内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法
【課題】体内から固定具を回収する際に、固定具を切断、破壊せずに容易に回収可能とした内視鏡用生体壁固定具とその操作方法を提供する。
【解決手段】生体壁固定具1は、十二指腸壁と総胆管壁との接合部間の通孔を通して総胆管の内部空間に挿入される第1バー3と、通孔に挿入されずに十二指腸の内部空間側に配置される第2バー4と、先端部が第1バー3に固定され、基端部側が第2バー4を通して第1バー3とは反対側に延出される第1紐状部材5と、先端部が第1バー3の端部に固定され、基端部側が第2バー4を通して第1バー3とは反対側に延出される第2紐状部材6と、第1紐状部材5に摺動可能に挿通された弾性体のストッパ7と、第1紐状部材5の引っ張り状態を解除するスペーサ部材8と、を具備し、スペーサ部材8の作動時に、第2紐状部材6を引っ張ることにより、通孔を通して第1バー3を十二指腸の内部空間側に引き抜き生体壁を固定する。
【解決手段】生体壁固定具1は、十二指腸壁と総胆管壁との接合部間の通孔を通して総胆管の内部空間に挿入される第1バー3と、通孔に挿入されずに十二指腸の内部空間側に配置される第2バー4と、先端部が第1バー3に固定され、基端部側が第2バー4を通して第1バー3とは反対側に延出される第1紐状部材5と、先端部が第1バー3の端部に固定され、基端部側が第2バー4を通して第1バー3とは反対側に延出される第2紐状部材6と、第1紐状部材5に摺動可能に挿通された弾性体のストッパ7と、第1紐状部材5の引っ張り状態を解除するスペーサ部材8と、を具備し、スペーサ部材8の作動時に、第2紐状部材6を引っ張ることにより、通孔を通して第1バー3を十二指腸の内部空間側に引き抜き生体壁を固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経内視鏡的に2つの臓器の壁と壁を密着した状態で固定する内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の胆道の一部が病変によって閉塞してしまう閉塞性黄疸に対しては、体表に傷をつける経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD:percutaneous transhepatic cholangio drainage)が一般的に行われていた。近年、内視鏡技術の進歩により内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(ERBD:endoscopic retrograde biliary drainage)や、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD:endoscopic naso biliary drainage)が行われるようになっている。このうち、ERBDは、経口的に内視鏡を体内に挿入したのち、内視鏡のチャンネルを介して、胆道にチューブ状のステントチューブを留置する手技である。このチューブを胆道に留置することにより、閉塞した胆管を再び開通させ、胆汁の流出を可能にするものである。
【0003】
このようなステントチューブを留置する手技では、経時的にステントチューブの内側に胆汁の成分が付着する。そして、ステントチューブがふさがった場合、内視鏡術によってふさがったステントチューブを抜去し、再び新しいステントチューブを再挿入する必要がある。
【0004】
また、ステントチューブを使用せずに内視鏡下で減黄術として総胆管と十二指腸を吻合することが特許文献1に示されている。ここでは、内視鏡用体壁固定具を使用して経内視鏡的に2つの臓器の壁と壁を密着した状態で固定する。続いて、十二指腸と総胆管が最も接近している部位に内視鏡先端を十二指腸内に位置決めする。その後、内視鏡チャンネルを介して電気メス等の切除具を挿入し、十二指腸と総胆管まで穿孔する。ここで、十二指腸と総胆管との間に自然瘻孔(natural stoma)を形成するために、一定期間、固定具によって総胆管と十二指腸を相互に固定する必要がある。そして、瘻孔が完成し、固定具が不要になった場合、異物である固定具は回収できることが望ましい。
【特許文献1】特開2001−46514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、体内から固定具を回収する際には、固定具に取付けられている一部のひもを切断する必要があった。そのため、ひも切断用の鉗子と回収用の鉗子が必要となるなど、手間と費用がかかった。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、体内から固定具を回収する際に、固定具を切断したり破壊したりせずに容易に回収可能とした内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様における内視鏡用体壁固定具は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、前記内視鏡用生体壁固定具は、軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、を具備し、前記引っ張り状態解除手段の作動時に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜き可能である。
【0008】
好ましくは、前記第1固定部材は、直線状の棒材によって形成され、
前記棒材は、前記直線の長手方向に沿って中央位置に前記棒材の長手方向と直交する方向に向けて穿設された孔を有し、
前記第1紐状部材は、1本の第1紐体によって形成され、
前記第1紐体が前記孔内に移動自在に挿通された状態で、前記孔の両側にそれぞれ延出される部分を前記第1紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記第1紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する。
【0009】
好ましくは、前記第1固定部材は、直線状の管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、1本の第2紐体によって形成され、
前記第2紐体が前記管体の管腔内に移動自在に挿通された状態で、前記管体の管腔外に延出される前記第2紐体の終端部分に前記管体の内径よりも大径な抜け止め部材が固定され、
前記第2紐体を前記第2紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記抜け止め部材を前記第1固定部材に突き当てて前記第2紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する。
【0010】
好ましくは、前記引っ張り状態解除手段は、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される管状のスペーサ部材を有し、前記スペーサ部材は、前記第1紐状部材から離脱可能である。
【0011】
好ましくは、前記スペーサ部材は、前記管壁に前記管の軸線方向に沿って延設されたスリット、このスリットは前記第1紐状部材の径よりも幅が狭い,と、前記スリットと反対側の前記管壁に形成されたタグと、を有し、前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる。
【0012】
好ましくは、前記スペーサ部材は、前記スペーサ部材の本体とは別体に形成されたタグ、このタグは、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される,を有し、前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる。
【0013】
好ましくは、前記スペーサ部材は、少なくとも前記第1固定部材の軸方向の長さの1/2以上の長さである。
【0014】
好ましくは、前記スペーサ部材は、先端部に前記スリットの口元に前記第1紐状部材をガイドするガイド部を有する。
【0015】
好ましくは、前記スペーサ部材は、少なくとも前記管の軸線方向の一部に前記スリットがないリング状部分を有し、前記リング状部分以外の部分が前記スリットを通して前記第1紐状部材から離脱可能である。
【0016】
好ましくは、前記引っ張り状態解除手段は、前記第1固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第1紐状部材の前記先端部が固定された第1紐状部材固定部と、前記第固定部材の端部に配置され、前記第2紐状部材の前記先端部が固定された第2紐状部材固定部と、前記第2固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第2固定部材の軸線方向と直交する方向に延設された紐状部材挿通孔と、を具備し、前記第1紐状部材および前記第2紐状部材は、前記紐状部材挿通孔を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されている。
【0017】
好ましくは、前記第2固定部材は、管体によって形成され、前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の前記紐状部材挿通孔から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている。
【0018】
好ましくは、前記第2固定部材は、管体によって形成され、前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の他端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている。
【0019】
本発明の他の態様における内視鏡用体壁固定具は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、前記留置装置は、前記内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端部に配置されたハンドル部とを具備し、前記挿入部は、外チューブと、前記外チューブ内に前記外チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた内チューブと、前記内チューブ内に前記内チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた操作ワイヤ、前記操作ワイヤは先端部にフック部を有する,とを備え、前記ハンドル部は、前記外チューブに対して前記内チューブを前記外チューブの軸線方向にスライドさせる内チューブ操作部と、前記内チューブに対して前記操作ワイヤを前記内チューブの軸線方向にスライドさせるワイヤ操作部と、を有し、前記内視鏡用生体壁固定具は、軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、を具備し、前記フック部に前記第1紐状部材の基端部が係脱可能に係止された状態で、前記内視鏡用生体壁固定具が前記留置装置の前記外チューブの内部に引き込まれる状態に組み込まれ、前記留置装置の前記内チューブの押し出し操作にともない前記内視鏡用生体壁固定具が前記外チューブの外側に押し出し操作されて、前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される。
【0020】
本発明の他の態様における内視鏡用体壁固定具の操作方法は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、管状のスペーサ部材を前記第1紐状部材に摺動可能に挿通させた状態で、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、前記スペーサ部材を前記第1紐状部材から離脱させることにより、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除して前記第2固定部材と前記ストッパとの間に前記第1紐状部材を移動させるスペースを形成する工程と、前記スペーサ部材の離脱後に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、を具備する。
【0021】
本発明の他の態様における内視鏡用体壁固定具の操作方法は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、体内から固定具を回収する際に、固定具を切断したり破壊したりせずに容易に回収可能とした内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図13を参照して説明する。図1は本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1の全体の概略構成を示す。ここでは、例えば十二指腸(第1臓器)H1(図9参照)と総胆管(第2臓器)H2(図9参照)との間を連絡する瘻孔を内視鏡的に形成させる手技を実現する際に、十二指腸壁(第1生体壁)H1a(図9参照)と総胆管壁(第2生体壁)H2a(図9参照)を密着固定させるために使用する内視鏡用生体壁固定具1を例として説明する。
【0024】
内視鏡用生体壁固定具1は、図示しない内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置2(図7参照)によって体内の2つの臓器、例えば内視鏡が挿入される側の第1臓器である十二指腸H1(図9参照)と、内視鏡が挿入されない側の第2臓器である総胆管H2(図9参照)とを有する,の前記十二指腸H1の十二指腸壁H1aと前記総胆管H2の総胆管壁H2aとを密着させて固定する状態で留置される。
【0025】
図1において、内視鏡用生体壁固定具1は、軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー3と、第2の固定部材である第2バー4と、前記2つの固定部材3,4と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材5と、第2紐状部材6と、弾性体のストッパ7と、前記第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する後述する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材8と、を具備する。これら内視鏡用生体壁固定具1の各構成要素は、いずれも生体に対し影響を及ぼしにくい安全な材料で形成されている。
【0026】
第1バー3は、図9に示すように前記十二指腸壁H1aと前記総胆管壁H2aとの接合部間に形成された通孔H3を通して前記総胆管H2の内部空間に挿入される。第2バー4は、前記通孔H3に挿入されずに前記十二指腸H1の内部空間側に配置される。さらに、第1バー3,第2バー4は、例えばステンレス材料、または、例えばポリカーボネイト、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、などの硬質樹脂材料の棒状部材で形成されている。
【0027】
また、第2バー4は、図2〜4に示すようにこの第2バー4の軸線方向の中央位置に紐状部材の挿通孔4aが設けられている。この挿通孔4aは、第2バー4の軸線方向と直交する方向に延設されている。
【0028】
第1紐状部材5および第2紐状部材6は、先端部および基端部を有し、例えばナイロンなどの丈夫で伸びが少ない柔軟な合成樹脂製の紐状の部材である。第1紐状部材5の先端部は、第1バー3の軸線方向のほぼ中央位置に固定されている。さらに、第1紐状部材5の基端部側は、前記第2バー4の挿通孔4aを通して前記第1バー3とは反対側に延出されている。第1紐状部材5の基端部側の延出端には、ループ5aが形成されている。第1紐状部材5の基端部側のループ5aに代えて把持しやすい形状、例えば球状に形成しても良い。
【0029】
第2紐状部材6の先端部は、前記第1バー3の端部に固定されている。さらに、第2紐状部材6の基端部側は、前記第2バー4の挿通孔4aを通して前記第1バー3とは反対側に延出されている。第2紐状部材6の基端部側の延出端には、ループ6aが形成されている。
【0030】
また、ストッパ7は、例えばシリコンゴムなどの弾性材料でできたチューブ状の部材である。ストッパ7の内径は第1紐状部材5の外径よりも小さく、外径は第1の棒状部材である第1バー3の貫通孔2aの直径よりも大きくなっている。また、ストッパ7の外径は後述する内チューブ15(図2参照)の内径より大きくなっている。
【0031】
また、スペーサ部材8は、例えばポリカーボネイト、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、などの硬質樹脂材料の棒状部材で形成されている。図5に示すようにスペーサ部材8の管壁には、スリット9とタグ10とが形成されている。スリット9は、前記スペーサ部材8の管の軸線方向に沿って延設されている。図6に示すようにこのスリット9は、前記第1紐状部材5の径よりも幅が狭い。タグ10は、スペーサ部材8の先端部に、前記スリット9と反対側の前記管壁に外向きに突設されている。
【0032】
また、図7は、上記内視鏡用生体壁固定具1を人体内の2つの臓器間に留置するための留置装置2を示している。留置装置2は、挿入部12とハンドル部13とを有する。
【0033】
挿入部12は、外チューブ14と、内チューブ15と、プルワイヤ16とを備えている。外チューブ14は、内視鏡のチャンネルに挿入可能な外径を有する可撓性のチューブである。この外チューブ14の基端部には、口金17が設けられている。内チューブ15は、外チューブ14内に軸線方向にスライド可能に挿入されている可撓性のチューブである。プルワイヤ16は、内チューブ15内に軸線方向にスライド可能に挿入された可撓性のワイヤである。さらに、プルワイヤ16の先端部には、フック部16aが取り付けられている。
【0034】
ハンドル部13は、ほぼ管状のハンドル本体18と、軸状のスライド部19とを有する。ハンドル本体18の先端部には内チューブ15の基端部が連結されている。このハンドル本体18の基端部には、第1取っ手20が設けられている。また、スライド部19は、ハンドル本体18の内部に軸線方向にスライド可能に挿入されている。スライド部19の先端部にはプルワイヤ16の基端部が連結されている。このスライド部19の基端部には、第2取っ手21が設けられている。
【0035】
また、図8は、内視鏡用生体壁固定具1を留置装置2の挿入部12の先端部分に組み込んだ状態を示す。図8に示すように、固定具1の第1紐状部材5のループ5aは、内チューブ15内のプルワイヤ16の先端のフック16aに引っ掛かっている。この状態で、留置装置2の第1取っ手20を図7中で、右方向に引き、外チューブ14の先端部分から内チューブ15を右方向に後退させる。これにより、固定具1は、外チューブ14内の先端部分に引き込まれ、外チューブ14内の先端部分に装填される。なお、図8中で、第1バー3と第2バー4との間には第1紐状部材5および第2紐状部材6が螺旋状に巻かれた部分が設けられている。これにより、第1紐状部材5および第2紐状部材6の長さに余裕を持たせた場合でも第1紐状部材5および第2紐状部材6を外チューブ14内の先端部分にコンパクトに収容できるようになっている。
【0036】
次に、本実施の形態の作用を説明する。本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1の使用時には、図示しない内視鏡を経口的に体内に挿入し、内視鏡の先端を十二指腸H1まで誘導する。このとき、例えば超音波診断装置、X線撮像装置などの手段を用いて、十二指腸H1と総胆管H2が最も接近している部位に内視鏡の先端を位置決めする。なお、内視鏡として超音波内視鏡を用いれば、超音波断層像をガイドにすることで比較的容易に所望の部位までの位置決めが可能である。
【0037】
その後、内視鏡のチャンネルを介して、穿刺針もしくは電気メスを挿入し、十二指腸H1から総胆管H2まで穿孔して通孔H3を形成する。この通孔H3は次に前記内視鏡用生体壁固定具1を挿入して総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aとを密着固定するための下穴である。
【0038】
続いて、図8に示すように留置装置2に内視鏡用生体壁固定具1を装填した状態で、留置装置2の挿入部12を図示しない内視鏡のチャンネルに挿入する。このときハンドル部13は内視鏡のチャンネルの外側に配置されることになる。
【0039】
その後、固定具1及び留置装置2を用いて総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定する一連の処置(固定具1の留置及び抜去)及び、最終的に総胆管H2と十二指腸H1との間を連絡する瘻孔を形成するまでの処置について説明する。
【0040】
ハンドル部13と外チューブ14の口金17(図7参照)を操作して留置装置2の挿入部12を図示しない内視鏡のチャンネルを通して前進させる。そして、外チューブ14の先端を前記通孔H3に挿入し、総胆管H2内に一定の長さまで進入させる。
【0041】
続いて、ハンドル本体18(図7参照)を前進させて、外チューブ14内の内チューブ15を前進させる。これにより、内チューブ15の先端に取り付けた固定具1の第1バー3を外チューブ14の外に出るまで押し出す。
【0042】
第1バー3と第2バー4との間の第1紐状部材5と、第2紐状部材6とには、第1バー3が姿勢を変えるだけの長さの余裕(螺旋状の巻回)があるので、第1バー4が外チューブ14の外に押し出されると、図9に示すように第1バー3の向きが変わる。
【0043】
この状態で、外チューブ14とハンドル部13を手元側に引き、留置装置2の挿入部12を十二指腸壁H1aの手前まで後退させる。
【0044】
その後退した位置でハンドル本体18を前進させることによって内チューブ15を前進させ、固定具1の第2バー4を外チューブ14の外に出るまで押し出す。
【0045】
次に、第2取っ手21を手元側に引くことで、内チューブ15内でプルワイヤ16を引き込み、第1紐状部材5を引っ張る。この時、ストッパ7は内チューブ15の先端によって押し止められ、さらにプルワイヤ16の引き込みによって図9に示すように総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aが第1バー3と第2バー4との間に挟持される状態で互いに引き寄せられて密着する。
【0046】
次に、口金17及びこれに連結した外チューブ14を後退させると共にハンドル本体18及びこれに連結した内チューブ15を後退させ相対的にスライド部19及びプルワイヤ16を前進させる。これにより、プルワイヤ16の先端のフック16aを内チューブ15並びに外チューブ14の先端より突出させる。この状態で、フック16aとループ5aとの引っかかりを解除すると、図9に示すようにストッパ7と第1紐状部材5の摩擦力により固定具1は総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着させた状態で留置される。
【0047】
総胆管H2と十二指腸H1との間を連絡する図示しない瘻孔を形成する際には、必要に応じて同じ方法で瘻孔を形成する対象部位の周囲に複数個所、例えば2箇所か3箇所において内視鏡用生体壁固定具1が留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を実施する。
【0048】
次に、図示しない内視鏡のチャンネルを介して電気メスを挿入し、固定具1によって密着している部位付近に十二指腸22から総胆管H2まで連絡する図示しない瘻孔を形成する。以上の施術後、図示しない瘻孔部が強固に癒着するまで一定期間放置する。瘻孔部が強固に癒着した後は、固定具1が不要になるため、以下の作業によって固定具1を抜去する。
【0049】
このように固定具1を抜去する作業時には、図示しない内視鏡のチャンネルを介して図10に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、スペーサ部材8のタグ10を把持鉗子11で把持する。この状態で、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から前記スペーサ部材8を離脱させる。このスペーサ部材8の離脱によって図11に示すように第2バー4とストッパ7との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材5の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材8は、把持鉗子11で把持・回収される。
【0050】
次に、把持鉗子等で第2紐状部材6のループ部6aを図12中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材6によって第1バー3の端部が手元側に引かれるので、図12に示すように第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1バー3のほぼ中央の第1紐状部材5が固定されている固定点は第2バー4から離れる方向(先端側)に移動するため、第1紐状部材5は図12中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。このとき、第1紐状部材5は第1バー3の長さの1/2の長さだけ先端側に押し出される状態に移動する。このため図13に示すように第1バー3は通孔H3を通りやすくなるので固定具1全体を抜去することができる。
【0051】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図1の固定具1を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具1を抜去する作業時には、スペーサ部材8のタグ10を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材8の前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から前記スペーサ部材8を離脱させて第1紐状部材5の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材8を外すことで固定具1の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子により第2紐状部材6のループ部6aを手元側に引くことにより、第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具1の取り外し作業時に例えば第1紐状部材5を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具1の取り外し作業時に第1紐状部材5を切断して第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具1全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0052】
また、図14乃至図16は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の変形例を示すものである。本変形例は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1のスペーサ部材8の構成を次のとおり変更したものである。
【0053】
すなわち、本変形例のスペーサ部材8Aは、図14に示すようにスペーサ部材8Aの管壁の一部に切欠部31が形成されている。さらに、この切欠部31よりもスペーサ部材8Aの一端側には前記スリット9がないリング状部分32を有する。そして、固定具1の取り外し作業時には、スペーサ部材8Aのタグ10を把持鉗子11で把持して、把持鉗子11を引っ張り操作することにより、図16に示すように前記リング状部分32以外の部分が前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から離脱可能である。この場合、前記リング状部分32は前記第1紐状部材5に挿通されたままで残される。そのため、固定具1の取り外し作業時に前記リング状部分32以外の部分が前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から離脱されて第1紐状部材5の引っ張り状態を解除し、固定具1の締め付けを緩める場合であってもスペーサ部材8Aの前記リング状部分32によってスペーサ部材8Aの一部を前記第1紐状部材5に連結した状態で保持することができる。したがって、固定具1の取り外し作業時に前記第1紐状部材5から離脱されたスペーサ部材8Aも固定具1と一緒に回収することができるので、固定具1全体を抜去し、回収する作業を一層、容易に行うことができる。
【0054】
また、図17乃至図22は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0055】
すなわち、本実施の形態では図16および図17に示すようにスペーサ部材8Bとは別体のタグ41を設けたものである。スペーサ部材8Bには、第1の実施の形態のスペーサ部材8のタグ10は設けられていない。なお、タグ41は、体内で生体組織の色には少ない色、例えば緑色などのように生体の中で他の生体組織と識別し易い色に設定されている。
【0056】
そして、固定具1の取り外し作業時には、スペーサ部材8Bとは別体のタグ41を把持鉗子11で把持して、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、図20に示すようにスペーサ部材8Bの前記スリット9を通して前記第1紐状部材5をスペーサ部材8Bから離脱可能である。そのため、本実施の形態でもスペーサ部材8Bの離脱によって図21に示すように第2バー4とストッパ7との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材5の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材8Bは、把持鉗子11で把持・回収される。
【0057】
次に、把持鉗子等で第2紐状部材6のループ部6aを図21中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材6によって第1バー3の端部が手元側に引かれるので、図21に示すように第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1紐状部材5は図21中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。このため第1バー3は通孔H3を通りやすくなるので固定具1全体を抜去することができる。
【0058】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図1の固定具1を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具1を抜去する作業時には、スペーサ部材8Bとは別体のタグ41を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材8Bの前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から前記スペーサ部材8Bを離脱させて第1紐状部材5の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材8Bを外すことで固定具1の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子により第2紐状部材6のループ部6aを手元側に引くことにより、第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具1の取り外し作業時に例えば第1紐状部材5を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具1の取り外し作業時に第1紐状部材5を切断して第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具1全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、図23は、第2の実施の形態(図17乃至図22参照)の内視鏡用生体壁固定具1のスペーサ部材8Bの変形例を示すものである。本変形例のスペーサ部材8Bの先端部には、前記スリット9の口元に前記第1紐状部材5をガイドするガイド部9aを有する。このガイド部9aは、ほぼテーパー状の面取り部によって形成されている。
【0060】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、経内視鏡的に固定具1を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具1を抜去する作業時には、スペーサ部材8Bとは別体のタグ41を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。このとき、前記スリット9の口元のガイド部9aによって前記第1紐状部材5を確実に前記スリット9に導くことができる。そのため、瘻孔が完成し、固定具1が不要になった場合、異物である固定具1を簡単に回収できることができる。
【0061】
また、図24乃至図26は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0062】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1では図24に示すように第1の実施の形態のスペーサ部材8をなくしたものである。そして、固定具1の取り外し作業時には、第2紐状部材6のループ部6aを手元側に引くだけで第1紐状部材5の引っ張り状態を解除するようにしたものである。
【0063】
また、図24中で、51は固定具1の取り外し作業時に使用される内視鏡を示す。この内視鏡51の挿入部52に形成されたチャンネル53内には把持鉗子11が挿通される。さらに、内視鏡51の挿入部52の先端部には円筒形状のキャップ54が装着されている。なお、キャップ54は必ずしも挿入部52の先端部に取付ける必要はないが、挿入部52の先端部にキャップ54を取付けた場合には内視鏡51の視野が確認し易くなる利点がある。
【0064】
次に、図24に示すように本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1が体内に留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定している状態からこの固定具1を抜去する作業について説明する。
【0065】
まず、内視鏡51のチャンネル53を介して図24に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、内視鏡51の視野を確認しながら第2紐状部材6のループ部6aを把持鉗子11で把持する。
【0066】
続いて、図25に示すように挿入部52の先端のキャップ54を第2バー4に当接させることにより、キャップ54で第2バー4を押さえつける。この状態で、把持鉗子11で第2紐状部材6のループ部6aを図26中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材6によって第1バー3の端部が手元側に引かれるので、図26に示すように第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1紐状部材5は図26中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。このため、第1バー3は通孔H3を通りやすくなるので固定具1全体を抜去することができる。
【0067】
したがって、本実施の形態では、固定具1を抜去する作業時には、第2紐状部材6のループ部6aを把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。このとき、第2紐状部材6に引っ張られて第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える動作が行われる。さらに、この第1バー3の動きによって第1紐状部材5を図26中に矢印Bに示すように先端側に押し出すことができる。これにより、第1紐状部材5の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、第2紐状部材6のループ部6aを把持鉗子11で把持して第2紐状部材6を引っ張り操作することで固定具1の締め付けを緩めることができる。このとき、第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具1の取り外し作業時に例えば第1紐状部材5を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具1の取り外し作業時に第1紐状部材5を切断して第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具1全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0068】
また、図27乃至図36は本発明の第4の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0069】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具61は、図27に示すように軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー63と、第2の固定部材である第2バー64と、前記2つのバー63,64と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材65と、第2紐状部材66と、弾性体のストッパ67と、前記第1紐状部材65の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材68と、を具備する。なお、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具61は、第2バー64以外の構成は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。そして、スペーサ部材68の管壁には、スリット9(図5参照)とタグ70とが形成されている。
【0070】
第2バー64は、図28〜30に示すように管体によって形成されている。この第2バー64の軸線方向の中央位置の管壁には2つの紐状部材の挿通孔64aが設けられている。この挿通孔64aは、第2バー64の軸線方向と直交する方向に延設されている。さらに、この第2バー64の軸方向の管孔64bは、2つの挿通孔64aとそれぞれ連通されている。
【0071】
前記第2紐状部材66は、図29に示すように前記第2バー64の一方の前記挿通孔64aから前記第2バー64の管孔64b内に挿入され、前記第2バー64の管孔64bの一端側の開口端から前記第2バー64の管外に延出されている。
【0072】
次に、図31に示すように本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具61が体内に留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定している状態からこの固定具61を抜去する作業について説明する。
【0073】
まず、図示しない内視鏡のチャンネルを介して図10に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、スペーサ部材68のタグ70を把持鉗子11で把持する。この状態で、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材65から前記スペーサ部材68を離脱させる。このスペーサ部材68の離脱によって図32に示すように第2バー64とストッパ67との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材65の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材68は、把持鉗子11で把持・回収される。
【0074】
次に、把持鉗子11で第2紐状部材66のループ部66aを図33中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材66によって第1バー63の端部が手元側に引かれるので、図33に示すように第1バー63の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1バー63のほぼ中央の第1紐状部材65が固定されている固定点は第2バー64から離れる方向(先端側)に移動するため、第1紐状部材65は図33中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。これにより、第1紐状部材65は第1バー63の長さの1/2の長さだけ先端側に押し出される状態に移動する。このため図34に示すように第1バー63は通孔H3を通りやすくなるので固定具61全体を抜去することができる。
【0075】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図27の固定具61を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具61を抜去する作業時には、スペーサ部材68のタグ70を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材68の前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材65から前記スペーサ部材68を離脱させて第1紐状部材65の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材68を外すことで固定具61の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子11により第2紐状部材66のループ部66aを手元側に引くことにより、第1バー63の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具61の取り外し作業時に例えば第1紐状部材65を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具61の取り外し作業時に第1紐状部材65を切断して第1紐状部材65の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具61全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0076】
また、本実施の形態では図27の固定具61を経内視鏡的に体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行う際に、図35に示すように図27の固定具61を総胆管H2側に全て放出した場合に、これを簡単にリカバリーすることができる。すなわち、図36に示すように第2紐状部材66のループ部66aを把持鉗子11(図10参照)により手元側に引くことにより、第1バー63が第2バー64に近づき、並列状態になるので、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、そのままの状態で第2紐状部材66を手元側に引くことにより、固定具61を通孔H3を通り十二指腸H1側に引き抜くことができる。
【0077】
また、図37乃至図43は本発明の第5の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0078】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具71は、図37に示すように軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー73と、第2の固定部材である第2バー74と、前記2つのバー73,74と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材75と、第2紐状部材76と、弾性体のストッパ77と、前記第1紐状部材75の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材78と、を具備する。なお、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具71は、第2バー74以外の構成は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。そして、スペーサ部材78の管壁には、スリット9(図5参照)とタグ80とが形成されている。
【0079】
第2バー74は、図38〜40に示すように管体によって形成されている。この第2バー74の軸線方向の中央位置の管壁には2つの紐状部材の挿通孔74aが設けられている。この挿通孔74aは、第2バー74の軸線方向と直交する方向に延設されている。さらに、この第2バー74の軸方向の管孔74bは、2つの挿通孔74aとそれぞれ連通されている。
【0080】
前記第2紐状部材76は、図39に示すように前記第2バー74の管孔74bの一方の開口端から前記第2バー74の管孔74b内に挿入され、前記第2バー74の管孔74bの他端側の開口端から前記第2バー74の管外に延出されている。
【0081】
次に、図38に示すように本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具71が体内に留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定している状態からこの固定具71を抜去する作業について説明する。
【0082】
まず、図示しない内視鏡のチャンネルを介して図10に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、スペーサ部材78のタグ80を把持鉗子11で把持する。この状態で、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材75から前記スペーサ部材78を離脱させる。このスペーサ部材78の離脱によって図42に示すように第2バー74とストッパ77との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材75の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材78は、把持鉗子11で把持・回収される。
【0083】
次に、把持鉗子11で第2紐状部材76のループ部76aを図43中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、図43に示すように第2紐状部材76によって第2バー74が十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変える。同時に、第1バー73の端部が手元側に引かれるので、第1バー73の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1バー73のほぼ中央の第1紐状部材75が固定されている固定点は第2バー74から離れる方向(先端側)に移動するため、第1紐状部材75は図43中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。したがって、本実施の形態では、第2紐状部材76を引っ張り操作することにより、第1バー73および第2バー74がそれぞれ総胆管壁H2aおよび十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変えることにより、図43に示すように第1バー73は通孔H3を通りやすくなるので固定具71全体を抜去することができる。このとき、第1紐状部材75には第1バー73の長さの1/2の長さ+第2バー74の長さの1/2の長さの余裕が必要になる。
【0084】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図37の固定具71を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具71を抜去する作業時には、スペーサ部材78のタグ80を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材78の前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材75から前記スペーサ部材78を離脱させて第1紐状部材75の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材78を外すことで固定具71の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子11により第2紐状部材76のループ部76aを手元側に引くことにより、第1バー73および第2バー74がそれぞれ総胆管壁H2aおよび十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具71の取り外し作業時に例えば第1紐状部材75を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具71の取り外し作業時に第1紐状部材75を切断して第1紐状部材75の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具71全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態でも第4の実施の形態(図27乃至図36参照)と同様に、図37の固定具71を経内視鏡的に体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行う際に、図37の固定具71を総胆管H2側に全て放出した場合に、これを簡単にリカバリーすることができる。すなわち、第2紐状部材76のループ部76aを把持鉗子11(図10参照)により手元側に引くことにより、第1バー73および第2バー74がそれぞれ一直線状態になるので、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、そのままの状態で第2紐状部材76を手元側に引くことにより、固定具71を通孔H3を通り十二指腸H1側に引き抜くことができる。
【0086】
また、図44乃至図46は本発明の第6の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0087】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具91は、図44に示すように軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー93と、第2の固定部材である第2バー94と、前記2つのバー93,94と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材95と、第2紐状部材96と、弾性体のストッパ97と、前記第1紐状部材95の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材98と、を具備する。なお、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具91は、第1紐状部材95の先端部を第1バー93に固定する固定手段および第2紐状部材96の先端部を第2バー93に固定する固定手段以外の構成は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。そして、スペーサ部材98の管壁には、スリット99とタグ100とが形成されている。
【0088】
第1バー93は、管体によって形成されている。第1バー93の管内腔93aには第2紐状部材96が移動自在に挿通されている。また、第2紐状部材96の先端部は、第1バー93の管内腔93aの外側に延出されている。この第2紐状部材96の先端部には、第1バー93の内径よりも大径な抜け止め部材101が固定されている。そして、第2紐状部材96が基端部側に引っ張られ、第2紐状部材96に張力が作用することにより、抜け止め部材101が第1バー93の端部に突き当てられる状態で固定されるようになっている。
【0089】
また、図45に示すように第1バー93の軸心方向(長手方向)の中央位置には第1バー93の軸心方向と直交する方向に横穴93bが形成されている。この横穴93bは、管内腔93aと連通されている。
【0090】
第1紐状部材95は、1本の紐体によって形成されている。この第1紐状部材95の紐体は、第1バー93の横穴93b内に移動自在に挿通されている。さらに、第1バー93の横穴93bから両側に延出される第1紐状部材95の紐体の2つの延出部は図46に示す通り後述する第2バー94の横穴94b内にそれぞれ連通されている。そして、第1紐状部材95の紐体の2つの延出部が基端部側に引っ張られ、第1紐状部材95に張力が作用することにより、第1バー93の横穴93b内に挿通された部分によって第1バー93が第1紐状部材95の基端部側に引っ張られる。これにより、第1紐状部材95の先端部が第1バー93に固定する固定手段が形成されている。
【0091】
第2バー94は、第5の実施の形態(図37〜43参照)と同様に管体によって形成されている。この第2バー94の管内腔94aには第2紐状部材96が移動自在に挿通されている。
【0092】
また、図46に示すように第2バー94の軸心方向(長手方向)の中央位置には第2バー94の軸心方向と直交する方向に横穴94bが形成されている。この横穴94bは、管内腔94aと連通されている。さらに、横穴94b内には第1バー93の横穴93bから両側に延出される第1紐状部材95の紐体の2つの延出部がそれぞれ挿入されている。そして、第1紐状部材95の紐体の2つの延出部は、第2バー94の横穴94bから延出されたのち、スペーサ部材98と、ストッパ97とに順次、挿入されるようになっている。
【0093】
本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具91の作用は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。
【0094】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図44の固定具91を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具91を抜去する作業時には、スペーサ部材98のタグ100を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材98の前記スリット99を通して前記第1紐状部材95から前記スペーサ部材98を離脱させて第1紐状部材95の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材98を外すことで固定具91の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子11により第2紐状部材96のループ部96aを手元側に引くことにより、第1バー93および第2バー94がそれぞれ総胆管壁H2aおよび十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具91の取り外し作業時に例えば第1紐状部材95を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具91の取り外し作業時に第1紐状部材95を切断して第1紐状部材95の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具91全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0095】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の第2バー4に代えて第4の実施の形態(図27乃至図36参照)の第2バー64や、第5の実施の形態(図37乃至図43参照)の第2バー74を組み合わせても良い。
【0096】
さらに、第2の実施の形態(図17乃至図22参照)の内視鏡用生体壁固定具1の第2バー4に代えて第4の実施の形態(図27乃至図36参照)の第2バー64や、第5の実施の形態(図37乃至図43参照)の第2バー74を組み合わせても良い。
【0097】
さらに、第3の実施の形態(図24乃至図26参照)の内視鏡用生体壁固定具1の第2バー4に代えて第4の実施の形態(図27乃至図36参照)の第2バー64や、第5の実施の形態(図37乃至図43参照)の第2バー74を組み合わせても良い。さらに、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図2】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を示す斜視図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】図2のIV−IV線断面図。
【図5】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具のスペーサを示す斜視図。
【図6】図1のVI−VI線断面図。
【図7】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具を留置するための留置装置を示す縦断面図。
【図8】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具を留置装置に組み付けた状態の留置装置の挿入部の先端部分を示す縦断面図。
【図9】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図10】図9の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図11】図9の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態を示す要部の縦断面図。
【図12】図11の内視鏡用生体壁固定具から第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図13】図12の内視鏡用生体壁固定具を総胆管と十二指腸との接合部分から引き抜いて取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図14】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具のスペーサの変形例を示す斜視図。
【図15】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具に図14の変形例のスペーサを組み込んだ状態を示す要部の縦断面図。
【図16】図15の内視鏡用生体壁固定具から図14の変形例のスペーサを取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図17】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図18】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の要部の斜視図。
【図19】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図20】図19の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図21】図19の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態で第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図22】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具に組み込んだ図14のスペーサを内視鏡用生体壁固定具から取り外した状態で第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図23】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具のスペーサの変形例を示す斜視図。
【図24】本発明の第3の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具とこの固定具の取り外し作業に使用される内視鏡とを示す要部の縦断面図。
【図25】第3の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に内視鏡を内視鏡用生体壁固定具に接近させた状態を示す要部の縦断面図。
【図26】第3の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に図25の内視鏡用生体壁固定具から第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図27】本発明の第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図28】第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を示す斜視図。
【図29】図28の29−29線断面図。
【図30】図28の30−30線断面図。
【図31】第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図32】図31の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態を示す要部の縦断面図。
【図33】図32の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図34】図32の内視鏡用生体壁固定具を総胆管と十二指腸との接合部分から引き抜いて取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図35】第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具を総胆管側に押し込んでしまった状態を示す要部の縦断面図。
【図36】図35の内視鏡用生体壁固定具を総胆管側から取り出す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図37】本発明の第5の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図38】第5の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を示す斜視図。
【図39】図38の39−39線断面図。
【図40】図38の40−40線断面図。
【図41】第5の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図42】図41の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態を示す要部の縦断面図。
【図43】図42の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図44】本発明の第6の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す斜視図。
【図45】第6の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材と第1紐状部材および第2紐状部材との係合状態を示す縦断面図。
【図46】第6の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材と第1紐状部材および第2紐状部材との係合状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0099】
H1…十二指腸(第1臓器)、H2…総胆管(第2臓器)、H1a…十二指腸壁(第1生体壁)、H2a…総胆管壁(第2生体壁)、H3…通孔、1…内視鏡用生体壁固定具、2…留置装置、3…第1バー(第1の固定部材)、4…第2バー(第2の固定部材)、5…第1紐状部材、6…第2紐状部材、7…ストッパ、8…スペーサ部材(引っ張り状態解除手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経内視鏡的に2つの臓器の壁と壁を密着した状態で固定する内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の胆道の一部が病変によって閉塞してしまう閉塞性黄疸に対しては、体表に傷をつける経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD:percutaneous transhepatic cholangio drainage)が一般的に行われていた。近年、内視鏡技術の進歩により内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(ERBD:endoscopic retrograde biliary drainage)や、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD:endoscopic naso biliary drainage)が行われるようになっている。このうち、ERBDは、経口的に内視鏡を体内に挿入したのち、内視鏡のチャンネルを介して、胆道にチューブ状のステントチューブを留置する手技である。このチューブを胆道に留置することにより、閉塞した胆管を再び開通させ、胆汁の流出を可能にするものである。
【0003】
このようなステントチューブを留置する手技では、経時的にステントチューブの内側に胆汁の成分が付着する。そして、ステントチューブがふさがった場合、内視鏡術によってふさがったステントチューブを抜去し、再び新しいステントチューブを再挿入する必要がある。
【0004】
また、ステントチューブを使用せずに内視鏡下で減黄術として総胆管と十二指腸を吻合することが特許文献1に示されている。ここでは、内視鏡用体壁固定具を使用して経内視鏡的に2つの臓器の壁と壁を密着した状態で固定する。続いて、十二指腸と総胆管が最も接近している部位に内視鏡先端を十二指腸内に位置決めする。その後、内視鏡チャンネルを介して電気メス等の切除具を挿入し、十二指腸と総胆管まで穿孔する。ここで、十二指腸と総胆管との間に自然瘻孔(natural stoma)を形成するために、一定期間、固定具によって総胆管と十二指腸を相互に固定する必要がある。そして、瘻孔が完成し、固定具が不要になった場合、異物である固定具は回収できることが望ましい。
【特許文献1】特開2001−46514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、体内から固定具を回収する際には、固定具に取付けられている一部のひもを切断する必要があった。そのため、ひも切断用の鉗子と回収用の鉗子が必要となるなど、手間と費用がかかった。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、体内から固定具を回収する際に、固定具を切断したり破壊したりせずに容易に回収可能とした内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様における内視鏡用体壁固定具は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、前記内視鏡用生体壁固定具は、軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、を具備し、前記引っ張り状態解除手段の作動時に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜き可能である。
【0008】
好ましくは、前記第1固定部材は、直線状の棒材によって形成され、
前記棒材は、前記直線の長手方向に沿って中央位置に前記棒材の長手方向と直交する方向に向けて穿設された孔を有し、
前記第1紐状部材は、1本の第1紐体によって形成され、
前記第1紐体が前記孔内に移動自在に挿通された状態で、前記孔の両側にそれぞれ延出される部分を前記第1紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記第1紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する。
【0009】
好ましくは、前記第1固定部材は、直線状の管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、1本の第2紐体によって形成され、
前記第2紐体が前記管体の管腔内に移動自在に挿通された状態で、前記管体の管腔外に延出される前記第2紐体の終端部分に前記管体の内径よりも大径な抜け止め部材が固定され、
前記第2紐体を前記第2紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記抜け止め部材を前記第1固定部材に突き当てて前記第2紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する。
【0010】
好ましくは、前記引っ張り状態解除手段は、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される管状のスペーサ部材を有し、前記スペーサ部材は、前記第1紐状部材から離脱可能である。
【0011】
好ましくは、前記スペーサ部材は、前記管壁に前記管の軸線方向に沿って延設されたスリット、このスリットは前記第1紐状部材の径よりも幅が狭い,と、前記スリットと反対側の前記管壁に形成されたタグと、を有し、前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる。
【0012】
好ましくは、前記スペーサ部材は、前記スペーサ部材の本体とは別体に形成されたタグ、このタグは、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される,を有し、前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる。
【0013】
好ましくは、前記スペーサ部材は、少なくとも前記第1固定部材の軸方向の長さの1/2以上の長さである。
【0014】
好ましくは、前記スペーサ部材は、先端部に前記スリットの口元に前記第1紐状部材をガイドするガイド部を有する。
【0015】
好ましくは、前記スペーサ部材は、少なくとも前記管の軸線方向の一部に前記スリットがないリング状部分を有し、前記リング状部分以外の部分が前記スリットを通して前記第1紐状部材から離脱可能である。
【0016】
好ましくは、前記引っ張り状態解除手段は、前記第1固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第1紐状部材の前記先端部が固定された第1紐状部材固定部と、前記第固定部材の端部に配置され、前記第2紐状部材の前記先端部が固定された第2紐状部材固定部と、前記第2固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第2固定部材の軸線方向と直交する方向に延設された紐状部材挿通孔と、を具備し、前記第1紐状部材および前記第2紐状部材は、前記紐状部材挿通孔を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されている。
【0017】
好ましくは、前記第2固定部材は、管体によって形成され、前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の前記紐状部材挿通孔から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている。
【0018】
好ましくは、前記第2固定部材は、管体によって形成され、前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の他端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている。
【0019】
本発明の他の態様における内視鏡用体壁固定具は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、前記留置装置は、前記内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端部に配置されたハンドル部とを具備し、前記挿入部は、外チューブと、前記外チューブ内に前記外チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた内チューブと、前記内チューブ内に前記内チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた操作ワイヤ、前記操作ワイヤは先端部にフック部を有する,とを備え、前記ハンドル部は、前記外チューブに対して前記内チューブを前記外チューブの軸線方向にスライドさせる内チューブ操作部と、前記内チューブに対して前記操作ワイヤを前記内チューブの軸線方向にスライドさせるワイヤ操作部と、を有し、前記内視鏡用生体壁固定具は、軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、を具備し、前記フック部に前記第1紐状部材の基端部が係脱可能に係止された状態で、前記内視鏡用生体壁固定具が前記留置装置の前記外チューブの内部に引き込まれる状態に組み込まれ、前記留置装置の前記内チューブの押し出し操作にともない前記内視鏡用生体壁固定具が前記外チューブの外側に押し出し操作されて、前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される。
【0020】
本発明の他の態様における内視鏡用体壁固定具の操作方法は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、管状のスペーサ部材を前記第1紐状部材に摺動可能に挿通させた状態で、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、前記スペーサ部材を前記第1紐状部材から離脱させることにより、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除して前記第2固定部材と前記ストッパとの間に前記第1紐状部材を移動させるスペースを形成する工程と、前記スペーサ部材の離脱後に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、を具備する。
【0021】
本発明の他の態様における内視鏡用体壁固定具の操作方法は、内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、を具備する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、体内から固定具を回収する際に、固定具を切断したり破壊したりせずに容易に回収可能とした内視鏡用生体壁固定具とその内視鏡用生体壁固定具の操作方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図13を参照して説明する。図1は本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1の全体の概略構成を示す。ここでは、例えば十二指腸(第1臓器)H1(図9参照)と総胆管(第2臓器)H2(図9参照)との間を連絡する瘻孔を内視鏡的に形成させる手技を実現する際に、十二指腸壁(第1生体壁)H1a(図9参照)と総胆管壁(第2生体壁)H2a(図9参照)を密着固定させるために使用する内視鏡用生体壁固定具1を例として説明する。
【0024】
内視鏡用生体壁固定具1は、図示しない内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置2(図7参照)によって体内の2つの臓器、例えば内視鏡が挿入される側の第1臓器である十二指腸H1(図9参照)と、内視鏡が挿入されない側の第2臓器である総胆管H2(図9参照)とを有する,の前記十二指腸H1の十二指腸壁H1aと前記総胆管H2の総胆管壁H2aとを密着させて固定する状態で留置される。
【0025】
図1において、内視鏡用生体壁固定具1は、軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー3と、第2の固定部材である第2バー4と、前記2つの固定部材3,4と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材5と、第2紐状部材6と、弾性体のストッパ7と、前記第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する後述する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材8と、を具備する。これら内視鏡用生体壁固定具1の各構成要素は、いずれも生体に対し影響を及ぼしにくい安全な材料で形成されている。
【0026】
第1バー3は、図9に示すように前記十二指腸壁H1aと前記総胆管壁H2aとの接合部間に形成された通孔H3を通して前記総胆管H2の内部空間に挿入される。第2バー4は、前記通孔H3に挿入されずに前記十二指腸H1の内部空間側に配置される。さらに、第1バー3,第2バー4は、例えばステンレス材料、または、例えばポリカーボネイト、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、などの硬質樹脂材料の棒状部材で形成されている。
【0027】
また、第2バー4は、図2〜4に示すようにこの第2バー4の軸線方向の中央位置に紐状部材の挿通孔4aが設けられている。この挿通孔4aは、第2バー4の軸線方向と直交する方向に延設されている。
【0028】
第1紐状部材5および第2紐状部材6は、先端部および基端部を有し、例えばナイロンなどの丈夫で伸びが少ない柔軟な合成樹脂製の紐状の部材である。第1紐状部材5の先端部は、第1バー3の軸線方向のほぼ中央位置に固定されている。さらに、第1紐状部材5の基端部側は、前記第2バー4の挿通孔4aを通して前記第1バー3とは反対側に延出されている。第1紐状部材5の基端部側の延出端には、ループ5aが形成されている。第1紐状部材5の基端部側のループ5aに代えて把持しやすい形状、例えば球状に形成しても良い。
【0029】
第2紐状部材6の先端部は、前記第1バー3の端部に固定されている。さらに、第2紐状部材6の基端部側は、前記第2バー4の挿通孔4aを通して前記第1バー3とは反対側に延出されている。第2紐状部材6の基端部側の延出端には、ループ6aが形成されている。
【0030】
また、ストッパ7は、例えばシリコンゴムなどの弾性材料でできたチューブ状の部材である。ストッパ7の内径は第1紐状部材5の外径よりも小さく、外径は第1の棒状部材である第1バー3の貫通孔2aの直径よりも大きくなっている。また、ストッパ7の外径は後述する内チューブ15(図2参照)の内径より大きくなっている。
【0031】
また、スペーサ部材8は、例えばポリカーボネイト、ポリスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、などの硬質樹脂材料の棒状部材で形成されている。図5に示すようにスペーサ部材8の管壁には、スリット9とタグ10とが形成されている。スリット9は、前記スペーサ部材8の管の軸線方向に沿って延設されている。図6に示すようにこのスリット9は、前記第1紐状部材5の径よりも幅が狭い。タグ10は、スペーサ部材8の先端部に、前記スリット9と反対側の前記管壁に外向きに突設されている。
【0032】
また、図7は、上記内視鏡用生体壁固定具1を人体内の2つの臓器間に留置するための留置装置2を示している。留置装置2は、挿入部12とハンドル部13とを有する。
【0033】
挿入部12は、外チューブ14と、内チューブ15と、プルワイヤ16とを備えている。外チューブ14は、内視鏡のチャンネルに挿入可能な外径を有する可撓性のチューブである。この外チューブ14の基端部には、口金17が設けられている。内チューブ15は、外チューブ14内に軸線方向にスライド可能に挿入されている可撓性のチューブである。プルワイヤ16は、内チューブ15内に軸線方向にスライド可能に挿入された可撓性のワイヤである。さらに、プルワイヤ16の先端部には、フック部16aが取り付けられている。
【0034】
ハンドル部13は、ほぼ管状のハンドル本体18と、軸状のスライド部19とを有する。ハンドル本体18の先端部には内チューブ15の基端部が連結されている。このハンドル本体18の基端部には、第1取っ手20が設けられている。また、スライド部19は、ハンドル本体18の内部に軸線方向にスライド可能に挿入されている。スライド部19の先端部にはプルワイヤ16の基端部が連結されている。このスライド部19の基端部には、第2取っ手21が設けられている。
【0035】
また、図8は、内視鏡用生体壁固定具1を留置装置2の挿入部12の先端部分に組み込んだ状態を示す。図8に示すように、固定具1の第1紐状部材5のループ5aは、内チューブ15内のプルワイヤ16の先端のフック16aに引っ掛かっている。この状態で、留置装置2の第1取っ手20を図7中で、右方向に引き、外チューブ14の先端部分から内チューブ15を右方向に後退させる。これにより、固定具1は、外チューブ14内の先端部分に引き込まれ、外チューブ14内の先端部分に装填される。なお、図8中で、第1バー3と第2バー4との間には第1紐状部材5および第2紐状部材6が螺旋状に巻かれた部分が設けられている。これにより、第1紐状部材5および第2紐状部材6の長さに余裕を持たせた場合でも第1紐状部材5および第2紐状部材6を外チューブ14内の先端部分にコンパクトに収容できるようになっている。
【0036】
次に、本実施の形態の作用を説明する。本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1の使用時には、図示しない内視鏡を経口的に体内に挿入し、内視鏡の先端を十二指腸H1まで誘導する。このとき、例えば超音波診断装置、X線撮像装置などの手段を用いて、十二指腸H1と総胆管H2が最も接近している部位に内視鏡の先端を位置決めする。なお、内視鏡として超音波内視鏡を用いれば、超音波断層像をガイドにすることで比較的容易に所望の部位までの位置決めが可能である。
【0037】
その後、内視鏡のチャンネルを介して、穿刺針もしくは電気メスを挿入し、十二指腸H1から総胆管H2まで穿孔して通孔H3を形成する。この通孔H3は次に前記内視鏡用生体壁固定具1を挿入して総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aとを密着固定するための下穴である。
【0038】
続いて、図8に示すように留置装置2に内視鏡用生体壁固定具1を装填した状態で、留置装置2の挿入部12を図示しない内視鏡のチャンネルに挿入する。このときハンドル部13は内視鏡のチャンネルの外側に配置されることになる。
【0039】
その後、固定具1及び留置装置2を用いて総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定する一連の処置(固定具1の留置及び抜去)及び、最終的に総胆管H2と十二指腸H1との間を連絡する瘻孔を形成するまでの処置について説明する。
【0040】
ハンドル部13と外チューブ14の口金17(図7参照)を操作して留置装置2の挿入部12を図示しない内視鏡のチャンネルを通して前進させる。そして、外チューブ14の先端を前記通孔H3に挿入し、総胆管H2内に一定の長さまで進入させる。
【0041】
続いて、ハンドル本体18(図7参照)を前進させて、外チューブ14内の内チューブ15を前進させる。これにより、内チューブ15の先端に取り付けた固定具1の第1バー3を外チューブ14の外に出るまで押し出す。
【0042】
第1バー3と第2バー4との間の第1紐状部材5と、第2紐状部材6とには、第1バー3が姿勢を変えるだけの長さの余裕(螺旋状の巻回)があるので、第1バー4が外チューブ14の外に押し出されると、図9に示すように第1バー3の向きが変わる。
【0043】
この状態で、外チューブ14とハンドル部13を手元側に引き、留置装置2の挿入部12を十二指腸壁H1aの手前まで後退させる。
【0044】
その後退した位置でハンドル本体18を前進させることによって内チューブ15を前進させ、固定具1の第2バー4を外チューブ14の外に出るまで押し出す。
【0045】
次に、第2取っ手21を手元側に引くことで、内チューブ15内でプルワイヤ16を引き込み、第1紐状部材5を引っ張る。この時、ストッパ7は内チューブ15の先端によって押し止められ、さらにプルワイヤ16の引き込みによって図9に示すように総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aが第1バー3と第2バー4との間に挟持される状態で互いに引き寄せられて密着する。
【0046】
次に、口金17及びこれに連結した外チューブ14を後退させると共にハンドル本体18及びこれに連結した内チューブ15を後退させ相対的にスライド部19及びプルワイヤ16を前進させる。これにより、プルワイヤ16の先端のフック16aを内チューブ15並びに外チューブ14の先端より突出させる。この状態で、フック16aとループ5aとの引っかかりを解除すると、図9に示すようにストッパ7と第1紐状部材5の摩擦力により固定具1は総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着させた状態で留置される。
【0047】
総胆管H2と十二指腸H1との間を連絡する図示しない瘻孔を形成する際には、必要に応じて同じ方法で瘻孔を形成する対象部位の周囲に複数個所、例えば2箇所か3箇所において内視鏡用生体壁固定具1が留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を実施する。
【0048】
次に、図示しない内視鏡のチャンネルを介して電気メスを挿入し、固定具1によって密着している部位付近に十二指腸22から総胆管H2まで連絡する図示しない瘻孔を形成する。以上の施術後、図示しない瘻孔部が強固に癒着するまで一定期間放置する。瘻孔部が強固に癒着した後は、固定具1が不要になるため、以下の作業によって固定具1を抜去する。
【0049】
このように固定具1を抜去する作業時には、図示しない内視鏡のチャンネルを介して図10に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、スペーサ部材8のタグ10を把持鉗子11で把持する。この状態で、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から前記スペーサ部材8を離脱させる。このスペーサ部材8の離脱によって図11に示すように第2バー4とストッパ7との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材5の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材8は、把持鉗子11で把持・回収される。
【0050】
次に、把持鉗子等で第2紐状部材6のループ部6aを図12中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材6によって第1バー3の端部が手元側に引かれるので、図12に示すように第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1バー3のほぼ中央の第1紐状部材5が固定されている固定点は第2バー4から離れる方向(先端側)に移動するため、第1紐状部材5は図12中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。このとき、第1紐状部材5は第1バー3の長さの1/2の長さだけ先端側に押し出される状態に移動する。このため図13に示すように第1バー3は通孔H3を通りやすくなるので固定具1全体を抜去することができる。
【0051】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図1の固定具1を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具1を抜去する作業時には、スペーサ部材8のタグ10を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材8の前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から前記スペーサ部材8を離脱させて第1紐状部材5の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材8を外すことで固定具1の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子により第2紐状部材6のループ部6aを手元側に引くことにより、第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具1の取り外し作業時に例えば第1紐状部材5を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具1の取り外し作業時に第1紐状部材5を切断して第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具1全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0052】
また、図14乃至図16は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の変形例を示すものである。本変形例は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1のスペーサ部材8の構成を次のとおり変更したものである。
【0053】
すなわち、本変形例のスペーサ部材8Aは、図14に示すようにスペーサ部材8Aの管壁の一部に切欠部31が形成されている。さらに、この切欠部31よりもスペーサ部材8Aの一端側には前記スリット9がないリング状部分32を有する。そして、固定具1の取り外し作業時には、スペーサ部材8Aのタグ10を把持鉗子11で把持して、把持鉗子11を引っ張り操作することにより、図16に示すように前記リング状部分32以外の部分が前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から離脱可能である。この場合、前記リング状部分32は前記第1紐状部材5に挿通されたままで残される。そのため、固定具1の取り外し作業時に前記リング状部分32以外の部分が前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から離脱されて第1紐状部材5の引っ張り状態を解除し、固定具1の締め付けを緩める場合であってもスペーサ部材8Aの前記リング状部分32によってスペーサ部材8Aの一部を前記第1紐状部材5に連結した状態で保持することができる。したがって、固定具1の取り外し作業時に前記第1紐状部材5から離脱されたスペーサ部材8Aも固定具1と一緒に回収することができるので、固定具1全体を抜去し、回収する作業を一層、容易に行うことができる。
【0054】
また、図17乃至図22は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0055】
すなわち、本実施の形態では図16および図17に示すようにスペーサ部材8Bとは別体のタグ41を設けたものである。スペーサ部材8Bには、第1の実施の形態のスペーサ部材8のタグ10は設けられていない。なお、タグ41は、体内で生体組織の色には少ない色、例えば緑色などのように生体の中で他の生体組織と識別し易い色に設定されている。
【0056】
そして、固定具1の取り外し作業時には、スペーサ部材8Bとは別体のタグ41を把持鉗子11で把持して、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、図20に示すようにスペーサ部材8Bの前記スリット9を通して前記第1紐状部材5をスペーサ部材8Bから離脱可能である。そのため、本実施の形態でもスペーサ部材8Bの離脱によって図21に示すように第2バー4とストッパ7との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材5の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材8Bは、把持鉗子11で把持・回収される。
【0057】
次に、把持鉗子等で第2紐状部材6のループ部6aを図21中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材6によって第1バー3の端部が手元側に引かれるので、図21に示すように第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1紐状部材5は図21中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。このため第1バー3は通孔H3を通りやすくなるので固定具1全体を抜去することができる。
【0058】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図1の固定具1を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具1を抜去する作業時には、スペーサ部材8Bとは別体のタグ41を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材8Bの前記スリット9を通して前記第1紐状部材5から前記スペーサ部材8Bを離脱させて第1紐状部材5の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材8Bを外すことで固定具1の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子により第2紐状部材6のループ部6aを手元側に引くことにより、第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具1の取り外し作業時に例えば第1紐状部材5を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具1の取り外し作業時に第1紐状部材5を切断して第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具1全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、図23は、第2の実施の形態(図17乃至図22参照)の内視鏡用生体壁固定具1のスペーサ部材8Bの変形例を示すものである。本変形例のスペーサ部材8Bの先端部には、前記スリット9の口元に前記第1紐状部材5をガイドするガイド部9aを有する。このガイド部9aは、ほぼテーパー状の面取り部によって形成されている。
【0060】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、経内視鏡的に固定具1を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具1を抜去する作業時には、スペーサ部材8Bとは別体のタグ41を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。このとき、前記スリット9の口元のガイド部9aによって前記第1紐状部材5を確実に前記スリット9に導くことができる。そのため、瘻孔が完成し、固定具1が不要になった場合、異物である固定具1を簡単に回収できることができる。
【0061】
また、図24乃至図26は本発明の第3の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0062】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1では図24に示すように第1の実施の形態のスペーサ部材8をなくしたものである。そして、固定具1の取り外し作業時には、第2紐状部材6のループ部6aを手元側に引くだけで第1紐状部材5の引っ張り状態を解除するようにしたものである。
【0063】
また、図24中で、51は固定具1の取り外し作業時に使用される内視鏡を示す。この内視鏡51の挿入部52に形成されたチャンネル53内には把持鉗子11が挿通される。さらに、内視鏡51の挿入部52の先端部には円筒形状のキャップ54が装着されている。なお、キャップ54は必ずしも挿入部52の先端部に取付ける必要はないが、挿入部52の先端部にキャップ54を取付けた場合には内視鏡51の視野が確認し易くなる利点がある。
【0064】
次に、図24に示すように本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1が体内に留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定している状態からこの固定具1を抜去する作業について説明する。
【0065】
まず、内視鏡51のチャンネル53を介して図24に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、内視鏡51の視野を確認しながら第2紐状部材6のループ部6aを把持鉗子11で把持する。
【0066】
続いて、図25に示すように挿入部52の先端のキャップ54を第2バー4に当接させることにより、キャップ54で第2バー4を押さえつける。この状態で、把持鉗子11で第2紐状部材6のループ部6aを図26中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材6によって第1バー3の端部が手元側に引かれるので、図26に示すように第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1紐状部材5は図26中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。このため、第1バー3は通孔H3を通りやすくなるので固定具1全体を抜去することができる。
【0067】
したがって、本実施の形態では、固定具1を抜去する作業時には、第2紐状部材6のループ部6aを把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。このとき、第2紐状部材6に引っ張られて第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える動作が行われる。さらに、この第1バー3の動きによって第1紐状部材5を図26中に矢印Bに示すように先端側に押し出すことができる。これにより、第1紐状部材5の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、第2紐状部材6のループ部6aを把持鉗子11で把持して第2紐状部材6を引っ張り操作することで固定具1の締め付けを緩めることができる。このとき、第1バー3の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具1の取り外し作業時に例えば第1紐状部材5を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具1の取り外し作業時に第1紐状部材5を切断して第1紐状部材5の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具1全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0068】
また、図27乃至図36は本発明の第4の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0069】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具61は、図27に示すように軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー63と、第2の固定部材である第2バー64と、前記2つのバー63,64と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材65と、第2紐状部材66と、弾性体のストッパ67と、前記第1紐状部材65の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材68と、を具備する。なお、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具61は、第2バー64以外の構成は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。そして、スペーサ部材68の管壁には、スリット9(図5参照)とタグ70とが形成されている。
【0070】
第2バー64は、図28〜30に示すように管体によって形成されている。この第2バー64の軸線方向の中央位置の管壁には2つの紐状部材の挿通孔64aが設けられている。この挿通孔64aは、第2バー64の軸線方向と直交する方向に延設されている。さらに、この第2バー64の軸方向の管孔64bは、2つの挿通孔64aとそれぞれ連通されている。
【0071】
前記第2紐状部材66は、図29に示すように前記第2バー64の一方の前記挿通孔64aから前記第2バー64の管孔64b内に挿入され、前記第2バー64の管孔64bの一端側の開口端から前記第2バー64の管外に延出されている。
【0072】
次に、図31に示すように本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具61が体内に留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定している状態からこの固定具61を抜去する作業について説明する。
【0073】
まず、図示しない内視鏡のチャンネルを介して図10に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、スペーサ部材68のタグ70を把持鉗子11で把持する。この状態で、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材65から前記スペーサ部材68を離脱させる。このスペーサ部材68の離脱によって図32に示すように第2バー64とストッパ67との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材65の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材68は、把持鉗子11で把持・回収される。
【0074】
次に、把持鉗子11で第2紐状部材66のループ部66aを図33中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、第2紐状部材66によって第1バー63の端部が手元側に引かれるので、図33に示すように第1バー63の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1バー63のほぼ中央の第1紐状部材65が固定されている固定点は第2バー64から離れる方向(先端側)に移動するため、第1紐状部材65は図33中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。これにより、第1紐状部材65は第1バー63の長さの1/2の長さだけ先端側に押し出される状態に移動する。このため図34に示すように第1バー63は通孔H3を通りやすくなるので固定具61全体を抜去することができる。
【0075】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図27の固定具61を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具61を抜去する作業時には、スペーサ部材68のタグ70を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材68の前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材65から前記スペーサ部材68を離脱させて第1紐状部材65の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材68を外すことで固定具61の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子11により第2紐状部材66のループ部66aを手元側に引くことにより、第1バー63の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具61の取り外し作業時に例えば第1紐状部材65を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具61の取り外し作業時に第1紐状部材65を切断して第1紐状部材65の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具61全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0076】
また、本実施の形態では図27の固定具61を経内視鏡的に体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行う際に、図35に示すように図27の固定具61を総胆管H2側に全て放出した場合に、これを簡単にリカバリーすることができる。すなわち、図36に示すように第2紐状部材66のループ部66aを把持鉗子11(図10参照)により手元側に引くことにより、第1バー63が第2バー64に近づき、並列状態になるので、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、そのままの状態で第2紐状部材66を手元側に引くことにより、固定具61を通孔H3を通り十二指腸H1側に引き抜くことができる。
【0077】
また、図37乃至図43は本発明の第5の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0078】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具71は、図37に示すように軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー73と、第2の固定部材である第2バー74と、前記2つのバー73,74と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材75と、第2紐状部材76と、弾性体のストッパ77と、前記第1紐状部材75の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材78と、を具備する。なお、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具71は、第2バー74以外の構成は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。そして、スペーサ部材78の管壁には、スリット9(図5参照)とタグ80とが形成されている。
【0079】
第2バー74は、図38〜40に示すように管体によって形成されている。この第2バー74の軸線方向の中央位置の管壁には2つの紐状部材の挿通孔74aが設けられている。この挿通孔74aは、第2バー74の軸線方向と直交する方向に延設されている。さらに、この第2バー74の軸方向の管孔74bは、2つの挿通孔74aとそれぞれ連通されている。
【0080】
前記第2紐状部材76は、図39に示すように前記第2バー74の管孔74bの一方の開口端から前記第2バー74の管孔74b内に挿入され、前記第2バー74の管孔74bの他端側の開口端から前記第2バー74の管外に延出されている。
【0081】
次に、図38に示すように本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具71が体内に留置され、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aを密着固定している状態からこの固定具71を抜去する作業について説明する。
【0082】
まず、図示しない内視鏡のチャンネルを介して図10に示すように把持鉗子11を挿入する。そして、スペーサ部材78のタグ80を把持鉗子11で把持する。この状態で、把持鉗子11を引っ張り操作する。これにより、前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材75から前記スペーサ部材78を離脱させる。このスペーサ部材78の離脱によって図42に示すように第2バー74とストッパ77との間に隙間が形成される。その結果、第1紐状部材75の引っ張り状態が解除される。なお、スペーサ部材78は、把持鉗子11で把持・回収される。
【0083】
次に、把持鉗子11で第2紐状部材76のループ部76aを図43中に矢印Aに示すように手元側に引く。すると、図43に示すように第2紐状部材76によって第2バー74が十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変える。同時に、第1バー73の端部が手元側に引かれるので、第1バー73の長手方向が総胆管壁H2aに対して略垂直となるように向きを変える。このとき、第1バー73のほぼ中央の第1紐状部材75が固定されている固定点は第2バー74から離れる方向(先端側)に移動するため、第1紐状部材75は図43中に矢印Bに示すように先端側に押し出される状態に移動する。したがって、本実施の形態では、第2紐状部材76を引っ張り操作することにより、第1バー73および第2バー74がそれぞれ総胆管壁H2aおよび十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変えることにより、図43に示すように第1バー73は通孔H3を通りやすくなるので固定具71全体を抜去することができる。このとき、第1紐状部材75には第1バー73の長さの1/2の長さ+第2バー74の長さの1/2の長さの余裕が必要になる。
【0084】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図37の固定具71を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具71を抜去する作業時には、スペーサ部材78のタグ80を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材78の前記スリット9(図5参照)を通して前記第1紐状部材75から前記スペーサ部材78を離脱させて第1紐状部材75の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材78を外すことで固定具71の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子11により第2紐状部材76のループ部76aを手元側に引くことにより、第1バー73および第2バー74がそれぞれ総胆管壁H2aおよび十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具71の取り外し作業時に例えば第1紐状部材75を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具71の取り外し作業時に第1紐状部材75を切断して第1紐状部材75の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具71全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態でも第4の実施の形態(図27乃至図36参照)と同様に、図37の固定具71を経内視鏡的に体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行う際に、図37の固定具71を総胆管H2側に全て放出した場合に、これを簡単にリカバリーすることができる。すなわち、第2紐状部材76のループ部76aを把持鉗子11(図10参照)により手元側に引くことにより、第1バー73および第2バー74がそれぞれ一直線状態になるので、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、そのままの状態で第2紐状部材76を手元側に引くことにより、固定具71を通孔H3を通り十二指腸H1側に引き抜くことができる。
【0086】
また、図44乃至図46は本発明の第6の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の構成を次の通り変更したものである。
【0087】
すなわち、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具91は、図44に示すように軸状の2つの固定部材、すなわち第1の固定部材である第1バー93と、第2の固定部材である第2バー94と、前記2つのバー93,94と組み合わせて使用される2つの紐状部材、すなわち第1紐状部材95と、第2紐状部材96と、弾性体のストッパ97と、前記第1紐状部材95の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段としての管状のスペーサ部材98と、を具備する。なお、本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具91は、第1紐状部材95の先端部を第1バー93に固定する固定手段および第2紐状部材96の先端部を第2バー93に固定する固定手段以外の構成は第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。そして、スペーサ部材98の管壁には、スリット99とタグ100とが形成されている。
【0088】
第1バー93は、管体によって形成されている。第1バー93の管内腔93aには第2紐状部材96が移動自在に挿通されている。また、第2紐状部材96の先端部は、第1バー93の管内腔93aの外側に延出されている。この第2紐状部材96の先端部には、第1バー93の内径よりも大径な抜け止め部材101が固定されている。そして、第2紐状部材96が基端部側に引っ張られ、第2紐状部材96に張力が作用することにより、抜け止め部材101が第1バー93の端部に突き当てられる状態で固定されるようになっている。
【0089】
また、図45に示すように第1バー93の軸心方向(長手方向)の中央位置には第1バー93の軸心方向と直交する方向に横穴93bが形成されている。この横穴93bは、管内腔93aと連通されている。
【0090】
第1紐状部材95は、1本の紐体によって形成されている。この第1紐状部材95の紐体は、第1バー93の横穴93b内に移動自在に挿通されている。さらに、第1バー93の横穴93bから両側に延出される第1紐状部材95の紐体の2つの延出部は図46に示す通り後述する第2バー94の横穴94b内にそれぞれ連通されている。そして、第1紐状部材95の紐体の2つの延出部が基端部側に引っ張られ、第1紐状部材95に張力が作用することにより、第1バー93の横穴93b内に挿通された部分によって第1バー93が第1紐状部材95の基端部側に引っ張られる。これにより、第1紐状部材95の先端部が第1バー93に固定する固定手段が形成されている。
【0091】
第2バー94は、第5の実施の形態(図37〜43参照)と同様に管体によって形成されている。この第2バー94の管内腔94aには第2紐状部材96が移動自在に挿通されている。
【0092】
また、図46に示すように第2バー94の軸心方向(長手方向)の中央位置には第2バー94の軸心方向と直交する方向に横穴94bが形成されている。この横穴94bは、管内腔94aと連通されている。さらに、横穴94b内には第1バー93の横穴93bから両側に延出される第1紐状部材95の紐体の2つの延出部がそれぞれ挿入されている。そして、第1紐状部材95の紐体の2つの延出部は、第2バー94の横穴94bから延出されたのち、スペーサ部材98と、ストッパ97とに順次、挿入されるようになっている。
【0093】
本実施の形態の内視鏡用生体壁固定具91の作用は第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1と同様である。
【0094】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態によれば、経内視鏡的に図44の固定具91を体内に留置させ、総胆管壁H2aと十二指腸壁H1aの密着固定を行った後、固定具91を抜去する作業時には、スペーサ部材98のタグ100を把持鉗子11で把持して引っ張り操作する。これにより、スペーサ部材98の前記スリット99を通して前記第1紐状部材95から前記スペーサ部材98を離脱させて第1紐状部材95の引っ張り状態を解除することができる。すなわち、スペーサ部材98を外すことで固定具91の締め付けを緩めることができる。この状態で、把持鉗子11により第2紐状部材96のループ部96aを手元側に引くことにより、第1バー93および第2バー94がそれぞれ総胆管壁H2aおよび十二指腸壁H1aに対して略垂直となるように向きを変えることができ、通孔H3を通りやすくすることができる。そのため、固定具91の取り外し作業時に例えば第1紐状部材95を切断する面倒な作業を行う必要がない。その結果、固定具91の取り外し作業時に第1紐状部材95を切断して第1紐状部材95の引っ張り状態を解除する場合(従来例)のように切断用鉗子と体内からの取出し用の把持鉗子との2種類の鉗子が必要な場合に比べて固定具91全体を抜去し、回収する作業を容易に行うことができる。
【0095】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態(図1乃至図13参照)の内視鏡用生体壁固定具1の第2バー4に代えて第4の実施の形態(図27乃至図36参照)の第2バー64や、第5の実施の形態(図37乃至図43参照)の第2バー74を組み合わせても良い。
【0096】
さらに、第2の実施の形態(図17乃至図22参照)の内視鏡用生体壁固定具1の第2バー4に代えて第4の実施の形態(図27乃至図36参照)の第2バー64や、第5の実施の形態(図37乃至図43参照)の第2バー74を組み合わせても良い。
【0097】
さらに、第3の実施の形態(図24乃至図26参照)の内視鏡用生体壁固定具1の第2バー4に代えて第4の実施の形態(図27乃至図36参照)の第2バー64や、第5の実施の形態(図37乃至図43参照)の第2バー74を組み合わせても良い。さらに、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図2】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を示す斜視図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】図2のIV−IV線断面図。
【図5】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具のスペーサを示す斜視図。
【図6】図1のVI−VI線断面図。
【図7】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具を留置するための留置装置を示す縦断面図。
【図8】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具を留置装置に組み付けた状態の留置装置の挿入部の先端部分を示す縦断面図。
【図9】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図10】図9の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図11】図9の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態を示す要部の縦断面図。
【図12】図11の内視鏡用生体壁固定具から第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図13】図12の内視鏡用生体壁固定具を総胆管と十二指腸との接合部分から引き抜いて取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図14】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具のスペーサの変形例を示す斜視図。
【図15】第1の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具に図14の変形例のスペーサを組み込んだ状態を示す要部の縦断面図。
【図16】図15の内視鏡用生体壁固定具から図14の変形例のスペーサを取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図17】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図18】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の要部の斜視図。
【図19】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図20】図19の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図21】図19の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態で第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図22】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具に組み込んだ図14のスペーサを内視鏡用生体壁固定具から取り外した状態で第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図23】第2の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具のスペーサの変形例を示す斜視図。
【図24】本発明の第3の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具とこの固定具の取り外し作業に使用される内視鏡とを示す要部の縦断面図。
【図25】第3の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に内視鏡を内視鏡用生体壁固定具に接近させた状態を示す要部の縦断面図。
【図26】第3の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に図25の内視鏡用生体壁固定具から第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図27】本発明の第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図28】第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を示す斜視図。
【図29】図28の29−29線断面図。
【図30】図28の30−30線断面図。
【図31】第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図32】図31の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態を示す要部の縦断面図。
【図33】図32の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図34】図32の内視鏡用生体壁固定具を総胆管と十二指腸との接合部分から引き抜いて取り外す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図35】第4の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具を総胆管側に押し込んでしまった状態を示す要部の縦断面図。
【図36】図35の内視鏡用生体壁固定具を総胆管側から取り出す作業を説明するための要部の縦断面図。
【図37】本発明の第5の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す側面図。
【図38】第5の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を示す斜視図。
【図39】図38の39−39線断面図。
【図40】図38の40−40線断面図。
【図41】第5の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具によって総胆管と十二指腸との間を接合した状態を示す要部の縦断面図。
【図42】図41の内視鏡用生体壁固定具からスペーサを取り外した状態を示す要部の縦断面図。
【図43】図42の内視鏡用生体壁固定具の取り外し作業時に第2の紐をA方向に引っ張り操作した状態を示す要部の縦断面図。
【図44】本発明の第6の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の全体の概略構成を示す斜視図。
【図45】第6の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材と第1紐状部材および第2紐状部材との係合状態を示す縦断面図。
【図46】第6の実施の形態の内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材と第1紐状部材および第2紐状部材との係合状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0099】
H1…十二指腸(第1臓器)、H2…総胆管(第2臓器)、H1a…十二指腸壁(第1生体壁)、H2a…総胆管壁(第2生体壁)、H3…通孔、1…内視鏡用生体壁固定具、2…留置装置、3…第1バー(第1の固定部材)、4…第2バー(第2の固定部材)、5…第1紐状部材、6…第2紐状部材、7…ストッパ、8…スペーサ部材(引っ張り状態解除手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、
前記内視鏡用生体壁固定具は、
軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、
前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に係合され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に係合され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、
前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、
前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、
を具備し、
前記引っ張り状態解除手段の作動時に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜き可能である内視鏡用生体壁固定具。
【請求項2】
前記第1固定部材は、直線状の棒材によって形成され、
前記棒材は、前記直線の長手方向に沿って中央位置に前記棒材の長手方向と直交する方向に向けて穿設された孔を有し、
前記第1紐状部材は、1本の第1紐体によって形成され、
前記第1紐体が前記孔内に移動自在に挿通された状態で、前記孔の両側にそれぞれ延出される部分を前記第1紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記第1紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項3】
前記第1固定部材は、直線状の管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、1本の第2紐体によって形成され、
前記第2紐体が前記管体の管腔内に移動自在に挿通された状態で、前記管体の管腔外に延出される前記第2紐体の終端部分に前記管体の内径よりも大径な抜け止め部材が固定され、
前記第2紐体を前記第2紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記抜け止め部材を前記第1固定部材に突き当てて前記第2紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項4】
前記引っ張り状態解除手段は、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される管状のスペーサ部材を有し、
前記スペーサ部材は、前記第1紐状部材から離脱可能である請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、前記管壁に前記管の軸線方向に沿って延設されたスリット、このスリットは前記第1紐状部材の径よりも幅が狭い,と、
前記スリットと反対側の前記管壁に形成されたタグと、
を有し、
前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項6】
前記スペーサ部材は、前記スペーサ部材の本体とは別体に形成されたタグ、このタグは、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される,を有し、
前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項7】
前記スペーサ部材は、少なくとも前記第1固定部材の軸方向の長さの1/2以上の長さである請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項8】
前記スペーサ部材は、先端部に前記スリットの口元に前記第1紐状部材をガイドするガイド部を有する請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項9】
前記スペーサ部材は、少なくとも前記管の軸線方向の一部に前記スリットがないリング状部分を有し、
前記リング状部分以外の部分が前記スリットを通して前記第1紐状部材から離脱可能である請求項5に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項10】
前記引っ張り状態解除手段は、前記第1固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第1紐状部材の前記先端部が固定された第1紐状部材固定部と、
前記第1固定部材の端部に配置され、前記第2紐状部材の前記先端部が固定された第2紐状部材固定部と、
前記第2固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第2固定部材の軸線方向と直交する方向に延設された紐状部材挿通孔と、
を具備し、
前記第1紐状部材および前記第2紐状部材は、前記紐状部材挿通孔を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されている請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項11】
前記第2固定部材は、管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の前記紐状部材挿通孔から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項12】
前記第2固定部材は、管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の他端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項13】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、
前記留置装置は、前記内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部の基端部に配置されたハンドル部と
を具備し、
前記挿入部は、外チューブと、
前記外チューブ内に前記外チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた内チューブと、
前記内チューブ内に前記内チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた操作ワイヤ、前記操作ワイヤは先端部にフック部を有する,とを備え、
前記ハンドル部は、前記外チューブに対して前記内チューブを前記外チューブの軸線方向にスライドさせる内チューブ操作部と、
前記内チューブに対して前記操作ワイヤを前記内チューブの軸線方向にスライドさせるワイヤ操作部と、
を有し、
前記内視鏡用生体壁固定具は、
軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、
前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、
前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、
前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、
を具備し、
前記フック部に前記第1紐状部材の基端部が係脱可能に係止された状態で、前記内視鏡用生体壁固定具が前記留置装置の前記外チューブの内部に引き込まれる状態に組み込まれ、
前記留置装置の前記内チューブの押し出し操作にともない前記内視鏡用生体壁固定具が前記外チューブの外側に押し出し操作されて、前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具。
【請求項14】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、
前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、
前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、
前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、管状のスペーサ部材を前記第1紐状部材に摺動可能に挿通させた状態で、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、
前記スペーサ部材を前記第1紐状部材から離脱させることにより、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除して前記第2固定部材と前記ストッパとの間に前記第1紐状部材を移動させるスペースを形成する工程と、
前記スペーサ部材の離脱後に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、
を具備する内視鏡用生体壁固定具の操作方法。
【請求項15】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、
前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、
前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、
前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、
前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、
を具備する内視鏡用生体壁固定具の操作方法。
【請求項1】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、
前記内視鏡用生体壁固定具は、
軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、
前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に係合され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に係合され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、
前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、
前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、
を具備し、
前記引っ張り状態解除手段の作動時に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜き可能である内視鏡用生体壁固定具。
【請求項2】
前記第1固定部材は、直線状の棒材によって形成され、
前記棒材は、前記直線の長手方向に沿って中央位置に前記棒材の長手方向と直交する方向に向けて穿設された孔を有し、
前記第1紐状部材は、1本の第1紐体によって形成され、
前記第1紐体が前記孔内に移動自在に挿通された状態で、前記孔の両側にそれぞれ延出される部分を前記第1紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記第1紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項3】
前記第1固定部材は、直線状の管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、1本の第2紐体によって形成され、
前記第2紐体が前記管体の管腔内に移動自在に挿通された状態で、前記管体の管腔外に延出される前記第2紐体の終端部分に前記管体の内径よりも大径な抜け止め部材が固定され、
前記第2紐体を前記第2紐状部材の基端側に向けて引っ張り、張力を作用させることにより、前記抜け止め部材を前記第1固定部材に突き当てて前記第2紐状部材の前記先端部を前記第1固定部材に固定させる固定手段を有する請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項4】
前記引っ張り状態解除手段は、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される管状のスペーサ部材を有し、
前記スペーサ部材は、前記第1紐状部材から離脱可能である請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、前記管壁に前記管の軸線方向に沿って延設されたスリット、このスリットは前記第1紐状部材の径よりも幅が狭い,と、
前記スリットと反対側の前記管壁に形成されたタグと、
を有し、
前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項6】
前記スペーサ部材は、前記スペーサ部材の本体とは別体に形成されたタグ、このタグは、前記第1紐状部材に摺動可能に挿通される,を有し、
前記タグを引っ張り操作することにより、前記スリットを通して前記第1紐状部材から前記スペーサ部材を離脱させる請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項7】
前記スペーサ部材は、少なくとも前記第1固定部材の軸方向の長さの1/2以上の長さである請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項8】
前記スペーサ部材は、先端部に前記スリットの口元に前記第1紐状部材をガイドするガイド部を有する請求項4に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項9】
前記スペーサ部材は、少なくとも前記管の軸線方向の一部に前記スリットがないリング状部分を有し、
前記リング状部分以外の部分が前記スリットを通して前記第1紐状部材から離脱可能である請求項5に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項10】
前記引っ張り状態解除手段は、前記第1固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第1紐状部材の前記先端部が固定された第1紐状部材固定部と、
前記第1固定部材の端部に配置され、前記第2紐状部材の前記先端部が固定された第2紐状部材固定部と、
前記第2固定部材の軸線方向の中央位置に配置され、前記第2固定部材の軸線方向と直交する方向に延設された紐状部材挿通孔と、
を具備し、
前記第1紐状部材および前記第2紐状部材は、前記紐状部材挿通孔を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されている請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項11】
前記第2固定部材は、管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の前記紐状部材挿通孔から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項12】
前記第2固定部材は、管体によって形成され、
前記第2紐状部材は、前記第2固定部材の一端側の開口端から前記第2固定部材の管内に挿入され、前記第2固定部材の他端側の開口端から前記第2固定部材の管外に延出されている請求項1に記載の内視鏡用生体壁固定具。
【請求項13】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具であって、
前記留置装置は、前記内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部の基端部に配置されたハンドル部と
を具備し、
前記挿入部は、外チューブと、
前記外チューブ内に前記外チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた内チューブと、
前記内チューブ内に前記内チューブの軸線方向にスライド可能に設けられた操作ワイヤ、前記操作ワイヤは先端部にフック部を有する,とを備え、
前記ハンドル部は、前記外チューブに対して前記内チューブを前記外チューブの軸線方向にスライドさせる内チューブ操作部と、
前記内チューブに対して前記操作ワイヤを前記内チューブの軸線方向にスライドさせるワイヤ操作部と、
を有し、
前記内視鏡用生体壁固定具は、
軸状の2つの固定部材、これらの固定部材は、前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入される第1固定部材と、前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に配置される第2固定部材とを有する,と、
前記2つの固定部材と組み合わせて使用される2つの紐状部材、これらの紐状部材は先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第1紐状部材と、先端部および基端部を有し、前記先端部が前記第1固定部材の端部に固定され、基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出される第2紐状部材を有する,と、
前記第1紐状部材に摺動可能に挿通され、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材に圧接状態で係脱可能に係止され、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する弾性体のストッパと、
前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除する引っ張り状態解除手段と、
を具備し、
前記フック部に前記第1紐状部材の基端部が係脱可能に係止された状態で、前記内視鏡用生体壁固定具が前記留置装置の前記外チューブの内部に引き込まれる状態に組み込まれ、
前記留置装置の前記内チューブの押し出し操作にともない前記内視鏡用生体壁固定具が前記外チューブの外側に押し出し操作されて、前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具。
【請求項14】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、
前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、
前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、
前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、管状のスペーサ部材を前記第1紐状部材に摺動可能に挿通させた状態で、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、
前記スペーサ部材を前記第1紐状部材から離脱させることにより、前記第1紐状部材の引っ張り状態を解除して前記第2固定部材と前記ストッパとの間に前記第1紐状部材を移動させるスペースを形成する工程と、
前記スペーサ部材の離脱後に、前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、
を具備する内視鏡用生体壁固定具の操作方法。
【請求項15】
内視鏡のチャンネルを通して体内に挿入される留置装置によって体内の2つの臓器、これらの臓器は、前記内視鏡が挿入される側の第1臓器と、前記内視鏡が挿入されない側の第2臓器とを有する,の前記第1臓器の第1生体壁と前記第2臓器の第2生体壁とを密着させて固定する状態で留置される内視鏡用生体壁固定具の操作方法であって、
前記内視鏡用生体壁固定具の第1固定部材を前記第1生体壁と前記第2生体壁との接合部間に形成された通孔を通して前記第2臓器の内部空間に挿入させる工程と、
前記通孔に挿入されずに前記第1臓器の内部空間側に前記内視鏡用生体壁固定具の第2固定部材を配置させる工程と、
前記第1固定部材に先端部が固定された第1紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されるとともに、前記第1固定部材の端部に先端部が固定された第2紐状部材の基端部側が前記第2固定部材を通して前記第1固定部材とは反対側に延出されたのち、前記第1紐状部材を引っ張り操作して前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に前記第1生体壁と前記第2生体壁とを挟む状態で、前記第1紐状部材にストッパを圧接状態で係脱可能に係止させ、2つの前記生体壁間を接合させた状態で保持する工程と、
前記第2紐状部材を引っ張り操作することにより、前記第1紐状部材を前記第1固定部材側に送り出して前記第1固定部材を前記通孔とほぼ平行な姿勢に変化させ、前記通孔を通して前記第1固定部材を前記第1臓器の内部空間側に引き抜く工程と、
を具備する内視鏡用生体壁固定具の操作方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
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【図18】
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【図20】
【図21】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【公開番号】特開2008−12320(P2008−12320A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177667(P2007−177667)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
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