説明

内蓋付きタンクの継手構造

【課題】充填時等に空気の混入を防いで皮膜発生等の不具合を生じさせない。
【解決手段】液面変化に応じて昇降する内蓋を有する搬送タンクの底部に連通する導入空間に、タンク内にインキを充填する充填管とインキを排出する排出管を設ける。インキ製造設備から延びる供給管にソケット21を、充填管にプラグ20を設ける。プラグ20では第一弁体29がコイルスプリング31によって開口の内側の弁座32に当接し、ソケット21では第二弁体40がコイルスプリング43によって嵌合部の内側の弁座44に当接している。ソケット21の嵌合部内にプラグ20を挿入して第一及び第二弁体29,40の突起部29a、40a同士を各コイルスプリングの付勢力に抗して後退させて間隙R1,R2を形成し、管継手の流路Rにインキを流して空気を巻き込まずにタンク内にインキを充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塗料、粘性材、インキ、オイル等の粘性と流動性を有する液状またはペースト状等の高粘度流体や低粘度の流体などからなる流体をタンク内に充填、保管、運搬、排出等するための内蓋付きタンクに関するものであり、これらの流体をタンク内に空気を混入させることなく充填すると共に排出するようにした内蓋付きタンクの継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば粘度の高い印刷用のインキを製造メーカから大量使用する印刷所等へ大量に輸送する場合には、一般にタンクローリーによる運搬方式がとられている。また比較的使用量の少ないユーザへインキ等を輸送する場合には、使い捨てのドラム缶にインキを充填して搬送する運搬方式が一般的であった。
これに対して中規模程度の使用量のユーザへインキを移送する輸送方式は、通い式タンク(トートタンクともいう)方式を用いる。通いタンク方式は図7に示すように大別して2種類ある。第一の方式は、製造メーカで搬送タンク1内にインキを充填してトラック等で運搬し、搬送タンク1からユーザの貯蔵タンク等の貯蔵設備2に移し替える方式である。第二の方式は、搬送タンク1を製造メーカからユーザまで搬送してその搬送タンク1をユーザの印刷機等に接続し、印刷所で搬送タンク1内のインキ等をそのまま使用する。そして、使用し終わった後に搬送タンク1を交換して回収し、トラック等で製造メーカに移送して再度インキを充填して再びユーザに搬送するという方式である。
ドラム缶等による使い捨て方式は廃棄処理による環境問題等が生じるために、近年では中規模だけでなく小規模のユーザも含めて通い式タンク方式が多く用いられてきている。
【0003】
通い式タンク方式に用いる搬送タンク1は通常、図8に示すように略円筒状で上下に天蓋4と底部5を備えており、底部5の中央下側にインキ等の流体を充填及び排出するための給排出管6が取付けられ、給排出管6には開閉弁7が設けられている。搬送タンク1内に充填する流体がインキであると、搬送タンク1内に空気が混入した場合にインキ液の表面(液面)が空気と接触することで乾燥し、皮膜を形成して異物となることがある。例えば印刷インキの場合、異物がタンク1より排出されて印刷機で使用されると、印刷機上でのインキの送りや版磨耗に悪影響を与え、印刷物の品質に悪い結果をもたらす。
また、インキが高粘度であったりチキソトロピックな性状である場合、搬送タンク1から排出する際にインキの完全な排出が困難である。この場合、搬送タンク1の底部5の給排出管6に連結された給排出口1aの真上部分ほど排出され易く底部近辺の給排出口1a周辺から離れるにしたがってインキが排出されにくいというケースが多々見られる。
【0004】
このような問題を防ぐために、図8に示すような、特許文献1に記載された内蓋付きの搬送タンク1が提案されている。この搬送タンク1では、搬送タンク1内に内蓋8をインキ液面E上に落とし蓋として配設し、自重で上下動可能とする。この内蓋8はインキの使用・排出による液面の低下に追従して傾くことなく平行移動で降下するもので、搬送タンク1の内壁1bに対してシール構造を有している。
このような内蓋8を設けることで、搬送タンク1内でのインキと空気の接触を防止しつつ液面Eの低下に応じて内蓋8が傾斜することなく自重で下方移動するため、搬送タンク1内のインキに荷重をかけて底部周辺のインキを含めて給排出口1aから完全に排出できるようにしている。
【0005】
ところで、特許文献1に示す搬送タンク1では、搬送タンク1内に充填されたインキの排出及び充填を底部5に取り付けられた給排出管6に設けた開閉弁7の開閉によって行う。この給排出管6および開閉弁7はインキの充填および排出を兼用して行うことになる。そのため、給排出管6の先端開口に対して、製造メーカにおいてはインキ製造設備から供給管9を接続した状態でインキを製造設備から搬送タンク1内に充填し、印刷所等の使用者設備においては、排出ホース10を接続した状態で搬送タンク1内のインキを貯蔵設備2または印刷機に供給するという構成を備えている。
【特許文献1】特開平9−188388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、製造メーカの製造設備から供給管9を介してインキを搬送タンク1内に充填する際、給排出管6と供給管9の接続部を接続すると、両者の継手付近には必ず空気が入り込んでしまう。特に排出管6及び供給管9の接続部と開閉弁7との間にはある程度の空隙があり、接続後に開閉弁7を開けると両者の継手付近に入り込んだ空気を除去できず、搬送タンク1内に入り込む欠点がある。そして搬送タンク1内に空気が一旦入り込むと内蓋8の密閉性が高いため、空気抜きのバルブが設けられていても、インキの流動性が低いために詰まり易く気泡が抜けにくい。そのため、空気は内蓋8の下面に溜まったままになる。
【0007】
そして、通い式の搬送タンク1はユーザの領域におけるインキの排出作業によっても抜けきらず、通いによる充填と排出作業を繰り返すことで内蓋8の下側にすこしづつ溜まってゆき、この空気に接触したタンク1内のインキの液面Eに皮膜ができることになる。この皮膜がユーザの貯蔵設備2や印刷機等に入り込み、印刷面の汚れ等の不具合や綺麗に印刷できない印刷障害の原因になっていた。
実際に、1年以上使用した搬送タンク1の内部を目視観察すると内壁1bは上下動する内蓋8のシール部材で掻き取られて非常に綺麗な状態であり、内蓋8のシール性は高く、接続部から侵入した空気は容易には抜けきれなかった。なお、皮膜はインキ中の主として油分(乾性油、半乾性油)が酸化重合して固化することで生成され、一旦形成された皮膜は決して溶解等しないため、皮膜の排除は困難であった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みて、充填時や排出時等に空気の混入を防いで皮膜等の異物発生を防ぐようにした内蓋付きタンクの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による内蓋付きタンクの継手構造は、タンクと、該タンク内に貯留された流体の液面を覆っていて流体の液面変化に応じて昇降する内蓋と、タンクの底部に連通されていて流体を該タンク内に充填する充填管と、タンクの底部に連通されていて流体を該タンクから外部へ排出する排出管と、充填管に接続可能で該充填管を通してタンク内に流体を供給する供給管と、充填管と供給管を接続する管継手とを備えていて、管継手は、充填管に設けられていて第一付勢部材で閉鎖方向に付勢された第一弁体を有する第一継手部と、供給管に設けられていて第二付勢部材で閉鎖方向に付勢された第二弁体を有する第二継手部とからなり、第一継手部と第二継手部を接続する際に第一弁体と第二弁体が互いに押すことで付勢力に抗して互いに開弁して連通するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、内蓋付きタンクに流体を充填するために管継手を介して充填管と供給管を接続させると、第一継手部の第一弁体と第二継手部の第二弁体がそれぞれ第一付勢部材と第二付勢部材の付勢力に抗して押し合うことで第一弁体と第二弁体がそれぞれ後退して開弁し、充填管と供給管が連通した状態になり、供給管を通して流体が充填管内に進入してタンク内に流入し、内蓋の荷重に抗して押し上げつつ流体がタンク内に充填させられる。しかも、接続時における第一継手部の第一弁体と第二継手部の第二弁体とは互いに当接して押し合うことで開弁するから両者の間の空間が小さく、充填管内に空気が侵入することは殆どなく、そのため、流体がタンク内に充填されても空気は混入しないから、タンク内に溜められた流体と内蓋との間に空気が滞留せず皮膜の発生を防止できる。そして、排出管を外部設備に接続して皮膜等の異物を含有しない流体を排出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による内蓋付きタンクの継手構造は、外部の供給管から充填管を通してタンク内に流体を充填する際に、第一継手部と第二継手部に設けた第一及び第二弁体を互いに押して開弁状態にして接続するため、空気の混入を抑制して流体をタンク内に充填することができ、内蓋と流体液面との間に空気が残留しないので皮膜等の異物が生成されることを抑制できる。そのため、排出管を通してタンクから排出する流体に異物が混入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による内蓋付きタンクの継手構造は、第一弁体を閉鎖させる第一弁座と第二弁体を閉鎖させる第二弁座が設けられ、第一弁座と第二弁座は第一継手部と第二継手部の接続状態で隣接して配設されていることが好ましい。
本発明によれば、管継手によって充填管と供給管を接続するに際し、第一弁体と第二弁体が着座して閉弁する第一弁座及び第二弁座が隣接しているために、互いに押されて開弁する第一弁体と第二弁体の間で殆ど空気を巻き込むことなく充填管と供給管を接続できるため、流体がタンク内に流入する際に空気が混入することが殆どない。
【0012】
また、排出管には開閉弁が設けられている。
排出管に設けられた開閉弁は例えばバタフライ弁またはボール弁であり、開弁に際して空気が混入しても接続された外部設備等を通して排気され、流体に皮膜等の異物が形成されない。
尚、ここで外部設備とは、印刷所等ユーザにおけるインキの一時貯蔵用の受入れタンクや、インキを当該タンクから印刷機等に送液するための配管やポンプ等をいう。ユーザの受入れタンクは一時的な貯蔵を行うもので、気密性は無く、多少空気が混入しても容易に逃げていくため、問題は生じない。
管継手を構成する第一継手部及び第二継手部は自己封鎖性の継手であることが好ましい。
充填管に設けた第一継手部と供給管に設けた第二継手部とは分離状態で第一及び第二付勢部材によってそれぞれを閉弁しており、両者を接続することで第一弁体と第二弁体が互いに当接して押されて後退するために開弁して互いに連通する。
また、流体は高粘度流体であってもよい。
流体が高粘度であっても、内蓋で液面に荷重をかけているために充填時には液面と内蓋との間に間隙はできず、排出時にも内蓋の荷重によってタンク内の給排出口の周辺の流体も排出できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例について図1乃至図5を参照しながら説明するが、上述の従来技術と同一または同様の部分、部材は同一の符号を用いて説明する。図1は搬送タンク底部に設けた充填管を含む管継手と排出管を示す要部側面図、図2は充填管に連結されるプラグを示す縦断面図、図3は供給管に連結されるソケットを示す縦断面図、図4(a)、(b)はソケットにおける流通孔とその変形例を示す断面図、図5はプラグとソケットを嵌合状態で示す管継手の縦断面図、図6は図5における管継手の流路を示すA−A線縦断面図である。
図1は従来技術の図8に示すものと同一形状のタンク、即ち搬送タンク1の底部5を示す図である。この搬送タンク1は図7に示すように通い式タンク(トートタンクともいう)であり、製造メーカで搬送タンク1内に流体として例えば液体のインキを充填してトラック等で運搬し、ユーザのタンク等の貯蔵設備2に移し替える第一の方式と、搬送タンク1を製造メーカからユーザまで搬送してその搬送タンク1をユーザの印刷機等に交換接続し、印刷所で搬送タンク1内のインキ等をそのまま使用する第二の方式とに用いられる。
搬送タンク1内に充填するインキは、例えば高粘度で流動性の低いものが用いられる。
【0014】
この搬送タンク1は、その底部5の中央に給排出口12が穿孔され、その下側にはインキの導入空間13が形成されている。この導入空間13の一方の側部にはタンク1内に充填されたインキを外部、例えば上述したユーザにおける貯蔵設備2または印刷機に排出するための排出管14が連結されている。また、導入空間13の他の側部にはインキを搬送タンク1内に充填するための充填管15が連結されている。
そして、排出管14内には開閉弁として例えば排出管14を開閉するためのバタフライ弁17が設けられ、排出管14の上部にはバタフライ弁17を開閉操作する操作部18が設けられている。充填管15の先端には第一継手部としてプラグ20が設けられている。
また、図示しない製造メーカのインキ製造設備からインキを供給する供給管9の先端に第二継手部としてソケット21が設けられている。充填管15のプラグ20と供給管9のソケット21は互いに接続可能な自己封鎖性の管継手22を構成する。
【0015】
次に管継手22について図2乃至図6により説明する。
図2に示すプラグ20は充填管15の先端に連結されていて内面を流路Rとする外筒部24が設けられ、その先端に開口25が形成されている。外筒部24の開口25方向途中部分における外周面24aには開口25に向けて外径を小さくした段差部24bが形成されている。外筒部24の内面にはストップリング26が形成され、その開口25側には筒状のカラー部27が固着されている。カラー部27は中央孔27aとその周囲に所定間隔で穿孔された複数の流通孔27bとを有しており、これら流通孔27bを通して充填管15を流れるインキが供給される。
カラー部27の中央孔27aには軸部28が進退可能に挿通され、その先端に略円板状の第一弁体29が設けられている。第一弁体29にはその中心から先端側に突出する突起部29aが形成されている。また、第一弁体29の外周面は例えば断面略山形に形成されていて、その頂部にはリング状のシール部材30が取付けられている。第一弁体29とカラー部27の間には軸部28を巻回するコイルスプリング31が第一付勢部材として装着されている。
また、外筒部24の開口25付近の内面には開口25に向けて内径が縮径する断面テーパ状の弁座32が形成されている。第一弁体29はコイルスプリング31の付勢力によって弁座32に当接して外筒部24の内面の流路Rを封止している。
【0016】
また、図3に示すソケット21は供給管9に連結されていて内面を流路Rとする外筒部34が設けられ、その先端側開口の内周面にプラグ20の外筒部24を嵌入する嵌合部35が形成されている。外筒部34の嵌合部35よりも内面奥部にはストップリング36が形成され、その嵌合部35側には案内軸37が固着されている。案内軸37は中央孔38aを有する筒状受け部38とその周囲に所定間隔で穿孔された複数の流通孔37aとを有しており、流通孔37aを通して供給管9から供給されるインキが嵌合部35方向に流れる。
案内軸37に設けた各流通孔37aは例えば図4(a)に示す断面円形の孔で形成されているが、同図(b)に示すように断面略四角形の孔等で形成されていてもよく、その断面形状は任意である。
筒状受け部38の中央孔38aには軸部39が進退可能に挿通され、その先端に略円板状の第二弁体40が設けられている。第二弁体40にはその中心から先端側に突出する突起部40aが形成されている。また、第二弁体40の外周面は例えば断面略山形に形成されていて、その頂部にはリング状のシール部材41が取付けられている。第二弁体40と筒状受け部38に設けた段部38bとの間には軸部39を巻回するコイルスプリング43が第二付勢部材として装着されている。
【0017】
また、外筒部34の内面には案内軸37から嵌合部35に向けて内径が縮径する断面テーパ状の弁座44が形成されている。第二弁体40はコイルスプリング43の付勢力によって弁座44に着座して外筒部34の内面の流路を封止している。外筒部34の内面において、弁座44の開口側背面は段差を以て拡径する嵌合部35の底部35aとされている。
嵌合部35の内周面にはプラグ20が挿入された際に外筒部24の外周面24aに当接してシールするためのシール部材46が取付けられている。また、外筒部34の先端外周面には複数のロックボール47が周方向に所定間隔で回転可能に取付けられ、その外側には略円筒状のスリーブ48がソケット21の中心軸線に沿ってスライド可能に取付けられている。スリーブ48の内面には一対の嵌合ボール49a、49bとその前後の摺動ボール49c、49dとが回転可能に支持されている。
【0018】
そして、管継手22として充填管15のプラグ20と供給管9のソケット21を接続する際に、図5に示すようにプラグ20をソケット21の嵌合部35内に挿入した後にスリーブ48をプラグ20側に摺動させ、ロックボール47を嵌合ボール49a、49bで挟持してスリーブ48の先端でプラグ20を拘束することでプラグ20とソケット21をロックすることができる。
また、プラグ20とソケット21を嵌合させて接続させた際に、第一弁体29の突起部29aと第二弁体40の突起部40aとが互いに当接してコイルスプリング31、43の付勢力に抗して第一弁体29と第二弁体40を弁座32、44から後退させることで、間隙R1、R2を確保してインキを流路Rに流すことができる(図6参照)。
【0019】
本実施形態による通い式の搬送タンク1は上述の構成を有しており、次にその作用を説明する。
まず、空の搬送タンク1にインキの製造設備からインキを充填するには、製造設備に接続された供給管9の先端に設けたソケット21の嵌合部35内にプラグ20の外筒部24を挿入する。プラグ20の挿入に際して、第一弁体29の突起部29aが第二弁体40の突起部40aに当接し、更にプラグ20を押し込むと、第一弁体29と第二弁体40はそれぞれコイルスプリング31、43の付勢力に抗して後退し、弁座32,44とそれぞれ離間して弁座32,44との間に間隙R1,R2を形成し、管継手22内の流路Rを連通させる。
そして、図5に示すように、プラグ20の先端が嵌合部35の底部35aに当接した時点で段差部24bがソケット21の外筒部34の先端に当接して嵌合状態になる。この状態で、ソケット21のスリーブ48をプラグ20方向に摺動させることで、ソケット21のロックボール47が嵌合ボール49a、49b間に挟持されてスリーブ48の先端がプラグ20の外筒部24に当接し、プラグ20とソケット21が互いにロックされる。
【0020】
これによって、供給管9から供給されるインキはソケット21における案内軸37の複数の流通孔37aを通して第二弁体40と弁座44との間隙R1を通してソケット21から流出する。そして、インキはプラグ20の第一弁体29と弁座32との間隙R2を通過してカラー部27の流通孔27bを介して充填管15内に進入する。
第一弁体29及び第二弁体40の開弁によってインキがソケット21からプラグ20内に流入する際、プラグ20では第一弁体29と弁座32は外筒部24の開口25近傍における閉弁状態から第一弁体29の後退によって開弁し、ソケット21では第二弁体40と弁座44はプラグ20が嵌合する嵌合部35の底部近傍における閉弁状態から第二弁体40の後退によって開弁する。
そして、充填管15内に進入したインキは搬送タンク1の底部5の導入空間13内に流入し、更に給排出口12から内蓋8を押し上げて搬送タンク1内に流入する。搬送タンク1内に充填されるインキの量の増大に応じて内蓋8が上方に持ち上げられる。
なお、ソケット21とプラグ20を接続する際、図5に示すように双方の弁座32、44が背中合わせに当接して連続するため、第一弁体29及び第二弁体40が弁座32、44から後退してインキが流れる際に流路内に混入する空気の量が非常に少ない。そのため、空気が搬送タンク1内に侵入して内蓋8の下側に溜まることがなくインキの皮膜が形成されない。
【0021】
次に、インキを充填し終えた搬送タンク1について、管継手22のプラグ20とソケット21を分離すると、第一弁体29及び第二弁体40をコイルスプリング31及び43の付勢力で弁座32、44に即座に閉弁させる。弁座32、44が隣合わせになっていてソケット21に嵌合部35が設けられているため、管継手22を外した際にインキが外部に漏れたり垂れたりしない。
そして、搬送タンク1をトラック等の車輌に積んでユーザのところまで移送する。ユーザの施設では、搬送タンク1からユーザの貯蔵タンク等の貯蔵設備2に接続してインキを移し替える。或いは、搬送タンク1を使用済みの搬送タンク1に代えてユーザの印刷機等に接続する。
【0022】
この場合、いずれの方式を採用してもよいが、例えば搬送タンク1からユーザの貯蔵設備2にインキを移し替える場合、搬送タンク1の排出管14を貯蔵設備2に接続する。そして、図1に示すように操作手段18によってバタフライ弁17を開弁することで搬送タンク1内のインキを排出管14を介して貯蔵設備2に供給する。このとき、排出管14内のバタフライ弁17から貯蔵設備2の接続部までの間にかなりの空隙があるために、インキは搬送タンク1から間隙内の空気を巻き込んで貯蔵設備2内に供給される。
しかしながら、ユーザの貯蔵設備2は通常オープンタンクであり、気密構造ではないためにインキに混入した空気は貯蔵設備2内で自然に抜けていき、貯蔵設備2内に溜まることはない。しかも、貯蔵設備2内のインキは速やかに印刷機等で使用され、保管期間が短いので皮膜ができることはなく、オープンタンクでも皮膜の発生等の不具合は生じない。
また、印刷機ではローラによってインキが練り合わされるので気泡が混入していても外気に放出されてしまい、印刷不良を引き起こすことはない。
【0023】
上述のように、本実施例による搬送タンク1は充填管15と供給管9との接続部に自己封鎖性の管継手22のプラグ20とソケット21をそれぞれ設けたから、搬送タンク1にインキを充填する際に内部に空気を巻き込むことを防止でき、搬送タンク1内で皮膜が形成されることを防止できる。また、搬送タンク1内のインキを貯蔵設備2や印刷機等に排出する際、排出管14にはバタフライ弁17等を設けており、排出時に空気が混入しても貯蔵設備2や印刷機等で分離排出でき、印刷面の汚れ等の不具合を生じない。
【0024】
なお、上述の実施例では、搬送タンク1内にインキを充填するための充填管15と供給管9との接続部に自己封鎖性の管継手22を設けて、排出管14にバタフライ弁17を設けたが、バタフライ弁17に代えてインキの排出側にも自己封鎖性の管継手22を取付けてもよい。このような構成を採用すれば、貯蔵設備2を非気密性のタンクだけでなく気密性のタンクとすることもできる。
また、上述の実施例ではインキの供給側である供給管9にソケット21を設け、充填管15にプラグ20を設ける構成にしたが、これに代えて供給管9にプラグ20,充填管15にソケット21を設けてもよい。
なお、排出管14に設ける開閉弁としてバタフライ弁17に限定されることなくボール弁等を適宜の弁を採用してもよい。
【0025】
また、搬送タンク1の底部5に設けた吸気空間13に充填管15と排出管14を導入空間13で連結して分岐管の構成を採用したが、これに代えて搬送タンク1の底部5に充填管15と排出管14を個別に直接取付けても良い。
なお、インキとして例えば酸化重合型のインキ、即ち印刷インキ、平版インキ、新聞インキ等を用いることができ、その粘度は4〜1000Pa・s、充填時の概略温度は40〜80℃、粘着性はインコメーター3以上(JIS−K5701参照)のものを採用してもよい。また、本発明で用いるインキは、上述した高粘度の流体に限定されることなく低粘度の流体であってもよい。
また、本発明で用いる流体はインキに限定されることなく、塗料、粘性材、インキ、オイル等の粘性と流動性を有する液状またはペースト状等の流体を用いることができる。インキ以外の流体を用いた場合でも、タンク内に空気が混入して接触することによる皮膜等の異物の発生を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例による搬送タンク底部に設けた充填管及び排出管と供給ホースを示す要部側面図である。
【図2】充填管に連結されるプラグを示す要部縦断面図である。
【図3】供給ホースに連結されるソケットを示す要部縦断面図である。
【図4】(a)はソケットにおける流通孔を示す図、(b)はその変形例を示す図である。
【図5】プラグとソケットの接続状態を示す管継手の要部縦断面図である。
【図6】管継手の流路を形成する間隙を示す図5のA−A線断面図である。
【図7】通い式の搬送タンクの搬送及び処理ルートを示す図である。
【図8】従来の搬送タンクの給排出管と供給管及び排出管との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 搬送タンク(タンク)
5 底部
9 供給管
12 給排出口
14 排出管
15 充填管
17 バタフライ弁(開閉弁)
20 プラグ(第一継手部、第二継手部)
21 ソケット(第二継手部、第一継手部)
22 管継手
29 第一弁体
31、43 コイルスプリング(第一付勢部材、第二付勢部材)
32、44 弁座(第一弁座、第二弁座)
35 嵌合部
40 第二弁体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、
該タンク内に貯留された流体の液面を覆っていて流体の液面変化に応じて昇降する内蓋と、
前記タンクの底部に連通されていて流体を該タンク内に充填する充填管と、
前記タンクの底部に連通されていて流体を該タンクから外部へ排出する排出管と、
前記充填管に接続可能で該充填管を通してタンク内に流体を供給する供給管と、
前記充填管と供給管を接続する管継手とを備えていて、
前記管継手は、前記充填管に設けられていて第一付勢部材で閉鎖方向に付勢された第一弁体を有する第一継手部と、前記供給管に設けられていて第二付勢部材で閉鎖方向に付勢された第二弁体を有する第二継手部とからなり、前記第一継手部と第二継手部を接続する際に前記第一弁体と第二弁体が互いに押すことで付勢力に抗して互いに開弁して連通するようにした
ことを特徴とする内蓋付きタンクの継手構造。
【請求項2】
前記第一弁体を閉鎖させる第一弁座と前記第二弁体を閉鎖させる第二弁座とが設けられ、前記第一弁座と第二弁座は前記第一継手部と第二継手部の接続状態で隣接して配設されている請求項1に記載の内蓋付きタンクの継手構造。
【請求項3】
前記排出管には開閉弁が設けられている請求項1または2に記載の内蓋付きタンクの継手構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−56253(P2008−56253A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232259(P2006−232259)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(599132580)ディックテクノ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】