説明

円管支持構造

【課題】 円管の移動を規制しながらより多くの円管を支持可能にするとともに、構成を単純にした円管支持構造を提供する。
【解決手段】 マンホールまたはハンドホールの内壁面12に開口する開口孔13に複数収容される円管32を支持するとともに内壁面12に固定される円管支持部材15と、円管32における円管支持部材15の外側と円管支持部材15及び内壁面12の間とに設けられる円管移動ストッパ17とからなり、円管支持部材15は、波型に形成された可撓性波型金物20を複数設けて構成され、各可撓性波型金物20間に円管32を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円管の支持及び移動規制に用いられる円管支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバーケーブルや通信ケーブル等のケーブルを地中に配索する場合に、一定の間隔をおいて設置されたマンホールまたはハンドホール間を結ぶように外管を地中に埋設し、この外管内に複数さや管を設置して、このさや管内にケーブルを通すことが行われている。
このような場合、地震などの振動によってさや管が移動してしまう可能性がある。このような移動が生じると、さや管の管端が上記した外管の開口孔内に入ってしまうなどして管理し難くなってしまう虞があるため、マンホールやハンドホールの内壁にさや管の管端を支持することが行われている。
【0003】
このように、地中に埋設された外管内に収容される複数のさや管をマンホールまたはハンドホールの内壁に支持する装置として、それぞれさや管を挿通可能な多数のさや管支持孔が形成された支持板と、支持板に支持された多数本のさや管を挿通可能なさや管挿通孔を有するリング板状を成すとともに、そのさや管挿通孔に臨む部分に多数個のバンド固定片が周方向に所定間隔をおいて板面に対して起立形成された固定板とを有するものがある。この装置では、支持板のさや管支持孔に支持され、固定板のさや管挿通孔に挿通されたさや管の端末部外周を固定バンドでバンド固定片に共締めするようになっている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−259524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような円管を支持する装置においては、予め形成されたさや管支持孔及びバンド固定片等によって支持可能なさや管の本数が限られてくるので、新たな増設は困難となりうる。また、さや管支持孔及びバンド固定片は、支持板或いは固定板の周縁部分にしか設けられておらず、外管内に効率的にさや管布設を行っているとは言えない。また、部品点数も多く、構成が複雑なため製造が困難となるとともに費用が掛かってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、円管の移動を規制しながらより多くの円管を支持可能にするとともに、構成を単純にした円管支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、マンホールまたはハンドホールの内壁面に開口する開口孔に複数収容される円管を支持するとともに前記内壁面に固定される円管支持部材と、前記円管における前記円管支持部材の外側と前記円管支持部材及び前記内壁面の間とに設けられる円管移動ストッパとからなり、前記円管支持部材は、波型に形成された可撓性波型金物を複数設けて構成され、各可撓性波型金物間に前記円管を支持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、マンホールまたはハンドホールの内壁面に固定される可撓性波型金物に円管が支持されることになる。この可撓性波型金物は波型に形成されているため、収容される円管同士の間に余計な隙間を設けることなく円管を集約的に支持することができる。また、それらの上下方向及び水平方向への移動を規制することができる。さらに、円管の管端には、可撓性波型金物を間に介在可能とするようにして、一対の円管移動ストッパが設けられている。これにより、円管が管軸方向へ移動してしまうことを防ぐことができる。
したがって、円管の移動を規制しながら開口孔内での収容率の向上を図ることができる。
また、可撓性波型金物を円管移動ストッパの間で支持することで円管の移動が規制されるので、構成を簡素化できるとともに部品点数を削減することができ、コストの削減を図ることが可能となる。
さらに、上記可撓性波型金物は、波型であり可撓性を有するため、水平方向の引張りや圧縮力に対して追従して変形でき、その結果、破損しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。
円管支持構造10は、マンホールまたはハンドホール等の作業空間11の内壁面12に開口する正面視略正方形の開口孔13を横に跨ぐようにして内壁面12に沿って鉛直に固定される円管支持部材15と、開口孔13内に収容される複数のさや管16のそれぞれの両端に嵌合固定されたダクトスリーブ32(円管)の管端に固定可能な一対の円管移動ストッパ17とから構成される。ここで、ダクトスリーブ32の管端は、上記開口孔13から作業空間11内に突出した状態となっており、上記円管支持構造10は、この突出した管端部分に設けられるものである。
【0009】
まず、円管支持部材15について説明する。
上記円管支持部材15は、上記内壁面12に固定される一対の固定部材19と、これら固定部材19に両端を支持される複数の可撓性波型金物20とから成っており、上記ダクトスリーブ32は、上下に隣り合う可撓性波型金物20同士の間に支持される。
これら一対の固定部材19は、鉄或いはその他の金属板材からなっており、その長手方向両端において、各々ボルト孔21が穿設された固定部22を有している。そして、各ボルト孔21に挿通される固定ボルト24を内壁面12のボルト孔23に螺合させることで、一対の固定部材19が開口孔13の両側の上記内壁面12にそれぞれ長さ方向を上下に配置した姿勢で取り付けられる。
【0010】
固定部材19の中央部分には、各固定部22の相互近接側から垂直に立ち上がる連結部25と各連結部25の先端同士を連結させる金物保持部26とが形成されている。両固定部22と両連結部25と金物保持部26とは一体に構成されている。
そして金物保持部26は、上記内壁面12と対向する内面に、その長手方向に並べるように複数の可撓性波型金物20を保持する。
【0011】
上記可撓性波型金物20は、長方形の帯板を厚さ方向に屈曲させたもので、厚さ方向の一方に凸状を成す山部27と同方向に凹状を成す谷部28とを長手方向に交互に有する波型形状に形成されている。山部27と谷部28との各ピッチ間の距離は等しくされている。
そして、このように形成される可撓性波型金物20は、その長さ方向を水平にし、しかも、山部27が上向きに凸状を成すように配置された状態で、上記一対の固定部材19を繋ぐように両端部が両固定部材19の金物保持部26に接続される。このとき、各可撓性波型金物20は、上記金物保持部26に複数設けられ、互いに一定の間隔をおいて上下方向に平行な状態で配置されている。加えて、上下方向で隣り合う可撓性波型金物20同士は、図2において正面視上下対称となるように設けられる。その結果、各可撓性波型金物20は、左右方向に位置が合い且つ上下方向において隣り合う山部27と谷部28とがそれぞれ対向した状態となる。この状態で、一方の可撓性波型金物20と他方の可撓性波型金物20の山部27と谷部28とが互いに最も間隔を空けている部分、つまり上側が山部27とされ、下側が谷部28とされた部分にダクトスリーブ32が挿通される。このとき、両可撓性波型金物20は、そのダクトスリーブ32の外周面に接した状態でダクトスリーブ32を支持することになる。そのため、各可撓性波型金物20の金物保持部26への配置間隔はダクトスリーブ32の外径に合わせた間隔に設定されることになる。
なお、ここで言う可撓性波型金物20は、棒状体で形成することもできる。また、山部27と谷部28とをはっきりと形成せず、円弧状の山部27と谷部28とを交互に形成するように湾曲された緩やかな波型を呈するように形成してもよい。さらに、一対の固定部材19が互いに対向する側の側面に複数の可撓性波型金物20を固定して設けてもよい。
【0012】
このように構成された円管支持部材15は、上記開口孔13内において水平方向に並列に配置されている複数のさや管16において、それぞれの両端に嵌合固定された備えられるダクトスリーブ32の管端を、上述したように、各可撓性波型金物20同士の間で支持することになるが、このとき、各ダクトスリーブ32の軸心位置は、それらの上方に位置する可撓性波型金物20の山部27の頂部34と、下方に位置する可撓性波型金物20の谷部28の底部35とを結んだ鉛直に沿う線上に配置されることになる。
また、上記のように支持された隣り合うダクトスリーブ32の間には、両方の外周面に接するようにして、そのダクトスリーブ32よりも上位にある可撓性波型金物20の谷部28と下位の可撓性波型金物20の山部27が存在する。この上位の可撓性波型金物20の谷部28の上に、他のダクトスリーブ32が搭載され、このダクトスリーブ32は、さらにその上位の可撓性波型金物20の山部27によって支持される。また、下位の可撓性波型金物20の山部27の下にも他のさや管が同様に配置される。
【0013】
したがって、上述したような可撓性波型金物20によれば、全体が波型形状を呈しているため、可撓性を有し、ダクトスリーブ32の外周面に接触する部分における弾性力が大きくなる。そのため、単にフラットな形状の金物よりも、ダクトスリーブ32に対して摩擦力が大きくなるので、ダクトスリーブ32をより確実に支持することができる。
また、このような可撓性波型金物20は、上述したように可撓性を有していることから、フラットな金物よりも水平方向に対する引張り及び圧縮力に対する強度が高くなる。そのため、固定部材19に接続されている上記両端部の接続部位が破損したり、形状の一部に変形及びせん断が生じたりしてしまうことを防止することができる。これは、可撓性波型金物20全体が可撓性なために、上記した引張りや圧縮のような外力が加わったとしても局部的に応力の集中を起こすことを抑制できるのである。
【0014】
さらに、水平方向で隣り合うダクトスリーブ32同士の上下の隙間を埋めるように、可撓性波型金物20の山部27或いは谷部28が入り込むので、フラットな金物よりも、上下方向に積載されるダクトスリーブ32同士の間に余計な隙間を空けることなく集約して支持することができるので、結果として、開口孔13内へのさや管16の収容効率を高めることができる。
また、上記のように支持されたダクトスリーブ32は、可撓性波型金物20と一体となった状態となり、地震など振動等に対して可撓性波型金物20と共に追随して動くため、可撓性波型金物20からの離脱及びダクトスリーブ32同士の離反等の虞を防止することができる。
【0015】
次に、円管移動ストッパ17について説明する。
上記円管移動ストッパ17は、ダクトスリーブ32の各々に対して外装可能なリング状に形成されている。その内径は、ダクトスリーブ32の外径に合わせて形成されている。
このように形成される一対の円管移動ストッパ17は、ダクトスリーブ32の管端の管軸方向において円管支持部材15を間に介在させるようにして、互いに一定の間隔を空けて配置される。このとき、一方の円管移動ストッパ17を円管支持部材15の可撓性波型金物20の外側に、他方の円管移動ストッパ17を可撓性波型金物20と上記内壁面12との間に配置することにより、可撓性波型金物20の両側面に円管移動ストッパ17が係止されることになる。なお、これら円管移動ストッパ17は、ダクトスリーブ32の外周面に対して圧止或いは接着剤等で固定される。
ここで、上述した連結部25の立ち上がりの長さ(固定部22と金物保持部26との間の距離)は、固定部材19を上記内壁面12に固定した場合、内壁面12と金物保持部26に保持された可撓性波型金物20との間に、上記のような円管移動ストッパ17を介在可能に設定される。
【0016】
このように、ダクトスリーブ32の管端に配置された円管移動ストッパ17間に可撓性波型金物20が介在することによって、円管支持構造10が構成される。
そして、ダクトスリーブ32が振動等によって移動しようとするときは、可撓性波型金物20よりも外側に配置される円管移動ストッパ17が、可撓性波型金物20の片側の側面に干渉することによって、ダクトスリーブ32の管端が開口孔13内へと入ってしてしまうことを防止することができる。また、可撓性波型金物20と上記内壁面12との間に配置される円管移動ストッパ17が、可撓性波型金物20の他側の側面に干渉することによって、ダクトスリーブ32がさらに作業空間11内に突出してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
したがって、ダクトスリーブ32の管軸方向への移動を規制されるので、ダクトスリーブ32の管端が円管支持部材15から脱落することなく確実に支持することができる。
なお、上述したような円管支持構造10をダクトスリーブ32に設ける場合、上記内壁面12、一方の円管移動ストッパ17、可撓性波型金物20及び他方の円管移動ストッパ17を、内壁面12及び各部品間において隙間を空けることなく設けることが好ましい。すると例えば、地中の温度変化等によって起きるさや管16の伸縮によるケーブル31への影響をより緩和することができる。
よって、ダクトスリーブ32の管軸方向への移動を防止することだけでなく、上記のような効果も得ることが可能である。
【0018】
以上に述べた本実施形態の円管支持構造10によれば、地震などの振動等に対して良好に対応することができるため、ダクトスリーブ32の開口孔13への支持状態を確実に維持することが可能となる。さらに、ダクトスリーブ32を支持する部分を波型形状としたためダクトスリーブ32の収容率を高めることができ、結果、より多くのさや管16を開口孔13内に収容することが可能となる。
また、従来の円管支持構造よりも構成を簡素化できるとともに部品点数を削減することができ、コストの削減を図ることが可能となる。
【0019】
なお、上記実施形態に限らず、可撓性波型金物20同士の間隔をダクトスリーブ32の外径よりも若干狭く配置し、ダクトスリーブ32に対して挟持力を発生させて支持するようにしてもよい。
また、金物保持部26において各可撓性波型金物20を上下方向にスライド可能にし、管径に合わせて自在に固定できるように設けてもよい。すると、管径や位置の相違に対して迅速に対応することができる。予め、ダクトスリーブ32に固定しておいた円管移動ストッパ17間に可撓性波型金物20を介在させることも容易となる。
また、ダクトスリーブ32が取り付けられていないさや管16(円管)を支持する円管支持構造も同様に構成することができる。この場合、上記円管移動ストッパ17の内径や各可撓性波型金物20の間隔等をさや管16の外径に合わせて形成することで、さや管16の支持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における一実施形態の円管支持構造を備えた複数の収容管が地中に埋設されている様子を示す側断面図である。
【図2】本発明における一実施形態の円管支持構造を備えた様子を示す正面図である。
【符号の説明】
【0021】
12 内壁面
13 開口孔
16 さや管(円管)
15 円管支持部材
17 円管移動ストッパ
20 可撓性波型金物
32 ダクトスリーブ(円管)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールまたはハンドホールの内壁面に開口する開口孔に複数収容される円管を支持するとともに前記内壁面に固定される円管支持部材と、
前記円管における前記円管支持部材の外側と前記円管支持部材及び前記内壁面の間とに設けられる円管移動ストッパとからなり、
前記円管支持部材は、波型に形成された可撓性波型金物を複数設けて構成され、各可撓性波型金物間に前記円管を支持することを特徴とする円管支持構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−136074(P2006−136074A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320484(P2004−320484)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(500140127)エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社 (61)
【Fターム(参考)】