説明

内部反射を減少させるための光学構造およびその方法

光学システムにおける内部反射を減少させる構造は、第1の屈折率を有する第1の層と、第2の屈折率を有する第2の層と、第3の屈折率を有する第3の層と、第4の屈折率を有する第4の層と、第5の屈折率を有する第5の層とを含む、積層された層を含んでいる。第2の層は第1の層と第3の層との間に配置され、第4の層は第3の層と第5の層との間に配置されている。さらに、第3の屈折率は第2,第4の屈折率より大きく、第2の屈折率は第1の屈折率より大きく、第4の屈折率は第5の屈折率よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には光学システム、より具体的には、光学システム内の高い屈折率を有する層における反射を費用効率良く減少させるために、光の相殺的な干渉を利用するディスプレイ構造に関する。また、本発明は、内部反射を低下させた光学構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの光学システムは、対照的な屈折率nを有する層を含んでいる。これは、システム内において反射を生じさせ、定められた経路から入射光をそらし、効率を低下させ、ノイズを増加させる。より具体的には、いくつかのシステムは、2つの低い屈折率を有する媒体によって囲まれた高い屈折率を有する媒体を含む。そのようないくつかのシステムにおいて、高い屈折率の媒体は、高い屈折率の層の2つの表面における反射による干渉が、構造的にまたは相殺的に、光路差に依存して生じることが可能な程度に十分薄くなっている。
【0003】
そのようなシステムのひとつは、図1に示されるように、n=約1.95を有するインジウム錫酸化(ITO)電極102の一方が、n=約1.53を有する液晶層(LC)104とn=約1.53を有するガラスまたはカラーフィルタ(CF)101との間に存在し、他方が、LC104とn=約1.59を有する平坦化された樹脂108との間に存在する液晶ディスプレイ(LCD)である。また、n=約1.70を有するポリイミド(PI)103の薄い層が、LCと各ITO電極との間に存在する。また、n=約2.04を有する窒化ケイ素層105が、n=約1.55を有する二酸化ケイ素層106の間、および二酸化ケイ素層106と平坦化された樹脂との間に存在する。二酸化ケイ素層および窒化ケイ素層は、薄膜トランジスタ(TFT)システムの内部および周囲に、誘電体として、および不動態化のために使用される。ガラス107は、構造を支持する。これは、産業上の使用において、1つの典型的な構造である。ディスプレイ装置における周辺光の反射は、視聴者が見る画像のコントラストの望まれざる低下を招く。反反射塗料(ARC)は、ディスプレイの前面において使用され、1%未満に反射を低下させることができる。しかしながら、反射は、装置内で生じる。特に、明るい部屋において画像の劣化に寄与するITO電極および窒化ケイ素層において生じる。光学システムの外面用のARCは、詳細に研究されている。例えば、特許文献1において記載されている。
【0004】
光学システム内の界面に関して、殆どの注目を集めたものは、低い屈折率の媒体と高い屈折率の媒体との間に1つの界面が存在することである。
【0005】
特許文献2には、正反射を減少させるために、界面がともに粗い、2つの媒体間に導入された層が記載されている。
【0006】
LCDの領域内において、反射を減少させる点で、いくつかの特有の状態が調査されている。ガラス−半導体の界面において反射を減少させることは、特許文献3の課題である。吸収部材としての「ブラックマトリックス」を効率的にするために、光の相殺的な干渉を使用する構造が、特許文献4において主張されている。特許文献5には、空気に接触しているLCDバックライトの要素に使用されるARCが記載されている。
【0007】
特許文献6には、有機発光ダイオード(OLED)の設計について記載されている。最も外側の層、その内側の層、発光層といった全ての層は、それらの屈折率にしたがって選択された厚みを有しており、その結果、反射における周辺光の相殺的な干渉が生じる。
【0008】
最後に、特許文献7には、囲む媒体よりも高い屈折率を有するOLEDのカソードにおける反射を減少させる構造が記載されている。特許文献7による方法は、1つのカソード層を、高い屈折率と低い屈折率とを交互に有する偶数個の層に取り替えることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,207,263号明細書(2001年3月27日公開)
【特許文献2】米国特許第5,061,874号明細書(1991年10月29日公開)
【特許文献3】米国特許第第2006/0197096A号明細書(2006年9月7日公開)
【特許文献4】米国特許第7,167,221号明細書(2007年1月23日公開)
【特許文献5】米国特許第2004/0109305A号明細書(2004年6月10日公開)
【特許文献6】国際公開2004/044988号パンフレット(2004年5月27日公開)
【特許文献7】米国特許第7,215,075号公報(2007年5月8日公開)
【発明の概要】
【0010】
本発明の装置および方法は、液晶ディスプレイのような光学システムにおいて、内部反射を最小化するために使用可能である。より具体的には、本発明の装置および方法は、第2の層と第3の層との間に形成され、その屈折率が第2の層および第3の層それぞれの屈折率より大きい第1の層を含む構造を提供する。さらに、第4の層は、第2の層の一方に形成され、第5の層は、第3の層の一方に形成され、第4および第5の層はそれぞれ、第2および第3の層より低い屈折率を有する。本発明の装置および方法は、従来の光学装置と比べて、より少ない層を利用して、光学装置の内部反射を減少させる。また、本発明の原理を利用したLCDのような表示装置は、従来のLCD装置に比べて生産のコストを抑える。
【0011】
本発明のある局面によれば、光学システムにおける内部反射を減少させる構造は、第1の屈折率を有する第1の層と、第2の屈折率を有する第2の層と、第3の屈折率を有する第3の層と、第4の屈折率を有する第4の層と、第5の屈折率を有する第5の層とを含む、積層された層で構成されている。第2の層は、第1の層および第3の層の間に配置され、第4の層は、第3の層および第5の層の間に配置されている。第3の屈折率は、第2および第4の屈折率より大きく、第2の屈折率は、計算上、第1の屈折率よりも大きく、第4の屈折率は、計算上、第5の屈折率より大きい。
【0012】
本発明のある局面によれば、第2の屈折率は、第4の屈折率と異なっている。
【0013】
本発明のある局面によれば、第1の屈折率は、第5の屈折率と異なっている。
【0014】
本発明のある局面によれば、少なくとも1つの層は液晶層で構成されている。
【0015】
本発明のある局面によれば、第1の層はカラーフィルタで構成され、第2の層はポリイミドで構成され、第3の層はインジウム錫酸化電極で構成され、第4の層はポリイミドで構成され、第5の層は液晶層で構成されている。
【0016】
本発明のある局面によれば、第1の層は液晶材料で構成され、第2の層はポリイミドで構成され、第3の層はインジウム錫酸化電極で構成され、第4の層はポリイミドで構成され、第5の層は平坦化層で構成されている。
【0017】
本発明のある局面によれば、第1の層は平坦化層で構成され、第2の層はポリイミドで構成され、第3の層は窒化ケイ素層で構成され、第4の層はポリイミドで構成され、第5の層は二酸化ケイ素層で構成されている。
【0018】
本発明のある局面によれば、積層された層のそれぞれの厚みは、相殺的な干渉によって光学システムおける総反射率を最小化するように選択されている。
【0019】
本発明のある局面によれば、前記構造は、積層された層に配置された、二酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも1つと、積層された層を通る光伝送路と、をさらに含み、二酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも1つは、光伝送路上に存在しないようにパターン化されている。
【0020】
本発明のある局面によれば、第2の層および/または第4の層は、ポリカーボネート、ポリスチレンまたはインジウム酸化亜鉛の少なくとも1つで構成されている。
【0021】
本発明のある局面によれば、ディスプレイ装置は支持部材を含み、本発明の構造は、その支持部材を覆うように配置されている。
【0022】
本発明のある局面によれば、支持部材は、ガラスまたはポリマーの少なくとも1つで構成されている。
【0023】
本発明のある局面によれば、ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、またはエレクトロウェッティングディスプレイの少なくとも1つである。
【0024】
本発明のある局面によれば、ディスプレイ装置は、上記に記載の構造から構成されている光学装置を含み、当該光学装置は、複数の画素を含んでいる。さらに、ディスプレイ装置は、表示される画像に対応するデータを受信する少なくとも1つの信号入力部と、複数の画素のそれぞれと接続される複数の信号出力部とを含むディスプレイ電気回路を含み、ディスプレイ電気回路は、画像を生成するために複数の画素を制御するように作動する。
【0025】
本発明のある局面によれば、光学システムにおける反射を減少させる方法は、以下の構成を提供する。すなわち、光学システムは、第1の屈折率を有する第1の層と、第3の屈折率を有する第3の層と、第5の屈折率を有する第5の層で構成されている、積層された層を含み、第3の層が第1の層と第5の層との間に形成され、第3の屈折率が第1の屈折率および第5の屈折率よりも大きいものであって、第1の層と第3の層との間に第2の屈折率を有する第2の層を付加する工程と、第3の層と第5の層との間に第4の屈折率を有する第4の層を付加する工程と、を含み、第3の屈折率は、第2の屈折率および第4の屈折率より大きく、第2の屈折率は、第1の屈折率より大きく、第4の屈折率は、第5の屈折率より大きい。
【0026】
本発明のある局面によれば、前記方法は、第4の層の屈折率が第5の層の屈折率と異なるように、第4の層および第5の層を選択する工程を含む。
【0027】
本発明のある局面によれば、前記方法は、相殺的な干渉によって光学装置における総反射率を最小化するように、積層された層のそれぞれの層を最適化する工程を含む。
【0028】
本発明のある局面によれば、前記方法は、第2の層において反射される総ての光の振幅が、第2の層の異なる表面から反射される波の位相差に依存するような厚みに、第2の層を形成する工程を含む。
【0029】
上記の課題および関連する目的を解決するために、本発明は、以下において十分に記載された特徴を含み、特に、特許請求の範囲において指摘される。後述する記載および添付図面は、本発明の特定の実施例について詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の原理が採用される様々な方法のいくつかを示したものである。本発明の他の対象物、利点、特徴は、図と組み合わせて考慮されることにより、後述する発明の詳細な記載から明確である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】LCDシステムの光学構造を模式的に示した図である。
【図2】2つのより低い屈折率を有する媒体間に、より高い屈折率を有する層を含む光学構造を模式的に示した図である。
【図3】本発明の一実施形態の光学システムにおける反射を減少させるための中間屈折率の層を含む光学構造を模式的に示した図である。
【図4】図2に示す1層の光学システムと比較して、反射を減少させるように設計された従来の2層の光学システムを模式的に示した図である。
【図5】図2に示す1層の光学システムと比較して、反射を減少させるように設計された、交互に積層した従来の4層の光学システムを模式的に示した図である。
【図6】本発明の一実施形態における中間屈折率の層を含むLCD構造を模式的に示した図である。
【図7】図1の構造に代わるLCD構造を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態における中間屈折率の層を有する、図7に示すLCD構造を示す図である。
【図9】本発明の構造を用いることが可能な液晶ディスプレイの制御エレクトロニクスの典型的なレイアウトを機能的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照しつつ、本発明の原理について説明する。本発明は、液晶ディスプレイシステムでの使用のために考え出され、発展させたものであるので、本明細書においては主として、その使用について説明する。しかしながら、広い側面において、本発明の原理は、例えば、有機発光ダイオード(LED)ディスプレイシステム、およびエレクトロウェッティングディスプレイシステムのような他のタイプの光学システムに採用することができる。
【0032】
従来の光学装置においては、ある機能を提供するディスプレイ(または他の光学)システムに高い屈折率の層があり、その層が、理想的には完全な透過性を有する。しかしながら、この層と周りの層との間における屈折率のコントラストにより、反射が起きる。この反射パワーは、高い屈折率の層の厚みに関して下限値を有する。本発明によれば、追加の層は、反射パワーの下限値を十分に減少させたり、従来技術において考えられた偶数個の層の構造で達成できる反射パワーを十分に低下させたりする光学装置に導入されている。
【0033】
本発明の装置および方法は、2つの低い屈折率の媒体によって囲まれる高い屈折率の媒体における反射を低減させる。上述で議論された従来技術では、米国特許7,215,075号明細書(2007年5月8日公開;特許文献7)のみこの問題を扱っている。また、国際公開2004/044998号パンフレット(2004年5月27日公開:特許文献6)は、複雑で層状の構造からの反射に関するものである。
【0034】
国際公開WO2004/044998号パンフレット(2004年5月27日公開)は、あらゆる付加的な層も構造に追加していない。本発明の装置および方法は、本発明の装置および方法によって扱われるタイプの構造における反射を減少させることができる(テーブル4,5付近の記述を参照)。
【0035】
米国特許7,215,075号明細書(2007年5月8日公開)は、1つの高い屈折率の層と、屈折率の層を交互に含む偶数個の層を取り替えることにより、この構造について扱っている。本発明の装置および方法は、中間屈折率の層を高い屈折率のいずれかの側に付加している。以下に述べるように、これにより、結果として、米国特許7,215,075(2007年5月8日公開)のアプリケーションよりも低い反射率となる。
【0036】
図2を参照すれば、本発明の原理が適用可能な模式的な光学構造が示されている。図2に示されるように、高い屈折率層(計算上、他の媒体の屈折率より大きい屈折率を有する媒体)HIは、低い屈折率層(計算上、HIの屈折率未満の屈折率を有する媒体)LI1,LI2に囲まれている。低い屈折率層LI1,LI2は、同一または異なる屈折率を有する。高い屈折率層の厚みは、全反射パワーが、高い屈折率層の表面における2つの反射の間における干渉の結果となるようなものである(コヒーレント光に依存し、この結果が真である場合に、HI層の最大の厚みとなる)。
【0037】
図3に移ると、高い屈折率層と、周辺の低い屈折率の媒体LI1およびLI2との間に、中間屈折率の層MI1およびMI2が、高い屈折率の層HIのそれぞれの側に適用されている。MI1とMI2とは、同一または異なる屈折率を有していてもよい。本発明の特徴は、反射を減少させながら、高い屈折率層を保持することである。
【0038】
なお、非LCディスプレイ(例えばOLED)においては、ポリイミドの層が、透明電極から始まり、これに隣接するように存在していないことに留意されたい。したがって、2つの層は、これらのディスプレイにおいて、透明電極ごとに付加される。対照的に、ITO層はすでに1つの隣接した中間屈折率の層を有しており、そのためその構造において5つの媒体のうち4つを有しているので、たった1つの付加的な層がLCDの透明電極ごとに付加される。
【0039】
図3に示す装置は、光学システムの低い屈折率の媒体によって囲まれている高い屈折率層における反射を減少させる。さらに、図3に示す装置は、米国特許7,215,075号明細書に記載されたもののように、2−、4−および6−層システムよりも効率的に反射を減少させる。これは、下記のように例証される。
【0040】
次の結果は、W.Hらの雑誌「Cにおける計算法:科学的なコンピューティングの技術」、第2版(ケンブリッジ大学出版局、1992年)、408〜412ページに記載されているように、多次元最小化の計算方法であるダウンヒルシンプレックス法を使用して得られた。反射率は、スミスW.Jの「現代の光学技術」、第3版(McGraw−Hill,2000)、205〜207ページに見られるような計算を使用することで、通常の発生率での光に対して計算される。当該ページの記載では、方程式7.32は、方程式7.30および7.31に一致させるために訂正されている。反射率は、450nmから750nmまでの均一なスペクトルに平均化される。平均化された反射率(以下、「反射率」という)は、既知ではない屈折率と、層の厚みとについて最小化される。上記雑誌とSmithとの両方において上述した参照部分は、ここでは参考のために示されている。
【0041】
a)図2において、ともにn=1.50の媒体LI1と媒体LI2とによって囲まれた、n=1.95の層HIの場合を考える。厚みに関して、HIの最小反射率は、0.013である。この場合において、HIの厚みは、148nmである。反射率は、HIの2つの表面において反射された光の相殺的な干渉のために、HIとLI1とLI2との屈折率のコントラストにも関わらず、非常に低い。
【0042】
本発明によれば、上述したように、中間屈折率を有する2つの付加的な層を、図2に示すシステムに付加することが可能である。これらは、図3に示されるように、MI1およびMI2である。新しい3層のシステム(HI、MI1およびMI2が、その3層を形成する)の反射率は、0.00005まで最小化することができる。つまり、反射率は、図2に示す装置と比べて3000倍だけ減少する。この場合におけるMI1およびMI2の屈折率は、ともに1.66であり、厚みは85nmである。HI(n=1.95)は、145nmの厚みである。
【0043】
米国特許7,215,075号明細書に関連する方法では、図4の従来の光学構造で示されるように、1つの付加的な層Eが、その代わりとしてシステムに付加されている。この2つの層の場合(HIおよびEが2つの層を形成する)、想定される最小の反射率は0.0084であり、付加的な層は1.61の屈折率を有する。図4の2つの層を有するシステムに関して得られた上述の結果と、図3の装置に関する結果とを比較すると、この場合、2層の溶体(solution)が有する反射率における減少は、170倍だけ改善されている。
【0044】
b)米国特許7,215,075号明細書における次の最も簡単な実施例と比較するために、米国特許7,215,075号明細書の例において使用された材料を検証する。これは、高い屈折率と低い屈折率とを交互に有する4層のシステムであり、図5に示されている(層Y,X,YおよびXが4層を形成する)。L1およびL2は、4つの層を取り囲む媒体である。交互に積層された層のそれぞれは、媒体Xまたは媒体Yで構成される。
【0045】
米国特許7,215,075号明細書の例では、それぞれ屈折率1.8および2.2の媒体X,Yを使用している。L1およびL2は、規定されていない。このため、この構成は、図3に示される実施例と十分に比較することができない。L1およびL2の屈折率は、ここでは1.50とする。この4層構造における厚みを変化させるために、多次元最小化のアルゴリズムを使用することで、これらの層(媒体L1,L2によって囲まれる)における反射率は、0.018まで最小化することができる。
【0046】
さらに、その方法は、光学システムにおける総反射率を相殺的な干渉によって最小化するように、積層されたそれぞれの層を最適化して含むことができる。
【0047】
上述した例において使用されたものと同じ材料は、本発明の装置、つまり、本明細書にような3層のシステムにおいて使用することができる。この場合において、HIの屈折率は2.2であり、MI1およびMI2の屈折率はともに1.8であり、LI1およびLI2の屈折率はともに1.50である。3層における反射率は、層の厚みに関して0.0017まで最小化されている。
【0048】
したがって、米国特許7,215,075号明細書の4層を有する実施例に対し、本発明の装置と同じ材料を使用することで、反射率は、1オーダーの大きさだけ減少する。
【0049】
c)図5において、4層のシステムは、L1の屈折率が1.50、L2の屈折率が1.60、XおよびYの屈折率がそれぞれ1.70,1.95である場合について考える。このとき、4層のシステムは、最小屈折率0.0039を有する。
【0050】
図3に示すものと同じ材料を用いる、すなわちMI1、HIおよびMI2についてそれぞれ屈折率を1.70、1.95および1.70とすることで、本発明における3層のシステムでは、最小屈折率0.00056が可能となる。また、反射率は、米国特許7,215,075号明細書の4層を有する実施例と同じ材料を使用した場合に比べて、このときは7倍だけ減少する。
【0051】
屈折率1.70および1.95を使用することで、6層が交互に積層されたシステムでは、最小反射率0.0037とすることが可能となる。
【0052】
これらの結果を考慮すると、高い屈折率の層が低い屈折率の層によって囲まれているとき、本発明の装置は、米国特許7,215,075号明細書の溶体と比較したときに、より優れた反射の減少を提供していることがわかる。
【0053】
本発明の装置は、以下において、添付図面を参照してより十分に示されるだろう。しかしながら、本発明の原理は、多くの様々な形状において具体化されていてもよいが、以下に記載の実施例に限定して解釈されるべきものではない。
【0054】
<実施例1>
図1に、液晶ディスプレイ(LCD)として具体化された光学構造の一例が示されている。n=約1.95を有するITO電極102の一方が、n=約1.53を有する液晶層(LC)104と、n=約1.53を有するガラスまたはカラーフィルタ(CF)101との間に存在し、他方が、LC104と、n=約1.59を有する平坦化された樹脂108との間に存在する。また、LC104とそれぞれのITO電極102との間には、n=約1.70を有する薄いポリイミド(PI)層103が存在する。また、n=約2.04を有する窒化ケイ素層105が、n=約1.55を有する二酸化ケイ素層106の間、および二酸化ケイ素層106と平坦化された樹脂との間に存在する。二酸化ケイ素層106および窒化ケイ素層105は、TFTシステムの内部および周囲に、誘電体として、およびや不動態化のために使用される。ガラス107は、構造(別のタイプの支持部材としては、例えばポリマー(ポリマー基板)であってもよい)を支持する。これは、産業上の使用において、1つの典型的な構造であり、それぞれの層の厚みとともにテーブル1に示される。
【0055】
【表1】

【0056】
テーブル1において示される構造は、相殺的な干渉によって総反射率が最小化されるように最適化されたPIおよびITOの厚みを有する。(これらの厚みは、典型的な製造範囲内である。)換言すれば、PIの厚み(以下で述べるものは、第2の層と考えてもよい)は、PIにおいて反射される総ての光の振幅が、PIの異なる表面から反射される波の位相差に依存している状態である。
【0057】
この構造の総反射率は0.104であり、入射光の10.4%は、この内部構造によって反射される。
【0058】
図6に示されるように、中間屈折率の付加的な層601,602,603,604,605および606が、高い屈折率の層と低い屈折率の層との間に配置されていてもよい。例えば、601は、ITOとCFとの間に挿入され、LCとPIとともに、本発明の図3の構造を形成している。テーブル2は、層601,602,603,604,605および606がn=約1.70を有するポリイミドである場合を示している。
【0059】
テーブル2に示される構造は、相殺的な干渉によって総反射率を最小化するように最適化されたPIおよびITOの厚みを有する。この構造の総反射率は0.0091であり、入射光の0.91%は、この内部構造によって反射される。したがって、ポリイミドが中間屈折率を有する材料として使用される本発明の装置を使用することで、このLCD構造の反射率を11倍だけ減少させる。
【0060】
【表2】

【0061】
層601,602,603,604,605および606の屈折率が、厚みと同様に自由に選択可能であれば、テーブル3のようになる(テーブル3に疑問符は、適切な屈折率を有する材料が自由に選択可能であることを示している)。
【0062】
テーブル3に示される構造は、層601,602,603,604,605および606の屈折率と、PI,ITO、および相殺的な干渉によって総反射率を最小化するように最適化された層601,602,603,604,605および606の厚みとを有する。この構造の総反射率は0.0050であり、入射光の0.50%は、この内部構造によって反射される。したがって、ポリイミドが、中間屈折率を有する材料として使用される本発明の装置を使用することで、このLCDの構造の反射率を21倍だけに減少させる。
【0063】
【表3】

【0064】
上述した実施例において、カラーフィルタ101は第1の層と考えられてよく、層601は第2の層と考えられてよく、層601より下であって、層601に隣接するインジウム錫酸化電極102は、第3の層として考えられてよく、インジウム錫酸化電極102より下であって、インジウム錫酸化電極102に隣接するポリイミド103は、第4の層として考えられてよく、液晶材料104は第5の層と考えられてよい。代わりに、液晶材料104が第1の層として考えられてよく、液晶層104より下であって、液晶層に隣接するポリイミド103が、第2の層として考えられてよく、ポリイミド層102より下であって、ポリイミド層102に隣接するインジウム錫酸化電極102が、第3の層として考えられてよく、層602が第4の層として考えられてよく、平坦化された樹脂108が第5の層として考えられてよい。さらに代わりとして、平坦化された樹脂108が第1の層として考えられてよく、層603が第2の層として考えられてよく、層603より下であって、層603に隣接する窒化ケイ素105が第3の層として考えられてよく、層604が第4の層として考えられてよく、層604より下であって、層604に隣接する二酸化ケイ素106が第5の層として考えられてよい。
【0065】
<実施例2>
光がLCDに伝播される領域から、二酸化ケイ素および窒化ケイ素の少なくとも1つを取り除くことも可能である。これは、それらが装置におけるTFTおよび電気回路の周りにおいてのみ必要とされるからである。光は、これらの領域に伝播されない(光は、金属によって反射されるか、一般的に使用されるブラックマスクにおいて吸収される)ので、内部反射を減少させる目的とは関係がないと考えられている。二酸化ケイ素および窒化ケイ素は、原則として、それらが、画素の透明な部分においてではなく、これらの不透明な領域においてだけ形成されるようにパターン化されている。この場合において、その構造は、テーブル4および図7に示すようなものとなる。
【0066】
テーブル3に示される構造は、相殺的な干渉によって総反射率を最小化するように最適化されたPIおよびITOの厚みを有する。この構造の総反射率は0.015であり、入射光の1.5%は、この内部構造により反射される。
【0067】
【表4】

【0068】
図8に示されるように、中間屈折率を有する付加的な層801,802は、図7のシステムにおける高い屈折率の層と低い屈折率の層との間に配置されている。例えば、層801は、ITOとCFとの間に挿入され、LCとPIとともに、本発明の図3の構造を形成している。テーブル5は、層801,802がn=約1.70を有するポリイミド層である場合を示している。
【0069】
【表5】

【0070】
テーブル5に示される構造は、相殺的な干渉によって総反射率を最小化するように最適化されたPIおよびITOの厚みを有する。この構造の総反射率は0.00080であり、入射光の0.50%は、この内部構造によって反射される。したがって、ポリイミドが中間屈折率の材料として使用される本発明の装置を使用することで、このLCD構造の反射率を19倍だけ減少させている。
【0071】
上述した実施例において、カラーフィルタ101は第1の層として考えられてよく、カラーフィルタより下であって、カラーフィルタに隣接するポリイミド801は、第2の層として考えられてよく、ポリイミド801より下であって、ポリイミド801に隣接するインジウム錫酸化電極102は、第3の層として考えられてよく、インジウム錫酸化電極102より下であって、インジウム錫酸化電極102に隣接するポリイミド103は、第4の層として考えられてよく、液晶材料104は第5の層として考えられてよい。代わりに、液晶材料104が第1の層として考えられてよく、液晶材料より下であって、液晶材料に隣接するポリイミド103が第2の層として考えられてよく、ポリイミド103より下であって、ポリイミド103に隣接するインジウム錫酸化電極102が、第3の層として考えられてよく、インジウム錫酸化電極102より下であって、インジウム錫酸化電極102に隣接するポリイミド802が、第4の層として考えられてよく、平坦化された樹脂108が第5の層として考えられてよい。
【0072】
図9に、本発明の光学構造を利用した模式的なディスプレイ装置900が示されている。ディスプレイ装置900は、ASIC902を含む。ASIC902は、ディスプレイ装置900によって表示される画像に対応するデータ信号を、信号入力部902aを介して受信する。次に、ASIC902は、制御信号出力部902bを介して、本発明の光学構造を有するディスプレイパネル910の画素908を駆動するゲートドライバIC904およびソースドライバIC906に制御信号を与える。ASICおよび/またはドライバは、「ディスプレイ電気回路」として考えられてもよい。
【0073】
従来のものと同様、ASIC902は、ドライバを介して、ディスプレイパネル910の各画素908に、ディスプレイパネル910による光の出力量を制御するように命令する。液晶装置、OLED装置、エレクトロウェッティング装置などのディスプレイパネル910は、内部反射を減少させるために、本発明の光学構造を利用している。例えば、電力は、DC/DCコンバータ912を介して与えられる。
【0074】
装置は、第1の層がカラーフィルタで構成され、第2の層がポリイミドで構成され、第3の層がインジウム錫酸化電極で構成され、第4の層がポリイミドで構成され、第5の層が液晶層で構成されるように配置されていてもよい。
【0075】
また、装置は、第1の層が液晶層で構成され、第2の層がポリイミドで構成され、第3の層がインジウム錫酸化電極で構成され、第4の層がポリイミドで構成され、第5の層が平坦化層で構成されるように配置されていてもよい。
【0076】
また、装置は、第1の層が平坦化層で構成され、第2の層がポリイミドで構成され、第3の層が窒化ケイ素層で構成され、第4の層がポリイミドで構成され、第5の層が二酸化ケイ素層で構成されるように配置されていてもよい。
【0077】
また、装置は、二酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも1つが積層されて配置され、その積層構造を通って光伝送路が配置されるように構成されてもよい。ここで、二酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも1つは、光伝送路の外に配置される。
【0078】
また、装置は、第2の層および/または第4の層が、ポリカーボネート、ポリスチレン、インジウム酸化亜鉛の少なくとも1つを含むように構成されていてもよい。
【0079】
<他の中間屈折率を有する材料および実施例>
LCD、または他のシステムにおいて使用されているように、他の材料、有機および無機は、適切な屈折率を有するように構成されていてもよい。ポリカーボネート(n=約1.59),ポリスチレン(n=約1.59)は、いくつかの層の間において使用されるポリマーの2つの例である。インジウム酸化亜鉛は、(米国特許7,215,075号明細書によれば)屈折率1.8で堆積される。さらに、本発明の構造は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイシステムおよびエレクトロウェッティングディスプレイシステムと同様に、液晶ディスプレイシステムにおいて利用されてもよい。
【0080】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の装置および方法は、従来の光学装置と比較してより少ない数の層を利用して、光学装置の内部反射を減少させる。さらに、LCDのようなディスプレイ装置に本発明の原理を採用することは、従来のLCD装置と比較して生産のためのコストを低下させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムにおける内部反射を減少させる構造であって、
第1の屈折率を有する第1の層と、第2の屈折率を有する第2の層と、第3の屈折率を有する第3の層と、第4の屈折率を有する第4の層と、第5の屈折率を有する第5の層とを含む、積層された層で構成されており、
前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層との間に配置され、前記第4の層は、前記第3の層と前記第5の層との間に配置され、
前記第3の屈折率は、前記第2の屈折率および前記第4の屈折率より大きく、前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率より大きく、前記第4の屈折率は、前記第5の屈折率よりも大きいことを特徴とする構造。
【請求項2】
前記第2の屈折率は、前記第4の屈折率と異なっていることを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記第1の屈折率は、前記第5の屈折率と異なっていることを特徴とする請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記積層された層の少なくとも1つの層は液晶層で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造。
【請求項5】
前記第1の層はカラーフィルタで構成され、前記第2の層はポリイミドで構成され、前記第3の層はインジウム錫酸化電極で構成され、前記第4の層はポリイミドで構成され、前記第5の層は液晶層で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項6】
前記第1の層は液晶材料で構成され、前記第2の層はポリイミドで構成され、前記第3の層はインジウム錫酸化電極で構成され、前記第4の層はポリイミドで構成され、前記第5の層は平坦化層で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項7】
前記第1の層は平坦化層で構成され、前記第2の層はポリイミドで構成され、前記第3の層は窒化ケイ素層で構成され、前記第4の層はポリイミドで構成され、前記第5の層は二酸化ケイ素層で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項8】
前記積層された層に配置された、二酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも1つと、
前記積層された層を通る光伝送路と、をさらに含み、
前記二酸化ケイ素または窒化ケイ素の少なくとも1つは、前記光伝送路上に存在しないようにパターン化されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造。
【請求項9】
前記第2の層および/または前記第4の層は、ポリカーボネート、ポリスチレンまたはインジウム酸化亜鉛の少なくとも1つで構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の構造。
【請求項10】
前記積層された層のそれぞれの厚みは、相殺的な干渉によって前記光学システムにおける総反射率を最小化するように選択されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造。
【請求項11】
支持部材と、
前記支持部材上またはそれを覆うように配置された、請求項1〜10のいずれか1項に記載の構造とを含むことを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項12】
前記支持部材は、ガラスまたはポリマーの少なくとも1つで構成されていることを特徴とする請求項11に記載のディスプレイ装置。
【請求項13】
液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイまたはエレクトロウェッティングディスプレイの少なくとも1つであることを特徴とする請求項11または12に記載のディスプレイ装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の構造から構成され、複数の画素を含む光学装置と、
表示される画像に対応するデータを受信する少なくとも1つの信号入力部と、前記複数の画素のそれぞれと接続される複数の信号出力部とを含むディスプレイ電気回路、とを含み、
前記ディスプレイ電気回路は、前記画像を生成するために前記複数の画素を制御するように作動することを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項15】
光学システムにおける反射を減少させる方法であって、
前記光学システムは、第1の屈折率を有する第1の層と、第3の屈折率を有する第3の層と、第5の屈折率を有する第5の層とで構成されている、積層された層を含み、前記第3の層が前記第1の層と前記第5の層との間に形成され、前記第3の屈折率が前記第1の屈折率および前記第5の屈折率よりも大きいものであって、
前記第1の層と前記第3の層との間に第2の屈折率を有する第2の層を付加する工程と、
前記第3の層と前記第5の層との間に第4の屈折率を有する第4の層を付加する工程と、を含み、
前記第3の屈折率は、前記第2の屈折率および前記第4の屈折率より大きく、
前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率より大きく、
前記第4の屈折率は、前記第5の屈折率より大きいことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記第4の層の屈折率が第5の層の屈折率と異なるように、前記第4の層および前記第5の層を選択する工程をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の層において反射される総ての光の振幅が、前記第2の層の異なる表面から反射される波の位相差に依存するような厚みに、前記第2の層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項15または16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−527636(P2012−527636A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511508(P2012−511508)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/JP2010/058694
【国際公開番号】WO2010/134620
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】