説明

内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法

【課題】リファレンス画像を正確にかつ簡単に取得することができる内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法を提供する。
【解決手段】内視鏡装置1は、挿入部の先端部8に撮像素子を有するスコープ7が着脱可能な本体部4と、本体部4に設けられ、撮像素子を駆動して、撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する映像信号処理部22と、先端部8の遮光指示を告知するために所定のメッセージを表示部5に表示し、所定のメッセージの表示後、撮像素子を加熱して、撮像素子が所定の温度になった状態で、撮像素子を駆動してリファレンス画像を取得し、所定のメモリに格納する制御部21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は、工業分野及び医療分野において広く利用されている。内視鏡装置には、先端部に撮像素子が設けられた挿入部を有するスコープと、スコープが着脱可能に接続される本体部とから構成されるものがある。
【0003】
ユーザは、細長な挿入部の先端部を被写体の近傍に接近させ、撮像素子により撮像された画像を、本体部のモニタに表示させることにより、被写体の検査を行うことができる。
【0004】
先端部に設けられる撮像素子は、画素間の感度バラツキ、画素欠陥を有する。そのため、内視鏡装置は、一般に、これらの感度バラツキ等を補正するための補正回路を有している。例えば、特開昭63−117727号公報に提案されているように、本体部に接続されるスコープ内に補正回路を設け、スコープの撮像素子の感度バラツキ等の補正をスコープ内で行う内視鏡装置がある。この提案の内視鏡装置によれば、スコープ内に補正回路を設けたので、スコープの交換時に、本体部における、感度バラツキ等の補正のための作業が不要になる、というメリットがある。
【0005】
通常、補正回路は、補正用のリファレンス画像を記憶する不揮発性メモリを有する。リファレンス画像は、工場においてスコープの製造時に、暗室等の光の無い空間内にスコープを配置して、所定の恒温状態下で撮像素子を駆動して出力された撮像素子の映像信号から生成され、そのデータは補正回路のフラッシュメモリ等に記録される。撮像素子は、温度依存性を有するので、所定の恒温状態下でリファレンス画像を取得しなければならない。
【0006】
内視鏡装置の使用時、スコープにおいて撮像されて得られた映像信号は、リファレンス画像を用いて、画素間の感度バラツキ、画素欠陥などが補正されて、本体部に供給される。その結果、本体部では、画素欠陥などが補正された映像信号に対して信号処理をして、モニタに被写体像を表示する。
【0007】
一方で、内視鏡装置が過酷な作業環境で使用されると、スコープが破損あるいは故障する場合がある。その場合、破損等したスコープは交換されなければならない。
上述した補正回路を有するスコープの場合、交換されて新たに接続されるスコープも補正回路を有しているので、本体部には画素欠陥などが補正された映像信号が供給され、モニタには、感度バラツキ等が補正された画像が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−117727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した内視鏡装置のスコープは補正回路も有するため、その分だけ、スコープは高価になってしまう。スコープの交換の可能性を考えた場合、スコープが高価であることは、ユーザにとってはコストの面で好ましいことではないので、スコープの細長い挿入部だけを交換できるようにするのが望ましい。
【0010】
しかし、スコープの細長い挿入部だけを交換できるようにした場合は、補正回路は、本体部側に設けられることになる。その場合、撮像素子の画素間の感度バラツキ、画素欠陥等を補正するために、挿入部の交換時に、例えばユーザが、上記のようなリファレンス画像の取得と、本体部の補正回路の不揮発性メモリへの書き込みを行う作業をしなければならない。
【0011】
ユーザより行われる、リファレンス画像を取得して不揮発性メモリへ記録する設定作業は、所定の温度環境下で正確に行われなければならないが、従来のリファレンス画像の取得は、スコープの製造時に工場等における恒温室において行われるものであり、ユーザが正確にかつ簡単にできるものではない。
【0012】
そこで、本発明は、リファレンス画像を正確にかつ簡単に取得することができる内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、挿入部の先端部に撮像素子を有するスコープが着脱可能な本体部と、前記本体部に設けられ、前記撮像素子を駆動して、前記撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する映像信号処理部と、前記先端部の遮光指示を告知するために所定のメッセージを表示部に表示し、該所定のメッセージの表示後、前記撮像素子を加熱して、前記撮像素子が所定の温度になった状態で、前記撮像素子を駆動してリファレンス画像を取得し、所定のメモリに格納する制御部と、を有する内視鏡装置を提供することができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、スコープの先端部に設けられた撮像部に光が入らないように、前記撮像部を遮光させるための指示のメッセージを、表示部に表示し、前記撮像部を加熱して、前記撮像部の温度を所定の温度にし、前記撮像部の温度が前記所定の温度になった状態で、前記撮像部を駆動してリファレンス画像を取得し、取得した前記リファレンス画像を所定のメモリに格納する内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リファレンス画像を正確にかつ簡単に取得することができる内視鏡装置及び内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の外観構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置1の構成を模式的に示したブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる、内視鏡装置1の初期設定の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる、内視鏡装置1の初期設定の処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる、初期設定をするか否かをユーザに指示させるための画面の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係わる、スコープ初期設定の正常終了をユーザに告知するための画面の例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係わる内視鏡装置1Aの構成を模式的に示したブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係わる、内視鏡装置1Aの初期設定の動作の処理の流れの一部の例を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係わる、内視鏡装置1Aの初期設定の動作の処理の流れの一部の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
1.全体構成
まず図1に基づき、本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の構成を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の外観構成図である。
図1に示すように、内視鏡装置1は、メインユニット2と、メインユニット2に接続される操作部3とを含んで構成される。メインユニット2と操作部3により、内視鏡装置1の本体部4が構成される。メインユニット2は、内視鏡画像、操作メニュー等が表示される表示装置としての液晶パネル(LCD)等の表示部5を有する。なお、モニタとしての表示部5は、タッチパネルであってもよい。操作部3は、接続ケーブルであるユニバーサルケーブル6により、メインユニット2と接続される。
【0018】
操作部3には、可撓性の挿入チューブからなるスコープ部(以下、スコープともいう)7が着脱可能に接続される。スコープ7は、接続箇所CPにおいて、操作部3に対して着脱可能となっている。スコープ7のコネクタ部7aが、操作部3のコネクタ部3aに接続されることによって、スコープ7は、本体部4に接続される。すなわち、本体部4は、挿入部7bの先端部8に撮像素子を有するスコープ7が着脱可能に構成されている。
【0019】
スコープ7の挿入部7bの先端部8には、図示しない撮像素子、例えばCMOSセンサ等、が内蔵され、撮像素子の撮像面側には、レンズ等の撮像光学系が配置されている。先端部8の基端側には、湾曲部9が設けられている。先端部8は、遮光部材である遮光用アダプタ10が取り付け可能になっている。遮光用アダプタ10は、キャップ形状を有し、先端部8を覆うように先端部8に装着可能になっていて、先端部8に遮光用アダプタ10が装着されると、撮像素子は、撮像面に光が進入しない遮光状態になる。
【0020】
なお、本実施の形態では、遮光用アダプタ10は、図1に示すように、先端部8に装着するキャップ形状を有するが、先端部8を挿入可能な暗箱のような装置でもよく、あるいは、先端部8に貼り付けられる、光を透過しない材料でできた粘着性のシール部材でもよい。シール部材の場合、粘着材がシール部材の片面に設けられ、その粘着面を、撮像部12のための撮像窓に貼り付けることで、簡単に撮像素子の遮光をすることができる。
【0021】
レリーズボタン、上下左右(U/D/L/R)方向湾曲ボタン、等の各種操作ボタンが、操作部3に設けられている。ユーザは、操作部3の各種操作ボタンを操作して、被写体の撮像、静止画記録等を行うことができる。なお、表示部5がタッチパネルであった場合、ユーザは、タッチパネルを操作して、初期設定等の内視鏡装置1の種々の操作、例えば、内視鏡装置1の動作内容を指示することができるので、表示部自体が指示部を構成する。
【0022】
撮像して得られた画像データは、検査対象の検査データであり、メモリカード等の記録媒体に記録され、その記録媒体である外部メモリ30(図2)は、本体部2に対して着脱可能となっている。
【0023】
スコープ7は、後述するように、本体部4への接続時に、それぞれの種類を判別するための識別部を有している。本体部4は、スコープ7が接続されると、それぞれの識別部の状態あるいは識別データ(すなわちIDデータ)を検出あるいは読み出して、それぞれの種類を判別するように構成されている。ここでは、IDは、機器の型番等の種類の情報だけでなく、個体識別のための製造番号等のユニークな情報も含んでいる。
以上のように、スコープ7は、操作部3に着脱可能になっており、スコープ7が破損等した場合には、スコープ7だけを交換することができる。
【0024】
また、図1の場合、メインユニット2と操作部3はユニバーサルケーブル6により接続されているが、メインユニット2と操作部3とを一体化にして一つのユニットとしてもよい。その場合、スコープ7は、その一つのユニットである装置(本体部)に対して着脱可能となる。
【0025】
2.回路構成
図2は、内視鏡装置1の構成を模式的に示したブロック図である。上述したように、内視鏡装置1は、本体部4とスコープ7とから構成され、スコープ7の先端には、遮光用アダプタ10が装着可能となっている。
【0026】
スコープ7は、光学レンズ部11,撮像部12,照明部13,温度検出部14,及びメモリ15を含んで構成されている。
光学レンズ部11は、先端部8に設けられ、被写体からの反射光を受光する対物光学系である。
撮像部12は、CMOSセンサ等の撮像面を有する撮像素子であり、光学レンズ部11の焦点位置に撮像面が位置するように、先端部8内に配置されている。撮像部12は、本体部4からの駆動信号に基づいて、撮像素子を駆動し、光電変換された映像信号を本体部4へ出力する。
【0027】
照明部13は、先端部に設けられ、被写体への照明光を出射する発光素子を含んで構成されている。発光素子は、例えば、LED(発光ダイオード)である。照明部13は、本体部4からの駆動信号に基づいて駆動されて、被写体へ照明光を出射する。
温度検出部14は、先端部8内において、特に撮像部12の撮像素子の近傍に設けられ、撮像部12の温度を検出するための温度検出素子を含んで構成されている。温度検出部14は、温度検出素子の出力を、本体部4へ供給する。
メモリ15は、スコープ7の種類及び個体識別するための識別子(以下、IDという)の情報を記憶する不揮発性メモリである。
【0028】
本体部4は、操作部3,表示部5,制御部21,映像信号処理部22,グラフィック重畳部23,照明駆動部24,メインメモリ部25,リアルタイムクロック(RTC)部26、及びメモリ27を含んで構成されている。
【0029】
制御部21は、中央処理装置(CPU)を含み、本体部4内の各種回路の動作の全体を制御する処理部である。制御部21は、ユーザによる操作部3への操作に応じた処理を実行する。
【0030】
映像信号処理部22は、制御部21からの制御信号に基づいて動作し、撮像部12へ駆動信号を供給し、撮像部12からの映像信号を受信して、受信した映像信号に対して所定の画像処理を施して、グラフィック重畳部23を介して、表示部5へ出力する。さらに、映像信号処理部22は、制御部21からの制御信号に基づいて、映像信号をメモリ27へ格納したり、メモリ27から映像信号を読み出して表示部5へ出力する。すなわち、映像信号処理部22は、本体部4に設けられ、撮像素子を駆動して、撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する回路である。
【0031】
グラフィック重畳部23は、制御部21からの制御信号及び映像信号処理部22からの映像信号に基づいて、メニュー画面などを表示部5に表示したり、被写体画像に所定の情報を重畳させた映像信号を表示部5に出力する。
【0032】
照明駆動部24は、制御部21からの制御信号に基づいて、駆動信号を照明部13へ出力する。
メインメモリ部25は、各種機能のためのプログラムを格納するROMと、制御部21内のCPUがプログラムを実行するときに作業領域として利用されるRAMと、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含む。よって、制御部21のCPUは、操作部3からの操作信号に応じて、メインメモリ部25内のプログラムを読み出して、RAMを使いながら実行する。不揮発性メモリには、接続されているスコープ7の個体識別するための識別子(以下、IDという)などの情報が記録される。後述するように、電源がオンされたときに、制御部21は、スコープ7が交換されたか否かを判定するために、接続されているあるいは接続されていたスコープのIDの情報が、その不揮発性メモリに記録される。
リアルタイムクロック部26は、内視鏡画像を記録するときに記録される時刻を発生して保持する回路である。
【0033】
外部メモリ30は、撮像部12で撮像されて得られた映像信号を記録するための不揮発性メモリである。制御部21は、映像信号処理部22を介して、外部メモリ30に記録されている画像を、表示部5に表示させることもできる。
【0034】
3.動作
次に、内視鏡装置1における初期設定の動作、特にレファレンス画像の取得の動作、について説明する。
スコープ7を交換する場合、ユーザは、まず内視鏡装置1の電源をオフし、そのオフ状態で、スコープ7の交換を行う。交換後、ユーザは、内視鏡装置1の電源をオンにすると、図3及び図4の処理が実行される。
図3及び図4は、内視鏡装置1の初期設定の処理の流れの例を示すフローチャートである。図3と図4の処理は、制御部21のCPUにより実行される。
【0035】
まず、内視鏡装置1の電源がオンにされると、制御部21は、前に接続されていたスコープと異なるスコープを検出したか否かを判定する(S1)。この判定は、スコープ7に設けられたメモリ15に記録されているスコープのIDと、メインメモリ部25に記録されているスコープのIDとを比較することによって行うことができる。
【0036】
異なるスコープが検出されない場合(S1:NO)、制御部21は、操作部3において初期設定が指示されたか否かを判定する(S2)。初期設定の指示がされない場合(S2:NO)、処理は、終了する。
【0037】
図5は、初期設定をするか否かをユーザに指示させるための画面の例を示す図である。異なるスコープが接続されていない場合(S1:NO)、制御部21は、メインメモリ部25のROMに記録されている画面データを読み出して、モニタ5の画面5aに、図5の画面を表示する。ユーザは、画面上の「OK」ボタンを選択すると、初期設定を指示し(S2:YES)、「キャンセル」ボタンを選択すると、初期設定を指示しない(S2:NO)ことになる。
【0038】
初期設定の指示がされた場合(S2:YES)、制御部21は、スコープ7と本体部4が接続されているか否かを判定する(S3)。スコープ7と本体部4が接続されているか否かは、スコープのIDが読み出せる等を確認することによって行うことができる。
【0039】
スコープ7が本体部4に接続されていない場合(S3:NO)、制御部21は、「スコープを本体部に接続して下さい。」というメッセージを、モニタ5の画面5aに表示し(S4)、処理は、S3に戻る。
【0040】
異なるスコープが検出された場合(S1:YES)、あるいはスコープ7が本体部4に接続されている場合(S3:YES)、制御部21は、「スコープ初期設定を行います。スコープの先端部を遮光して下さい。」というメッセージを、モニタ5に表示する(S5)。すなわち、制御部21により、スコープ7の先端部8に設けられた撮像部12に光が入らないように、撮像部12を遮光させるために遮光部材の取り付け指示のメッセージが、表示部5に表示される。
【0041】
その表示がモニタ5の画面5a上に表示されるので、ユーザは、遮光用アダプタ10をスコープ7の先端部8に取り付ける。制御部21は、その遮光用アダプタ10をスコープ7の先端部8に取り付ける作業時間を考慮して、所定の時間だけ待つ(S6)。
【0042】
所定時間が経過すると、制御部21は、スコープ7の遮光が正しく行われているか否かを判定する(S7)。
この遮光が正しく行われているか否かの判定は、撮像部12を駆動して、所定の閾値TH以上の画素出力が、所定数以上あるか否かによって行うことができる。所定の閾値TH以上の画素出力がある場合は、撮像素子が光を受けていると考えられるからである。
【0043】
正しく遮光されていない場合(S7:NO)、制御部21は、「正しく遮光をして下さい。」とうメッセージを、モニタ5に表示し(S8)、処理は、S6に移行する。
【0044】
正しく遮光されていると判定された場合(S7:YES)、制御部21は、照明部13を所定の電流で駆動する(S9)。照明部13は駆動されると発熱する。所定の電流による照明部13の駆動が開始されると、照明部13の近傍に配置されている撮像部12(具体的には撮像素子)は温められて、撮像素子の温度が上昇し始める。
制御部21は、温度検出部14により温度を検出する(S10)。温度検出部14により検出される温度は、撮像部12の温度に略対応したものである。
【0045】
そして、制御部21は、検出された温度が、所定の温度、例えば50±1℃、よりも低いか否かを判定する(S11)。
検出された温度が所定の温度よりも低い場合(S11:YES)、制御部21は、照明部13への駆動信号の電流を所定の量だけ、ここでは例として1%だけ、増加させて、照明部13を駆動し(S12)、処理は、S10へ移行する。
【0046】
検出された温度が所定の温度よりも低くない場合(S11:NO)、制御部21は、照明部13への駆動信号の電流を所定の量だけ、ここでは例として1%だけ、減少させて、照明部13を駆動し(S14)、処理は、S10へ移行する。
【0047】
検出された温度が所定の温度よりも高くない場合(S13:NO)、制御部21は、照明部13の駆動を停止した後、撮像部12を駆動して、リファレンス画像を取得する(S16)。以上のようにして、制御部21は、撮像部12を加熱して、撮像部12の温度を所定の温度にし、撮像部12の温度が所定の温度になった状態で、撮像部12を駆動してリファレンス画像を取得する。
【0048】
ここで、リファレンス画像の取得は、画素間の感度バラツキを補正するための固定パターンノイズ画像の取得と、撮像面上の欠陥画素の位置情報及び輝度レベル情報の取得を含む。よって、リファレンス画像は、固定パターンノイズ画像と欠陥画素の位置情報及び輝度レベル情報を含む。
なお、求められる画像品質等によっては、リファレンス画像の取得では、固定パターンノイズ画像と欠陥画素の位置情報及び輝度レベル情報のいずれかを取得するものであってもよい。
さらになお、S13のNOになると、S16では直ぐにリファレンス画像の取得が行われるので、照明部13の駆動を停止する(S15)。
また、上述したように、先端部8に遮光用のシール部材を貼る場合、そのシール部材の遮光性能が高い場合も、リファレンス画像を取得するときに、照明部13の駆動を停止しなくてもよい。
【0049】
制御部21は、撮像部12により撮像して取得したリファレンス画像を、メモリ27に格納し、記録する(S17)。
なお、リファレンス画像を撮像素子により複数回取得して、複数得られた画像の平均値又は最大値のデータを利用して、リファレンス画像としてもよい。
さらになお、制御部21は、リファレンス画像を、メモリ27ではなく、メモリ15に格納するようにしてもよい。
【0050】
以上のように、制御部21は、先端部8の遮光指示を告知するために所定のメッセージを表示部5に表示し、所定のメッセージの表示後、照明部13を駆動することによって撮像素子を加熱して、撮像素子が所定の温度になった状態で、照明部を消灯して撮像素子を駆動してリファレンス画像を取得し、所定のメモリに格納する。
【0051】
リファレンス画像の格納後、制御部21は、「スコープ初期設定は正常に終了しました。」というメッセージを、モニタ5に表示する(S18)。
【0052】
図6は、スコープ初期設定の正常終了をユーザに告知するための画面の例を示す図である。図6に示すように、画面5a上には、メッセージ「スコープ初期設定は正常に終了しました。」と共に、「OK」ボタンが表示されている。
【0053】
ユーザが、画面上の「OK」ボタンを選択すると(S19:YES)、制御部21は、照明部13を駆動して点灯し、通常動作状態、すなわちモニタ5にライブ画像が表示される状態、に移行し(S20)、その後、ユーザは、内視鏡装置1を検査業務に使用することができる。
【0054】
本体部4のメモリ27に記録されたリファレンス画像は、本体部4の映像信号処理部22により、画素間の感度バラツキ、画素欠陥などの補正のために利用され、画素間の感度バラツキ等が補正された綺麗な映像信号が表示部5に出力される。
【0055】
以上のように、従来、リファレンス画像の取得はスコープの製造時に工場等における恒温室において行われるものであり、ユーザが正確にかつ簡単にできるものではなかったが、本実施の形態の内視鏡装置によれば、ユーザがリファレンス画像を正確にかつ簡単に取得することができる。
【0056】
4.変形例
次に、上述した実施の形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上述した実施の形態では、初期設定の処理は、内視鏡装置1の電源がオンされた時に、まず、異なるスコープの検出を行って、異なるスコープが検出された場合と、異なるスコープが検出されず、かつ初期設定の指示がされた場合に行われているが、内視鏡装置1の電源がオンになって、通常動作状態、すなわちモニタ5にライブ画像が表示される状態で動作しているときに、別途メニュー画面を表示させて、そのメニュー画面において、初期設定を選択させることによって、S5以下の初期設定の処理が実行されるようにしてもよい。
(変形例2)
上述した実施の形態では、内視鏡装置1の電源を一旦オフにしてから新しいスコープを装着しているが、内視鏡装置1の電源をオフにしない状態で、すなわち活線状態で、スコープ7の抜去と装着が行える内視鏡装置の場合、スコープの抜去後の装着を検知して、上述した初期設定の処理を行うようにしてもよい。
(変形例3)
上述した実施の形態では、照明部13を駆動して、照明部13において発生した熱を利用して、撮像部12が温められていた。
【0057】
図2において、一点鎖線で示すように、照明部13とは別の、撮像部12を加熱するための発熱部16を別途設けて、その発熱部16を駆動することによって、撮像部12を加熱するようにしてもよい。
【0058】
発熱部15は、撮像部12を加熱するために、先端部8内において撮像部12の撮像素子の近傍に設けられた発熱素子を含んで構成されている。発熱部15は、本体部4からの駆動信号に基づいて駆動されて、熱を発する。
その場合、本体部4には、図2において、一点鎖線で示すように、制御部21の制御の下で駆動する発熱駆動部28が設けられる。発熱駆動部25は、制御部21からの制御信号に基づいて、駆動信号を発熱部15へ出力する。
発熱部16と発熱駆動部28は信号線で接続され、制御部21は、発熱駆動部28を制御することによって、発熱部16の熱を制御することができる。
(変形例4)
さらなる変形例として、撮像部12を、撮像部12の温度を所定の温度まで上昇させることができる所定のモードの駆動信号で駆動させることによって、撮像部12を加熱するようにしてもよい。
この場合の駆動信号は、撮像部12の温度を所定の温度にまで上昇させることができるような、撮像部12における電力消費量が高くなるような駆動方式の駆動信号である。すなわち、高消費電力モードの駆動信号で、撮像部12を駆動することによって、撮像部12を加熱することができる。
【0059】
撮像部12の温度が所定の温度に達したら、高消費電力モードの駆動信号ではなく、通常のリファレンス画像の取得のための駆動信号によって、撮像部12を駆動してリファレンス画像を取得する。
(変形例5)
上述した実施の形態では、照明部13を駆動して、照明部13において発生した熱を利用して、撮像部12を加熱し、上記の変形例3では、発熱部16を別途設けて、その発熱部16を駆動することによって、撮像部12を加熱し、上記の変形例4では、所定のモードの駆動信号で駆動させることによって、撮像部12を加熱する。
【0060】
本変形例は、これらの3つの加熱手段あるいは加熱方法を、2つ以上組み合わせて、撮像部12を加熱する。これらの加熱方法を少なくとも1つ利用しても、同様に撮像部12を加熱することができる。
【0061】
よって、これらの3つの加熱手段あるいは加熱方法を、2つ以上組み合わせて、撮像部12を加熱するようにしてもよい。
(変形例6)
また、上述した実施の形態では、温度検出部14により、撮像部12の温度を検出しているが、撮像素子のオプティカルブラック部分の映像信号に基づいて、撮像部の温度を推定して検出するようにしてもよい。撮像素子の出力する映像信号は、温度特性を有するので、オプティカルブラック部分の映像像信号を利用して、撮像部12の温度を推定することができるからである。
その場合、図3におけるS11,S13の処理は、オプティカルブラック部の信号レベルが、所定のレベルSLよりも低いか、あるいは高いかの判定となる。
【0062】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、ユーザが遮光用アダプタ、シール部材をスコープ7の先端部8に装着する、あるいは先端部8を暗箱に挿入するようにしているが、第2の実施の形態では、スコープ7の先端部8内にシャッタ部を設け、そのシャッタ部により撮像部12の遮光を行う。
【0063】
1.構成
図7は、本実施の形態に係る内視鏡装置1Aの構成を模式的に示したブロック図である。なお、図7において、図2と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明は省略し、異なる構成要素と動作について説明する。
【0064】
図7に示すように、スコープ7は、シャッタ部17を有する。シャッタ部17は、光学レンズ部11と撮像部12の間に配設され、シャッタ部17のシャッタが閉じると、撮像部12へ光が入らないように、構成され配置されている。シャッタ部17のシャッタが開くと、撮像部12には、光学レンズ部11を介する被写体からの反射光が入射する。
例えば、シャッタ部17は、マイクロモータ等によって遮光板が駆動されて、撮像部12の前面を覆うことができるメカニカルな機構を有するものである。
【0065】
また、本体部4は、シャッタ駆動部29を有し、シャッタ部17の開閉は、シャッタ駆動部29からの駆動信号に基づいて行われる。シャッタ駆動部29は、制御部21からの制御信号に基づいて、シャッタ部17の開閉を行うための駆動信号をシャッタ部17へ出力する。
【0066】
2.動作
次に、内視鏡装置1Aにおける初期設定の動作について説明する。
図8及び図9は、内視鏡装置1Aの初期設定の動作の処理の流れの一部の例を示すフローチャートである。図8及び図9において、第1の実施の形態の処理と、同じ処理については、同じ符号を付し、説明は省略し、異なる処理の部分のみ説明する。
【0067】
図8に示すように、異なるスコープが検出された場合及び初期設定が指示された場合(S1及びS3の処理の後)、制御部21は、シャッタ部17のシャッタを閉じるための駆動信号を生成して送信することによって、シャッタ部17のシャッタを閉じるようにシャッタ部17を駆動する(S21)。これにより、第1の実施の形態の場合のように、ユーザが遮光部材等を用いて遮光する作業を行わなくても、自動的に、撮像部12の遮光が行われる。
【0068】
そして、制御部21は、モニタ5の画面5aに、「スコープ初期設定中」のメッセージを表示し(S22)、処理は、S9へ移行する。その後の処理は、第1の実施の形態で説明した処理と同様である。
そして、S18の処理の後は、制御部21は、シャッタ部17のシャッタを開けるための駆動信号を生成して送信することによって、シャッタ部17のシャッタを開けるようにシャッタ部17を駆動し、処理は、通常動作状態に移行する(S23)。
【0069】
従って、本実施の形態の内視鏡装置によっても、ユーザがリファレンス画像を正確にかつ簡単に取得することができる内視鏡装置を実現することができる。
なお、第1の実施の形態で説明した各変形例は、本第2の実施の形態においても適用可能である。
【0070】
以上のように、上述した各実施の形態及び各変形例によれば、従来、リファレンス画像の取得はスコープの製造時に工場等における恒温室において行われるものであり、ユーザが正確にかつ簡単にできるものではなかったが、本実施の形態の内視鏡装置によれば、ユーザがリファレンス画像を正確にかつ簡単に取得することができる。
【0071】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 内視鏡装置、2 メインユニット、3 操作部、3a、7a コネクタ部、4 本体部、5 表示部、5a 画面、6 ユニバーサルケーブル、7 スコープ、8 先端部、9 湾曲部、10 遮光用アダプタ、11 光学レンズ部、12 撮像部、13 照明部、14 温度検出部、15,27 メモリ、16 発熱部、17 シャッタ部、21 制御部、22 映像神郷処理部、23 グラフィック重畳部、24 照明駆動部、25 メインメモリ部、26 リアルタイムクロック部、27 メモリ、28 発熱駆動部、29 シャッタ駆動部、30 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端部に撮像素子を有するスコープが着脱可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、前記撮像素子を駆動して、前記撮像素子で撮像して得られた映像信号を処理する映像信号処理部と、
前記先端部の遮光指示を告知するために所定のメッセージを表示部に表示し、該所定のメッセージの表示後、前記撮像素子を加熱して、前記撮像素子が所定の温度になった状態で、前記撮像素子を駆動してリファレンス画像を取得し、所定のメモリに格納する制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記挿入部の前記先端部に設けられた照明部を駆動することによって、前記撮像素子を加熱することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記挿入部の前記先端部に設けられた発熱部を駆動して発熱させることによって、前記撮像素子を加熱することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮像素子を所定のモードで駆動して発熱させることによって、前記撮像素子を加熱することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
スコープの先端部に設けられた撮像部に光が入らないように、前記撮像部を遮光させるための指示のメッセージを、表示部に表示し、
前記撮像部を加熱して、前記撮像部の温度を所定の温度にし、
前記撮像部の温度が前記所定の温度になった状態で、前記撮像部を駆動してリファレンス画像を取得し、
取得した前記リファレンス画像を所定のメモリに格納する、
ことを特徴とする内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法。
【請求項6】
前記撮像部の温度を前記所定の温度にすることは、
前記先端部に設けられた照明部を駆動する、
前記先端部に設けられた発熱部を駆動する、
及び前記撮像部を所定のモードで駆動する、
の少なくとも1つを行うことによって行われることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡装置のリファレンス画像の取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168331(P2012−168331A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28859(P2011−28859)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】