説明

内燃機関

【課題】燃焼室における残留ガスを低減することにより、ノッキングの発生を防止可能な内燃機関を提供する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関(1)は互いに連通管(22)によって連結された複数の気筒を有しており、連通管(22)と該連通管によって連通される2つの気筒の燃焼室(2)との間の連通状態を第1の連通バルブ(20)と第2の連通バルブ(21)とによって開閉制御可能に構成されている。特に、第1の連通バルブ(20)は一方の気筒が吸気工程にあるときに開制御され、第2の連通バルブ(21)は他方の気筒が排気工程にあるときに開制御されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気筒を有する内燃機関において燃焼室に残留した排気ガスを効率的に掃気可能な内燃機関の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両用エンジンを含む内燃機関では、吸気通路から吸気バルブを介して燃焼室に新気を取り込んで混合ガスを生成後、当該混合ガスを燃焼した際に発生した排気ガスを、排気バルブを介して排気通路側に排出する。この排気ガスの排出は、排気工程においてピストンが上昇することによって燃焼室の容積を減少させ、排気通路側に押し出すことによって行われる。しかしながら、排気上死点においてもピストンの頂部と燃焼室(主にシリンダヘッドなど)との間には少なからず隙間空間が残っており、燃焼室の容量は完全にゼロとはならない。そのため、燃焼室内には少なからず排気ガスが排出しきれずに、少なからず残留している。
【0003】
このように燃焼室に残留した排気ガス(いわゆる残留ガス)は非常に高温であるため、次サイクルで燃焼室に取り込まれた新気によって生成される混合ガスの温度を上昇させる要因となる。このように温度が上昇した混合気は圧縮工程にて圧縮加熱されることにより、更に高温となるため、ノッキングを誘発させる要因となり、問題である。
【0004】
このように残留ガスはノッキングの要因となるため、残留ガスをいかに低減させるかは重要な課題である。残留ガスを低減させる技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1では、吸引装置を内燃機関に搭載し、吸排気バルブ全閉期間内にポンプを作動させることにより残留ガスを吸引して低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−77711号公報
【特許文献2】特開2007−132320号公報
【特許文献3】特開2005−325813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では残留ガスを吸引するためにポンプを含む吸引装置を搭載する必要があるため、内燃機関の構造が複雑になってしまい、製造の技術難易度が高く、コスト効率も悪くなってしまう。また、ポンプの駆動にはエネルギー消費が伴うため、内燃機関のエネルギー効率が悪化し、燃費性能が低下してしまうという問題点もある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、燃焼室における残留ガスを低減することにより、ノッキングの発生を防止可能な内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内燃機関は上記課題を解決するために、複数の気筒を有する内燃機関において、2つの気筒の燃焼室間を連通する連通管と、前記2つの気筒のうち、どちらか一方の気筒の燃焼室と前記連通管との間の連通状態を開閉するための第1の連通バルブと、前記2つの気筒のうち、どちらか他方の気筒の燃焼室と前記連通管との間の連通状態を開閉するための第2の連通バルブと、前記第1及び第2の連通バルブを開閉制御する制御手段とを備え、前記第1の連通バルブは、前記一方の気筒が吸気工程にあるときに前記制御手段によって開制御され、前記第2の連通バルブは、前記他方の気筒が排気工程にあるときに前記制御手段によって開制御されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、吸気工程に一方の気筒と連通管が連通状態となると、連通管内のガスが一方の気筒内に流入し、連通管内の圧力が下がる。それに対し、排気工程に他方の気筒と連通管が連通状態となると、他方の気筒内の圧力の方が連通管内の圧力よりも高いため、他方の気筒内の既燃ガスが連通管に流入する。このため、ポンプ等を用いることなく他方の気筒で発生した既燃ガスを一方の気筒に送ることができるため、内燃機関のエネルギー効率を向上することができる。
【0010】
特に、前記第2の連通バルブは、前記他方の気筒が排気工程の後半であるときに前記制御手段によって開制御されるとよい。これにより、排気工程の後半において燃焼室内に残った残留ガスを吸いだすことができるため、掃気効率を向上させ、ノッキングの発生を抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記第1の連通バルブは、前記一方の気筒に設置される吸気バルブが開くよりも前に、前記制御手段によって開制御が開始されるとよい。吸気バルブが開いた後は吸気通路側に負圧が逃げてしまい、連通管に負圧を蓄積しにくくなってしまうことが考えられる。そのため、吸気バルブに先じて第1の連通バルブを開くようにすることで、一方の気筒で発生する負圧を無駄に逃すことなく、連通管に効率的に蓄積することができる。これにより、残留ガスの吸い出し効率が向上し、より効果的にノッキングの防止を図ることができる。
【0012】
また、前記他方の気筒は、前記一方の気筒が吸気工程にある際に排気工程にあり、前記第2の連通バルブは、前記第1の連通バルブが閉じたのち、前記制御手段によって開制御されるとよい。これによれば、他方の気筒から連通管に流入した既燃ガスは、次のサイクルまで連通管内に蓄積されるため、吸気工程で吐出されるまでの間にガスの温度が下がり、ノッキングの発生をより抑制できる。
【0013】
また、前記第2の連通バルブは、前記他方の気筒の吸気バルブに比べて前記他方の気筒の排気バルブ寄りに配置されるとよい。排気工程において燃焼室内の既燃ガスは排気バルブに向って移動するため、残留ガスには当該移動方向に沿った慣性力が働いている。このため、当該慣性力の方向寄りに、連通管との出入り口を設けるべく第2の連通バルブを配置することにより、既燃ガスの連通管への流入効率を向上させ、内燃機関のエネルギー効率やノッキング抑制効果をより向上させることができる。
【0014】
また、前記内燃機関は少なくとも4つの気筒を備え、前記4つの気筒は、吸気工程から排気工程までのサイクルがそれぞれずれており、前記4つの気筒のうち、吸気工程と排気工程が同じタイミングとなる気筒を連通して4つの連通管を形成し、各連通管には、吸気工程となる前記一方の気筒側に前記第1の連通バルブを設け、排気工程となる前記他方の気筒側に前記第2の連通バルブを設けるとよい。これによれば、各気筒の既燃ガスをむら無く利用することができるため、内燃機関のエネルギー効率をさらに向上することができる。
【0015】
また、前記連通管を冷却するための冷却手段を備えるとよい。これによれば、連通管に吸い出された高温の残留ガスを冷却手段によって積極的に冷却することにより、残留ガスを低温にすると共に容積を減少させることで、より効果的なノッキング防止を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸気工程に一方の気筒と連通管が連通状態となると、連通管内のガスが一方の気筒内に流入し、連通管内の圧力が下がる。それに対し、排気工程に他方の気筒と連通管が連通状態となると、他方の気筒内の圧力の方が連通管内の圧力よりも高いため、他方の気筒内の既燃ガスが連通管に流入する。このため、ポンプ等を用いることなく他方の気筒で発生した既燃ガスを一方の気筒に送ることができるため、内燃機関のエネルギー効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るエンジンの構造を模式的に示す概略図である。
【図2】エンジンの各気筒間に設けられた連通管の構造を示す平面図である。
【図3】連通管によって互いに連結された2つの気筒間における残留ガスの振る舞いを工程毎に示す模式図である。
【図4】吸気バルブ、排気バルブ、吸込用バルブ、吸出用バルブのそれぞれの開閉タイミングを示すと共に、連通管を介した残留ガスの移動を概念的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
本実施例では4気筒を有する直噴ガソリンエンジン(以下、「エンジン1」)を例に説明する。図1は、本実施例に係るエンジン1の構造を模式的に示す概略図である。尚、図1では、4気筒のうち任意の1気筒に着目してその断面構造を簡略的に示している。
【0020】
エンジン1の燃焼室2はシリンダヘッド3、ピストン4及びシリンダ5によって構成されており、ピストン4の往復運動がコンロッド6を介して図不示のクランクシャフトに伝達される。シリンダヘッド3の中心部には燃焼室2内の混合気に着火するための点火プラグ7が設けられている。尚、本実施例ではエンジン1は直噴型エンジンであり、燃焼室2内には、直接燃料を噴射供給するための筒内インジェクタ8が設けられている。
【0021】
燃焼室2には吸気通路9から吸気バルブ10を介して新気が導入され、燃焼室2内にて筒内インジェクタ8から供給された燃料と混合気が生成される。混合気は燃焼室2において燃焼した後、排気ガスとして排気バルブ11を介して排気通路12に排出される。吸気通路8には吸気を浄化するためのエアフィルタ(図不示)や吸気量を調整するためのスロットルバルブ13が設けられている。一方の排気通路12には排気中に含まれる有害成分(CO、NOxなど)を除去するための三元触媒(図不示)が設けられている。
【0022】
吸気バルブ10や排気バルブ11はそれぞれに対応して設けられた可変バルブタイミング機構(吸気VVT15、排気VVT16)によって開閉タイミングや開閉量が制御可能に構成されている。この開閉タイミングや開閉量は、それぞれECU18によって制御されるが、詳しくは後述する。また、ピストン4のレシプロサイクルに応じて回転駆動されるコンロッド6の近傍には、コンロッド6の回転角を検出することによりエンジン回転数を計測するための回転センサ19(本発明の「回転数検出手段」の一例)が設けられており、その検出値もまたECU18に送信されて各種制御に用いられるようになっている。
【0023】
ECU18はエンジン1の制御全体を統括するコントロールユニットであり、エンジン1に取り付けられた各種センサ等から取得した検出値に基づいて、筒内インジェクタ8における燃料噴射時期や燃料噴射量、点火プラグ7における着火時期、各種VVT(吸気VVT15、排気VVT16)等の動作タイミングや動作量を制御する。
【0024】
図2はエンジン1の各気筒間に設けられた連通管22の構造を示す平面図である。各気筒のシリンダヘッド3には吸気バルブ10及び排気バルブ11が2つずつ設けられており、更に、残留ガス吸込用バルブ20及び残留ガス吸出用バルブ21(以下、それぞれ「吸込用バルブ20」「吸出用バルブ21」と称する)が設けられている。連通管22は異なる気筒間の吸込用バルブ20と吸出用バルブ21とを互いに連結しており、気筒間の残留ガスの移送を可能にしている。尚、図2では気筒#1について代表的に各バルブに符号を付しており、気筒#2〜#4も同様であるため符号の表記は省略している。尚、残留ガス吸込用バルブ20及び残留ガス吸出用バルブ21は、それぞれ本発明における「第1の連通バルブ」及び「第2の連通バルブ」の一例である。
【0025】
エンジン1は気筒#1、#2、#3、#4からなる4気筒の4サイクルガソリンである。連通管22はこれら4気筒のうち、残留ガスが吸い出される側の気筒(本発明の「一方の気筒」に対応)と、該吸い出される側の気筒が排気工程にある際に吸気工程にある気筒(本発明の「他方の気筒」に対応)とが互いに連結されるように設けられている。詳しくは図3を参照しながら後述するが、このような組み合わせでエンジン1が有する4気筒が、互いに連通管22によって連結されている。
【0026】
尚、図2における4気筒エンジンにおける連通管22のレイアウトは一例であり、エンジンが有する気筒数や、各気筒におけるサイクルの振り分け方によって適宜変更可能であることは言うまでも無い。但し、本実施例では特に、吸込用バルブ20と吸出用バルブ21は、吸気バルブ10に比べて排気バルブ11寄りに配置されている。排気工程において燃焼室内の残留ガスは排気バルブ11に向って移動するため、残留ガスには当該移動方向に沿った慣性力が働いている。本態様では、当該慣性力の方向寄りに、連通管22との出入り口を設けるべく吸込用バルブ20と吸出用バルブ21を配置することにより、既燃ガスの連通管22への流入効率を向上させ、エンジン1のエネルギー効率やノッキング抑制効果を向上させることができる。
【0027】
ここで図3を参照して、連通管22を用いた残留ガスの吸出し動作について具体的に説明する。図3は連通管22によって互いに連結された2つの気筒間における残留ガスの振る舞いを工程毎に示す模式図である。実際のエンジン1は上述したように4気筒#1〜#4を有しているが、図3では説明の便宜上の都合から、特定の連通管22によって互いに連結された2気筒(残留ガスが吸い出される側の気筒Bと、該吸い出される側の気筒が排気工程にある際に吸気工程にある気筒A)を代表的に示している。また図3では、吸込用バルブ20と吸出用バルブ21がそれぞれ開閉している状態を「○」と「×」で示してある。
【0028】
図3(a)は気筒Aが吸気工程の前半にあり、且つ、気筒Bが排気工程の前半にある場合における連通管22近傍の様子を示す模式図である。このとき気筒Aの吸出用バルブ21は「開」、気筒Bの吸込用バルブ20は「閉」の状態に設定されている。連通管22内には以前の工程において吸いこまれた残留ガスが蓄積されており(この連通管22への残留ガスの吸込みメカニズムについては後述する)、気筒Aが吸気工程にある際に燃焼室2内の圧力がピストン4の降下に伴い負圧になることを利用して、該連通管22内に蓄積された残留ガスが排出される。連通管22からの残留ガスの排出はやがて終了するが、その後も連通管22には気筒Aの燃焼室における負圧が印加される。すなわち、吸気工程に気筒Aと連通管22が連通状態となると、連通管22内のガスが一方の気筒A内に流入し、連通管内の圧力が下がる。そのため、連通管22の圧力は次第に負圧に転換され、その負圧の大きさが次第に増加していく。
【0029】
図3(b)は気筒Aが吸気工程の後半にあり、且つ、気筒Bが排気工程の後半にある場合における連通管22近傍の様子を示す模式図である。このとき気筒Aの吸出用バルブ21は「閉」、気筒Bの吸込用バルブ20は「開」の状態に設定されている。このように、気筒Aの吸出用バルブ20を図3(a)の「開」の状態から、「閉」の状態に切り替えることにより、連通管22に負圧を蓄積することができる。
【0030】
特に本実施例では後述する図4にも示してあるように、吸込用バルブ20は、気筒Aに設置される吸気バルブ10が開くよりも前に、開制御が開始されるよう設定されている。吸気バルブ10が開いた後は吸気通路9側に負圧が逃げてしまい、連通管22に負圧を蓄積しにくくなってしまうことが考えられる。そのため、吸気バルブ10に先じて吸込み用バルブ20を開くようにすることで、気筒Aで発生する負圧を無駄に逃すことなく、連通管22に効率的に蓄積することができる。これにより、残留ガスの吸い出し効率が向上し、より効果的にノッキングの防止を図ることができる。
【0031】
そして、気筒Bの吸込用バルブ20を「開」にすることによって、該連通管22に蓄積した負圧を利用して、排気工程にある気筒Bの燃焼室に存在する残留ガスを連通管22に吸込むことができる。つまり、排気工程に気筒Bと連通管22が連通状態となると、気筒内Bの圧力の方が連通管22内の圧力よりも高いため、気筒B内の既燃ガスが連通管22に流入する。このように、本発明では連通管22に予め蓄積しておいた負圧を用いて、排気工程にある気筒の燃焼室2から残留ガスを吸い出すことができる。これにより、ポンプ等を用いることなく気筒Bで発生した既燃ガスを気筒Aに送ることができるため、エンジン1のエネルギー効率を向上することができる。
【0032】
図3(c)は気筒Aが圧縮工程〜排気工程(吸気工程以外)にあり、且つ、気筒Bが吸気工程〜膨張工程(排気工程以外)にある場合における連通管22近傍の様子を示す模式図である。このとき気筒Aの吸出用バルブ21と気筒Bの吸込用バルブ20とは、共に「閉」の状態に設定されている。すなわち、この場合は連通管22の両端にある吸出用バルブ21と吸込用バルブ20とを共に閉じることによって、図3(b)において吸い出した残留ガスを連通管22内に閉じ込め、再び図3(a)のタイミングが来るまでの間待機する。
【0033】
ここで連通管22に閉じ込められている残留ガスは高温であるため、本実施例では特に、連通管22に設置された冷却器23によって、残留ガスが排出されるまでの間に冷却されるようにしている。これにより、連通管22に吸い出された高温の残留ガスを冷却器23によって積極的に冷却することにより、残留ガスを低温にすると共に容積を減少させることで、より効果的なノッキング防止を行うことができる。尚、連通管22に冷却器23を設置しない場合であっても、連通管22自身による放熱によって少なからず残留ガスを冷却することはできる。つまり、気筒Bから連通管22に流入した既燃ガスは、次のサイクルまで連通管22内に蓄積されるため、吸気工程で吐出されるまでの間にガスの温度が下がり、ノッキングの発生をより抑制できる。また冷却器23に代えて又は加えて、連通管22にインジェクタを設けることによって、燃料を連通管22内に噴射し、その気化熱で冷却するようにしてもよい。
【0034】
以上が連通管22の基本的な機能であるが、次に図4を参照して4気筒の4サイクルガソリンエンジンにおける実際の動作例について説明する。図4は吸気バルブ10、排気バルブ11、吸込用バルブ20、吸出用バルブ21のそれぞれの開閉タイミングを示すと共に、連通管22を介した残留ガスの移動を概念的に示すタイミングチャートである。
【0035】
まず期間T1では、排気工程にある気筒#3と、吸気工程にある気筒#1とを連結する連通管22aを用いた残留ガスの排出が行われる。具体的には、期間T1の前半では吸気工程にある気筒#1において吸出用バルブ21が開くことにより、予め連通管22aに蓄積されている残留ガスを気筒#1への放出を行うと共に、放出完了後は、連通管22aに負圧を蓄積する。
【0036】
尚、期間T1において気筒#1で吸出用バルブ21が完全に閉じる前に吸気バルブ10を開いている(すなわち、気筒#1において吸出用バルブ21と吸気バルブ10との間にバルブオーバーラップを設けている)が、燃焼室2内におけるガスの流路などを考慮して適宜調整するとよい。
【0037】
期間T2の後半になると、気筒#1の吸出用バルブ21は閉じられると共に、気筒#3の吸込用バルブ20が開くことにより、連通管22aに蓄積された負圧を用いて、排気工程にある気筒#3から残留ガスを吸い込む。気筒#3の排気バルブ11自体は期間T1の前半から開いているが、期間T1の後半に限って吸込用バルブ20を開くことにより、排気バルブ11を開くだけでは排出しきれずに燃焼室2に残った残留ガスを、連通管22aに蓄積した負圧によって吸い出すことができる。このように連通管22aに吸い出された残留ガスは、次の期間T1が来るまでの間(1サイクルの間)連通管22a内に留められる。
【0038】
このように期間T1では排気工程にある気筒#3における残留ガスが、図3において矢印で示したように、実質的に連通管22を介して吸気工程にある気筒#1に排出されることとなる。
【0039】
次に期間T2では、吸気工程にある気筒#3と、排気工程にある気筒#4とを連結する連通管22bを用いた残留ガスの排出が行われる。基本的に期間T1において気筒#1と#3について説明した内容と同様である。説明の重複を避けるために簡潔に説明すると、期間T2の前半では吸気工程にある気筒#3からの負圧によって連通管22bに蓄えた残留ガスを気筒#3に排出すると共に、連通管22bに負圧の蓄積を行う。そして、期間T2の後半において該連通管22bに蓄積した負圧を用いて、排気工程にある気筒#4での残留ガスを連通管22b内に吸い出す。これにより、期間T2では排気工程にある気筒#4における残留ガスが、図3において矢印で示したように、実質的に連通管22bを介して吸気工程にある気筒#3に排出されることとなる。
【0040】
更に期間T3では、吸気工程にある気筒#4と、排気工程にある気筒#2とを連結する連通管22cを用いた残留ガスの排出が行われる。基本的に期間T1やT2について説明した内容と同様であるが、期間T3の前半では吸気工程にある気筒#4からの負圧によって連通管22bに蓄えた残留ガスを気筒#2に排出すると共に、連通管22cに負圧の蓄積を行う。そして、期間T3の後半において該連通管22cに蓄積した負圧を用いて、排気工程にある気筒#2での残留ガスを連通管22c内に吸い出す。これにより、期間T3では排気工程にある気筒#2における残留ガスが、図3において矢印で示したように、実質的に連通管22cを介して吸気工程にある気筒#4に排出されることとなる。
【0041】
更に期間T4では、吸気工程にある気筒#2と、排気工程にある気筒#1とを連結する連通管22dを用いた残留ガスの排出が行われる。基本的に期間T1〜T3について説明した内容と同様であるが、期間T4の前半では吸気工程にある気筒#2からの負圧によって連通管22dに蓄えた残留ガスを気筒#2に排出すると共に、連通管22dに負圧の蓄積を行う。そして、期間T4の後半において該連通管22dに蓄積した負圧を用いて、排気工程にある気筒#1での残留ガスを連通管22d内に吸い出す。これにより、期間T4では排気工程にある気筒#1における残留ガスが、図3において矢印で示したように、実質的に連通管22dを介して吸気工程にある気筒#2に排出されることとなる。
【0042】
以上説明したように、本実施例によれば、吸気工程に一方の気筒と連通管22が連通状態となると、連通管22内のガスが一方の気筒内に流入し、連通管22内の圧力が下がる。それに対し、排気工程に他方の気筒と連通管22が連通状態となると、他方の気筒内の圧力の方が連通管22内の圧力よりも高いため、他方の気筒内の既燃ガスが連通管22に流入する。このため、ポンプ等を用いることなく他方の気筒で発生した既燃ガスを一方の気筒に送ることができるため、エンジン1のエネルギー効率を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、複数の気筒を有する内燃機関において燃焼室に残留した排気ガスを効率的に掃気可能な内燃機関に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン
2 燃焼室
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 シリンダ
6 コンロッド
7 点火プラグ
8 インジェクタ
9 吸気通路
10 吸気バルブ
11 排気バルブ
12 排気通路
13 スロットルバルブ
15 吸気用VVT
16 排気用VVT
18 ECU
19 回転数センサ
20 吸込用バルブ
21 吸出用バルブ
22 連通管
23 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有する内燃機関において、
2つの気筒の燃焼室間を連通する連通管と、
前記2つの気筒のうち、どちらか一方の気筒の燃焼室と前記連通管との間の連通状態を開閉するための第1の連通バルブと、
前記2つの気筒のうち、どちらか他方の気筒の燃焼室と前記連通管との間の連通状態を開閉するための第2の連通バルブと、
前記第1及び第2の連通バルブを開閉制御する制御手段と
を備え、
前記第1の連通バルブは、前記一方の気筒が吸気工程にあるときに前記制御手段によって開制御され、前記第2の連通バルブは、前記他方の気筒が排気工程にあるときに前記制御手段によって開制御されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記第2の連通バルブは、前記他方の気筒が排気工程の後半であるときに前記制御手段によって開制御されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記第1の連通バルブは、前記一方の気筒に設置される吸気バルブが開くよりも前に、前記制御手段によって開制御が開始されることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記他方の気筒は、前記一方の気筒が吸気工程にある際に排気工程にあり、
前記第2の連通バルブは、前記第1の連通バルブが閉じたのち、前記制御手段によって開制御されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記第2の連通バルブは、前記他方の気筒の吸気バルブに比べて前記他方の気筒の排気バルブ寄りに配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記内燃機関は少なくとも4つの気筒を備え、
前記4つの気筒は、吸気工程から排気工程までのサイクルがそれぞれずれており、
前記4つの気筒のうち、吸気工程と排気工程が同じタイミングとなる気筒を連通して4つの連通管を形成し、
各連通管には、吸気工程となる前記一方の気筒側に前記第1の連通バルブを設け、排気工程となる前記他方の気筒側に前記第2の連通バルブを設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記連通管を冷却するための冷却手段を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36367(P2013−36367A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171596(P2011−171596)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】