円偏波パッチアンテナ及びその製造方法
【課題】円偏波パッチアンテナ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】まず、放射金属片及び接地金属片をそれぞれ基板の上、下表面に設け、それぞれ基板の上、下表面の角隅領域近傍に設けられる第1の金属マイクロストリップライン及び第2の金属マイクロストリップラインと、基板の側壁に設けられる、第1の金属マイクロストリップラインと第2の金属マイクロストリップラインとを電気的に接続される第3の金属マイクロストリップラインとを含む金属マイクロストリップラインを設ける。次に、信号フィード素子の一端をシステム接地ユニットに接続させ、信号フィード素子の他端を第2の金属マイクロストリップラインに接続させる。そして、放射金属片、接地金属片、第2の金属マイクロストリップライン及び/又は第1の金属マイクロストリップラインの寸法及び位置を調整することにより、円偏波パッチアンテナの信号特性を最適化する。
【解決手段】まず、放射金属片及び接地金属片をそれぞれ基板の上、下表面に設け、それぞれ基板の上、下表面の角隅領域近傍に設けられる第1の金属マイクロストリップライン及び第2の金属マイクロストリップラインと、基板の側壁に設けられる、第1の金属マイクロストリップラインと第2の金属マイクロストリップラインとを電気的に接続される第3の金属マイクロストリップラインとを含む金属マイクロストリップラインを設ける。次に、信号フィード素子の一端をシステム接地ユニットに接続させ、信号フィード素子の他端を第2の金属マイクロストリップラインに接続させる。そして、放射金属片、接地金属片、第2の金属マイクロストリップライン及び/又は第1の金属マイクロストリップラインの寸法及び位置を調整することにより、円偏波パッチアンテナの信号特性を最適化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏波パッチアンテナ及びその製造方法に関し、より詳しくは、3段に折り曲げられた金属マイクロストリップラインを有する円偏波パッチアンテナ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信及び無線ネットワーク技術が絶えず進化している今日においては、新機能開発の応用や、ユーザへのより多くの付加価値の提供が、産業発展を促進するための鍵となっている。グローバル・ポジショニング・システム(全地球測位システム、Global Positioning System;GPS)との組み合わせ応用は、ブルートゥース(Blue Tooth)技術に次いで最も重要視される技術となりうることが期待されている。この中で鍵となる技術は、GPSに適用されるアンテナ技術である。
【0003】
現在、GPSに適用される市販のアンテナの多くは、セラミックス基板を電気ピン(pin)が挿通されたマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナである。その信号のフィード方法としては、ピンフィード(pin−feed)の方法がよく用いられる。しかしながら、このようなマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナを回路基板に組み付けようとする場合には、底面にある電気ピンを回路基板の貫通孔に通し、貫通孔に通した電気ピンを回路基板の裏面に半田付けする必要があるため、極めて手間がかかり、大量且つスピーディな組み付けや生産に不利となり、更には製品全体の厚さが増加し、軽薄短小という製品の設計傾向に反している。さらに、このようなマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナの信号フィードポイントが側辺に位置しているため、そのインピーダンス整合は、周辺環境と相互に作用しやすくなり、信号の安定性に影響を及ぼしてしまう。また、このようなマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナでは、アンテナが左旋円偏波、右旋円偏波をそれぞれ達成できるように、信号フィードポイントを変更しなければならないため、設計上の不便が増している。
【0004】
また、既知の文献には伝送線による信号カップリングの円偏波アンテナが開示されているが、この構成では、上、下の電極のレベルの誤差により、アンテナ自体が敏感になりすぎ、アンテナのインピーダンス整合にはバラツキが発生しやすくなり、しかもアンテナ自体の放射効率もそのクローズドルート(closed root)である金属平面の影響により、従来のセラミックパッチアンテナに比べもアンテナゲインが約3dBi〜5dBi低くなっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上表面に放射金属片が設けられ、下表面に接地金属片が設けられている基板と、前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第1の金属マイクロストリップライン、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第2の金属マイクロストリップライン、及び前記基板の側壁に設けられ、前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインを電気的に接続している第3の金属マイクロストリップラインを含む金属マイクロストリップラインと、を備え、前記第1の金属マイクロストリップライン、前記第2の金属マイクロストリップライン及び前記第3の金属マイクロストリップラインは、それぞれ前記基板の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられ、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成されていることを特徴とする円偏波パッチアンテナを提供する。
【0006】
また、本発明は、基板を用意し、放射金属片及び接地金属片をそれぞれ前記基板の上表面及び下表面に設けるとともに、前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に第1の金属マイクロストリップラインを、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に第2の金属マイクロストリップラインを、前記基板の側壁に前記第1の金属マイクロストリップラインと前記第2の金属マイクロストリップラインとに電気的に接続される第3の金属マイクロストリップラインを、それぞれ設ける工程と、システム接地ユニット及び信号フィード素子を用意し、前記信号フィード素子の一端を前記システム接地ユニットに接続させるとともに、前記信号フィード素子の他端を前記第2の金属マイクロストリップラインに接続させる工程と、前記放射金属片、前記接地金属片、前記第2の金属マイクロストリップライン及び/又は前記第1の金属マイクロストリップラインの寸法及び位置を調整することにより、前記円偏波パッチアンテナの信号特性を最適化する工程と、を備えることを特徴とする円偏波パッチアンテナの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る円偏波パッチアンテナの斜視図である。
【図2A】図1に示す円偏波パッチアンテナの一実施形態の透視した斜視図である。
【図2B】図1に示す円偏波パッチアンテナの他の実施形態の透視した斜視図である。
【図3A】図2Aに示す円偏波パッチアンテナの上面図である。
【図3B】図2Aに示す円偏波パッチアンテナの側壁の側面図である。
【図3C】図2Aに示す円偏波パッチアンテナの下面図である。
【図4A】本発明に係る円偏波パッチアンテナの一実施形態における上面図である。
【図4B】本発明に係る円偏波パッチアンテナの他の実施形態における上面図である。
【図4C】本発明に係る円偏波パッチアンテナの一実施形態における下面図である。
【図4D】本発明に係る円偏波パッチアンテナの他の実施形態における下面図である。
【図5】本発明に係る円偏波パッチアンテナのリターンロス実測データ図である。
【図6】本発明に係る円偏波パッチアンテナの実験結果のスミス図である。
【図7】本発明に係る円偏波パッチアンテナのX−Z平面における放射特性の実験結果図である。
【図8】本発明に係る円偏波パッチアンテナの操作帯域幅におけるアンテナ軸比の実験結果図である。
【図9】本発明に係る円偏波パッチアンテナの製造方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
下記において特定の具体的な実施形態により本発明の技術内容を説明する。この技術分野に精通した者は、本明細書に記載する内容によって簡単に本発明の利点や効果が理解できる。また、本発明は、その他の異なる具体的な実施形態に基づいて施行や応用を加えることも可能である。
【0009】
図1、2A、2B、3A、3B、3C、4A、4B、4C及び4Dを参照しながら、本発明に係る円偏波パッチアンテナを詳しく説明する。図1は、本発明に係る円偏波パッチアンテナの斜視図であり、図2A及び図2Bのそれぞれは、図1に示す円偏波パッチアンテナの異なる実施形態の透視した斜視図であり、図3A〜図3Cは、図2Aに示す円偏波パッチアンテナの異なる平面の平面図であり、図4A〜図4Dは、本発明に係る円偏波パッチアンテナの異なる実施形態の平面図である。
【0010】
これらの図に示すように、円偏波パッチアンテナ1は、基板10、放射金属片11、接地金属片12、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bと第3の金属マイクロストリップライン13cとを含む金属マイクロストリップライン13、及び必要に応じて設置する又は設置しないことが可能な信号フィード素子14とシステム接地ユニット15を備える。
【0011】
基板10は、モノリシック構造で且つ誘電率が約60であるマイクロ波誘電体基板であり、その幾何形状が三角形柱体、四辺形柱体、円柱体又は楕円柱体であってもよく、その材質がガラス繊維、FR4及び/又はセラミックであってもよい。
【0012】
放射金属片11は、基板10の上表面101の一部の領域に設けられている。本実施形態において、放射金属片11は、基板10の上表面101の中心領域に設けられ、且つ円形、楕円形、三角形、四辺形の金属片状体に形成されてもよく、もちろん、図4A及び図4Bに示すように、異なる範囲のアンテナ周波数応答及びインピーダンス整合を提供するように四辺形よりも大きい多辺形構造に形成されても構わない。
【0013】
接地金属片12は、基板10の下表面102の一部の領域に設けられている。本実施形態において、接地金属片12は、基板10の下表面102の角隅領域近傍以外に設けられ、接地金属片12によって被覆されていない角隅領域近傍は、図3Cに示すような矩形、図4Cに示すような三角形であってもよく、又は図4Dに示すような弧形に近いものであってもよい。
【0014】
第1の金属マイクロストリップライン13aは、基板10の上表面101において放射金属片11を有しない角隅領域近傍に設けられ、且つ放射金属片11と直接電気的に接続されないようになっている。本実施形態において、第1の金属マイクロストリップライン13aは、図3Aに示すような矩形、図4Aに示すような三角形であってもよく、又は図4Bに示すような弧形に近いものであってもよい。
【0015】
第2の金属マイクロストリップライン13bは、基板10の下表面102において接地金属片12を有しない角隅領域近傍、即ち基板10の下表面102において接地金属片12によって被覆されていない角隅領域近傍に設けられ、且つ接地金属片12と直接電気的に接続されないようになっている。本実施形態において、第2の金属マイクロストリップライン13bは、図3Cに示すような矩形、図4Cに示すような三角形であってもよく、又は図4Dに示すような弧形に近いものであってもよい。
【0016】
第3の金属マイクロストリップライン13cは、基板10の側壁103に設けられ、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bと直接電気的に接続されるようになっている。本実施形態において、第3の金属マイクロストリップライン13cは、基板10の側壁103において第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bに近い周縁箇所に設けられているため、第1の金属マイクロストリップライン13a、第2の金属マイクロストリップライン13b及び第3の金属マイクロストリップライン13cは、それぞれ基板10の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられており、且つそれぞれ右旋円偏波(RHCP)及び左旋円偏波(LHCP)のための図2A及び図2Bに示すように、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成されている。
【0017】
信号フィード素子14は、一端がシステム接地ユニット15に接続され、他端が第2の金属マイクロストリップライン13bに接続されている。本実施形態において、信号フィード素子14は、電気信号を金属マイクロストリップライン13に入力することにより、金属マイクロストリップライン13と接地金属片12との間で電磁信号をカップリングさせ、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間で電磁信号をカップリングさせる。信号フィード素子14は、同軸線、共平面線路又はSMAコネクタであってもよい。従って、第2の金属マイクロストリップライン13b上の任意の点を、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の信号フィードポイント(陽極ターミナル)と見なすことができる。また、システム接地ユニット15は、表面実装技術(Surface−Mount Technology、SMT)により基板10に接続され、矩形に近い導電金属構造であってもよく、円形、方形、多辺形、三角形、又は楕円形の金属構造であってもよい。
【0018】
従って、放射金属片11と第1の金属マイクロストリップライン13aとの間の電磁信号カップリング、接地金属片12と第2の金属マイクロストリップライン13bとの間の電磁信号カップリングの効果により、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1は、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号を生成することができる。実際に実施する場合、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1は、二つの振幅の大きさが等しく、且つ位相差が90度である共振モードを生成することで、円偏波及びインピーダンス整合が好適なアンテナ設計を達成することができる。本発明に係る円偏波パッチアンテナ1によれば、第2の金属マイクロストリップライン13b上の任意の点を信号フィードポイントとすることができるため、従来のサイドフィード式のアンテナにおいて生じていたインピーダンス整合が周辺環境と相互に作用しやすいという問題を回避することができ、アンテナ全体の信頼性及び安定性を向上させることができる。
【0019】
ここで注意すべき点は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1によれば、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの相対角度を調製することにより、信号フィードポイント(第2の金属マイクロストリップライン13b上の任意の点)を変更することなく、左旋円偏波信号及び右旋円偏波信号の制御を達成することができる。例えば、矩形に形成された第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの相対交差角を90度(図2Aに示す)又は180度(図2Bに示す)に形成することにより、左旋円偏波信号又は右旋円偏波信号をそれぞれ生成することができる。これにより、設計上の利便性が向上することとなる。
【0020】
また、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1によれば、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間の寸法及び位置、及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bと接地金属片12との間の寸法及び位置を調整することにより、信号フィードポイントを変更することなく、左旋円偏波信号、右旋円偏波信号の制御と、信号特性の最適化による効果を同時に達成することができる。例えば、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが特定の交差角のない形状に形成された場合には、第1の金属マイクロストリップライン13a及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bの幅、形状又は蛇行形態を調整して、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間のピッチ、及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bと接地金属片12との間のピッチを調整することにより、左旋円偏波信号、右旋円偏波信号を生成すると同時に、アンテナ信号の特性を最適化させ、カスタマイズ及び最適化の目的を達成することができる。
【0021】
また、図5ないし図8を参照しながら、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の実際計測結果を説明する。図5は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1のリターンロスの実測データ図であり、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1においてリターンロスが10dBである場合のインピーダンス帯域幅が約8〜10MHzであることを示す。図6は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の実験結果のスミス図であり、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の中心周波数のインピーダンスが50Ω(ohms)に近いことを示す。図7は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1のX−Z平面における放射特性の実験結果図であり、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1が天頂方向において良好な軸比パフォーマンス及び指向性を有することを示す。図8は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の操作帯域幅におけるアンテナ軸比の実験結果図であり、円偏波効果が3dB軸比帯域幅において約2〜3MHzを有することを示す。これにより、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1は、周辺環境からの干渉を受けにくく、高い安定性を有していることが分かる。
【0022】
最後に、図9に示す工程フロー図を図1〜図2Bと合わせて参照しながら、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の製造方法を詳しく説明する。
【0023】
ステップS1において、基板10を用意し、放射金属片11及び接地金属片12をそれぞれ基板10の上表面101の一部の領域及び下表面102の一部の領域に設けるとともに、基板10の上表面101において放射金属片11を有しない角隅領域近傍に第1の金属マイクロストリップライン13aを、基板10の下表面102において接地金属片12を有しない角隅領域近傍に第2の金属マイクロストリップライン13bを、基板10の側壁103に第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとを電気的に接続するための第3の金属マイクロストリップライン13cを、それぞれ設ける。次に、ステップS2に進む。
【0024】
ここで注意すべき点は、本実施形態において、第1の金属マイクロストリップライン13a、第2の金属マイクロストリップライン13b及び第3の金属マイクロストリップライン13cは、それぞれ基板10の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられ、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成される点である。第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが矩形である場合、ステップS1において、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの相対交差角を90度又は180度に形成する工程をさらに備えてもよい。上述した放射金属片11を基板10の上表面101に設けることとは、厚膜スクリーン印刷、現像エッチング、及び/又はプラズマ堆積により、放射金属片11を基板10の上表面101の中心領域に設けることである。
【0025】
ステップS2において、システム接地ユニット15及び信号フィード素子14を用意し、信号フィード素子14の一端をシステム接地ユニット15に接続させ、信号フィード素子14の他端を第2の金属マイクロストリップライン13bに接続させる。次に、ステップS3に進む。
【0026】
ここで注意すべき点は、信号フィード素子14は、電気信号を第2の金属マイクロストリップライン13bに入力することにより、第2の金属マイクロストリップライン13bと接地金属片12との間で電磁信号をカップリングさせ、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間で電磁信号をカップリングさせる点である。
【0027】
ステップS3において、放射金属片11、接地金属片12、第1の金属マイクロストリップライン13a及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bの寸法及び位置を調整することにより、円偏波パッチアンテナ1の信号特性を最適化する。
【0028】
ここで注意すべき点は、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが矩形である場合、ステップS3においては、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの交差角を90度又は180度に調整することにより、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号特性を生成することができる点である。また、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが弧形又はその他の特定角のない形状である場合、ステップS3においては、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bの長さ及び幅を調整する工程をさらに備えてもよいことは言うまでもない。
【0029】
上述のように、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、信号フィードポイントを変更することなく、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号特性を達成ことができる。また、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、アンテナのインピーダンス整合が周辺環境からの干渉を受けにくくなるようにし、アンテナの安定性を向上させることができる。さらに、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、大量且つスピーディな組み付けや生産ができるとともに、製品全体の厚さを効果的に低減ことができる。
【0030】
言い換えれば、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、構造が簡単であるとともに、いかなる電気ピンをも突出させる必要がないという特性を有しているため、製品全体の厚さを効果的に低減することができ、大量且つスピーディな組み付けや生産に有利となる。また、第2の金属マイクロストリップラインの任意の点を信号フィードポイントと見なすことができるため、信号フィードポイントを変更することなく、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号の制御を容易に達成し、好ましい設計の利便性を得ることができる。また、本発明に係る円偏波パッチアンテナの信号フィードポイントは露出された側辺に位置していないため、アンテナのインピーダンス整合が周辺環境から受ける干渉を回避することができ、製品の信頼性及び安定性を向上させることができる。
【0031】
上記のように、これらの実施の形態は本発明の原理および効果・機能を例示的に説明するに過ぎず、本発明は、これらによって限定されるものではない。本発明は、この技術分野に精通した者により本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に修正や変更することが可能であり、そうした修正や変更は、本発明の特許請求の範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0032】
1 円偏波パッチアンテナ
10 基板
101 上表面
102 下表面
103 側壁
11 放射金属片
12 接地金属片
13a 第1の金属マイクロストリップライン
13b 第2の金属マイクロストリップライン
13c 第3の金属マイクロストリップライン
14 信号フィード素子
15 システム接地ユニット
S1〜S3 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏波パッチアンテナ及びその製造方法に関し、より詳しくは、3段に折り曲げられた金属マイクロストリップラインを有する円偏波パッチアンテナ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体通信及び無線ネットワーク技術が絶えず進化している今日においては、新機能開発の応用や、ユーザへのより多くの付加価値の提供が、産業発展を促進するための鍵となっている。グローバル・ポジショニング・システム(全地球測位システム、Global Positioning System;GPS)との組み合わせ応用は、ブルートゥース(Blue Tooth)技術に次いで最も重要視される技術となりうることが期待されている。この中で鍵となる技術は、GPSに適用されるアンテナ技術である。
【0003】
現在、GPSに適用される市販のアンテナの多くは、セラミックス基板を電気ピン(pin)が挿通されたマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナである。その信号のフィード方法としては、ピンフィード(pin−feed)の方法がよく用いられる。しかしながら、このようなマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナを回路基板に組み付けようとする場合には、底面にある電気ピンを回路基板の貫通孔に通し、貫通孔に通した電気ピンを回路基板の裏面に半田付けする必要があるため、極めて手間がかかり、大量且つスピーディな組み付けや生産に不利となり、更には製品全体の厚さが増加し、軽薄短小という製品の設計傾向に反している。さらに、このようなマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナの信号フィードポイントが側辺に位置しているため、そのインピーダンス整合は、周辺環境と相互に作用しやすくなり、信号の安定性に影響を及ぼしてしまう。また、このようなマイクロ波誘電体セラミックスを用いたアンテナでは、アンテナが左旋円偏波、右旋円偏波をそれぞれ達成できるように、信号フィードポイントを変更しなければならないため、設計上の不便が増している。
【0004】
また、既知の文献には伝送線による信号カップリングの円偏波アンテナが開示されているが、この構成では、上、下の電極のレベルの誤差により、アンテナ自体が敏感になりすぎ、アンテナのインピーダンス整合にはバラツキが発生しやすくなり、しかもアンテナ自体の放射効率もそのクローズドルート(closed root)である金属平面の影響により、従来のセラミックパッチアンテナに比べもアンテナゲインが約3dBi〜5dBi低くなっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上表面に放射金属片が設けられ、下表面に接地金属片が設けられている基板と、前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第1の金属マイクロストリップライン、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第2の金属マイクロストリップライン、及び前記基板の側壁に設けられ、前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインを電気的に接続している第3の金属マイクロストリップラインを含む金属マイクロストリップラインと、を備え、前記第1の金属マイクロストリップライン、前記第2の金属マイクロストリップライン及び前記第3の金属マイクロストリップラインは、それぞれ前記基板の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられ、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成されていることを特徴とする円偏波パッチアンテナを提供する。
【0006】
また、本発明は、基板を用意し、放射金属片及び接地金属片をそれぞれ前記基板の上表面及び下表面に設けるとともに、前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に第1の金属マイクロストリップラインを、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に第2の金属マイクロストリップラインを、前記基板の側壁に前記第1の金属マイクロストリップラインと前記第2の金属マイクロストリップラインとに電気的に接続される第3の金属マイクロストリップラインを、それぞれ設ける工程と、システム接地ユニット及び信号フィード素子を用意し、前記信号フィード素子の一端を前記システム接地ユニットに接続させるとともに、前記信号フィード素子の他端を前記第2の金属マイクロストリップラインに接続させる工程と、前記放射金属片、前記接地金属片、前記第2の金属マイクロストリップライン及び/又は前記第1の金属マイクロストリップラインの寸法及び位置を調整することにより、前記円偏波パッチアンテナの信号特性を最適化する工程と、を備えることを特徴とする円偏波パッチアンテナの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る円偏波パッチアンテナの斜視図である。
【図2A】図1に示す円偏波パッチアンテナの一実施形態の透視した斜視図である。
【図2B】図1に示す円偏波パッチアンテナの他の実施形態の透視した斜視図である。
【図3A】図2Aに示す円偏波パッチアンテナの上面図である。
【図3B】図2Aに示す円偏波パッチアンテナの側壁の側面図である。
【図3C】図2Aに示す円偏波パッチアンテナの下面図である。
【図4A】本発明に係る円偏波パッチアンテナの一実施形態における上面図である。
【図4B】本発明に係る円偏波パッチアンテナの他の実施形態における上面図である。
【図4C】本発明に係る円偏波パッチアンテナの一実施形態における下面図である。
【図4D】本発明に係る円偏波パッチアンテナの他の実施形態における下面図である。
【図5】本発明に係る円偏波パッチアンテナのリターンロス実測データ図である。
【図6】本発明に係る円偏波パッチアンテナの実験結果のスミス図である。
【図7】本発明に係る円偏波パッチアンテナのX−Z平面における放射特性の実験結果図である。
【図8】本発明に係る円偏波パッチアンテナの操作帯域幅におけるアンテナ軸比の実験結果図である。
【図9】本発明に係る円偏波パッチアンテナの製造方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
下記において特定の具体的な実施形態により本発明の技術内容を説明する。この技術分野に精通した者は、本明細書に記載する内容によって簡単に本発明の利点や効果が理解できる。また、本発明は、その他の異なる具体的な実施形態に基づいて施行や応用を加えることも可能である。
【0009】
図1、2A、2B、3A、3B、3C、4A、4B、4C及び4Dを参照しながら、本発明に係る円偏波パッチアンテナを詳しく説明する。図1は、本発明に係る円偏波パッチアンテナの斜視図であり、図2A及び図2Bのそれぞれは、図1に示す円偏波パッチアンテナの異なる実施形態の透視した斜視図であり、図3A〜図3Cは、図2Aに示す円偏波パッチアンテナの異なる平面の平面図であり、図4A〜図4Dは、本発明に係る円偏波パッチアンテナの異なる実施形態の平面図である。
【0010】
これらの図に示すように、円偏波パッチアンテナ1は、基板10、放射金属片11、接地金属片12、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bと第3の金属マイクロストリップライン13cとを含む金属マイクロストリップライン13、及び必要に応じて設置する又は設置しないことが可能な信号フィード素子14とシステム接地ユニット15を備える。
【0011】
基板10は、モノリシック構造で且つ誘電率が約60であるマイクロ波誘電体基板であり、その幾何形状が三角形柱体、四辺形柱体、円柱体又は楕円柱体であってもよく、その材質がガラス繊維、FR4及び/又はセラミックであってもよい。
【0012】
放射金属片11は、基板10の上表面101の一部の領域に設けられている。本実施形態において、放射金属片11は、基板10の上表面101の中心領域に設けられ、且つ円形、楕円形、三角形、四辺形の金属片状体に形成されてもよく、もちろん、図4A及び図4Bに示すように、異なる範囲のアンテナ周波数応答及びインピーダンス整合を提供するように四辺形よりも大きい多辺形構造に形成されても構わない。
【0013】
接地金属片12は、基板10の下表面102の一部の領域に設けられている。本実施形態において、接地金属片12は、基板10の下表面102の角隅領域近傍以外に設けられ、接地金属片12によって被覆されていない角隅領域近傍は、図3Cに示すような矩形、図4Cに示すような三角形であってもよく、又は図4Dに示すような弧形に近いものであってもよい。
【0014】
第1の金属マイクロストリップライン13aは、基板10の上表面101において放射金属片11を有しない角隅領域近傍に設けられ、且つ放射金属片11と直接電気的に接続されないようになっている。本実施形態において、第1の金属マイクロストリップライン13aは、図3Aに示すような矩形、図4Aに示すような三角形であってもよく、又は図4Bに示すような弧形に近いものであってもよい。
【0015】
第2の金属マイクロストリップライン13bは、基板10の下表面102において接地金属片12を有しない角隅領域近傍、即ち基板10の下表面102において接地金属片12によって被覆されていない角隅領域近傍に設けられ、且つ接地金属片12と直接電気的に接続されないようになっている。本実施形態において、第2の金属マイクロストリップライン13bは、図3Cに示すような矩形、図4Cに示すような三角形であってもよく、又は図4Dに示すような弧形に近いものであってもよい。
【0016】
第3の金属マイクロストリップライン13cは、基板10の側壁103に設けられ、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bと直接電気的に接続されるようになっている。本実施形態において、第3の金属マイクロストリップライン13cは、基板10の側壁103において第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bに近い周縁箇所に設けられているため、第1の金属マイクロストリップライン13a、第2の金属マイクロストリップライン13b及び第3の金属マイクロストリップライン13cは、それぞれ基板10の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられており、且つそれぞれ右旋円偏波(RHCP)及び左旋円偏波(LHCP)のための図2A及び図2Bに示すように、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成されている。
【0017】
信号フィード素子14は、一端がシステム接地ユニット15に接続され、他端が第2の金属マイクロストリップライン13bに接続されている。本実施形態において、信号フィード素子14は、電気信号を金属マイクロストリップライン13に入力することにより、金属マイクロストリップライン13と接地金属片12との間で電磁信号をカップリングさせ、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間で電磁信号をカップリングさせる。信号フィード素子14は、同軸線、共平面線路又はSMAコネクタであってもよい。従って、第2の金属マイクロストリップライン13b上の任意の点を、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の信号フィードポイント(陽極ターミナル)と見なすことができる。また、システム接地ユニット15は、表面実装技術(Surface−Mount Technology、SMT)により基板10に接続され、矩形に近い導電金属構造であってもよく、円形、方形、多辺形、三角形、又は楕円形の金属構造であってもよい。
【0018】
従って、放射金属片11と第1の金属マイクロストリップライン13aとの間の電磁信号カップリング、接地金属片12と第2の金属マイクロストリップライン13bとの間の電磁信号カップリングの効果により、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1は、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号を生成することができる。実際に実施する場合、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1は、二つの振幅の大きさが等しく、且つ位相差が90度である共振モードを生成することで、円偏波及びインピーダンス整合が好適なアンテナ設計を達成することができる。本発明に係る円偏波パッチアンテナ1によれば、第2の金属マイクロストリップライン13b上の任意の点を信号フィードポイントとすることができるため、従来のサイドフィード式のアンテナにおいて生じていたインピーダンス整合が周辺環境と相互に作用しやすいという問題を回避することができ、アンテナ全体の信頼性及び安定性を向上させることができる。
【0019】
ここで注意すべき点は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1によれば、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの相対角度を調製することにより、信号フィードポイント(第2の金属マイクロストリップライン13b上の任意の点)を変更することなく、左旋円偏波信号及び右旋円偏波信号の制御を達成することができる。例えば、矩形に形成された第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの相対交差角を90度(図2Aに示す)又は180度(図2Bに示す)に形成することにより、左旋円偏波信号又は右旋円偏波信号をそれぞれ生成することができる。これにより、設計上の利便性が向上することとなる。
【0020】
また、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1によれば、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間の寸法及び位置、及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bと接地金属片12との間の寸法及び位置を調整することにより、信号フィードポイントを変更することなく、左旋円偏波信号、右旋円偏波信号の制御と、信号特性の最適化による効果を同時に達成することができる。例えば、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが特定の交差角のない形状に形成された場合には、第1の金属マイクロストリップライン13a及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bの幅、形状又は蛇行形態を調整して、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間のピッチ、及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bと接地金属片12との間のピッチを調整することにより、左旋円偏波信号、右旋円偏波信号を生成すると同時に、アンテナ信号の特性を最適化させ、カスタマイズ及び最適化の目的を達成することができる。
【0021】
また、図5ないし図8を参照しながら、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の実際計測結果を説明する。図5は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1のリターンロスの実測データ図であり、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1においてリターンロスが10dBである場合のインピーダンス帯域幅が約8〜10MHzであることを示す。図6は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の実験結果のスミス図であり、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の中心周波数のインピーダンスが50Ω(ohms)に近いことを示す。図7は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1のX−Z平面における放射特性の実験結果図であり、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1が天頂方向において良好な軸比パフォーマンス及び指向性を有することを示す。図8は、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の操作帯域幅におけるアンテナ軸比の実験結果図であり、円偏波効果が3dB軸比帯域幅において約2〜3MHzを有することを示す。これにより、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1は、周辺環境からの干渉を受けにくく、高い安定性を有していることが分かる。
【0022】
最後に、図9に示す工程フロー図を図1〜図2Bと合わせて参照しながら、本発明に係る円偏波パッチアンテナ1の製造方法を詳しく説明する。
【0023】
ステップS1において、基板10を用意し、放射金属片11及び接地金属片12をそれぞれ基板10の上表面101の一部の領域及び下表面102の一部の領域に設けるとともに、基板10の上表面101において放射金属片11を有しない角隅領域近傍に第1の金属マイクロストリップライン13aを、基板10の下表面102において接地金属片12を有しない角隅領域近傍に第2の金属マイクロストリップライン13bを、基板10の側壁103に第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとを電気的に接続するための第3の金属マイクロストリップライン13cを、それぞれ設ける。次に、ステップS2に進む。
【0024】
ここで注意すべき点は、本実施形態において、第1の金属マイクロストリップライン13a、第2の金属マイクロストリップライン13b及び第3の金属マイクロストリップライン13cは、それぞれ基板10の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられ、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成される点である。第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが矩形である場合、ステップS1において、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの相対交差角を90度又は180度に形成する工程をさらに備えてもよい。上述した放射金属片11を基板10の上表面101に設けることとは、厚膜スクリーン印刷、現像エッチング、及び/又はプラズマ堆積により、放射金属片11を基板10の上表面101の中心領域に設けることである。
【0025】
ステップS2において、システム接地ユニット15及び信号フィード素子14を用意し、信号フィード素子14の一端をシステム接地ユニット15に接続させ、信号フィード素子14の他端を第2の金属マイクロストリップライン13bに接続させる。次に、ステップS3に進む。
【0026】
ここで注意すべき点は、信号フィード素子14は、電気信号を第2の金属マイクロストリップライン13bに入力することにより、第2の金属マイクロストリップライン13bと接地金属片12との間で電磁信号をカップリングさせ、第1の金属マイクロストリップライン13aと放射金属片11との間で電磁信号をカップリングさせる点である。
【0027】
ステップS3において、放射金属片11、接地金属片12、第1の金属マイクロストリップライン13a及び/又は第2の金属マイクロストリップライン13bの寸法及び位置を調整することにより、円偏波パッチアンテナ1の信号特性を最適化する。
【0028】
ここで注意すべき点は、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが矩形である場合、ステップS3においては、第1の金属マイクロストリップライン13aと第2の金属マイクロストリップライン13bとの交差角を90度又は180度に調整することにより、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号特性を生成することができる点である。また、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bが弧形又はその他の特定角のない形状である場合、ステップS3においては、第1の金属マイクロストリップライン13a及び第2の金属マイクロストリップライン13bの長さ及び幅を調整する工程をさらに備えてもよいことは言うまでもない。
【0029】
上述のように、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、信号フィードポイントを変更することなく、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号特性を達成ことができる。また、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、アンテナのインピーダンス整合が周辺環境からの干渉を受けにくくなるようにし、アンテナの安定性を向上させることができる。さらに、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、大量且つスピーディな組み付けや生産ができるとともに、製品全体の厚さを効果的に低減ことができる。
【0030】
言い換えれば、本発明に係る円偏波パッチアンテナ及びその製造方法によれば、構造が簡単であるとともに、いかなる電気ピンをも突出させる必要がないという特性を有しているため、製品全体の厚さを効果的に低減することができ、大量且つスピーディな組み付けや生産に有利となる。また、第2の金属マイクロストリップラインの任意の点を信号フィードポイントと見なすことができるため、信号フィードポイントを変更することなく、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号の制御を容易に達成し、好ましい設計の利便性を得ることができる。また、本発明に係る円偏波パッチアンテナの信号フィードポイントは露出された側辺に位置していないため、アンテナのインピーダンス整合が周辺環境から受ける干渉を回避することができ、製品の信頼性及び安定性を向上させることができる。
【0031】
上記のように、これらの実施の形態は本発明の原理および効果・機能を例示的に説明するに過ぎず、本発明は、これらによって限定されるものではない。本発明は、この技術分野に精通した者により本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に修正や変更することが可能であり、そうした修正や変更は、本発明の特許請求の範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0032】
1 円偏波パッチアンテナ
10 基板
101 上表面
102 下表面
103 側壁
11 放射金属片
12 接地金属片
13a 第1の金属マイクロストリップライン
13b 第2の金属マイクロストリップライン
13c 第3の金属マイクロストリップライン
14 信号フィード素子
15 システム接地ユニット
S1〜S3 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上表面に放射金属片が設けられ、且つ下表面に接地金属片が設けられている基板と、
前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第1の金属マイクロストリップライン、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第2の金属マイクロストリップライン、及び前記基板の側壁に設けられ、前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインを電気的に接続している第3の金属マイクロストリップラインを含む金属マイクロストリップラインと、を備え、
前記第1の金属マイクロストリップライン、前記第2の金属マイクロストリップライン及び前記第3の金属マイクロストリップラインは、それぞれ前記基板の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられ、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成されていることを特徴とする円偏波パッチアンテナ。
【請求項2】
システム接地ユニット及び信号フィード素子をさらに備え、前記信号フィード素子の一端が前記システム接地ユニットに接続され、且つ前記信号フィード素子の他端が前記第2の金属マイクロストリップラインに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項3】
前記信号フィード素子は、電気信号を前記第2の金属マイクロストリップラインに入力することにより、前記第2の金属マイクロストリップラインと前記接地金属片との間で信号をカップリングさせ、且つ前記第1の金属マイクロストリップラインと前記放射金属片との間で信号をカップリングさせることを特徴とする請求項2に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項4】
前記基板には、表面実装技術(SMT)によって前記システム接地ユニットが接続されていることを特徴とする請求項2に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項5】
前記信号フィード素子は、同軸線、共平面線路、又はSMAコネクタであることを特徴とする請求項2に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項6】
前記基板は、マイクロ波誘電体基板であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項7】
前記放射金属片は、前記基板の上表面の中心領域に設けられ、円形、楕円形、又は三角形であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項8】
前記基板の下表面における角隅領域近傍は、三角形、矩形又は弧形であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項9】
前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインは、三角形、矩形又は弧形であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項10】
前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインは、矩形であり、且つ長尺方向に互い平行、又は直交することを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項11】
基板を用意し、放射金属片及び接地金属片をそれぞれ前記基板の上表面及び下表面に設けるとともに、前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に第1の金属マイクロストリップラインを、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に第2の金属マイクロストリップラインを、前記基板の側壁に前記第1の金属マイクロストリップラインと前記第2の金属マイクロストリップラインとに電気的に接続される第3の金属マイクロストリップラインを、それぞれ設ける工程と、
システム接地ユニット及び信号フィード素子を用意し、前記信号フィード素子の一端を前記システム接地ユニットに接続させるとともに、前記信号フィード素子の他端を前記第2の金属マイクロストリップラインに接続させる工程と、
を備えることを特徴とする円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項12】
前記第1の金属マイクロストリップライン、前記第2の金属マイクロストリップライン及び前記第3の金属マイクロストリップラインをそれぞれ前記基板の同一角隅における異なる平面の相対位置に設け、一体となって3段に折り曲げられた形状を形成するようにすることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項13】
前記信号フィード素子は、電気信号を前記第2の金属マイクロストリップラインに入力することにより、前記第2の金属マイクロストリップラインと前記接地金属片との間で信号をカップリングさせ、前記第1の金属マイクロストリップラインと前記放射金属片との間で信号をカップリングさせるようにすることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項14】
前記第1の金属マイクロストリップラインと前記第2の金属マイクロストリップラインとを互いに長尺方向に直交、又は平行させることにより、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号特性を生成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項15】
前記放射金属片と前記第1の金属マイクロストリップラインとのピッチを調整するとともに、前記接地金属片と前記第2の金属マイクロストリップラインとのピッチを調整する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項16】
前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインの長さ及び幅を調整する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項17】
厚膜スクリーン印刷、現像エッチング、及び/又はプラズマ堆積によって前記放射金属片を前記基板の上表面の中心領域に設けるようにすることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項1】
上表面に放射金属片が設けられ、且つ下表面に接地金属片が設けられている基板と、
前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第1の金属マイクロストリップライン、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に設けられている第2の金属マイクロストリップライン、及び前記基板の側壁に設けられ、前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインを電気的に接続している第3の金属マイクロストリップラインを含む金属マイクロストリップラインと、を備え、
前記第1の金属マイクロストリップライン、前記第2の金属マイクロストリップライン及び前記第3の金属マイクロストリップラインは、それぞれ前記基板の同一角隅における異なる平面の相対位置に設けられ、一体となって3段に折り曲げられた形状に形成されていることを特徴とする円偏波パッチアンテナ。
【請求項2】
システム接地ユニット及び信号フィード素子をさらに備え、前記信号フィード素子の一端が前記システム接地ユニットに接続され、且つ前記信号フィード素子の他端が前記第2の金属マイクロストリップラインに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項3】
前記信号フィード素子は、電気信号を前記第2の金属マイクロストリップラインに入力することにより、前記第2の金属マイクロストリップラインと前記接地金属片との間で信号をカップリングさせ、且つ前記第1の金属マイクロストリップラインと前記放射金属片との間で信号をカップリングさせることを特徴とする請求項2に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項4】
前記基板には、表面実装技術(SMT)によって前記システム接地ユニットが接続されていることを特徴とする請求項2に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項5】
前記信号フィード素子は、同軸線、共平面線路、又はSMAコネクタであることを特徴とする請求項2に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項6】
前記基板は、マイクロ波誘電体基板であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項7】
前記放射金属片は、前記基板の上表面の中心領域に設けられ、円形、楕円形、又は三角形であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項8】
前記基板の下表面における角隅領域近傍は、三角形、矩形又は弧形であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項9】
前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインは、三角形、矩形又は弧形であることを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項10】
前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインは、矩形であり、且つ長尺方向に互い平行、又は直交することを特徴とする請求項1に記載の円偏波パッチアンテナ。
【請求項11】
基板を用意し、放射金属片及び接地金属片をそれぞれ前記基板の上表面及び下表面に設けるとともに、前記基板の上表面において前記放射金属片を有しない角隅領域近傍に第1の金属マイクロストリップラインを、前記基板の下表面において前記接地金属片を有しない角隅領域近傍に第2の金属マイクロストリップラインを、前記基板の側壁に前記第1の金属マイクロストリップラインと前記第2の金属マイクロストリップラインとに電気的に接続される第3の金属マイクロストリップラインを、それぞれ設ける工程と、
システム接地ユニット及び信号フィード素子を用意し、前記信号フィード素子の一端を前記システム接地ユニットに接続させるとともに、前記信号フィード素子の他端を前記第2の金属マイクロストリップラインに接続させる工程と、
を備えることを特徴とする円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項12】
前記第1の金属マイクロストリップライン、前記第2の金属マイクロストリップライン及び前記第3の金属マイクロストリップラインをそれぞれ前記基板の同一角隅における異なる平面の相対位置に設け、一体となって3段に折り曲げられた形状を形成するようにすることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項13】
前記信号フィード素子は、電気信号を前記第2の金属マイクロストリップラインに入力することにより、前記第2の金属マイクロストリップラインと前記接地金属片との間で信号をカップリングさせ、前記第1の金属マイクロストリップラインと前記放射金属片との間で信号をカップリングさせるようにすることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項14】
前記第1の金属マイクロストリップラインと前記第2の金属マイクロストリップラインとを互いに長尺方向に直交、又は平行させることにより、左旋円偏波又は右旋円偏波の信号特性を生成する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項15】
前記放射金属片と前記第1の金属マイクロストリップラインとのピッチを調整するとともに、前記接地金属片と前記第2の金属マイクロストリップラインとのピッチを調整する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項16】
前記第1の金属マイクロストリップライン及び前記第2の金属マイクロストリップラインの長さ及び幅を調整する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【請求項17】
厚膜スクリーン印刷、現像エッチング、及び/又はプラズマ堆積によって前記放射金属片を前記基板の上表面の中心領域に設けるようにすることを特徴とする請求項11に記載の円偏波パッチアンテナの製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−66891(P2011−66891A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208770(P2010−208770)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】
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