説明

内燃機関

【課題】 過給機の着脱作業を容易した内燃機関を提供する。
【解決手段】 ターボチャージャブラケット20を介してターボチャージャ50を取り付けてなるエンジンEであって、ターボチャージャ50は、ターボチャージャブラケット20に6角穴付きボルト74によって締結される締結フランジ54を有するとともに、締結フランジ54における締結部位であるボルト孔58が6角穴付きボルト74の着脱方向に開放されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等に搭載される内燃機関に係り、詳しくは、過給機の内燃機関への固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用内燃機関の過給機として、タービンとコンプレッサとを備え、内燃機関からの排気ガスのエネルギーを利用したターボチャージャがある。ターボチャージャでは、タービンとコンプレッサとを連結するセンタハウジングを備え、このセンタハウジングに形成された締結フランジがエンジンブロックに締結されたブラケット等(あるいはエンジンブロックに直接)に締結されることにより、内燃機関に取り付けられるものがある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許第3489332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ターボチャージャには可変ベーン装置やウェイストゲートを備えたものがあり、これら可変ベーン装置やウェイストゲートを駆動させるためのアクチュエータユニットがセンタハウジングの外周部付近に設けられることがある。このようなターボチャージャでは、締結フランジをエンジンブロック等に締結する際に、アクチュエータユニットが障害となって締結部材を締め付けるための工具がアクセスし難くなり、組立作業性や整備作業性が悪化するという問題がある。
【0004】
本発明は以上の問題を鑑みてなされたものであり、過給機の着脱作業を容易した内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、ブラケット(ターボチャージャブラケット20)を介して過給機(ターボチャージャ50)を取り付けてなる内燃機関(エンジンE)であって、前記過給機は、前記ブラケットに締結部材(6角穴付きボルト74)によって締結される締結フランジ(54)を有するとともに、前記締結フランジにおける締結部位(ボルト孔58)が前記締結部材の着脱方向に開放されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、締結部位から締結部材の着脱方向が開放されているため、締結工具を締結部材の着脱方向に沿って締結部位までアクセスさせることができ、締結部材を締結が容易となる。
【0007】
第2の発明は第1の発明において、前記過給機は、タービンハウジング(51)と、前記タービンハウジング(52)と同軸に配置されたコンプレッサハウジング(53)と、前記タービンハウジングと前記コンプレッサハウジングとの間に介装されたセンタハウジング(54)と、前記タービンハウジングまたは前記コンプレッサハウジングに固定されたアクチュエータユニット(60)とを有するターボチャージャ(50)であり、前記タービンハウジングと、前記コンプレッサハウジングと、前記センタハウジングと、前記アクチュエータユニットとの間に画成される空間(S)により、前記締結部位が前記締結部材の着脱方向に開放されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、アクチュエータユニットを有するターボチャージャであっても、締結工具を用いて締結部材を締結部位に容易に締結させることができる。
【0009】
第3の発明は第1または第2の発明において、内燃機関本体(シリンダブロック1)に締結され、前記ブラケットを支持する支持部材(ステイ30)を有し、前記締結フランジと、前記ブラケットと、前記支持部材とは前記締結部材によって互いに締結されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、さらに支持部材を用いてブラケットを内燃機関本体に締結するため、ブラケットの内燃機関本体に対する取付剛性を向上させることができ、その結果ターボチャージャの内燃機関本体に対する取付剛性を向上させることができる。また、ターボチャージャをブラケットに締結するための締結部材がブラケットを内燃機関本体に締結するための締結部材として併用されるため部品点数の削減が図れる。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成により、内燃機関本体に固定されたブラケットへの過給機の取り付けまたは取り外しの作業性を向上させることできる。また、ターボチャージャ、ブラケット、内燃機関本体のそれぞれの取付剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明をV型6気筒エンジンに適用した一実施形態について詳細に説明する。図1は実施形態に係るエンジンEの要部を示す斜視図であり、図2は実施形態に係るエンジンEの要部を示す分解斜視図であり、図3は図1の矢印IIIの方向から見た斜視図である。図1〜図3は、吸気配管、排気配管およびシリンダヘッド等を取り除いた状態を示している。本実施形態に係るエンジンEは、図1および図2の紙面の右下方側が車両の前方側となるようにエンジンルームに縦置きに配置されている。以下、車両の進行方向を前方、車幅方向を右方または左方、鉛直方向を上方または下方として説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、エンジンEのシリンダブロック1は、クランクケースの上部に各3気筒の左右シリンダバンク3,4を所定の角度間隔をもってV型に配置したものである。図2に示すように、その上部には左右シリンダバンク3,4と前壁部5および後壁部6とによって囲まれた凹部7が形成されている。シリンダブロック1の上面には、ターボチャージャブラケット20がその後端部をシリンダブロック1の後端より突出させた状態で、ボルト孔20bに6角ボルト71が嵌挿されて締結されている。このターボチャージャブラケット20と凹部7とによってブリーザ室が画成される。ブリーザ室には、凹部7の底部に形成された連通孔9を介して図示しないクランク室からブローバイガスが流入する。
【0014】
シリンダブロック1の後壁部6の上面には、シリンダブロック1の左右のシリンダバンク3,4に形成されたウォータジャケット13,14のそれぞれに連通するエンジン冷却水通路15,16の下流端が開口している。また、後壁部6の上面には、オイルポンプ(図示しない)に連通するオイル供給通路17とオイル戻り通路18とが形成されている。
【0015】
ターボチャージャブラケット20の上面後端には、ターボチャージャ50が締結されるターボチャージャ締結座21が突設されている。ターボチャージャ締結座21の上面21aは、ターボチャージャ50の下面と面接触するように平滑に形成されている。ターボチャージャ締結座21の上面21aには、ターボチャージャ50を締結するためのねじ孔22,23,24およびボルト孔25、冷却水通路26、オイル供給通路27、オイル戻り通路28が開口している。冷却水通路26、オイル供給通路27、オイル戻り通路28は、ターボチャージャブラケット20の下面へと延び、シリンダブロック1に形成されたエンジン冷却水通路15,16、オイル供給通路17、オイル戻り通路18にそれぞれ連通している。また、冷却水通路26はターボチャージャ締結座21の側部にも連通している。
【0016】
ターボチャージャブラケット20の後端部は、シリンダブロック1に締結されたステイ30によって下方より支持されている。ステイ30は、シリンダブロック1の側壁に当接する側板30aと、ターボチャージャブラケット20の下面に当接する天板30bと、側板30aおよび天板30bの両方に対して垂直に設けられた一対の補強板30cと、各板30a,30b,30cに連結された斜板30dとを備えている。側板30aと天板30bにはボルト孔31,32がそれぞれ穿設されており、天板30bのボルト孔32の下面にはウェルドナット33が溶接されている。ステイ30は、側板30aのボルト孔31に嵌挿される6角ボルト72のよってシリンダブロック1に締結される。ステイ30がシリンダブロック1に締結された状態において、天板30bがターボチャージャブラケット20の下面に当接するとともに、ボルト孔32がターボチャージャブラケット20のボルト孔25と一致する位置に配置されている。
【0017】
ターボチャージャ50は、可変ベーン式ターボチャージャ(可変ジオメトリーターボチャージャ)であって、円盤状のタービンハウジング51と、円盤状のコンプレッサハウジング52と、タービンハウジング51とコンプレッサハウジング52とを同軸に連結するセンタハウジング53と、センタハウジング53の下端に形成され、ターボチャージャ締結座21の上面21aと平行に延在する締結フランジ54とを外殻して有している。タービンハウジング51の内部にはタービンホイール(図示しない)が回転自在に収容され、コンプレッサハウジング52の内部にはコンプレッサホイール(図示しない)が回転自在に収容され、センタハウジング53の内部にはタービンホイールとコンプレッサホイールとを同軸に連結するシャフト(図示しない)が軸支されている。また、タービンハウジング51の内部には、タービンホイールへと流れる排気の流路の大きさを調整する可変ベーン装置(図示しない)が設けられている。
【0018】
タービンハウジング51は、円周部に略接線方向を向く排気入口51aを備え、中央部に排気出口51bを備えている。コンプレッサハウジング52は、中央部に吸気入口52aを備え、円周部に略接線方向を向く吸気出口52bを備えている。
【0019】
図4は、実施形態に係るエンジンEのターボチャージャ50を示す平面図である。図4に示すように、締結フランジ54はターボチャージャ締結座21の上面21aに形成されたねじ孔22,23,24と一致する位置にボルト孔55,56,57が穿設され、ボルト孔25と一致する位置にボルト孔58が穿設されている。ボルト孔57とボルト孔58とは、タービンハウジング51とコンプレッサハウジング52との間に、ターボチャージャ50のシャフトを挟むようにして配置されている。各ボルト孔55〜58は、締結フランジ54の下面に対して垂直に形成されている。
【0020】
ターボチャージャ50は、可変ベーン装置を駆動するアクチュエータユニット60を備えている。アクチュエータユニット60は、アクチュエータ61と、アクチュエータブラケット62と、リンク機構63とを備えている。アクチュエータブラケット62は、コンプレッサハウジング52の円周部に締結され、タービンハウジング51側へと突出している。アクチュエータ61は、アクチュエータブラケット62に締結されて、コンプレッサハウジング52とタービンハウジング51との間に配置されている。アクチュエータ61の駆動端61aは、一端が可変ベーン装置に連結されたリンク機構63の他端に連結されている。アクチュエータ61は、リンク機構63を介して可変ベーン装置を駆動し、ベーン開度を変化させる。
【0021】
図4に示すように、平面視において、アクチュエータユニット60と、センタハウジング53と、タービンハウジング51と、コンプレッサハウジング52との間に空間Sが形成され、空間Sによりボルト孔58が外部に露出するように、アクチュエータユニット60が配置されている。ボルト孔58は締結フランジ54の下面に対して垂直に形成されているため、ボルト孔58の軸線方向、すなわちボルト孔58に嵌挿される締結部材(6角穴付きボルト74)の着脱方向に空間Sが延在するようになっている。換言すると、ボルト孔58に嵌挿される締結部材の着脱方向に空間Sが延在し、ボルト孔58が着脱方向に開放されている。なお、図4から明らかなように、ボルト孔56〜57は平面視において外部に露出している。すなわち、各ボルト孔56〜57は、嵌挿される締結部材の着脱方向に開放されている。
【0022】
ボルト孔55,56には6角ボルト73,73が嵌挿され、この6角ボルト73,73がターボチャージャブラケット20のねじ孔22,23に螺合する。ボルト孔57には6角穴付きボルト(キャップボルト)74が嵌挿され、この6角穴付きボルト74がターボチャージャブラケット20のねじ孔24に螺合する。ボルト孔58には6角穴付きボルト74が嵌挿され、この6角穴付きボルト74がターボチャージャブラケット20のボルト孔25およびステイ30のボルト孔32を貫通した後、ウェルドナット33に螺合する。これらの各ボルト73,73,74,74によって、ターボチャージャ50の締結フランジ54はターボチャージャブラケット20およびステイ30に締結されている。ターボチャージャ50の締結フランジ54とターボチャージャ締結座21との間には、図示しないガスケットが介装されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。図4に示すように、空間Sにより、ボルト孔58がこれに嵌挿される6角穴付きボルト74の着脱方向に開放されているため、6角穴付きボルト74の着脱方向に沿って締結工具(6角レンチ等)をボルト孔58に嵌挿された6角穴付きボルト74までアクセスさせることができる。このように、締結工具のアクセス経路が確保されているため、6角穴付きボルト74の締結作業を容易に行うことができる。また、本実施形態では、空間Sが略鉛直方向に延在しているため、エンジンEがエンジンルームに取り付けられた状態においても、ターボチャージャ50の着脱作業を容易に行うことができる。
【0024】
ステイ30を設けたことによって、ターボチャージャブラケット20の支持面積が拡大されるため、ターボチャージャブラケット20のシリンダブロック1に対する取付剛性が向上する。このため、エンジンEの振動によるセンタハウジング53の振動が抑制され、センタハウジング53の締結フランジ54とターボチャージャ締結座21との接合面が密着した状態に維持される。これにより、締結フランジ54とターボチャージャ締結座21との接合面での冷却水通路26、オイル供給通路27、オイル戻り通路28のシール性が確保され、漏れが防止される。
【0025】
また、ターボチャージャ50のボルト孔58と、ターボチャージャブラケット20のボルト孔25と、ステイ30のボルト孔32とを同軸に配置し、1本の6角穴付きボルト74により、ターボチャージャ50と、ターボチャージャブラケット20と、ステイ30とを互いに締結するようにしたため、部品点数の削減が図れる。
【0026】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、本発明はV型エンジンに限らず、直列エンジン等にも適用することができる。また、ウェルドナット33との締結に使用した6角穴付きボルト74は締結部材の一例であって、他の様々な締結部材を用いることができる。例えば、ステイ30にウェルドボルトを設け、このウェルドボルトにターボチャージャ50を取り付け、ナットによってターボチャージャ50の締結を行ってもよい。また、ターボチャージャブラケット20はシリンダブロック1の一部分として一体的に形成されてもよい。また、実施形態におけるターボチャージャ50は可変ベーン装置用のアクチュエータユニット60を備えているが、アクチュエータユニットは例えば、タービンハウジングに形成されたウェイストゲートの開閉に用いるもの等、他の用途に供されるアクチュエータであってもよい。その他装置の構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るエンジンの要部を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るエンジンの要部を示す分解斜視図である。
【図3】図1の矢印IIIの方向から見た斜視図である。
【図4】実施形態に係るエンジンのターボチャージャを示す平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1:シリンダブロック、3,4:シリンダバンク、20:ターボチャージャブラケット、21:ターボチャージャ締結座、21a:上面、25:ボルト孔、30:ステイ、50:ターボチャージャ、51:タービンハウジング、52:コンプレッサハウジング、53:センタハウジング、54:締結フランジ、55,56,57,58:ボルト孔、60:アクチュエータユニット、61:アクチュエータ、62:アクチュエータブラケット、63:リンク機構、71,72,73:6角ボルト、74:6角穴付きボルト、E:エンジン、S:空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラケットを介して過給機を取り付けてなる内燃機関であって、
前記過給機は、前記ブラケットに締結部材によって締結される締結フランジを有するとともに、前記締結フランジにおける締結部位が前記締結部材の着脱方向に開放されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記過給機は、タービンハウジングと、前記タービンハウジングと同軸に配置されたコンプレッサハウジングと、前記タービンハウジングと前記コンプレッサハウジングとの間に介装されたセンタハウジングと、前記タービンハウジングまたは前記コンプレッサハウジングに固定されたアクチュエータユニットとを有するターボチャージャであり、
前記タービンハウジングと、前記コンプレッサハウジングと、前記センタハウジングと、前記アクチュエータユニットとの間に画成される空間により、前記締結部位が前記締結部材の着脱方向に開放されていることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
内燃機関本体に締結され、前記ブラケットを支持する支持部材を有し、
前記締結フランジと、前記ブラケットと、前記支持部材とは前記締結部材によって互いに締結されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−127073(P2010−127073A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299210(P2008−299210)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】