説明

内燃機関用のスーパーチャージャ・システム

複数の排ガス・ターボチャージャを有する内燃機関(10)のためのスーパーチャージャ・システムにおいて、排ガス・ターボチャージャに連結されている電気機械(M)と、ターボチャージャ用タービン(31)の調整可能なディストリビュータとが結合される。このことによって、必要な電気機械及び調整可能なディストリビュータの数を減らすことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス・ターボチャージャによって過給される内燃機関の分野に関する。本発明は、複数の排ガス・ターボチャージャを有する、内燃機関用のスーパーチャージャ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の2ストローク・エンジンには、複数の排ガス・ターボチャージャを並列作動で用いることが可能である。この場合、通常は、只一つの2ストローク・エンジンに、同時に、複数の同一の排ガス・ターボチャージャのみが用いられる。その目的は、特に過渡運転中に、只一つの排ガス・ターボチャージャの許容できない使用条件を冒さないためである。
【0003】
スーパーチャージャのこの対称的なデザインの故に、動力を供給し且つ取り出すために(即ち、パワー・テイク・イン及びパワー・テイク・オフ−PTI及びPTOの作動のために)電気機械に連結されている排ガス・ターボチャージャが、例えば、出力タービンを有するシステムと比較して、現在、経済的に競争できない。何故ならば、電気機械のための、電気機械を排ガス・ターボチャージャに連結する手段のための投資を、排ガス・ターボチャージャの各々のために実行しなければならないからである。更に、各々の電気機械が、排ガス・ターボチャージャのプラットフォームにスペースを要し、追加のメンテナンス費用を発生させる。
【発明の概要】
【0004】
複数の排ガス・ターボチャージャを有するスーパーチャージャ・システムでは、排ガス・ターボチャージャに連結されている電気機械と、排ガス・ターボチャージャ用タービンの調整可能なガイド装置とが結合されるとき、必要な電気機械及び調整可能なガイド装置の数を減らすことが可能になる。調整可能なガイド装置の数の減少は、結果として、一層少ないタービン損失をもたらす。何故ならば、調整可能なガイド形状物を有するタービンが、しばしば、可変でない形状物を有するタービンよりも大きい効率を有しているからである。
【0005】
この場合、前記コンポーネントの多数の組合せが考えられる。
【0006】
二つ以上の排ガス・ターボチャージャからなる一つのグループを有する内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。このグループの内の少なくとも一つの排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、このグループの内の少なくとも一つの排ガス・ターボチャージャが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。これらの排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、電気機械に連結されておらず、タービンの調整可能なガイド形状物を有していない。
【0007】
二つ以上の排ガス・ターボチャージャを有する内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。これらの排ガス・ターボチャージャの内の第一のサブグループ、従って、一つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、第二のサブグループ、従って、一つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【0008】
二つ以上の排ガス・ターボチャージャを有する内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、一つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に連結されている。電気機械に連結されたこれらの排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。選択的に、従来のタイプの残りの排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されておらず、タービンの調整可能なガイド形状物を有していない。
【0009】
二つ以上の排ガス・ターボチャージャを有する内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャを含む一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、二つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に連結されている。少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、電気機械に連結されたこれらの排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。選択的に、従来のタイプの残りの排ガス・ターボチャージャは、電気機械に連結されておらず、且つタービンの調整可能なガイド形状物を有していない。
【0010】
二つ以上の排ガス・ターボチャージャを有する内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、一つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、残りのターボチャージャは、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【0011】
二つ以上の排ガス・ターボチャージャを有する内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャを含む、一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、二つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されている。少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、残りの排ガス・ターボチャージャは、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【0012】
提案された排ガス・ターボチャージャ複合体によって、PTI及びPTOの作動のための電気機械の数を、場合によっては、全体のスーパーチャージャ・システムのための只一つの電気機械にまで、減らすことができる。
【0013】
同一の排ガス・ターボチャージャに電気機械及びタービンの可変のガイド形状物を有する排ガス・ターボチャージャによって、タービンのガイド形状物のユニットの数が、1までに減じられる。しかし、電気機械無しには、一つの排ガス・ターボチャージャ当たり、タービンのガイド形状物の一つの調整可能なユニットが必要だろう。
【0014】
出力タービンを有するユニットと比較して、排ガス・ターボチャージャに設けられた電気機械の故に、排ガス管及び非常に迅速に切り換わる過回転防止装置を省略することが可能である。過回転防止装置への要求は、出力タービンを有するユニットより著しく少ない。何故ならば、タービン出力の一部分のみが、電気機械に供給されるからである。場合によっては、エンジン出力の適時の制限および/または排気逃し弁の開成が十分であることが可能である。
【0015】
所要面積は、出力タービンを有するシステムと比較して小さい。2ストローク・エンジンと船との間に、従ってまた、エンジン・メーカーと造船所との間に、接続部材(Schnittstellen)がより少ない。何故ならば、電気機械は、内燃機関に設けられた排ガス・ターボチャージャと共に、造船所に供給されるからである。
【0016】
SCR(選択触媒還元)触媒を有するシステムでは、触媒の大きな熱的慣性の故に、PTI及びPTOのための電気機械及びタービンの調整可能なガイド形状物を有する、本発明に係るスーパーチャージャ・システムによって、内燃機関を過給することは好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】複数の排ガス・ターボチャージャを有するスーパーチャージャ・システムを示していて、これらの排ガス・ターボチャージャの内の一つが、電気機械に連結されており、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【図2】複数の排ガス・ターボチャージャを有するスーパーチャージャ・システムを示していて、これらの排ガス・ターボチャージャの内の二つが、別個の電気機械に連結されており、これらの二つの排ガス・ターボチャージャの内の一つが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【図3】複数の排ガス・ターボチャージャを有するスーパーチャージャ・システムを示していて、これらの排ガス・ターボチャージャの内の二つが、共に、電気機械に連結されており、これら二つの排ガス・ターボチャージャの内の一つが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【図4】複数の排ガス・ターボチャージャを有するスーパーチャージャ・システムを示していて、これらの排ガス・ターボチャージャの内の一つが、電気機械に連結されており、残りの排ガス・ターボチャージャが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している。
【図5】複数の排ガス・ターボチャージャを有するスーパーチャージャ・システムを示していて、これらの排ガス・ターボチャージャの一つが、電気機械に連結されており、残りの排ガス・ターボチャージャが、コンプレッサの流路の調整可能な形状物(verstellbare Verdichtergeometrie)を有している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の種々の実施の形態を詳述する。
図1は、4つの排ガス・ターボチャージャを有する内燃機関10のためのスーパーチャージャ・システムを示している。排ガス・ターボチャージャの各々は、コンプレッサ20及び排ガスタービンを有している。複数の図には、排ガスタービンに関して、従来の排ガスタービン30と、調整可能なガイド形状物(Leitgeometrie)を有する排ガスタービン31とが異なって示されている。第一の排ガス・ターボチャージャは、電気機械(電動発電機)に結合されており、調整可能なガイド形状物を有する排ガスタービン31を備えている。
【0019】
排ガス・ターボチャージャと電気機械の間の結合は、切換可能なカップリングまたは切換不能なカップリングによって実現されることが可能である。電気機械と、排ガス・ターボチャージャとの間には、選択的に、歯車装置があっても良い。電気機械は、コンプレッサ側またはタービン側に設けられており、あるいは、排ガス・ターボチャージャに組み込まれており、例えば、フィルター・サイレンサにまたは複数の軸受の間に組み込まれていることが可能である。電気機械は、排ガス・ターボチャージャと同じ種類の軸受または他の軸受(磁気軸受、ころ軸受、すべり軸受)を有している。潤滑または場合によっては冷却も、排ガス・ターボチャージャと同一のオイルによってなされることが可能である。場合によっては、冷却は、空気または水によってもなされることが可能である。空気の場合には、特別なファンまたは電動機が設けられていてもよく、および/または電気機械によって暖められた空気は、コンプレッサによって吸引され、あるいは、冷却のためには、空気だめから来る空気を用いることが可能である。
【0020】
図2は、同様に4つの排ガス・ターボチャージャを有する内燃機関10のためのスーパーチャージャ・システムを示している。排ガス・ターボチャージャの各々は、コンプレッサ20及び排ガスタービンを有している。同様に電気機械に結合されており、調整可能なガイド形状物を有する排ガスタービン31を備えている、第一の排ガス・ターボチャージャのほかに、このスーパーチャージャでは、他の第二の排ガス・ターボチャージャが、第二の電気機械に結合されている。これに対し、この第二の排ガス・ターボチャージャの排ガスタービン30は、調整可能なガイド形状物を有していない。
【0021】
図3は、同様に4つの排ガス・ターボチャージャを有する内燃機関10のためのスーパーチャージャ・システムを示している。排ガス・ターボチャージャの各々は、コンプレッサ20及び排ガスタービンを有している。前のスーパーチャージャ・システムと異なって、このスーパーチャージャ・システムでは、第一の二つの排ガス・ターボチャージャは、只一つの電気機械に結合されている。同様に、一つのまたは二つの排ガス・ターボチャージャのタービンが、調整可能なガイド形状物を有している。
【0022】
最後に、図4は、同様に4つの排ガス・ターボチャージャを有する内燃機関10のためのスーパーチャージャ・システムを示している。排ガス・ターボチャージャの各々は、コンプレッサ20及び排ガスタービンを有している。同様に、第一の排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に結合されている。しかしながら、このスーパーチャージャ・システムでは、電気機械に結合された排ガス・ターボチャージャの排ガスタービンではなく、全ての残りの排ガスタービンが、調整可能なガイド形状物を有している。
【0023】
電気機械に結合されている第一の排ガス・ターボチャージャの動作点は、内燃機関の動作点及び他のパラメータ、例えば、環境、エンジン汚染、排ガス・ターボチャージャの汚染、場合によっては取り付けられた触媒の状態、電力消費装置の電力需要及び他の発電機の発電、あるいは残りの電力消費装置の需要及び発電機の出力に応じた給電に従って、この機械の出力トルクまたは駆動トルクによって制御される。
【0024】
電気機械に接続されていない残りの排ガス・ターボチャージャが、所望の動作点で走行するように、調整可能なガイド形状物を有する排ガスタービンのタービン面が、これらの排ガス・ターボチャージャが所定の動作点に達するように、縮小または拡大される。このことによって、選択的に、残りの排ガス・ターボチャージャの動作点が、電気機械に連結されている排ガス・ターボチャージャの動作点に適合される。その代わりに、タービン面を内燃機関等の動作点に応じて設定し、電気機械に連結されている排ガス・ターボチャージャを、この機械の出力トルクまたは駆動トルクによって制御することも可能である。
【0025】
提案された排ガス・ターボチャージャ複合体は、基本的には、4サイクル・エンジンでも用いることが可能であるが、現在、前記装置に対応するスーパーチャージャ・システムは、4サイクル・エンジンのためには、余り使用されない。
【0026】
2段式の過給装置を有する複合体を、特に高圧段に使用することも可能である。
【0027】
タービンの調整可能なガイド形状物および/または電気機械の前記の追加処置の代わりに、または追加処置の補足として、コンプレッサの流路の調整可能な形状物またはコンプレッサの制御可能な逆流または吹き出し手段(既に圧縮された空気の循環または排出手段)を、図5に略示されているように、用いることが可能である。同様に、第一の排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に結合されている。このスーパーチャージャ・システムでは、コンプレッサ(21)は、電気機械に結合されていない排ガスタービンを有する排ガス・ターボチャージャ、及びコンプレッサの流路の調整可能な形状物を有している。
【符号の説明】
【0028】
10…内燃機関、20…コンプレッサ、21…コンプレッサの流路の調整可能な形状物を有するコンプレッサ、30…タービン、31…調整可能なガイド形状物を有するタービン、M…電気機械(モータ/発生器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機械用のスーパーチャージャ・システムであって、
二つ以上の排ガス・ターボチャージャからなる一つのグループを有し、
このグループの内の少なくとも一つの排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、
このグループの内の少なくとも一つの排ガス・ターボチャージャが、タービンの調整可能なガイド形状物を有し、
これらの排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、電気機械に連結されておらず、且つタービンの調整可能なガイド形状物を有していない、
内燃機械用のスーパーチャージャ・システム。
【請求項2】
一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、一つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に連結されており、
電気機械に連結されたこれらの排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している、
請求項1に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項3】
残りの排ガス・ターボチャージャは、電気機械に連結されておらず、且つタービンの調整可能なガイド形状物を有していない、
請求項2に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項4】
少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャを含む一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、二つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に連結されており、
少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャが、共に、電気機械に連結されており、
電気機械に連結されたこれらの排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、タービンの調整可能なガイド形状物を有している、
請求項1に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項5】
残りの排ガス・ターボチャージャは、電気機械に連結されておらず、且つタービンの調整可能なガイド形状物を有していない、
請求項4に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項6】
一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、一つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、電気機械に連結されており、
残りのターボチャージャは、タービンの調整可能なガイド形状物を有している、
請求項1に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項7】
少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャ含む一つのサブグループの排ガス・ターボチャージャ、従って、二つ乃至全てより一つ少ない排ガス・ターボチャージャが、一つの電気機械に連結されており、
少なくとも二つの排ガス・ターボチャージャが、共に電気機械に連結されており、残りの排ガス・ターボチャージャは、タービンの調整可能なガイド形状物を有している、
請求項1に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項8】
前記タービンの前方または後方に排ガス用触媒が設けられている、請求項1から7の何れか1項に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項9】
タービンの調整可能なガイド形状物の代わりに、または前記電気機械の代わりに、コンプレッサの流路の調整可能な形状物あるいはコンプレッサの制御可能な逆流または吹き出し手段を有する、請求項1から8の何れか1項に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項10】
前記複数の排ガス・ターボチャージャの内の少なくとも一つが、コンプレッサの流路の調整可能な形状物またはコンプレッサの制御可能な逆流または吹き出し手段を有する、請求項1から8の何れか1項に記載のスーパーチャージャ・システム。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載のスーパーチャージャ・システムを有する内燃機関。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−530936(P2010−530936A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512714(P2010−512714)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057953
【国際公開番号】WO2009/000805
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(501405177)アーベーベー ターボ システムズ アクチエンゲゼルシャフト (37)
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 71a, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】