
【0020】
また、本発明において、制御部は、NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が多いほど添加装置からの還元剤の添加周期を短くしてもよい。また、制御部は、NOx触媒の温度が低いほど、排気の温度が低いほど、排気の流量が多いほど、又は、NOx触媒における還元剤の吸着量が多いほど、添加装置からの還元剤の添加周期を短くしてもよい。これによれば、PMセンサに付着する還元剤の量が過剰に多い量となることをより高い確率で抑制することができる。つまり、還元剤の付着に起因するPMセンサの検出精度の低下をより高い確率で抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、還元剤がPMセンサに付着することに起因するPMセンサの検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る内燃機関1の吸排気系の概略構成図である。
【図2】実施例1に係るPMセンサの概略構成図である。
【図3】実施例1に係るPMセンサの検出値の推移を示したタイムチャートである。
【図4】フィルタが正常な場合と故障している場合とのPMセンサの検出値の推移を示したタイムチャートである。
【図5】PMセンサの検出値が正常な場合と、異常な場合との推移を示したタイムチャートである。
【図6】実施例1に係る還元剤の添加周期の制御のフローを示すフローチャートである。
【図7】実施例1に係る、還元剤量と、NOx触媒の温度と、中間生成物の生成量と、の関係を示した図である。
【図8】実施例1に係る、吸入空気量Gaと、NH吸着率と、NOx触媒に流入する中間生成物に対してNOx触媒を通過する中間生成物の割合と、の関係を示した図である。
【図9】実施例1に係る、添加弁からの還元剤の添加周期の一例を示すタイムチャートである。図9(a)は、通常周期Tnに設定された場合を示しており、図9(b)は短縮周期Tsに設定された場合を示している。
【図10】実施例1に係る、短縮周期Tsを排気の脈動に同期させた場合の、排気通路における還元剤が添加される部分の排気の流量と添加実行タイミングとの関係を示す図である。
【図11】実施例2に係る還元剤の添加周期の制御のフローを示すフローチャートである。
【図12】実施例2に係る、NOx触媒を通過する排気の流量と、第一係数K1との関係を示した図である。
【図13】実施例2に係る、NOx触媒の温度と、第二係数K2との関係を示した図である。
【図14】実施例2に係る、NOx触媒におけるNHの吸着率と、第三係数K3との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0024】
<実施例1>
[吸排気系の概略構成]
図1は、本実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、ディーゼル機関であるが、ガソリン機関であってもよい。
【0025】
内燃機関1には、吸気通路2及び排気通路3が接続されている。吸気通路2には、該吸気通路2を流通する吸気の量を検出するエアフローメータ11が設けられている。一方、排気通路3には、排気の流れ方向の上流側から順に、酸化触媒4、フィルタ5、添加弁6、選択還元型NOx触媒7(以下、NOx触媒7という。)が設けられている。
【0026】
酸化触媒4は、酸化能を有する触媒であればよく、例えば三元触媒であってもよい。酸化触媒4は、フィルタ5に担持されていてもよい。
【0027】
フィルタ5は、排気中のPMを捕集する。なお、フィルタ5には、触媒が担持されていてもよい。フィルタ5によってPMが捕集されることで、該フィルタ5にPMが徐々に堆積する。そして、フィルタ5の温度を強制的に上昇させる、所謂フィルタの再生処理を実行することで、該フィルタ5に堆積したPMを酸化させて除去することができる。例えば、酸化触媒4にHCを供給することでフィルタ5の温度を上昇させることができる。また、酸化触媒4を備えずに、フィルタ5の温度を上昇させる他の装置を備えていてもよい。さらに、内燃機関1から高温のガスを排出させることでフィルタ5の温度を上昇させてもよい。
【0028】
添加弁6は、NOx触媒7に還元剤を供給すべきときに排気中に還元剤を添加する。添加弁6は、還元剤を添加する際には短い周期で還元剤の噴射と停止とを繰り返す。つまり、添加弁6は還元剤を周期的に添加する。還元剤には、例えば、尿素水等のアンモニア由来のものが用いられる。例えば、添加弁6から添加された尿素水は、排気の熱で加水分解されアンモニア(NH)となり、その一部又は全部がNOx触媒7に吸着する。以下では、添加弁6から還元剤として尿素水を添加するものとする。なお、本実施例においては
添加弁6が、本発明における添加装置に相当する。
【0029】
NOx触媒7は、還元剤が存在するときに、排気中のNOxを還元する。例えば、NOx触媒7にアンモニア(NH)を予め吸着させておけば、NOx触媒7をNOxが通過するときにNOxをアンモニアにより還元させることができる。
【0030】
酸化触媒4よりも上流の排気通路3には、排気の温度を検出する第一排気温度センサ12が設けられている。酸化触媒4よりも下流で且つフィルタ5よりも上流の排気通路3には、排気の温度を検出する第二排気温度センサ13が設けられている。フィルタ5よりも下流で且つ添加弁6よりも上流の排気通路3には、排気の温度を検出する第三排気温度センサ14及び排気中のNOx濃度を検出する第一NOxセンサ15が設けられている。NOx触媒7よりも下流の排気通路3には、排気中のNOx濃度を検出する第二NOxセンサ16及び排気中のPM量を検出するPMセンサ17が設けられている。これらセンサの全てが必須というわけではなく、必要に応じて設けることができる。
【0031】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU10が併設されている。このECU10は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1を制御する。
【0032】
ECU10には、上記センサの他、アクセルペダルの踏込量に応じた電気信号を出力し機関負荷を検出可能なアクセル開度センサ18、及び機関回転数を検出するクランクポジションセンサ19が電気配線を介して接続され、これらセンサの出力信号がECU10に入力される。一方、ECU10には、添加弁6が電気配線を介して接続されており、該ECU10により添加弁6が制御される。
【0033】
ECU10は、フィルタ5に堆積しているPM量を推定し、推定されたPM量が所定量以上になると、前記フィルタの再生処理を実施する。なお、フィルタの再生処理は、内燃機関1が搭載されている車両の前回の該再生処理の実施完了からの走行距離が所定距離以上となったときに行ってもよい。また、規定期間ごとにフィルタの再生処理を実施してもよい。
【0034】
また、ECU10は、PMセンサ17により検出されるPM量に基づいて、フィルタ5の故障判定を行う。ここで、フィルタ5の溶損又は破損等の故障が発生すると、該フィルタ5に捕集されずに、該フィルタ5を通り抜けるPM量が増加する。このPM量の増加をPMセンサ17により検出すれば、フィルタ5の故障を判定することができる。
【0035】
例えば、フィルタ5の故障判定は、PMセンサ17の検出値に基づいて算出される所定期間中のPM量の積算値と、フィルタ5が所定の状態であると仮定した場合における所定期間中のPM量の積算値とを比較することで行われる。なお、所定期間におけるPMセンサ17の検出値の増加量に基づいて、フィルタ5の故障判定を行ってもよい。例えば、所定期間におけるPMセンサ17の検出値の増加量が閾値以上のときに、フィルタ5が故障していると判定してもよい。
【0036】
[PMセンサ]
図2は、PMセンサ17の概略構成図である。PMセンサ17は、自身に堆積したPM量に対応する電気信号を出力するセンサである。PMセンサ17は、一対の電極171と、該一対の電極171の間に設けられる絶縁体172と、を備えて構成されている。一対の電極171の間にPMが付着すると、該一対の電極171の間の電気抵抗が変化する。この電気抵抗の変化は、排気中のPM量と相関関係にあるため、該電気抵抗の変化に基づいて、排気中のPM量を検出することができる。このPM量は、単位時間当たりのPMの
質量としてもよく、所定時間におけるPMの質量としてもよい。なお、PMセンサ17の構成は、図2に示したものに限らない。すなわち、PMを検出し、且つ、還元剤の影響により検出値に変化が生じるPMセンサであればよい。
【0037】
次に、図3は、PMセンサ17の検出値の推移を示したタイムチャートである。尚、内燃機関1から排出される単位時間当たりのPM量が一定であるとすると、PMセンサ17におけるPM堆積量は時間の経過と共に一定の割合で増加する。内燃機関1の始動直後のAで示される期間は、排気通路3内で凝縮する水がPMセンサ17に付着する虞がある期間である。PMセンサ17に水が付着すると、該PMセンサ17の検出値が変化したり、PMセンサ17が故障したりするため、この期間ではPMセンサ17によるPM量の検出は行われない。
【0038】
Aで示される期間の後のBで示される期間では、前回の内燃機関1の運転時にPMセンサ17に付着したPMを除去する処理(以下、PM除去処理という。)を行う。このPM除去処理は、PMセンサ17の温度を、PMが酸化する温度まで上昇させることにより行われる。このBで示される期間においても、PMセンサ17によるPM量の検出は行われない。
【0039】
Bで示される期間の後のCで示される期間は、PMの検出に適した温度となるまでに要する期間である。すなわち、Bで示される期間においてPMセンサ17の温度がPMの検出に適した温度よりも高くなるため、温度が低下してPMの検出に適した温度となるまで待っている。このCで示される期間においても、PMセンサ17によるPM量の検出は行われない。
【0040】
そして、Cで示される期間の後のDで示される期間でPMの検出が行われる。なお、Dで示される期間であっても、PMセンサ17にある程度のPMが堆積するまでは、検出値が増加しない。すなわち、ある程度のPMが堆積して、一対の電極171の間に電流が流れるようになってから検出値が増加を始める。その後は、排気中のPM量に応じて検出値が増加していく。
【0041】
ここで、PMセンサ17は、フィルタ5よりも下流側に設けられている。そのため、PMセンサ17には、フィルタ5に捕集されずに、該フィルタ5を通過したPMが付着する。従って、PMセンサ17におけるPM堆積量は、フィルタ5を通過したPM量の積算値に対応した量となる。
【0042】
図4は、フィルタ5が正常な場合と故障している場合とのPMセンサ17の検出値の推移を示したタイムチャートである。フィルタ5が故障している場合には、PMセンサ17にPMが早く堆積するため、検出値の増加が始まる時点Eが、正常なフィルタ5と比較して早くなる。このため、例えば、内燃機関1の始動後から所定時間Fが経過したときの検出値が閾値以上であれば、フィルタ5が故障していると判定できる。この所定時間Fは、正常なフィルタ5であればPMセンサ17の検出値が増加しておらず、且つ、故障しているフィルタ5であればPMセンサ17の検出値が増加している時間である。この所定時間Fは、実験等により求められる。また、閾値は、フィルタ5が故障しているときのPMセンサ17の検出値の下限値として予め実験等により求められる。
【0043】
ところで、PMセンサ17をフィルタ5よりも下流で且つNOx触媒7よりも上流に設けることも考えられる。しかし、このような位置にPMセンサ17を設けると、フィルタ5からPMセンサ17までの距離が短くなる。このため、フィルタ5の溶損又は破損箇所を通過したPMが排気中に分散しないままPMセンサ17の周辺に到達する虞がある。そうすると、フィルタ5における溶損又は破損の位置によっては、溶損又は破損箇所を通過
したPMがPMセンサ17にほとんど付着しないために、PMが検出されないこともあり、故障判定の精度が低下する虞がある。
【0044】
これに対して本実施例では、NOx触媒7よりも下流にPMセンサ17を設けているため、フィルタ5からPMセンサ17までの距離が長い。このため、PMセンサ17の周辺では、フィルタ5を通過したPMが排気中に分散している。したがって、フィルタ5における溶損又は破損の位置によらずに、溶損又は破損箇所を通過したPMを検出することができる。
【0045】
[PMセンサの検出値の異常]
しかしながら、添加弁6よりも下流側にPMセンサ17を設けているため、該添加弁6から添加される還元剤がPMセンサ17に付着する虞がある。このPMセンサ17に付着する還元剤は、例えば、尿素、及び、尿素からアンモニアに至るまでの中間生成物(ビウレット、シアヌル酸)である。このようにPMセンサ17に還元剤が付着すると、PMセンサ17におけるPM堆積量が変化していなくとも、PMセンサ17の検出値が変化する虞がある。
【0046】
図5は、PMセンサ17の検出値が正常な場合と、異常な場合との推移を示したタイムチャートである。異常な検出値は、PMセンサ17に還元剤が付着したときの検出値とすることができる。
【0047】
正常な検出値は、時間の経過とともに検出値が増加するか、または検出値が変化しない。すなわち、PMセンサ17に付着したPM量に応じて検出値が増加していく。一方、異常な検出値は、検出値が増加するだけでなく減少する場合がある。PMセンサ17に前記中間生成物が付着して所定量以上堆積すると、PMが堆積したときと同じように、PMセンサ17の検出値が増加する。ここで、中間生成物であるビウレットは、132−190℃のときに生成され、それよりも温度が高くなると気化する。また、中間生成物であるシアヌル酸は、190−360℃で生成され、それよりも温度が高くなると気化する。このように、PMと比較すると中間生成物は低温で気化する。このため、PMセンサ17に付着していた中間生成物は、内燃機関1の排気の温度が高いときに気化する。そうすると、中間生成物の堆積量が減少するため、PMセンサ17の検出値が減少する。これは、PMセンサ17にPMのみが堆積しているときには起こらない現象である。
【0048】
また、PMセンサ17にはセンサ素子(一対の電極171)を覆うカバーが設けられているが、該カバーに中間生成物が付着して堆積すると、該カバーを閉塞させる虞がある。このカバーが中間生成物により閉塞されると、PMが一対の電極171に到達できなくなるので、PMが検出されにくくなる。したがって、PMセンサ17の検出値の増加が始まる時期が、正常な場合よりも遅くなる。このため、フィルタ5の故障判定の精度が低下する虞がある。
【0049】
このように、NOx触媒7を還元剤が通り抜けると、フィルタ5の故障判定が困難となる虞がある。一般的に尿素水から熱分解及び加水分解を経てNHが生成されることを考慮すると、NOx触媒7を還元剤が通り抜ける原因として、以下の3つが考えられる。
【0050】
(1)NOx触媒7の温度又は排気の温度が低い。すなわち、NOx触媒7または排気の温度が低いと、還元剤の熱分解などの反応に時間がかかるので、還元剤の反応が完了する前にNOx触媒7を通過してしまう。
【0051】
(2)NOx触媒7を通過する排気の流量が多い。なお、NOx触媒7を通過する排気の流速が速いとしてもよい。また、内燃機関1の吸入空気量が多いとしてもよい。すなわ
ち、排気の流量が多いと、還元剤がNOx触媒7と接する時間が短くなるため、還元剤の反応が完了する前にNOx触媒7を通過してしまう。
【0052】
(3)NOx触媒7に吸着しているNH量が多い。なお、NH吸着率が高いとしてもよい。NH吸着率は、NOx触媒7に最大限吸着可能なNH量に対して、NOx触媒7に吸着しているNH量の比である。すなわち、NOx触媒7に吸着しているNH量が多いほど、加水分解が進み難くなるので、還元剤の反応が完了する前にNOx触媒7を通過してしまう。
【0053】
上記(1),(2)は、反応時間が不足することにより起こる現象であり、(3)はNHの吸着量が多いことにより起こる現象である。
【0054】
[添加周期の制御]
本実施例では、上記のような、還元剤の付着に起因するPMセンサ17の検出精度の低下を抑制すべく、添加弁6から還元剤を周期的に添加する際の添加期間を制御する。具体的には、NOx触媒7を通過する排気の流量または排気の流速、NOx触媒7の温度または排気の温度、NOx触媒7におけるNHの吸着率またはNHの吸着量の少なくとも1つに基づいて、NOx触媒7を通り抜ける還元剤の量(即ち、PMセンサ17に到達する還元剤の量:以下、通過還元剤量と称する)を算出する。
【0055】
そして、通過還元剤量が閾値より多い場合には、通過還元剤量が閾値以下の場合よりも、添加弁6からの還元剤の添加周期を短くする。即ち、一回毎の還元剤の噴射期間を短くすると共に一回毎の噴射停止期間も短くする。このときの閾値は、PMセンサ17に付着する還元剤の量が許容範囲の上限値となる量(即ち、還元剤の付着に起因するPMセンサ17の出力値の変化量が許容範囲の上限値となる量)である。このような閾値は、実験等によって予め求めることができる。
【0056】
還元剤の添加周期を短くすると、一回の添加当たりの還元剤の添加量が減少する(ただし、添加回数が増加することで、還元剤の添加総量は維持される)。これにより、NOx触媒7に一度に到達する還元剤の量が少なくなる。その結果、添加された還元剤のうちNOx触媒7におけるNOxの還元に消費される還元剤の量が増加するため、通過還元剤量を少なくすることができる。そのため、PMセンサ17に付着する還元剤の量を少なくできる。従って、PMセンサの検出値が還元剤により変化することを抑制できる。つまり、還元剤の付着に起因するPMセンサの検出精度の低下を抑制することができる。そして、PMセンサの検出精度の低下を抑制されることにより、フィルタ5の故障判定の精度の低下を抑制することができる。
【0057】
以下、本実施例に係る還元剤の添加周期の制御のフローについて、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローは、ECU10に予め記憶されており、ECU10によって所定の間隔で繰り返し実行される。
【0058】
本フローでは、先ずステップS101において、NOx触媒7に還元剤を添加する前提条件が成立しているか否かが判別される。本ステップでは、還元剤を供給可能な状態であるか否かが判別されてもよく、また、添加弁6からの還元剤の添加が行われたか否かが判別されてもよい。
【0059】
本ステップでは、例えば各種センサが正常であるときに、還元剤を供給する前提条件が成立していると判定される。各種センサが正常であるか否かは、周知の技術により判別することができる。また、例えば内燃機関1の運転状態が、還元剤の供給に適した運転状態であるときに、還元剤を供給する前提条件が成立していると判定される。ステップS10
1において、肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンの実行が一旦終了される。
【0060】
ステップS102においては、通過還元剤量QMが算出される。本実施例では、NOx触媒7において生成され且つNOxの還元には消費されずにNOx触媒7を通過する中間生成物の量が、通過還元剤量QMとして算出される。
【0061】
ここで、NOx触媒7を通過する中間生成物の量(通過還元剤量QM)の算出方法について、図7及び8に基づいて説明する。図7は、NOx触媒7へ供給される還元剤量と、NOx触媒7の温度と、中間生成物の生成量と、の関係を示した図である。また、図8は、吸入空気量Gaと、NH吸着率と、NOx触媒7に流入する(或いはNOx触媒で生成される)中間生成物に対してNOx触媒7を通過する中間生成物の割合と、の関係を示した図である。
【0062】
NOx触媒7に供給される還元剤量が多くなるほど、中間生成物の生成量が多くなる。また、NOx触媒7の温度が低いほど、中間生成物の生成量が多くなる。これらの関係を予め実験等により求めてマップ化したものが図7である。このマップと、NOx触媒7へ供給する還元剤量(即ち、添加弁6から添加される還元剤量)及びNOx触媒7の温度と、から、中間生成物の生成量を得ることができる。尚、NOx触媒7の温度に代えて排気の温度を用いることもできる。
【0063】
また、吸入空気量Gaが多いほど、排気の流量が多くなるため、中間生成物がNOx触媒7を通り抜けやすくなる。また、NH吸着率が高いほど、中間生成物がNOx触媒7を通り抜けやすくなる。これらの関係を予め実験等により求めてマップ化したものが図8である。このマップと、吸入空気量Ga及びNH吸着率と、から、NOx触媒7に流入する中間生成物に対してNOx触媒7を通過する中間生成物の割合を得ることができる。
【0064】
尚、上記のように、NH吸着率は、NOx触媒7に最大限吸着可能なNH量に対して、NOx触媒7に吸着しているNH量の比であり、NOx触媒7に吸着されているNH量を、NOx触媒7が最大限吸着可能なNH量で除算した値である。NOx触媒7に吸着されているNH量は、例えば還元剤の供給量、NOx触媒7の温度、排気の流量などに基づいて求めることができる。また、NOx触媒7が最大限吸着可能なNH量は、例えばNOx触媒7の温度及びNOx触媒7の劣化の度合いに応じて変化する。これらの関係は、予め実験等により求めておくことができる。また、NOx触媒7におけるNHの吸着率は、周知の技術により求めることもできる。
【0065】
そして、図7に示したマップにより得られる中間生成物の生成量と、図8に示したNOx触媒7を通過する中間生成物の割合と、を乗算することにより、NOx触媒7を通過する中間生成物の量を算出することができる。
【0066】
次に、ステップS103において、ステップS102で算出された通過還元剤量QMが閾値QPより多いか否かが判別される。閾値QPは、上記のように、PMセンサ17に付着する還元剤の量が許容範囲の上限値となる量であって、ECU10に予め記憶されている。
【0067】
ステップS103において否定判定された場合、即ち、通過還元剤量QMが閾値QP以下である場合は、ステップS105において、添加弁6からの還元剤の添加周期が通常周期Tnに設定される。一方、ステップS103において肯定判定された場合、即ち、通過還元剤量QMが閾値QPより多い場合は、ステップS104において、添加弁6からの還元剤の添加周期が、通常周期Tnよりも短い短縮周期Tsに設定される。
【0068】
図9は、添加弁6からの還元剤の添加周期の一例を示すタイムチャートである。図9(a)は、通常周期Tnに設定された場合を示しており、図9(b)は短縮周期Tsに設定された場合を示している。また、図9(a),(b)においては、「ON」の時が、還元剤が噴射されている時(還元剤の添加が実行されている時)を示しており、「OFF」の時が、還元剤の噴射が停止されている時(還元剤の添加が停止されている時)を示している。通常周期Tn及び短縮周期Tsはいずれも実験等に基づいて予め定められている。また、図9に示すように、添加期間が短縮周期Tsに設定された場合は、添加期間が通常周期Tnに設定された場合に比べて添加回数(噴射回数)が増加される。
【0069】
上記フローによれば、通過還元剤量QMが閾値QPより多い場合には、通過還元剤量QMが閾値QP以下の場合よりも、添加弁6からの還元剤の添加周期が短縮される。
【0070】
尚、NOx触媒7を通過する中間生成物が、所定の割合でPMセンサ17に付着すると仮定すれば、該PMセンサ17に付着する中間生成物の量を算出することができる。そこで、本実施例では、PMセンサ17に付着する中間生成物の量を通過還元剤量QMとして用いてもよい。
【0071】
また、NOx触媒7の温度又は排気の温度が低いほど通過還元剤量は多くなり、吸入空気量又は排気の流量が多いほど通過還元剤量は多くなり、NOx触媒7におけるNH吸着率が高いほど又はNOx触媒7におけるNHの吸着量が多いほど通過還元剤量は多くなる。そして、上記フローにおけるステップS102では、これらの値の全てと添加弁6からの還元剤の添加量とを用いて通過還元剤量QMを算出した。しかしながら、これらの値の少なくとも1つと添加弁6からの還元剤の添加量とに基づいて通過還元剤量QMを算出してもよい。
【0072】
本実施例においては、短縮周期Tsを排気の脈動に同期させてもよい。図10は、短縮周期Tsを排気の脈動に同期させた場合の、排気通路3における還元剤が添加される部分の排気の流量と添加実行タイミング(添加弁6から還元剤が噴射されるタイミング)との関係を示す図である。図10に示すように、短縮周期Tsを排気の脈動に同期させる場合、排気通路3における還元剤が添加される部分の排気の流量がその脈動によって減少している状態の時と添加弁6からの還元剤の添加実行タイミングとが重なるように制御する。尚、排気の脈動の周期は、機関回転数に基づいて推定する方法や、圧力センサによって排気圧力を検出する方法等の周知の技術により取得することができる。
【0073】
上記のようなタイミングで還元剤を添加すると、排気の流量が可及的に少ない時(即ち、排気の流速が低い時)に還元剤が添加されることになる。そのため、通過還元剤量QMを可及的に少なくすることができる。従って、PMセンサ17に付着する還元剤の量をより少なくできる。
【0074】
また、本実施例では、短縮周期Tsを通過還元剤量QMに応じて変更してもよい。つまり、算出された通過還元剤量QMが多いほど短縮周期Tsを短くしてもよい。還元剤の添加周期を短くするほど、添加された還元剤のうちNOx触媒7におけるNOxの還元に消費される還元剤の量が増加する。そのため、通過還元剤量QMが多いほど短縮周期Tsを短くすることで、PMセンサ17への還元剤の付着をより効果的に抑制することができる。
【0075】
また、還元剤の添加周期として通常周期Tnと短縮周期Tsとの何れかを選択するための通過還元剤量の閾値QPを特に設けずに、通過還元剤量QMが多いほど還元剤の添加周期を短くしてもよい。
【0076】
<実施例2>
本実施例に係る内燃機関の吸排気系及びPMセンサの構成は実施例1と同様である。以下、実施例1と異なる点についてのみ説明する。
【0077】
[添加周期の制御]
本実施例においても、実施例1と同様、通過還元剤量が閾値より多い場合には、通過還元剤量が閾値以下の場合よりも、添加弁6からの還元剤の添加周期を短くする。このときの通過還元剤量の算出方法が実施例1とは異なっている。
【0078】
以下、本実施例に係る還元剤の添加周期の制御のフローについて、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローは、ECU10に予め記憶されており、ECU10によって所定の間隔で繰り返し実行される。尚、本フローは、図6に示すフローにおいて通過還元剤量QMを算出するステップであるS102をS202〜S206に置き換えたものである。よって、ステップS101及びS103〜S105は図6に示すフローと同様であるため、これらのステップについての説明は省略する。
【0079】
本フローでは、ステップS101において肯定判定されると、次にステップS202の処理が実行される。ステップS202では、NOx触媒7を通過する排気の流量に基づいて第一係数K1が算出される。この第一係数K1は、NOx触媒7に流入する還元剤量に対して、排気の流量が多いことが原因となってNOx触媒7を通り抜ける還元剤量の割合を示した値である。なお、NOx触媒7を通過する排気の流量に代えて、NOx触媒7を通過する排気の流速に基づいて第一係数K1を算出してもよい。また、NOx触媒7を通過する排気の流量に代えて、排気通路3を流通する排気の流量または排気の流速としてもよい。排気の流量または流速は、エアフローメータ11により検出される吸入空気量に基づいて算出することができる。
【0080】
ここで、図12は、NOx触媒7を通過する排気の流量と、第一係数K1との関係を示した図である。なお、排気の流量に代えて排気の流速としても同様の関係になる。ここで、排気の流量が例えば50g/sになるまでは、還元剤がNOx触媒7を通り抜けることがないものとし、この間の第一係数K1は一定の値とする。そして、排気の流量が例えば50g/s以上となると、排気の流量の増加に従って、第一係数K1が増加する。すなわち、排気の流量が多いほど、還元剤がNOx触媒7を通り抜けやすくなる。このため、排気の流量が多いほど通過還元剤量が多くなるので、第一係数K1が大きくなる。この関係は、予め実験等により求めてECU10に記憶させておく。
【0081】
次に、ステップS203において、NOx触媒7の温度に基づいて第二係数K2が算出される。この第二係数K2は、NOx触媒7に流入する還元剤量に対して、NOx触媒7の温度が低いことが原因となってNOx触媒7を通り抜ける還元剤量の割合を示した値である。なお、NOx触媒7の温度に代えて、排気の温度に基づいて第二係数K2を算出してもよい。排気の温度は、NOx触媒7よりも下流側の排気の温度、またはNOx触媒7を通過する排気の温度としてもよい。また、NOx触媒7の温度は、第三排気温度センサ14により検出される温度としてもよい。また、NOx触媒7の温度を検出するセンサを備えて、該NOx触媒7の温度を直接検出してもよい。
【0082】
ここで、図13は、NOx触媒7の温度と、第二係数K2との関係を示した図である。なお、NOx触媒7の温度に代えて排気の温度としても同様の関係になる。NOx触媒7の温度が例えば220℃以上となると、NOx触媒7の温度が十分に高いことにより還元剤の反応が促進される。このため、220℃以上では還元剤がNOx触媒7を通り抜けることがないものとし、この間の第二係数K2は一定の値とする。そして、NOx触媒7の
温度が例えば220℃未満となると、NOx触媒7の温度が低いほど、第二係数K2が大きくなる。すなわち、NOx触媒7の温度が低いほど、還元剤がNOx触媒7を通り抜けやすくなる。このため、NOx触媒7の温度が低いほど、NOx触媒7を通り抜ける還元剤量が多くなるので、第二係数K2が大きくなる。この関係は、予め実験等により求めてECU10に記憶させておく。
【0083】
ステップS204では、NOx触媒7におけるNHの吸着率に基づいて第三係数K3が算出される。この第三係数K3は、NOx触媒7に流入する還元剤量に対して、NOx触媒7におけるNHの吸着率が高いことが原因となってNOx触媒7を通り抜ける還元剤量の割合を示した値である。
【0084】
ここで、図14は、NOx触媒7におけるNHの吸着率と、第三係数K3との関係を示した図である。なお、NHの吸着率に代えてNHの吸着量としても同様の関係になる。NOx触媒7におけるNHの吸着率が例えば0.8になるまでは、還元剤がNOx触媒7を通り抜けることがないものとし、この間の第三係数K3は一定の値とする。そして、NOx触媒7におけるNHの吸着率が例えば0.8以上となると、吸着率の増加に従って、第三係数K3が増加する。すなわち、吸着率が高いほど、還元剤がNOx触媒7を通り抜けやすくなる。このため、吸着率が高いほど、NOx触媒7を通り抜ける還元剤量が多くなるので、第三係数K3が大きくなる。この関係は、予め実験等により求めてECU10に記憶させておく。また、NOx触媒7におけるNHの吸着量と、第三係数K3との関係を実験等により求めてECU10に記憶させておいてもよい。
【0085】
ステップS205では、通り抜け係数RMが算出される。通り抜け係数RMは、第一係数K1に第二係数K2及び第三係数K3を乗算した値である。すなわち、通り抜け係数RMは、NOx触媒7に流入する還元剤量に対して、NOx触媒7を通り抜ける還元剤量の割合を示した値である。
【0086】
ステップS206では、添加弁6からの還元剤の添加量QUに、ステップS205で算出される通り抜け係数RMを乗算して、通過還元剤量QMが算出される。尚、添加弁6からの還元剤の添加量QUは、ECU10で算出される指令値を用いることができる。還元剤の添加量の指令値は、例えば、排気中のNOx量に応じた値に設定される。排気中のNOx量は内燃機関1の運転状態に基づいて推定することができる。
【0087】
上記のような方法によっても通過還元剤量QMを算出することができる。なお、上記フローでは、第一係数K1,第二係数K2,第三係数K3の全てを用いて通り抜け係数RMを算出しているが、何れか1つの値を通り抜け係数RMとしてもよい。また、何れか2つの値を乗算して通り抜け係数RMとしてもよい。さらに、通り抜け係数RMが閾値より大きいときに、添加周期を短縮周期Tsに設定するようにしてもよい。
【0088】
また、本実施例においても、実施例1と同様、算出された通過還元剤量QMが多いほど短縮周期Tsを短くしてもよい。また、通り抜け係数RMが大きいほど短縮周期Tsを短くしてもよい。また、本実施例においても、還元剤の添加周期として通常周期Tnと短縮周期Tsとの何れかを選択するための閾値を特に設けずに、通過還元剤量QMが多いほど又は通り抜け係数RMが大きいほど還元剤の添加周期を短くしてもよい。これらによれば、PMセンサ17への還元剤の付着をより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・内燃機関
2・・・吸気通路
3・・・排気通路
4・・・酸化触媒
5・・・フィルタ
6・・・添加弁
7・・・選択還元型NOx触媒(NOx触媒)
10・・ECU
11・・エアフローメータ
12・・第一排気温度センサ
13・・第二排気温度センサ
14・・第三排気温度センサ
15・・第一NOxセンサ
16・・第二NOxセンサ
17・・PMセンサ
18・・アクセル開度センサ
19・・クランクポジションセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタよりも下流側に設けられ供給される還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
前記選択還元型NOx触媒に還元剤を供給する際に、該選択還元型NOx触媒よりも上流側の排気中に還元剤を周期的に添加する添加装置と、
前記選択還元型NOx触媒よりも下流側で排気中の粒子状物質の量を検出するPMセンサと、
前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多い場合は、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値以下の場合よりも、前記添加装置からの還元剤の添加周期を短くする制御部と、
を備える内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多い場合は、排気通路における還元剤が添加される部分の排気の流量がその脈動によって減少している状態の時に前記添加装置から還元剤が添加されるように、還元剤の添加周期を排気の脈動周期と同期させる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が、
前記選択還元型NOx触媒の温度または排気の温度が低いほど多くなり、
排気の流量が多いほど多くなり、
前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量が多いほど多くなるものとして、
前記制御部が、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量を、前記選択還元型NOx触媒の温度、排気の温度、排気の流量、又は前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量の少なくとも1つに基づいて算出する請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が、
前記選択還元型NOx触媒の温度または排気の温度が低いほど多くなり、
排気の流量が多いほど多くなり、
前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量が多いほど多くなるものとして、
前記制御部が、前記選択還元型NOx触媒の温度が閾値より低い場合、排気の温度が閾値より低い場合、排気の流量が閾値より多い場合、又は前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量が閾値より多い場合の少なくとも1つに該当する場合に、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が閾値より多いとする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記選択還元型NOx触媒の温度が閾値より低い場合、排気の温度が閾値より低い場合、排気の流量が閾値より多い場合、又は前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量が閾値より多い場合の少なくとも1つに該当する場合とは、前記還元剤が前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける程度を示す指数であって、前記選択還元型NOx触媒の温度または排気の温度が低いほど大きくなる指数、排気の流量が多いほど大きくなる指数、前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量が多いほど大きくなる指数、の何れか1つの値又は2つ以上を乗算した値が閾値より大きい場合である請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記選択還元型NOx触媒を通り抜ける還元剤の量が多いほど前記添加装置からの還元剤の添加周期を短くする請求項1又は3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記選択還元型NOx触媒の温度が低いほど、排気の温度が低いほど、排気の流量が多いほど、又は、前記選択還元型NOx触媒における還元剤の吸着量が多いほど、前記添加装置からの還元剤の添加周期を短くする請求項4又は5に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−87652(P2013−87652A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226916(P2011−226916)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】