説明

内蔵ディスプレイ装置を有する文書

本発明は、それぞれが文書に格納される第1のデータ(106)を描画すべく光信号を発するよう構成された、複数の駆動可能なディスプレイ素子(103)を有する内蔵ディスプレイ装置(102)を備える文書に関する。ディスプレイ装置は、連続する画像の繰り返し期間における第1データを表すべく、周期的にディスプレイ要素をトリガするように構成される。さらにディスプレイ装置は、ディスプレイ要素の少なくとも1のサブセットの光信号が視覚的に捉えることのできない遅延を伴って発せられるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵ディスプレイ装置を有する文書、特に、有価文書または機密文書、リーダ、および文書の検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路を内蔵した様々な形式の文書自体は、従来技術において知られている。例えば、紙幣、電子的なパスポートなど、主に紙ベース、もしくは特に、スマートカードと呼ばれる接触式カード、非接触、またはデュアルインタフェース設計のプラスチックベースのチップカードなどの、有価文書または機密文書が存在する。これらに関し、特に独国特許出願公開第10 2005 025 806号明細書を参照する。
【0003】
従来技術においては、特に、このような文書のための、無線周波数識別システム(RFID)とも呼ばれる、様々な無線認識システムが知られている。従来から公知のRFIDシステムは一般的に、少なくとも1のトランスポンダおよび送信/受信ユニットを含む。トランスポンダはRFIDエチケット、RFIDチップ、RFIDタグ、RFIDラベル、もしくは無線タグとも呼ばれ、送信/受信ユニットは読み取り装置、読み取りユニット、もしくはリーダとも呼ばれる。さらに、例えばレジシステムや在庫管理システムにおいて、いわゆるミドルウェアによって、サーバ、サービス、およびその他のシステムと統合される場合が多い。
【0004】
例えば非接触型RFIDトランスポンダ格納されたデータは、無線波によって利用可能となる。これは、低周波帯においては近接場で、高周波帯においては遠方電磁界で、誘導的に行われる。
【0005】
通常、RFIDトランスポンダは、担体または筐体に格納、もしくは基板に印刷された、マイクロチップとアンテナとを含む。アクティブ型RFIDトランスポンダは、パッシブトランスポンダとは対照的に、電池のような電源も含む。
【0006】
RFIDトランスポンダは、特にチップカード、例えば電子財布または電子チケットの発券などを実現するべく、様々な文書に用いられてよい。また、RFIDトランスポンダは、特に紙幣および身分証明書といった、有価文書もしくは機密文書などの紙またはプラスチックに内蔵されている。
【0007】
独国特許出願公開第201 00 158号明細書によると、RFID処理を実行するアンテナを有する集積化半導体を持つ、積層および/または押し出し成形されたプラスチックで形成されている身分証明書およびセキュリティカードが知られている。さらに、独国特許出願公開第10 2004 008 841号明細書によると、トランスポンダユニットを有する、例えば、パスポートなどの冊子状の有価文書が知られている。
【0008】
これらの種類の機密文書および有価文書は、例えば、独国特許出願公開第10 2005 030 626号明細書、独国特許出願公開第10 2005 030 627号明細書、独国特許出願公開第10 2005 030 628号明細書、国際公開第2004/080100号パンフレット、欧州特許第1 023 692号明細書、独国特許第DE 102 15 398号明細書、欧州特許第1 173 825号明細書、欧州特許第1 230 617号明細書、欧州特許第1 303 835号明細書、欧州特許第1 537 528号明細書、国際公開第03/030096号パンフレット、欧州特許第0 920 675号明細書、米国特許第6,019,284号明細書、米国特許第6,402,039号明細書、および国際公開第WO 99/38117号明細書に記載の公知の種類の内蔵ディスプレイ装置を有してよい。
【0009】
機密文書または有価文書は、接触型インタフェースまたはRFIDインタフェースなどの非接触型インタフェース、もしくは、チップカード端子との有線および無線通信を可能とするインタフェースを備えてよい。後者は、いわゆるデュアルインタフェースチップカードのことでもある。チップカード通信プロトコルおよびその手順は、例えば、ISO7816、ISO14443、およびISO15763規格に定められている。
【0010】
このようなRFID機能を有する文書においては、RFIDインタフェースを文書の所有者の合意なしにアクティベートできるという問題がある。このような文書のデータを無許可で読み取ることに対する、渡航文書の保護機構は基本アクセス制御(basic access control)として知られている。International Civil Aviation Organization (ICAO)「Machine Readable Travel Document」, Technical Report, PKI for Machine Readable Travel Documents Offering ICC Read−Only Access, Version 1.1, October 01, 2004を参照されたい。また、生体データの特殊な保護方法、すなわち、いわゆる拡張アクセス制御(extended access control)を記載した上述の独国特許出願公開第10 2005 025 806号明細書を参照されたい。
【0011】
本願出願時には未公開であり、本出願と出願人を同じくする独国特許出願10 2006 031 422.0−53号明細書によると、ユーザによって認識され得ない、機械可読の光信号を発するディスプレイ装置を有する有価文書または機密文書が知られている。
【0012】
国際公開第2007/137555号明細書によると、電子的に構成可能な、車両識別情報ディスプレイが知られている。車両識別情報ディスプレイを構成するべく、データが外部の構成ユニットで収集され、暗号化される。暗号化されたデータは、構成ユニットに内蔵された赤外線送信器によって、赤外線信号として送信される。車両識別情報向けのディスプレイ回路では、信号が復号化されることから、ディスプレイ回路には対応の復号化ソフトウェアが格納されている。電子的な車両識別情報については、米国特許第5,657,008号明細書および米国特許出願公開第2007/0285361号明細書に詳しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は対照的に、より改善された文書、文書のリーダ、および文書の検証方法の作成における問題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明が解決する問題のそれぞれは、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の実施形態を従属項に記載する。
【0015】
本発明の実施形態によると、アクティベート可能ないくつかのディスプレイ素子を有する、集積ディスプレイデバイスを有する文書が作成される。各ディスプレイ素子は、ディスプレイ装置上でユーザによって視覚的に捕え得るように、文書のメモリに格納された画像データを描画すべく光信号を発する。ディスプレイ素子のアクティベーションは、ある画像再生周波数、例えば25Hzまたは50Hzなどで周期的に繰り返される。格納されたデータの描画に寄与する光信号を発するべく、ディスプレイ素子の各々が各画像再生においてアクティベートされる。従って、各ディスプレイ素子を手段として、例えばいわゆるピクセルまたはサブピクセルが実現される。
【0016】
ディスプレイ装置のサブセットの場合、光信号の発射は、画像再生期間内に経時的遅延を伴って発生する。ここでの経時的遅延は極めて短く、視認不可能である。具体的には、経時的遅延は画像再生期間の長さに比べ極めて短く、また、マトリクスのラインをアクティベートする期間の長さと比べても極めて短い。従って、文書中に格納されたデータの描画の視覚的な印象は、経時的遅延の結果としては変化しない。
【0017】
ディスプレイ素子のサブセットの光信号の発射における経時的遅延には、特に、本発明による文書を再現することが、より困難であるという利点がある。まず、遅延が裸眼では視認不可能であることから、偽造者はディスプレイ素子のサブセットによる光信号の発射が遅延を伴うという事実を知り得ない。
【0018】
さらに、光信号の発射の遅延は、文書のあるサブセクションのみに関連し、偽造者はこの文書のサブセクションがどこに位置するのかを知り得ないことから、結果として、文書のサブセクションの再現はより困難となる。
【0019】
本発明のある実施形態によると、情報は経時的遅延の長さに符号化される。例えば、第1の画像再生期間においては、すべてのディスプレイ素子についてのデータの描画が経時的な遅延なく行われる。これは、例えば論理0(logical zero)に相当する。続く第2の画像再生期間においては、ディスプレイ素子によるデータの描画は経時的遅延を伴い、論理1(logical one)を表す。
【0020】
これに代えて、ある特定の画像再生期間では、光信号の発射は、ディスプレイ素子のサブセット内でのみ、サブセットの全てのディスプレイ素子で同様に経時的遅延を伴って発生する。一方で、サブセットの一部ではない、ディスプレイ装置の残りのディスプレイ素子を手段とする光信号の発射は、経時的遅延を伴わずに、もしくは当該サブセットとは異なる経時的遅延を伴って行われる。経時的遅延がディスプレイ素子のサブセットの光信号の発射において発生することに起因して、文書にセキュリティ機能が備わる。
【0021】
本発明のある実施形態によると、サブセットのディスプレイ素子の空間的構成に情報が符号化される。例えば、サブセットのディスプレイ素子は、それらの空間的構成の結果、ディスプレイ装置に特定のパターンを形成する。つまり、このパターンがセキュリティ機能を提供し得る。
【0022】
本発明のある実施形態によると、文書は、サブセットの一部であるディスプレイ素子のアクティベーションを遅延させる手段を有する。例えば、アクティベーションの遅延手段は、駆動ロジックのレベルで実現される。
【0023】
本発明のある実施形態によると、ディスプレイ装置は、アクティブマトリクスディスプレイであり、ディスプレイ素子の各々は、関連付けられたアクティベーション回路を有する。この実施形態では、アクティベーションの遅延手段がアクティベーション回路のレベルで実現されてよい。
【0024】
本発明のある実施形態によると、ディスプレイ素子のアクティベーションにマトリックスのラインおよび/またはカラムのラインを用いる。この実施形態では、マトリクスのラインおよび/またはカラムのラインのレベルでアクティベーションの遅延手段が実現されてよい。
【0025】
本発明のある実施形態によると、サブセットの遅延素子は、遅延に繋がる応答特性を有する。サブセットの一部であるディスプレイ素子を含む、ディスプレイ装置の全てのディスプレイ素子は、画像再生期間内に同様にアクティベートされる。サブセットのディスプレイ素子による、光信号の発射における経時的遅延は、サブセットに所属するディスプレイ素子の応答特性によって具体化される。この応答特性は、サブセットに所属しないディスプレイ素子の応答特性とは異なる。
【0026】
当該異なる応答特性は、例えば、サブセットのディスプレイ素子が、サブセットに所属しないディスプレイ素子のものとは異なる発光性物質を有することによって制約される。例えば、サブセットのディスプレイ素子に用いられ得る発光性物質のフェードアウト時間がいくらか長い場合、その他のディスプレイ素子に用いられる発光性物質と比較すると、応答動作が遅延する。サブセットの場合、例えばこれが色に関連するサブピクセルの数であってよい。
【0027】
本発明のある実施形態によると、ディスプレイ装置の全てのディスプレイ素子、または、例えば赤などの特定色を示すべく用いられる全てのディスプレイ素子は、例えば、ユーロピウムをわずかに含む化合物といった同一の発光体物質を有する。この実施形態では、サブセットのディスプレイ素子の異なる応答特性は、これらのディスプレイ素子の発行物質の母体結晶が、その他のディスプレイ素子とは異なることに起因する。さらなる実施形態では、サブセットは、特定色を表現するべく用いられる特別な応答特性を有するディスプレイ素子を含む。
【0028】
この結果、ディスプレイ装置の代わりに一般的なディスプレイ装置が用いられても文書は保護される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によると、応答特性および/または減衰特性に加え、スペクトル特性が認証に用いられる。例えば、ユーロピウムをわずかに含む上述の化合物は、異なるライフサイクルを有するのみならず、ある正確な位置、または発光ラインの強度関係において特徴的である。
【0030】
本発明のある実施形態によると、文書に集積されたディスプレイ装置は、アクティブまたはパッシブマトリクスディスプレイ、もしくはセグメントディスプレイである。
【0031】
具体的には、ディスプレイ装置は、電気泳動ディスプレイまたはエレクトロクロミックディスプレイ、双安定ディスプレイ、回転要素ディスプレイ、特にいわゆる電子ペーパ(e−paper)、LEDディスプレイ、特に無機、有機、またはハイブリッド型のLEDディスプレイ、例えばTN型、STN型、コレステリック、ネマチックなどの多様な実施形式の液晶ディスプレイ、強誘電性ディスプレイ、液滴駆動型ディスプレイ、干渉変調(IMOD)素子によるディスプレイ、ハイブリッドディスプレイ、もしくは、例えばCitala社(www.citala.com)が販売するフレキシブルディスプレイに基づいたディスプレイであってよい。米国特許出願公開2006/0250535号明細書および国際公開2007/054944号明細書を参照されたい。
【0032】
文書に格納されたデータは、ディスプレイ装置における画像描画の生成に適切な様々なコンテンツを有してよい。これは、例えば、人物の顔画像などのデジタル画像、紋章、封印、文字情報、バーコード、車両識別情報またはその類似などの識別情報を意味する。
【0033】
本発明のある実施形態によると、光信号の発射の遅延を手段としてディスプレイ素子によってディスプレイ上に表示される情報は、個人情報、セキュリティ機能および/または暗号化キーである。
【0034】
個人情報は、例えば、文書の所有者の名前、住所、慎重、年齢、性別、体重などであってよい。この情報の全てまたは一部は、格納されたデータの描画により、ディスプレイ装置に明確な文字として表示されてよい。
【0035】
本発明のある実施形態によると、情報とは、例えば、紋章、封印、またはその類似などのセキュリティ特性である。この情報は、例えば、サブセットの画像要素の空間的な位置によって表示される。
【0036】
本発明のある実施形態によると、情報とは、暗号キーである。暗号キーは、相似キーまたは非相似キーであってよい。暗号キーがリーダによってキャプチャされることで、リーダは文書と共に暗号プロトコルを実行可能となる。
【0037】
本発明のある実施形態によると、情報とは、車両のパラメータおよび/または車両の料金状況であってよい。実施形態では、文書は電子的な車両識別情報であり、車両にもしくは車両の一部に貼付されてよい。
【0038】
車両のパラメータとは、例えば、車両の速度、騒音レベル、または排気レベルであってよい。具体的には、特に実施中の特定事項についての指示に沿って、車両の排ガスレベルを情報が示してよい。
【0039】
料金状況を表示することで、車両についての料金、税金、および/または徴税金、具体的には、通行料金、車両税、および/または排出税が支払い済みであるか否かを表示することができる。
【0040】
本発明のある実施形態によると、文書は、追加のデータが格納される、保護されたメモリ領域を有する。さらに文書は、これらの追加のデータのリーダによる読み取りアクセス用のインタフェースを有する。インタフェースは、接触型または非接触型のコンタクトを必要としてよく、具体的にはRFIDインタフェースとして設計されてよい。さらにインタフェースは、いわゆるデュアルモード型インタフェースとして設計されてもよい。インタフェースの結合は、電子的、容量性、誘導性、磁性、光学的、またはその他の物理的な方法であってよい。非接触結合の手段であるアンテナは、インダクタ、ダイポール、もしくは容量性表面の形態で設計されてよい
【0041】
リーダによる追加のデータへの読み取りアクセスに関する要件として、事前に暗号プロトコルの実行が成功していることがある。暗号プロトコルは、例えば、いわゆるチャレンジレスポンス方式であってよい。暗号プロトコルの結果、認証されていないアクセスに対して追加のデータが保護される。これは、第3のデータが機密データ、例えば生体データ、具体的には文書の所有者の指紋データまたは虹彩のスキャンデータである場合に特に有利である。
【0042】
本発明によると、「文書」とは、紙ベースおよび/またはプラスチックベースの文書、例えばパスポート、個人識別情報文書、ビザ、運転免許証、車両登録証、車両権利証書、社員証、健康手帳、またはその他の識別情報文書などの身分証明書、またはチップカード、銀行カードおよびクレジットカードなどの支払い手段、船荷証券、またはその他の証書、およびその他を意味する。
【0043】
「文書」という用語は、具体的には電子的な車両識別情報などの電子的なIDも意味する。また、文書は車両などの交通手段の一部を一体的に形成してもよい。例えば、本発明に従ってディスプレイを挿入または適用することで、前面の開口フードまたはカバーフード、もしくは、いわゆるフロントエンドまたはバックエンドに文書が一体化されてよい。
【0044】
文書は、金属板などを用いた金属ベースであってよく、文書本体が金属板で形成されてもよい。なお、例えば車両の構築に用いられた種類の合成材など、異なる材料で文書本体が作られてもよい。
【0045】
本発明のさらなる側面は、文書のリーダに関する。リーダは、ディスプレイ装置によって放射された光の遅延をキャプチャするセンサと、遅延によって符号化された情報の復号手段とを有する。
【0046】
本発明のある実施形態によると、リーダは、情報を用いて文書を検証するべく設計される。例えば、リーダは受信した情報を基準情報と比較する。受信した情報と基準情報とが十分に一致することが、文書が真正であると認識されるための前提条件である。
【0047】
本発明のある実施形態によると、リーダは、受信した情報を用いて暗号プロトコルを実行する手段を有する。この情報は、例えば暗号キーである。リーダは、暗号キーをキャプチャすることで、文書に対して暗号プロトコルを実行できる。暗号プロトコルの実行が成功すると、リーダは文書の保護されたメモリ領域にアクセス可能となり、そこに存在するデータを読み取る。
【0048】
本発明のある実施形態によると、リーダは、通過中の交通手段の文書をキャプチャするように設計される。この実施形態では、文書は、例えば電子的な車両識別情報として設計される。リーダは、例えば、車両のパラメータ、車両の運転パラメータまたは料金状況のキャプチャ、具体的には交通制御、排気制御および/または料金制御に用いられてよい。
【0049】
本発明のさらなる側面は、文書の検証方法に関する。文書の検証では、ディスプレイ装置によって受信された情報が基準情報と比較される。また、ディスプレイ装置によってキャプチャされた経時的遅延に加え、放射成分のキャプチャされた空間特性が検証に用いられてよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図面は次の通りである。
【0051】
【図1】本発明による、文書の実施形態のブロック図である。
【0052】
【図2】本発明による、ディスプレイ装置の実施形態のブロック図である。
【0053】
【図3】様々な種類のディスプレイ素子の、時間分解された強度分析結果である。
【0054】
【図4】画像再生期間内におけるライン駆動を示す信号線である。
【0055】
【図5】経時的遅延のある場合、および経時的遅延のない場合の、ディスプレイ素子のライン駆動を示す信号線である。
【0056】
【図6】本発明による、文書のさらなる実施形態のブロック図である。
【0057】
以下の実施形態において互いに対応する要素は、同じ参照番号で識別する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、文書100の文書本体に内蔵されたディスプレイ102、およびディスプレイ102をアクティベートする電子回路104を有する文書100を示す。ディスプレイ102は、マトリクスなどの構成可能な複数のディスプレイ素子を含む。具体的には、ディスプレイ102は、パッシブまたはアクティブマトリクスディスプレイであってよい。
【0059】
電子回路104は、特にデータ106を格納するための1またはいくつかの電子メモリ126を含む。電子回路104は、データ106にアクセス可能である。具体的には、電子回路104は、データ106にアクセスし、データ106を描画するディスプレイ102をアクティベートして、文書100のユーザがデータ106の描画を認識できるようになることを目的としている。
【0060】
データ106は、例えば画像データであってよい。ここでの「画像データ」とは、ディスプレイ102における描画に適したデータ、例えば、デジタル写真、文字情報、具体的には車両識別情報などの識別情報、一次元または二次元バーコードなどを意味する。
【0061】
電子回路104は、ディスプレイ102にデータ106を描画するべく、画像再生期間中にディスプレイ102の全てのディスプレイ素子が1度アクティベートされるように設計される。これは、例えば25Hzまたは50Hzの画像再生周波数で行われてよい。
【0062】
ディスプレイ102のディスプレイ素子の各々は、光信号を発射するよう設計される。電子回路104によるディスプレイ素子のアクティベーションの結果、文書に格納されたデータ106は描画され、ユーザはそれらを視認できるようになる。例えばディスプレイ素子は、1つの画像再生期間内でディスプレイ102に完全な画像を構築するべく、画像再生期間内にライン単位でアクティベートされてよい。
【0063】
完全な画像の構築のための、ディスプレイ素子のサブセットからの光信号の発射が、経時的遅延を伴って1つの画像再生期間内に行われるようにディスプレイ102が設計される。ディスプレイ102の情報は、このサブセットのディスプレイ素子の空間構成および/または経時的遅延の長さに包含された、符号化された情報を含んでよい。
【0064】
リーダ108は、CCDセンサまたは光学スキャナなどの光センサ110を有する。センサ110は、ディスプレイ102のディスプレイ素子によって発射された光信号をキャプチャするように設計される。
【0065】
本発明の別の実施形態においては、センサ110は、例えば、時間分割された検知を可能にする、二次電子増倍管(PMT、photon multiplier)または、フォトトランジスタ、フォトダイオード(具体的にはアバランチフォトダイオード)または、光伝導セルからなってよい。センサ110の別の部分は、スペクトラル部分を選択するためのフィルタ、プリズムなどの分散要素、および/またはグリッドなどの回析要素を含んでよい。例えば、上述のユーロピウムを含む発光体物質の例では、例えば600nmより長い波長の光のみを透過させる、いわゆるロングパスフィルタが用いられてよい。その後この光は、例えばフォトダイオードで検知され、時間分割される。
【0066】
センサ110は、UV光、可視光および/または赤外光を検知するように設計されてよい。ある実施形態では、検知される光は、ディスプレイ装置によって発射されたものである。さらなる実施形態では、文書に光を放射する光源をリーダが有する。文書は、この放射の形態を変化させることなく、もしくは変化させて再び発射してよい。従って、センサは、計測技術を用いて透過、発射、または反射をキャプチャし得る。光源は、発熱体(例えば、白熱灯、ネルンストランプ)、LED(無機、有機、またはハイブリッド)、レーザ、ガス放電灯(例えば、冷陰極ランプ、ナトリウム放電ランプ)、またはこれらの組み合わせであってよい。これらには、スペクトルの領域を選択するべく、フィルタ、分散要素(例えば、プリズム)および/または回折要素(例えば、グリッド)が設けられてよい。波長の個々の波長領域または190nmから2500nmの間の連続スペクトルが望ましく、なかでも250nmから1250nmの間が特に望ましい。
【0067】
リーダ108は光源を有してよい。光源は、例えば発熱体、具体的には白熱灯、ネルンストランプ、無機、有機、またはハイブリッドLEDなどのLED、レーザ、冷陰極ランプまたはナトリウム放電ランプなどのガス放電灯、もしくはこれらの組み合わせであってよい。
【0068】
センサ110は、リーダ108の電子回路112に接続される。サブセットのディスプレイ装置が光信号を発射する際の経時的遅延をキャプチャすべく、センサ110によってキャプチャされた光信号を電子回路112が解析する。電子回路112は、経時的に遅延した光信号を発射したサブセットのディスプレイ素子の構成および/または経時的遅延に包含された情報を復号する、復号器を有してよい。基準情報は、電子回路112に格納され得る。
【0069】
ある実施形態では、経時的遅延を検知するべく、スイッチオン処理および/またはスイッチオフ処理についてセンサ110によって計測された、時間分割された強度分析結果に対し、電子回路112が指数関数の一種を実行する。ここでは、スイッチをオンまたはオフにする際の、ディスプレイ素子の放射の強度の急峻な立ち上がりと落ち込みを異ならせることによって、異なる経時的遅延がもたらされる。
【0070】
リーダ108は、ユーザインタフェース116をさらに有する。これに代えて、またはこれに加えて、リーダ108は、コンピュータおよび/またはネットワークへのインタフェースを有してよい。
【0071】
リーダ108は、センサ110を用いてディスプレイ102の描画をキャプチャし得る。これは、リーダ108がディスプレイ装置102によって生成された描画を継続的に光学的に感知できるように、永久的に行われてよい。従って、センサ110は例えば高速カメラとして設計されてよい。
【0072】
キャプチャされた情報は、例えば個人情報である。この個人情報は、文書100に明確な文字で印字114されてよい。ユーザインタフェース116によって表示された個人情報と文書100の印字114に示された個人情報とを比較することにより、文書の認証試験を行うことができる。センサ110によってサブセットのディスプレイ素子の経時的遅延から光学的にキャプチャされ、リーダ108のインタフェース116によって表示された個人情報は、印字114に示された個人情報と一致する必要がある。
【0073】
情報は、紋章、封印、または異なるセキュリティ特性からなってよい。このセキュリティ特性の描画は、リーダ108のセンサ110によってキャプチャされ、電子回路に格納された基準情報と、電子回路112を手段として比較される。光学的にキャプチャされたセキュリティ特性と基準情報とが十分に一致すると、ユーザインタフェース116を介して音または光信号が発射され、文書110が認証試験に合格したか否かを表示する。
【0074】
例えば、サブセットの全てのディスプレイ素子は、1つの画像再生期間内にそれぞれの光信号を同じ経時的遅延を伴って発射する。この場合、ディスプレイ102のサブセットのディスプレイ素子の空間構成の結果として、セキュリティ特性が構築され得る。
【0075】
電子回路104は、リーダ108の電子回路112へ無線または光学的に送信されるトリガ信号を、画像再生期間の直前に発射するように設計されてもよい。電子回路112は、このトリガ信号によってのみ、センサ110を用いてディスプレイ102の描画の光学的なキャプチャを開始し、その後の画像再生期間中にディスプレイ102のディスプレイ素子によって発射される光信号をキャプチャする。この実施形態では、センサ110が、例えば時間ゲートセンサ、具体的には時間ゲートセンサCCDカメラとして設計され得る。
【0076】
これに代えて、文書100についてこのトリガ信号を生成するようにリーダ108が設計されてよい。この場合、トリガ信号は、例えば電子回路112から電子回路104へ無線で送信される。その後、データ106を描画する完全な画像が構築される、画像再生期間を電子回路104が開始する。さらにリーダ108のトリガ信号の結果として、センサ110を用いてディスプレイ102の描画の光学的なキャプチャを電子回路112が開始する。
【0077】
図2は、文書100の別の実施形態を示す。
【0078】
文書100のディスプレイ102は、マトリクス状に構成された、いくつかのディスプレイ素子103を含む。ディスプレイ素子103の空間構成によって形成されたマトリクスは、L1からLnのn本のラインを有する。図2の実施形態では、n=5である。別の実施形態では、nとして著しく大きな値を選択し得る。
【0079】
ここでは、文書100の電子回路104はチップ、具体的にはRFIDチップとして設計される。電子回路104は、ディスプレイ102をアクティベートする駆動回路122からなる。このため、駆動回路122は駆動ロジック123を含む。
【0080】
駆動回路122は、それぞれがディスプレイ102のラインの1本とアクティベートする、マトリクスのライン1、2、3、4、および5によってディスプレイ102に接続される。これに代わり、またはこれに加え、ディスプレイ素子103のアクティベーションはカラムラインによって行われてよい。但し、カラムラインは必ずしも必要ではなく、特にマトリクスのライン1、2、3、4、および5が、対象とするラインのすべてのディスプレイ素子103をアクティベートするデータバスとして設計される場合は、カラムラインは不要である。
【0081】
電子回路104は、制御プログラムを実装するプログラム命令131、およびデータ106を復号するプログラム命令132を実行するプロセッサ128をさらに有する。復号とは、描画のことでもある。データ106は、例えば、標準的に符号化されたデータ形式、例えばJPEG、GIF、またはTIFFである。プログラム命令131は、データ106を復号し得る。電子回路104は、いわゆるフレームバッファである、バッファメモリ118をさらに有する。
【0082】
図2の実施形態では、駆動ロジック123は、ディスプレイ素子をそれらの空間構成の順序でアクティベートする。つまり、駆動ロジック123は、1画像再生期間内に、ラインL1、L2、L3、L4およびL5のディスプレイ素子が、この順序でアクティベートされるように設計される。
【0083】
メモリ126には、画像ラインI1、I2、I3、I4およびI5を有するデータ106が格納される。ディスプレイ102にデータ106を描画すべく、これらは、実行プログラム命令132によって復号され、フレームバッファ118の対応するラインLI1、LI2、LI3、LI4およびLI5に格納される。
【0084】
駆動ロジック123は、フレームバッファ118にアクセスし、画像再生期間内にそのラインをLI1、LI2、LI3、LI4、LI5の順に、またディスプレイ102の対応するラインをL1、L2、L3、L4、L5の順にアクティベートする。このアクティベーションの結果、データ106の完全な画像の描画の構築に必要な光信号をラインのディスプレイ素子103が発射する。
【0085】
図2の実施形態では、サブセットのディスプレイ素子の光信号の発射における遅延がライン単位で発生する。このため、マトリクス2および3のラインは、それぞれ遅延素子142および144を含む。従って、ラインL2およびL3のディスプレイ素子は、ここでサブセットを形成する。
【0086】
例えば、遅延素子142および144の遅延は指定され得る。具体的には、遅延素子142および144は、偶数のインバータのシリアル回路であってよく、各インバータは、ディスプレイ102の対象となるラインへの駆動回路122による信号送信の遅延に寄与する。遅延素子142および144の遅延は、例えば駆動回路によって生成される制御電圧の蓄積の結果、可変であってもよい。
【0087】
これに代えて、サブセットのディスプレイ素子(つまり、ここではL2およびL3のディスプレイ素子)による光信号の発射における経時的な遅延は、駆動ロジック123のレベルで実装される。これを行うには、マトリクス2および3のラインのアクティベーションがそれぞれ経時的遅延を伴って行われるように、駆動ロジック123が設計される。
【0088】
経時的遅延を手段として表示される情報は、可変であり得る。この場合、駆動ロジック123は、経時的遅延を伴ってアクティベートされるラインの選択および/またはアクティベーションの経時的遅延の長さを変更し、変更された情報を符号化する。
【0089】
経時的遅延の変化の結果として駆動ロジック123がディスプレイ102に供給する情報は、車両のパラメータおよび/または料金状況であってもよい。この実施形態では、文書100が、車両に貼付または車両の一部を形成する電子的な車両識別情報として設計される。
【0090】
例えば、駆動ロジック123または電子回路104は、電子回路104のインタフェースへ周期的または非周期的な間隔で表示する情報を送信する、車両用電子装置とのインタフェースを有してよい。車両用電子装置は、いわゆる電子制御ユニット(ECU)などであってよい。車両用電子装置は、車両用バスシステムを介して、表示する情報を送信するべく、電子スイッチ104を有する車両用バスシステムとネットワークで接続されていてよい。電子回路104は、受信した情報を内部的に駆動ロジックへ送信してよく、これらのディスプレイのアクティベーションの経時的遅延をこれに応じて実行する。
【0091】
例えば、車両用電子装置は、車両パラメータのキャプチャに用いることができ、具体的にはセンサ信号によってこれを行う。例えば、あるセンサは、現在の車両の排気レベルをキャプチャする。当該現在の排気レベルは、車両用電子装置によって情報として電子回路104に送信され、ディスプレイ102に表示される。また別の車両パラメータ、例えば速度、車両による実際の騒音レベルなど、車両のその他の環境もしくは安全性パラメータが同様に扱われてよい。
【0092】
これに代えて、またはこれに加えて、車両用電子装置は、料金状況を判断するように設計される。例えば、車両用電子装置は、通行料、税金、もしくは排気料などの料金が支払い済みであるか、もしくは未払いであるかを判断する。料金状況を示す、対応する情報は、車両用電子装置によって電子回路104へ送信され、ディスプレイ102に表示される。
【0093】
これに応じて、ディスプレイ102によって表示される情報をキャプチャするリーダ108(図6)は、停止中および/または移動中の車両によって形成されてよい。リーダ108は、ディスプレイ102によってキャプチャされた情報が分析される、中央サーバコンピュータにネットワークで接続されてよい。
【0094】
ここでは、データ106が公式の車両識別情報であってよい。従って、ディスプレイ102には、リーダを用いずには視認不可能な1以上の情報と共に、公式の車両識別情報が視覚的に表示される。この実施形態では、例えば、車両電子装置から車両用バスシステムを介して電子回路104へ最新の公式IDを含むデータを送信した後に、受信したデータでデータ106を上書きしデータ106を更新することで、公式IDの更新が行われる。
【0095】
ディスプレイ102は、いわゆるアクティブマトリクスであってよい。この場合、各ディスプレイ素子103は、関連付けられたいわゆるアクティベーション回路を有する。アクティベーション回路は、駆動回路122のカラムラインおよびマトリクスの各ラインを介してアクティベートされ得る。この場合、経時的遅延は、サブセットのディスプレイ素子のアクティベーション回路のレベルで実現され得る。例えば、サブセットのディスプレイ素子のアクティベーション回路は、遅延素子142および144に対応する遅延素子によって、マトリクスの対象ラインおよびカラムラインに接続される。
【0096】
これに代わって、経時的遅延の実装をアクティベーションのレベルではなく、ディスプレイ素子103自体のレベルで行うことも可能である。ディスプレイ素子103の各々は、応答特性を有する。応答特性とは、つまり、このディスプレイ103のアクティベーションに際する、光信号の発射の進行を示す伝達関数である。サブセットのディスプレイ素子103は、ディスプレイ102のその他のディスプレイ素子103の応答動作とは異なる応答動作を有するように設計される。この応答動作は、サブセットのこれらのディスプレイ素子103による光信号の発射における経時的遅延の結果として遅延する。
【0097】
図3に、3の異なる種類のディスプレイ素子について、このような応答動作の経時的な進行を例示的に示す。点線で示す1種類目のディスプレイ素子は、信号の蓄積には第1半減期(1,A、および信号減衰には半減期(1,Eを有する。実線で示す2種類目のディスプレイ素子は、信号の蓄積には第1半減期(2,A、および信号減衰には半減期(2,Eを有する。1種類目に比べ、2種類目のスイッチオンおよびスイッチオフ動作は遅延したものである。一点鎖線で示す3種類目のディスプレイ素子は、不規則なスイッチオンおよびスイッチオフ動作を有し、理想的であると仮定される。
【0098】
3曲線全ての下の面積、つまり発射および受け取られた光量子の数である、明るさの印象は、3曲線全てにおいて同一である。従って、観察者は技術的な補助を用いることなく、1種類目、2種類目および3種類目のディスプレイ素子を区別し得る。
【0099】
例えば、ディスプレイ素子103には、サブセットの一部ではないその他のディスプレイ素子103よりも長いフェードアウト時間を有する、異なる発光性物質を用いることで、サブセットのディスプレイ素子103の遅延した応答動作を実現する。このようなフェードアウト時間の長い発光性物質の応答動作は、相応に遅延する。
【0100】
これに代わって、全てのディスプレイ素子103に例えばユーロピウムなどの同じ発光性物質を用い、異なる母体結晶を用いることでそれぞれの応答動作を変化させてもよい。
【0101】
スイッチオンおよびスイッチオフプロセスにおける、このような発光性物質の動作の第1の近似としては、単一指数的な進行が仮定され得る。計測された、時間分割された強度分析は、次の式aおよびbによる。
式[a]:Exponential Accretion l = lsaturation * (1 − e−τ/t
l=時間tのある時点における発光強度
saturation=飽和時の発光強度 (励起および発射が均衡)
τ=時間定数
t=時間
式[b]:Exponential Decay l = l * e−τ*t
l=時間tのある時点における発光強度
=t=0における発光強度
τ=時間定数
t=時間
【0102】
複雑なシステムにおいては、多指数減衰が用いられてよい。これは当業者にとって公知である。
【0103】
ライフサイクルは、例えば、異なる母体グリッドシステム、タイプII半導体などの空間構成、または分子間エネルギー移動(FRET、特にspFRET)など、様々な物質を用いることで変化させることができる。分子における目的の金属の化学的痕跡によっても、その他の変形が可能である。
【0104】
OLEDなどの放射性ディスプレイ装置を用いる場合、異なる放出物質の発光スペクトルが類似もしくは同一であっても、それらの経時的発光動作は顕著に異なり得る。蛍光とりん光とは、励起状態のライフサイクルに応じて区別される。ライフサイクルは、蛍光物質の場合<10−6秒であり、りん光物質の場合は>10−6秒である。
【0105】
一般的なOLED物質の中でも特にトリプレット(Triplett)と呼ばれる物質は、セキュリティ機能として用いられる可能性を有する。これらの物質では、りん光が特徴的である。これらの物質は、励起状態のライフサイクルの長さの程度が蛍光物質とは大きく異なる。りん光では励起状態から基底状態への移行(いわゆるトリプレット状態)が不可能であるが、蛍光においてはこれが可能である(シングレット状態)。
【0106】
従来技術においては、いわゆるトリプレットOLED物質が数多く知られている。具体的には、ポリ(p‐フェニレンビニレン)(PPV、p−phenylene−vinylene)誘導体が適切である。その他の物質としては、例えば、トリフェニルアミン環状二量体、N′‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N、N−ビス(フェニル)ベンジディン(TPD)、緑色有機りん光材料(fac tris(2−phenylpyridine) iridium (Ir(ppy)))を添加したTPD、およびオクタエチルポルフィりん白金(PtOEP)を添加したTPD(Tsuboi, Taiju; Murayama, Hideyuki; Penzkofer, Alfons「(Ir(ppy)およびPtOEPを添加したTPD母材の光ルミネッセンス特性(Photoluminescence Characteristics of Ir(ppy) and PtOEP doped in TPD Host Material.)」Thin Solid Films、2006年、499(1−2) ISSN 0040−6090、ページ306−312)がある。
【0107】
従来技術においては、OLEDの減衰定数は、テレビなどの特定のアプリケーション用の材料の減衰(フェードアウト)には時間がかかるべきではないという点においてのみ、考慮されてきた。これとは対照的に、本発明によると、増大および減衰動作を手段として、情報および/またはセキュリティ機能を符号化し得る。
【0108】
図4は、画像再生期間146を示す信号図である。画像再生期間146は、ラインL1、L2、L3…(図2)が順にアクティベートされる、マトリクス148、150、152、…のラインの経時的で等間隔なアクティベーション期間を含む。
【0109】
図5は、ラインL1をアクティベートする、マトリクス148のラインのアクティベーション期間、およびこれに続くラインL2をアクティベートするマトリクス150のラインのアクティベーション期間の例を示す。
【0110】
マトリクス148のラインのアクティベーション期間中は、ラインL1のディスプレイ素子103は、経時的に等間隔なピクセル信号154を伴って順にアクティベートされる。ここでは、ディスプレイ素子103によってそれぞれ発射される光信号の強度が指定されている。従って、画像再生期間146内のピクセル信号154およびマトリクス148、150、152、…のラインのアクティベーション期間のタイミングは、予め確定される。
【0111】
サブセットの一部であるラインL2のディスプレイ素子103のアクティベーションは、ディスプレイ素子103のアクティベーションの予め確定されたタイミングとは異なり、図5に示すように経時的遅延ΔTで発生する。この経時的遅延ΔTは、電子回路122によるラインL2のアクティベーションのために、マトリクス2のラインによってラインL2へ送信される、遅延したアクティベーション信号の結果である。マトリクス2のラインには、遅延素子142が存在する。これに代わって、遅延ΔTは、駆動ロジック123による、対応して遅延した信号生成を手段として発生してもよい。
【0112】
図6は、本発明による、別の実施形態の文書100およびリーダ108を示す。
【0113】
ここでの文書100の電子回路104は、チップ、具体的にはRFIDとして設計される。電子回路104は、リーダ108と通信する、文書100のインタフェース124に接続されている。インタフェース124は、例えば、文書100の端部へ向かって延伸する、1以上のアンテナの巻線を有し得る。
【0114】
回路104は、保護されるべきデータ127を格納するための電子メモリ126を有する。保護されるべきデータ127は、例えば、文書100の所有者の生体データ、具体的には、指紋データ、虹彩のスキャンデータ、またはその類似であってよい。保護されるべきデータ127は、メモリ126内の特別に保護されたメモリ部分に格納される。
【0115】
さらに、同じメモリ126内、もしくは文書100の異なる電子ストレージ装置内に、データ106および情報107が格納される。回路104は、プログラム命令130を実行するプロセッサ128をさらに有する。この実行の結果、文書に関する暗号化プロトコルの段階が実装される。さらに、プロセッサ128は、制御プログラム131を実装するプログラム命令も実行する。
【0116】
リーダ108は、ディスプレイ102のディスプレイ素子103(図2を参照)によって放射された光信号をキャプチャする光センサ110を有する。光センサ110は、CCDセンサまたはスキャナであってよい。
【0117】
さらに、リーダ108は、文書100のインタフェース124に対応するインタフェース132を有する。例えば、インタフェース132は、文書100またはその回路104とRFID通信を行うべく設計される。インタフェース124および132は、接触型、非接触型、もしくはデュアルモード型のインタフェースであってよい。インタフェース124および132の結合は、電子的、容量性、誘導性、磁性、光学的、またはその他の物理的な方法であってよい。非接触結合の手段であるアンテナは、インダクタ、ダイポール、もしくは容量性表面の形態で設計されてよい。
【0118】
文書108は、リーダ108に影響する暗号化プロトコルの段階の実装手段であるプログラム命令138と、制御プログラム136とを実行する、少なくとも1のプロセッサ134を有する。さらに、リーダ108は、アプリケーションプログラム140を実行してよい。また、アプリケーションプログラム140は、リーダ108に接続された異なるコンピュータシステムによって実行されてよい。
【0119】
プログラム命令131によって実装される文書100の制御プログラムは、データ106を描画するべく、駆動回路122をアクティベートするように設計される。従って、駆動回路は、サブセットのディスプレイ素子のアクティベーションにおける遅延を符号化するべく、情報107にアクセスする。これに代えて、遅延は予め確定されていてよく、この場合には、画像再生期間内に遅延を伴ってアクティベートされるディスプレイ要素の選択を手段として、情報の符号化が行われる。
【0120】
リーダ108は、メモリ126のデータ127にアクセスするべく、その光センサ110によってまずディスプレイ102をキャプチャする。従って、センサ110は制御プログラム136によって対応してアクティベートされる。制御プログラム136は、サブセットの遅延素子103の構成および/または遅延の中に符号化された情報を復号化して、情報を受信する。このように、制御プログラム136は暗号キーに関する情報を受信する。
【0121】
暗号器キーの受信後、制御プログラム136は、プログラム命令138の実行を開始する。これにより、リーダ108と文書100との間の暗号プロトコルが暗号キーを用いて実行される。暗号プロトコルは、例えばチャレンジ/レスポンスプロセスである。
【0122】
チャレンジ/レスポンスプロセスは、例えば、まずリーダ108がデータ127のリクエストを文書100のインタフェース124に送信するように進行してよい。その後、プログラム命令130の実行が開始される。これにより、文書100は、例えば、暗号キーの参照値に相似して暗号化された任意の数を作成し、結果を暗号化する。暗号化された任意の数、つまり暗号は、文書100のインタフェース124からリーダ108のインタフェース132へ送信される。
【0123】
プログラム命令138の実行の結果、リーダ108は、予め受信した暗号キーを用いて文書100が受信した暗号を復号化する。復号化の結果は、インタフェース132によって文書100のインタフェース124へ送信される。
【0124】
その後、文書100は、リーダ108から文書が受信した暗号の復号化の結果が、初めに文書100によって作成された任意の数と一致するか否かを、プログラム命令130を用いてテストする。一致する場合は、プログラム命令130に含まれた、もしくはこれらによってアクセス可能な、暗号化キーの参照値が、リーダ108によってキャプチャされたディスプレイ102の画像描画の暗号キーと一致する。この結果、文書100の信頼性およびリーダ108のアクセス権が与えられる。
【0125】
その後、文書100は、リーダ108によってリクエストされたメモリ126のデータ127をインタフェース124からインタフェース132へ送信する。これらのデータは、その後の処理のために、制御プログラム136によってアプリケーションプログラム140へ送信されてよい。例えば、データはモニターマスクに表示される。
【0126】
メモリ126からリーダ108へデータが送信される前に、拡張アクセス制御(EAC)などの追加のテストが要件とされてよい。これに代わり、またはこれに加えて非対称キーを用いた暗号化プロトコルが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 マトリクスのライン
2 マトリクスのライン
3 マトリクスのライン
4 マトリクスのライン
5 マトリクスのライン
100 文書
102 ディスプレイ
103 ディスプレイ素子
106 データ
107 情報
108 リーダ
110 センサ
112 回路
114 印字
116 ユーザインタフェース
118 フレームバッファ
122 駆動回路
123 駆動ロジック
124 インタフェース
126 メモリ
127 データ
130 プログラム命令
131 プログラム命令
132 プログラム命令
134 プロセッサ
136 制御プログラム
138 プログラム命令
140 アプリケーションプログラム
142 遅延素子
144 遅延素子
146 画像再生期間
148 ライン駆動期間
150 ライン駆動期間
152 ライン駆動期間
154 ピクセル信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵ディスプレイ装置(102)を備える文書であって、該ディスプレイ装置は、複数の駆動可能なディスプレイ素子(103)を備え、該ディスプレイ素子のそれぞれは、該文書内に記憶される第1のデータ(106)の描画のために光信号を放出するように構成されており、前記ディスプレイ装置は、連続して続く画像再生期間において前記第1のデータを描画するために、前記ディスプレイ素子を周期的に駆動するように構成されており、前記ディスプレイ装置は、少なくとも前記ディスプレイ素子のサブセットの前記光信号の前記放出が経時的遅延を伴って行われるように構成されており、該経時的遅延は視覚的に捉えることができず、該経時的遅延の長さに情報が符号化されており、前記サブセットの前記ディスプレイ素子の配置に情報が符号化されている文書。
【請求項2】
前記サブセットに属する前記ディスプレイ素子の駆動を遅延させる手段(123;142、144)を備える請求項1に記載の文書。
【請求項3】
前記ディスプレイ素子はアクティブマトリクスで配置されており、前記ディスプレイ素子のそれぞれには起動回路が関連付けられており、前記サブセットに属する前記ディスプレイ素子の前記起動回路は、駆動を遅延させる手段を含む請求項1または2に記載の文書。
【請求項4】
前記サブセットの前記ディスプレイ素子は、前記遅延をもたらす応答特性を有し、前記ディスプレイ素子は、前記光信号を生成する発光性物質を備え、前記サブセットの前記ディスプレイ素子は、前記発光性物質の第1の母体結晶を備え、前記サブセットに属さない残りの前記ディスプレイ素子は、前記発光性物質を収容する第2の母体結晶を備え、前記第1の母体結晶及び前記第2の母体結晶は異なる請求項1から3のうちいずれか一項に記載の文書。
【請求項5】
前記ディスプレイ装置は、前記サブセットの前記ディスプレイ素子が配置されていない領域を備える請求項1から4のうちいずれか一項に記載の文書。
【請求項6】
前記情報は、個人情報、セキュリティ機能、および暗号キーのうちの少なくとも1つである請求項1から5のうちいずれか一項に記載の文書。
【請求項7】
前記経時的遅延によって情報が出力され、該情報は経時的に可変であり、前記文書は、該経時的に可変な情報を出力するために、前記経時的遅延を変化させる手段(123)を備える請求項1から6のうちいずれか一項に記載の文書。
【請求項8】
前記文書は、集積電子回路(104)と、保護を要するデータ(127)を記憶する記憶装置(126)と、暗号プロトコルを実行する手段(130)とを含み、読み取り装置(108)に対するインタフェース(124)を備え、前記インタフェースを介して、前記保護を要するデータへ前記読み取り装置がアクセスするには、前記情報を用いる前記暗号プロトコルの実行が前提となる請求項1から7のうちいずれか一項に記載の文書。
【請求項9】
電子車両識別情報である請求項1から8のいずれか一項に記載の文書。
【請求項10】
前記第1のデータ(106)は車両の識別情報であり、前記経時的遅延によって情報が出力され、該情報は、車両パラメータおよび料金状況の少なくとも一方である請求項1から9のうちいずれか一項に記載の文書。
【請求項11】
請求項1から10のうちいずれか一項に記載の文書のための読み取り装置であって、前記ディスプレイ素子の前記サブセットからの前記光信号の放出の前記経時的遅延をキャプチャする光センサ(110)を備える読み取り装置。
【請求項12】
前記経時的遅延のキャプチャは、前記ディスプレイ素子によって放出される放射の時間分割された強度分析のキャプチャによって行われる請求項11に記載の読み取り装置。
【請求項13】
前記ディスプレイ装置によってキャプチャされる前記経時的遅延を用いて前記文書を検証する手段(136)を備える請求項11または12に記載の読み取り装置。
【請求項14】
暗号プロトコルを実行する手段(138)と、前記文書との通信のためのインタフェース(132)とを備え、前記文書の前記保護を要するデータ(127)へのアクセスは、前記経時的遅延からキャプチャされる情報を用いた前記暗号プロトコルの実施に成功していることを前提とする請求項11から13のうちいずれか一項に記載の読み取り装置。
【請求項15】
請求項1から10のうちいずれか一項に記載の文書を検証する方法であって、
画像再生期間における前記サブセットの前記ディスプレイ素子からの前記光信号の放出の前記経時的遅延をキャプチャするステップと、
前記経時的遅延を用いて基準情報を調べるステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−504622(P2011−504622A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532562(P2010−532562)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064896
【国際公開番号】WO2009/062855
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(599147447)ブンデスドルケライ ゲーエムベーハー (21)
【氏名又は名称原語表記】BUNDESDRUKEREI GMBH
【Fターム(参考)】