説明

円形状測定方法および装置

【課題】高価な専用装置を用いることなく、平面上の円形パターンをマルチステップ法により高精度に測定できる円形状測定方法および装置を提供する。
【解決手段】円形パターンを有する被測定物Wを載置するテーブル10、テーブルの回転機構20、画像プローブ30、画像プローブを移動させる移動機構40、制御装置50を有する円形状測定装置を準備する。画像プローブを円形パターンの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する工程と、円形パターンの中心を基準に360°/mだけテーブルを回転させて円形パターンの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつテーブルを回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する工程と、このm個の測定データから円形パターンの形状成分を求める工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面上の円形パターンなどを測定する円形状測定方法および装置に関する。例えば、電気基板やフォトマスクなどにおいて、平面上の円形パターンを測定するための円形状測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円形状を有する立体的な被測定物、例えば、回転シャフトやエンジンシリンダブロックなどの円形状(形状偏差)や真円度の測定には、接触式プローブを有する真円度測定機や三次元測定機が用いられてきた。また、平面上の円形パターン、例えば、電気基板やフォトマスクなどの円形パターンの測定には、非接触プローブを有する画像測定機が用いられてきた。
これらの測定結果には、被測定物の形状偏差だけでなく、測定誤差が含まれている。通常の測定では、これらの測定機の精度で十分だが、当該測定機の精度よりも高精度な測定、例えば、基準器の校正には不十分な場合がある。
【0003】
そこで、円形状を高精度に測定する1つの方法として、マルチステップ法(特許文献1参照)が用いられている。
これは、接触子を有する検出器を被測定物の周面に沿って1回転走査しながら被測定物の測定データを取得するとともに、検出器の測定開始位置に対する被測定物の測定開始位置を、1周360°を等間隔にm個に分割した角度位相だけずらして、円周上等間隔に複数m回の被測定物表面の真円度測定によりm個の測定データを取得し、このm個の測定データから被測定物の形状成分を求める解析を行う方法である。つまり、測定データから、被測定物の形状成分と検出器の回転誤差成分とを分離して、被測定物の形状成分を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−113947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したマルチステップ法は、これまで、真円度測定機や三次元測定機などを用いた接触式測定に適用されてきた。
一方、平面上の円形パターンの形状測定の要求に対しては、従来の真円度測定機や三次元測定機などでは測定できない。そこで、真円度測定機に非接触プローブを搭載した専用装置を開発することも考えられるが、専用装置の開発、作製に多額の費用が必要となる。
【0006】
本発明の目的は、高価な専用装置を用いることなく、平面上の円形パターンをマルチステップ法により高精度に測定できるようにした円形状測定方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の円形状測定方法は、被測定物の平面上の円形パターンを測定する円形状測定方法であって、前記被測定物を載置するテーブル、このテーブルを回転させる回転機構、非接触プローブ、この非接触プローブを前記被測定物の円形パターンの円周に沿って移動させる移動機構および前記移動機構を制御する制御装置を有する円形状測定装置を準備する工程と、前記移動機構により、前記非接触プローブを前記円形パターンの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する基本測定工程と、前記回転機構により、前記円形パターンの中心を基準に360°/mだけ前記テーブルを回転させて前記円形パターンの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつ前記テーブルを回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定工程と、 このm個の測定データから円形パターンの形状成分を求める解析を行う解析工程と、を備えることを特徴とする。
ここで、平面上の円形パターンとは、平面に対して僅かに突起する円形パターンのほかに、平面から僅かに窪む孔や凹部などの円形パターンを含む意味である。
【0008】
このような構成によれば、被測定物を載置するテーブル、このテーブルを回転させる回転機構、非接触プローブ、この非接触プローブを被測定物の円形パターンの円周に沿って移動させる移動機構および回転機構並びに移動機構を制御する制御装置を有する円形状測定装置を準備したのち、あとは、移動機構により、非接触プローブを円形パターンの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する基本測定工程と、回転機構により、円形パターンの中心を基準に360°/mだけテーブルを回転させて円形パターンの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつ前記テーブルを回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定工程と、このm個の測定データから円形パターンの形状成分を求める解析を行う解析工程とを行うだけで、平面上の円形パターンをマルチステップ法により測定できる。
従って、高価な専用装置を用いることなく、平面上の円形パターンをマルチステップ法により高精度に測定できる。
【0009】
本発明の円形状測定方法において、前記繰返測定工程では、前記テーブルを360°/m回転させる毎に、前記非接触プローブを移動させながら前記円形パターンの外周に形成されたアライメントマークを測定し、その測定結果から測定物座標系を定義する、ことが好ましい。
このような構成によれば、360°/m回転させる毎に、アライメントマークを測定し、その測定結果から測定物座標系を取り直すため、回転機構の運動誤差の影響が低減される。そのため、回転機構には高い回転精度や再現性を必要としないため、低価格な装置を構築できる。
【0010】
本発明の円形状測定方法において、前記アライメントマークを測定する前記非接触プローブの移動経路が、前記円形パターンを中心とする円移動経路、または、m多角形移動経路に設定されている、ことが好ましい。
【0011】
マルチステップ法を適用する前提条件として、移動機構には測定中における高い再現性が要求される。しかしながら、2軸方向(X,Y軸方向)へ移動する一般的な移動機構は、真円度測定機の回転機構に比べ、回転運動の再現性は高くない。測定中のヒステリシスなどの傾向と大きさが変わらなければ、マルチステップ法でその影響を取り除くことができる。ただし、図6に示すように、回転機構の回転により、機械座標系に対する移動経路34が変わると、ヒステリシスの傾向と大きさが変化し、マルチステップ法ではその影響が残存する恐れある。
【0012】
本発明では、アライメントマークを測定する非接触プローブの移動経路が、円形パターンを中心とする円移動経路、または、N多角形移動経路に設定されているから、回転機構が回転しても、移動経路が変わることがない。つまり、図2,4に示す円移動経路31や、図5に示すN多角形移動経路33は回転前後で移動経路が変わらないので、マルチステップ法による測定精度の向上を図ることができる。
【0013】
本発明の円形状測定方法において、前記基本測定工程の前に、前記被測定物の測定面が水平になるように調整するとともに、前記円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するように調整する準備工程を備える、ことが好ましい。
本発明の円形状測定方法において、前記円形状測定装置は、前記被測定物の測定面が水平になるように調整するチルト調整機構および前記円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するよう調整するアライメント調整機構を有する、ことが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、チルト調整機構により被測定物の測定面が水平になるように調整することができ、また、アライメント調整機構により円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するように調整することができるので、これらの調整作業を簡便に行うことができる。
【0015】
本発明の円形状測定装置は、被測定物の平面上の円形パターンを測定する円形状測定装置であって、前記被測定物を載置するテーブルと、このテーブルを回転させる回転機構と、 非接触プローブと、この非接触プローブを前記被測定物の円形パターンの円周に沿って移動させる移動機構と、前記回転機構並びに前記移動機構を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記移動機構により、前記非接触プローブを前記円形パターンの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する基本測定手段と、 前記回転機構により、前記円形パターンの中心を基準に360°/mだけ前記テーブルを回転させて前記円形パターンの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつ前記テーブルを回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定手段と、このm個の測定データから円形パターンの形状成分を求める解析を行う解析手段とを有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、上述した円形状測定方法と同様な効果が期待できる。
【0016】
本発明の円形状測定装置において、前記被測定物の測定面が水平になるように調整するチルト調整機構と、前記円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するよう調整するアライメント調整機構とを更に有する、ことが好ましい。
このような構成によれば、チルト調整機構により被測定物の測定面が水平になるように調整することができ、また、アライメント調整機構により円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するように調整することができるので、これらの調整作業を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の円形状測定装置を示す図。
【図2】同上実施形態において、準備工程及び基本測定工程を示す図。
【図3】同上実施形態において、基本測定工程の詳細を示す図。
【図4】同上実施形態において、繰返測定工程を示す図。
【図5】同上実施形態において、回転機構の回転前後におけるプローブ移動経路の他の例を示す図。
【図6】回転機構の回転前後における一般的プローブ移動経路を示す図。
【図7】本発明の第2実施形態の円形状測定装置を示す図。
【図8】本発明の第3実施形態の円形状測定装置を示す図。
【図9】本発明の第4実施形態の円形状測定装置を示す図。
【図10】同上第4実施形態において、準備工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
<測定装置構成>
第1実施形態にかかる円形状測定装置は、図1に示すように、ベース1と、このベース1の上面に設けられ被測定物Wを支持するテーブル10と、このテーブルとベース1との間に設けられテーブル10を回転させる回転機構20と、非接触プローブとしての画像プローブ30と、この画像プローブ30を被測定物Wの測定面に沿って移動させる移動機構40と、前記回転機構20および移動機構40の駆動を制御する制御装置50とを備える。
なお、被測定物Wの上面は平面上に突起状の僅かな段差を有する円形パターンが形成され、本実施形態では、この円形パターンの円形状を測定する例である。
【0019】
テーブル10は、被測定物Wをクランプするクランプ機構(図示省略)を備えている。
回転機構20は、垂直な軸を中心に回転される。
画像プローブ30は、CCDカメラなどによって構成されている。
【0020】
移動機構40は、ベース1にテーブル10を跨いで前後方向(Y軸方向)へ移動可能に設けられた門形フレーム41と、この門形フレーム41の水平ビーム42に沿って左右方向(X軸方向)へ移動可能に設けられたXスライダ43と、このXスライダ43に上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられ下端に画像プローブ30を有するZスライダ44とから構成されている。つまり、三次元移動機構によって構成されている。
【0021】
制御装置50は、画像プローブ30および三次元移動機構40の駆動を制御するコントローラ51と、このコントローラ51に対して駆動指令を与えるとともに、画像プローブ30からの信号を取り込んで処理する計算・制御用コンピュータ52とを含んで構成されている。
【0022】
<測定>
(準備工程)
テーブル10の上面に被測定物Wを支持したのち、機械座標系のXY平面に対して被測定物Wの測定面が水平になるように、テーブル10の上面を調整したのち、被測定物Wの円形パターンの中心が回転機構20の回転中心に一致するように、被測定物Wのクランプ位置を調整する。
また、被測定物Wを測定することにより、測定物座標系を定義する。例えば、図2に示すように、移動機構40により、画像プローブ30を被測定物Wの円形パターンSと同心円の円移動経路31に沿って移動させながら、アライメントマークAM1〜AM4を測定し、その測定結果から測定物座標系を定義する。
【0023】
(基本測定工程)
移動機構40により、画像プローブ30を円形パターンSの円周に沿って移動させながら、円形パターンSの円周を360°/mピッチで測定する。例えば、図2に示すように、アライメントマークAM1〜AM4を測定した円移動経路31の最終点から内側に画像プローブ30を移動させたのち、円形パターンSの円周に沿って円移動32させながら、円形パターンSの円周を360°/mピッチで測定する。このとき、図3に示すように、円形パターンSの円周の360°/mピッチ毎に、円周のエッジ検出位置が取り込まれる。
【0024】
(繰返測定工程)
回転機構20により、円形パターンSの中心を基準に360°/mだけテーブル10を回転させて、円形パターンSの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつテーブル10を回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する。
例えば、図4に示すように、回転機構20により、円形パターンSの中心を基準に360°/mだけテーブル10を回転させる。これにより、被測定物Wも回転される。このとき、先に定義した測定物座標系に対して被測定物Wが移動するため、測定物座標系を再定義する。つまり、移動機構40により、画像プローブ30を被測定物Wの円形パターンSと同心円の円移動経路31に沿って移動させながら、アライメントマークAM1〜AM4を測定し、その測定結果から測定物座標系を定義する。
この後、円移動32により、先程測定した円形パターンSの円周上の同一点を測定する。このルーチン(測定物座標系の定義→円形パターンの円周測定→テーブル回転)を合計m回行って、m個の測定データを取得する。
【0025】
(解析工程)
上述した各工程を経て得られたm個の測定データから円形パターンSの形状成分を求める解析を行う。これは、特許文献1(特開2007−113947号公報)に記載のマルチステップ法を適用して解析することにより、測定誤差が取り除かれた円形状測定結果を得ることができる。
ここで、マルチステップ法を簡単に説明する。
【0026】
(マルチステップ法について)
測定装置の画像プローブ30の位置誤差成分をZ(θ)、被測定物Wの形状成分をG(θ)とする。
画像プローブ30の測定開始位置に対する被測定物Wの測定開始位置をずらした相対的な位相角度をφiとする。マルチステップ法では角度位相φiを、一周360度を等角度に分割した角度に設定する。ステップ数をmとすると角度位相φiは次式で表せる。
【0027】
【数1】

【0028】
測定データは測定装置の画像プローブ30の位置誤差成分Z(θ)と画像プローブ30が検出する被測定物Wの形状成分G(θ)との合成として検出するため、測定データT(θi)は次式で表すことが出来る。
【数2】

ただし、jは画像プローブ30が一回転の走査で測定する測定点番号、Nは測定点総数を表す。(例:N=2000とすると、各測定ピッチ角度は360°/2000となる。)
【0029】
Z(θ)、G(θ)は試料円周の一周を基準周期として、(3)、(4)式のようにフーリエ級数でそれぞれ表すことが出来るとする。
【数3】

【数4】

【0030】
ここで、(2)式を用いて相対的な角度位相を、φiを、i=1,2,・・・,mまで変えたm個の測定データT(θi)の平均値μ(θ)を計算する。
【数5】

【0031】
(5)式の右辺最終行の第2項は、n≠kmの時は0であり、n=kmの項だけが残る。ただし、整数k=1,2,3,…,N/mである。したがって、(5)式より次式が求まる。
【数6】

マルチステップ法の解析では、平均値μ(θ)を測定装置の位置誤差成分Z(θ)の最終解析結果としている。
【0032】
次に、マルチステップ法において被測定物Wの形状成分G(θ)を求める解析手順を説明する。(2)式から(6)式を引いて(7)式を得る。
【数7】

【0033】
つまり、’T(θji )−μ(θ)’は被測定物Wの形状成分G(θ)が角度位相φiだけ異なるG(θj−φi )からG(m)(θ)を引いた値を意味している。マルチステップ法の解析方法では、(7)式の左辺第1項のφ0=0を用いて、
【数8】

としている。このT(θj,0)−μ(θj)の値を被測定物の形状成分G(θ)の近似値として求める。
【0034】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態によれば、被測定物を載置するテーブル10、このテーブル10を回転させる回転機構20、画像プローブ30、この画像プローブ30を被測定物Wの円形パターンSの円周に沿って移動させる移動機構40、および、回転機構20並びに移動機構40を制御する制御装置50を有する円形状測定装置を準備したのち、あとは、準備工程、移動機構40により、画像プローブ30を円形パターンSの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する基本測定工程と、回転機構20により、円形パターンSの中心を基準に360°/mだけテーブル10を回転させて円形パターンSの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつテーブル10を回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定工程と、このm個の測定データから円形パターンSの形状成分を求める解析を行う解析工程とを行うだけで、平面上の円形パターンSをマルチステップ法により高精度に測定できる。
従って、高価な専用装置を用いることなく、平面上の円形パターンSをマルチステップ法により高精度に測定できる。
【0035】
また、繰返測定工程において、テーブル10を360°/m回転させる毎に、画像プローブ30を移動させながら円形パターンSの外周に形成されたアライメントマークAM1〜AM4を測定し、その測定結果から測定物座標系を定義するようにしたので、つまり、テーブル10を360°/m回転させる毎に測定物座標系を取り直すようにしたので、回転機構20の運動誤差の影響が低減される。そのため、回転機構20には高い回転精度や再現性を必要としないため、低価格な装置を構築できる。
【0036】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態では、テーブル10を360°/m回転させる毎に、測定物座標系の取り直しのために画像プローブ30を移動させる移動経路が、円形パターンSを中心とする円移動経路31に設定したが、図5に示すように、m多角形移動経路33としてもよい。
このように、第1実施形態では、画像プローブ30を移動させる移動経路が、円形パターンSを中心とする円移動経路31、または、N多角形移動経路33に設定されているから、回転機構20が回転しても、その回転前後で移動経路が変わることがない。つまり、図2,4に示す円移動経路や、図5に示すN多角形移動経路では回転前後で移動経路が変わらないので、マルチステップ法による測定精度の向上を図ることができる。
【0037】
また、第1実施形態において、準備工程のあとに、測定工程まえに、測定動作を同じ動作、つまり、画像プローブ30を円形パターンSの円周に沿って移動させる動作を行ったのちに、測定動作を行うようにすれば、より高精度な測定が期待できる。つまり、最初の測定動作は初期状態(アライメントマーク測定後の状態)のヒステリシスなどの影響を大きく受ける恐れがあるため、測定動作と同じ動作を行うことにより、ヒステリシスの影響を緩和することができる。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
第2実施形態にかかる円形状測定装置は、図7に示すように、第1実施形態で説明した円形状測定装置に対して、被測定物Wの測定面が水平になるように調整するチルト調整機構21と、円形パターンSの中心が回転機構20の回転中心に一致するように調整するアライメント調整機構22とが付加されている。
【0039】
チルト調整機構21は、図示省略したが、固定プレートと、この固定プレートの上に配置された傾斜プレートと、この傾斜プレートの離間した3点位置に螺合され先端が固定プレートに当接する3本の姿勢調整ねじなどによって構成することができる。
アライメント調整機構22は、例えば、テーブル10を回転機構20の回転軸に対して直交する2軸方向へ移動調整可能な2枚の調整プレート(例えば、XYプレート)などによって構成することができる。
なお、これらチルト調整機構21やアライメント調整機構22について、上記例に限らず、他の構成であってもよい。
【0040】
従って、第2実施形態によれば、チルト調整機構21により被測定物Wの測定面(円形パターンSを有する面)が水平になるように調整することができ、また、アライメント調整機構22により被測定物Wの円形パターンSの中心が回転機構20の回転中心に一致するように調整することができるので、これらの調整作業を簡便に行うことができる。
【0041】
[第3実施形態]
第3実施形態の説明にあたって、第1実施形態および第2実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
第3実施形態にかかる円形状測定装置は、図8に示すように、第2実施形態で説明した円形状測定装置に対して、回転機構20がモータなどの回転駆動源を備えた自動回転機構20Aとして構成されているとともに、この自動回転機構20Aを回転駆動させるコントローラ51Aが付加されている。
【0042】
ここで、計算・制御用コンピュータ52は、移動機構40により、画像プローブ30を円形パターンSの円周に沿って移動させながら、円形パターンSの円周を360°/mピッチで測定する基本測定手段と、回転機構20により、円形パターンSの中心を基準に360°/mだけテーブル10を回転させて円形パターンSの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつテーブル10を回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定手段と、このm個の測定データから円形パターンSの形状成分を求める解析を行う解析手段とを有する。
【0043】
従って、第3実施形態によれば、コントローラ51Aからの指令により、自動回転機構20Aを回転駆動させることができるので、アライメント調整後の測定を自動化することができる。
【0044】
[第4実施形態]
第4実施形態の説明にあたって、第1実施形態〜第3実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
第4実施形態にかかる円形状測定装置は、図9に示すように、第2実施形態で説明した円形状測定装置に対して、回転機構20、チルト調整機構21、アライメント調整機構22が、自動回転機構20A、自動チルト調整機構21A、自動アライメント調整機構22Aとして構成されているとともに、この自動回転機構20A、自動チルト調整機構21A、自動アライメント調整機構22Aを駆動させるコントローラ51Aが付加されている。
従って、コントローラ51Aからの指令により、自動回転機構20A、自動チルト調整機構21A、自動アライメント調整機構22Aを駆動させることができるので、次のようにして自動化することができる。
【0045】
図10に示すように、被測定物Wをテーブル10上にセットしたのち(ST1)、自動回転機構20Aの回転中心と被測定物Wの中心(円形パターンSの中心)を合わせる(ST2)。例えば、自動回転機構20Aを駆動させながら被測定物Wの円形パターンSの中心軌跡を測定して、自動回転機構20Aの中心を割り出す。この回転中心と被測定物Wの円形パターンSの中心とが一致するように、自動アライメント調整機構22Aを駆動させる。
次に、アライメントマークAM1〜AM4を測定して測定物座標系(仮)を取得したのち(ST3)、チルト測定を行う(ST4)。例えば、アライメントマークAM1〜AM4の上面高さを測定して被測定物Wの測定面(円形パターンSを有する面)の傾きを求める。
【0046】
次に、チルト測定によって得られた測定面の傾きが許容範囲内かを判定する(ST5)。ここで、測定面の傾きが許容範囲内でなければ、自動チルト調整機構21Aの駆動によりチルト調整を行った後、ST3〜ST5を行う。ST5において、測定面の傾きが許容範囲内になったら、ST3で仮に取得した測定物座標系を確定したのち(ST7)、本測定開始へ進む。
従って、第4実施形態によれば、チルト調整やアライメント調整を含めた測定を自動化することができるので、省力化が図れる。
【0047】
<変形例>
本発明は、前述の各実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、画像プローブ30を被測定物Wの測定面に沿って移動させる移動機構40を、三次元移動機構により構成したが、これに限られない。例えば、回転機構20の回転軸に対して直交しかつ互いに直交する2軸方向へ移動する機構であってもよい。つまり、回転機構20の回転軸をZ軸とすると、X、Y軸方向へ移動できるXY移動機構であってもよい。または、画像プローブ30を回転機構20の回転軸を中心に回転させるとともに、回転軸からの距離が変化する方向へ直線移動する方向へ移動可能な移動機構であってもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、非接触プローブとして画像プローブ30を用いたが、これに限られない。例えば、静電容量センサやラインレーザなどであってもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、平面上に突起状の僅かな段差を有する円形パターンを測定する例について説明したが、これに限られない。例えば、前記実施形態とは逆に、平面から僅かに窪んだ孔や凹みの円形パターンでも、前記実施形態と同様にして適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電気基板やフォトマスクなどにおいて、平面上の円形パターンを測定するための方法および装置に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10…テーブル、
20…回転機構、
20A…自動回転機構、
21…チルト調整機構、
21A…自動チルト調整機構、
22…アライメント調整機構、
22A…自動アライメント調整機構、
30…画像プローブ(非接触プローブ)、
31…円移動経路、
33…多角形移動経路、
40…移動機構、
50…制御装置、
W…被測定物、
S…円形パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の平面上の円形パターンを測定する円形状測定方法であって、
前記被測定物を載置するテーブル、このテーブルを回転させる回転機構、非接触プローブ、この非接触プローブを前記被測定物の円形パターンの円周に沿って移動させる移動機構および前記移動機構を制御する制御装置を有する円形状測定装置を準備する工程と、
前記移動機構により、前記非接触プローブを前記円形パターンの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する基本測定工程と、
前記回転機構により、前記円形パターンの中心を基準に360°/mだけ前記テーブルを回転させて前記円形パターンの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつ前記テーブルを回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定工程と、
このm個の測定データから円形パターンの形状成分を求める解析を行う解析工程と、
を備えることを特徴とする円形状測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の円形状測定方法において、
前記繰返測定工程では、前記テーブルを360°/m回転させる毎に、前記非接触プローブを移動させながら前記円形パターンの外周に形成されたアライメントマークを測定し、その測定結果から測定物座標系を定義する、
ことを特徴とする円形状測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の円形状測定方法において、
前記アライメントマークを測定する前記非接触プローブの移動経路が、前記円形パターンを中心とする円移動経路、または、m多角形移動経路に設定されている、
ことを特徴とする円形状測定方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の円形状測定方法において、
前記基本測定工程の前に、前記被測定物の測定面が水平になるように調整するとともに、前記円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するように調整する準備工程を備える、
ことを特徴とする円形状測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の円形状測定方法において、
前記円形状測定装置は、前記被測定物の測定面が水平になるように調整するチルト調整機構および前記円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するよう調整するアライメント調整機構を有する、
ことを特徴とする円形状測定方法。
【請求項6】
被測定物の平面上の円形パターンを測定する円形状測定装置であって、
前記被測定物を載置するテーブルと、
このテーブルを回転させる回転機構と、
非接触プローブと、
この非接触プローブを前記被測定物の円形パターンの円周に沿って移動させる移動機構と、
前記回転機構並びに前記移動機構を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記移動機構により、前記非接触プローブを前記円形パターンの円周に沿って移動させながら、円形パターンの円周を360°/mピッチで測定する基本測定手段と、
前記回転機構により、前記円形パターンの中心を基準に360°/mだけ前記テーブルを回転させて前記円形パターンの円周上の同一点を測定する測定動作を、360°/mずつ前記テーブルを回転させながら合計m回行ってm個の測定データを取得する繰返測定手段と、
このm個の測定データから円形パターンの形状成分を求める解析を行う解析手段とを有する、
ことを特徴とする円形状測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の円形状測定装置において、
前記被測定物の測定面が水平になるように調整するチルト調整機構と、
前記円形パターンの中心が前記回転機構の回転中心に一致するよう調整するアライメント調整機構とを更に有する、
ことを特徴とする円形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−44674(P2013−44674A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183837(P2011−183837)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】