説明

内燃機関

【課題】シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルを効率的に冷却する。
【解決手段】シリンダヘッド21とシリンダヘッド21の上方に配設されたカムシャフト13等の被潤滑部材との間に配設され、前記被潤滑部材から流下するオイルを受ける板状のオイルプレート4を備え、オイルプレート4が、オイルプレート4の上側表面で受けられたオイルを、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面上へ滴下させる孔であるオイル孔41が複数個形成されていると共に、複数個のオイル孔41から滴下したオイルが、シリンダヘッド21の上側壁面213とオイルプレート4の下側表面との間を第1オイル通路212の上端部に向けて流下可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドの上方に配設された被潤滑部材から流下したオイルを、前記シリンダヘッドの上下方向に形成されたオイル通路の上端部まで流下させる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダヘッドの上面に沿ってオイルを流下させ、上記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケットを用いて、オイルを冷却する技術が知られている。
【0003】
例えば、シリンダヘッドのアッパーデッキが、気筒列方向に傾斜しており、シリンダヘッドの後端側ほど浅底となるように形成されている内燃機関が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の内燃機関では、アッパーデッキを流れるオイルは、ウォータジャケットを流れる冷却水の流れ方向に対向して流れるから、アッパーデッキを介してオイルと接触する冷却水が常に入れ替わり、常に低温の冷却水と熱交換することができるので、オイルを効率よく冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−45417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の内燃機関では、アッパーデッキの上側表面を流れるオイルに、アッパーデッキの上側表面近傍の位置と、アッパーデッキの上側表面から離間した位置とで、温度の相違する層流(以下、「温度境界層」という。)が発生する虞がある。
【0006】
すなわち、オイルに「温度境界層」が発生すると、アッパーデッキの上側表面近傍の位置では、オイルの流速が低い流れとなり、アッパーデッキの上側表面から離間した位置では、オイルの流速が速い流れとなる。(図6(a)参照)。このように、アッパーデッキの上側表面を流れるオイルに温度境界層が発生した場合には、オイルの流速が速いアッパーデッキの上側表面から離間した位置では、ウォータジャケットとオイルとの間の熱伝達が低下し、オイルを効率よく冷却することができないことになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルを効率的に冷却することが可能な内燃機関を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関は、以下のように構成されている。
【0009】
すなわち、本発明に係る内燃機関は、シリンダヘッドの上方に配設された被潤滑部材から流下したオイルを、前記シリンダヘッドの上下方向に形成されたオイル通路の上端部まで流下させる内燃機関であって、前記被潤滑部材と前記シリンダヘッドとの間に配設され、前記被潤滑部材から流下するオイルを受ける板状のオイルプレートを備え、前記オイルプレートが、当該オイルプレートの上側表面で受けられたオイルを、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面上へ滴下させる孔であるオイル孔が複数個形成されていると共に、前記複数個のオイル孔から滴下したオイルが、前記シリンダヘッドの上側壁面と当該オイルプレートの下側表面との間を前記オイル通路の上端部に向けて流下可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
かかる構成を備える内燃機関によれば、板状のオイルプレートによって、前記被潤滑部材から流下するオイルが受けられ、当該オイルプレートの上側表面で受けられたオイルが、当該オイルプレートに形成された複数個のオイル孔から、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面上へ滴下される。そして、前記複数個のオイル孔から滴下したオイルが、前記シリンダヘッドの上側壁面と当該オイルプレートの下側表面との間を前記オイル通路の上端部に向けて流下可能に構成されているため、シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルを効率的に冷却することができる。
【0011】
すなわち、前記複数個のオイル孔から滴下したオイルが、前記シリンダヘッドの上側壁面と当該オイルプレートの下側表面との間を前記オイル通路の上端部に向けて流下可能に構成されているため、前記シリンダヘッドの上側壁面と前記オイルプレートの下側表面との間隔を適当な距離とするべく前記オイルプレートを配設することによって、シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルに温度境界層が発生することを防止することができるので、シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルを効率的に冷却することができるのである(図6参照)。
【0012】
また、本発明に係る内燃機関は、前記複数個のオイル孔が、それぞれ、前記シリンダヘッドの上側壁面において低温となる部位の真上に形成されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記複数個のオイル孔が、それぞれ、前記シリンダヘッドの上側壁面において低温となる部位の真上に形成されているため、前記シリンダヘッドの上側壁面において低温となる部位にオイルを流下させることができるので、オイルを効率的に冷却することができる。
【0014】
また、本発明に係る内燃機関は、前記複数個のオイル孔が、それぞれ、前記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケットの真上に形成されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記複数個のオイル孔が、それぞれ、前記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケットの真上に形成されているため、前記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケットの上側壁面にオイルを流下させることができるので、オイルを、ウォータジャケット内を流れる冷却水と熱交換させることによって更に効率的に冷却することができる。
【0016】
また、本発明に係る内燃機関は、前記シリンダヘッドが、その上側壁面の表面に凹凸が形成されており、前記オイルプレートが、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面に形成された凹凸に沿って、凹凸が形成されているが好ましい。
【0017】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記シリンダヘッドが、その上側壁面の表面に凹凸が形成されており、前記オイルプレートが、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面に形成された凹凸に沿って、凹凸が形成されているため、前記シリンダヘッドの上側壁面と前記オイルプレートの下側表面との間隔を適当な距離とするべく前記オイルプレートを配設することができるので、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルに温度境界層が発生することを防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る内燃機関は、前記オイルプレートが、前記シリンダヘッドの上側壁面に配設される部品を挿通させる孔である部品挿通孔が形成されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記オイルプレートには、前記シリンダヘッドの上側壁面に配設される部品を挿通させる孔である部品挿通孔が形成されているため、前記オイルプレートを容易に配設することができる。
【0020】
また、本発明に係る内燃機関は、前記複数個のオイル孔が、それぞれ、前記部品挿通孔の直径よりも小さい直径の円形状に形成されていることが好ましい。
【0021】
かかる構成を備える内燃機関によれば、前記複数個のオイル孔が、それぞれ、前記部品挿通孔の直径よりも小さい直径の円形状に形成されているため、オイルを前記シリンダヘッドの上側壁面の表面に広範囲に流下させることができるので、オイルを更に効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る内燃機関によれば、板状のオイルプレートによって、前記被潤滑部材から流下するオイルが受けられ、当該オイルプレートの上側表面で受けられたオイルが、当該オイルプレートに形成された複数個のオイル孔から、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面上へ滴下される。そして、前記複数個のオイル孔から滴下したオイルが、前記シリンダヘッドの上側壁面と当該オイルプレートの下側表面との間を前記オイル通路の上端部に向けて流下可能に構成されているため、シリンダヘッドの上側壁面の表面を流れるオイルを効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るエンジンにおけるオイルの循環系統の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示すエンジンのエンジンブロックの縦断面の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示すシリンダヘッドのウォータジャケットを流れる冷却水の透視平面図である。
【図4】図2に示す断面図におけるシリンダヘッド部の部分拡大図である。
【図5】図4に示すオイルプレートの一例を示す平面図である。
【図6】オイルプレートを配設する効果の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る内燃機関の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
−オイル循環系統−
まず、図1を参照して、本発明に係るエンジンにおけるオイルの循環系統について説明する。図1は、本発明に係るエンジン1におけるオイルの循環系統の一例を示す構成図である。エンジン1は、ピストン11、クランクシャフト12、カムシャフト13等の種々の被潤滑機構が配設されるエンジンブロック2と、当該種々の被潤滑機構を潤滑するオイルをエンジン1内で循環させる潤滑系統3と、を備えている。ここで、エンジン1は、特許請求の範囲に記載の「内燃機関」に相当する。
【0026】
エンジンブロック2は、シリンダヘッド21及びシリンダブロック22(図2参照)を備え、ピストン11、クランクシャフト12、カムシャフト13等の種々の被潤滑部材が配設されている。エンジンブロック2の下端部には、これらの被潤滑部材に対して供給されるべきオイルを貯留する部材であるオイルパン30が配設されている。
【0027】
潤滑系統3は、オイルパン30の内側に貯留されているオイルを上記の種々の被潤滑部材へ供給可能とするべく、以下の通り構成されている。
【0028】
オイルパン30の内側には、オイルストレーナ31が配設されている。オイルストレーナ31は、オイル内の異物等を除去するものであって、オイルパン30に貯留されているオイルを吸い込むための吸込口31aを有し、ストレーナ流路33を介して、エンジンブロック2に設けられたオイルポンプ32に接続されている。
【0029】
オイルポンプ32は、オイルパン30に収納されたオイルを吸い上げて、オイルフィルタ34を介して、被潤滑部材に対して、潤滑油として供給するポンプであって、例えば、ロータリーポンプ等から構成されている。また、オイルポンプ32のロータは、クランクシャフト12の回転に伴って回転するべく、クランクシャフト12に係合されている。更に、オイルポンプ32は、エンジンブロック2の外部に設けられたオイルフィルタ34のオイル入口と、オイル輸送管35を介して接続されている。オイルフィルタ34のオイル出口は、上記の種々の被潤滑部材に向かうオイル流路として設けられたオイル供給管36と接続されている。
【0030】
エンジン1の運転が開始されると、クランクシャフト12の回転に伴ってオイルポンプ32が駆動される。そして、図1に矢印Vで示すように、オイルポンプ32は、オイルパン30に貯留されているオイルをオイルストレーナ31の吸込口31aから吸入し、吸入されたオイルを、オイル輸送管35、オイルフィルタ34、オイル供給管36を順次経由して、エンジンブロック2内の潤滑対象である被潤滑部材に供給する。このようにして被潤滑部材に供給されたオイルは、被潤滑部材にて潤滑油として機能すると共に、被潤滑部材の動作時に生じる摩擦熱等の熱を吸収した後、重力によって流下してオイルパン30に回収される。
【0031】
−エンジンブロック−
次に、図2を参照して、エンジンブロック2の構造について説明する。図2は、図1に示すエンジン1のエンジンブロック2の縦断面の一例を示す断面図である。なお、図2に示す断面図は、図1に示す座標軸のX軸と垂直な平面による断面、すなわち、図1に示す座標軸のY−Z平面と平行な平面による断面の一例を示す断面図である。図2に示すように、エンジンブロック2は、シリンダヘッド21と、シリンダブロック22とを備えている。また、シリンダヘッド21の上方には、シリンダヘッド21の上側壁面213(図4参照)の凹凸に沿ってオイルプレート4が配設されている。オイルプレート4の構成については、図4、図5を参照して後述する。
【0032】
シリンダヘッド21は、第1ウォータジャケット211、及び、第1オイル通路212を備えている。第1ウォータジャケット211は、シリンダブロック22の後述するシリンダボア223の上端部に形成される燃焼室内での燃料の燃焼等に伴う発熱を冷却するべく、紙面に直交する方向に、冷却水が挿通されるものである。なお、第1ウォータジャケット211は、特許請求の範囲に記載の「ウォータジャケット」に相当する。
【0033】
ここで、図3を参照して、第1ウォータジャケット211における冷却水の流れの向きについて説明する。図3は、図2に示すシリンダヘッド21の第1ウォータジャケット211を流れる冷却水の透視平面図である。図3における矢印VWは、冷却水の流れの向きを示すものである。図3に示すように、第1ウォータジャケット211には、図略のウォータポンプから送出された冷却水が、複数の(ここでは、4個の)シリンダボア223の配列方向(ここでは、左右方向)に沿って右向きに流れ、図3の右端に形成された流出口211bから流出する。
【0034】
再び、図2に戻って、エンジンブロック2の構造について説明する。シリンダヘッド21に上下方向に形成された第1オイル通路212は、シリンダヘッド21の上方に配設された被潤滑部材からオイルプレート4上に流下し、更に、オイルプレート4に形成されたオイル孔41(図5参照)から滴下したオイルを、エンジンブロック2に形成された第2オイル通路222へ流下させる通路である。なお、第1オイル通路212は特許請求の範囲に記載の「オイル通路」に相当する。
【0035】
シリンダブロック22は、第2ウォータジャケット221、第2オイル通路222、及び、シリンダボア223を備えている。第2ウォータジャケット221は、シリンダボア223の上端部に形成される燃焼室内での燃料の燃焼等に伴う発熱を冷却するべく、紙面に直交する方向に、冷却水が挿通されるものである。
【0036】
第2オイル通路222は、第2ウォータジャケット221に近接して配設され、シリンダヘッド21の第1オイル通路212から流下したオイルを、第2ウォータジャケット221に挿通される冷却水によって冷却させながら、シリンダブロック22の下端部に配設されたオイルパン30まで流下させる通路である。
【0037】
シリンダボア223は、略円筒状に形成され、ピストン11(図1参照)が摺動自在に収納されて、上端部に燃焼室が形成されるものである。なお、燃焼室は、ピストン11の頂面、シリンダボア223の内周面、及び、シリンダヘッド21の下側表面の一部によって構成される。
【0038】
−オイルプレート−
次に、図4、図5を参照して、オイルプレート4について説明する。図4は、図2に示す断面図におけるシリンダヘッド21の部分拡大図である。図5は、図4に示すオイルプレート4の一例を示す平面図である。図4に示すように、オイルプレート4は、シリンダヘッド21の上方に配設された図略の被潤滑部材とシリンダヘッド21との間に配設され、上記被潤滑部材から流下するオイルを受ける板状の部材である。オイルプレート4は、例えば、SUS304等のステンレス鋼、アルミニウム、樹脂等で構成される。また、オイルプレート4は、シリンダヘッド21にボルト止め等で固定される。
【0039】
図5に示すように、オイルプレート4には、オイルプレート4の上側表面で受けられたオイルを、シリンダヘッド21の上側壁面の表面上へ滴下させる孔であるオイル孔41が複数個形成されている。ここで、図5を参照して、オイルプレート4に形成される各種の孔について説明する。
【0040】
図5に示すように、オイルプレート4には、オイル孔41、点火プラグ孔42、バルブスプリング孔43、ボルトボス孔44、及び、ヘッドボルト孔45が配設されている。ここで、点火プラグ孔42、バルブスプリング孔43、ボルトボス孔44、及び、ヘッドボルト孔45は、特許請求の範囲に記載の「部品挿通孔」に相当する。
【0041】
点火プラグ孔42は、オイルプレート4の幅方向(図5の上下方向:図1のY軸方向)の略中央部に形成された略円形の孔であって、シリンダボア223(図2参照)の上端部に形成される燃焼室内で燃料に点火する図略の点火プラグを、オイルプレート4の上下方向に挿通させる孔である。なお、本実施形態では、点火プラグ孔42は、オイルプレート4の長手方向(図5の左右方向:図1のX軸方向)に直線上に4個の孔が等間隔に形成されている。
【0042】
バルブスプリング孔43は、吸気通路と燃焼室との間を連通又は遮断する図略の吸気バルブ、及び、排気通路と燃焼室との間を連通又は遮断する図略の排気バルブにそれぞれ配設されたバルブスプリングを、オイルプレート4の上下方向に挿通させる孔である。本実施形態では、バルブスプリング孔43は、4個の点火プラグ孔42の周囲に、それぞれ、4個(合計16個)形成されている。
【0043】
ボルトボス孔44は、シリンダヘッド21の上方に配設された構造部品であるカムシャフトハウジング、ヘッドカバー等とシリンダヘッド21とを締結するボルトボスを、オイルプレート4の上下方向に挿通させる孔である。なお、本実施形態では、ボルトボス孔44は、オイルプレート4の長手方向(図5の左右方向:図1のX軸方向)に直線上に4個の孔が等間隔に形成されている。
【0044】
ヘッドボルト孔45は、シリンダヘッド21をシリンダブロック22に螺合させるヘッドボルトを、オイルプレート4の上下方向に挿通させる孔である。なお、本実施形態では、ヘッドボルト孔45は、オイルプレート4の幅方向(図5の上下方向:図1のY軸方向)の両端部に、左右方向(図1のX軸方向)に2本の直線上に5個づつ(合計10個)の孔が等間隔に形成されている。
【0045】
上述のように、オイルプレート4には、シリンダヘッド21の上側壁面に配設される部品を挿通させる孔である部品挿通孔(点火プラグ孔42、バルブスプリング孔43、ボルトボス孔44、及び、ヘッドボルト孔45等)が形成されているため、オイルプレート4を容易に配設することができる。
【0046】
すなわち、オイルプレート4には、シリンダヘッド21の上側壁面に配設される部品を挿通させる孔である部品挿通孔が形成されているため、オイルプレート4を、シリンダヘッド21の上側壁面に配設される部品(例えば、点火プラグ、吸気バルブ、排気バルブ等)と干渉することなく容易に配設することができるのである。
【0047】
オイル孔41は、オイルプレート4の上側表面で受けられたオイルを、シリンダヘッド21の上側壁面の表面上へ滴下させる孔である。ここで、オイル孔41は、シリンダヘッド21の上側壁面において低温となる部位の真上に形成されている。具体的には、オイル孔41は、シリンダヘッド21に形成された第1ウォータジャケット211(図4参照)の真上に形成されている。
【0048】
また、オイル孔41は、シリンダヘッド21の上側壁面に配設されるバルブスプリング等を挿通させる部品挿通孔(ここでは、点火プラグ孔42、バルブスプリング孔43、ボルトボス孔44、及び、ヘッドボルト孔45)の直径よりも小さい直径(例えば、直径10mm)の円形状に形成されている。
【0049】
更に、オイルプレート4は、複数個のオイル孔41から滴下したオイルが、シリンダヘッド21の上側壁面とオイルプレート4の下側表面との間をシリンダヘッド21に形成された第1オイル通路212の上端部に向けて流下可能に構成されている。具体的には、図4に示すように、オイルプレート4は、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面に形成された凹凸に沿って、凹凸が形成されている。
【0050】
上述のように、オイル孔41が、シリンダヘッド21に形成された第1ウォータジャケット211(図4参照)の真上に形成されているため、シリンダヘッド21に形成された第1ウォータジャケット211の上側壁面にオイルを流下させることができるので、オイルを、第1ウォータジャケット211内を流れる冷却水と熱交換させることによって効率的に冷却することができる。
【0051】
本実施形態では、オイル孔41が、シリンダヘッド21に形成された第1ウォータジャケット211の真上に形成されている場合について説明するが、オイル孔41が、シリンダヘッド21の上側壁面において低温となる部位の真上に形成されている形態であればよい。
【0052】
また、上述のように、オイル孔41が、シリンダヘッド21の上側壁面213に配設されるバルブスプリング等を挿通させる部品挿通孔(ここでは、点火プラグ孔42、バルブスプリング孔43、ボルトボス孔44、及び、ヘッドボルト孔45)の直径よりも小さい直径(例えば、直径10mm)の円形状に形成されているため、オイルをシリンダヘッド21の上側壁面213の表面に広範囲に滴下させることができるので、オイルを更に効率的に冷却することができる。
【0053】
すなわち、上述のように、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面には複雑な凹凸が形成されているため、オイル孔41として、大きな孔を形成するスペースがないことに加えて、シリンダヘッド21の上側壁面213に形成されるオイルの流路も複雑な形状となるため、オイル孔41として小さい直径の孔を多数形成することによって、オイルをシリンダヘッド21の上側壁面213の表面に広範囲に滴下させることができるのである。
【0054】
本実施形態では、オイル孔41が、部品挿通孔(ここでは、点火プラグ孔42、バルブスプリング孔43、ボルトボス孔44、及び、ヘッドボルト孔45)の直径よりも小さい直径の円形状に形成されている場合について説明するが、オイル孔41が、予め設定された閾値(例えば、10mm)よりも小さい直径の円形状に形成されている形態でもよい。この場合には、閾値を適正な値(例えば、8mm)に設定することによって、オイルをシリンダヘッド21の上側壁面213の表面に広範囲に流下させることができる。なお、
オイル孔41の直径は,オイルの粘度等の性状に応じて、適正な値に設定することが好ましい。
【0055】
更に、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面に形成された凹凸に沿って、オイルプレート4に凹凸が形成されているため、シリンダヘッド21の上側壁面213とオイルプレート4の下側表面との間隔を適当な距離とするべくオイルプレート4を配設することができるので、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面を流れるオイルに温度境界層が発生することを防止することができる。
【0056】
ここで、図6を参照して、オイルプレート4を配設する効果について説明する。図6は、オイルプレート4を配設する効果の一例を示す概念図である。図6(a)は、オイルプレート4を配設していない場合に、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面を流れるオイルOLの状態を示す断面図であり、図6(b)は、オイルプレート4を配設した場合に、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面を流れるオイルOLの状態を示す断面図である。
【0057】
図6(a)に示すように、シリンダヘッド21の上側壁面213の凸部においては、オイル表面SFとシリンダヘッド21の上側壁面213の表面との距離、すなわち、オイルOLの深さd12が浅いため、オイルOLの流速V12が速くなる。一方、シリンダヘッド21の上側壁面213の凹部においては、オイル表面SFとシリンダヘッド21の上側壁面213の表面との距離、すなわち、オイルOLの深さd11が深いため、オイルOLの流速V11が遅くなる。したがって、シリンダヘッド21の上側壁面213の凹部では、オイルOLに温度境界層が発生するため、オイルOLと第1ウォータジャケット211内を流れる冷却水との熱交換の効率が低下してしまうことになる。
【0058】
これに対して、図6(b)に示すように、オイルプレート4を配設した場合には、シリンダヘッド21の上側壁面213の凸部においても、シリンダヘッド21の上側壁面213の凹部においても、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面とオイルプレート4の下面との距離、すなわち、オイルOLの深さd21、d22を略一定とすることができるので、オイルOLの流速V21、V22を均一とすることができるため、オイルOLに温度境界層が発生することがなく、オイルOLと第1ウォータジャケット211内を流れる冷却水との熱交換の効率を向上することができるのである。
【0059】
このようにして、オイルプレート4に形成されたオイル孔41から滴下したオイルOLが、シリンダヘッド21の上側壁面213とオイルプレート4の下側表面との間を第1オイル通路212(図4参照)の上端部に向けて流下可能に構成されているため、シリンダヘッド21の上側壁面213とオイルプレート4の下側表面との間隔を適当な距離とするべくオイルプレート4を配設することによって、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面を流れるオイルに温度境界層が発生することを防止することができるので、シリンダヘッド21の上側壁面213の表面を流れるオイルを効率的に冷却することができるのである(図6参照)。
【0060】
−他の実施形態−
本実施形態では、オイルプレート4が1枚の板状部材からなる場合について説明したが、オイルプレート4が複数枚の板状部材からなる形態でもよい。
【0061】
本実施形態では、オイルプレート4のオイル孔41が、第1ウォータジャケット211の真上に位置する範囲において略均一に同一サイズの孔が形成されている場合について説明したが、オイル孔41の孔の大きさが相違する形態でもよいし、オイル孔41の孔が特定の位置に密に形成されている形態でもよい。例えば、シリンダヘッド21の上側壁面213が平坦な領域においては、オイル孔41として大きな孔を形成することが可能である。また、例えば、第1ウォータジャケット211は、上流側程、内部を流れる冷却水の温度が低いため、上流側の第1ウォータジャケット211の真上の位置に、オイル孔41の孔を密に形成する形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、シリンダヘッドの上方に配設された被潤滑部材から流下したオイルを、前記シリンダヘッドの上下方向に形成されたオイル通路の上端部まで流下させる内燃機関に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン(内燃機関)
2 エンジンブロック
21 シリンダヘッド
211 第1ウォータジャケット(ウォータジャケット)
212 第1オイル通路(オイル通路)
213 上側壁面
22 シリンダブロック
221 第2ウォータジャケット
222 第2オイル通路
223 シリンダボア
3 潤滑系統
4 オイルプレート
41 オイル孔
42 点火プラグ孔(部品挿通孔の一部)
43 バルブスプリング孔(部品挿通孔の一部)
44 ボルトボス孔(部品挿通孔の一部)
45 ヘッドボルト孔(部品挿通孔の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの上方に配設された被潤滑部材から流下したオイルを、前記シリンダヘッドの上下方向に形成されたオイル通路の上端部まで流下させる内燃機関であって、
前記被潤滑部材と前記シリンダヘッドとの間に配設され、前記被潤滑部材から流下するオイルを受ける板状のオイルプレートを備え、
前記オイルプレートは、当該オイルプレートの上側表面で受けられたオイルを、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面上へ滴下させる孔であるオイル孔が複数個形成されていると共に、前記複数個のオイル孔から滴下したオイルが、前記シリンダヘッドの上側壁面と当該オイルプレートの下側表面との間を前記オイル通路の上端部に向けて流下可能に構成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記複数個のオイル孔は、それぞれ、前記シリンダヘッドの上側壁面において低温となる部位の真上に形成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関において、
前記複数個のオイル孔は、それぞれ、前記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケットの真上に形成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関において、
前記シリンダヘッドは、その上側壁面の表面に凹凸が形成されており、
前記オイルプレートは、前記シリンダヘッドの上側壁面の表面に形成された凹凸に沿って、凹凸が形成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関において、
前記オイルプレートは、前記シリンダヘッドの上側壁面に配設される部品を挿通させる孔である部品挿通孔が形成されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関において、
前記複数個のオイル孔は、それぞれ、前記部品挿通孔の直径よりも小さい直径の円形状に形成されていることを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96329(P2013−96329A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240976(P2011−240976)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】