説明

内袋吸込み防止装置及び汲出し装置

【課題】 容器に装着された内袋内に収容されている流動体を、略完全に所定の安定した流量で汲み出すことができるようにすると共に、汲出し作業の効率を高めることができるようにする内袋吸込み防止装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 容器2内に内袋3が装着され、この内袋3内にフォロープレート6が配置され、このフォロープレート6が内袋3の容積を増減する上下方向に移動自在であり、内袋3とフォロープレート6との間に収容されている流動体4をポンプ13で吸い込んで汲み出す汲出し装置11に使用される内袋吸込み防止装置12であって、容器2に取り付けられ、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8a、8bに存在する空気等の流体9を容器2外に排出するための流体排出部22を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドラム缶やペール缶等の容器内に装着された内袋に収容されているペースト状又はクリーム状のコーキング剤、シール剤、制振剤、軟膏等の高粘度液や、水に近い粘性を有する低粘度液等の各種流動体を、ポンプで吸い込んで汲み出すことができる汲出し装置、及びこのような汲出し装置に使用することができる内袋吸込み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の汲出し装置の一例を、図9を参照して説明する。この汲出し装置1は、ペール缶等の容器2内に装着された内袋(例えばビニール袋)3に収容されているコーキング剤等の流動体4を、ポンプ装置5の流動体吸込み口5aから吸い込んで、流動体流出口5bから流出させることができるものである。そして、このポンプ装置5の吸込み口部5cには、フォロープレート6が略水平に取り付けられている。このフォロープレート6は、例えば略円板状体であり、独立気泡体の発泡ウレタン製である。このフォロープレート6は、その外周部6aが内袋3を介して容器2の略短円筒形の側壁2bの内面に当接しており、フォロープレート6の外周部6aと内袋3の内面との当接部が密封されている。
【0003】
なお、流動体4が内袋3内に収容されているのは、流動体4が空気中の水分と接触して固化(硬化)することを防止するためである。そして、内袋3がずり落ちないようにするために、内袋3の上側開口端部を容器2の上縁部にバンド7で留めてある。また、図9は、汲出し装置1を使用して容器2に装着されている内袋3内の流動体4を汲み出す作業を行っており、フォロープレート6が容器2の底面2aに接近している状態を示している。
【0004】
この汲出し装置1を使用して容器2に装着された内袋3内の流動体4を汲み出すときは、例えばまず、図9の一点鎖線で示すように、フォロープレート6を容器2に装着された内袋3内に挿入して、フォロープレート6の下面を内袋3内に収容されている流動体4の表面に接触させる。そして、この状態で、フォロープレート6の中央開口部6bにポンプ装置5の吸込み口部5cを装着し、しかる後に、ポンプ装置5を作動させる。これによって、流動体4をポンプ装置5の流動体吸込み口5aから吸い込んで流動体流出口5bから流出させることができる。
【0005】
そして、このように内袋3内の流動体4が汲み出されて内袋3内の流動体4が減少していくと、これに伴って、図9に示すように、フォロープレート6、及びこれに取り付けられているポンプ装置5が例えば自重によって自動的に下降するので、内袋3内の流動体4を連続して汲み出すことができる。
【0006】
また、従来のフォロープレートを使用する汲出し装置の他の例として、汲み上げ装置(図示せず)が公報に掲載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−46156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図9に示す従来の汲出し装置1では、容器2に装着されている内袋3内の流動体4を汲み出す作業を行っているときに、フォロープレート6が容器2の底面2aに接近すると、内袋3の底部がポンプ装置5の自吸力によって持ち上がる状態となる。そして、この持ち上がっている内袋3が、ポンプ装置5の流動体吸込み口5aに対してこれ以上に接近して覆うこととなると、ポンプ装置5による流動体4の吸込み作用が低下して、所定の安定した流量で流動体4を汲み出すことができなくなることがある。そして、流動体吸込み口5aが内袋3によって閉じられると、ポンプ装置5にキャビテーションが発生することもある。
【0008】
また、このような問題が発生することを防止するために、図9に示すように、ポンプ装置5の流動体吸込み口5aが内袋3によって覆われる手前で汲出し作業を止めるようにすることが考えられるが、このようにすると、汲み出すことができない流動体4が内袋3内に多く残留することとなるし、汲出し作業の効率が悪くなる。
【0009】
なお、図9に示すように、フォロープレート6が容器2の底面2aに接近すると、内袋3がポンプ装置5の自吸力によって持ち上がる状態となるのは、ポンプ装置5によって内袋3内の流動体4を吸い込み続けることによって内袋3内の圧力が低下し、これによって、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8aに存在する空気等の流体9が膨張するからである。
【0010】
また、図10に示すように、この従来の汲出し装置1では、容器2に装着されている内袋3内の流動体4を汲み出す作業を行っていてフォロープレート6が下降するときに、フォロープレート6の外周部6aによって、容器2の側壁2bの内面と、内袋3の外面との間に存在する流体9が下方に寄せ集められて、内袋3の側壁が内側に向かって盛り上がる状態となることがある。このようにして、流体空間8bが容器2の側壁2bの内側に形成されると、ポンプ装置5が作動しても、フォロープレート6がこの流体空間8bに邪魔されて下降することができず、内袋3内の流動体4を汲み出すことができなくなることがある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、容器に装着された内袋内に収容されている流動体を、略完全に所定の安定した流量で汲み出すことができるようにすると共に、汲出し作業の効率を高めることができるようにする内袋吸込み防止装置及び汲出し装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る内袋吸込み防止装置は、容器内に内袋が装着され、この内袋内にフォロープレートが配置され、このフォロープレートが前記内袋の容積を増減する方向に、当該内袋に対して相対的に移動自在であり、前記内袋と前記フォロープレートとの間に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置に使用される内袋吸込み防止装置であって、前記容器に取り付けられ、前記容器の内面と前記内袋の外面との間の流体空間に存在する流体を前記容器外に排出して減圧するための流体排出部を備えることを特徴とするものである。
【0013】
請求項1の発明に係る内袋吸込み防止装置が使用される汲出し装置は、例えば容器に装着された内袋内に収容されているコーキング剤等の流動体を、ポンプで吸い込んで汲み出すことができる。そして、ポンプが流動体を汲み出して内袋内の流動体が減少していくと、それに伴って、フォロープレートが内袋の容積を減少させる方向に、当該内袋に対して相対的に移動すると共に、内袋内の圧力が低下し、これによって、容器の内面と内袋の外面との間の流体空間に存在する例えば空気等の流体が膨張しようとする。この際、内袋吸込み防止装置の流体排出部は、その流体空間に存在する流体を容器外に排出して流体空間を減圧することができるので、流体の膨張を抑制することができ、内袋がポンプの流動体吸込み口を所定以上に接近して覆ったり塞ぐことを防止できる。
【0014】
また、容器の側壁の内面と、内袋の外面との間に流体が存在してそこに流体空間が形成されている場合でも、この流体を流体排出部によって排出することによって、容器の側壁の内側に内袋の盛り上がりが生じないようにすることができる。これによって、フォロープレートが、当該流体空間に邪魔されずに内袋の容積を減少させる方向に、当該内袋に対して相対的に移動することができる。
【0015】
請求項2の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項1の発明において、前記流体排出部が、真空ポンプ又はエゼクタを備えることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、流体排出部として真空ポンプ又はエゼクタを使用することによって、容器の内面と内袋の外面との間の流体空間に存在する流体を容器外に確実に排出して流体空間を減圧することができる。これによって、内袋がポンプの自吸力によって確実に持ち上がらないようにすることができるし、容器の側壁の内側に内袋の盛り上がりが生じないようにすることができる。
【0017】
請求項3の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項1又は2の発明において、前記流体排出部に設けられている流体吸込み口と、前記流体空間とを連通する前記流体の流路の途中にバルブを設けたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、流体排出部を作動させて、容器の内面と内袋の外面との間の流体空間を減圧した状態にしてバルブを自動的に又は手動で閉じることができ、これによって、その流体空間の減圧状態を維持することができる。従って、流体空間の減圧状態を維持するために、流体排出部を作動させる時間を短縮することができ、流体排出部を作動させるためのエネルギを低減することができる。
【0019】
請求項4の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項1乃至第3のいずれかの発明において、前記容器に設けられ前記流体空間に存在する流体を前記容器外に排出するための流体排出口と、この流体排出口を覆うように前記容器の内側に設けられ前記流体排出口が前記内袋によって閉じられることを防止するための閉鎖防止部とを更に備えることを特徴とするものである。
【0020】
請求項4の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、流体排出部が作動して流体空間内の流体を流体排出口から容器外に排出することによって、流体空間の容積が減少して、内袋が流体排出口を覆う方向に移動するが、閉鎖防止部によって、流体排出口が内袋によって閉じられることを防止することができる。これによって、流体空間内を十分に減圧することができる。
【0021】
請求項5の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項4の発明において、前記流体排出口が前記容器の底面の略中央に設けられ、前記閉鎖防止部は、簀の子状体又は連続気泡体であり、前記容器の底面の略全体に行き亘る大きさであることを特徴とするものである。
【0022】
請求項5の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、流体排出口を容器の底面の略中央に設けることによって、容器の底面、及び側面の略全域に亘って、流体空間の流体を流体排出口から容器外に排出し易くすることができる。そして、閉鎖防止部を、簀の子状体又は連続気泡体とし、この閉鎖防止部を容器の底面の略全体に行き亘る大きさに形成することによっても、容器の底面、及び側面の略全域に亘って、流体空間が形成され難くすることができる。これによって、閉鎖防止部の表面、及び容器の側面の略全域に亘って内袋の盛り上がりを防止できるので、内袋内の流動体を略完全に汲み出せるようにすることができる。
【0023】
請求項6の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項1乃至第5のいずれかの発明において、前記流体排出部は、前記ポンプが前記流動体の吸込みを開始した時から、前記ポンプの流動体吸込み口が前記内袋によって閉じられる手前の所定の作動開始時点までは前記流体の排出を行わず、前記作動開始時点から前記流体の排出を開始することを特徴とするものである。
【0024】
請求項6の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、ポンプが流動体の吸込みを開始した時から、ポンプの流動体吸込み口が内袋によって閉じられる手前の所定の作動開始時点までは、流体排出部による流体の排出を行わないので、その作動開始時点までの時間において、流体排出部の作動エネルギを削減することができる。そして、この時間内では、流動体吸込み口が内袋によって閉じられていないので、ポンプによって流動体を所定流量で汲み出すことができる。
【0025】
そして、流体排出部は、所定の作動開始時点から流体の排出を開始して流体空間を減圧することができるので、内袋の盛り上がりを小さくしていくことができる。これによって、内袋がポンプの流動体吸込み口を閉じないようにすると共に、フォロープレートの移動が内袋の盛り上がりによって堰き止められないようにすることができ、ポンプが流動体を所定流量で汲み出すことを維持させることができる。このようにして、内袋内の流動体を略完全に汲み出せるようにすることができる。
【0026】
請求項7の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記容器の底面の全体又は一部に形成され、前記フォロープレートに装着される前記ポンプの吸込み口の下方位置に設けられた漏斗状の凹部を更に備えることを特徴とするものである。
【0027】
請求項7の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、例えば流動体が比較的高粘度であったり、ポンプによる汲出し流量が比較的大きい場合であっても、内袋に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出しているときに、内袋の底部が略平坦な水平状態となるようにすることができる。つまり、流動体が比較的高粘度である場合等では、内袋内の流動体をポンプで吸い込んで汲み出しているときは、内袋内の流動体のうち、ポンプの吸込み口に近い部分の圧力がその周りの部分よりも低くなるので、流体排出部を作動させていても、内袋の底部のうち、ポンプの吸込み口の下方に位置する部分がその周りの部分よりも、吸込み口に近づく方向に持ち上げられることがある。
【0028】
そこで、内袋が装着される容器の底面の全体又は一部を漏斗状の凹部として形成し、これによって、容器に内袋を装着したときに、内袋の底部が容器の底面に沿うことによって下方に突出する形状となるようにすることができる。この状態で、内袋に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出すと、内袋の底部が吸込み口に近づく方向に持ち上げられ、結局、略平坦な水平状態となるようにすることができ、内袋の底部がポンプの吸込み口を塞がないようにすることができる。
【0029】
請求項8の発明に係る内袋吸込み防止装置は、請求項7の発明において、前記漏斗状の凹部の最下部が、前記ポンプの吸込み口の下方位置に形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
請求項8の発明に係る内袋吸込み防止装置によると、漏斗状の凹部の最下部が、ポンプの吸込み口の下方位置に形成されているが、その理由は、内袋の底部のうち、ポンプの吸込み口の下方に位置する部分がその周りの部分よりも、吸込み口に近づく方向に持ち上げられ易いので、内袋の底部のうち、ポンプの吸込み口の下方に位置する部分を、他の部分よりもその吸込み口から引き離して配置するためである。このようにすることによって、内袋に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出すときに、内袋の底部を精度良く略平坦な水平状態となるようにすることができ、内袋の底部が吸込み口を塞がないようにすることができる。
【0031】
請求項9の発明に係る汲出し装置は、容器内に内袋が装着され、この内袋内にフォロープレートが配置され、このフォロープレートが前記内袋の容積を増減する方向に、当該内袋に対して相対的に移動自在であり、前記内袋と前記フォロープレートとの間に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置において、請求項1乃至8のいずれかに記載の内袋吸込み防止装置を備えることを特徴とするものである。
【0032】
請求項9の発明に係る汲出し装置によると、上記の通り、内袋吸込み防止装置の作用を奏することができるので、内袋内に収容されている略全部の流動体を、所定の安定した流量で汲み出すことができる。
【0033】
請求項10の発明に係る汲出し装置は、容器内に内袋が装着され、この内袋内に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置に使用される内袋吸込み防止装置であって、前記容器に取り付けられ、前記容器の内面と前記内袋の外面との間の流体空間に存在する流体を前記容器外に排出して減圧するための流体排出部を備えることを特徴とするものである。
【0034】
請求項10の発明に係る内袋吸込み防止装置が使用される汲出し装置は、例えば容器に装着された内袋内に収容されているコーキング剤等の流動体を、ポンプで吸い込んで汲み出すことができる。しかし、ポンプの流動体吸込み口が内袋の底部に接近していると、ポンプの吸込み力が内袋の底部を吸引して持ち上げようとする力として働くので、容器の内面と内袋の外面との間の流体空間に存在する例えば空気等の流体が膨張しようとする。この際、内袋吸込み防止装置の流体排出部は、その流体空間に存在する流体を容器外に排出して流体空間を減圧することができるので、流体の膨張を抑制することができ、内袋の底部がポンプの流動体吸込み口を所定以上に接近して覆ったり塞ぐことを防止できる。
【0035】
請求項11の発明に係る汲出し装置は、容器内に内袋が装着され、この内袋内に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置において、請求項10記載の内袋吸込み防止装置を備えることを特徴とするものである。
【0036】
請求項11の発明に係る汲出し装置によると、上記の通り、内袋吸込み防止装置の作用を奏することができるので、内袋内に収容されている略全部の流動体を、所定の安定した流量で汲み出すことができる。
【0037】
請求項12の発明に係る汲出し装置は、請求項9又は11の発明において、前記ポンプは、一軸偏心ねじポンプであることを特徴とするものである。
【0038】
請求項12の発明に係る汲出し装置によると、ポンプとして、吸込み式の一軸偏心ねじポンプを使用しているので、容器に圧力を掛けずに内袋に収容されている流動体を汲み出すことができて便利である。しかし、汲出し作業中において内袋内の圧力が低下したり、ポンプの自吸力によって内袋が持ち上がってポンプ装置の流動体吸込み口が塞がれる恐れがあるが、本発明に係る内袋吸込み防止装置を使用することによって、内袋の持ち上がりを防止することができる。従って、吸込み式の一軸偏心ねじポンプを使用しても、内袋内の流動体を、所定の安定した流量で略完全に汲み出すことができる。
【発明の効果】
【0039】
請求項1及び10の発明に係る内袋吸込み防止装置、並びに請求項9及び11の発明に係る汲出し装置によると、容器の内面と内袋の外面との間の流体空間に存在する流体を、流体排出部によって容器外に排出して、流体空間を減圧することができる構成としたので、ポンプが内袋内の流動体を吸い込んで汲み出しているときに、内袋がポンプの自吸力によって持ち上げられて、内袋が流動体吸込み口に所定以上に接近してこの流動体吸込み口を覆うことを防止することができる。
【0040】
また、容器の側壁の内面と、内袋の外面との間に流体が存在してそこに流体空間が形成されている場合でも、この流体を流体排出部によって排出することによって、その流体空間を消滅させることができる。これによって、フォロープレートを使用する汲出し装置に対しては、フォロープレートが、当該流体空間に邪魔されずに内袋の容積を減少させる方向に、当該内袋に対して相対的に移動することができる。
【0041】
従って、容器に装着された内袋内に収容されている略全部の流動体を所定の安定した流量で汲み出すことができ、その結果、汲出し作業の効率を高めることができる。更に、流動体吸込み口が内袋によって閉じられることがないので、ポンプにキャビテーションが発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る内袋吸込み防止装置、及び汲出し装置の第1実施形態を、図1を参照して説明する。この汲出し装置11は、図1に示すように、ポンプ装置5、及び内袋吸込み防止装置12を備えており、例えばドラム缶やペール缶等の容器2に貯留されている流動体4を汲み上げて、流動体流出口5bから所定流量で流出させることができるものである。
【0043】
そして、この汲出し装置11は、図示しない塗布装置や充填装置等に適用することができるものであり、この塗布装置は、汲出し装置11の流動体流出口5bから所定流量で流出してくる流動体4を、移送管を介して吐出機(図示せず)に供給し、そして、この吐出機から流動体4を規定流量で吐出して各種部材に塗布することができるものである。
【0044】
図1に示す流動体4は、例えばペースト状又はクリーム状のコーキング剤、シール剤、制振剤、軟膏等の高粘度液や、水に近い粘性を有する低粘度液等である。そして、容器2は、例えば上側に開口し、底部2cを有する短円筒形状のものである。
【0045】
図1は、汲出し装置11の縦断面図であり、この汲出し装置11を使用して容器2に装着されている内袋(例えばビニール袋)3内の流動体4を汲み出す作業を行っており、フォロープレート6が容器2の底面2aに接近している状態を示している。
【0046】
汲出し装置11は、図1に示すように、ポンプ13を備えるポンプ装置5と、このポンプ装置5を昇降させるための昇降機構部(図示せず)と、内袋吸込み防止装置12とを備えている。
【0047】
ポンプ装置5は、ポンプ13の流動体吸込み口5aから容器2に装着された内袋3内に収容されている流動体4を吸い込んで、流動体流出口5bから所定流量で流出することができるものである。この流動体流出口5bには、図示しない移送管が接続している。
【0048】
ポンプ13は、その下端部の吸込み口部5cがフォロープレート6の中央開口部6bに着脱自在に装着しており、フォロープレート6が略水平に取り付けられている。そして、ポンプ13の上端部には、ポンプケーシング14、15が取り付けられ、このポンプケーシング14、15の上端部には、ブラケット16を介して減速機17及び電動モータが取り付けられている。
【0049】
ポンプ13は、図1に示すように、縦型の一軸偏心ねじポンプであり、ロータ18とステータ19とを有している。ロータ18は、雄ねじ形状であり、雌ねじ形状の内孔19aを有するステータ19に回動自在に装着されている。そして、このロータ18の上端は、コネクティングロッド20を介して減速機17の回転軸17aと連結している。なお、コネクティングロッド20の上下の各端部は、それぞれユニバーサルジョイント21、21を介して減速機17の回転軸17a、及びロータ18と連結している。
【0050】
昇降機構部は、図には示さないが、ポンプ装置5を昇降させるためのものであり、ポンプ13が作動して容器2に装着された内袋3に収容されている流動体4を汲み上げているときに、ポンプ13の吸込み力(自吸力)によって、ポンプ装置5が自動的に流動体4の表面に追従して下降できるようにするためのものである。
【0051】
フォロープレート6は、例えば略円板状体であり、独立気泡体の柔軟性を有する発泡ウレタン等の合成樹脂製である。このフォロープレート6は、図1に示すように、その外周部6aが内袋3を介して容器2の略短円筒形の側壁2bの内面に当接しており、フォロープレート6の外周部6aと内袋3の内面との当接部が密封されている。
【0052】
なお、流動体4が内袋3内に収容されているのは、流動体4が空気中の水分と接触して固化(硬化)することを防止するためである。そして、内袋3がずり落ちないようにするために、内袋3の上側開口端部を容器2の上縁部にバンド7で留めてある。
【0053】
次に、内袋吸込み防止装置12を、図1を参照して説明する。この内袋吸込み防止装置12は、容器2に取り付けられ、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8a、8bに存在する空気等の流体9を容器2外に排出して、この流体空間8a、8bを減圧したり消滅させるためのものであり、流体排出部22を備えている。ただし、図1は、容器2の側壁2bの内面に形成される流体空間8bが消滅している状態を示している。
【0054】
流体排出部22は、例えば真空ポンプであるが、この真空ポンプの代わりにエゼクタを使用することができる。エゼクタは、例えば加圧空気を使用して吸引力を発生させることができるものである。また、図1に示すように、流体排出部22に設けられている流体吸込み口22aは、流体排出管23を介して容器2の底部2cに形成されている流体排出口24と接続しており、この流体排出口24は、容器2の円形底部2cの略中央に形成されている。そして、流体排出管23の途中には、例えば逆止弁25が取り付けられている。また、流体排出部22によって吸引された流体空間8a、8bの空気等の流体9は、流体排出部22に設けられている流体流出口26から大気中に排出される。
【0055】
次に、図1に示すように、内袋吸込み防止装置12を備える汲出し装置11を使用して、容器2内に装着された内袋3に収容されている流動体4を汲み出す手順、及びその作用を説明する。例えばまず、図1の一点鎖線で示すように、フォロープレート6を容器2に装着された内袋3内に挿入して、フォロープレート6の下面を内袋3内に収容されている流動体4の表面に接触させる。そして、この状態で、フォロープレート6の中央開口部6bにポンプ装置5の流動体吸込み口部5cを装着する。しかる後に、ポンプ装置5及び流体排出部22を作動させる。
【0056】
これによって、流動体4をポンプ装置5の流動体吸込み口5aから吸い込んで流動体流出口5bから流出させることができる。そして、このように内袋3内の流動体4が汲み出されて内袋3内の流動体4が減少していくと、これに伴って、図1に示すように、フォロープレート6、及びこれに取り付けられているポンプ装置5が自重によって自動的に下降するので、内袋3内の流動体4を連続して所定の安定した流量で汲み出すことができる。
【0057】
また、ポンプ装置5が流動体4を汲み出して内袋3内の流動体4が減少していくと、それに伴って、フォロープレート6が内袋3の容積を減少させる下降方向に移動すると共に、内袋3内の圧力が低下し、これによって、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8a、8bに存在する例えば空気等の流体9が膨張しようとする。これに対して、流体排出部22は、起動しているので、その流体空間8aに存在する流体9を容器2外に排出してこの流体空間8aを減圧しており、これによって、流体9の膨張を抑制することができ、内袋3の底部がポンプ13の流動体吸込み口5aに向かって持ち上がることを防止できる。
【0058】
つまり、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8aに存在する流体9を、流体排出部22によって容器2外に排出して流体空間8aの圧力を低下させることができるので、ポンプ装置5が内袋3内の流動体4を吸い込んで汲み出しているときに、内袋3の底部がポンプ13の自吸力によって持ち上げられないようにすることができる。従って、内袋3がポンプ13の自吸力によって持ち上げられて、内袋3が流動体吸込み口5aに所定以上に接近してこの流動体吸込み口5aを覆うことを防止することができる。
【0059】
また、容器2の側壁2bの内面と、内袋3の外面との間に流体9が存在してそこに流体空間8b(図10参照)が形成されようとしている場合でも、この流体9を流体排出部22によって排出することによって、容器2の側壁2bの内面にある流体空間8bを消滅させることができる。これによって、フォロープレート6が、当該流体空間8bに邪魔されずに内袋3の容積を減少させる方向に、当該内袋3に対して相対的に移動することができる。
【0060】
これによって、容器2に装着された内袋3内に収容されている略全部の流動体4を汲み出すことができ、その結果、汲出し作業の効率を高めることができる。そして、流動体4を所定の安定した流量で汲み出すことができ、更に、流動体吸込み口5aが内袋3によって閉じられることがないので、ポンプ13にキャビテーションが発生することを防止できる。
【0061】
また、図1に示す内袋吸込み防止装置12によると、流体排出部22として真空ポンプ又はエゼクタを使用することによって、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8a、8bに存在する流体9を容器2外に確実に排出して流体空間8a、8bを減圧することができる。これによって、内袋3の底部がポンプ13の自吸力によって確実に持ち上がらないようにすることができるし、容器2の側壁2bの内側に内袋3の盛り上がりが生じないようにすることができる。
【0062】
更に、図1に示すように、流体排出管23の途中に逆止弁25を設けた構成としたので、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8a、8bを減圧しているとき、及び所定の圧力に減圧したときに、その減圧状態を確実に維持することができる。そして、流体空間8a、8bを所定の圧力に減圧したときに、流体排出部22を自動的に停止させるようにしてあるので、流体空間8a、8bの減圧状態(低圧状態)を維持するために、流体排出部22を作動させる時間を短縮することができ、流体排出部22を作動させるためのエネルギを低減することができる。
【0063】
そして、図1に示すように、流体排出口24を容器2の底部2cの略中央に設けることによって、容器2の底面2a、及び側壁2bの内面の略全域に亘って、流体空間8a、8bの流体9を流体排出口24から容器2外に排出し易くすることができる。これによって、容器2の底面2a、及び側壁2bの内面の略全域に亘って内袋3の盛り上がりを防止できるので、内袋3内の流動体4を略完全に所定の安定した流量で汲み出せるようにすることができる。
【0064】
また、この汲出し装置11では、図1に示すように、ポンプ13として、吸込み式の一軸偏心ねじポンプを使用しているので、容器2に圧力を掛けずに内袋3に収容されている流動体4を汲み出すことができて便利である。しかし、上記のように、汲出し作業中において内袋3内の圧力が低下するために、内袋3が持ち上がってポンプ装置5の流動体吸込み口5aが塞がれる恐れがあるが、内袋吸込み防止装置12を使用することによって、内袋3の持ち上がりを防止することができる。従って、吸込み式の一軸偏心ねじポンプを使用しても、内袋3内の流動体4を、所定の安定した流量で略完全に汲み出すことができる。
【0065】
次に、本発明に係る内袋吸込み防止装置を備える汲出し装置の第2実施形態を、図2を参照して説明する。この図2に示す第2実施形態の汲出し装置28は、図1に示す第1実施形態の汲出し装置11の容器2の底面2aと内袋3との間に閉鎖防止部29を設けたものである。これ以外は、図1に示す第1実施形態の汲出し装置11と同等の構成であり、同等の作用を奏するので、同一部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
【0066】
閉鎖防止部29は、図2に示すように、容器2の底面2aに形成されている流体排出口24が、内袋3によって閉じられることを防止するためのものであり、容器2の底面2aに載置されている。この閉鎖防止部29は、例えば簀の子状体又は連続気泡体によって形成され、この閉鎖防止部29を流体9が自由に通り抜けることができる構成となっている。そして、この閉鎖防止部29は、容器2の底面2aの略全体に行き亘る大きさ及び形状の略円板状に形成されている。
【0067】
この閉鎖防止部29が設けられている内袋吸込み防止装置30によると、流体排出部22が作動して流体空間8a、8b内の流体9を流体排出口24から容器2外に排出することによって、流体空間8aの容積が減少するときに、内袋3が流体排出口24を覆う下方向に移動するが、簀の子状体又は連続気泡体で形成された閉鎖防止部29によって、流体排出口24が内袋3によって閉じられることを防止することができる。これによって、流体空間8aが所定の設定圧力となるように確実に減圧することができる。
【0068】
そして、図2に示すように、閉鎖防止部29を容器2の底面2aの略全体に行き亘る大きさに形成したことによって、容器2の底面2a、及び側壁2bの内面の略全域に亘って流体空間8a、8bが形成され難くすることができる。これによって、閉鎖防止部29の上面、及び側壁2bの内面の略全域に亘って内袋3の盛り上がりを防止できるので、内袋3内の流動体4を略完全に所定の安定した流量で汲み出せるようにすることができる。
【0069】
次に、本発明に係る内袋吸込み防止装置を備える汲出し装置の第3実施形態を、図3を参照して説明する。この図3に示す第3実施形態の汲出し装置32と、図2に示す第2実施形態の汲出し装置28とが相違するところは、図2に示す第2実施形態の汲出し装置28では、閉鎖防止部29が、容器2の底面2aの略全体に行き亘る大きさ及び形状の略円板状体であるのに対して、図3に示す第3実施形態の汲出し装置32では、閉鎖防止部33が、容器2の底面2aの約1/2の直径の略円板状体であるところである。
【0070】
この閉鎖防止部33は、図3に示すように、容器2の底部2cの中央に形成した円形凹部34内に装着されており、この閉鎖防止部33の上面33aと容器2の底面2aとが同一平面内に位置するように構成されている。これ以外は、図2に示す第2実施形態の汲出し装置28と同等の構成であり、同等の作用を奏するので、同一部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
【0071】
この閉鎖防止部33が設けられている内袋吸込み防止装置35によると、図3に示すように、閉鎖防止部33を容器2の底面2aの約1/2の直径の略円板状体とし、容器2の底面2aの中央に配置したことによって、容器2の底面2aの略中央部分において、流体空間8aが形成され難くすることができる。つまり、内袋3は、容器2の底面2aの中央部分に盛り上がり現象が生じ易いので、流体空間8aの減圧によって、この中央部分での内袋3の盛り上がりを抑制することができる。
【0072】
そして、図3に示すように、閉鎖防止部33の上面33aと容器2の底面2aとが同一平面内に位置するように構成したので、フォロープレート6が下降位置に移動したときに、閉鎖防止部33の上面33a及び容器2の底面2aと、フォロープレート6の下面との間に隙間が形成されないようにすることができる。よって、内袋3内の流動体4を略完全に所定の安定した流量で汲み出せるようにすることができる。
【0073】
次に、本発明に係る内袋吸込み防止装置を備える汲出し装置の第4実施形態を、図4〜図6を参照して説明する。この図4に示す第4実施形態の汲出し装置37と、図1に示す第1実施形態の汲出し装置11とが相違するところは、図1に示す第1実施形態の汲出し装置11では、容器2の底面2aが円形の平坦面であるのに対して、図4に示す第4実施形態の汲出し装置37では、容器2の底面2aの全体に漏斗状の凹部38を形成したところである。このように、容器2の底面2aに漏斗状の凹部38を形成したのは、例えば流動体4が比較的高粘度であったり、ポンプ13による汲出し流量が比較的大きい場合は、内袋3の底部のうち、ポンプ13の吸込み口5aの下方に位置する部分39がその周りの部分よりも、吸込み口5aに近づく方向に持ち上げられることがあるが、このように、内袋3の底部が持ち上げられた状態で、内袋3の底部が略平坦な水平状態となるようにするためである。
【0074】
このように、容器2の底面2aには、図4に示すように、全体に亘って漏斗状の例えば略逆円錐形の凹部38を形成してあり、凹部38(底面2a)の中心の最下部40に流体排出口24が形成されている。そして、この凹部38の中心の最下部40は、ポンプ13の吸込み口5aの下方位置に形成されている。
【0075】
なお、この容器2は、第1実施形態のものと同等の例えばドラム缶やペール缶等であり、上側に開口し、底部2cを有する短円筒形状のものである。そして例えば容器2の内径は、200〜600mm、高さが300〜900mmである。また、この凹部38の中心の最下部40と、その外周部の最上部41との高さの差Hは、例えば約10mmである。この高さの差Hは、このポンプ13によって汲み出される流動体4の粘度等の性状、容器2の寸法、流体排出口24が形成されている位置等に応じて決定することができる。
【0076】
要は、内袋3内の流動体4をポンプ13で汲み出しているときに、内袋3の底部が略平坦な水平状態となるように、この高さの差H及び凹部38の形状を予め実験で求めればよい。これ以外は、図1に示す第1実施形態の汲出し装置11と同等の構成であり、同等の作用を奏するので、同等部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
【0077】
図4〜図6は、内袋吸込み防止装置42を備える汲出し装置37を使用して、容器2内に装着された内袋3に収容されている流動体4を汲み出す手順を示しており、図4は、フォロープレート6を内袋3内に収容されている流動体4の表面に接触させて、フォロープレート6の中央開口部6bにポンプ装置5の流動体吸込み口部5cを装着した状態を示している。
【0078】
このとき、内袋3の底部は、容器2の底面2aと略全体に亘って接触しており(図4では、説明を分かり易くするために、内袋3の底部と、容器2の底面2aとの間に隙間があるように描いている。)、従って、内袋3の底部は、容器2の底面2aと略同一の形状となっており、即ち、下方に向かって突出する略逆円錐形となっている。
【0079】
図5は、ポンプ装置5及び流体排出部22を作動させた状態を示し、流動体4をポンプ装置5の流動体吸込み口5aから吸い込んで流動体流出口5bから流出させている。なお、図5に示す状態では、内袋3内に多量の流動体4が収容されており、ポンプ13の吸込み口5aと内袋3の底部との間隔が比較的大きいので、内袋3の底部は、容器2の底面2aに接触したままとなっている。
【0080】
図6は、ポンプ装置5及び流体排出部22を作動させた状態を示し、内袋3内に収容されている流動体4が残り少なくなり、ポンプ13の吸込み口5aと内袋3の底部との間隔が比較的小さくなっている。この図6に示す状態では、内袋3の底部は、ポンプ13の吸込み口5aを塞ぐことなく略平坦な水平状態となっている。これによって、内袋3内の流動体4を、所定の安定した流量で略完全に汲み出すことができる。
【0081】
次に、この内袋吸込み防止装置42の作用を説明する。この内袋吸込み防止装置42によると、図6に示すように、流動体4が比較的高粘度であったり、ポンプ13による汲出し流量が比較的大きい場合であっても、内袋3に収容されている流動体4をポンプ13で吸い込んで汲み出しているときに、内袋3の底部が略平坦な水平状態となるようにすることができる。つまり、流動体4が比較的高粘度である場合等では、内袋3内の流動体4をポンプ13で吸い込んで汲み出しているときは、内袋3内の流動体4のうち、ポンプ13の吸込み口5aに近い部分の圧力がその周りの部分よりも低くなるので、流体排出部22を作動させていても、内袋3の底部のうち、ポンプ13の吸込み口5aの下方に位置する部分39がその周りの部分よりも、吸込み口5aに近づく方向に持ち上げられることがある。
【0082】
そこで、内袋3が装着される容器2の底面2aの全体を漏斗状の凹部38として形成し、これによって、容器2に内袋3を装着したときに、内袋3の底部が容器2の底面2aに沿うことによって下方に突出する形状となるようにすることができる。この状態で、内袋3に収容されている流動体4をポンプ13で吸い込んで汲み出すと、内袋3の底部が吸込み口5aに近づく方向に持ち上げられ、結局、略平坦な水平状態となるようにすることができ、これによって、内袋3の底部がポンプ13の吸込み口5aを塞がないようにすることができる。
【0083】
また、漏斗状の凹部38の最下部40が、ポンプ13の吸込み口5aの下方位置に形成されているが、その理由は、内袋3の底部のうち、ポンプ13の吸込み口5aの下方に位置する部分39がその周りの部分よりも、吸込み口5aに近づく方向に持ち上げられることがあるので、内袋3の底部のうち、ポンプ13の吸込み口5aの下方に位置する部分39を、他の部分よりもその吸込み口5aから引き離して配置するためである。このようにすることによって、内袋3に収容されている流動体4をポンプ13で吸い込んで汲み出すときに、内袋3の底部を精度良く略平坦な水平状態となるようにすることができ、内袋3の底部が吸込み口5aを塞がないようにすることができる。
【0084】
ただし、上記第1〜第4実施形態に係る汲出し装置11、28、32、37では、ポンプ装置5を作動させて内袋3内の流動体4を吸い込むと同時に、又は略同時に流体排出部22を作動させて、流体空間8a、8bの流体9を排出して減圧するようにしたが、これに代えて、ポンプ装置5が流動体4の吸込みを開始した時から、ポンプ装置5の流動体吸込み口5aが内袋3によって閉じられる手前の所定の作動開始時点(図7に示す時点)までは、流体排出部22が流体9の排出を行わないこととし、そして、図7に示す作動開始時点から、流体排出部22が流体9の排出を開始することとすることができる。
【0085】
なお、図7は、流体排出部22が停止した状態で、ポンプ装置5を作動させて内袋3内の流動体4を吸い込んでいるので、内袋3内の圧力が低下しており、内袋3の外面と容器2の底面2aとの間の流体空間8aの流体9が膨張している状態を示している。
【0086】
このようにすると、ポンプ装置5が流動体4の吸込みを開始した時から、ポンプ装置5の流動体吸込み口5aが内袋3によって所定の状態に覆われる手前の図7に示す所定の作動開始時点までは、流体排出部22による流体9の排出を行わないので、その作動開始時点までの時間において、流体排出部22の作動エネルギを削減することができる。そして、この時間内では、内袋3が流動体吸込み口5aに所定以上に接近して、流動体吸込み口5aを覆ったり閉じてはいないので、ポンプ装置5によって流動体4を所定流量で汲み出すことができる。
【0087】
そして、流体排出部22は、図7に示す所定の作動開始時点から流体9の排出を開始して流体空間8aを減圧することができるので、同図に示す内袋3の盛り上がりを小さくすることができる。これによって、内袋3がポンプ装置5の流動体吸込み口5aを所定以上に接近して覆ったり閉じないようにすることができ、ポンプ装置5が流動体4を所定流量で汲み出すことを維持させることができる。このようにして、内袋3内の流動体4を略完全に所定の安定した流量で汲み出せるようにすることができる。
【0088】
なお、図には示さないが、流体排出部22を起動及び停止させるための起動停止スイッチは、例えばポンプ装置5を昇降させるための昇降機構部に設けることができる。この起動停止スイッチは、ポンプ装置5が内袋3内の流動体4の吸込みを開始した時から、図7に示す所定の作動開始時点までは、流体排出部22を停止させて空気等の流体9の排出を行わないように設定されている。そして、起動停止スイッチは、図7に示す作動開始時点から流体排出部22を自動的に起動させて、空気等の流体9を流体空間8aから排出するように設定されている。このようにして起動した流体排出部22は、流体空間8aの圧力が所定の設定圧力に減圧されたときに、自動的に停止するように設定されている。
【0089】
また、図7に示す実施形態において、容器2の側壁2bの内面と、内袋3の外面との間に流体9が存在してそこに流体空間8b(図示せず)が形成される場合は、その流体空間8bがフォロープレート6の下降を阻害する手前、及び図7に示す所定の作動開始時点のうち、いずれか早く到達する時点で流体排出部22を自動的に起動させるようにしてもよい。
【0090】
そして、上記第1〜第4実施形態では、図1等に示すように、流体排出管23に逆止弁25を設けたが、これに代えて、通常の開閉弁を設けてもよい。この開閉弁は、流体空間8a、8bの圧力が所定の設定圧力となったときに、自動的に閉じるように設定されている。
【0091】
また、第2実施形態では、図2に示すように、流体排出口24を容器2の底部2cの中央に設けたが、これに代えて、図2の一点鎖線で示すように、流体排出口24を、容器2の側壁2bであって閉鎖防止部29の外周部と対向する部分に設けてもよい。
【0092】
更に、上記第1〜第4実施形態のフォロープレート6は、例えば発泡合成樹脂等の独立気泡体で形成したが、これに代えて、独立気泡を含まない例えば柔軟な合成樹脂で形成してもよい。
【0093】
そして、上記第1〜第4実施形態では、図1等に示すように、ポンプとして一軸偏心ねじポンプを使用したが、これ以外の吸込み式ポンプを使用してもよい。
【0094】
また、上記第1〜第4実施形態では、図1等に示すように、内袋3内の流動体4が汲み出されて内袋3内の流動体4が減少していくと、これに伴って、フォロープレート6、及びこれに取り付けられているポンプ装置5が自重によって自動的に下降する構成としたが、これに代えて、フォロープレート6及びこれが取り付けられているポンプ装置5が架台等に固定され、内袋3内の流動体4の減少に伴って、内袋3が装着されている容器2が自動的に上昇する構成としてもよい。
【0095】
更に、上記第4実施形態では、図4に示すように、容器2の底面2aの全体に亘って漏斗状の凹部38を形成したが、これに代えて、図には示さないが、容器2の底面2aの流体排出口24が設けられている中央部に、所定の大きさの漏斗状の凹部を形成してもよい。この凹部の中心の最下部と、その外周部の最上部との高さの差Hは、例えば約10mmである。そして、この凹部は、例えば略逆円錐形であり、その半径は、容器2の底面2aの半径の約1/2である。
【0096】
そして、上記第1〜第4実施形態では、内袋吸込み防止装置12、30、35、42を、図1等に示すように、フォロープレート6を使用する汲出し装置11、28、32、37に適用した例を示したが、これに代えて、例えば図8に示すように、内袋吸込み防止装置12(内袋吸込み防止装置30、35、42は図示せず)を、フォロープレート6を使用しない汲出し装置44に適用することができる。
【0097】
この図8に示す汲出し装置44は、ポンプ13の中心軸を鉛直方向に向けた状態で、ポンプ装置5の吸込み口部5cを内袋3の底部(容器2の底部2c)と間隔を隔てて配置してある。そして、この吸込み口部5cを内袋3の底部(容器2の底部2c)と間隔を隔てて配置できるように、吸込み口部5cには、複数本の高さボルト45、・・・が突設され、この高さボルト45、・・・の先端部(下端部)が内袋3の底部(容器2の底部2c)と当接している。図8では、内袋3と容器2の底部2cとが明確に分かるように、両者の間に隙間(流体空間8a)を形成して描いてある。この状態で、このポンプ装置5を使用して流動体4の汲出し作業を行うことができる。また、ポンプ装置5の吸込み口5aは、容器2の底部2cに形成されている流体排出口24と向かい合うように位置決めして配置されている。これ以外は、上記各実施形態のものと同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0098】
図8に示す汲出し装置44は、例えば容器2に装着された内袋3内に収容されているコーキング剤等の流動体4を、ポンプ13で吸い込んで汲み出すことができる。しかし、ポンプ13の流動体吸込み口5aが内袋3の底部に接近しているので、ポンプ13の吸込み力が内袋3の底部を吸引して持ち上げようとする力として働くので、容器2の内面と内袋3の外面との間の流体空間8aに存在する空気等の流体9が膨張しようとする。この際、内袋吸込み防止装置12の流体排出部22は、その流体空間8aに存在する流体9を容器2外に排出して流体空間8aを減圧することができるので、流体9の膨張を抑制することができ、内袋3の底部がポンプ13の流動体吸込み口5aを所定以上に接近して覆ったり塞ぐことを防止できる。なお、図8の二点鎖線46は、内袋吸込み防止装置12を使用しない場合に、ポンプ13の吸込み力によって内袋3の底部が持ち上げられた状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明に係る内袋吸込み防止装置、及び汲出し装置は、容器に装着された内袋内に収容されている流動体を、略完全に所定の安定した流量で汲み出すことができるようにすると共に、汲出し作業の効率を高めることができる優れた効果を有し、このような内袋吸込み防止装置、及び汲出し装置に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の第1実施形態に係る汲出し装置を示す縦断面図である。
【図2】同発明の第2実施形態に係る汲出し装置を示す縦断面図である。
【図3】同発明の第3実施形態に係る汲出し装置を示す縦断面図である。
【図4】同発明の第4実施形態に係る汲出し装置であり流動体を汲み出す前の状態を示す縦断面図である。
【図5】同第4実施形態に係る汲出し装置であり流動体を汲み出し始めの状態を示す縦断面図である。
【図6】同第4実施形態に係る汲出し装置であり流動体の汲み出しを終える手前の状態を示す縦断面図である。
【図7】同発明の他の実施形態に係る汲出し装置を示す縦断面図である。
【図8】同発明の更に他の実施形態に係る汲出し装置を示す縦断面図である。
【図9】従来の汲出し装置の一例を示す縦断面図である。
【図10】図9に示す従来の汲出し装置を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0101】
2 容器
2a 底面
2b 側壁
2c 底部
3 内袋
4 流動体
5 ポンプ装置
5a 流動体吸込み口
5b 流動体流出口
5c 吸込み口部
6 フォロープレート
6a 外周部
6b 中央開口部
7 バンド
8a、8b 流体空間
9 流体(空気)
11、28、32、37、44 汲出し装置
12、30、35、42 内袋吸込み防止装置
13 ポンプ
14、15 ポンプケーシング
16 ブラケット
17 減速機
17a 回転軸
18 ロータ
19 ステータ
19a 内孔
20 コネクティングロッド
21 ユニバーサルジョイント
22 流体排出部
22a 流体吸込み口
23 流体排出管
24 流体排出口
25 逆止弁
26 流体流出口
29、33 閉鎖防止部
33a 閉鎖防止部の上面
34、38 凹部
39 内袋底部の中央部分
40 容器底部に形成された凹部の最下部
41 容器底部に形成された凹部の最上部
45 高さボルト
46 内袋底部の持ち上がりの説明のための二点鎖線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に内袋が装着され、この内袋内にフォロープレートが配置され、このフォロープレートが前記内袋の容積を増減する方向に、当該内袋に対して相対的に移動自在であり、前記内袋と前記フォロープレートとの間に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置に使用される内袋吸込み防止装置であって、
前記容器に取り付けられ、前記容器の内面と前記内袋の外面との間の流体空間に存在する流体を前記容器外に排出して減圧するための流体排出部を備えることを特徴とする内袋吸込み防止装置。
【請求項2】
前記流体排出部が、真空ポンプ又はエゼクタを備えることを特徴とする請求項1記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項3】
前記流体排出部に設けられている流体吸込み口と、前記流体空間とを連通する前記流体の流路の途中にバルブを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項4】
前記容器に設けられ前記流体空間に存在する流体を前記容器外に排出するための流体排出口と、この流体排出口を覆うように前記容器の内側に設けられ前記流体排出口が前記内袋によって閉じられることを防止するための閉鎖防止部とを更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項5】
前記流体排出口が前記容器の底面の略中央に設けられ、
前記閉鎖防止部は、簀の子状体又は連続気泡体であり、前記容器の底面の略全体に行き亘る大きさであることを特徴とする請求項4記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項6】
前記流体排出部は、前記ポンプが前記流動体の吸込みを開始した時から、前記ポンプの流動体吸込み口が前記内袋によって閉じられる手前の所定の作動開始時点までは前記流体の排出を行わず、前記作動開始時点から前記流体の排出を開始することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項7】
前記容器の底面の全体又は一部に形成され、前記フォロープレートに装着される前記ポンプの吸込み口の下方位置に設けられた漏斗状の凹部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項8】
前記漏斗状の凹部の最下部が、前記ポンプの吸込み口の下方位置に形成されていることを特徴とする請求項7記載の内袋吸込み防止装置。
【請求項9】
容器内に内袋が装着され、この内袋内にフォロープレートが配置され、このフォロープレートが前記内袋の容積を増減する方向に、当該内袋に対して相対的に移動自在であり、前記内袋と前記フォロープレートとの間に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置において、
請求項1乃至8のいずれかに記載の内袋吸込み防止装置を備えることを特徴とする汲出し装置。
【請求項10】
容器内に内袋が装着され、この内袋内に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置に使用される内袋吸込み防止装置であって、
前記容器に取り付けられ、前記容器の内面と前記内袋の外面との間の流体空間に存在する流体を前記容器外に排出して減圧するための流体排出部を備えることを特徴とする内袋吸込み防止装置。
【請求項11】
容器内に内袋が装着され、この内袋内に収容されている流動体をポンプで吸い込んで汲み出す汲出し装置において、
請求項10記載の内袋吸込み防止装置を備えることを特徴とする汲出し装置。
【請求項12】
前記ポンプは、一軸偏心ねじポンプであることを特徴とする請求項9又は11記載の汲出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−47153(P2009−47153A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287450(P2007−287450)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】