説明

内視鏡型の操縦可能な構造体

非破壊検査用の可撓かつ操縦可能な構造体(20、32)であって、細長い本体(26)と、細長い本体(26)の少なくとも一部分の曲率を変化させることができる少なくとも1つのアクチュエータ(28、34)とを備えており、アクチュエータ(28、34)が、細長い本体(26)に組み合わせられた支持体(22)によって保持され、支持体(22)は、細長い本体(26)から離れており、または離すことができる遠位部(24、36)を有しており、遠位部(24、36)が、引っ張り線(30)によって細長い本体(26)の一部分に接続されている構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタービンエンジン等の機械的なシステムの内側を、特に渦電流式または超音波式のセンサによって検査するための可撓かつ操縦可能な構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡または非破壊検査プローブの支持体などの特定の現在の可撓かつ操縦可能な構造体は、剛性のあるまたは弾性変形可能な長い管の形態であり、そのような管が、特定の位置決め角度を選択するため、および内視鏡またはプローブ支持体の前進をより容易にするために、長手軸に対して操縦可能な端部を有している。
【0003】
内視鏡の特定の領域を適切な様相で湾曲させるために、引っ張り線または実際には形状記憶材料で作られた線などの機械的なアクチュエータを、構造体に沿って配置することがすでに提案されている。これらのアクチュエータが、引っ張りの印加または温度上昇の影響によって短くなり、アクチュエータの位置する領域において内視鏡の曲率の変化を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この形式の装置は、主として幾何学的に複雑な空間または限られた空間における可動性および操縦性に欠けるがゆえに、限界を抱えている。さらに、内視鏡の端部を湾曲させる能力に関しても欠点が存在する。
【0005】
このような困難を克服するために、本出願の出願人は、仏国特許出願第07/06726号明細書において、装置が曲率の変化を有する外形に達するよう、剛性の高い領域において曲がりの量が小さくなり、剛性の低い領域において曲がりの量が大きくなるように、装置の細長い本体のうちの剛性変化を有する部分にアクチュエータを取り付けることを提案している。
【0006】
しかしながら、このような種類の装置または上述の他の種類の装置において得られる曲率は、依然として限られており、それらの使用における選択の自由を制限している。
【0007】
さらに、タービンエンジンを検査する特定の状況においては、非破壊検査を実行するため、および/またはエンジンの検査を続けながら全体としての装置への重力の影響を抑えるために、エンジンの静止部分への装置の安定かつ確実な取り付けを達成することが、望ましいかもしれない。
【0008】
本発明の特定の目的は、これらの問題に対する技術的解決策であって、安価かつ効果的であり、先行技術の欠点の回避を可能にする技術的解決策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、細長い本体と、この細長い本体の少なくとも一部分の曲率を変化させることができる少なくとも1つのアクチュエータと、を備える非破壊検査用の可撓かつ操縦可能な構造体であって、アクチュエータが、細長い本体に組み合わせられた支持体によって保持され、この支持体は、細長い本体から離れており、または離すことができる遠位部を有しており、この遠位部が、引っ張り線によって細長い本体の一部分に接続されていることを特徴とする構造体を提供する。
【0010】
先行技術と異なり、本発明は、もはやアクチュエータを細長い本体に沿って配置することを提案せず、むしろアクチュエータを細長い本体から離れた支持体上に組み付けることを提案する。
【0011】
この構成においては、支持体が細長い本体の曲げをより容易にするレバーアームを形成し、曲げが、細長い本体に沿ってではなく、引っ張り線に沿って細長い本体に対して横方向に作用する力によって実行されることで、細長い本体の曲げの量を大きくすることが可能になる。
【0012】
伝達比、すなわち曲げの角度とアクチュエータの長さの減少との間の比が、先行技術における比よりも小さい。これは、細長い本体の曲がった部分について、はるかに正確な位置決めの実現を可能にする。
【0013】
アクチュエータの動作からもたらされる力が、細長い本体により良好に伝達される。この良好な力の伝達は、細長い本体の一部分を曲げて検査対象の三次元構造体の静止部位に押し付けることによって、可撓な構造体の安定な取り付けの達成を可能にする。したがって、細長い本体の遠位端に配置された非破壊検査センサの位置が、非破壊検査の作業の実行時に静止位置にあることを保証することができる。
【0014】
したがって、航空機産業において、本発明は、タービンエンジンについて、これまではエンジンを分解しなければアクセスすることができなかった領域を検査できるようにし、停止時間およびコストの削減に貢献する。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、アクチュエータが形状記憶材料で作られる。
【0016】
変形形態においては、アクチュエータが、機械式であってもよく、細長い本体の引っ張り線に直接接続されたケーブルを備えることができ、このケーブルを、支持体の遠位部に沿って延ばすことができる。
【0017】
支持体の遠位部は、剛体であってもよく、そのような状況のもとでは、アクチュエータが上述のようなケーブルであってもよい。
【0018】
変形形態においては、支持体の遠位部が変形可能であってもよく、そのような状況のもとでは、アクチュエータが、収縮時に支持体の遠位部を変形させて細長い本体に接続された線に引っ張りを生じさせる形状記憶材料を備えることができる。
【0019】
本発明の一実施形態においては、細長い本体の引っ張り線が、枢支点を形成すべく検査対象の構造体の静止要素に点接触または準点接触にて押し付けられる領域において、細長い本体の遠位端から離れた位置で細長い本体に接続される。
【0020】
枢支点は、細長い本体の遠位端と引っ張り線の細長い本体への接続点との間に位置する。結果として、細長い本体の遠位端に角度的走査を実行させることが可能であり、検査対象の構造体の内側の特定の角度範囲を連続的なやり方で観察することが望まれる場合に有用となりうる。
【0021】
変形形態においては、引っ張り線が、細長い本体の遠位端または前記遠位端の近傍に接続される。
【0022】
好都合には、細長い本体の遠位端に取り付けられた非破壊検査手段が、例えば渦電流プローブまたは超音波プローブによって構成される。
【0023】
本発明の現実的な実施形態においては、引っ張り線が金属線である。
【0024】
細長い本体は、細長い本体のさらなる曲がりをもたらすために、機械式または形状記憶材料式の少なくとも1つのアクチュエータが取り付けられた少なくとも1つの部位をさらに含むことができる。
【0025】
あくまでも本発明を限定するものではない例として添付の図面を参照して行なわれる以下の詳細な説明を検討することによって、本発明をよりよく理解することができ、本発明の他の詳細、利点、および特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】先行技術の可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図2】先行技術の可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図3】本発明の可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図4】湾曲した状態にある図3の可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図5】本発明の別の実施形態における可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図6】湾曲した状態にある図5の可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図7】本発明の可撓かつ操縦可能な構造体の取り付け位置における概略の軸方向断面図である。
【図8】検査すべき静止構造体に押し付けられた本発明の可撓かつ操縦可能な構造体の概略の軸方向断面図である。
【図9】図8の可撓かつ操縦可能な構造体の運動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
最初に、先行技術の非破壊検査のための可撓かつ操縦可能な構造体10を示している図1を参照すると、構造体が、形状記憶材料からなるアクチュエータ14が取り付けられた細長い本体12を備えており、アクチュエータ14は、細長い本体12に沿って細長い本体12の内側に配置されている。例として、アクチュエータ14は、電源手段に接続された線の形態であり、電源手段によって線をジュール効果によって加熱することができる。線14の加熱が、線14の収縮を生じさせ、細長い本体12の曲がりを生じさせる。
【0028】
図2は、アクチュエータが細長い本体12に沿って細長い本体12の遠位端まで延びている金属線16である点を除き、図1の操縦可能かつ可撓な構造体と同様の操縦可能かつ可撓な構造体15を示している。線16は、細長い本体12に固定された複数の中空ガイド18によって細長い本体12に沿って保持されている。この形式の制御構造において、線16の近位端に加えられる引っ張り(矢印A)により、細長い本体12の遠位端が曲がる。
【0029】
これらの構造体10および15は、細長い本体12の曲がりの部分を大きな角度に曲げることまたは正確に位置決めすることを、可能にしていない。さらに、詳しく上述した理由により、検査用の構造体を近傍の検査対象の機械的な構造体の静止部分に安定かつ固定的な様相にて取り付けることを、可能にしていない。
【0030】
本発明は、可撓かつ操縦可能な構造体20に支持体22を組み合わせることを提案し、この支持体22が、細長い本体26から離れた遠位部または細長い本体26から離すことができる遠位部24を有しており、この遠位部24がアクチュエータ28を保持しており、この遠位部24が引っ張り線30によって細長い本体26に接続される。
【0031】
図3および図4に示されている本発明の実施形態においては、遠位部24が剛体である。アクチュエータ28は、支持体22に固定された中空ガイド18において支持体22に沿って延びるケーブルである。支持体22の遠位部24の端部において、アクチュエータ28は、細長い本体26の遠位端に接続された引っ張り線30に直接接続されている。
【0032】
ケーブル28の近位端に加えられる引っ張り(矢印B)によって、細長い本体26の遠位端が曲がるが、この動作の際に支持体22は静止したままである(図4)。
【0033】
図5および図6に示されている本発明の別の実施形態においては、可撓かつ操縦可能な構造体32が、変形可能な支持体22の遠位部36に組み込まれた形状記憶材料からなる線の形態のアクチュエータ34を備えている。遠位部36が、引っ張り線30によって細長い本体26に接続されている。
【0034】
形状記憶材料からなる線を加熱することで、線が収縮し、結果として支持体22の遠位部36が曲がり、したがって細長い本体26が曲がる(図6)。
【0035】
上述の2つの実施形態において、細長い本体26を弾性変形可能な材料で製作することで、引っ張りケーブル28が緩められ、または形状記憶材料からなる線34の加熱が止められたときに、休止位置(図3および図5)への復帰を可能にすることができる。
【0036】
支持体22の遠位部24、36が、細長い本体26を曲げるためのレバーアームを構成し、先行技術よりも小さい伝達比(すなわち、曲げの角度をアクチュエータの長さの減少で割ったもの)ゆえに、細長い本体26の曲がった部分を正確に位置させることを可能にする。したがって、細長い本体26の所与の曲げ角度について、アクチュエータ28、34の長さを先行技術よりも大きく減少させる必要がある。
【0037】
図7は、互いに離れて位置する2つの壁40および42を有している検査対象の構造体38の軸方向断面図であり、壁40および42が、本発明の可撓かつ操縦可能な構造体を通すための2つの開口44および46を備えている。
【0038】
この図に示されている構成においては、引っ張り線30が、細長い本体26の遠位端に接続されている。細長い本体26が、2つの開口44および46を通って挿入され、支持体22が、遠位部48が2つの壁40および42の間に位置するように第1の開口に挿入されている。遠位部48のアクチュエータを制御することによって、細長い本体26が曲げられ、細長い本体26の遠位端50が第2の開口の縁に当接させられる。さらに、引っ張り線30のうちの細長い本体のすぐ近くの部位が、細長い本体26の曲げの際に第2の開口46の内表面に押し付けられる。
【0039】
このようにして、細長い本体26が、第2の壁42に対して静止かつ安定な様相に配置される。この配置の安定性は、離れて位置する遠位部48から細長い本体26に横方向に加えられる圧力の増大によって高められる。引っ張り線30によるアクチュエータからの力のこの伝達は、曲がりが少なく、好ましくは30°未満であるときにきわめて大きい。
【0040】
図8が、図7の構造体と同様の検査対象の構造体38を示している。引っ張り線30が、細長い本体26の遠位端54から距離の位置で細長い本体26に接続されている。細長い本体26が、曲がりの際に端部52が点接触またはほぼ点接触にて第2の開口の縁に押し付けられるような様相で、第2の開口46の内側に挿入されている(図8)。
【0041】
この構成は、細長い本体26の遠位端54と引っ張り線30の細長い本体26への接続点56との間の枢支点53の確立を可能にする。
【0042】
細長い本体26が弾性変形可能である場合、支持体22の遠位端48に保持されたアクチュエータの繰り返しの動作によって、細長い本体26の遠位端が角度的走査を実行することができる。
【0043】
角度的走査を実行可能にするアクチュエータは、ケーブルなどの機械式のアクチュエータが使用される場合に、細長い本体の最初の曲げ(図8)に使用されるアクチュエータと同じアクチュエータであってもよいため、引っ張りを加え続けることで細長い本体26の遠位端の枢動が生じる。最初の曲げ(図8)が形状記憶材料からなる線を使用して実行される場合、やはり形状記憶材料で作られる第2の線を支持体22の遠位部48に組み込むことができ、この第2の線の繰り返しの動作によって、細長い本体26の遠位端54に角度的走査を実行させることができる。
【0044】
可撓かつ操縦可能な構造体20、32は、図7および図8に示した種類の機械的な構造体に、最初に湾曲していない細長い本体26を第1および第2の開口44および46を通って挿入することによって係合させられる。支持体22も、枢動およびその後の平行移動によって第1の開口44を通って挿入され、次いで引っ張り線30に張力が加えられることで、構造体20、32が図3および図5に示されるとおりの準備完了位置となる。
【0045】
非破壊検査手段(図示せず)を、細長い本体26の遠位端に取り付けることができる。例として、そのような手段は、渦電流プローブまたは超音波プローブであってもよい。
【0046】
本発明の他の変種においては、可撓な構造体20、32が、細長い本体26に組み込まれた少なくとも1つの機械式のアクチュエータ16または形状記憶材料アクチュエータ14を備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い本体(26)と、細長い本体(26)の少なくとも一部分の曲率を変化させることができる少なくとも1つのアクチュエータ(28、34)とを備えている、非破壊検査用の可撓かつ操縦可能な構造体(20、32)であって、
アクチュエータ(28、34)が、細長い本体(26)に組み合わせられた支持体(22)によって保持され、支持体(22)は、細長い本体(26)から離れており、または離すことができる遠位部(24、36)を有しており、遠位部(24、36)が、引っ張り線(30)によって細長い本体(26)の一部分に接続されていることを特徴とする、構造体。
【請求項2】
アクチュエータ(34)が、形状記憶材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
アクチュエータ(28)が、機械式であることを特徴とする、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
アクチュエータが、細長い本体(26)の引っ張り線(30)に直接接続されたケーブル(28)を備えており、ケーブル(28)が、支持体(22)の遠位部(24)に沿って延びていることを特徴とする、請求項1に記載の構造体。
【請求項5】
遠位部(24、36)が、剛性のあるまたは変形可能であることを特徴とする、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
細長い本体(26)の引っ張り線(30)が、細長い本体(26)の遠位端から距離dの位置で細長い本体(26)に接続されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項7】
引っ張り線(30)が、細長い本体(26)の遠位端または前記遠位端(26)の近傍に接続されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項8】
細長い本体(26)の遠位端に、例えば渦電流または超音波プローブなどの非破壊検査手段が備えられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項9】
引っ張り線(30)が、金属線であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項10】
細長い本体(26)が、機械式または形状記憶材料式の少なくとも1つのアクチュエータ(16または14)が取り付けられた少なくとも一部分を備えていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−517522(P2013−517522A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548467(P2012−548467)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050054
【国際公開番号】WO2011/086324
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】