説明

円筒体外観検査方法

【課題】円筒体を回転させること無く、より正確な検査を行うことができる円筒体外観検査方法を提供する。
【解決手段】基準となるワークの側面画像を円筒展開して曲面部分が平坦に展開された変換画像を取得する。ワークの回転と変換画像の取得を繰り返して変換画像を全周に渡って取得して合成し、ワーク全周の基準画像を形成する。検査対象のワークの側面画像に表示されたワーク像の正面部分を円筒展開して正面展開画像を生成し(S3)、正面展開画像と基準画像をパターンマッチングする(S4)。そのマッチングの度合いに基づいてワークの検査を実施する(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理によって円筒体の検査を行う円筒体外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶ジュース等の側面には、印刷が施されており、この印刷状態を検査することによって異品種検査や上下反転検査や異物検査を行えるように構成されている。
【0003】
このような円筒体の外観を検査する際には、円筒体を側面から撮像した際に歪みの少ない中心付近の画像を貼り合わせて合成し、円筒体側面全周の基準画像を作成する。
【0004】
そして、検査時においては、検査対象物をカメラで撮像し、円筒体中心付近の歪みの少ない部分を前記基準画像とパターンマッチングして、異品種検査や上下反転検査等を行っていた。
【0005】
また、他の方法としては、円筒体を回転させながらラインセンサーカメラで撮像して歪みのない画像を取得する方法もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このうような検査方法において、円筒体の中心付近の画像を貼り合わせる前者の検査方法にあっては、円筒体の側面画像に歪みが残存するため、正確な検査を行うことが難しかった。
【0007】
また、ラインセンサーカメラを用いた後者の検査方法にあっては、円筒体を回転させる為の機械構造が必要となり、高価となるとともに検査に時間を要してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、円筒体を回転させること無く、より正確な検査を行うことができる円筒体外観検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の円筒体外観検査方法にあっては、円筒体の外観を検査する円筒体外観検査方法において、基準となる円筒体の側面画像を円筒展開して曲面部分が平坦に展開された変換画像として取得する工程を、前記円筒体を回転して複数回繰り返し、当該円筒体全周の合成画像を基準画像として取得する基準画像取得工程と、検査対象となる円筒体の側面画像を円筒展開して円筒展開画像を取得し、該円筒展開画像を前記基準画像とパターンマッチングして、その結果に基づいて検査を行う検査工程と、を備えている。
【0010】
すなわち、検査を開始する前段階において、基準となる円筒体の側面画像を円筒展開することによって、曲面部分が平坦に展開された変換画像を取得する。そして、この工程を、前記円筒体を回転して複数回繰り返すことで、当該円筒体全周の合成画像を基準画像として取得する。これにより、検査時に比較対照となる前記基準画像がラインセンサーカメラを用いること無く得られる。
【0011】
また、検査時においては、検査対象となる円筒体の側面画像を円筒展開することで、円筒展開画像を取得する。そして、この円筒展開画像を前記基準画像とパターンマッチングして、その結果を取得し、このときのマッチングの度合い等に基づいて検査が行われる。
【0012】
また、請求項2の円筒体外観検査方法においては、前記円筒体を照らす照明手段を、中央部が没入した溝形状の発光部を有する照明で構成した。
【0013】
すなわち、前記円筒体を照らす照明は、中央部が没入した溝形状の発光部を備えており、平坦な発光部を備えた照明で円筒体を照らす場合と比較して、正面から側方へ回り込んだ部分も前記照明によって照らされる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明の請求項1の円筒体外観検査方法にあっては、検査時に比較対照となる歪みのない基準画像を、高価なラインセンサーカメラを用いること無く取得することができる。
【0015】
また、検査時にも、検査対象となる円筒体の側面画像を円筒展開することによって歪みのない円筒展開画像を取得することができる。これにより、より正確な検査を行うことができる。
【0016】
そして、この円筒展開画像を前記基準画像とパターンマッチングし、その結果に基づいて検査を行うため、ラインセンサーカメラを用いる場合と比較して、検査対象となる円筒体を回転する為の機械構造が不要となり、低コスト化を図ることができるとともに、検査時間も短縮することができる。
【0017】
したがって、円筒体を回転させること無く、より正確な検査を高速で行うことができる。
【0018】
また、請求項2の円筒体外観検査方法においては、前記円筒体を照らす照明は、中央部が没入した溝形状の発光部を備えており、平坦な発光部を備えた照明で円筒体を照らす場合と比較して、正面から側方へ回り込んだ部分も、前記照明によって均一に照らすことができる。
【0019】
これにより、回り込み部分の画像も鮮明に取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる円筒体外観検査方法を実施する為の円筒外観検査装置1を示す図である。この円筒外観検査装置1は、缶ジュース等の円筒体の外観検査、具体的には側面の印刷部分の画像を処理することで異品種検査や上下反転検査や異物検査を行う装置であり、例えば工場の搬送ラインに設置されている。
【0021】
すなわち、円筒体としてのワーク11が搬送されるコンベア12の側部には、所定位置を通過する検査対象となるワーク11に光を当てる照明手段が設けられており、この照明手段は、図1の(b)にも示すように、前記ワーク11を側方から照らす主照明13と、前記ワーク11を真上から照らす補助照明14とによって構成されている。
【0022】
前記主照明13は、前記コンベア12上を搬送されるワーク11の側部に設けられた反射板21と、該反射板21に沿って設けられた一対の灯体22,22とによって構成されている。前記反射板21は、図2に示すように、湾曲面で構成された底面部23と、該底面部23の両側縁に起立した起立部24,24とによって構成されており、上方に開口した断面U字状に形成されている。
【0023】
これにより、この反射板21は、図1の(a)に示したように、上部に設けられた前記灯体22,22からの光31,31を、その内側面で反射するように構成されており、当該反射板21の内側面は、図2に示したように、中央部が没入した溝形状の発光部32を構成している。このとき、前記底面部23で反射した光は、前記ワーク11の正面を照らすように構成されており、左右の起立部24,24で反射した光31,31は、図1の(a)に示したように、前記ワーク11の正面より側方へ回り込んだ部分を照らすように構成されている。
【0024】
この主照明13の手前側には、図1の(b)に示したように、斜め上方にカメラ41が設けられており、前記コンベア12で搬送される前記ワーク11の側面の画像を取得できるように構成されている。このカメラ41は、コンピュータ装置で構成された制御部42に接続されており、該制御部42が記憶手段に記憶されたプログラムに従って動作することで、前記カメラ41より入力した前記ワーク11の側面の画像を解析して、当該ワーク11の検査を行うように構成されている。
【0025】
以上の構成からなる本実施の形態において、前記ワーク11の検査を行う際には、その前段階において、基準となる円筒体としてのワーク11の側面からの側面画像をカメラ41で取得するとともに、この側面画像におけるワーク正面部分を、座標変換して円筒展開することで、曲面部分が平坦に展開された変換画像を取得する。
【0026】
そして、前記ワーク11を軸中心に所定角回転する回転工程と、前述した側面画像を取得して前記変換画像に変換する変換工程とを複数回繰り返すことによって、当該ワーク11周面の前記変換画像を全周に渡って取得した後、各変換画像を合成することで、前記ワーク11の周面を全周に渡って展開した基準画像を形成する。
【0027】
これにより、検査時に比較対照となる歪みのない前記基準画像を、高価なラインセンサーカメラを用いること無く取得し、この基準画像を前記制御部42に保存する。
【0028】
次に、前記コンベア12で搬送されるワーク11を検査する際の前記円筒外観検査装置1の前記制御部42での動作を、図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0029】
すなわち、所定位置を通過するワーク11の側面からの画像を前記カメラ41で撮像した際には、この撮像した側面画像を前記カメラ41から入力し(S1)、当該側面画像より前記ワーク11の位置を求める(S2)。このとき、当該制御部42は、図4に示すように、接続されたモニタの画面51に前記側面画像52を表示する。
【0030】
そして、この側面画像52に表示された前記ワーク11のワーク像61の正面部分を、座標変換して円筒展開することで、曲面部分62が平坦に展開された円筒展開画像としての正面展開画像63を生成する(S3)。これにより、前記ワーク11の90度以上の範囲で円筒歪みが除去された前記正面展開画像63を取得することができる。
【0031】
これにより取得した前記正面展開画像63を前記モニタの画面51に表示するとともに、この正面展開画像63が適合する適合領域71を、当該画面51に表示された前記基準画像64から抽出し、該基準画像64の前記適合領域71と前記正面展開画像63とをパターンマッチングする(S4)。
【0032】
前記正面展開画像63と前記基準画像64とパターンマッチングにおいて、そのマッチングの度合いや、濃度差の大きな部分の有無などに基づいて、検査対象のワーク11が前記基準画像64が示す基準のワーク11と同品種か、周面の印刷方向が正しいか、異なるワーク11の混入が無いか等を検査する(S5)。その結果、正常であれば、モニタに正常である旨を表示する等して(S6)、メインルーチンへ戻る一方、異常の場合いは、モニタに異常である旨を表示して当該ワーク11を下流側にてコンベア12から排除する等して(S7)、メインルーチンへ戻る。
【0033】
このように、本実施の形態にあっては、基準となるワーク11の側面画像も検査対象となるワーク11の側面画像52も円筒展開することによって、歪みのない前記基準画像64及び前記正面展開画像63を取得することができる。これにより、より正確な検査を行うことができる。
【0034】
そして、この正面展開画像63を前記基準画像64とパターンマッチングし、その結果に基づいて検査を行うため、ラインセンサーカメラを用いる場合と比較して、検査対象となるワーク11を検査時に回転する為の機械構造が不要となり、低コスト化を図ることができるとともに、検査時間も短縮することができる。
【0035】
したがって、前記ワーク11を回転させること無く、より正確な検査を高速で行うことができるとともに、当該ワーク11をコンベア12で搬送する過程での検査が可能となる。
【0036】
一方、検査対象となる前記ワーク11を照らす前記主照明13は、断面U字状の反射板21を備えており、該反射板21によって中央部が没入した溝形状の発光部32が形成されている。このため、平坦な発光部を備えた照明で前記ワーク11を照らす場合と比較して、ワーク11正面から側方へ回り込んだ部分も、当該主照明13によって均一に照らすことができる。
【0037】
これにより、回り込み部分の画像も鮮明に取得することができ、正確な検査を実施することができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、断面U字状の反射板21を利用して中央部が没入した溝形状の発光部32を構成した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものでは無く、例えば断面U字状の面発光体を使用することによって、中央部が没入した溝形状の発光部32を構成しても良い。
【0039】
また、その形状は、断面U字状の限らず、例えば断面V字状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態を示す模式図で、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】同実施の形態の反射板を示す斜視図である。
【図3】同実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】同実施の形態の画面の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 円筒体外観検査装置
11 ワーク(円筒体)
13 主照明
21 反射板
32 発光部
41 カメラ
42 制御部
52 側面画像
62 曲面部分
63 正面展開画像(円筒展開画像)
64 基準画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の外観を検査する円筒体外観検査方法において、
基準となる円筒体の側面画像を円筒展開して曲面部分が平坦に展開された変換画像として取得する工程を、前記円筒体を回転して複数回繰り返し、当該円筒体全周の合成画像を基準画像として取得する基準画像取得工程と、
検査対象となる円筒体の側面画像を円筒展開して円筒展開画像を取得し、該円筒展開画像を前記基準画像とパターンマッチングして、その結果に基づいて検査を行う検査工程と、
を備えたことを特徴とする円筒体外観検査方法。
【請求項2】
前記円筒体を照らす照明手段を、中央部が没入した溝形状の発光部を有する照明で構成したことを特徴とする請求項1記載の円筒体外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−151720(P2008−151720A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342011(P2006−342011)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】